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病院の行う退院支援 地域包括ケアシステム構築における トランジショナル・ケアの可能性 病院での在宅医療連携研修会 国立長寿医療研究センター 在宅連携医療部 千田一嘉

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病院の行う退院支援

地域包括ケアシステム構築における トランジショナル・ケアの可能性

病院での在宅医療連携研修会

国立長寿医療研究センター 在宅連携医療部 千田一嘉

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国立長寿医療研究センター

愛知県大府市 人口: 8.8万人 高齢化率 18.8%

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病院での在宅医療連携研修会

病院の行う退院支援

本日のお話

1. 超高齢社会の2025年問題の処方箋: 在宅医療

2. 医療・介護総合確保推進法と在宅医療

3. 地域包括ケアシステムの5 +1の要素と自・互・共・公助

4. 病院の行う退院支援: トランジショナル・ケア

(Transitional Care: 移行、変遷、過渡期のケア)

5. 病院と在宅医療の連携・協働のための多職種協働

6. 2025年地域包括ケアシステムの構築に向けて

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はじめに

超高齢社会: 日本

2025年問題の処方箋としての

老年医学と在宅医療

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超高齢社会: 日本 • 2000年に公的介護保険の導入

– 高齢者の自立を支援、介護者の負担軽減

• 在宅介護、家族介護への援助、財政的持続可能性

• 2007年に高齢者が21.5%の超高齢社会(初) (2013年10月は25.1%)

– 平均寿命: 女87歳・男81歳など、いくつかの健康指標が世界一

• ヨーロッパの高齢社会に比して、第二次世界大戦後に急速に到達

• 2011年に国民皆保険50周年

• 日本国憲法の保健医療の普遍性を追求

• 高騰する医療費・高齢化

• 諸外国に比して高くはない医療費、高い医療の質の確保

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2025年問題: 人口ピラミッドの変化

総務省「国勢鯛査」及び「人口推計」、国立社会保障・人ロ問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf 厚生労働省ホームページ: 健康・医療 「在宅医療の最近の動向」より

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意識障害 めまい 息切れ 喀血

吐血・下血 下痢 低体温 転倒 骨折

関節痛 腰痛 喀痰・咳嗽

認知症 麻痺 骨関節変形

呼吸困難 体重減少

ADL低下 骨粗鬆症 椎体骨折

尿失禁 せん妄 抑うつ 褥そう

-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85-

要介護/ 廃用症候群

慢性疾患

急性疾患

(年齢)

老年医学で診る高齢者

0

2

4

6

8

10

12

老年症候群(高齢者特有の病態)数

-疾病構造と老年症候群-

急性疾患症状

慢性疾患症状

ねたきり (廃用症候群)

低栄養 嚥下困難

平成25年度 在宅医療・介護連携推進事業研修会 資料 鳥羽研二先生 「高齢者のニーズに応える在宅医療」 より 国立長寿医療研究センターホームページ:http://www.ncgg.go.jp/zaitaku1/pdf/jinzaiikusei/2013/kogi1_1022_toba.pdf

高齢者医療の原則

1. ケア(Caring ) >治癒(キュア:Curing ) 2. 生活機能重視 (疾病重視でない)

高齢者総合的機能評価: CGA

3. 複数の併存症を同時並行で管理 4. 多職種連携で「治す」から「支える」へ

浮腫 悪心・嘔吐 便秘

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死亡の場所別にみた死亡率

病院: 78.6%

老人ホーム:2.9%

自宅:12.7 %

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在宅医療・介護に対する市民からの要請

• 要介護状態でも、

自宅や子供・親族の家での

介護を希望するが40%以上

60%以上の市民が

「自宅で療養したい」

高齢者の健康に関する意識調査(平成19年度内閣府)

