男性全身性エリテマトーデスの臨床像について ー...

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日皮会誌:100 (7), 761―772, 1990 (平2) 男性全身性エリテマトーデスの臨床像について ー当科22例の総括- 盛岡奈緒子 紫芝 敬子** 土田 哲也,上田 小川喜美子***大路 昭和49年~63年に当科で経験した男性全身性エリテ マトーデス(SLE)22症例について, ARA1982年診断 基準11項目を中心に臨床的考察を行った.皮膚症状と してはwide spread discoid lupus erythematosusを 初発症状とする症例が14例(64%)と多かったが, nodu- lar cutaneous lupus mucinosis 3 例, vesiculobullous LE1例など,比較的まれな皮疹もみられた.臓器症状 ではn例(50%)が何らかの腎症状を呈し,このうち 6例はネフローゼ症候群を生じた.免疫学的検査では 1例にC,A欠損が検出された. 男性のSLEは症例数が少なく,現在まで臨床的に一 定の傾向が掴めていない.当科の症例はいずれも多彩 な臨床所見を呈し, SLEの典型例からややはずれた亜 型が多いと考えられる.また経過中,病像が著しく変 化する症例も多く,今後も注意深い観察を要する. はじめに 男性における全身性エリテマトーデス(SLE)は発 症頻度が女性の1/9と低く1),症例数が少ないため,臨 床的に一定の傾向を把握することが困難である.当科 では昭和49~63年に22例の男性SLE患者を経験した. この間の女性症例数は99例であり,男:女=2:9と 男子の一般的発症頻度より高かった.これら男性例は 女性例ではみられ難い症状,検査所見を呈する症例が 多く,個々に印象的であった.そこでこれらの症例を 皮膚症状及びアノリカリウマチ協会(ARA) 1982年の 診断基準11項目(表12))について集計し,若干の考察 東京大学医学部皮膚科学教室 *昭和大学医学部皮膚科学教室 ¨佼成病院皮膚科 *¨東京都志村皮膚科クリニック ≪***三楽病院皮膚科 平成元年n月21日受付,平成元年12月18日掲載決定 別刷請求先:(〒113)文京区本郷7 ―3―1 東京大 学医学部皮膚科 盛岡奈緒子 鈍嗣 飯島 昌孝****石橋 正文* 康正 Table 1 American Rheumatism Association criteria fordiagnosisofSLE (1982). 1)頬の紅斑 2)円板状紅斑 3)光線過敏 4)ロ腔潰瘍 5)関節炎 6)義膜炎 a)胸膜炎,またはb)心嚢炎 7)腎障害 ,’ a)持続性蛋白尿,またはb)細胞性円柱 8)神経系の異常 a)痙栄;またはb)精神症状 9)血液の異常 a)溶血性貧血,またはb)白血球減少症,またはc)リンパ球減少症, またはd)血小板減少症 咄免疫学的異常 a)LE細砲陽性,あるいはb)抗DNA抗体異常値,あるいは c)抗Sm抗体陽性,あるいはd)梅冑血清反応隔性 11)抗核抗体陽性 以上の11のうち4,あるいはそれ以上の項目が同時,または経時的 に,観察期間をおいても常に陽性であればSLEといえる。 (塵1lj優一:新tい全身性エリテマ1-デス,全身性強皮症の診断基準, 現代医療15:1372. 1983より引用) を加えたのでここに報告する. 当科の統計 発症年齢:SLEの初発症状発生年齢は10~48歳(平 均28.3歳)であり,このうち10歳代は6例,20歳代は 7例,30歳代は6例,40歳代は3例であった.これは 一般的なSLEの好発年齢とほぼ一致している. 皮膚症状(表2, 3):discoid lupus erythematosus (DLE)と思われる皮膚病変は17例(77%)と最も高頻 度にみられた.このうち14例(64%)は顔面以外に広 く皮疹の分布するwide spread DLE であった.これら DLEのうち,1例(症例20)は,境界明瞭で,角化の 著しい隆起性局面をまじえており(図1),組織学的検 索は行っていないが, DLEの特殊型であるhypertro- phic LE3)と考えられた.また, ARA診断基準項目の 一つである頬の紅斑は13例(59%)に生じた, subacute cutaneous lupus erythematosus (SCLE)様の皮疹は 3例にみられ(図2),このうち2例(症例10, 15)は annular・polycyclic type, 1例(症例9)はpapulo- squamous type と思われた.これらはいずれもlupus erythematosus (LE)の典型的な皮膚病変とされてい るが,他にLEの特殊型といわれる比較的まれな皮疹

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Page 1: 男性全身性エリテマトーデスの臨床像について ー …drmtl.org/data/100070761.pdf男性SLE 例15, 18)ではlgGをはじめ,様々な成分の陽性所見 を認めた.症例13の顔面の紅斑は圧痛,浸潤を伴い,臨床的にはSweet病に酷似しており,LEの皮膚病変

日皮会誌:100 (7), 761―772, 1990 (平2)

