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知識ゼロからものづくりを学ぶ「機械設計エンジニアの基礎知識」 機械力学の基礎を学ぶ 発行元:株式会社 RE

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知識ゼロからものづくりを学ぶ「機械設計エンジニアの基礎知識」

機械力学の基礎を学ぶ

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【 目 次 】

1. 機械力学とは .............................................. 5

2. ニュートンの運動3法則 .............................. 6

2-1. 第一法則:慣性の法則 ........................... 6

2-2. 第二法則:運動の法則 ........................... 7

2-3. 第三法則:作用・反作用の法則 .............. 8

3. 力のつりあい .............................................. 9

3-1. 力とは .................................................. 9

3-2. 力の合力と分力 .................................... 10

3-3. 力のつりあい ....................................... 11

3-4. 力のモーメント .................................... 12

4. 重心とは .................................................... 15

5. トラス構造とラーメン構造 .......................... 17

5-1. トラス構造 .......................................... 17

5-2. ラーメン構造 ....................................... 18

6. 摩擦力と摩擦係数 ....................................... 20

6-1. 静止摩擦力 .......................................... 21

6-2. 動摩擦力 .............................................. 22

6-3. ころがり摩擦力 .................................... 23

6-4. 静止摩擦係数と動摩擦係数の関係 .......... 23

6-5. 摩擦係数一覧 ....................................... 24

7. 機械の動きについて(運動学) ................... 26

7-1. 直線運動 .............................................. 26

7-2. 円運動 ................................................. 28

7-3. 落下 .................................................... 30

7-4. 水平投射 (水平に打ち出した場合) .... 31

7-5. 斜方投射 (斜めへ打ち上げた場合) .... 32

8. 円運動 ( 向心力、遠心力、慣性力 )について33

9. 衝突と反発係数について ............................. 35

9-1. 物体の運動量 ....................................... 35

9-2. 運動量保存の法則 ................................. 36

10. 振動 ......................................................... 37

10-1. 振動とは ............................................ 37

10-2. 振動の種類 ......................................... 37

11. 固有振動数、共振、危険速度について ........ 42

11-1. 固有振動数と共振 ............................... 42

11-2. 危険速度 ............................................ 43

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1. 機械力学とは

本書では、4大力学のひとつである「機械力学」について説明します。機械力学とは、「機械の動作により生じる力」

を扱う学問のことです。自動車、ロボット、産業機械など、私達の身の回りにある機械は、さまざまな機械部品の組

み合わせによって動作を実現しています。

機械の動作は、

歯車

カム

ベルト

などの力の伝達を扱う機構学やセンサーやアクチュエータなどを取り扱う自動制御など幅広く学ぶ必要があり、機

械力学はその基礎となります。

近年、市場のニーズを受けて、機械構造はますます複雑化し、機能はハイスペック化しています。回転運動や往復

運動をおこなう機械も多く、これらの製品では振動による破壊問題が発生します。この振動問題を解決するのも機

械力学となります。

設計者は機械力学の知識をベースに機械に生じる力の大きさや方向を求めて設計を行う必要があります。また、

機械に生じる力や方向を導いたのちに、材料力学を使って、機械の変形量や破損に至らないかどうかのチェックを

行っていきます。

ゆえに、機械設計に携わる人は、機械力学を正しく理解しておく必要があります。(尚、機械力学は、高校生で学

ぶ力学の延長線上であり、機械設計に必要な力学と捉えて頂ければ良いと思います。)

機械力学で扱われる問題は

静力学

動力学 に大別されます。

静力学では、動かない物体に働く力の釣り合いを扱います。

動力学では、物体の動作による力の関係を扱います。

また、機械力学においては、全ての物体が剛体であることを前提としています。

剛体とは・・・「力を加えても変形しないとても硬い物」 と捉えて下さい。

通常、どのような硬い材質のものであっても、力を加えるとわずかに変

形します。しかし、機械力学で力を考えるとき、物体は剛体であり、変

形しないことが前提となります。

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2. ニュートンの運動3法則

機械力学を理解するための基礎となる 「ニュートンの運動法則」 について説明します。

ニュートンの運動法則は私達が普段の生活の中で体験している現象であるため、感覚的に理解しやすい法則で

す。

2-1. 第一法則:慣性の法則

すべての物体は、外部から力を加えられない限り、「静止している物体は静止状態を続け」、「運動している

物体は等速直線運動を続ける」

わかりやすく説明すると、

まず、「静止している物体は静止状態を続ける」とは、幼い頃に一度は経験があると思いますが、 ”だるま落とし”