41.7% 18.6% 11.5% 17.1% 5.8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

自宅で介護してほしい

子どもの家で介護してほしい

親族の家で介護してほしい

介護老人福祉施設に入所

介護老人保健施設を利用

病院などの医療機関入院

民間有料老人ホーム等を利用

療養に関する希望

11.8

9.6

8.8

20.7

22.9

18.4

20.4

21.6

23.0

28.3

26.7

29.4

9.0

10.5

10.9

4 .4

3 .2

2 .5

2 .5

2 .6

4 .4

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成10年

平成15年

平成20年

なるべく今まで通った(または現在入院中の)医療機関に入院したい

なるべく早く緩和ケア病棟に入院したい

自宅で療養して、必要になればそれまでの医療機関に入院したい

自宅で療養して、必要になれば緩和ケア病棟に入院したい

自宅で最後まで療養したい

専門的医療機関(がんセンターなど)で積極的に治療が受けたい

老人ホームに入所したい

人生の最終段階の療養場所に関する希望

終末期医療に関する調査(各年)

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf

厚生労働省ホームページ: 健康・医療 「在宅医療の最近の動向」より

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医療・介護総合確保推進法

2

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地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備

1.新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)

①都道府県の事業計画(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等)のため、

消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置

②医療と介護の連携を強化するため、厚生労働大臣が基本的な方針を策定

2.地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)

①医療機関が都道府県知事に病床の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)等を報告

都道府県は地域医療構想(ビジョン)(地域の医療提供体制の将来のあるべき姿)を医療計画に

②医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律に位置付け

3.地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)

①在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、

全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行・多様化

②特別養護老人ホームは在宅困難な中重度の要介護者(要介護3)

③低所得者の保険料軽減を拡充

④年金収入280万円以上の利用者の自己負担を2割へ引上げ(月額上限あり)

⑤低所得施設利用者の食費・居住費補填の要件に資産などを追加

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-06.pdf

医療・介護総合確保促進法

新基金

病床機能報告制度

2018年 市町村の

在宅医療連携拠点 義務化

(介護保険財源)

医師会は

ゲートキーパー

社会保障・税一体化改革 社会保障制度改革国民会議

~2013.8

地域における医療・介護(サービス)の総合的(一体的)な確保を図るための改革 2014.1~社会保障制度改革推進本部

(旧)地域介護施設整備促進法

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地域における医療・介護の総合的な確保を図るための改革

平成26年1月21日(火)全国厚生労働関係部局長会議追加資料: http://www.mhlw.go.jp/topics/2014/01/dl/tp0120-09-05p.pdf

高度急性期から在宅医療・介護までの一連のサービスを地域において総合的に確保 することで地域における適切な医療・介護サービスの提供体制を実現し、患者の早期の社会復帰を進め、

住み慣れた地域での継続的な生活を可能に

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平成26年度診療報酬改定の概要. 厚生労働省保険局医療課. 平成26年3月5日版 www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000.../0000039891

トランジション:

移行、変遷、過渡期

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医療計画に『在宅医療』が追加

D

治す医療

厚生労働省ホームページ,医療計画の見直しについて,資料A-1,P23. http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/shiryou_a-1.pdf

治し・支える医療 トランジション(移行・変遷・過渡期)

トランジション:

移行、変遷

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本当に病院に行かなければならない時に病院を利用 地域でも療養しながら生活できる体制を作る

佐々木昌弘(2013).平成25年度在宅医療・介護連携推進事業研修会資料,在宅医療と介護の連携について,P31.

http://www.ncgg.go.jp/zaitaku1/pdf/jinzaiikusei/ 2013/sym2_1022_nakura.pdf

?

超高齢社会の

人々の安全・安心 トランジショナル・ケア:

移行、変遷、過渡期のケア 患者さんの視点に立脚した、充分な医療・ケア

の情報提供と、その意志決定支援・共有

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入院医療について<在宅復帰の促進>.厚生労働省保険局医療課,平成26年度診療報酬改定の概要,P11. http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039891.pdf

トランジショナル・ケア:

移行、変遷、過渡期のケア

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療養病床 (24万床)

一般病床 (109万床)

【2012(H24)年】

介護療養病床

介護施設 (98万人分)

居住系サービス (33万人分)

在宅サービス (320万人分)