男性全身性エリテマトーデスの臨床像について

       ー当科22例の総括-

盛岡奈緒子

紫芝 敬子**

土田 哲也,上田

小川喜美子***大路

          要  旨

 昭和49年~63年に当科で経験した男性全身性エリテ

マトーデス(SLE)22症例について, ARA1982年診断

基準11項目を中心に臨床的考察を行った.皮膚症状と

してはwide spread discoid lupus erythematosusを

初発症状とする症例が14例(64%)と多かったが, nodu-

lar cutaneous lupus mucinosis 3 例, vesiculobullous

LE1例など,比較的まれな皮疹もみられた.臓器症状

ではn例(50%)が何らかの腎症状を呈し,このうち

6例はネフローゼ症候群を生じた.免疫学的検査では

1例にC,A欠損が検出された.

 男性のSLEは症例数が少なく,現在まで臨床的に一

定の傾向が掴めていない.当科の症例はいずれも多彩

な臨床所見を呈し, SLEの典型例からややはずれた亜

型が多いと考えられる.また経過中,病像が著しく変

化する症例も多く,今後も注意深い観察を要する.

           はじめに

 男性における全身性エリテマトーデス(SLE)は発

症頻度が女性の1/9と低く1),症例数が少ないため,臨

床的に一定の傾向を把握することが困難である.当科

では昭和49~63年に22例の男性SLE患者を経験した.

この間の女性症例数は99例であり,男:女=2:9と

男子の一般的発症頻度より高かった.これら男性例は

女性例ではみられ難い症状,検査所見を呈する症例が

多く,個々に印象的であった.そこでこれらの症例を

皮膚症状及びアノリカリウマチ協会(ARA) 1982年の

診断基準11項目(表12))について集計し,若干の考察

   東京大学医学部皮膚科学教室

  *昭和大学医学部皮膚科学教室

 ¨佼成病院皮膚科

 *¨東京都志村皮膚科クリニック

≪***三楽病院皮膚科

平成元年n月21日受付,平成元年12月18日掲載決定

別刷請求先:(〒113)文京区本郷7 ― 3 ― 1 東京大

 学医学部皮膚科 盛岡奈緒子

鈍嗣  飯島

昌孝****石橋

正文*

康正

Table 1 American Rheumatism Association

 criteriafordiagnosisof SLE (1982).

1)頬の紅斑

2)円板状紅斑

3)光線過敏

4)ロ腔潰瘍

5)関節炎

6)義膜炎

   a)胸膜炎,またはb)心嚢炎

7)腎障害      ,’

   a)持続性蛋白尿,またはb)細胞性円柱

8)神経系の異常

   a)痙栄;またはb)精神症状

9)血液の異常

   a)溶血性貧血,またはb)白血球減少症,またはc)リンパ球減少症,

   またはd)血小板減少症

咄免疫学的異常

   a)LE細砲陽性,あるいはb)抗DNA抗体異常値,あるいは

   c)抗Sm抗体陽性,あるいはd)梅冑血清反応隔性

11)抗核抗体陽性

     以上の11のうち4,あるいはそれ以上の項目が同時,または経時的

   に,観察期間をおいても常に陽性であればSLEといえる。

 (塵1lj優一:新tい全身性エリテマ1-デス,全身性強皮症の診断基準,

現代医療15:1372. 1983より引用)

を加えたのでここに報告する.

         当科の統計

 発症年齢:SLEの初発症状発生年齢は10~48歳(平

均28.3歳)であり,このうち10歳代は6例,20歳代は

7例,30歳代は6例,40歳代は3例であった.これは

一般的なSLEの好発年齢とほぼ一致している.

 皮膚症状(表2, 3):discoid lupus erythematosus

(DLE)と思われる皮膚病変は17例(77%)と最も高頻

度にみられた.このうち14例(64%)は顔面以外に広

く皮疹の分布するwide spread DLE であった.これら

DLEのうち,1例(症例20)は,境界明瞭で,角化の

著しい隆起性局面をまじえており(図1),組織学的検

索は行っていないが, DLEの特殊型であるhypertro-

phic LE3)と考えられた.また, ARA診断基準項目の

一つである頬の紅斑は13例(59%)に生じた, subacute

cutaneous lupus erythematosus (SCLE)様の皮疹は

3例にみられ(図2),このうち2例(症例10, 15)は

annular・polycyclic type, 1例(症例9)はpapulo-

squamous type と思われた.これらはいずれもlupus

erythematosus (LE)の典型的な皮膚病変とされてい

るが,他にLEの特殊型といわれる比較的まれな皮疹

Page 2: 男性全身性エリテマトーデスの臨床像について ー …drmtl.org/data/100070761.pdf男性SLE 例15, 18)ではlgGをはじめ,様々な成分の陽性所見 を認めた.症例13の顔面の紅斑は圧痛,浸潤を伴い,臨床的にはSweet病に酷似しており,LEの皮膚病変

762 盛岡奈緒子ほか

が,予想以上に高頻度でみられており,注目に値する.

