現代の親子のカタチー友達親子の実態を探る 同志社大学 文学部...

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現代の親子のカタチー友達親子の実態を探る 同志社大学 文学部 社会学科 社会学専攻 12022075 滝井 麻友美 2006年1月23日 指導教員 立木 茂雄 現代の親子のカタチー友達親子の実態を探る 1

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現代の親子のカタチー友達親子の実態を探る

同志社大学 文学部 社会学科 社会学専攻 12022075 滝井 麻友美

2006年1月23日

指導教員 立木 茂雄

現代の親子のカタチー友達親子の実態を探る

1

学籍番号 12022075番 滝 井 麻 友 美

1. 序論

2. 先行研究の展望

2.1 友達親子の社会的背景

(1) 豊かな社会の成立

(2) 親密性

(3) 親の将来の不安

(4) 母親の高学歴化

2.2 友達親子とは

2.3 一卵性母娘

2.4 友達親子の定義

2.5 仮説

3. 方法

3.1 調査概要

(1) 調査対象者

(2) 調査の手続き

4. 結果

4.1 インタビュー

(1)共通の消費行動

(2)共通の趣味

(3)親子間の信頼関係

(4)「親」としての母親

(5)親子間の精神的満足度

4.2 FACESKG

5. 考察

2

要 旨

最近、友達親子が増えてきている。そして、この友達親子は、メディアでは、「親が子

どもを甘やかしているだけの親子関係である」とか「経済的依存のみでつながっている親

子関係である」などマイナスイメージで語られていることが多い。しかし、内閣府の調査

により、過半数の男女が友達親子を支持しているということが明らかになった。私は、本

当に友達親子は、メディアで語られているような親子関係なのであろうかという疑問をも

った。

そこで、私は、先行研究を参考に仮説をたて、8名の女性に調査を行った。その結果、友

達親子は、経済的依存のみでつながっているような単純なものではなく、多面的な親子で

あることがわかった。

1. 序 論

最近、友達親子が増えてきている。もちろん、昔ながらの権威的で近寄りがたい親もい

れば、子どもには無関心という放任の親もいる。多様な親子の形があるなかで、友達親子

が注目を集めている。友達親子という言葉を聞いたとき、想像するイメージは人によって

相当違う。成人した娘と見た目の若い母親が、同じような服を着て一緒に買い物をする姿

を想像するかもしれないし、子どもと一緒になってテレビゲームをしている親を想像する

かもしれない。その評価にしても、昔の権威主義的な親子関係からの解放ととらえ、歓迎

する人もいれば、親が子ども化して無責任になった証拠として否定する人もいるだろう。

友達親子という言葉はとても不思議である。友達というのは、選択的関係であり、気が

合ったり、趣味が同じであったりすることによって関係が結ばれる。気が合わなくなれば、

そこで関係は終わる。他方、親子は選択的関係というより宿命的関係であり気が合おうと

合うまいと親は親であり、子は子である。こう考えていくと、友達親子という言葉はある

種の矛盾があるように思える。奥の深い言葉である。

メディアでは、どう捉えられているのだろうか。図 1は、朝日新聞、読売新聞、毎日新

聞、産経新聞、大宅文庫、マガジンプラスで、友達親子について取り上げた記事のなかで

の友達親子の評価が、プラスイメージなのか、マイナスイメージなのか、どちらでもない

のかを検証した結果の文献の数をグラフに表したものである。

3

0

2

4

6

8

10

12

14

93年 96年 99年 02年 05年

友達親子の文献の度数分布

マイナス

どちらでもない

プラス

図 1 友達親子の文献の度数分布

図 1をみると、明らかに友達親子はマイナスイメージで語られていることが多いことが

わかる。親という存在は、本来は子どもよりも上に立って子どもを正しい生き方に導いて

いく存在である。友達親子の親は、自分の子どもが不道徳な行為をしたときに、果たして

厳しく叱ることができるのか。そういう存在だと甘えが生じるのではないか。親は、肉親

だからこそ冷たいことも厳しいことも子どものことを思って言わなければならないはずだ。

親子関係が友達のようになってきているから、マナーが守れない、自分勝手な人が増えて

いるのではないか。仲が良いのはいいけれど、親は子どもの友達ではなく保護者としての

役割を果たすべきであるという考えがマイナスイメージの主流である。

しかし、図 2 を見てほしい。これは、内閣府の国民生活選好度調査(2001 年)により

作製されたものであり、「あなたは、親子の付き合いも友人のような関係であってもよいと

いう考え方についてどう思いますか」という問いに対する回答者の割合を男女別にグラフ

に表したものである。

4

図 2 友達親子に対する肯定・否定の割合

親子の付き合いが友人のような関係になってもいいという考え方に対して、「全くそう思

う」・「どちらかといえばそう思う」の割合をあわせると、男女ともに過半数を占めており、

否定派を大きく上回ることがわかる。特に、親同居未婚者の女性は、61.5%を占めており

特に多いことがわかる。ここから、友達親子という親子の形が認められてきていることが

わかる。メディアでは、マイナスイメージで捉えられているのに、友達親子肯定派が過半

数を占めている。本当に、友達親子は、メディアで語られているように親が子どもを甘や

かしているだけの関係なのだろうか。これだけ肯定派がいるのだから、違うのではないだ

ろうか。

私の周りにも友達親子がいる。母親のことをニックネームで呼んだり、一緒に買い物に

出かけたり、洋服を共有していたりとさまざまである。そして、私自身も友達親子である

と思っている。しかし、メディアで捉えられているような否定的なイメージとは程遠い親

子ばかりなのである。友達親子は、親が子どもを甘やかしているだけの親子なのではなく、

もっと色々な面があるのではないか。もっと良い親子関係なのではないか。友達親子とは、

いったいどのような親子関係なのであろうか。その実態を明らかにしたい。

2. 先行研究の展望

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2.1 友達親子の社会的背景

友達親子が現代の親子関係の代表とはいえないが、ひと昔前に比べれば、友達的な親子

が増えている。友達親子が成立した社会的背景は、1 つではなく様々な背景があるとされ

ている。本節では、友達親子がどのような社会的背景のもとに成立してきたかを述べてい

きたいと思う。

(!) 豊かな社会の成立

『友達親子が語られる背景』を記した山田昌弘は、友達親子が成立するためには、豊か

な社会の成立という経済的条件を抜きにするわけにはいかないと言及している。

山田によると、戦前の大部分を占めた庶民の家庭では、暮らしていくので精一杯であっ

た。特に、農家や職人の家では、家族関係はまず労働組織であり、友人的な関係が許され

る場ではなかった。親には、労働組織のリーダーとしての権威があり、子どもは見習いと

して親に従い職業訓練を受けるという主従関係があった(山田 1997)。

戦後、産業の構造転換が起こり、農家や自営業が減少しサラリーマン家庭が増えた。夫

―父は外で働き、妻―母は家で家事という分業型家族が成立した。これによって、家庭は

仕事の場ではなくなり、子どもも家業の後継ぎではなくなった。親にとって子どもは、基

本的なしつけなどを除けば、生活の面倒を見、教育費を負担する対象でしかなくなったの

である。ただ、経済の高度成長期までは、男性(夫―父)は外で長時間労働に忙しく、電

化製品が普及するまでは、女性(妻―母)の家事負担は重く夫婦とも経済的に豊かになる

ことに忙しかった。そのため、子どもとの関係も世話やしつけや教育にかかりっきりで、

友人関係が成立するほどの余裕がなかった(山田 1997)。

友達親子の実態が伴いだしたのは、ベビーブーム世代が親となる 1970 年代頃である。

徐々に男性の労働時間が短縮し、週休 2日制も普及し、家電製品も普及することにより家

事が楽になる。主婦のパートが増える代わりに、その稼いだお金で子どもを習い事に行か

せる余裕ができる。気品的しつけの終了後の子どもの教育的部分は家庭の外部に委託する

ようになる。このように親に経済的余裕ができ、家族が教育の場でさえなくなったとき、

友達親子が成立する条件が整うのである(山田 1997)。

山田は、このような歴史を経て、子どもにとって親は、「お金を出してくれる存在」にな

りつつあり、親子が実質的にコミュニケーションするためには、お互い「友人」になるし

かなくなってきた。そして、親子が友達になれなければ、親子の関係はお金のみの関係に

なると言及している。

6

『消費社会の友達親子-子どもはなぜ消費者になれるのか』を記した宮本みち子は、現

代の子どもは、親に扶養される期間が長くなっているのに、経済力をもっている。このこ

とと、友達親子の成立には密接なつながりがあると言及している。つまり、青年は、基本

的な生活を親に保障された上でのより高い消費生活の享受を、アルバイトをすることによ

って可能にした。そのため、子どもは、消費者としてますます早熟化している。しかし、

社会生活の面からみても、日常生活の面からみても、青少年の未熟化はむしろ進んで、大

人になることができないでいる。経済社会のゆとりが、年若い消費者を作り出し、友達親

子を生み出した。また、消費市場では、大人と子どもの境界は完全に取り払われている。

例えば、飲酒、喫煙、化粧などが現在ではすべて解禁されている。つまり、親と子、大人

と子どもの消費のボーダレス化こそ現代の特徴であり、それが友達のような親子関係を生

む背景にある(宮本 1997 )。

また、『郊外が生んだ友達親子―その歴史と可能性』を記した三浦展は、消費社会の進展が

親子関係を友達化したと言及している。消費社会の人間観は、どうやってお金を稼いでい

るかで(=労働・生産)ではなく、お金を何にどう使っているか(=消費)によって人を

評価する。そのため、消費社会では、消費の主導権を握る主婦、それについで子どもが主

役となり、結びつきが強くなるのである(三浦 1997)