です。胴体部分をハンマーで叩くと、叩かれた胴体パーツは飛ばされ、それ以外のパーツはその場で静止状態を

維持しようとします。しかし、重力が働いているため、飛ばされたパーツの上にあったパーツは下に落ちます。

次に、「運動している物体は等速直線運動を続ける」とは、幼い頃に、次のような疑問を持ったことはありません

か?「なぜ、電車の中でジャンプしても、ジャンプした地点より後ろに着地しないのか?」これは、電車の中にいるあ

なたは電車と同じ速度で直線運動を続けているからです。

このようにその場に静止しつづけようとしたり、運動をしつづけようとしたりする現象を「慣性の法則」といいます。こ

れがニュートンの第一法則です。

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2-2. 第二法則:運動の法則

物体に力が働くとき、物体には力と同じ向きの加速度が生じ、

その加速度の大きさは力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する。

つまり、質量 m [kg] の物体に、力 F [N] が加わると、力の向きに加速度 a [m/s2] が生じるということです。これを

式で表すと、

F = kma となります。

F : 力

m : 質量

a : 加速度

k : 比例定数

kは比例定数であり、k=1 となる力を 1N(ニュートン)という単位としたとき、m =1[kg]、a =1[m/s2] となり、F=ma と

いうおなじみの式となります。

運動方程式 F = ma ・・・(1)

つまり、

質量 m=1 [kg] の物体に a=1 [m/s2] の加速度を生じさせる力を F=1 [N] といいます。

(1)の式より、加速度は力に比例し、質量に反比例することが分かります。これを「運動の法則」といいます。

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2-3. 第三法則:作用・反作用の法則

物体 Aから物体 Bに力を加えると、物体 Aは物体 Bから大きさが同じで逆向きの力(反作用)を同一作用線

上で働き返す

これを「作用反作用の法則」といいます。

例えば、ブルドーザーで荷物を運ぶ際に、押す力と同じ大きさで反対の力をブルドーザーは受けることになります。

つまり、「力は押す側のみの力だけでなく、反対方向にも働いている」ということを示す法則となります。

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3. 力のつりあい

3-1. 力とは

力とは、物体の位置や形状に変化を加えるものであり、大きさ と 向き を持つ 「ベクトル量」 と定義されています。

(ちなみに 長さ、質量、面積など、大きさのみで表すことができるものを「スカラー量」といいます。)

機械力学では、このベクトル量で表される力が基礎となります。高校物理で学習していますが、おさらいの意味をこ

めて正しく理解しておきましょう。

機械力学で使われる力には、重力、張力、摩擦力、垂直抗力 などがあり、視覚的にわかりやすくするために、「矢

印」 が用いられます。

そして、この矢印によって、”どの点に”、”どのくらいの大きさで”、”どの方向に” 力が働いているのかが理解でき

ます。

力は、矢印の長さや向きによって、次のように表現されます。

力の大きさ ・・・ 矢印の長さ

力の向き ・・・ 矢印の向き

作用点 ・・・ 矢印の始点

これらを力の三要素といいます。

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3-2. 力の合力と分力

力は合成したり、分解したりすることができます。

図に示すように 力 Fは、F1 と F2に分解することができます。

このとき、

F は F1 と F2 の「合力」

F1 と F2 は F の「分力」

といいます。

例えば、このことを具体例で説明すると、次の図のように

荷物を 「F の力で一人で引っ張ること」 と、「F より小さな力で二人で引っ張ること」 は同じ働きをすることになりま

す。

また、合力は引っ張る角度によって大きさが異なります。角度が大きくなればなるほど合力は小さくなります。

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さらに、2つの力が一直線上にあり、同じ向きの場合、合力 F = F1 + F2

反対向きの場合、 合力 F = F2 - F1 となります。

3-3. 力のつりあい

次に 力のつりあい について説明します。

1つの物体に2つ以上の力が働いている状態で、その物体が移動しない場合、これらの力は「つりあっている」とい

います。

そして、力がつりあうためには、次の3つの条件を満足する必要があります。

例えば、次の図のような 「いびつな形状」 であっても、3つの条件を満たしており、物体が静止している場合、力は

つりあっていることになります。

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3-4. 力のモーメント

力のモーメントを解説する際によく用いられるのが 「テコの原理」 です。

テコの原理を使えば、重い荷物を小さな力で動かすことができます。

図のように、テコの原理で荷物を持ち上げるとき、棒の中央を持って持ち上げるより、棒の先端を持って持ち上げる

方が小さな力で持ち上げることができます。

つまり、支点から距離が長いほど、回転させる力が高くなる ということです。

回転の中心を支点、力を加える点を力点、力が働く点を作用点といい、これは皆さん小学校で学んでいますね。

そして、荷物を回転させる力を力のモーメント(M)といい、次の式で表されます。

力のモーメント M = F × L

M : モーメント

F : 力

L : 支点からの距離

※力のモーメントは、一般的にトルクと呼ぶことが多い。

ここで、荷物が静止するためには、力のモーメントがつりあう必要があります。

次の場合、荷物を静止させるために、いくらの力 (F) で押す必要があるでしょうか。

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(回答)