高度急性期

一般急性期

亜急性期等

長期療養

介護施設

居住系サービス

在宅サービス

【2025(H37)年】

地域に密着した病床での対応

「施設」から「地域」へ・「医療」から「介護」へ

【取組の方向性】 ○入院医療の機能分化・強化と連携 ・急性期への医療資源集中投入 ・亜急性期、慢性期医療の機能強化 等

○地域包括ケア体制の整備 ・在宅医療の充実 ・看取りを含め在宅医療を担う診療所等 の機能強化 ・訪問看護等の計画的整備 等

・在宅介護の充実 ・在宅・居住系サービスの強化・施設 ユニット化、マンパワー増強 等

【患者・利用者の方々】 ・ 病気になっても、職場や地域生活へ早期復帰 ・ 医療や介護が必要になっても、住み慣れた地 域での暮らしを継続

医療・介護機能の再編

•患者ニーズに応じた病院・病床機能の役割分担 •医療機関間、医療と介護の間の連携強化 →より効果的・効率的な医療・介護サービス提供体制の構築

医療法等関連法を順次改正

2012年診療報酬・介護報酬の同時 改定を第一歩として実施

www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/zaitakuiryou_all.pdf 厚生労働省ホームページ: 健康・医療 「在宅医療・介護の推進について」より

トランジショナル・ケア:

移行、変遷、過渡期のケア

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地域包括ケアシステム

3

5 +1の要素と自・互・共・公助

+1: 患者さんの視点に立脚した、

充分な医療・ケアの情報提供と

その意志決定支援・共有

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地域包括ケアシステム ○高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援が目的

○可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような

包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指す

平成25年3月

地域包括ケア研究会報告書より

地域包括ケアシステムにおける

「5つの構成要素」

【医療・介護・予防】

「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・予防」が専門職によって提供

ケアマネジメントに基づき、必要に応じて生活支援と一体的に提供

【生活支援・福祉サービス】

心身の能力の低下、経済的理由、家族関係の変化などでも尊厳ある生活が継続

食事の準備などから、近隣住民の声かけや見守りなどのインフォーマルな支援まで

担い手も多様で、生活困窮者などには、福祉サービス

【すまいとすまい方】

生活の基盤として必要な住まいが整備

本人の希望と経済力にかなった住まい方が確保

高齢者のプライバシーと尊厳が十分に守られた住環境

【本人・家族の選択と心構え】

単身・高齢者のみ世帯が主流に

在宅生活を選択することの意味を、本人家族が理解し、心構えを持つ

高齢者の、ケアする人の

安心・安全

患者の視点

に立脚

意志決定共有 Shared Decision-Making

SDM

5要素 +1 パーソン・センタード・ケア: 人間中心のケア原則

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「自助・互助・共助・公助」からみた地域包括ケアシステム

【費用負担による区分】

「自助」には「自分のことを自分でする」と、市場サービスの購入も含む

「互助」は相互に支え合っているという意味で、自発的なもの

「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担

「公助」は税による公の負担

【時代や地域による違い】

高齢者のひとり暮らしや高齢者のみ世帯がより一層増加

「自助」「互助」の概念や求められる範囲、役割が新しい形に

都市部では、民間サービス市場が大きく「自助」によるサービス購入が可能

都市部以外の地域は、「互助」の役割が大

少子高齢化や財政状況から、「自助」「互助」の果たす役割が大

セルフ・エフィカシ―:自己効力感

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Wangerらの慢性疾患ケアモデル

慢性疾患の臨床指標↑

生活機能↑

QOL↑

満足度↑

寿命・予後(↑)

「包括的・多職種協働の高齢者医療実践体制の構築のために」 米国老年学会誌 52:2128–33, 2004

セルフ・マネジメント

を高める方策

コミュニティの役割

互助 社会資源・制度 医療制度

医療機関・施設

セルフ・ケア

自助 医療情報の

提供制度

「情報とスキルと自信を持つ

活性化された患者」

「先を見越した行動

をとる多職種チーム」

意思決定

支援

高齢者ケアのモデルとシステム

高齢化が進展し、

慢性疾患患者の急増で患者像が転換

→従来の臓器別・職種毎の診療・ケア体系は機能不全

Improving outcomes in chronic illness. Manag Care Q.1996, 4:12-25

セルフ・エフィカシ―:

自己効力感の強化

セルフ・

マネジメント

啓発

人生

最終段階

のケア

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要介護 施設入所

訪問看護・介護

家族・友人

コミュニティでのサポート

セルフ・

マネジメント

トランジショナル・ケア 協調・継続・一貫したケア体制

自立 個人

患者+

ケア する人々

トランジショナル・ケア:

移行、変遷、過渡期のケア

協調性・持続性・一貫性

をもって、

医療者⇔ケアする人々⇔

⇔ご家族⇔患者さん

病院⇔施設⇔在宅

急性期⇔慢性期

医療・看護・介護(ケア)の場と

医療・ケアの人々と

患者さん・ご家族

を繋ぐケア

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病院の行う退院支援

国立長寿医療研究センター

在宅医療支援病棟 における後方支援

レスパイト トランジショナル・ケアの実践

4

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在宅医療支援病棟 国立長寿医療研究センター (大府市)

2009年4月開棟

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ヘルパー

介護支援専門員

訪問リハビリ

訪問看護師

登録医 診療所医師

国立長寿医療研究センター 近隣の在宅ケアチーム

登録患者 在宅高齢患者

薬剤師

医師 看護師

国立長寿医療研究センター病院チーム

リハビリテーション

2. 登録医の判断による入院支援

1. 登録制

3. 救急から看取りの

ケア全てに対応

5. 多職種協働在宅退院支援

4. 院内連携

退院時カンファレンス

在宅医療支援病棟

地域医療連携室

在宅医療支援病棟の流れ

プライマリー・ナース

(患者専任看護師)

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退院前訪問

• 自宅の療養環境の把握

• 生活上の支障となる住宅環境問題の明確化

• 安全な介護方法や介護負担の軽減について検討・指導

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在宅医療チームとご家族との協働

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看護に最大の特徴

・プライマリー・ナース(患者専任看護師)制

繰り返される入退院でも一患者に一専任看護師

・「○○の病気の方」から「▲▲に住んでいる方、

□□のような生活を送っている方」 への意識変容

・訪問看護、ケアマネジャーと顔の見える関係を構築

・人生の最終段階の決定を支える

・在宅にこだわるのではなく、

長期のかかわりの中では、施設などを勧める勇気

・退院後や再入院まで意識した看護

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【入院】 【レスパイト】

患者の 病気の回復や 悪化予防が目的

患者の家族の負担軽減や介護生活の維持継続が目的

国民健康保険・健康保険

介護保険

国民の疾病,負傷,出産または死亡に関して必要な保険給付を行なう法律に基づき施行(1961年に皆保険へ)

介護を必要とする高齢者とその家族をサポートするために、サービス提供するための公的保険(2000年施行)

在宅医療は・・

レスパイト(Respite, 小休止) 介護の必要な高齢者や障害者のいる家族への支援

家族が介護から解放される時間を提供し、心身疲労による共倒れなを防止

デイサービスやショートステイなどのサービス

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退院前カンファレンス

• 入院中の病状、看護、

リハビリ状況等を説明

→地域のサービス機関

と共通認識

• 患者とその家族の参加

→退院後の不安を軽減

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診療所

ICTを用いた在宅医とのテレビ会議

センター

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病院と在宅医療の連携・協働のための

多職種協働

5

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在宅医療・介護の推進にあたっての課題

39.2

19.4

33.7

38.6

14.2

29.7

12.2

3.5

43.0

43.0

7.7

5.2

5.1

39.3

18.9

38.3

42.4

13.9

29.7

9.4

3.2

49.9

39.4

9.8

3.5

4.5

0 10 20 30 40 50 60

業務多忙で、全員のケアプランを十分に作成できない

利用者・家族の意見を十分に聞く時間がない

課題を抽出し、長期目標・短期目標をたてるのが難しい

利用者と家族の意見に違いがあり、調整が難しい

利用者や家族の意見と、ケアマネジャーの意見に違いがあり、調整が難…

必要なサービスが地域に不足している

サービス提供事業者を探すのに時間がかかる

事業所の併設サービス等をケアプランに入れるような事業所の方針がある

医師との連携が取りづらい

介護保険以外のインフォーマルなサービスが不足している

指導・監査を前提にしてサービスを調整してしまう

その他

無回答

医療系(N=572)