(2) 親密性

友達であるためには、「親しい」ことが前提である。現代社会では、権威や権力といった

言葉には人気がない。権威や権力は、友人の関係と対極にあるものなので、親しさと権力

は、同時に存在することができない。あくまで、親しさは対等の関係で生まれる。そのた

め、家庭が仕事の場、それゆえに何らかの上下関係がある場でもあった戦前には友達親子

は成立しにくい(山田 1997)。

戦後、家族は「親しさ」を追及する場であるという意識が広まった。すると、家庭の中

で権威のいる場がなくなる。家族の中で権威的であることは、親しさを放棄することを意

味している。権威と親しさを比較すれば、親しさをとる親がふえるのは自然な流れである。

まず、母―娘という関係のなかで、友達関係が強まる。日本では、母親は同性の子、つま

り自分の分身として育てる傾向がある。分身が成長すれば、お互いを一番わかりあえる親

友になってもおかしくはない(山田 1997)。

また、三浦展によると、団塊世代は、親に反抗することをアイデンティティにしていた

から、自分が親になったときに自分の子どもに対して厳しく接することに矛盾を感じてし

7

まう。自分は自分の親のように頑迷な人間になりたくはない。しかし、子どもを甘やかし

てばかりもいられないという二つの思いが生まれてくる。その結果、子どもに自由を与え

ながら、必要な時には適切なアドバイスを与えることのできる友達のような親が生まれた

(三浦 1997)。

(3) 親の将来の不安

友達は、いろいろな意味で力が均衡している 2人の間でなければ成立しない。親子の力

関係を歴史的にみてみると、前近代社会では、圧倒的に親優位であった。家業を背景に、

子どもは親に見捨てられたら生きていくのも難しかった。そして、医療が未発達で、長生

きする親が相対的に少数だったため、老後親の面倒をみるのは子どもの義務、舅・姑の介

護は嫁がみるという規範が有効だった(山田 1997)。

しかし、社会が近代化され、必ずしも親の職業を継ぐ必要がなくなると、親の権威は、

徐々に限定的になってくる。大人になるまでは、子どもは経済的に依存せざるを得ないか

ら、親の力が強いように思えるが、長寿化によって事態が変わってきた。子どもが親に依

存する期間よりも、親が子どもに依存する期間の方が長くなるのである。長期的な人生を

見据えた時、子どもとよい関係を保たなければ、将来見捨てられてしまうというリスクが

生じる。今では、長生きする親が多くなり、その上に少子化で、世話する子どもは相対的

に少なく、様々な条件が重なって親の立場が弱くなっている。つまり、現在の経済的依存

と、将来の世話への期待が相対的に均衡しているから、見かけ上対等な友達親子が成立し

ていると考えられる(山田 1997)。

(4) 母親の高学歴化

『高学歴社会と友達親子』を記した庄司洋子は、女性の高学歴化が友達親子を成立させ

る背景にあるのではないかと言及している。子育ては、夫たちが身を置く学歴社会のまさ

に対極にあたるものである。そのため、子育ての領域で、学歴で差異化をはかろうとする

ことは難しい。子育てに不慣れな専業主婦にありがちな、母子カプセルの中の不安・孤独・

疲労は、むしろ高学歴の専業主婦にもっとも顕著なものである。なぜなら、こうした疎外

感は夫や、友達だった同年代の女性達が、学歴という切符のおかげで大人社会で元気に働

いているのに、自分ばかりが子どもに閉じ込められていると感じるときいっそう大きくな

るはずだからである。このような状況下で、友達親子は高学歴の専業主婦が遭遇する試練

をうまく乗り切るための子育ての戦略の 1 つとして成立した。高学歴女性には、「家族の

一員」であるよりも「個人」でありたいという傾向が強く、また、家庭に対して「情緒面」

8

での期待が極めて大きい。つまり、妻や母としての「家族役割」よりも自分との心のつな

がりを確認できる「友達」的な役割を求めているのだ。子どもにとって母親は同じ経験を

してきた学歴社会の先輩であると同時に、親子共学といわれる受験戦争のなかでは仲間で

もある。つまり、こどもにとって疎ましいか有り難いかは別として、理解者であり家庭教

師にもなれる母親が存在するということである。これを利用して、母親は、子どもを学歴

社会の成功者に導くという戦略を立てたのである(庄司 1997)。

2.2 友達親子とは

友達親子とはどういう親子関係であるかということについても、様々な見解がある。宮

本は、親の経済力を背景に、友達づきあいと変わらない楽しい時間を過ごす親子であり、

一方的な供給と消費によって成り立つ依存の関係であると言及している。また、三浦によ

れば友達親子とは、生産を媒介としてではなく消費を媒介として結びつく親子であると言

及している。このように、消費行動のみによってつながっている親子ととらえられている

ことが多い。

『友達親子の「気がね」』を記した井戸ゆかりによると、友達親子はタテ社会親子よりも

お互いを理解しやすい関係にあり、親子の間で共有できるものが多く、子どもの気持ちを

汲もうという姿勢が親にある。しかし、そのような良さがある反面、精神的に自立できな

い子どもを作り出したり、親としての自信のなさや不安、子どもから嫌われたくないとい

う思いから気がねをして本音を言えないでいる。また、子どもの方も親を傷つけたくない、

自分が傷つきたくない、今の関係を続けていたほうが楽であるなどの理由から本音をださ

ない。友達親子は親子間に従来の上下関係は見られず、親子の境界がないので、周囲には

お互いを理解した仲の良い親子にみられがちだが、実際は友達親子を演じているに過ぎな

い。友達親子にはよさと危うさの両面があるのである(井戸 1997)。

また、庄司は次のように友達親子について言及している。乳幼児期という早い段階から

の友達親子関係は、やがてくる受験期に向けての母親としての準備体制づくりであるだけ

でなく、それを終えた後にくる親離れ・子離れ期への警戒を含んでいる。つまり、親らし

い親になればなるほど、親子相互の自立や親の役割の引き際を意識しなければならなくな

るのであり、それをおそれる高学歴の母親は、いずれ引退を強要されるような親子関係を、

より対等で持続可能性を残すきょうだい・恋人・友達の関係にあらかじめ置き換えておこ

うとする。それが、友達親子であり、子どもと長く付き合うための現実的な知恵の産物な

9

のである(庄司 1997)。

2.3 一卵性母娘

一見、母と娘だとはわからない姉妹のような年の違う友人のような 2人組みが、街で買

い物しているのをよく見かける。母と娘がまるで友だち同士のようにおしゃべりをし、お

しゃれを競い、洋服を取り替え、アクセサリーを共有する、一緒にコンサートに行くよう

な明るくて幸せそうな母娘…友達親子という言葉を聞いたとき筆者は、このような像をイ

メージする。このような親子のことを、『一卵性母娘な関係』を記した信田さよ子は、一卵

性母娘と呼んだ。子どものなかでも母と同性である娘は、幼少時より母と密着しがちで、

母からの影響を強く受ける存在である。そんな母と近い存在の娘が、そこそこ経済力もあ

るお母さんといっしょにショッピングをする、そして一番話の分かり合える同志としてい

つもそばにいる。一卵性母娘は、母親は中年期を楽しく過ごし、娘も楽しく過ごし、同じ

女として語り合える先駆けかもしれない。あるいは、父親不在の中で、母と娘が女同士で

生き抜くたくましい姿かもしれない。そして、女たちが自分が今おかれている状況の中で、

より幸せであろうとしてたくましく生きようとして出現したものである(信田 1997)。

このような幸せそうな一卵性母娘を「病的な母子密着」「母娘の異常密着」と病理的にと

る説もある。これは、一言で言えば「母親が娘を思い通りに支配するのが一卵性母娘」と

いうことである。自分のできなかったことを娘にやらせる、そして過剰な期待をかけ、娘

にプレッシャーをかける、結果的に娘の人生にべったり入り込んで娘をだめにする。まさ

に「娘は、母親の私がいないと何もできないだろう」という思い込みで成り立っている母

娘関係をさす。物理的・生物学的には分離できても心理的には別れられない密着した親子

関係である(信田 1997)。

2.4 友達親子の定義

友達親子の明確な定義はない。先に述べた先行研究のなかにも、定義はされていなかっ

た。先行研究では、否定的に述べられていることが多い友達親子であるが、本論文では、

友達親子を「親が権威的にではなく、子どもと対等な立場で接している親子」と定義する

ことにする。また、信田は一卵性母娘の特徴として、①いっしょに出かけることが多い。

(買い物、旅行、食事、感激、習い事など)②母親がスポンサーである。③服やアクセサ

リーなどを共有する。の以上 3点を挙げている。これを、友達親子の特徴として定義に付

け加えることにする。

2.5 仮説

10

友達親子は、経済的にゆとりがでてきて、子どものための支出が増加した結果生まれて

きたものであるとか、経済的なつながりのみによって成立している装いの親子関係である

とか、子どもを母親の思い通りにするために、友達関係を結んでいるといわれているが、

本当にそうなのであろうかという疑問が沸いてきた。筆者自身の親子関係や、周りの友人

の親子関係をみてもそのようには見えないからだ。そこで、このような疑問を踏まえて、

以下の 2つの仮説を立てた。

①友達親子は、親が子どもに与える経済援助によって、子どもは消費者として大人と対

等な地位を許されたことによって生まれたので、経済社会のゆとりが失われた時生き残る

ことができないだろう(宮本 1997)といわれているが、本当にそうなのか。消費活動の

みによってつながれているわけではなく、深い内面でのつながり・親子間の精神的満足が

あるはずである。

②友達親子は親子間に従来の上下関係は見られず、親子の境界がないので、周囲にはお

互いを理解した仲の良い親子に見られがちだが、彼らは友達親子を演じているに過ぎない

(井戸 1997)といわれているが、本当にそうなのか。友達親子には、共通の趣味をもっ

たり、一緒に買い物をしたりという友達としての役割と、悪いことをしていたら叱り、道

を間違えそうになったら意見を言うといった母親としての役割(上下関係)の二面性があ

るのではないか。

この 2つの仮説を検証することによって、曖昧な友達親子の実態が明らかになるのでは

ないかと考える。

3. 方 法

前章の先行研究から、友達親子は様々な否定的なイメージで捉えられていることがわか

った。そこで、前章で述べた仮説を実証するために、私は調査を行った。

3.1 調査概要

(1) 調査対象者

仮説を実証するために、8 名の 21~23 歳の女性にインタビューを行った。このインフ

ォーマント達は、前章で私が定義した友達親子の定義「親が権威的にではなく、子どもと

対等な立場で接している親子に適合し、かつ前章で述べた一卵性母娘の 3つの特徴①いっ

11

しょに出かけることが多い。(買い物、旅行、食事、感激、習い事など)②母親がスポンサ

ーである。③服やアクセサリーなどを共有する。のどれかに当てはまった女性である。

(2) 調査の手続き

インフォーマントそれぞれ 1時間半~2時間程度インタビューを行った。以下の質問表

に沿って質問をしていき、できる限り自由に語ってもらった。

表 1 インタビュー調査の調査内容と質問

調査内容 質問文

①母親と一緒に買い物に行きますか

②どうして母親と一緒に買い物に行くの

ですか。

③一緒に買い物に行った時、お金をだして

もらいますか。

母親に友達としての役割があるか。

買い物をする事だけが目的なのか。

④金銭的援助がなくても買い物に行きま

すか。

⑤共通の趣味はありますか

⑥どのような趣味ですか。

母親と子どもの間に信頼関係があるか。 ⑦母親とよく話をしますか。

何でも話せる間柄なのか。 ⑧どのような話をしますか。

⑨悩みを相談しますか。

⑩どのような悩みを相談しますか。

⑪どうして母親に悩みを相談するのです

か。

⑫母親と過ごす時間は多いですか。それは

大切ですか。

⑬母親との間に気がねや遠慮はあります

か。

母親に親としての役割があるか。 ⑭(幼少期の)しつけはどのようなもので

したか。

12

⑮母親を尊敬していますか。

⑯あなたにとって母親はどのような存在

ですか。

親子間の精神的満足度は高いか。 ⑰母親との関係に満足していますか。

⑱どのような点において満足しています

か。

⑲将来自分が母親になった時、自分の母親

のようになりたいですか。

また、同じ 8名の女性に FACEKG を配布した。以下の質問に対して、「はい」・「いい

え」で答えてもらい、友達親子を、円環モデルに照らし合わせ、家族のきずな・かじとり

がどうなっているのかを調査した。ここで、円環モデルと FACEKG について少し説明を加え

ておく。円環モデルとは、米国における過去 40 年間にわたる家族研究の成果から演繹的に

構築された理論仮説である。円環モデルは、きずな・かじとり・コミュニケーションとい

う 3つの次元から家族機能の健康度を評価している。システムとしての家族の健康度・不

健康度を測るため、「家族成員間の心理的・社会的な距離」における概念を統合して、「家

族のきずな」の次元と名づけた。このきずなの尺度としてきずなの水準が極度に高い場合

を「ベッタリ」、きずなが中庸ではあるが、ある程度高い場合を「ピッタリ」、同様に中

庸ではあるが、きずながある程度低めの場合を「サラリ」、きずなが極端に低い場合を「バ

ラバラ」と表す。また、状況の変化や成員の変化・成長に応じて夫婦・家族システムを柔

軟に変化させる能力を「家族のかじとり」次元と名づけた。この尺度として、極端に高い

場合を「てんやわんや」、かじとりが中庸ではあるがある程度高い場合を「柔軟」、同様

にかじとりが中庸ではあるがどちらかというとやや固めの場合を「キッチリ」、かじとり

が極端に固い場合を「融通なし」とした。FACESKG は、この円環モデルに基づくが、項目

は独自に作られたものである。きずな・かじとり両次元について独自に項目を用意し、予

備尺度を作成し関西学院高等部の生徒とその家族に実施し、その結果をもとに厚生概念妥

当化パラグラムに従って項目の精選を行い最終的に 52 項目からなる質問紙を開発したも

のである。

13

表 2 FACESKG-16 の質問項目

概念 項目

かじとり問題が起こると家族みんなで話し合い、決まったことはみんなの同意を得たことである。

家でのそれぞれの役割ははっきりしているが、皆で補い合うこともある。

困ったことが起こったとき、いつも勝手に決断を下す人がいる。

我が家ではそれぞれの家での役割を気軽に交代することができる。

家の決まりは皆が守るようにしている。

我が家は皆で約束したことでもそれを実行することはほとんどない。

問題が起こると家族みんなで話し合いがあるが、物事の最終決定はいつも決まった人の意見が通る。

我が家では家族で何か決めても、守られたためしがない。

きずな たいがい各自好きなように過ごしているが、たまには家族一緒に過ごすこともある。

子どもが落ち込んでいる時はこちらも心配になるが、あまり聞いたりしない。

悩みを家族に相談することがある。

家族はお互いの体によく触れ合う。

家族の間で、用事以外の関係は全くない。

家族のものは必要最低限のことは話すが、それ以上はあまり会話がない。

誰かの帰りが遅い時には、その人が帰るまで待っている。

休日は家族で過ごすこともあるし、友人と遊びに行くこともある。

4. 結 果

