上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次...

41
島の歴史を未来につなぐ魅力創出にむけて 島の歴史を未来につなぐ魅力創出にむけて 上島町景観・歴史的風致形成推進計画 平成 29 年 2 月 上 島 町

Upload: others

Post on 23-Jan-2021

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

島の歴史を未来につなぐ魅力創出にむけて島の歴史を未来につなぐ魅力創出にむけて

上島町景観・歴史的風致形成推進計画

平成 29年 2月 上 島 町

Page 2: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定
Page 3: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次

1.上島町の概要 1

2.計画の目標・方針 5

(1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定 5

(2)区域における都市構造の中長期の再構築の目標及び方針 7

3.景観・歴史的風致形成の方針 9

3-1 基本方針 9

(1)居住等機能の誘導の求心力となるまちの魅力の創出 9

(2)魅力創出に必要な景観・歴史的風致形成の基本方向 9

(3)魅力創出に必要な重点的な施策展開の考え方 9

3-2 上島町らしい方向性 9

4.景観・歴史的風致形成推進事業 13

(1)対象とする具体事業 13

(2)事業毎の事業内容、まちの魅力創出・地域活性化の促進効果 17

(3)モデル事業計画 26

5.事業にあわせて実施する規制誘導策 30

(1)区域で実施する規制誘導措置の内容 30

(2)実施体制の確立 32

(3)規制誘導措置によるまちの魅力創出、都市構造の集約化の促進効果 36

6.事業スケジュール 37

Page 4: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定
Page 5: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

1.上島町の概要

1)位置及び交通

上島町は、愛媛県の北東部、広島県との境に位置し、瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ、上島諸島及び魚島群島

の25島から構成されている。内有人島は7島、無人島は18島である。瀬戸内海国立公園区域内にあり、風光明

媚な瀬戸の景勝拠点地である。陸地面積は30.38㎢(平成26(2014)年12月現在)で、海域は広範囲に渡って

いる。弓削島、生名島、岩城島、魚島、高井神島等のいずれの島も100~300m級の山地がそびえ、山地

のほとんどは急傾斜地となっており、平地は少ない。

すべて離島のため、交通機関は海上交通のみで、広域航路では、今治~岩城~佐島~弓削~生名~広島県

尾道市因島(土生)を結ぶ快速船、生名~三原を結ぶ高速船が就航している。地域間航路としては、生名~広島

県尾道市因島(土生)、魚島~高井神~豊島~弓削~広島県尾道市因島(土生)を結ぶ公営渡船をはじめとして、

広島県尾道市因島や生口島との間に民間フェリーが就航している。

島間では、弓削島と佐島との間に弓削大橋が、また佐島と生名島の間に生名橋が架かっている。

2)気象

瀬戸内海特有の温暖で多照寡雨な気候であり、冬季にも積雪はほとんどなく、相対的に夏は涼しく、

冬は暖かく、過ごしやすい気候である。平成23(2011)年の年間平均気温は16.3℃、年間降雨量は1,

253mmで、降雨量は概して7月が最も多く、2月が最も少ない。

■上島町の位置 ■上島町を構成する主な島

1

Page 6: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

3)町の成立

明治22(1889)年4月に町村制が施行され、越智郡弓削村、越智郡岩城村、越智郡生名村が成立した。その

後魚島が明治29(1896)年に弓削村から分離し魚島村となる。昭和28(1953)年1月に町制が施行され、弓削

村は弓削町となる。平成16(2004)年に弓削町・岩城村・生名村・魚島村の4町村が合併し、上島町となった。

4)人口

平成27(2015)年の国勢調査によると、人口は7,135人、世帯数は3,386世帯である。人口は 昭和

60(1985)年の12,113人から約41%減少している。とりわけ年少人口は2,368人から548人と4分の

1以下まで減少している。一方で、老年人口は1,853人から3,026人へ1.6倍以上増加している。平成

27(2015)年の年齢別構成比を愛媛県全体と比較した場合、上島町の年少人口割合は7.7%(愛媛県

12.4%)、老年人口割合が42.4%(同30.6%)、生産年齢人口割合が49.8%(同57.0%)と、県に

比べて少子高齢化が急激に進んでいる。

■人口・世帯数の推移

(人・世帯)

資料:国勢調査 ※平成 12 年以前は弓削町・岩城村・生名村・魚島村の合計

2

Page 7: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

5)産業

温暖な気候と傾斜地を生かした柑橘栽培を中心とした農業、定置網、一本釣りや刺網等、多様な小規

模漁業のほかに海苔やヒラメ・タイの養殖などを中心とした漁業、及び造船を中心とした製造業が上島町

の基幹産業である。平成25(2013)年の町の総生産額は239億円で、前年の216億円から増加してい

る。内訳は、第一次産業が5.8億円、第二次産業が98億円、第三次産業が133億円と第三次産業が5

割を越えている。産業別にみると製造業が87億円と最も多く、不動産業が40億円、サービス業が19億円

と続き、第一次産業の中では農業が2.3億円、漁業が3.5億円となっている。

(資料:愛媛県市町民経済計算)