まず,症例1, 5, 20の3例で躯幹,四肢にムチソ沈

着による皮下結節(いわゆるnodular cutaneous lupus

mucinosis'")を認めた(図3, 4).当科で経験したか

ぎりでは女性SLE患者で同症を生じた症例はなく,

nodular cutaneous lupus mucinosisは男性患者に優

位に生じるという可能性があげられる.また,症例5

では顔面,背部,頚部に紅量を伴う小水庖を生じ,

Camisaらの提唱する5)vesiculobullous LE(または

bullous LE)と考えられた(図5,6).この他, chilblain

lupusは3例(症例13, 16, 19)にみられたが, LE

profundusを生じた症例はなかった.

 その他,一般にLEの範躊には入れられていない皮

膚病変も散見される. leukocytoclastic vasculitis によ

る紫斑か2例(症例4, 5)でみられた.また,寒冷

時に増悪する暮麻疹様の膨疹が1例(症例2)でみら

れたが,病理組織学的検索は行っていない.

 蛍光抗体直接法による免疫組織学的検索は13症例の

計15病変について行った(表3).これら15病変はいず

れも表皮真皮接合部において免疫グロブリンないし補

体成分の沈着を示した.特に蝶形紅斑と思われた5病

変(症例1, 11, 16, 17, 19), DLE様の紅斑2病変(症

Table 2 Skin lesions of 22 male patients with SLE.

Case Number発症年齢現在の年齢

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

29 17 29 46 38 18 28 38 29 45 25 36 26 35 14 20

40 32 45 *45 24 31 52 32 63 36 52 41↑醇26 22

7 185 486 55

9 20 21 22

0 32 38 15

2 42 47 22

計 %

acute cutaneous LE

 昌昌。

subacute cutaneous LE

 annular・polycyclic

。ニグ]二二1E

 D辻alized l

wide spread

 chilblain LE

ユprofundus

 ゴゴ:にllous LE

 二言

 pitting scar

ぶ器"e

ロ腔漬瘍

○○○   ○ ○○○○○○○○○○○ ○○○○○   ○   ○○○○○○○ ○  ○

○  ○  ○○  ○ ○ ○      ○○    O  o o       O      O

            O     O           O

O             o o O O o o o o o o o  O o o o o                O   O   O

     OO    O                  OO  o o O              O

              O   o o O   o o  o o O○  ○ ○  ○    ○     ○○ ○

86

77

59

41

23

14

 9

 5

82

77

14

64

44

 0

 5

14

14

 5

 5

 5

45

27

  *:予後不明

↑9 :死亡(死亡時の年齢)

Table 3 Direct immunofluorescence studies

Case Number 1 58 ’

9 10 11皮疹部

 部位

 性状

 沈騰の有無,性状

   IgG

   IgA

   igM

   C3

  顔面

  蝶形紅斑

   *+BMZ, linear

   -

   -

   -

 晶こ

‡]BMZ、linear

   -

   -

  背部

紅斑を伴う水瘍

‡]BMZ,linear

    -

    -

  下腿

紫斑を伴う紅斑

生I

BMZ,linear

  前額部

  紅斑

士BMZ. linear

 ここ

白:乙,

  顔面

  蝶形紅斑

‡BMZ,linear

無疹部

 部位

 沈●の有無,性状

   lgG

   igA

   IgM

   C3

  前腕

+ BMZ. linear

    -

    -

    -

   前腕

‡jBMZ. linear

  -

  -

ND゛゛ ND ND

  前腕

+

BMZ. linear

Page 3: 男性全身性エリテマトーデスの臨床像について ー …drmtl.org/data/100070761.pdf男性SLE 例15, 18)ではlgGをはじめ,様々な成分の陽性所見 を認めた.症例13の顔面の紅斑は圧痛,浸潤を伴い,臨床的にはSweet病に酷似しており,LEの皮膚病変

男性SLE

例15, 18)ではlgGをはじめ,様々な成分の陽性所見

を認めた.症例13の顔面の紅斑は圧痛,浸潤を伴い,

臨床的にはSweet病に酷似しており,LEの皮膚病変

としてはやや非典型的であったが, lupus band test で

は陽性所見が得られた.症例5の水庖性病変では表皮

真皮接合部にIgG, IgAの線状沈着を認め,免疫電顕に

より沈着部位はsub-lamina densaであることが判明

し, vesiculobullous LEの診断が確定した. nodular

cutaneous lupus mucinosis を疑った皮下結節では(症

例5 , 20),いずれも表皮真皮接合部におけるIgG, IgA

等の陽性所見を認め,このうち症例20では真皮血管壁

においてもIgG, IgA, IgM及びC3の沈着がみられた.