4.1 インタビュー

前章で述べたように、質問表に沿って 8名の女性にインタビューをおこなった。以下に

インタビューによって得られた結果を載せることにする。

(1)共通の消費行動

今回のインタビューでは、買い物に特定した。母親に「友達」としての役割があるかど

14

うか、経済的なつながりのみによって成立している親子関係なのかを調査した。質問表の

①母親と一緒に買い物に行きますか。②どうして母親と一緒に買い物に行くのですか。③

一緒に買い物に行った時、お金をだしてもらいますか。④金銭的援助がなくても買い物に

行きますか。にあたる質問をした結果は次のようになった。

①母親と一緒に買い物に行きますか。②どうして母親と一緒に買い物に行くのですか。の

結果

F:似合うものは、似合わんってはっきり言ってくれるから。お母さんに言われた事は納

得できるし。金額が高いときに買うかどうか迷っていたときとかも、自分の立場に立

ってアドバイスしてくれるから、相談しやすい。自分の服は自分で買うし、お母さん

にお金をだしてもらうわけじゃない。

G:うん、行く。友達やったら、自分の行きたい店ばっかり連れまわすことはできへんけ

ど、お母さんやったら気長に付き合ってくれるし、気を使わないでいいから。服の趣

味が似てるから、お互いの行きたい店に行ってても見てて楽しいし、お互いの服を見

立てたりアドバイスしあったりしてる。私が、高校卒業した後ぐらいから、お母さん

はファッションとか美容に懲りだして、私に流行とかを聞いてきたりする。もしかし

たら、私よりもおしゃれ好きかもしれん。だから、刺激もうけるし。

H:うん、行くよ。お母さんは、ファッションに興味があるんやけど店をあんまり知らん

から、教えてほしがるねん。だから、私が行く店に連れて行ってあげたり、教えてあ

げたりする。お互い服の趣味も似てるから、一緒に見てても楽しいし。似合うものを

お互い見立てるっていうか。似合わんもんは似合わんってお互い遠慮のないアドバイ

スをし合えるし。あとは、気を使わず自分の行きたい店に行ってゆっくり買い物でき

るから行く。

友達と買い物に行くよりも、気を使わなくてもよく、遠慮のないアドバイスをしてくれ

て、自分に似合うものを買うことができるからという答えが多かった。また、自分と母親

が同じような服の趣味で見立てあったり、店を教えてあげたりするという行動から、「友達」

のような母娘関係、そして心の若いお母さん像が見えてきた。

③一緒に買い物に行った時、お金をだしてもらいますか。④金銭的援助がなくても買い物

に行きますか。の結果

15

C:ほとんどない。母はすぐ買ってあげるっていうけど、私もバイトしてるし、自分のは

自分で買いたい。母は人にプレゼントとかするのが好きでかってあげたくなるらしい。

あとは母は母子家庭で育って母親によくおねだりして何でも買ってもらってたから、母

親は子どもに買ってあげないとって思うみたい。

E:一番大きい理由はやっぱり気があうし、楽しいからやな。別に服の買い物だけ一緒に

行くわけじゃないし。スーパーだってよく行くし、この前は、食器棚を見に行きたい

からいっしょに行こうって誘われたから行ってきたし。お母さんも私のことを友達感

覚で誘ってると思う。

G:お母さんと買い物にいくときは、朝から出発して一緒にランチをするねんけど、その

時とかにいろいろ喋るのが楽しいから行くっていうのもある。お互い自分の予定もい

っぱいあったり、家には妹とかお父さんがいてあんまり 2人で話す機会っていうのが

多くないから、お母さんとのコミュニケーションやなあ、私にとっての買い物は。

たまにお母さんに買ってもらうことはあっても、買ってもらうことを目的にしてお母さ

んと買い物に行ってるわけではないという結果がでた。洋服を買いに行く時だけお母さん

と行くのではなく、スーパーなどにも一緒に行くことからもわかる。単純に気が合って楽

しい、そしてコミュニケーションの手段になっているのだ。

(2)共通の趣味

三浦は、共通の趣味をもつことが、友達親子を成立させる重要な条件であると言及して

いる。質問表の⑤共通の趣味はありますか。⑥どのような趣味ですか。にあたる質問をし

た結果それぞれの親子が多様な共通の趣味をもっていることがわかった。

A:テレビ。私家にこもってることが多くて、テレビ見るの好きやねんけどお母さんもテ

レビ好きやから、一緒に見てることが多いかな。ドラマとか、歌番組とか。お母さん

の方が芸能人のことと詳しいから教えてもらう。お母さんはジャニーズ好きやねん。

あとオダギリジョー。あとは読書も好き。推理小説とか話題本とか。読んで面白かっ

たのを教えあう。

E:ハーブティーとかお茶を買ってきて、色々ブレンドして飲んだりとか。手作り石鹸を

作ったり化粧水を作ったりしてる。そういうことが載ってる本も共有したりするしな。

アロマオイル調合したり、スクラブとかゴマージュを作ったりもするな。お母さんは

凝りだしたらとことんやる人やから。そういうとこが、お母さんと似てるねん。ちょ

っと前は、パン作ったりしてた。パンを焼く機械も買ったからなあ。あとは、旅行に

16

よく行く。今度、お母さんと 2人でエジプト行くし。温泉もいくなあ。お母さんの趣

味が多いから。洋裁とかケーキ作りとか色々教えてもらえるねん。

F:うん。今は、韓国映画を 2人でよく見たりしてる。休みの日にいっぱいビデオを借り

てきて。あとは、ご飯を一緒に食べに行ったりすることが多いかな。早起きして、モ

ーニング行ったり。最近は、一緒にごはんを作って料理を教えてもらったりもするよ

うになった。

H:ファッションと音楽の趣味が同じやな。ファッションは、一緒に買い物したりするし、

音楽は、一緒にライブに行ったりするし、CDを貸し借りしたりするかなあ。あとは、

お互いカラオケ好きやからよく行くし、お笑いも好きやからDVD借りてよく見るよ。

言って初めて気づいたけど、共通の趣味は多いほうかも。

皆それぞれが、さまざまな共通の趣味をもっていることがわかった。母親の方が芸能人

に詳しかったり、同じ歌手が好きであったり、カラオケに一緒に行くことからも母親の趣

味が、実年齢よりも若いことがわかる。

(3)親子間の信頼関係

母親と子どもの間に信頼関係があるのか、何でも話せる間柄なのかを調査した。質問表

の⑦母親とよく話をしますか。⑧どのような話をしますか。⑨悩みを相談しますか。⑩ど

のような悩みを相談しますか。⑪どうして母親に悩みを相談するのですか。⑫母親と過ご

す時間は多いですか。それは大切ですか。⑬母親との間に気がねや遠慮はありますか。に

あたる質問をした結果は次のようになった。

⑦母親とよく話をしますか。⑧どのような話をしますか。の結果

C:よくする。その日の出来事とかおもしろかったこととか。私がずっとしゃべってるか

らうるさいって言われることもある。

E:よくする。美容、ダイエット、お互いの友達の話やろ、私とお母さんと共通の友達っ

ていうか知り合いの話とか、色々やなあ。今日、○○ちゃんと会って、○○行ったと

かそういう些細な話をいっぱい話すなあ。お母さんは、私の友達をほとんど知ってる

から、私が友達の名前をだせばそこから話が膨らむねん。私もお母さんの友達はほと

んど把握してるからな。(恋愛の話も)するする。お母さんから聞いてくることが多い

かな。私と弟とでそれぞれの彼氏・彼女の話をしてたら、お母さんがはいってくるこ

ともあるし。自分の恋愛の話だけじゃなくて、弟の恋愛の話をお母さんと 2人でする

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こともあるし。お母さんの昔の恋愛の話を聞いたりもする。

G:よくする。バイトの話とか、友達の話とかが多いかなあ。バイトの話は、人間関係の

話もしたりするけど愚痴とかではないな。バイトでこんなお客さんが来たとか新商品

がでたとかほんまにとりとめもない話。お互いの友達の話もよくする。噂話に近いか

もしれんけど。○○行ったとか、○○さんが結婚したらしいとか。今日どこに行って

何があったかっていう報告とまではいかんけどそういう感じの話が多いよ。

友達の話や今日あった出来事など他愛もない話をすることが多いという人がほとんどで

あった。友達に話す感覚で、友達にも話していることをお母さんにも話しているようだっ

た。恋愛の話に関しては、話す人とあまり話さない人に分かれた。話さない人は、やはり、

恥ずかしいし、照れくさいということが理由のようだ。

⑨悩みを相談しますか。⑩どのような悩みを相談しますか。の結果

C:する。友達のこととか買うのを迷ってる服のこととか。母もよく相談してくる。こな

いだは今やってる仕事やめたいねんけどどう思う?って聞かれた。

E:うん、するなあ。でも、もともと私は深刻な悩みを相談したりはしないねん。別に言

いにくいからとかじゃなくて、性格的に、私はあんまり深刻な悩みがないからってい

うのが大きいと思うねんけど。あと、自分で決めて自分が納得しないと気がすまない

性格やから。うちの家の方針が、「全部自己責任」やねん。自分のことは自分で決める。

決めたことに対しては自分で責任をもって好きなことをするっていう。悩みを何も話

さへんってわけではないんやけどな。

F:するよ。会社の先輩が、機嫌が悪いと八つ当たりしてきたり無視してきたりするすご

くやりにくい人で、うまくいかなくてほんまに悩んでたときは、お母さんにいつも聞

いてもらってた。ほかは、そこからの延長で仕事を辞めたいっていう相談とか。私は、

友達の悩みとかはほとんどないからなあ。生活の大部分は会社に行ってて、自分が心

地よく生きれるかは会社の人間関係がすべて握ってたから、こればっかり相談してた。

悩みの種類や度合いに差はあっても、皆お母さんに悩みを相談することがあるという結

果であった。あまり深刻な悩みを相談していないからといって、母親を信頼していないと

いうわけではなく、本人の性格によるものが大きいということもわかった。また、娘の方

からだけ相談しているわけではなく、母親の方も娘に相談していることがインタビューか

ら明らかになった。

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⑪どうして母親に悩みを相談するのですか。の結果

C:聞いてもらうだけですっきりするから。思ってることなんでも言えるし。

E:自分の性格をよくわかってくれてて、1個話せば 10 個ぐらい返ってくるものがある

から。話が通じやすいし、自分の気持ちをわかってもらえる。友達にも相談したりす

るけど、やっぱり友達は遠慮したアドバイスをくれたりとか、自分の味方になってく

れることが多いけど、お母さんは客観的に見て私が悪い時もハッキリ言ってくれる。

もちろん、私の話に共感してくれることもあるで。普段から、お母さんとよく喋って

るから、最初は全然違う話をしてても自然に悩みを相談していることが多い。

F:お母さんも働いてた時代があったわけやから、自分も経験してきてるんじゃないかな

と思って。人生の先輩として信頼できるからかな。お母さんには私と似たところがあ

るから、うんうんわかるとあいづちをうって、じっくり聞いてくれて共感してもらえ

たら安心できるし。逆に、第 3者の目で客観的に見てくれて、私が悪いときには、し

かってくれるし、多面的に見てくれるから、自分では気づかなかったことを教えてく

れたりする。私の立場に立って一緒に考えてくれるからかな。

H:自分が話を聞いてほしいって思うときに必ず聞いてくれる。友達やったら相手の都合

あるしなかなかそういうわけにはいかんやん。あと、私とお母さんは性格や考えてる

ことが似てるし、小さいときから私のことをずっと見てきてよくわかってくれてるか

ら、「あんたは、そういうとこが昔からあるな、でもそれはあかん」っていう感じで的

確にアドバイスしてくれる。私よりも物知りやし、人生の先輩やし。信頼してるし、

私が話したら自分の事のように真剣に聞いてくれる。それと、こっちの悩みの度合い

もわかってくれて、アドバイスを欲しい時はくれるし、励まして欲しいときは励まし

てくれる。ただ聞いて欲しいときは、共感して聞いてくれるし。こっちの気持ちをよ

くわかってくれて自分がしてほしいことを何も言わんでもしてくれるから、楽やし安

らげるからかな。小学校ぐらいから話し出したよ。

友達のことももちろん信頼しているし頼りにしているが、いろいろな面で遠慮がある。

しかし、母親は血がつながっている家族であるわけであるから、友達にするような遠慮が

いらない。そして、長い付き合いのなかでお互いの性格をよくわかっているうえに、経験

も豊富であり、何でも多面的に見てくれることから一番の相談相手になっているのだろう。

そこには、強固な信頼関係があることがわかる。

⑫母親と過ごす時間は多いですか。それは大切ですか。の結果

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E:多いと思う。二人で、ランチもしょっちゅうするし、さっきも言ったけど買い物もよ

く行くし、家でも一緒にいることが多いな。キッチンに行ったらお母さんがいつもお

るから、自然とそこにいたりする。お母さんがよく遊びに行こうと誘ってくるし。だ

から、普通がどんなんかはわからんけど、みんなより友達と遊ぶ時間は少ないかもし

れん。私は 1人でいることも好きやからよけいにかもしれんけど。二人で過ごす時間

は大切に思う。いつまでこんな時間をもてるかわからんわけやから。

F:多いよ。外食も含めて、一緒にご飯をたべることが多いし、スーパーにもよく行く。

あとは、月1回は、家族で車で出かけるかな。私の運転の練習も兼ねて。普通は、ど

うなんかはわからんけど私は他の人よりも家族で過ごす時間が長いんじゃないかな。

大切に思うし、大切にしたい。私が結婚したら今みたいにはできなくなるわけやし、

今しかできへんことやから。たぶんお母さんもそう思ってると思う。だから、なるべ

くおれる時間は一緒にいたいなと思う。それに、友達とおるときとはまた違った安ら

ぎとか安心感があるから、家族といる時間はなくてはならないものになってきた。

家族といっしょにいる時間は大切にしている人がほとんどであった。そして、こんな風

に過ごせる時間も限られたものであり、無限にあるわけではないということを意識してい

た。家族で過ごす時間も多いと自覚していた。

⑬母親との間に気がねや遠慮はありますか。の結果

C:ない。遠慮とかしなくて、好きなようにやってても嫌われることはないって思ってる

から。

D:ちょっとはある。なるべく心配させないようにしてる。

F:ほとんどないけど、あるとすればお母さんの機嫌が悪い時ぐらいかな。

G:ないな。お母さんにまで遠慮してたら疲れるわ。お互い遠慮はないよ。

H:遠慮や気がねとはいわんけどお母さんももう年やし体は気遣うな。でも、それぐらい。

遠慮や気がねはないと答えた人が大半であった。家族であり、信頼関係もあるからだろ

う。しかし、子どもとして、親を心配させないように余計な事は言わないようにしていた

り、体を気遣ったりしていることからも、友達の面だけではなくやはり基本は親子なのだ

ということが認識できた。

(4) 「親」としての母親

『「しつけ」なき戦後社会と友達親子』を記した河上亮一によると、友達親子は、「しつ

け」が崩壊したことによって成立したと言及している。調査した 8名の親子間では、本当

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にしつけは崩壊しているのか。母親に「親」としての役割はないのか。質問表の⑭(幼少