介護系(N=1242)

• 訪問診療を提供する医療機関の数も 十分とは言えず

• 医療と介護の連携も十分には取れていない

箇所 割合(%)

病院 2,407 28.0

診療所 19,950 20.0

訪問看護ステーション 5,815 -

病院、診療所 「医療施設調査(静態)」(平成23年)(厚生労働省) 訪問看護ステーション 「介護給付費実態調査」(平成23 年)(厚生労働省)

訪問診療を実施している医療機関

居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の実態に関する調査報告書(平成21年度老人保健健康増進等事業)

ケアマネジャーが 困難に感じる点

www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/zaitakuiryou_all.pdf

厚生労働省ホームページ: 健康・医療 「在宅医療・介護の推進について」より

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多職種協働の 米国老年医学会の立場表明

1. 複雑かつ多様な病状・病態の高齢者に対応

2. 高齢者特有の老年症候群の医療の過程と結果を改善

3. 医療システムを改善し、介護者の負担を軽減

4. 多職種協働研修・教育は高齢者医療・介護に有効

米国老年医学会誌 54: 849-52, 2006

多職種が 一堂に会して 研修する際の

障壁 立場・文化の伝統の差異 職種間の亀裂

アメリカでの 多職種連携教育

の例

「職種間の壁:高齢者のための多職種チーム医療研修の障害」

教育・研修

特集

米国老年医学会誌 52: 1000-6, 2004

「米国老年医学会による 複雑・多様な病態・病状の高齢者のための

多職種協働ケアに関する立場宣言」

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多職種協働・連携によるケア・カンファレンス 訪問診療・同行研修

多職種協働カンファレンスの方法、 あり方について、 理想的な例 / 問題を残す例 DVD視聴後、グループ・ディスカッション

国立長寿医療研究センター在宅連携医療部ホームページ http://www.ncgg.go.jp/zaitaku1/jinzaiikusei.htmlよりダウンロード可能

ビデオ教材

指導医の訪問診療に、研修者が同行し、在宅医療の現場で学ぶ姿を映像化

視聴覚教材の有用性

患者さん宅で学ぶ

クリニック(外来) → 患者さん宅

アウェー → ホーム

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医療専門職との連携等により在宅生活の支援に必要な情報を共有

医療機関・介護施設 居宅

退院・退所に向けた早期からの連携

地域の介護サービス事業所に関する情報や要介護認定の申請に必要な手続き等の情報を共有

(退院の場合は、診療報酬の介護支援連携指導料相当)

退院時に医療機関・施設の職員と疾病の状態等ケアプラン原案の作成に資するような情報の収集を実施(退院の場合は診療報酬の介護支援連携指導料相当)

診療報酬の退院時共同指導料2の注3の対象となるものを別途行う場合は、①と②のほか、これも合わせて3回まで算定可能

ケアプランへ反映(円滑な在宅生活への移行)

① ②

医師

看護師・社会福祉士、薬剤師・OT、PT、ST等

施設職員

介護支援専門員

入院 退院

退院・退所の情報共有

www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/zaitakuiryou_all.pdf

厚生労働省ホームページ: 健康・医療 「在宅医療・介護の推進について」より

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高齢者が住み慣れた場で

安心・安全を実感できる

2025年地域包括ケアシステム

の構築に向けて

おわりに

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英国式人生最終段階のケアの標語:

日暮れが日の出と同じほど美しく

人生の最終段階においては 天寿を全うすることだけを残すのみに、

できることはすべて、やり遂げておきましょう そのための医療・介護です

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○地域資源の発掘 ○地域リーダー発掘 ○住民互助の発掘

市町村における地域包括ケアシステム構築

地域ケア会議の実施

地域包括支援センター等で個別事例の検討を通じ地域のニーズや社会資源を把握

※ 地域包括支援センター では総合相談も実施。

日常生活圏域ニーズ調査等

介護保険事業計画の策定のため日常生活圏域ニーズ調査を実施し、地域の実態を把握

医療・介護情報の 「見える化」

(随時)