血管壁における陽性所見はこの他症例19の蝶形紅斑部

でもみられたが,この2例はいずれ払無疹部でも血

管壁での陽性所見を示した.一方,組織学的に著しい

血管炎のみられた症例5の皮下結節部では血管壁にこ

のような陽性所見は認められず,血管炎の発症に免疫

複合体は必ずしも関与していない可能性もある.無疹

部ではlupus band testを行った8症例中7例(88%)

が陽性であり,『司一症例の皮疹部と無疹部とはほぼ同

じ結果を示した.

 日光暴露により皮疹の誘発あるいは増悪を示した症

例は10例(45%)にのぼった.特に症例4では日光照

射により熱傷様の水庖が誘発された.口腔潰瘍は6例

(27%)にみられたが,いずれも軽度のもので,局所療

法で治癒した.

 皮疹以外の臨床症状(表4, 5):神経症状を呈した

のは1例(症例10)のみであった.この症例は脳幹部

on skin biopsies with or without eruptions.

763

Fig. 1 Wel】demarcated hyperkeratotic indurated

 plaque with purpulish halo on the upper back

 (case 20).

の虚血により,一過性のmyoc】onus及び回転性めまい

を生じたが,数日で消失し,以後再発はみられていな

い.漿膜炎は3例(胸膜炎2例,心嚢炎1例)にみら

れた.関節炎は19例(86%)と高頻度に認められた.

この中では肘,膝,指趾などの関節に疼痛,腫脹を生

じる症例が多く,破壊,変形を示した症例は少ないが,

1例(症例21)は炎症後,手指のPIP関節の著しい屈

曲拘縮を残し,また左膝関節の化膿性関節炎も合併し

13 15 16 17 18 19 20

  前額部

有痛性浸潤性紅斑

   -

   -

十BMZ、linear

   -

   顔面

 DLE様紅斑

十 BMZ

十 linear_  &

十 granular

  顔面

  蝶形紅斑

   顔面

  蝶形紅斑

+ BM2,

十 granular

   顔面

 DLE様紅斑

- BMZ,

十 linear

  顔面

  蝶形紅斑

ブ: 

BMZ、BV

j

granular

 顔 面

DLE様紅斑

 十

 十BMZ,

 +granu- +lar

  背 部

 皮下結節

十BMZ、BV

十granular

ND

  上腕

于j

JjEf

l

lar

 上腕

  -

  -・7ご¨

  -

前腕

 -

 -

 -

 -

NO

  上腕

十  BMZ、BV-

  granular-

   前 腕

于jBMz、granular

十 BMz、BV、granular

 ・BMZ= basement membrane zone

" ND =rc;t done■・・BV =blood vessel

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764 盛岡余緒ぐほか

Fig.2 Annular-polycyclic erythemas of the back and shoulders (Case 10).

Fig. 3 Cutaneous nodules of the forearm (Case 5) Fig. 4 Histologic findings of the nodule in Fig. 3:

 collagen bundles are separated by alarge amount

 of mucin, which is highly positively stained by

 Alcian blue staining and digested by hyalu-

 ronidase. (H&E,×40)

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男性SLE

Fig. 5 Small bullae with erythematous halo 0f the forehead (Case 5).

Fig. 6 Histo】ogic findings of the buUa in Fig. 5 : microabscess-like change by

 neutrophils is seen in the papillary dermis and a subepidermal buUa is being

 formed.

 11例(50%)が何等かの腎症状を呈した.このうち

5例は0.5~lg/dayの尿蛋白あるいは尿沈澄中の少量

の白血球,赤血球,細胞性円柱などの異常所見が持続

765

するのみであったが,他6例(症例3, 4, 13, 19,

20, 22)では尿蛋白は3~23g/dayに及び,ネフローゼ

症候群を呈した.一般に年齢層が低い程,特に10歳代

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766 盛岡奈緒子ほか

で蛋白尿,浮腫等の症状は顕著であった.腎症状の発

症,進行は他の症状とは必ずしも並行せず,むしろず

れがみられることが多い.中でも若年齢層(症例3,

13, 19)は,ネフローゼ症状のみ数年間続いた後に皮

疹などの症状が顕症化してくるという傾向(LE sine

lupo)を示した.腎生検は4例(症例3, 17, 19, 20)

で施行しており, focal segmental glomerulonephritis

からdiffuse proliferative glomerulonephritis

(DPGN)まで病理像は様々であるが,いずれもループ

ス腎症に合致した組織所見が得られた(図7, 8).こ

の中でDPGNは,一般に腎不全に進行する可能性が

高く,予後が悪いとされているが,DPGNを呈した症

例17は臨床的には現在まで血尿しかみられておらず,

臨床症状と病理所見は必ずしも並行しないと考えられ

Table 4 Clinical features of 22male patients

る.これら腎症状のステロイドに対する反応は比較的

良好であるが,ステロイドのみではコントロールでき

ず,免疫抑制剤等の併用を必要とする症例もあった(症

例3).腎病変は多くの男性SLE患者においてSLEの

診断確定のために重要であるとともに,しばしば予後

を左右し,治療のメルクマールともなり得る.患者の

診療にあたっては定期的な尿所見のチェッタが肝要で

あるが,症例17のように尿所見に異常がみられないう

ちに病理学的異常が緩徐に進行している可能性もあ

る.