期の)しつけはどのようなものでしたか。⑮母親を尊敬していますか。⑯あなたにとって

母親はどのような存在ですか。にあたる質問をした結果は次のようになった。

⑭(幼少期の)しつけはどのようなものでしたか。の結果

B:厳しかった。マナーとか、挨拶とか。高校のときは門限もあったし、外泊も禁止やっ

た。

E:厳しくはないけど、うるさかった。倫理的なことっていうか道徳的なこと。人に迷惑

をかけるなとか、マナー・挨拶・行儀とか。あとは、くちのきき方・食事の食べ方と

か箸の持ち方とか。今思えば、しつけられたおかげで、恥をかくことはないし、感謝

してる。

F:お母さんは、自分ができなかったことを私にさせたかったみたいで、習い事はいっぱ

いさせられたな。学校の勉強に関しては、勉強しろとは言われた事がなかった。そこ

は、放任やった。しつけは、結構厳しかったよ。マナーとか行儀とか。食べ物の好き

嫌いはしたらあかんかったし、ほかにも色々。常に言われてきたことは「自分がされ

ていやなことは、絶対人にはしたらあかん」。当たり前のことなんやけど、こういうこ

とを小さいときから言われて育った事は、私にとってプラスになってると思うから、

感謝してる。

H:おばあちゃんが農家やから、食べ物のことに関してはよく言われた。ご飯は残したら

あかんとか、箸の持ち方とか、好き嫌いとか、食べ方とか。当たり前のことやけど、

なかなか身につかんから言われて良かったと思う。勉強のことに関しては、宿題しな

さいぐらいしか言われんかった。小学校のときは、私別に言われんでも宿題はやって

たから、ほとんど言われなかった。勉強とかよりも、私は女の子やから、風呂・トイ

レ掃除とか食器洗い、洗濯、料理、買い物などを普段からやるようにってよく言われ

てた。お母さんが働いてたからかもしれんけど。

しつけは、崩壊するどころか厳しかったことがわかる。幼少期のときは、母親として

の威厳がありしつけや教育をされてきたのである。友達親子は幼少期に甘やかされてきて

るとよくいわれているが、そうとは必ずしもいえないのではないかと思われる。

⑮母親を尊敬していますか。の結果

C:してる。ごはんがいつもおいしく作れるのがすごいと思う。外食ばっかしてたときに

気づいた。家のごはんが一番おいしいし、色んな料理作ってくれる。あと母は私が高

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校生のとき独学で勉強して 2級建築士の資格をとったのがすごいと思った。

E:尊敬してる。普段は、自分と似てて、ふわっとしてて、おっとりしてて、自由人。で

もいざというときはしっかりしてる。私がこの前過労で倒れたとき、すべてを放り出

して自分のことをすごく心配してくれて守ってくれたり看病してくれたとき、母親だ

と感じた。あとは、人付き合いもうまくて、自分のやりたいこともしっかりやってる

ところ。私の兄弟は、みんな自分の意見をしっかり持ってて、精神的に自立してる。

年の割りにみんな大人やし。弟は、人間的に優しいし気遣いもできる。そういうのが

自然に備わったのはお母さんの育て方のおかげやと思うし、そういうとこも尊敬して

る。

G:してる。お母さんは、専業主婦なんやけど家族みんなが快適に楽しく暮らせるように

常に考えてて。掃除も料理も洗濯もさぼらない。でも、家のことだけしてるのかって

いうとそうじゃなくて、友達といろんなとこ出かけて活動的やし、自分の好きなこと

にも夢中になってる。本当に、いつも元気でプラス思考で楽しそう。幸せやって堂々

と言ってるお母さんを尊敬する。ファッションとか美容の話を一緒にできるぐらい若

い女性としての気持ちを今も持ち続けてるところも見習いたいなと思うし。あとは、

いざというときに頼りになるし、絶対私の味方でおってくれるっていう安心感がある。

H:してる。お母さんは苦労してるし、大変なことも多いのに明るく元気に生きてていつ

も前向きで、しんどいのを周りに見せない。それに、4 人の子どもを産んで立派に育

ててきた。そういうとこは尊敬してる。性格は、おっとりしてるけど今も力仕事を続

けてて根性がある。お母さんをずっと見てきたから、少々しんどくても頑張らなあか

んと思える。あとは、女性として魅力的。いつまでも若い。おしゃれに興味があるし、

きれいでいようと努力してる。そこも尊敬してるかな。

人それぞれ尊敬している部分は違うが、母親のことを尊敬しているという意見が多かっ

た。普段、母親と友達のような関係だからこそ、余計に母親としての強さやしっかりとし

た考え方を尊敬している部分としてあげた人が多かったのだと思われる。

⑯あなたにとって母親はどのような存在ですか。の結果

C:一番身近で大切かな。一番身近で私のこと分かってくれてるから。

D:自分を育ててくれた人。けど今は友達の一人みたい。今でもお母さんの面もあるけど。

身の回りのことやってくれるのはお母さんやなって思う。

E:「親友みたい、でも親」絶対最後は守ってくれるという安心感がある。無償の愛ってい

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う言葉が当てはまるんかな。お母さんは、私のことを、自分の分身だと言ってる。

F:人生の先輩やったり、仲のいい友達やったり、偉大な親やったり…色々やけど、なく

てはならない存在やな。いつも感謝してる。

G:親友でもあり母でもあるっていう感じかなあ。難しいけど。何の遠慮もなく甘えたり

頼ったりできる大きい存在。いなくなることは考えられへんし、考えたくない。自分

が、大人になるにつれて、母から親友っぽくなってきたような気がする。お母さんは、

私に関してはもう子育ては終わったって言ってる。あとは、妹だけらしい。

母親ではあるが、友達であったり先輩であったりといろんな面があるという結果であっ

た。しかし、母親に「親」を感じることはないと答えた人はいなかったことからも、友達

である甘ったるいだけの関係ではないことがわかる。

(5)親子間の精神的満足度

河上は友達親子は母親は子どもとぶつかることを一切せず、子どもは子どもで、心地よ

く保護し満たしてくれるのだからぶつかることなどするわけない。しかし、お互いの精神

的なつながりはまったくないと言及している。8名に精神的つながり・満足度についてイ

ンタビューした。質問表の⑰母親との関係に満足していますか。⑱どのような点において

満足していますか。⑲将来自分が母親になった時、自分の母親のようになりたいですか。

にあたる質問をした結果は次のようになった。

⑰母親との関係に満足していますか。⑱どのような点において満足していますか。の結果

A:してる。一番近くにいて何でも話せるし、遊べるし、遠慮しなくてもいいから。

C:してる。一緒にいて楽しい。仲良くできて嬉しい。

E:してる。別々の人間やから、お互い束縛もないし気に入らんところもない。心地いい

関係やと思う。一緒にいて楽しいしほんまに気が合う。それに、お母さんはかわいい

と思う。精神がかわいい。母親やけど、気持ちはいつまでも女の人で。身だしなみと

かヘアースタイルも自分以上に気づかって楽しんでるし、一緒いて刺激になる。

F:良いことも悪いことも何でも自分のことをわかってくれるところ。あとは、そこは、

あんたの良いところやなあって褒めて育ててくれたところは、満足してる。

G:うん、してるよ。一緒にいて楽しいし、これからもこういう 2人の関係でおりたいと

思う。

精神的満足度は高いことがわかる。また、自分のことをよくわかってくれて、気が合う

と感じていることからも精神的つながりも深いことがわかる。これに関しては、前の質問

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で、母親はなくてはならない存在という答えからも確認することができる。

⑲将来自分が母親になった時、自分の母親のようになりたいですか。の結果

A:なりたくはない。お母さんのことは好きやけど。お母さんは専業主婦で視野が狭い。

でも私はもっと視野の広い人になりたい。

C:なりたい。子どもと仲良くできたら楽しいと思う。それに自分の好きな仕事をして、

習い事もやって、友達もいっぱいいるから楽しそうに見える。

D:おかあさん専業主婦やねんけどそれは嫌。私はもっと好きなことしたい。

E:性格が違うから、お母さんのようにはなれないと思う。でも、似てるところもある。

し、見習いたいなと思うこともある。母親を目指そうとは思わんけど。お母さんの自

分の好きなことに没頭している生き方、自己投資っていうんかな、これはマネしたい

なと思う。

G:なりたいなと思う部分もあるけど、私にはまねできないなと思うことも多いな。あん

なにテキパキ家事はこなせないし。でも家族の事を一番に考えて、愛情を注いでると

ころとか、いつも元気で明るいところとかは、あんな風になりたいなと思ったりする。

でも完全にマネしようとは全く思わない。私は私やから。

これは意見が分かれた。しかし、どちらかといえば母親のようになりたいと答えた人よ

りは、母親を尊敬しているし見習いたい部分はあるけど、全部を真似しようとは思わない。

私は私で、母は母だからという意見が多かったように思う。母親にベッタリの娘なのでは

なく、母親と自分は違うという風にお互いの個性を一番わかりあっている関係が見えた。

4.2 FACESKG

インタビューをおこなった 8名の女性に、FACEKGを行った結果、表のようになっ

た。これを、家族システム円環モデルに照らしあわせてみると、Aさんは極端型、B・C・

Dさんはバランス型、E・F・G・Hさんは中間型であった。

表 3 FACES-KGの結果

かじとり きずな 円環モデル

A 融通なし ベッタリ 極端型

B 柔軟 サラリ バランス型

C 柔軟 ピッタリ バランス型

24

25

D 柔軟 サラリ バランス型

E 柔軟 ベッタリ 中間型

F キッチリ ベッタリ 中間型

G 融通なし ピッタリ 中間型

H 融通なし ピッタリ 中間型

最後に、Aさんから Hさんのインタビューの結果と FACEKGの結果を統合し、一覧に

してまとめた表 4と表 5を掲載する。

5. 考 察

A さんから H さんの FACEKG の「きずな」の結果は、「ピッタリ」・「ベッタリ」が多

数派であった。この結果を裏づける特徴的な行為がインタビューの中から得られた。8 人

全員が母親と買い物に行っており、母親との買い物は気が合い楽しいし、遠慮もいらない

ので行きやすいと答えている。また、買い物以外でも多くの人が母親と共通の趣味をもっ

ており、その趣味の数も 1つではなく複数挙げる人もいた。二人で過ごす時間も会話も多

く、家に居る時も同じ部屋に自然にいると答えた人が多くお互いを信頼しあっていること

がわかる。8人中 6人の母親が働いていない専業主婦であったこともこのような結果が、

得られた理由の 1つではないかと思われる。仕事をもつ母親よりも家に居る時間が多い分、

娘と一緒に過ごす時間や会話が多くなると考えられるからである。これらから友達親子は、

母娘間の心理的・社会的な距離が普通の親子よりも近く、親密で精神的な結びつきが強い

親子であること、そして母親に「友達」一面があるということがわかる。これは、「バラバ

ラ」の親子が一組もみられなかったことからもいえるであろう。また、インタビューから、

母親と買い物に行ったとき母親にお金を出してもらうと答えた人は少なく、買ってもらう

頻度も少なかった。反対に、母親に服を買ってあげたり、ごはんをおごってあげたりする

人もいるほどであった。以上の 2点から、友達親子は経済的なつながりのみによって成立

している親子ではなく、深い内面のつながりがあり、親密で精神的な結びつきが強い親子

であるということができる。もし、経済的ゆとりがなくなったとしても、このような親子

関係では破綻することはないだろう。

表4 インタビュー調査結果と FACES-KG調査結果統合版(Aさん~Dさん)

Aさん Bさん Cさん Dさん

調査内容 質問文①母親と一緒に買い物に行きますか②なぜ母親と一緒に買い物に行くのですか。③一緒に買い物に行った時、お金をだしてもらいますか。④金銭的援助がなくても買い物に行きますか。⑤共通の趣味はありますか

⑥どのような趣味ですか。

⑦母親とよく話をしますか。⑧どのような話をしますか。⑨悩みを相談しますか。

⑩どのような悩みを相談しますか。

⑪なぜ母親に悩みを相談するのですか。

⑫母親との間に気がねや遠慮はありますか。

母親と過ごす時間の有無・それに対する価値観

⑬母親と過ごす時間は多いですか。それは大切ですか。

回答なし。 回答なし。寝る時以外は、リビングにいて母親と過ごしている。

1人で過ごすのも好きなので、一緒に過ごす時間が多いわけではない。過ごすこともある。

⑭(幼少期の)しつけはどのようなものでしたか。⑮母親を尊敬していますか。

⑯あなたにとって母親はどのような存在ですか。

⑰母親との関係に満足していますか。⑱どのような点において満足していますか。⑲将来自分が母親になった時、自分の母親のようになりたいですか。

融通なし 柔軟 柔軟 柔軟ベッタリ サラリ ピッタリ サラリ極端型 バランス型 バランス型 バランス型

信頼関係はある。母親とよく話す。話の内容は今日あったことや面白かったこと。友達のことなど母親に悩みを相談する。聞いてもらえうだけですっきりするし、思っていることが何でも言えるから。好きなようにやっていても母親には嫌われることはないと思っているから、気がねや遠慮はない。