資料:愛媛県市町民経済計算 ※平成 12 年以前は弓削町・岩城村・生名村・魚島村の合計

■年齢別人口の割合の推移

資料:国勢調査 ※平成 12 年以前は弓削町・岩城村・生名村・魚島村の合計

■上島町内総生産額・産業別生産額

3

Page 8: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

6)観光

上島町の観光客数は平成24(2012)年の23万1千人をピークに減少傾向にあり、平成28(2016)年

には21万7千人となっている。観光地タイプ別にみると、「温泉」、「スポーツレクレーション」の占める割合

が高く、「温泉」と「買物」の減少が観光客数の減少の要因となっている。

■観光地一覧

自然 積善山、弓削・海岸景観、魚島一周、立石山

文化・歴史 岩城資料館、祥雲寺観音堂、定光寺観音堂、亀居八幡神社、篠塚公園、

関道神社、三秀園・メンヒル

産業観光 愛媛県しまなみ農業指導班岩城駐在所、せとうち交流館、篠塚漁港釣り、

高井神漁港釣り、江の島漁港釣り

スポーツレクレーション 津波島海水浴場、西部海水浴場、松原海水浴場、大木海水浴場、

いきなスポレク公園、松原キャンプ場、サウンド波間田

温泉 三洋倶楽部・菰隠温泉、海水温浴施設・潮湯、

インランド・シー・リゾート・フェスパ

買物 ログハウス弓削、農家レストラン

行事・祭事 いわき桜まつり・産業まつり他、弓削・島四国、弓削・薬師祭、

生名島一周マラソン大会

イベント ふるさと夜市、シーサイドフェスティバル

■観光客数・観光消費額の推移

資料:上島町調べ

4

Page 9: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

2.計画の目標・方針

(1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

上島町の主な島には集落が点在しており、岩城、弓削をはじめ生名、魚島、佐島では、港周辺

に集積度の高い集落がみられる。そのうち、歴史ある建物、町割を含めて全域的に歴史的まちな

み景観が良く残されている集落を本計画の対象区域とする。

景観・歴史的風致形成推進区域として、「上弓削地区」、「岩城地区」の2地区を設定する。

上弓削地区

岩城地区

5

Page 10: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

1.景観・歴史的風致形成推進区域1<上弓削地区>

区域の範囲は、港、生活利便施設、観光施設のある本町の中心地の一つであり、歴史的民家建

築が集積しているエリアを中心に、地域の景観、生活のシンボルともなって、一体に景観を形づ

くっている寺院を含む区域とした。

6

Page 11: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

2.景観・歴史的風致形成推進区域2<岩城地区>

区域の範囲は連担した集落の中心部にあり、港とともに、町役場(総合支所)、商業・観光施設

が集積し、歴史的建物が良く残されているエリアで、それらと一体となって景観を形成している

寺院、神社を含む区域とした。

(2)区域における都市構造の中長期の再構築の目標及び方針

上島町の人口は、長期にわたって減少を続け、平成22年には7,648人と、50年前の半分近くにな

っている。それに伴い、町内の集落では空家が目立ち、集落としての存続が困難になっていると

ころもみられる。

「上弓削地区」「岩城地区」は、港と一体に発展してきた地区であり、都市的機能が集まり、上

島町の中核的な市街地であるとともに、歴史的な町の魅力がよく保存されている。しかしながら、

ここでも空家化・空地化が進み、町としての魅力と機能を弱めつつあることから、空家・空地の

活用により、地域の居住・商業・観光・生活利便機能を向上させ、まちなみ景観の修景整備に取

り組み、歴史的まちなみの連続性を取り戻すことで、中長期的に都市構造の再構築をはかる。

さらには、平成33年度に完成が予定される架橋により、主要四島の一体化が成されるのを機会

に、両地区の歴史的風致形成推進により、全町への波及が定住・移住の促進、観光誘客につなが

ることをめざすものとする。

7

Page 12: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

1.「上弓削地区」都市構造再構築の目標及び方針

本地区のある弓削島は、人口が最も多く上島町の中枢機能の多くを担っている。町役場(総合

支所)をはじめ、国立商船高専、高校、ホテル・リゾート施設等が古くから立地している。また

宿泊施設(8件)、飲食(14件)、物販(7件)と町の生活基盤の多くを支えている。

都市構造からみると、このような弓削島には上弓削・下弓削港という2つの港を中心に、2か所

のコア機能を有しているが、それらは約2㎞と至近距離にある。

いずれにしても、これからの都市構造の再構築は定住・移住促進と観光により可能であるが、

下弓削は歴史的風致としては散漫で、むしろ海水浴場、公園、サイクルオアシス等の自然型の楽

しみを軸とした再構築がふさわしいのに対し、当上弓削地区には、港と一体となった歴史的な建

物、景観が集約されている。加えてエリア内に、飲食(3件)、民宿(2件)、郵便局、さらには近

接して飲食、民宿、海水温浴施設等が集積していることから、観光拠点としての潜在力が見出せ

る。

さらに漁村独特の細い路地状の港町風景があり、小高い地形もあり、港、海が一望できる歴史

的建物もある。しかしそれらの多くが空家・空地化される一方、近年Iターンの若い家族による古

民家再生ショップが良評価を得ている。そのような流れを一気に加速させ、「港と一体となったま

ちなみ観光」による集客と居住の増加を図ることにより、都市構造の集約化効果をめざすことと

する。

2.「岩城地区」都市構造再構築の目標及び方針

当地区は、古くから瀬戸内航海や交流の拠点として発展し、本陣が置かれ、その後特に近代に

入ってからは、明治初期の学校開設、昭和初期の医院、郵便局、産業倉庫といった都市機能が集

積し、今もその遺構の多くが良く残されている。しかし、それらも大部分が低未利用の状況が進

んでいる。とりわけ「郷土館」になっている旧本陣・三浦家は、町の管理下に置かれているもの

の、十分な活用には至っていないことから、ここを地域再生の先導役とすべき課題が残されてい

る。

また当地区には、今も商業・業務施設が20件余集積して、町民の生活・産業基盤を支えている

が、いずれも高齢化、人口減少の進行とともに、後継者不足、廃業の傾向がみられる。さらには、