 検査所見(表4, 5):抗核抗体は20例(91%)で陽

性, homogenousないしspeckled pattern を示すもの

が多かった. ARA診断基準項目内の免疫学的異常所

見は11例(50%)で認められ,内訳はLE細胞陽性7例

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with SLE according to ARA criteria.

男性SLE

 *:倍率

**:型

(32%),抗DNA抗体異常値8例(36%), BFP 2例

(9%),抗Sm抗体陽性1例(施行7例中14%)であっ

た.血液学的異常所見は15例(68%)で認められた.

 ARA診断基準項目以外にも特筆すべき異常が散見

される.症例17では補体成分C4Aの欠損が判明したが,

これは常染色体劣性遺伝形式で遺伝することが知られ

ており6),この症例の父母及び弟はC4A欠損のheter-

ozygousであった.近年,C4A欠損者がSLE発症の

potentialityを有するとの報告があいついでおり6),

C4A欠損からSLE発症に至るmechanismは不明であ

るものり,この症例はSLEの病因解明にあたって重要

な情報を呈示しているものと思われる.

 合併疾患(表4):症例11はPSSとのoverlap症候

群と考えられる.この症例は顔面の蝶形紅斑,掌脈の

ho=homogenous

sp°Speckled

peニperipheral

nu=nucleolar

767

DLE様紅斑を初発症状とし, SLEと診断されたが,そ

の約7年後に抗Scl-70抗体陽性が判明し,さらにその

3年後,手指,前腕の皮膚硬化,手指の屈曲拘縮,指

尖のpitting scar, 指端の壊疸などPSS様の症状が顕

症化した.現在では,初期にみられたSLEに典型的な

症状は認められなくなっており,当科の男性SLE患者

のうち,経過中の病像の変化が最も著しい症例と思わ

れる. Sjegren症候群の合併は1例(症例6)のみで

あったが,実際には自覚症状のないsub-clinical Sio-

gren syndromeはさらに多いと考えられ, Schirmer

test,sialographyなどの精査を頻回に行えば高率に異

常が検出されるであろ侃

 血液疾患ではautoimmune hemolytic anemiaは2

例(症例6, 15), thrombocytopenic pupura が2例(症

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768 盛岡奈緒子ほか

例6, 20)で認められた.

 経過,予後:症例により,経過は全く異なるが,発

熱,紅斑,関節症状などを呈して急性発症した症例は

1例のみ(症例17)とまれであり,その他の症例の経

過は緩徐であり,すべての症状がそろってSLEの病像

が完成するまでには数年~十数年を要することが多

  Table 5 Symptoms and laboratory data of 22

   male patients with SLE.

(I)臨床症状

症例数 % 症例数 %

関節症状

漿 膜 炎

腎 症 状

19

3

11

86

14

50

神経症状

筋 症 状

5

36

査所見

抗核抗体 20

8

4fo <=) ・― r--

I  I

  抗DNA抗体

  BFP

  抗Sm抗体

血液異常

  溶血性貧血

  白血球減少

  血小板減少

  リンパ球減少

8

2

1

15

5

10

6

16440026m

9361 53QJ

Coombs test陽性

RA因子陽性

抗RNP抗体

抗SS-A抗体

抗Scl-70抗体

抗血小板抗体

抗白血球抗体

寒冷凝集反応陽性

血中免疫複合体異常値

C4A欠損

C 3Breceptor欠損

5633111231

ro in r**- m

(NJ ■^t- rsi

りiり7441

2211~

      ぐ

11

ぐく /2)'

/])■

9

14

 5

(2/2)'

4;【陽性例数y検査施行例数】

く,長期にわたる経過観察が必要である.

 現在までに22例中1例(症例14)はSLE発症から約

18年後, non Hodgkin lymphoma のため,53歳で死亡

している.症例4の予後は不明であるが,その他の患

者は生存中である.

 治療:21例(95%)にステロイド内服治療を行った.

初回投与量はプレドユゾロソ換算5~70mg (平均39.7

mg)/dayで,一般に皮疹,関節症状,発熱,全身倦怠

感等には有効であると考えられるが, wide spread

DLEを呈した症例4, 20の皮疹に対しては無効で,内

服を中止した.この2例には金製剤の投与を開始し,

皮疹は軽快したが,いずれも金塩総量85mg程度投与

した時点で,発熱,肝障害,蛋白尿等の副作用を生じ

たため,中止した.一般的に金製剤は皮疹特にDLE様

皮疹に対する効果は明らかで,我々も多くの有効例を

経験しているが,皮疹以外の全身症状に対する効果は

不定であり,しかもSLE患者は腎症状,汎血球減少を

有していることが多く,金投与によりさらにこれらの

症状が増悪する可能性がある.従って,金療法はSLE

の全身症状を改善する目的では用いるべきでないと考

えられる.免疫抑制剤としてはネフローゼ症候群を呈

した症例3にazathioprineを,自己免疫性溶血性貧血

を合併した症例15にcyclophosphamideを,いずれも

Fig. 7 Diffuse proliferativeglomerulonephritis (Case 17): the proliferationof

 capillary endothelial and mesangial cellsis seen. Parts of the capillary base-

 ment membrane are thickened with fibrinoiddegeneration (H&E,×400).