母親としての役割がある。行儀のことについては、鬼のように厳しかった。しかし、勉強のことについては、ほとんど言われたことがない。母親のことは、料理上手な点や、独学で資格取得したことなどを尊敬している。母親のことを一番身近で大切な存在だと思っている。

精神的満足度は高い。母親は、好きなことをしていて毎日が楽しそうなので母親のような主婦になりたいと考えている。

友達としての役割がある。よく買い物に一緒に行く。一緒に買い物に行くと楽しいし、気を使わなくて楽であるから。時々お母さんにお金を出してもらうこともあるが、たいていは自分のものは自分で買う。

母親と一緒にいて楽しく、精神的満足度は高い。自分の好きな仕事をして、子どもと仲良くしたいので将来自分も母親のようになりたいと考えている。

友達としての役割がある。母親には気を使わなくてもいいから一緒に買い物に行く。たまにかってもらうこともあるが、自分で買う。

ない。

信頼関係はある。母親とは、結構話す。話の内容は学校であったことや、友達のこと。将来のことに関しては、悩みを相談する。人生の先輩で、自分よりも知ってることが多いから。しかし、恋愛の相談は恥ずかしいのでしない。母親に心配させないようにするという気遣いがある。

母親としての役割がある。しつけは、厳しかった。勉強についてはそんなに言われなかった。母親は、家のことをきっちりやってるからすごいと思っている。母親は、自分を育ててくれた人であると考えている。しかし、今は、友達の1人のように感じている。

精神的満足度は高い。中学時代よりも、お互いを認め合ってうまくやっているから。しかし、母親のように専業主婦にはなりたくないと考えている。

友達としての役割がある。よく買い物に行く。母親と買い物に行くのは面白いし、気をつかわなくてもいいから。母親は買ってあげたがるが、ほとんど買ってもらうことはない。

今は、テレビを見たり漫画を読んだりするぐらい。自分か母親のどちらかがはまりだしたらお互いつられてはまることが多い。

友達としての役割がある。買い物に限らず二人でよく食事したり遊びに行ったりする。バイトで自分で稼ぐようになってからお金を出すことはあっても出してもらう事はない。

趣味と呼べるかはわからないが、一緒ににテレビを見たりする。ボーリングに行くこともある。

信頼関係はある。母親と毎日話す。話の内容は、今日あったことや彼氏・友達・ニュースの話など。相談はよくするけど、悩みを相談することはあまりない。母親は、人生の先輩だから相談する。

母親としての役割がある。マナーや挨拶などしつけは厳しかった。高校時代は、門限もあり外泊も禁止。勉強の事もうるさく言われる。母親のことを尊敬というよりは羨ましいと感じている。

テレビを見ることが好きで、一緒に見ることが多い。母と芸能人の情報を教えあう。読書も好きで、読んで面白かったものを教えあう。

信頼関係はある。母親とよく話す。話の内容は、芸能人の話や今日あったことなど。悩みも母親に相談する。母親は、人生経験が豊富でアドバイスしてくれるし、嫌われることがなく、本音で話せるから相談する。遠慮や気がねはある。母親の性格を我慢していることもある。

しつけは厳しかった。母親が、教育熱心だったためよく勉強しろと言われた。マナーなどはそんなに言われていない。母親のことを本当に友達のように思っているため尊敬という言葉はあてはまりにくい。現在は、母親としての役割が薄い。

母親のことは好きで、満足しているので、精神的満足度は高い。しかし、母は専業主婦で視野が狭いので母のような母親になりたいとは考えていない。

インタビュー

かじとりきずなFACES KG

母親に友達としての役割があるか。買い物に行く場合金銭的援助が目的なのか。

母親と子どもの間に信頼関係があるか。何でも話せる間柄なのか。

親子間の精神的満足度は高いか。

円環モデル

共通の趣味の有無

母親に親としての役割があるか。

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Eさん Fさん Gさん Hさん調査内容 質問文

①母親と一緒に買い物に行きますか②なぜ母親と一緒に買い物に行くのですか。③一緒に買い物に行った時、お金をだしてもらいますか。④金銭的援助がなくても買い物に行きますか。⑤共通の趣味はありますか

⑥どのような趣味ですか。

⑦母親とよく話をしますか。

⑧どのような話をしますか。⑨悩みを相談しますか。⑩どのような悩みを相談しますか。⑪なぜ母親に悩みを相談するのですか。

⑫母親との間に気がねや遠慮はありますか。

母親と過ごす時間の有無・それに対する価値観

⑬母親と過ごす時間は多いですか。それは大切ですか。

2人で過ごす時間は多い。家にいるとき、自然に同じ部屋にあつまることが多い。いつまでこんな時間をもてるかわからないから、大切に思う。

過ごす時間は多い。一緒に居れるときは居たい。安らぎと安心感があるから大切だ。

過ごす時間は多い。楽しいし、大切に思っている。一緒の部屋にいることが多い。

過ごす事もある。が、多くもない。離れて暮らしているため。

⑭(幼少期の)しつけはどのようなものでしたか。⑮母親を尊敬していますか。

⑯あなたにとって母親はどのような存在ですか。

⑰母親との関係に満足していますか。⑱どのような点において満足していますか。⑲将来自分が母親になった時、自分の母親のようになりたいですか。

柔軟 キッチリ 融通なし 融通なしベッタリ ベッタリ ピッタリ ピッタリ中間型 中間型 中間型 中間型

精神的満足度は高い。一緒にいて楽しいし、今後もこのような関係でいたい。見習いたい所もあるけど母親の真似をしようとは思わない。

精神的満足度は高い。母親との関係に満足している。

信頼関係はある。母親とはよく話す。話の内容は、バイトの人間関係・友達の話など。就職活動や友達などなにか壁にぶつかった時悩みをそうだんする。信頼できるし、昔から何でも話してきたから自然に。母親と話すと元気になる。気兼ねや遠慮はない。

信頼関係はある。母親と話す。話の内容は、彼氏の愚痴。母親からは仕事の愚痴を聞く。基本的に悩みを相談はしないけど、将来に関しては相談する。母親と自分は性格が似ているので、自分が望む反応や答えをくれるし、聞いて欲しい時に必ず聞いてくれるから。気がねや遠慮はほとんどない。

母親としての役割がある。勉強に関しては、小学生まで言われてた。マナーなどしつけは厳しかった。母親は怒ると怖いので、言うことを聞いていた。門限も守ってた。母親の事は、母

母親としての役割がある。しつけは厳しかった。勉強のことよりもうるさく言われたのが、家事全般の手伝いをすること。母親が働いてたから余計に。母親のことを尊敬している。4人の子どもを立派に

信頼関係はある。母親とよく話す。話の内容は、美容・ダイエット・お互いの友達・恋愛の話。お互いの友達を把握している。母親に悩みを相談するが、性格的に深刻な悩みはあまり相談しない。母親は自分のことを一番わかっていて、共感してくれるし、遠慮のないアドバイスをくれるから。自然に相談してしまう。気がねや遠慮

母親としての役割がある。勉強に関しては言われたことがない。マナーや行儀などしつけに関してはうるさかった。母親の人間性と、母親として頼りがいがある部分、自分のやりたいことをしっかり

友達としての役割がある。母親と買い物に行く。気を使わないし、服の趣味が合うため、一緒に買い物していて楽しい。誕生日など特別な日は買ってもらえるけど、基本的には自分のものは自分で買う。

友達としての役割がある。母親と買い物に行く。遠慮のないアドバイスをし合えるし、母親が、店を知りたがるからそれを教えるため。気も使わない。自分のものは自分で買う。逆に母親に買ってあげることがある。

おいしいお店を発掘すること。お互いに教えあったりしている。まだ、実現していないが、一緒にジムに行く予定。

ファッションと音楽の趣味が同じ。母親がカラオケ好きなのでカラオケにもよく行く。お笑いも好き。

精神的満足度は高い。母親とは一緒に居て楽しくて本当に気が合う。性格も違うし、将来母のようにはなれないと思うが、母親の生き方など見習いたいところは多い。

友達としての役割がある。母親と買い物に行く。自分の立場に立ってどの服がいいかアドバイスしてくれるから。自分の服は自分で買うので母親に出してもらうわけではない。

韓国映画鑑賞を2人でよくしている。また、外食好きでよく一緒にご飯をたべに行く。

信頼関係はある。母親とはよく話す。話の内容は、会社での人間関係の話や友達の話。母は自分の友達を把握している。仕事の悩みを中心に相談する。母親は、人生の先輩で信頼できるし客観的・多面的にみてアドバイスをくれたり、ときには叱ってくれるから。気がねや遠慮はほとんど

母親としての役割がある。勉強に関しては言われたことがない。マナーや行儀などのしつけは厳しかった。それは自分にプラスになってるから感謝してる。母親は自分がまだ

精神的満足度は高い。良いところも悪いところも含めて自分のことをよくわかってくれているところに満足している。

友達としての役割がある。かなりの頻度で買い物(服に限らず)に行く。一番身近にいて気が合うし服の趣味も合うから。母親が全額だしてくれるときもあるし、半分出すときもある。

たくさんある。化粧水を作ったり、お茶をブレンドしたり、パンを作ったり。旅行に一緒に行くことも多い。

インタビュー

母親に友達としての役割があるか。買い物に行く場合金銭的援助が目的なのか。

共通の趣味の有無

母親と子どもの間に信頼関係があるか。何でも話せる間柄なのか。

母親に親としての役割があるか。

親子間の精神的満足度は高いか。

FACES KGかじとりきずな

円環モデル

表 5 インタビュー調査結果と FACES-KG調査結果統合版(Eさん~Hさん)

27

8人全員が同じ回答をした項目は、「しつけ」に関する問いであった。みんな昔は母親の

しつけが厳しかったと答えたのである。このことから、母親に「親」としての役割がある

ことがわかる。メディアでは、友達親子はこどもを甘やかしているため、精神的に自立で

きない子どもを作り出し、親としての自信のなさや不安、子どもから嫌われたくないとい

う思いから気がねをして本音を言えないでいる。そして、友達親子は親子間に従来の上下

関係は見られず、親子の境界がないといわれているが、インタビューの結果から、決して

そうではないことがわかる。FACEKG の結果を見ても明らかである。しつけは放任で首

尾一貫しない状態の「てんやわんや」の親子は一組も見られない。しかし、「柔軟」の親子

が一番多かったことからも、現在はしつけは話し合い重視で寛大になり、民主的な親子で

あることがわかる。子どもが成長して信頼関係もできたため、今はしつけをする必要性も

なくなり、母娘がより対等な関係になったからであろう。その結果、母親に「友達」の一

面が生まれたのである。このことから、友達親子には、共通の趣味をもったり、一緒に買

い物をしたりという友達としての役割と、悪いことをしていたら叱り、道を間違えそうに

なったら意見を言うといった母親としての役割(上下関係)の二面性があることがわかる。

円環モデルに照らし合わせてみても、1組を除いて皆「バランス型」「中間型」になること

から、友達親子は特別な親子関係ではないということがいえるのではないか。友達親子は、

権威的な親子関係でもなく、放任的な親子関係でもなく、民主的な親子関係なのである。

友達親子とは、お互いの思考の後、一緒に楽しめたり、涙したり、怒ったり、喜んだり

と 2人で過ごす時間を共有し刺激し合えることができる関係ではないだろうか。母親、1

人の女性、1人の人間。いろんな面がある中で、「友達」という面があるのである。そして

友達の時、親子の時とういうように切り替えのできる存在であり、多面的なのである。

最近、親子のコミュニケーションが薄くなってきていることが問題になっているのに対し、

友達親子は、密接にコミュニケーションをとっていける 1つの形態だと思われる。

40字×30行 24ページ 400字詰め原稿用紙 51枚分

参考文献

井戸ゆかり,1997,「友達親子の気がね」『季刊子ども学』

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河上亮一,1997,「しつけなき戦後社会と友達親子」『季刊子ども学』

三浦 展,1997,「郊外が生んだ友達親子」『季刊子ども学』

宮本みち子,1997,「消費社会の友達親子」『季刊子ども学』

信田さよ子,1997,『一卵性母娘な関係』主婦の友社

庄司洋子,1997,「高学歴社会と友達親子」『季刊子ども学』

立木茂雄,1999,『家族システムの理論的・実証的研究』川島書店

山田昌弘,1997,「友達親子が語られる背景」『季刊子ども学』

参考 URL

平成 13年度 国民生活白書

(http://www5.cao.go.jp/j-j/wp-pl/wp-pl01/html/13102c10.html)

立木茂雄研究室

(http://www.tatsuki.org/)

付録

Aさんインタビュー

M:母親との関係は友達親子だと思う?

A:思う。

M:それはなんで?

A:仲いいと思うしよく買い物とか一緒に行くから。あとお母さんって感じがしない。敬

うとか上下関係があるってわけじゃないから。友達みたいな対等な関係。

M:いつから友達みたいになった?

A:弟が生まれたとき。弟が小学校 2年のときに生まれてんけど、それからだんだん。お

母さん働いてたから、弟の世話を一緒にしてた。

M:母親と買い物に行く?