住宅についても空家・空地化が進行している。

しかし、町内主要四島で唯一他島とつながっていない岩城島が、平成33年の岩城橋架橋により

結ばれることから、その折に向けて、郷土館を中心とする低未利用の施設、空家・空地を、新時

代のライフスタイルに対応するコミュニティ機能、広域からの観光客を呼び込む機能として活用

し、街なみ整備と合せて魅力空間を創出することで、居住・集客力の高い都市的コアとして再構

築する。

8

Page 13: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

3.景観・歴史的風致形成の方針

3-1 基本方針

(1)居住等機能の誘導の求心力となるまちの魅力の創出

若い世代の転出をくい止め、定住を図り、さらに外からの移住を促進するために、それら世代

のニーズに合致するすまいと仕事の場をセットとして創り出す。

(2)魅力創出に必要な景観・歴史的風致形成の基本方向

保存状態の良い上島町独自の歴史ある建物とまちなみを、活性化につなげうる貴重な地域資源

と見なして、それらの保存・活用・整備を推進する。

(3)魅力創出に必要な重点的な施策展開の考え方

2地区に残る質の高い歴史的建物の集客施設としての活用を重点施策の第一歩とし、その実現

のために必要な施策、事業方式、実施主体を明らかにし、確立させる。

3-2 上島町らしい方向性

1.基本戦略

(1)地域資源活用の観光まちづくりから町創生へ

上島町創生の中期的(5~10年)な方向性としては、上島町の地域資源を最大限活用することに

より、町外からの観光客を呼び込むことを第一義として、歴史的建物保存、経済効果、雇用創出

を伴いつつ、定住・移住促進の動機づけとするのが最も効果の期待できる方策である。

(2)拠点形成から全町への波及へ

幸い上弓削地区、岩城地区の2か所は海、港に近く、歴史的建物が集まっており、それらを生

かして平成33年度の架橋完成までに、集客・観光・交流の拠点づくりを進め、そこから全町の観

光地・施設に誘導する戦略をとる。

9

Page 14: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

2.上島町らしく歴史的建物を保存・活用する

(1)海、島だけでは「差別化」しにくいが、海・港と一体となった歴史ある建物をはじめ、上島

町独自のまちなみ、瀬戸内航海・文化交流にちなむ物語等がセットとなることで魅力を打ち

出す。

(2)上島町の文化、生活、産業等の伝統を引き継ぐものとして、歴史的な建物で、かつ上質で、

保存状態の良いものが多く有り、それらが上弓削、岩城の両地区に集積している点を生かす。

(3)近世以来の和風建築の様式を継承する各時代のものから、近代洋風建築まで、多様な歴史的

建物が揃っている「建築ミュージアム」をテーマとする。

3.町外からの観光誘客に重点を置く

以下に述べる理由から、景観・歴史的風致形成は、住民のみではなく、外からの観光客の誘引

が相まって主たる担い手となる方向性とする。

(1)人口減少の長期化、特に生産年齢・年少人口の急減から、当面は町内利用には限界があり、

将来の広がりが期待しにくい。

(2)国内外の観光行動の多様化、地方指向が強まる傾向が進行しており、ニーズに合うハード・

ソフト整備により、上島町への誘客の可能性が強まる。

(3)近年になって「尾道」まで来る多くの観光客675万人(2015年)が一貫して上昇傾向にあるこ

とから、距離感(約1時間)の情報発信、理解促進により連動させうる。

(4)「しまなみ海道」観光の拡大が進み、今後さらに増大することが期待できるなかで、上島町

の優位性の発揮が可能である。

(5)上島町らしい歴史・文化とともに、海、港、鮮魚、食材等の「観光資源」の豊富さを生かす

余地がまだまだ残されている。

上島町の伝統を引き継ぐ

質、保存状態の良い

建物が集積している

海、島、港、

そして歴史・文化の

「物語」がある

上島町の

歴史的建物を

特徴づける要素

多様な時代・様式

の歴史的建物が

揃っている

10

Page 15: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

4.「上島観光」をめぐる主な課題

上島町の景観・歴史的風致形成の主目的の一つが観光であるが、現実の「上島観光」には多く

の課題がある。まず、その課題整理をしたうえで、具体的な展開方針を検討する。

(1)「ニューツーリズム*」に対応できる体験型、滞在型の受け入れ体制が未成熟である。

(2)せっかくの海、港、島や歴史・文化、交通、食材等の「観光資源」が「可視化」「情報化」してい

ない。

(3)今の観光に不可欠な「その土地ならでは」の高質、高感度な空間、食事、ショッピングが不

十分である。

(4)歴史的建物がほとんど活用されないまま、空家化、放置化等、その存在がマイナス要素にな

っている。

(5)アクセスに関する分かりにくさのため、実際の時間距離よりも「遠い」「不便」とのイメージが強い。

(6)情報発信力が不十分(HP、Facebook、SNS、Wi-Fi環境、尾道等と連動した広報、タウンプロモ

ーション等)

*「ニューツーリズム」は、かつての団体旅行で名所めぐり、物見遊山等の観光スタイルを

「マスツーリズム」と称するのに対し、個人・少人数でまち歩きや食事、買物、体験、交流

等を主とする新しい観光スタイルが主流になっている状況を表現するもの。

5.上島町の歴史を生かす利用者、来訪者のターゲットの想定

歴史的建物の活用による利用者は、第一次的には町内とその周辺生活者(約1~2万人)であ

るが、それに依存することに展望は見出せず、広く観光客を呼び込むことが不可欠である。

町内で最近できた新しいタイプの観光施設(ゲストハウス等)の利用者の傾向をもとに、最もタ

ーゲットとして厚い層を圏域から2分類する。いずれも年齢は、「歴史体験」「くらし体験」を前

提とすることからも、40代~60代のシニア層、少人数グループ、家族連れ、女性グループがメイ

ンターゲットと考えられる。

そのようなターゲットのニーズに対応する歴史的建物の活用策が求められる。

(1)周辺地域

尾道・三原・福山・今治等、1時間圏、日帰り都市圏からの誘客(人口約82万人)を一次圏と

想定する。

(2)関西地域

大阪・神戸・姫路等、主に山陽本線、中国自動車道沿いの大都市住民(人口約475万人)を二次

圏と想定する。

今治・周辺

(約 20万人)

三原・尾道・福山

(約80万人)

上島町・周辺

(1~2万人)

大阪・神戸・姫路等

(約500万人)