他市町村との比較検討

PDCAサイクル

量的・質的分析

■都道府県との連携 (医療・居住等)

■関連計画との調整 ・医療計画 ・居住安定確保計画 ・市町村の関連計画

■住民参画 ・住民会議 ・セミナー ・パブリックコメント

■関連施策との調整 ・障害、児童、難病施策等 の調整

事業化・施策化協議

■介護サービス ・地域ニーズに応じた在宅 サービスや施設のバラン スのとれた基盤整備 ・将来の高齢化や利用者数 見通しに基づく必要量

■医療・介護連携 ・地域包括支援センターの 体制整備(在宅医療・介 護の連携) ・医療関係団体等との連携

■住まい ・サービス付き高齢者向け 住宅等の整備 ・住宅施策と連携した居住 確保

■生活支援/介護予防 ・自助(民間活力)、互助 (ボランティア)等によ る実施 ・社会参加の促進による介 護予防 ・地域の実情に応じた事業 実施

■人材育成 [都道府県が主体] ・専門職の資質向上 ・介護職の処遇改善

■地域課題の共有 ・保健、医療、福祉、 地域の関係者等の協 働による個別支援の充実 ・地域の共通課題や好 取組の共有 ■年間事業計画への反映

具体策の検討

社会資源

介護保険事業計画の策定等

地域ケア会議 等

□高齢者のニーズ □住民・地域の課題 □社会資源の課題 ・介護 ・医療 ・住まい ・予防 ・生活支援

□支援者の課題 ・専門職の数、資質 ・連携、ネットワーク

課 題

地域の課題の把握と

社会資源の発掘

地域の関係者による

対応策の検討

対応策の

決定・実行

厚生労働省ホームページ: 福祉・介護 地域包括ケアシステムより http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

市町村では、 2025年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じて、 地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築

高齢者の安心・安全

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生活支援・介護予防 住まい

■在宅系サービス: ・訪問介護 ・訪問看護 ・通所介護 ・小規模多機能型居宅介護 ・短期入所生活介護 ・24時間対応の訪問サービス ・複合型サービス (小規模多機能型居宅介護+訪問看護) 等

・自宅 ・サービス付き高齢者向け住宅 等

相談業務やサービスの コーディネートを行います。

■施設・居住系サービス ・介護老人福祉施設 ・介護老人保健施設 ・認知症共同生活介護

・特定施設入所者生活介護 等

日常の医療: ・かかりつけ医 ・地域の連携病院

老人クラブ・自治会・ボランティア・NPO 等

・地域包括支援センター ・ケアマネジャー

通院・入院 通所・入所 ・急性期病院 ・亜急性期・回復期 リハビリ病院

医 療

介 護

■介護予防サービス

○ 住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される →要介護状態でも、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続ける ○ 認知症は超高齢社会の大きな不安要因 →地域で生活を支える ○ 高齢化の進展状況には大きな地域差 →保険者である市町村や、都道府県が、 地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げる

認知症の人

2025年の地域包括ケアシステムの姿

www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/zaitakuiryou_all.pdf

厚生労働省ホームページ: 健康・医療 「在宅医療・介護の推進について」より

超高齢社会の

人々の安全・安心

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お伝えしたいこと

• 高齢者の自立と尊厳のための在宅医療・老年医学

「治す医療」 → 「治し・支える医療」

患者さん中心の「包括ケア」と意志決定支援・共有

セルフ・マネジメント啓発から人生最終段階のケアまで

• 医療・介護総合確保推進法で持続可能な社会保障の実現

– 地域包括ケアシステムの5 +1要素 患者視点立脚型の医療・ケア

医療、介護、予防、生活支援、住まい +本人・家族の意志決定支援・共有

• 後方支援、レスパイトのための在宅医療支援病棟

– 多職種協働のトランジショナル・ケア = 病院が行う退院支援

• 高齢者の安心・安全のための多職種協働

病院での在宅医療連携研修会

病院の行う退院支援