A:行く。楽しいから。一緒に出かけても気を使わないし、楽。買い物行くときは三宮と

かハーバーランドとか、あと近所のスーパーに食料品買いに行ったりする。映画見に行っ

たりもする。

M:買い物に行ったときお金はお母さんが出すことが多い?

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A:そんなことはない。自分のものは自分で買う。時々買ってもらう事もあるけど。

M:携帯代は自分で払ってる?

A:払ってない。父が払ってる。

M:服の貸し借りはする?

A:借りることはない。けどお母さんは私が着なくなった服着てる。

M:他に共通の趣味とかある?

A:テレビ。私家にこもってることが多くて、テレビ見るの好きやねんけどお母さんもテ

レビ好きやから、一緒に見てることが多いかな。ドラマとか、歌番組とか。お母さん

の方が芸能人のことと詳しいから教えてもらう。お母さんはジャニーズ好きやねん。

あとオダギリジョー。あとは読書も好き。推理小説とか話題本とか。読んで面白かっ

たのを教えあう。

M:お母さんとはよく話す?

A:話す。芸能人の話とか。誰と誰が結婚したけどすぐ離婚するわとか。あとは今日あっ

たこととか。

M:悩みを相談することはある?

A:する。就活やってたときはよく相談してた。他には友達の話もする。

M:なんで母親に相談するの?

A:人生経験が豊富でアドバイスしてくれるから。友達やったらやっぱ気使うし。お母さ

んやったら嫌われるとかないから本音で話せる。

M:お母さんとの間に遠慮とか気兼ねはある?

A:うーん。あるかな。私のほうがいつも我慢してる。お母さんは精神年齢が低くて子ど

もっぽいからいらいらすることがある。けど文句言ったりはしない。それがお母さん

の性格やから仕方ないし。

M:子どものときのしつけは厳しかったと思う?

A:厳しかった。マナーとかはあんまり言われてないけど。お母さん教育熱心やから勉強

しろって言われた。塾にも行かされた。中学受験もした。

M:お母さんを尊敬してる?

A:多少はしてる。のんびりしてて楽観的なところはいいと思う。けど本当に友達みたい

に思ってるから尊敬とかの対象じゃない。友達っていいなって思うとこはあっても尊

敬とかじゃないやん。

30

M:お母さんはどんな存在?

A:一番身近な友達。

M:お母さんとの今の関係には満足してる?

A:してる。一番近くにいて何でも話せるし、遊べるし、遠慮しなくてもいいから。

M:将来自分が母親になったとき自分のお母さんのようになりたいと思う?

なりたくはない。お母さんのことは好きやけど。お母さんは専業主婦で視野が狭い。

でも私はもっと視野の広い人になりたい。

M:結婚するまでに家を出る予定はある?

A:ない。働く場所も絶対家から通えるところになるし、家にいるのが一番落ち着くから。

寂しいし。

M:結婚はいつしたい?

A:20代後半~30前半ぐらいまでにはしたい。仕事が落ち着いてから結婚したい。

M:結婚してから母親と同居したい?

A:父とはしたくないけど母とはしたい。

Bさんインタビュー

M:お母さんと友達親子やと思う?

B:思う。こないだも二人でUSJ行ったし、二人でごはん食べに行ったり、買い物行っ

たりしてるから。

M:いつぐらいから友達親子みたいになった?きっかけはある?

B:大学入ってから。大学入ってからおこづかいもらわなくなって、バイトで稼いだ自分

の収入でおっごってあげたり、どっか連れて行ってあげるようになった。

M:何で母親と出かけるの?

B:気使わなくていいし、楽しい。どっか連れて行ってあげたくなる。

M:一緒に出かけて何か買ってもらうことある?

B:まったくない。自分で買う。

M:USJ行ったときはどっちがお金出した?

B:入場券はもともと貰っててんけどごはんとかは私が出した。

M:共通の趣味はある?

B:ないかも。

31

M:じゃあ一緒にテレビ見たりする?

B:見るよ。バラエティーとかドラマ、歌番組見る。

M:カラオケいったりはする?

B:母がカラオケ嫌いやから行かんなあ。ボーリングは一緒に行くで。

M:お母さんとよく話す?

B:話す。毎日話す。今日あったこと、彼氏の話、友達の話、ニュースの話とか。

M:悩みを相談することはある?

B:あんまりない。相談はよくするけど。今度友達の結婚式行くねんけど、そのとき着る

ドレスどんなんがいいか聞いた。長く生きてるし、人生の先輩やから。

M:子どものときのしつけはきびしかった?

B:厳しかった。マナーとか、挨拶とか。高校のときは門限もあったし、外泊も禁止やっ

た。

M:勉強のことは?

B:言われた。今でもやかましく言われる。

M:嫌じゃない?

B:言われても仕方ないから嫌ではない。

M:お母さんを尊敬してる?

B:尊敬っていうかうらやましい。習い事いっぱいして、ひたすらるう(犬)と遊んでる。

好きなことして、毎日楽しそうにしてる。

M:自分が結婚したとき母親のようになりたいと思う?

B:思う。楽しそう。母みたいな主婦になりたい。

M:今の親子関係に満足してる?

B:してる。仲いいし、よくしゃべるから。

M:結婚するまでに家を出る予定はある?

B:ある。収入が安定してお金に余裕ができたら家は出る。

M:それはなんで?

B:ちゃんと自立したいから。

M:母親と離れるのは寂しくない?

B:寂しいけど、自立したい。

M:いつ結婚したい?

32

B:20代後半。学生終わって 4、5年好きなことやってから落ち着きたい。

M:結婚してから親と同居したい?

B:同居はしたくないけど近くに住みたい。すぐ帰れるし、離れてたら寂しい。

M:友達親子は消費だけで繋がってて、経済的なゆとりがなくなったら消滅するかもしれ

ないっていう意見もあるねんけどどう思う?

B:今学費と生活費は出してもらってるけどその他は全部自分で出してる。なんか買って

もらうために仲良くしてるんじゃないから、経済的な援助がなくなっても仲良くでき

ると思う。

Cさんインタビュー

M:お母さんとは友達親子と思う?

C:思う。母はお母さんって感じじゃないから。おかあさんって呼んでないし。呼ぶのも

恥ずかしい。

M:なんて呼んでる?

C:姉さん。

M:いつぐらいから友達みたいになった?

C:中 2ぐらいやと思う。部活やってたけど辞めて家におる時間が長くなってから。それ

までは怖いイメージがずっとあったけど、おもしろい人やってことに気づいた。

M:一緒に買い物に行くことはある?

C:ある。暇な日は一緒にスーパーに行く。最近アメリカから輸入した物ばっかり売って

るスーパーが気に入っててよく行く。洗剤とか、肉の塊とかありえんぐらいでかくて、

すごいの発見してはキャーキャー言ってる。

M:何で一緒に行くの?

C:おもしろいから。気使わなくてもいいから。母は一人で買い物してたらいらん物とか

変なものとか買ってくるから、私が一緒に行って余計なものは買わなせないようにし

てる。

M:買い物に行ったとき買ってもらうことは多い?

C:ほとんどない。母はすぐ買ってあげるっていうけど、私もバイトしてるし、自分のは

自分で買いたい。母は人にプレゼントとかするのが好きでかってあげたくなるらしい。

あとは母は母子家庭で育って母親によくおねだりして何でも買ってもらってたから、母

33

親は子どもに買ってあげないとって思うみたい。

M:服とか化粧品を一緒に使う?

C:服はたまに借りる。母も私の服を着てることがある。化粧品一緒につかってるのもあ

る。

M:携帯代は自分で払ってる?

C:大学生になってからは払ってる。

M:共通の趣味はある?

C:今はテレビ見るぐらい。あと漫画。一緒に昼ドラを見る。私か母どっちかがはまった

らお互いつられてはまる。前母が友達の影響でネイルアートをやりだしたとき私も一

緒にやってた。今はしょうが紅茶ダイエットをいっしょにやってる。これは私が本で

発見してやってたらいつの間にか母もやってた。

M:家にいるときはどこにいることが多い?

C:寝るとき以外はリビングにおる。自分の部屋におっても一人やし寂しい。

M:母親とよく話する?

C:する。その日の出来事とかおもしろかったこととか。私がずっとしゃべってるからう

るさいって言われることもある。

M:悩みを相談する?

C:する。友達のこととか買うのを迷ってる服のこととか。母もよく相談してくる。こな

いだは今やってる仕事やめたいねんけどどう思う?って聞かれた。

M:何で悩みを相談するん?

C:聞いてもらうだけですっきりするから。思ってることなんでも言えるし。

M:母親との間に遠慮や気兼ねはある?

C:ない。遠慮とかしなくて、好きなようにやってても嫌われることはないって思ってる

から。

M:子どものときのしつけは厳しかった?

C:厳しかった。母は鬼やった。行儀よくするようにいつもいわれた。

M:勉強するようにいわれた?

C:それはほとんど言われたことない。遊んでばっかで宿題とかよく忘れてたけどやれっ

て言われた記憶がない。

M:母親を尊敬してる?

34

C:してる。ごはんがいつもおいしく作れるのがすごいと思う。外食ばっかしてたときに

気づいた。家のごはんが一番おいしいし、色んな料理作ってくれる。あと母は私が高

校生のとき独学で勉強して 2級建築士の資格をとったのがすごいと思った。

M:母親はどんな存在?

C:一番身近で大切かな。一番身近で私のこと分かってくれてるから。

M:母親との関係に満足してる?

C:してる。一緒にいて楽しい。仲良くできて嬉しい。

M:将来自分が母親になったとき自分の母親のようになりたい?

C:なりたい。子どもと仲良くできたら楽しいと思う。それに自分の好きな仕事をして、

習い事もやって、友達もいっぱいいるから楽しそうに見える。

M:結婚するまでに家を出る予定はある?

C:ない。家にいるの楽しいし寂しくない。母と離れたら寂しいと思う。働き出しても一

人暮らしするほどのお金はないと思う。

M:結婚はいつ頃したい?

C:24歳ぐらい。はやく自分の家庭をつくりたいとも思う。けど母と離れるのは嫌だから

近くに住んでしょっちゅう会いたい。

Dさんインタビュー

M:母親との関係は友達親子だと思う?

D:思う。仲がいいし、一緒にでかけたりするから。

M:いつぐらいから友達みたいになった?きっかけはある?

D:高校入ってからかな。きかっけは分からんけど、一緒に出かけるようになって友達み

たいになった。中学のときは親と一緒に出かけるのは恥ずかしいと思ってた。けど高

校生になったら周りの友達が母親と一緒に出かけてるのを知ってから私も一緒に出か

けるようになった。あの人は、私とは全然違うくて、私が髪染めたり、ピアスあけた

りするの信じられないみたいで、私もそういうお母さんの古い考え嫌いやった。けど

一緒に出かけるようになって、話すことが増えたらお母さんのことかわいく思えるよ

うになった。

M:一緒に買い物にいく?

D:行くよ。気を使わなくていいから。服も一緒に買いに行くこともある。

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M:一緒に買い物に行ったとき、買ってもらうことは多い?

D:たまに買ってもらう。お母さんが買ってくれるって言うから。自分で買うからいいよ

っていう事もあるけど、たまにはかってもらう。

M:共通の趣味はある?

D:ない。気はあんまり合わない。

M:家にいるときはどこにいることが多い?

D:お母さんはリビングにいる。私は自分の部屋にいることが多い。ごはん食べてしばら

くはリビングにいるけどしばらくしたら、部屋に行く。

M:それはなんで?

D:一人でいるのも好きやから。

M:母親と話すことは多い?

D:結構話してると思う。学校であったこととか、友達のこと。

M:悩みを相談する?

D:将来のこととかはする。自分より長く生きてる分知ってることもあるし。けど彼氏の

ことは相談しない。なんか恥ずかしいから、友達に相談する。

M:母親との間に遠慮、気兼ねはある?

D:ちょっとはある。なるべく心配させないようにしてる。

M:子どものときのしつけは厳しかった?

D:厳しいと思う。お母さんはお嬢様育ちやから、そういうのは厳しかった。

M:勉強についてはなんか言われた?

D:宿題しなさいぐらいは言われた。

M:母親を尊敬してる?

D:すごいなとは思う。家のこときっちりやってるから。けど世間知らずのとこもあって

それはどうかと思う。

M:母親はどんな存在?

D:自分を育ててくれた人。けど今は友達の一人みたい。今でもお母さんの面もあるけど。

身の回りのことやってくれるのはお母さんやなって思う。

M:母親との関係に満足してる?

D;してるよ。中学のときは反抗期やったからあんまりうまくいってなくて、お互いが理

解できなかったけど、今はお互い認め合ってうまくやってると思う。

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M:将来自分が母親になったとき、母親のようになりたいと思う?

D:おかあさん専業主婦やねんけどそれは嫌。私はもっと好きなことしたい。

M:結婚するまでに家を出る予定ある?

D:出ると思う。いつまでも頼ってたらみっともないと思うから。お金に余裕ができたら

一人暮らししたい。

M:結婚してから同居したいとか、近くに住みたいとか思う?

D:それはあんまり思わん。いつかはお母さんから離れなあかんから今のうちに仲良くし

ときたい。

【Eさんインタビュー】

T:お母さんと一緒に買い物行く?