11

Page 16: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

6.歴史的建物を生かす観光プログラムの要素

単体としての歴史的建物活用とあわせて、周辺の自然、まちなみやサービス面での高い質の維

持、交流・体験機会づくり等を組みあわせることで、独自で多彩なプログラムを構築する。

7.「尾道観光」との連動に力点を置いた取り組み

(1)尾道からは、バス、車で1時間ほどで、来町できる至近距離にあり、尾道を拠点とする立ち

寄り観光、あるいは尾道プラス上島町というプログラムが成立しうる。

(2)尾道は近年観光客が増えており、約675万人(2015年)と、前年比5%増で、国内観光が停滞

するなかで7年連続の増加。特に外国人観光客が約21万人(2015年)と、前年比約63%増と急

増、台湾6万人(28%)をはじめ、アメリカ2万人(10%)、中国、オーストラリア、フランス、

イギリスと各国から1万人以上集めている。

(3)尾道水道に面した古い市街地が日本遺産に認定されたことに代表されるように、尾道の集客

魅力は、歴史あるまちなみ、建物と、その新しい多様な活用に最大のポイントがある。

(4)上島町の歴史あるまちなみ、建物は、観光客の志向性としてそれらの延長線上にあるもので、

同時に、島、海浜、港という尾道の市街地にはない要素で、誘客の可能性を持ちうる。

上記のような好条件を生かすためには、尾道―上島の観光プログラムの作成と情報発信、尾道

の観光関連機関・施設との連携、ネットワーク化といった、すぐにでもできることから取り組む

ことが求められる。

風情、落ち着きのある空間

とともに過ごせる豊かな時間

島と島に関わる歴史・文化

の体験、体感

建物周辺のまちなみ、緑、

海の風景を楽しみながらの

散策、憩い、休息

港、海辺と海、空、朝陽、

夕日等、自然と一体の暮らし

の体験

都会では味わえない島らし

く、上質な「飲食」と「サービ

ス」

「島の人たち」との交流 、

対話、情報共有

上島町独自の歴史・文化

のアレンジ・提供

島を生かす体験・交流・

サービスの高質な提供

歴史的な空間

そのものの持つ魅力

上島町における

歴史的建物を生かす

観光プログラム

12

Page 17: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

4.景観・歴史的風致形成推進事業

(1)対象とする具体事業

具体事業としては、上弓削地区、岩城地区において、歴史的建物のうち保存・活用が可能なも

のを抽出して、それぞれの保存・活用の意義と整備方針を検討する。

また両地区に共通する事業として、まちなみ形成の一角を成す公共空間(道路、広場、サイン

計画、駐車場等)の修景整備が求められる。

歴史的建物の保存・活用の方針は以下のとおりである。

1.対象とする建物

数多く存在する歴史的建物のすべてを短期間に保存・活用することは現実的とは考えられない

ことから、優先性についてのガイドラインを以下のとおりとして事業対象を選定する。

(1)あまり分散させずに「町あるき」が楽しめる範囲内に集約して分布することにより、利用意

欲を高め、集客性につなげる。

(2)地域の歴史・文化の「物語性」を表現できる建物を重視し、外観とともに「歴史の追体験」

を取り入れる。

(3)各時代の建築様式、意匠を良く残している建物群により、エリアそのものが「建築ミュージ

アム」としてのテーマ性をもたせる。

(4)空家化や未利用の部分が多く放置することに問題があるものを優先させて、エリアとしての

歴史性・連続性を保つ。

以上の基準に合致する建物を両地区において検討した結果、次のような建物が抽出された。

〈上弓削地区〉 約10件

〈岩城地区〉 約5~6件

2.保存・活用の方針

建物の保存・活用にあたっては、事業目的に沿って、次のような原則をもって取り組むこととする。

(1)対象とする建物が本来持っている歴史的な外観意匠を原則として残し、必要に応じて復元する。

(2)内部空間については、活用方法により必要な部分は変更、改修するとともに、可能な限り建

物本来の姿を残し復元する。

(3)活用上必要な場合は、一部除却あるいは増設する。

(4)地域住民の生活の利便性を高めるとともに、外からの観光客(外国人含)の利用を促し、来

訪者と住民のコミュニティの場となるような活用とする。

3.有効な活用例

「上島観光」を新たな方向で展開するうえで、もっとも有効と考えられるのは、「島の歴史・文

化・産業」を今に伝える、豊かに存在する建物群である。そこに「ニューツーリズム」の要素を

どのように取り入れるかがまず問われるところとなる。その例示として、以下のような要素を挙

13

Page 18: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

げることができる。

(1)飲食・サービス

歴史的建物と海を感じながら、屋内、屋外両面から高感度な空間の中で、手づくりで質の高い、

新鮮で安全な地元食材をメインとする飲食・サービスの提供。

(2)物販

地域独自のレモン、塩、ハチミツ、海産物等のアレンジ、顧客を引きつけるパッケージととも

に、「自分のためのお土産」になるデザイン性の高い手づくりグッズの制作・販売。

(3)宿泊

宿泊形態・ニーズの変化に対応して、「ゲストハウス」「オーベルジュ」「民泊」「農家宿泊」「グ

ランピング」等、多様でカジュアルな、歴史的建物と島らしさを生かす、温かい心のこもったサ

ービスの滞在施設。

(4)その他(時間消費型施設群)

「ゆっくり時間が流れる」「海と空の空気感、時の移ろいを感じる」ような場を、歴史ある空間

とともに味わえるカフェ、ショップ、ギャラリー等の複合施設、あるいは近隣施設として展開。

●ゲストハウス

いろんなケースを含むが、ここでは比較的安価に泊まれる、素泊まりまたは朝食付(B&B)

の宿泊施設で、ホテル・旅館にはない小さくてもお洒落な空間、コミュニティスペースが用意

されているところ。上島町では平成28年佐島に1軒オープンしている。

●オーベルジュ

フランス発祥で、郊外や地方にある宿泊設備をそなえたレストランを指す。日本におけるオー

ベルジュはフレンチの一般化とともに普及したが、今では日本料理や世界各地の料理を提供す

る多彩なスタイルが登場している。

●グランピング

世界的に新しいアウトドアレジャーのスタイルとして注目されている、「自分たちでテン

トを張ったり食材の用意をしなくても、気軽に優雅にキャンプが楽しめる」ところ。グラマラ

ス(glamorous)とキャンピング(camping)をあわせた造語。

14

Page 19: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

■上弓削地区整備計画図

15

Page 20: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

■岩城地区整備計画図

16

Page 21: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

(2)事業毎の事業内容、まちの魅力創出・地域活性化の促進効果

1.2地区 共通事項(公共空間整備)

1)道路の美装化・街灯の整備

現状は大部分アスファルト舗装で、街灯もついていないことから、建物との不調和がみられる。

歴史的景観に調和するように、路肩を石張りで押さえ自然色舗装とするとともに、夜間の安全性、

まちなみ演出に役立つように、和風レトロデザインの街灯又は門灯、ガーデンライト等を設置す

る。

2)サイン・案内板の整備

各地区ごと、各建物・ポイントごとに、訪問客にその意義、価値が十分に伝わるように説明版

を設置するとともに、「町案内」「方向指示」で町あるき観光を促す案内板等を、歴史的な景観に

調和する統一したデザインで制作・設置する。

3)電柱地中化

せっかくの歴史的な景観が、電柱・電線類によって調和を欠く結果となっていることから、そ

れらの地中化について検討する。幸い国では最近、「電柱地中化推進法」が施行され、狭い道路(京

都では幅員2.5m前後の先斗町で実施計画)での技術開発も進んでいる。

17

Page 22: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

4)広場の修景、整備

地区内にある未利用の民間空間、公共空間等を活用して、歴史的な景観に調和する意匠の広場

を計画、整備することで、防災空間としての機能とともに、地域住民の憩いの場として、観光客、

来訪者の休憩、交流の場として生かすこととする。

5)駐車場の修景、整備

外からの訪問・観光客の多くは車利用である可能性が高いこと、また地区内に車進入は最小限

にして、安心して快適に歩いて楽しめるようにする必要があることから、まちなみに合った駐車

場整備が求められる。特に上弓削地区では、近くに駐車スペースが少ないことから、低未利用地

の活用による駐車場整備が必要とされる。

以上の事業を、周辺に集積する歴史的建物の保存・活用と一体的に行うことにより、点として

の「建物効果」から面としての「地区効果」に進化させることが可能となり、回遊性、集客力の

向上、そして地区における観光客、地域住民の滞在時間の延長につながり、ひいてはそれが経済

効果を高めることが期待できる。

18

Page 23: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

2.空家等を活用した魅力拠点づくり――上弓削地区

1)菅家

昭和初期のものと想定される木造2階建で、幅広い縁側に典型的に表されているように、豊か

な暮らしぶりが伝わる建物である。

保存状態も良好で、高台にあり眺望が良いことから、老朽化が進行しない早い機会に保存・活

用の方向性を固めることが望まれる。

そのことにより、海、港と一体の地区である実感が伝わり、地区イメージの向上効果につながる。

2)田頭家(江戸期)