Page 9: 男性全身性エリテマトーデスの臨床像について ー …drmtl.org/data/100070761.pdf男性SLE 例15, 18)ではlgGをはじめ,様々な成分の陽性所見 を認めた.症例13の顔面の紅斑は圧痛,浸潤を伴い,臨床的にはSweet病に酷似しており,LEの皮膚病変

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         similary.

プレドユゾロソとともに経口投与した.2例とも明ら

かな副作用はみられず,免疫抑制剤を漸減し,中止し

た後は少量のプレドユゾロソ内服で維持することがで

きた.これらの免疫抑制剤にはステロイド単独では軽

快しない重篤な症状,特に腎症状に対する効果を期待

できるが,発癌性の危険性は常にあり,あくまでもス

テロイドを補助する目的の少量短期間投与にとどめる

べきであろう.

      男性SLE患者の皮膚病変

 LEの皮膚病変のうち,特に男性SLE走者において

重要であると思われるものについてぢ察を加えた.

 1) acute cutaneous LE (acute cutaneous type)

(仮称,蝶形紅斑を含む):我々が‥一般にLEの皮唐病

変と考えている,紅斑を土とする病変のうち,後述す

るDLE,SCLEを除外したものについては一定した呼

称はないが, Sontheimerらの分類に従えば'", acute

cutaneous LE と呼ぶべきであろう.しかし,発疹名に

対して……LEと呼ぶことは混乱を招く可能性が強

く,……typeと呼称する方が妥当かもしれない.これ

らの多くはSLEの活動期に出現し,やや浮腫状で,

DLEのような顕著な鱗屑及び毛包性角化,中心部の萎

縮は伴わず,顔面,指背,掌陳,体幹などに分布する.

多くはステロイド内服にすみやかに反応して軽快し,

「」f C1,」,S seen 2L」():i'

||即|川||黙リ|||り'm\m川聊‖TTSUSISIIIB'JI fsi^T^safi^'s

769

癩痕を残さない.組織学的には表皮基底川の液状変性.

を主体とし, lupus band test陽性である.肖科のリ汁|モ

例では19例(86%)がこの範躊に属するとべこ丿わる

紅斑を呈したが,この19例中には1)としては非叫型的

な病変も多数みられる.例えば, dermatomydsitisで

みられる眼瞼のヘリオトロープ疹, Gottn�s si印等

に酷似した紅斑も含まれている(症例10, 2\). iた幻

例13はSweet病様の浸潤,圧痛の著しト暗赤色斑をい

した八組織学的所見及びlupus band test '')陽性所見

から1)の範躊に属するものと考えた(裏3八逆に臨床

的に1)に合致すると思われた紅斑の中にも紺織学的に

は真皮上層の著しい好中球浸潤を伴l\ Sweet病に酷

似した病理像を示すもの(症例9)もあった.さらに

我々がSLE診断基準項目である頬の紅斑と考えた13

例の中にも分布が左右非対称であったり,鼻唇溝にも

及ぶなど,典型的とは言い難い皮疹が散見された.こ

のように典型例からややはずれるような皮疹について

は臨床的,組織学的,免疫組織学的所見を十分検討し

た上で,総合的に診断を下す必要があろう.

 2) chronic cutaneous LE (chronic cutaneous

type)

 a) DLE (discoid type):男性SLE患者において最

も高頻度に認められ,かつ初発症状となることの多い

Page 10: 男性全身性エリテマトーデスの臨床像について ー …drmtl.org/data/100070761.pdf男性SLE 例15, 18)ではlgGをはじめ,様々な成分の陽性所見 を認めた.症例13の顔面の紅斑は圧痛,浸潤を伴い,臨床的にはSweet病に酷似しており,LEの皮膚病変

770 盛岡奈緒子ほか

主要な皮膚症状と考えられる.当科男性SLE患者では

17例(77%)にDLEを生じた.これは女性を含めた全

SLE患者中のDLE発症率14%8)に比べ,有意に高い.