E:うん、めっちゃ行く。かなりの頻度で行くな~週 2・3回。

T:なんでお母さんと一緒に買い物行くん?

E:一番身近にいて、気が合うから。友達より約束しやすいし。お母さんから誘ってくる

なあ。服もお母さんと共有するから、一緒に買いに行った方が選びやすいし、お金も

だしてもらえるしな。

T:どれくらいお金だしてもらえるん?

E:全額だしてくれるときもあるし、半分自分でだすときもある。

T:お金を出してくれるから買い物に行くん?

E:いや、そうじゃないよ。一番大きい理由はやっぱり気があうし、楽しいからやな。別

に服の買い物だけ一緒に行くわけじゃないし。スーパーだってよく行くし、この前は、

食器棚を見に行きたいからいっしょに行こうって誘われたから行ってきたし。お母さ

んも私のことを友達感覚で誘ってると思う。

T:お母さんと共通の趣味はある?

E:あるで。

T:それはどんな趣味?

E:ハーブティーとかお茶を買ってきて、色々ブレンドして飲んだりとか。手作り石鹸を

作ったり化粧水を作ったりしてる。そういうことが載ってる本も共有したりするしな。

アロマオイル調合したり、スクラブとかゴマージュを作ったりもするな。お母さんは

凝りだしたらとことんやる人やから。そういうとこが、お母さんと似てるねん。ちょ

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っと前は、パン作ったりしてた。パンを焼く機械も買ったからなあ。あとは、旅行に

よく行く。今度、お母さんと 2人でエジプト行くし。温泉もいくなあ。お母さんの趣

味が多いから。洋裁とかケーキ作りとか色々教えてもらえるねん。

T:お母さんとよく話しする?

E:するで。

T:たとえばどんな話?

E:美容、ダイエット、お互いの友達の話やろ、私とお母さんと共通の友達っていうか知

り合いの話とか、色々やなあ。

T:友達の話って、たとえばどんな話?

E:今日、○○ちゃんと合って、○○行ったとかそういう些細な話をいっぱい話すなあ。

お母さんは、私の友達をほとんど知ってるから、私が友達の名前をだせばそこから話

が膨らむねん。私もお母さんの友達はほとんど把握してるからなあ。

T:じゃあ、お母さんもおなじように友達の話をしてきたりする?

E:うんうん。よくおかあさんの友達の話も聞くで。

T:恋愛の話もしたりする?

E:するする。お母さんから聞いてくることが多いかな。私と弟とでそれぞれの彼氏・彼

女の話をしてたら、お母さんがはいってくることもあるし。自分の恋愛の話だけじゃ

なくて、弟の恋愛の話をお母さんと 2人ですることもあるし。お母さんの昔の恋愛の

話を聞いたりもする。

T:悩みをお母さんに相談する?

E:うん、するなあ。でも、もともと私は深刻な間闇を相談したりはしないねん。別に言

いにくいからとかじゃなくて、性格的に、私はあんまり深刻な悩みがないからってい

うのが大きいと思うねんけど。あと、自分で決めて自分が納得しないと気がすまない

性格やから。うちの家の方針が、「全部自己責任」やねん。自分のことは自分で決める。

決めたことに対しては自分で責任をもって好きなことをするっていう。野放し状態で

育てられたから。お母さんは、もう子育ては終わったって言ってて、だからお母さん

は自分の好きなことや趣味に没頭してるわ。悩みを何も話さへんってわけではないん

やけどな。

T:じゃあ、なんでお母さんに悩みを話すん?

E:自分の性格をよくわかってくれてて、1個話せば 10 個ぐらい返ってくるものがある

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から。話が通じやすいし、自分の気持ちをわかってもらえる。友達にも相談したりす

るけど、やっぱり友達は遠慮したアドバイスをくれたりとか、自分の味方になってく

れることが多いけど、お母さんは客観的に見て私が悪い時もハッキリ言ってくれる。

もちろん、私の話に共感してくれることもあるで。普段から、お母さんとよく喋って

るから、最初は全然違う話をしてても自然に悩みを相談していることが多い。

T:じゃあ、お母さんに気がねや遠慮っていうのは…?

E:ないなあ。

T:小さいときのしつけはどんな感じやった?教育とか。

E:教育に関しては、うちは勉強しろとは全然言われたことがなかったなあ。小学生のと

きに、宿題はしたのかっていう確認をされたぐらい。お母さんは、私たちをのびのび

育てたいっていう気持ちが強かったって言ってた。

T:受験の時は?

E:別に、お母さんに○○を受験しなさいとかも言われたりすることもなかったし、受験

校は自分の意思で決めたなあ。ほんまに、言われた記憶がない。浪人を選んだときも

お母さんは何も言わなかった。

T:しつけは?

E:厳しくはないけど、うるさかった。倫理的なことっていうか道徳的なこと。人に迷惑

をかけるなとか、マナー・挨拶・行儀とか。あとは、くちのきき方・食事の食べ方と

か箸の持ち方とか。今思えば、しつけられたおかげで、恥をかくことはないし、感謝

してる。

T:母親を尊敬してますか?

E:尊敬してる。普段は、自分と似てて、ふわっとしてて、おっとりしてて、自由人。で

もいざというときはしっかりしてる。私がこの前過労で倒れたとき、すべてを放り出

して自分のことをすごく心配してくれて守ってくれたり看病してくれたとき、母親だ

と感じた。あとは、人付き合いもうまくて、自分のやりたいこともしっかりやってる

ところ。私の兄弟は、みんな自分の意見をしっかり持ってて、精神的に自立してる。

年の割りにみんな大人やし。弟は、人間的に優しいし気遣いもできる。そういうのが

自然に備わったのはお母さんの育て方のおかげやと思うし、そういうとこも尊敬して

る。

T:お母さんはどんな存在?

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E:「親友みたい、でも親」絶対最後は守ってくれるという安心感がある。無償の愛ってい

う言葉が当てはまるんかな。お母さんは、私のことを、自分の分身だと言ってる。

T:お母さんとの関係に満足してますか?

E:してる。別々の人間やから、お互い束縛もないし気に入らんところもない。心地いい

関係やと思う。

T:どんなところに満足してる?

E:一緒にいて楽しいしほんまに気が合う。それに、お母さんはかわいいと思う。精神が

かわいい。母親やけど、気持ちはいつまでも女の人で。身だしなみとかヘアースタイ

ルも自分以上に気づかって楽しんでるし、一緒いて刺激になる。

T:将来自分が母親になった時、自分の母親のようになりたいと思う?

E:性格が違うから、お母さんのようにはなれないと思う。でも、似てるところもある。

し、見習いたいなと思うこともある。母親を目指そうとは思わんけど。お母さんの自

分の好きなことに没頭している生き方、自己投資っていうんかな、これはマネしたい

なと思う。

T:結婚するまでに家をでる予定はある?

E:ないなあ。

T:それはなんで?

E:1 人暮らしへの憧れはあるけど、1 人は寂しい。自分の家、部屋、家族に満足してる

し、あえて出て行こうとは思わへん。お母さんと一緒にいるのは楽しいし、この時間

を大切にしたいなあと思う。身の回りの世話をしてくれるのはありがたいけどそれだ

けが理由じゃない。経済的にも厳しいしなあ。

T:結婚はいつごろしたい?

E:30歳まで。

T:それはなんで?

E:せっかく就職してやりたい仕事をやるわけやし、自分がどこまでできるか自分を試す

つもりで働きたいからそんなに早く辞めたくないから、だいたいこれぐらいの年齢か

なあと。

T:お母さんと過ごす時間は多い?どんな風に過ごしてる?

E:多いと思う。二人で、ランチもしょっちゅうするし、さっきも言ったけど買い物もよ

く行くし、家でも一緒にいることが多いな。キッチンに行ったらお母さんがいつもお

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るから、自然とそこにいたりする。お母さんがよく遊びに行こうと誘ってくるし。だ

から、普通がどんなんかはわからんけど、みんなより友達と遊ぶ時間は少ないかもし

れん。私は 1人でいることも好きやからよけいにかもしれんけど。二人で過ごす時間

は大切に思う。いつまでこんな時間をもてるかわからんわけやから。

T:家にいるときはどこにいることが多い?

E:日によってバラバラやけど、リビングとかキッチンが多いかな。1 人になりたいとき

は自分の部屋にこもることもあるし。でも、朝起きたらまずリビングに行くのは習慣

かな。

T:家事は手伝う?

E:ほとんど手伝わん。

T:家族の問題について話し合う?

E:問題がないからわからんけど、もし起きたら話し合うと思う。

【Fさんインタビュー】

T:お母さんと一緒に買い物に行く?

F:うん。

T:なんでお母さんと買い物に行くん?

F:似合うものは、似合わんってはっきり言ってくれるから。お母さんに言われた事は納

得できるし。金額が高いときに買うかどうか迷っていたときとかも、自分の立場に立

ってアドバイスしてくれるから、相談しやすい。自分の服は自分で買うし、お母さん

にお金をだしてもらうわけじゃない。

T:服を共有したりはする?

F:それはしないな。

T:お母さんと共通の趣味はある?

F:うん。今は、韓国映画を 2人でよく見たりしてる。休みの日にいっぱいビデオを借り

てきて。あとは、ご飯を一緒に食べに行ったりすることが多いかな。早起きして、モ

ーニング行ったり。最近は、一緒にごはんを作って料理を教えてもらったりもするよ

うになった。

41

T:お母さんとよく話する?

F:うん、するよ。

T:たとえばどんな話をする?

F:会社での人間関係の話をすることが多いかな。その日にあった嫌なこととか、嫌やと

思ってた人に実はこんな良い所があったとか。こんなん言われたんやけど、どうした

らいいかなとか、些細な事やけどいっぱい話すかな。

T:友達の話はしたりする?

F:するする。地元の友達の話をすることが多いかな。自分の仲のいい友達の話をするこ

とが多い。内容的には、これもとりとめのない話が多い。○○行ったとか、○○と遊

んできたとか、友達にこんなことがあったとか。お母さんは、だいたい私の友達はわ

かってるから、話しやすいし。地元の友達のことは、完全に顔と名前が一致してるか

らなあ。だから、地元の友達のことをいっぱい話すんかも。

T:恋愛の話は?

F:恋愛観とかは話したりしたけど、具体的に自分の恋愛の話を自分からしない。お母さ

んに聞かれたら話すぐらいで。彼氏がおったときも、どこに行ったとか何をしたかと

かは話したりするけど、彼氏がどんな人かとか恋愛相談とかは、ほとんどしなかった

な。

T:それはなんでやと思う?

F:恥ずかしい、照れくさい。これに尽きると思う。お母さんは、色々と知りたがるし聞

いてきたりするから全然話せへんわけじゃないけどな。恋愛の話は、やっぱり友達の

方がしやすいな。

T:悩みを相談したりする?

F:するよ。仕事の悩みが多いけど。

T:どんな悩み?

F:会社の先輩が、機嫌が悪いと八つ当たりしてきたり無視してきたりするすごくやりに

くい人で、うまくいかなくてほんまに悩んでたときは、お母さんにいつも聞いてもら

ってた。ほかは、そこからの延長で仕事を辞めたいっていう相談とか。私は、友達の

悩みとかはほとんどないからなあ。生活の大部分は会社に行ってて、自分が心地よく

生きれるかは会社の人間関係がすべて握ってたから、こればっかり相談してた。

T:なんでお母さんに相談するん?

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F:お母さんも働いてた時代があったわけやから、自分も経験してきてるんじゃないかな

と思って。人生の先輩として信頼できるからかな。お母さんには私と似たところがあ

るから、うんうんわかるとあいづちをうって、じっくり聞いてくれて共感してもらえ

たら安心できるし。逆に、第 3者の目で客観的に見てくれて、私が悪いときには、し

かってくれるし、多面的に見てくれるから、自分では気づかなかったことを教えてく

れたりする。私の立場に立って一緒に考えてくれるからかな。

T:お母さんに対して気がねや遠慮はある?

F:ほとんどないけど、あるとすればお母さんの機嫌が悪い時ぐらいかな。

T:小さいときのしつけはどんな感じやった?

F:お母さんは、自分ができなかったことを私にさせたかったみたいで、習い事はいっぱ

いさせられたな。学校の勉強に関しては、勉強しろとは言われた事がなかった。そこ

は、放任やった。しつけは、結構厳しかったよ。マナーとか行儀とか。食べ物の好き

嫌いはしたらあかんかったし、ほかにも色々。常に言われてきたことは「自分がされ

ていやなことは、絶対人にはしたらあかん」。当たり前のことなんやけど、こういうこ

とを小さいときから言われて育った事は、私にとってプラスになってると思うから、

感謝してる。

T:お母さんのことを尊敬してる?

F:うん、尊敬してるな。親っていつも割きのことを考えてて、自分は目先のことしか考

えてないことが多いから、そういうとこ尊敬する。あとは、精神的に強いところかな。

ほかは、おいしい料理をパパっと作れるところ。いろんな面で尊敬してる。

T:お母さんは自分にとってどんな存在?

F:人生の先輩やったり、仲のいい友達やったり、偉大な親やったり…色々やけど、なく

てはならない存在やな。いつも感謝してる。

T:お母さんとの関係に満足してる?

F:してる。めんどくさい時もあるけど。

T:どういうところに満足してる?