江戸期創建とされており、当地域では最古の部類のものと考えられる。主屋は消失しているも

のの、通りに面して蔵、重厚な塀をめぐらし、屋敷構えを見せており、元庄屋の家と伝えられる

ことからも、当地域にとっては失ってはならない貴重な存在である。

空家となっているが、管理者も明らかであることから、保存の上、広い敷地、蔵も含めて多様

で記念性のある活用が必要とされる。

そのことにより、地区の歴史性を江戸期に遡って追体験でき、地区の「物語性」に厚みを増す

ことにつながる。

19

Page 24: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

3)澤田家(明治28年頃)

築120年とされており、よく当時の伝統的様式を引き継いでいる。置物や調度品を含め、内部空

間の造りも良く、質の高い歴史的建物であるが、すでに空家化しており、復元・保存の上活用が

求められる。

そのことにより、漁港、港町独自の路地空間の形成に寄与し、地区の回遊性を高めることが期

待できる。

4)宮畑家(明治末~大正初期)

築100年前後(明治末~大正初期)の建物といわれており、保存状態も非常に良く、最近になっ

て若い世代による手づくりパン・菓子・カフェとして修理・活用されていることから、登録有形

文化財としての登録手続みある。古民家再生・活用の好事例として評価できる。

この事例を、より活用頻度を高め情報発信することにより、地区の活性化の先導役としての役

割が発揮できる。

以上を当面の事業箇所としているが、その他の建物についても、今後継続して活用の検討を行

う候補として残す。

20

Page 25: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

5)小林治家

建築時期は定かではないが、中2階の形式から明治期以前と想定される。1階庇上に残る「小」

の字の模様や1階腰のなまこ壁などの意匠に、この地方性がよく表現されている。

建具類も含めて保存状態も良く、立地もまちの中心部に位置することから、シンボル的な建物

としての保存・活用が望まれる。

6)橋本家(大正末頃)

築80~100年(大正期頃)の建物とされており、外観の腰になまこ壁が残されており、当地域の典型的

な町家様式の一つとして注目される。

丘の上にあり眺望も期待されるが、雑木により見晴らしが妨げられており、外構も含めて整備・活用が

望まれる。

21

Page 26: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

3.空家等を活用した魅力拠点づくり――岩城地区

1)岩城郷土館(昭和56年修復)

1500年代以来、三浦家の邸宅として引き継がれた名門であり、藩政時代に伊予松山藩の島本陣

が置かれた。三浦家から岩城村が寄贈を受け、現在は町の公共施設として、郷土館に利用されて

いる。

資料として、元の姿に近いと想定される明治8年の図、町に移管された昭和56年頃と想定され

る図、そして現況図がある。現況は、元の姿に復元されたといわれるが、かなりの改変が加えら

れている。

また、改変部分の復元のみでは建物として成立しにくいことから、仮に「復元」するのであれ

ば、少なくとも現況と同規模(約200㎡強)の建物の追加、場合により改変部分の解体、除去(約

40㎡)が必要となる。

これらの工事が、費用対効果から見て妥当かどうかの検討が必要とされる。そのことを含めて、

今後の保存・活用の方法として、以下の選択肢が考えられる。

①現況建物のままで、より多くの人が訪れるような、集客力のある活用をする。

②現況建物はそのままで、一部復元増築(西側前面の3~4室、50~60㎡)し、新しい活用方法

を取り入れる。

③②のケースは、本来復元する部屋が土間に面していることに意味があることから、土間(50~

60㎡)もあわせて復元し、新しい活用方法を取り入れる。

④全面的に復元(200㎡強)を行い、新しい活用方法を取り入れる。

上記の②~④のいずれの場合も、現況で改変部分(主に西側廊下)をそのまま残すか、除去する

か、という課題が残る。

現実的な対応策として、①と②の中間的な方法で、現況はそのままで、活用しやすい土間のみ

復元することが考えられる。

そのことにより、現状の展示・見学施設

としての限界を超えて、増築スペースに、

コミュニティカフェ・ショップ等を導入

し、集客力を大きく高めることが可能と

なる。

(詳細は後述の「モデル事業計画」)

22

Page 27: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

2)旧山形家住宅(昭和11年)

木造2階建の近代洋風建築であり、内外部とも良く原形を止めており、歴史的建物としての価

値はきわめて高い。当時無医村の昭和11年、医師を誘致するために村が建てたものであるが、山

形堯生医師が北海道から来島し開業、その後昭和56年の村営診療所開設まで医院として続いた。

現在は一般の居宅として使われる一方、医院の部分はほとんど元のままで使用されていない。

居住部分の利便性やプライバシーが守られる工夫を取りながら、洋風建築の特性を生かした活

用が望まれる。

そのことにより、地区をあげての「医療先進地」としての評価を得ること及び近代洋風建築の

存在を鮮明にすることで、「建築ミュージアム」としての価値を高めることになる。

3)旧郵便局(昭和4年)