しかもこの17例はいずれも他の皮膚病変を伴い,特に

1) acute cutaneous LEの合併は15例と最も多く,男

性DLE患者中, acute cutaneous LE との併存を示す

ものはSLE発症の可能性が高いと思われる. SLEの

疾患全体としての活動性は必ずしも皮膚症状とは並行

しない.特に症例4はwide spread DLE の症状のみ数

年間持続し,皮膚症状としては経過が比較的安定して

いると思われていたところ,突然尿蛋白陽性所見が出

現し,ネフローゼ症候群を呈した.現在当科でDLEと

して診療を受けている男性患者はかなり多いが,特に

wide spread DLEは今後SLEへ移行する可能性が高

いことを念頭に置き,他症状,異常検査所見の出現に

十分注意を払う必要がある.

 b) chilblain LE (chilblain type):chilblain LE の

発症は一般に男性では極めて少ないといわれている

が9),当科男性SLE患者では3例(14%)と比較的高

頻度であった.この3例でchilblain LE は指背,耳介

などに分布し,いずれも発症数年前より冬期にpernio

を生じやすいというエピソードがあり,寒冷時の末梢

循環系の血液粘棚度の上昇や血流速度の低下がchib・

lain lupus発症に先行していたと推察される.この3

例はいずれもacute cutaりeous LE及びwide spread

DLEを合併しているが, chilblain LE 自体の活動性は

他の皮疹に全く並行せず,また全身的あるいは局所的

ステロイド投与も無効であった.

 c) LE profundus (profundus type):LEの一亜型

とされているが, SLE患者における発症頻度は2%と

低い9).当科男性SLE患者にはこの皮疹はみられな

かった.

3) subacute cutaneous LE (SCLE) (subacute

cutaneous type):Sontheimerら7)はLEの皮膚病変

のうち,痘痕を残さない, papulosquamous or

annular・polycyclic lesionを,LEに属する一つの

clinicalentity とし,SCLEという名称で統一すべきこ

とを提唱している. SontheimerはSCLEを,前述した

1)と2a)との中間的位置を占める皮膚病変であると考

えている7).当科男性SLE患者においては臨床的に

SCLEと考えられる皮疹を3例(症例9, 10, 15)に認

めており,組織学的に真皮上層の浮腫は強いが, fol・

licular plugging, hyperkeratosisははっきりしない等

の所見からSCLEと診断したが,これらの病変は厳密

にl)2a)と区別できるわけではない.しかも,この3例

はいずれも1)あるいは2a)と考えられる皮疹を合併し

ており,このような場合,個々の皮疹がl)2a)3)のうち

どれにあたるか,分類することが困難になってくる.

また,現在,SCLEという名称の使い方にもしばしば混

乱がみられる. SCLEをSLEなどと同等に疾患名とし

て用いる傾向があるが, SCLEは一つの疾患概念とし

ては確立されておらず,この名称はあくまでも皮疹名

として用いるべきであろう.

 4) nodular cutaneous lupus mucinosis:長島ら

は, SLE患者に認められる,ムチy沈着による結節状

皮疹をnodular cutaneous lupus mucinosis と命名し,

LEに属する皮膚病変として位置づけている4).ムチソ

沈着の原因としては, SLE患者血清中のhyalu-

ronidase inhibitor 活性の増加,あるいは何らかの活性

化因子(一説にはlgG)によるfibroblast-like cellの

ムチソ産生宜進等があげられているがII)現時点では

真の病因は不明である.この皮疹は比較的まれである

にもかかわらず,当科男性SLE患者22例中3例(14%)

に認められており,また長島らの統計でも16例中9例

が男性であったことから‘),明らかに男性に好発する

病変といえよう.自験例3例とも組織学的には真皮全

層にわたって膠原線維閣にヒアルロソ酸を主体とする

酸性ムコ多糖類の蓄積を認めた.また,症例1,5で

は洲漫性にムチソ沈着を示す真皮内の血管にleu-

kocytoclastic vasculitisの所見が認められたため,

vasculitisがtriggerとなり,局所のムチソ産生が促進

されるという可能性も考えられる.しかし症例5では

mucinosisのみられない下腿にもvasculitisによる紫

斑を生じており, vasculitisとmucinosisが同一部位

に偶然合併したにすぎないとの見方もできる.両者の

因果関係については未だはっきりとした結論は下せ

ず,今後の検討を要する.

 5) vesiculobuUous LE (vesiculobullous type):

SLE患者に水庖性病変を生じることはまれであり,発

症頻度は報告により0.4~8%とまちまちである12)こ

れらの皮疹はvesiculobullous LE(またはbullous

LE)と呼ばれており, Camisaらは5),この皮疹の診断

基準として①ARAの診断基準に基づくSLEの診断

②裸露部もしくは非裸露部に出現する小水庖と水庖③

ジューリング庖疹状皮膚炎に合致する病理組織像④血

中抗基底膜抗体陰性⑤基底膜部にlgGのみならず,

IgM, IgAの沈着を認めることの5項目をあげている.

自験例(症例5)は5項目をすべて満たしており,

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男性SLE

vesiculobuUous LEの典型例と思われる.本症には

DDSが奏効するとの報告もあるが12)自験例ではリソ

デロソ6mg/day投与が著効を示しており,DDS投与

による腎肝障害,汎血球減少が懸念される患者にはス

テロイド大量療法を選択することも可能であろう.

vesiculobullous LE はSLEの活動期,特に著しい腎症

状を呈する時期に出現しやすく,かつこの皮疹は他症

状と並行して軽快,消槌する煩向があるといわれてい

る薦自験例でも水庖発生時,補体値の低下,抗核抗体

強陽性などの免疫学的異常所見が並行してみられてい

た.本症は稀有な病変であるが,特にSLEの疾患全体

の活動性を反映する病変であることを重視し,今後症

例を蓄積して本症の位置付けをを明確にする必要があ

る.