F:良いことも悪いことも何でも自分のことをわかってくれるところ。あとは、そこは、

あんたの良いところやなあって褒めて育ててくれたところは、満足してる。

T:親子で過ごす時間は多い?

F:多いよ。外食も含めて、一緒にご飯をたべることが多いし、スーパーにもよく行く。

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あとは、月1回は、家族で車で出かけるかな。私の運転の練習も兼ねて。普通は、ど

うなんかはわからんけど私は他の人よりも家族で過ごす時間が長いんじゃないかな。

T:その時間を大切に思う?

F:大切に思うし、大切にしたい。私が結婚したら今みたいにはできなくなるわけやし、

今しかできへんことやから。たぶんお母さんもそう思ってると思う。だから、なるべ

くおれる時間は一緒にいたいなと思う。それに、友達とおるときとはまた違った安ら

ぎとか安心感があるから、家族といる時間はなくてはならないものになってきた。

T:家にいてるときは、どこにいることが多い?

F:みんながいる場所。もちろん自分の部屋にいてることもあるけど、1 人でおるのも寂

しいし、自然とリビングにいてるかな。

T:家事の手伝いはする?

F:うん、するよ。掃除を手伝うことが多いかな。あとは、たまに料理をしたりする。

【Gさんインタビュー】

T:お母さんと一緒に買い物行く?なんで行く?

G:うん、行く。友達やったら、自分の行きたい店ばっかり連れまわすことはできへんけ

ど、お母さんやったら気長に付き合ってくれるし、気を使わないでいいから。服の趣

味がにてるから、お互いの行きたい店に行ってても見てて楽しいし、お互いの服を見

立てたりアドバイスしあったりしてる。私が、高校卒業した後ぐらいから、お母さん

はファッションとか美容に懲りだして、私に流行とかを聞いてきたりする。もしかし

たら、私よりもおしゃれ好きかもしれん。だから、刺激もうけるし。

T:お母さんと服を共有したりする?

G:サイズが違うから、共有はできへんけどアクセサリーとかは貸し借りをよくするな。

私のペンダントとかをよくお母さんはつけていくよ。それを、自分の友達に褒められ

たりしたら嬉しいみたい。

T:お母さんと買い物に行ったら買ってもらえるん?

G:私の誕生日のときは、買ってくれたり、あとは、お母さんの機嫌がいいときは、何も

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ない日でも買ってくれるときがある。

T:もし、買ってもらえなくても一緒に買い物行く?

G:行く行く。お母さんと買い物にいくときは、朝から出発して一緒にランチをするねん

けど、その時とかにいろいろ喋るのが楽しいから行くっていうのもある。お互い自分

の予定もいっぱいあったり、家には妹とかお父さんがいてあんまり 2人で話す機会っ

ていうのが多くないから、お母さんとのコミュニケーションやなあ、私にとっての買

い物は。

T:共通の趣味はある?

G:趣味っていえるかはわからんけどあるよ。

T:どんな趣味?

G:おいしいお店を発掘することかな。お互い友達に教えてもらった店とかたまたま見つ

けた店とかの情報交換をしてる。一緒に行ったりもするし。あと、まだ実現してない

けどお互い運動不足やから、一緒にジムに行こうって話を最近はしてるかな。ヨガを

やってみたいねって。

T:お母さんとよく話をする?

G:うん、よくするよ。

T:たとえばどんな話?詳しく教えて。

G:バイトの話とか、友達の話とかが多いかなあ。バイトの話は、人間関係の話もしたり

するけど愚痴とかではないな。バイトでこんなお客さんが来たとか新商品がでたとか

ほんまにとりとめもない話。お互いの友達の話もよくする。噂話に近いかもしれんけ

ど。○○行ったとか、○○さんが結婚したらしいとか。今日どこに行って何があった

かっていう報告とまではいかんけどそういう感じの話が多いよ。

T:恋愛の話はする?

G:私の彼氏の話をしたりするときもあるかな。でもこれも○○行ったとか、彼氏はこん

な人で…とか些細な事が多いよ。どちらかといえば恋愛の話以外の話をしていること

が多いし。

T:お母さんに悩みを相談したりする?

G:うん、するよ。

T:どんな悩みを相談する?

G:友達とうまくいってないときとか、就職活動がうまくいってないときとか何か壁にぶ

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つかったとき、話してることが多いかなあ。恋愛の悩みはお母さんには相談しない。

これは、友達にする。

T:なんでお母さんに悩みを相談するん?

G:私は、昔から悩みでもそれ以外の話でも何でもお母さんに話してきたから、それが習

慣になってるというか。お母さんは、私のことをよくわかってるから、私のちょっと

した異変にもすぐに気づくから。だから、お母さんから、何かあったの?と聞かれて、

そこから悩みを話し出すっていうこともある。お母さんは、自分の倍以上生きてるわ

けやから、アドバイスが欲しいときも私が納得できる言葉を言ってくれる。信頼でき

る。親やから、当然遠慮はないしキツイことを言ってきたりすることもあるし、そこ

から喧嘩になることもあるけどでも気づいたらまた話してる。あとは、私はマイナス

思考でくよくよ悩みがちなんやけど、お母さんはプラス思考で「なんとかなる」が口

癖のような人で、私が悩みのどつぼにはまる前に助け出してくれるからかも。お母さ

んと話したら、元気になれるから。

T:お母さんに気がねや遠慮はある?

G:ないな。お母さんにまで遠慮してたら疲れるわ。お互い遠慮はないよ。

T:しつけとかはどんな感じやった?

G:勉強に関しては、小学校のときよく宿題しなさいとか、勉強しなさいとか言われた記

憶がある。でも、中学生からは、勉強しなさいっていわれることがなくなった。なん

でかはわからんけど。受験校は、高校受験のときは、お母さんにどこを受けるか相談

したりもしたけど、最終的には高校も大学も自分で決めた。しつけは、厳しかったか

も。食事のマナーとか箸の持ち方とか好き嫌いしたら起こられるから、何でも我慢し

て食べてたし。挨拶とか行儀もそうやし。お母さんは怒ったらめっちゃ怖かったから。

今は、さすがに怒られることはないけど、昔は些細な事でよく怒られた。門限もしっ

かりあったし、それは守るようにしてた。もちろん嘘ついて破ったりすることもあっ

たけど。

T:お母さんのことを尊敬していますか?

G:してる。お母さんは、専業主婦なんやけど家族みんなが快適に楽しく暮らせるように

常に考えてて。掃除も料理も洗濯もさぼらない。でも、家のことだけしてるのかって

いうとそうじゃなくて、友達といろんなとこ出かけて活動的やし、自分の好きなこと

にも夢中になってる。本当に、いつも元気でプラス思考で楽しそう。幸せやって堂々

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と言ってるお母さんを尊敬する。ファッションとか美容の話を一緒にできるぐらい若

い女性としての気持ちを今も持ち続けてるところも見習いたいなと思うし。あとは、

いざというときに頼りになるし、絶対私の味方でおってくれるっていう安心感がある。

T:じゃあ、お母さんはどんな存在?

G:親友でもあり母でもあるっていう感じかなあ。難しいけど。何の遠慮もなく甘えたり

頼ったりできる大きい存在。いなくなることは考えられへんし、考えたくない。自分

が、大人になるにつれて、母から親友っぽくなってきたような気がする。お母さんは、

私に関してはもう子育ては終わったって言ってる。あとは、妹だけらしい。

T:母親との関係に満足してる?

G:うん、してるよ。一緒にいて楽しいし、これからもこういう 2人の関係でおりたいと

思う。

T:将来母親になった時お母さんみたいになりたい?

G:なりたいなと思う部分もあるけど、私にはまねできないなと思うことも多いな。あん

なにテキパキ家事はこなせないし。でも家族の事を一番に考えて、愛情を注いでると

ころとか、いつも元気で明るいところとかは、あんな風になりたいなと思ったりする。

でも完全にマネしようとは全く思わない。私は私やから。

T:お母さんと過ごす時間は多い?

G:私はバイトや友達との約束で家にいないことが多いから、そんなに時間的には多くの

時間はすごしてないかもしれん。お母さんも好きなことしてるし。でも、家にいると

きは、たいていキッチンかリビングにいて、お母さんと話してるな。定期的に買い物

もいったりするし。服だけじゃなくて、スーパーもよく行ったりする。予定がなくて

家にいてるときはお母さんといてる。

T:家事は手伝う?

G:あんまり手伝ってない。たまに、掃除と料理を手伝うけどほんまにたまにしかしない

な。

【Hさんインタビュー】

T:お母さんと一緒に買い物行く?

H:うん、行くよ。お母さんは、ファッションに興味があるんやけど店をあんまり知らん

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から、教えてほしがるねん。だから、私が行く店に連れて行ってあげたり、教えてあ

げたりする。お互い服の趣味も似てるから、一緒に見てても楽しいし。似合うものを

お互い見立てるっていうか。似合わんもんは似合わんってお互い遠慮のないアドバイ

スをし合えるし。あとは、気を使わず自分の行きたい店に行ってゆっくり買い物でき

るから行く。

T:お母さんに服を買ってもらう?

H:私は働いてるからお母さんに買ってもらうってことはないよ。逆に、私がお母さんに

服を買ってあげるときもあるぐらいやし。

T:お母さんと共通の趣味はある?

H:ファッションと音楽の趣味が同じやな。ファッションは、一緒に買い物したりするし、

音楽は、一緒にライブに行ったりするし、CDを貸し借りしたりするかなあ。あとは、

お互いカラオケ好きやからよく行くし、お笑いも好きやからDVD借りてよく見るよ。

言って初めて気づいたけど、共通の趣味は多いほうかも。

T:お母さんとよく話をする?

H:するよ。お母さんからは、仕事の愚痴をよく聞かされてるかな。お母さんは力仕事し

てて、体力的にもキツイ上に人間関係もうまくいってないみたいやから自然とそうい

う愚痴みたいなんが多くなるんかもしれん。私から話すことといえば、彼氏の愚痴が

多いかな。お母さんの昔の恋愛の話を聞かせてもらえるから、つい自分の話もしてし

まう。ちょっと恥ずかしいんやけどな。あとは、化粧品の話もする。どの化粧品がい

いとか肌にあうかあわんかとか。

T:悩みを相談したりはする?

H:うん。将来の話をすることが多いかな。私は、将来的には福祉関係の仕事に就きたい

と思ってるから、そのことについてよく話したりする。お母さんの友達に福祉の仕事

してる人がいるから、参考になるし。悩みは、あんまりないからお母さんに限らずあ

んまり話さんねん。自分の中で答えが決まってて、ただ話しを聞いて欲しいときとか

にお母さんに聞いてもらうってことの方が多いかも。

T:なんでお母さんに話すん?

H:自分が話を聞いてほしいって思うときに必ず聞いてくれる。友達やったら相手の都合

あるしなかなかそういうわけにはいかんやん。あと、私とお母さんは性格や考えてる

ことが似てるし、小さいときから私のことをずっと見てきてよくわかってくれてるか

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ら、「あんたは、そういうとこが昔からあるな、でもそれはあかん」っていう感じで的

確にアドバイスしてくれる。私よりも物知りやし、人生の先輩やし。信頼してるし、

私が話したら自分の事のように真剣に聞いてくれる。それと、こっちの悩みの度合い

もわかってくれて、アドバイスを欲しい時はくれるし、励まして欲しいときは励まし

てくれる。ただ聞いて欲しいときは、共感して聞いてくれるし。こっちの気持ちをよ

くわかってくれて自分がしてほしいことを何も言わんでもしてくれるから、楽やし安

らげるからかな。小学校ぐらいから話し出したよ。

T:お母さんに遠慮や気がねはある?

H:遠慮や気がねとはいわんけどお母さんももう年やし、体は気遣うな。でも、それぐら

い。

T:しつけはどんな感じやった?

H:おばあちゃんが農家やから、食べ物のことに関してはよく言われた。ご飯は残したら

あかんとか、箸の持ち方とか、好き嫌いとか、食べ方とか。当たり前のことやけど、

なかなか身につかんから言われて良かったと思う。勉強のことに関しては、宿題しな

さいぐらいしか言われんかった。小学校のときは、私別に言われんでも宿題はやって

たから、ほとんど言われなかった。勉強とかよりも、私は女の子うやから、風呂・ト

イレ掃除とか食器洗い、洗濯、料理、買い物などを普段からやるようにってよく言わ

れてた。お母さんが働いてたからかもしれんけど。でも、基本的には、親は口うるさ

くなかった。

T:お母さんのこと尊敬してる?

H:してる。お母さんは苦労してるし、大変なことも多いのに明るく元気に生きてていつ

も前向きで、しんどいのを周りに見せない。それに、4 人の子どもを産んで立派に育

ててきた。そういうとこは尊敬してる。性格は、おっとりしてるけど今も力仕事を続

けてて根性がある。お母さんをずっと見てきたから、少々しんどくても頑張らなあか

んと思える。あとは、女性として魅力的。いつまでも若い。おしゃれに興味があるし、

きれいでいようと努力してる。そこも尊敬してるかな。

T:お母さんは、どんな存在?

H:普段常に考えてるわけじゃないけどいつも心の奥におる。いて当たり前やからあんま

り意識はしてないけど。

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