木造2階建の総2階のデザイン、建築当時はブルーの塗装とされる外観の板張り、窓枠などに

洋風建築の要素を取り入れながら、屋根組みなど和風建築の要素も残す、典型的な和洋折衷様式

の建物である。昭和初期を代表する建築として貴重な存在である。

現在は空家となり、所有者は島外に居られるとされるが、建物は外見上大きな損傷、老朽化も

顕著とはいえない。その用途も含めて歴史的価値の高いもので、保存・活用策が求められる。

そのことにより、近代において和風建築と洋風建築の融合に努めた歴史、建築文化・技術の伝

統を伝えることになり、和風建築のみではない地区の文化的重層性を表現することができる。

23

Page 28: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

4)藤田家住宅

「岩城郷土館」の元当主であった三浦家の分家で、大正期から昭和初期と想定される近代和風

建築の典型的な様式を持つ。通りに立派な妻側を見せる妻入りの意匠も、当地域の建築史をたど

るうえで重要な意味を持つ。

外観の屋根、壁の仕上げ、窓・出入口といった開口部などもほとんど原形を止めており、保存

状態はきわめて良好である。

今は所有者は島外(伯方島)に居住されているとされ、空家となっており、和風建築の良さを

生かす活用が望まれる。

そのことにより、岩城地区における本陣・三浦家とのつながりが「可視化」され、地区の「物

語性」にリアリティを備える効果が期待できる。

5)伝・知新校跡地

明治維新後、政府により学制が制定されたのは明治5(1872)年であるが、それに先んじて明

治4年頃に私学知新館が開かれたとされている。その後明治7年頃私塾から村立に移管され、「知

新小学校」となった。

この地は、岩城における先駆的な教育の場、発祥地としての意味を持つもので、その記念性を

大切にすべきと考えられる。

今は「門柱」にその面影を残すのみであるが、何らかの方法で「記念広場」としての修景によ

り、その教育史を引き継ぐとともに、

住民や来訪者の憩い、交流の場として

生かされてよい。

そのことにより、先進的な教育の地

としての認知度が高まる。

24

Page 29: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

以上を当面の事業箇所としているが、その他の建物についても、今後継続して活用の検討を行

なう候補として残す。

6)黒瀬電気店

現存する建物は、大正6年頃建設の岩城尋常高等学校の校舎といわれるが、定かではない。

昭和32年までに現在地に移築され、47年秋まで芋菓子工場に使用されており、建物内には芋菓

子工場の時の釜が残されている。

数少ない大正期の建物とすれば、地域における建物の歴史的連続性を保つうえで重要な意味を

持つし、芋菓子づくりの「現場」を見たり、体験する機会が少ない今、いずれ一部でも何らかの

岩城ならではの施設としての活用が図られる可能性を秘めている。

そのことにより、歴史的建築の時代がつながり、「建築ミュージアム」としての価値が高まる。

7)JA越智今治岩城支所農業倉庫

昭和8年建設の倉庫であり、米蔵3室が1棟として構成されている。農産物の規格統一などを

目的に建設されたもので、今も使用されている。昭和初期の産業倉庫としては珍しい存在であり、

保存の上、いずれ大きなスペースを生かして新しい活用の道が拓かれるものと期待される。

そのことにより、「産業遺産」が加わり、地区の持つ歴史・文化的価値の向上、歴史性に厚みを

加えることにつながる。

25

Page 30: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

(3)モデル事業計画――郷土館整備計画(案)概要

1.整備方針

(1)旧来の「旧本陣・三浦邸」の外観の基本的な枠組みに近づけるように、増築部分は、建物は

平入りとする。(既設部分は妻入り)

(2)外観デザインは、旧来の特徴である「大戸」を元の位置に復原し、1階壁面はできる限り元

の素材、意匠に近いものとする。

(3)既設部分を生かしつつ、「本陣」の特徴であった大きな土間を再現させる。

2.設計概要

1)用途

基本的にはカフェスペースとし、お土産物・特産品等のショップ利用も可能とする。

2)既設部分との関係

一体利用ができるように既設部分の両面廊下を土間に面するようにして、「縁側」としての空間

機能をもたせるようにする。

3)建物配置

①壁面位置

既設部分がセットバックして前庭を持っているのとは違い、旧来建物が道路近くまで建物壁面

があったことから、壁面線をほぼ旧来建物と同じ位置とする。

②間口

「大戸」が中央に来るようにして、旧来建物の土間部分を増築建物の間口に近づける考え方か

ら、間口を設定する。同時に4m程、隣地との間に空間がとれるようにすることで、建物・庭園の

メンテナンス機能、日常的なサービス空間を確保する。

③奥行

建物全体としての面積の適切さを考慮しつつ、既設部分の西面廊下との一体性を考えた奥行を

設定する。

④設備

トイレ(男子・女子兼多目的)及び厨房(ドリンク類中心、軽飲食を想定)を設ける。

⑤カフェ・ショップ

庭に開かれた明るい快適さ、土間らしい広がりを確保しつつ、「和」の空間の温かさ、柔らかさ

を備えるよう配慮する。

3.管理運営計画

1)公設民営方式

建物のハード整備は行政側が行い、建物の管理及びカフェ・ショップの経営は民間とする。

26

Page 31: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

2)民間導入の方法

管理・運営に民間を入れる方法としては、次のようなケースが想定される。

①既存団体(商工会、観光協会等)又は新法人(まちづくり会社等)に管理委託、指定管理を委

ね、そこがカフェ・ショップの運営も行う。

②指定管理等をした後、そこが民間事業者を募集、選定等により、カフェ・ショップの経営者を

導入する。

4.利活用方法と事業の促進

1)利活用方法

①既存部分の展示等の更新(上島町・岩城・三浦家にちなむ図書コーナーや昔の生活体験展示等)

による魅力づけを図る。

②増築部分と既存部分は一体利用とする。

③増築部分では、カフェ(ドリンク類、ランチ、スィーツ等)とショップ(上島町の物産・加工

品・土産・農作物等)の営業により、集客を図る。

④増築部分のスタッフは「観光コンシェルジュ」を兼ねて、館内はもとより、町内のガイドや観

光施設への誘導役を果たす。

⑤既存部分、増築部分の両方を活用して、イベント(アートイベント、コンサート、朝市、マル

シェ、文学講座、読書サロン、歌会等)企画により、来館者の増加を図る。

2)効果

①観光拠点とすることで、周辺及び町内への誘客を促す。

②先導的プロジェクトとなり、周辺の歴史的建物(数件)の活用にはずみをつける。

③集客効果(1日平均約100人、年間約3万人)により、活性化に寄与する。

④雇用創出(周辺プロジェクトも含めて20人程度)により、若い世代の定住・移住の動機づけとする。

⑤地域の交流・コミュニティの拠点とすることで、活性化まちづくりの持続化、発展につなげる。

27

Page 32: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

28

Page 33: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

29

Page 34: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

5.事業にあわせて実施する規制誘導策

(1)区域で実施する規制誘導措置の内容

1.景観法による規制誘導措置の可能性

上島町景観計画による「景観重点地区」として、以下のような「景観形成基準」を設ける方法

が考えられる。これは許可基準となるため、比較的ゆるやかな基準とし、規制措置としては「届

出義務」に意味をもたせる。

項目 景観形成基準(許可の基準)