                         文

  1) Miller MH, Urowitz MB, Gladman DD, Klinger

   DW : Systemic lupus erythematosus in males,

   j晩血ja?,62 : 327-334, 1983.

  2)塩川優一:膠原病の診断.最近の問題点一新しい

   全身性エリテマトーデス,全身性強皮症の診断基

   準一,現代医療,15 : 1371-1375, 1983.

  3)加藤英行,矢尾板英夫,藤平正利:Hypertrophic

   lupus erythematosusの1例,皮膚臨床,30 :

   1331-1335, 1988.

  4)長島正治,古川 徹,小林 勝,中條知孝,狩野葉

   子,大場進一郎:結節性ループスムチソ症,皮膚臨

   床,27 : 621-627, 1985.

  5) Camisa C,Sharma HM : Vesiculobullos sys・

   temic lupus erythematosus, / Am AcodBer-

   matol, 9:924-933, 1983.

  6) Dunckley H, Gatenby PA, Hawkins B,Naito S,

   Serjeantson sw : Deficiency of C4A is a

   genetic determinant of systemic lupus eryth・

   ematosus in three ethnic groups, / 7聊・

   謂皿噌四鴎14 : 209-218, 1987.

771

           おわりに

 当科の男性SLE患者22例はいずれも極めて多彩な

臨床像を呈した.特に皮膚症状については同一患者に

おいても単調ではなく,多種類の皮疹が同時期に,あ

るいは時期を違えて出没している. ARA診断基準項

目以外の非典型的な皮疹も予想以上に高頻度でみられ

た.

 臓器症状としては腎症状がしばしば患者の経過を大

きく左右すると考えられ,注意を喚起したい.

 また前述したように,患者の病像の著しい変動性に

も注目すべきであり,今後十分な検索の上,再び機会が

あれば22例の経過について詳述したいと考えている.

 本論文の要旨は第40回中部支部学術大会(平成元年10月)

において発表した.

  7) Sontheimer RD, Thomas JR, Gilliam JN:

   Subacute cutaneous lupus erythematosus, Arch

   Z)ぴ?77αtol,115 : 1409-1415, 1979.

 8) Lever WF, Schaumburg・Lever G : Discoid

   lupus erythematosus, Hisiopattiologyof the skin.

   6th Ed, Lippincott, Philadelphia, 1983, pp446

   -449

 9) Millard LG, Rowell NR : Chibrain lupus

   errythematosus (Hutchinson),Br J Dermatol,

   98 : 497-506, 1978.

 10) Diaz-Jouanen E, DeHoratius RJ, Alarcon-

   Segovia D, Messner RP : Systemic lupus

  ・erythematosus presenting as panniculitis (lupus

   profundus),Ann IれternMed. 82 : 376-379, 1975.

 11)寺本範子,衛藤 光,上村仁夫,向井秀樹:結節性

   ムチソ沈着を認めた全身性エリテマトーデス,皮

   膚臨床,30 : 1443-1437, 1988.

 12)米元康蔵,尾立朱実,木下正子,田所昌夫:

   Vesiculobullous systemic lupus eiythematosus,

   臨皮,42 : 319-323, 1988.

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772 盛岡奈緒子ほか

  Clinical Features of Male SLE Patients ―Summary of our 22 Cases―

Naoko Morioka, Tetsuya Tsuchida, Yoshitsugu Ueda, Masafumi Iijima,Takako Shishiba,

         Kimiko Ogawa, Masataka Oil and Yasumasa !shibashi

       DepartmentofDermatology,FacultyofMedicine,UniversityofTokyo

       (ReceivedNovember 21,1989;acceptedforpublicationDecember 18,1989)

  We investigated clinical features of our 22male SLE patients with main respect t0 11 articles of ARA criteria

for diagnosis of SLE (1982).

  As for skin lesions, 14 cases (64%) manifested wide spread discoid lupus erythematosus as their first

symptoms, however, rather rare lesions could be seen as follows:3 cases with nodular cutaneous lupus mucinosis, 1

with vesiculobuUous LE.

  As to visceral manifestations, renal involvements could be seen in 11 cases (50%), among which 6 showed

nephrotic syndromes. In immunological examinations, 1 case revealed C4A deficiency.

  The clinical tendency of male SLE cases has not been settled by now, for the disease is uncommon in men. Each

of our 22 cases manifested a variety of features respectively, indicating that rather atypical cases as SLE can be

more often seen in males than females. In addition, many of our cases showed remarkable changes clinically during

their courses, which suggests that we should follow them carefully from now.

  (JpnJDermatollOO:761~772,1990)

Key words: SLE, male, ARA criteria, skin lesions, clinical features