位置、規模、

形態、高さ

・周囲の景観への悪影響や歩行者への圧迫感などを与えないよう配慮する。

・重要眺望点から海、港の眺望を阻害しない高さとする。

・広告物はできる限り表示等を控える。やむを得ず表示等を行う場合には、

歴史的な雰囲気と調和する規模や形態、高さとする。

色彩 ・海、港への眺望と調和する色彩及び配色とする。

・高彩度でけばけばしい色は避け、緑豊かな景観と調和し、歩行者や来訪者

に不快感を与えない。

・歴史的な雰囲気と調和する色彩に抑える。

・使用する色数はできる限り少なくし、バランスに配慮する。

・蛍光塗料や反射塗料は原則として使用しない。

素材、材料 ・汚れにくく質の高い素材、材料を使用し、できる限り歴史的な雰囲気と調

和する素材、材料を用いる。

照明広告類 ・周囲の景観に悪影響(光害)を与えないようにする。

・照明、広告等に使用する色数はできる限り少なくし、バランスに配慮する。

・フラッシュ式又はストロボ式の照明は使用しない。

・著しく点滅又は回転するもの、映像広告類は使用しない。

2.街なみ環境整備事業による規制誘導措置の内容

「景観形成基準」では、具体性を欠く面があるのを補完するために、地元による「街づくり協

定」により詳細基準を定め、法的拘束力は伴わないが、協定に沿った修景に対する支援により誘

導措置を講ずることとする。

30

Page 35: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

■別表 協定の内容

1.建物の高さ 1-1 高さ ・近隣と調和する高さとする(原則として13m、3階以下)

1-2 庇 ・1階に庇をつける

2.建物の形態 2-1 屋根

・勾配に配慮した傾斜屋根とし、日本瓦又はそれと調和

するものとする

2-2 壁

・できる限り壁面の位置をそろえる

・木・石・漆喰などの伝統的素材またはそれらと調和す

るものとする

2-3 開口部

(マド・戸など)

・住宅は伝統的様式又はそれらと調和するものとする

・店舗は伝統的様式と調和するデザインとする

3.工作物等 3-1 塀

・木・石・漆喰・瓦を使用するなど、和風塀またはそれ

と調和するもの、あるいは生垣とする

3-2 門 ・和風門とする

3-3 ガレージ ・和風と調和するデザインとする

4.色彩 ・落ち着いた色調とする

5.その他 5-1 自動販売機

・自動販売機の色は、黒・濃茶・白・灰色系を基調とす

る色彩とする

5-2 空地・

駐車場

・空地・駐車場は、生垣や和風塀など街なみと調和する

塀などで修景する

31

Page 36: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

(2)実施主体の確立

1.実施主体の考え方

1)新しい「主体」の必要性

計画を実施に移し、将来長く自立運営していくためには、行政や住民団体の取り組みとあわせ

て、事業能力を持つ新しい運営母体が有効となる。それは、ある程度の公的資金(国の交付金・

補助金含む)を投入しつつも、計画段階から事業化段階、管理・運営段階を一環して行う公共で

もない、民間団体・企業でもない「第三の主体」が必要となる。

2)各地で多くの実績

すでに、世界各国、日本各地ではそのような主体を「タウンマネージメント組織」「エリアマネ

ージメント組織」と呼び、多くの実績を挙げている。

具体的な事例は、後に示すとおり。

3)基本的な新しい運営主体の性格

①公益性

地域活性化やまちづくりの推進、歴史的建物・景観の保存・活用といった公益目的を中心に活

動する。

②経営力

自立する経営主体として、公的支援は得つつも、継続的に運営できる事業体として機能する。

③専門性

土地・建物の取得・借上げや有力な出店者・事業者を誘致、導入、あるいは直営するノウハウ

を有して、具体的な事業を展開する。多くの場合、内部にそのような専門性、人材を当初から持

っていないことから、外部の専門家の支援を得ることになる。

4)主な事業目的(一般例)

①ある観光・商業・サービス業集積区域の資産価値の向上

②その区域の観光・商業・サービス業の成長

③地域コミュニティ活動の活性化など

5)主な機能(一般例)

①プランニング機能 (マーケティング、事業計画、資金計画など)

②ディベロップメント機能 (土地・建物の利用権、改装、テナント誘致など)

③マネージメント機能 (建物の維持・管理、テナントの営業支援など)

32

Page 37: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

6)実施体制の全体像

上述するような運営母体をコア組織としつつも、実際には行政や民間の商工・観光団体、住民

団体等が連携し、外部・専門家チームの支援も継続して得られるような仕組みを構築することが

有効と考えられる。

その全体像は以下に示すとおりである。

2.上島町における実施主体の方向性

実施主体が、今後取り組むべき事業として次のような事項が想定される。

1)上弓削・岩城地区の実施プラン作成と地元合意形成(行政・専門家と共同)

まちづくりコンセプト、ストリートデザイン、街づくり協定策定などを確立するため、事例収

集、事業手法資料収集、勉強会、視察等を行いつつ、地元関係者の合意形成をはかる。

2)観光・まちづくり戦略プラン作成(行政・専門家との共同)

活性化まちづくり・観光戦略のターゲット、観光資源、観光プログラムなどを具体化し、その

実行に必要な受入れ態勢の整備(広報・案内・交通・飲食・宿泊機能など)。

3)保存・活用する建物の特定と借上げ等協議(行政、専門家と共同)

上弓削地区、岩城地区において、活用する各数件の建物を特定するため、建物所有者との協議、

借上げ条件等を明らかにしたうえで、利活用できる条件を整え、契約締結等に進める。

4)建物利用主体の募集選定(専門家と共同)

地域活性化に効果が大きいと考えられる活用方法(ゲストハウス、カフェ、レストラン、ショ

ップ、オフィス、交流施設等)を検討の上、実際に出店する利用主体を抽出するための方法の検

討、実施により利用主体を選定する。

事務局

専門家・アドバイザー

(タウンマネージャー)

まちづくり推進委員会

各種グループ

・団体

事業実施・支援

事業協力・参加

支援

行政(町) 新しいまちづくり法人

(実行のコア機関)

各種専門

分野 個人・企業 地域団体

33

Page 38: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

5)事業収支計画の検討・作成

各個別事業が、原則として独立採算で成立するための収支計画の作成、必要な補助金・融資等

獲得(申請書類作成、担当部門との協議含)を行うとともに、「実施主体」としての長期の収支が

成立し、継続的な運営ができる見通しを立てる。

6)上弓削・岩城地区における環境整備協力

建物の保存・活用とあわせて、エリアとしての魅力環境を創出するために、街なみ整備、道路・

広場・駐車場整備、サイン計画等について、行政が計画を策定する過程に参加、協力し、実施に

あたってはその一部の運用を担う。

7)その他(将来も含む)

①マップ、リーフレット、書籍、HP、フェイスブックなど広報手段の企画、制作、宣伝事業

②各種イベント、マルシェ・朝市などソフト集客事業の企画、実施

③特産品、観光土産品の企画、開発、製作、販売

④観光・交流施設、駐車場・交通施設など公共・公益施設の管理・運営

⑤地域住民・高齢者向け配食など生活支援サービス

3.実施主体の事例と組織形態

実施主体は、何らかの「法人格」をもって契約・資金調達主体となれることが望まれるが、そ

の法人としては ①第三セクターのまちづくり会社、②民間共同出資のまちづくり会社、の他 ③

一般社団法人、④NPO法人、などが考えられる。その主な事例は以下のとおり。

1)第三セクターの「まちづくり会社」方式

行政と商工団体、中小企業、個人などの出資による、独立性の高い新しい組織

①滋賀県・長浜市

㈱黒壁(1986)・長浜まちづくり㈱(2008)

②長野県・飯田市

㈱飯田まちづくりカンパニー(1998)

③兵庫県・丹波市(旧柏原町1万人)

㈱まちづくり柏原(2000)

④京都府・笠置町(人口1,400人)

笠置まちづくり㈱(2016)

2)民間共同出資の「まちづくり会社」方式

商店街、商工会、観光協会などと地元有志による共同出資会社

①京都府・福知山市

福知山フロント㈱(2015)、別に第三セクターの福知山まちづくり㈱

②鳥取県・米子市

34

Page 39: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

㈱法勝寺町(2008)、㈱元町(2012) 他3社

③神戸市・トアロード地区

㈱トアロードまちづくりコーポレーション(1998)

3)一般社団法人・NPO法人

観光団体や商店会、まちづくり協議会が母体となり、より組織力、経営力を高めるため法人化

①神戸市・新開地周辺地区

(NPO)新開地まちづくりNPO(1999)

②大分県・由布市湯布院町(旧湯布院町約1万人)

観光まちづくりセンター(NPO)、(一社)由布院温泉観光協会

③兵庫県・篠山市

(一社)ノオト(2009)

④広島県・尾道市

(NPO)尾道空き家再生プロジェクト

4.実施主体の確立に向けての手順

主体確立に向けては、これまでの経験、事例から、次のような手順を踏むのが妥当と考えられ

る。

1)(仮称)上島まちづくり実施主体検討会(3回程度)

まちづくり協議会、町、商工・観光団体、アドバイザー(専門家)により、検討会を設けて、

次のような内容について研究し、詰める。

①事業内容

②経営の成立性

③活用可能な補助・支援制度

④法人の形態

⑤設立スケジュール

2)(仮称)上島まちづくり法人設立準備会(3回程度)

上記の「検討会」を中心に、法人設立に関わる可能性の高い団体・個人による準備組織を設

けて、設立準備を進める。

①設立趣意書の立案

②事業計画作成

③設立説明会の企画・開催(一般公開)

④発起人グループの選考

35

Page 40: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

3)(仮称)上島まちづくり法人設立発起人会(2~3回)

法律上の設立手続きが可能な発起人会を設けて、法人設立に向けて取り組む。

①法人定款の作成

②法人設立・出資説明会(一般公開)

③出資者の確定、出資申込受付

④創立総会の招集、開催

⑤その他法人設立手続

(3)規制誘導措置によるまちの魅力創出、都市構造の集約化の促進効果

上弓削地区、岩城地区はいずれも元来上島町の主要な都市機能が集積し、密度高く人口が張り

つくエリアであった。しかし、高齢化・少子化とあわせて人と機能の転出傾向が続き、そのポジ

ションが弱まっている。

一方で、幸い歴史的建物が今も多く残され、今日では全国的にも少なくなりつつある歴史的ま

ちなみ景観を止めているという優れた条件を備えている。しかし、それらが今のままでは減少し、

空洞化の恐れも出てきている。そこで空家・空地化が進行しているなかで、今も多く残る歴史的

建物の利活用を行うこととあわせて、それらの存続と面としての魅力空間化をめざし、規制誘導

措置を実施することで、まちなみの連続性を確保し、居住機能・集客機能を向上させる。即ち歴

史的建物の空家・空地化に歯止めをかけるとともに、今ある空家・空地の活用により定住・移住

を促進し、集客力を高めることにより広域からの観光客を誘引することで、雇用創出、活性化の

効果が達成される。その結果、当該地区における都市機能の集結を生み出し、都市構造の集約化

につながることとなる。そのことにより、両地区は上島町における中心性を高め、上島町全域に

おける新しい都市機能の誘導を促すこととなる。

36

Page 41: 上島町景観・歴史的風致形成推進計画...上島町景観・歴史的風致形成推進計画・目次 1.上島町の概要 1 2.計画の目標・方針 5 (1)景観・歴史的風致形成推進区域の設定

6.事業スケジュール

生名島と岩城島をつなぐ岩城橋の完成が2021年度(平成33年度)に予定されており、上島町の

主要な島(弓削島、佐島、生名島、岩城島)が一体となる。このことにより、これまで実現が困

難であった移住・定住の促進、観光客の飛躍的拡大、地域産業の発展等が可能となるとみられる。

以上のことから、最も効果的な目標年次を2021年度と定めて、それまでの5か年計画とする。

計画に盛り込まれた事業を一時期に集中することには無理があるので、5か年に渡って、ほぼ均

等に事業化することで、実現性を高める。ただし、平成29年度(2017年度)は、制度にあわせて

実施条件を整えることや、建物の確定・調整及び実施主体の形成に重点を置く。

事業内容 平成28年度 29年度 30年度 31年度 32年度 33年度

計画

規制・誘導策

歴史的建物の

保存・活用

公共空間の

修景・整備

実施・運営体制

景観形成基準適用 計画策定

推進計画策定 実施計画策定

街づくり協定締結

運用

計画策定 事業計画作成、実施設計

保存・活用事業実施(年間 3件程度)

運営方針検討 実行主体確立

実行主体の運営

実施計画策定 地元合意形成 事業実施

37