30kgの荷物によって、支点には反時計回りに回転させるモーメント Mが作用します。

このときのモーメントを求めると、

M = F × L = 30kgf × 1m = 30kgf・m

となります。

このモーメントを打ち消し合うように

時計回りに同じ 30kgf・mのモーメントが必要となります。

従って、

30 = F × 2.5

F = 12kg

30kg の荷物を支えるためには、12kg の力で押す必要があります。そして、荷物をさらに持ち上げるためには、12kg

より大きな力が必要となります。

ここでモーメントを求める際の注意点について説明します。次に示す例におけるモーメントを求めます。

この場合の支点に作用するモーメントは、M = F × L とすると誤りです。

モーメントは、支点から力が加わる力点までの距離ではなく、

支点から力の作用線に垂直に下ろした長さとなります。

従って、この場合のモーメントは M = F × L × sinθ となります。

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<参考 1>

sin,cos,tanなどの三角関数は設計の仕事ではよく利用するので理解しておきましょう。

下図の直角三角形において、底辺:a 高さ:b 斜辺:c としたとき、sinθ,cosθ,tanθは次のようになります。

sinθ=b/c

cosθ=a/c

tanθ=b/a

<参考 2>

モーメントの単位は従来の重力単位系である kgf・m から SI 単位系である N・m に変更されています、SI

単位系から重力単位系に換算する場合下記となります。

1 [N・m] =0.102 [kgf・m]

実際の機械製品において、このような機構を含む製品は多くあります。例えば、ロボット、ショベルカーなどの建設

機械、自動車のサスペンション周りなどです。このような機構を含む設計では、力の関係を計算して、必要な寸法

や動力源の選定が必要となってきます。

なお、このような機構のことを、リンク機構といい、入力した動作を異なる動作に変換するために、さまざまな製品で

利用されています。(テコの原理の場合:直線運動―回転運動)

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4. 重心とは

重心とは重力が働く点(作用点)のことです。

ボールの重心はボールの中心にあります。

定規の重心は定規の中心にあります。

重心の位置に糸をくくりつけて吊るすとバランスがとれます。

この位置が重心となります。

対称形状であれば、重心は一目瞭然です。しかし、次の形状の場合、一見して重心の位置は不明です。

この形状の任意の位置に糸を取り付けて吊るすとバランスがとれた位置で静止します。

次に別の位置に糸を取り付けて吊るすと同様にバランスがとれた位置で静止します。

つまり、上記で判明した2つの作用線の交点に重心があるということになります。

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重心の位置は製品の性能に影響をおよぼします。

例えばバットの設計では、バットの先端に近い位置に重心をおくと、遠心力で遠くへ飛ばしやすくなります。一方、

バットの中心に重心をおくと、バランスがとれて打率を上げやすくなります。つまり、重心によって発生する力やコン

トロール性能が変わってくるということです。

また、自動車の設計では、重心の位置によって前後のタイヤにかかる荷重が変わってきます。タイヤにかかる荷重

を考慮して、サスペンションの設計が必要となります。

重心の位置は振動にも影響をおよぼします。重心の位置が高いと、低い周波数(一往復にかかる時間が長い)で

振れやすくなります。

以上のように、設計ではたびたび重心が求められることになります。

重心の求め方は図式や数式で求めることができますが、最近ではCADを使えば容易に求めることができるようにな

っています。

上図のように部品の重心を簡単に求めることができます。

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5. トラス構造とラーメン構造

5-1. トラス構造

トラス構造とは、複数の三角形による骨組構造のことであり、結合部である「節点」はボルトやピンなどで結合されて

います。

トラス構造における節点を「滑接」という。

トラスの節点は自由度がないため動きませんが、相互に運動できるように結合されているため、部材を曲げようとす

る力である 「曲げモーメント」 が隣り合う部材で発生しません。そのため、荷重を加えたときに、部材には引っ張り

または圧縮の力だけ働くことになります。

例えば、二等辺三角形の頂点に荷重を加えると、斜めの部材には「圧縮」の力、底辺の部材には「引っ張り」の力

が加わります。

これは、結合部である節点が自由に回転できるからです。このようなトラスの利点を活かして、橋、タワーなどの建築

物、自転車やバイクのフレームなどがトラス構造になっています。

補足

・ トラスを構成する三角形がひとつの同一平面内にあるものを、「平面トラス」、立体になっているものを

「立体トラス」という。

・ 部材の節点に自由度をもたせ、回転させることができる機構は、「リンク機構」と呼ばれ、さまざまな機械

の運動を実現させるためのものとなっている。

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5-2. ラーメン構造

先ほどのトラスは結合部である節点がボルト等で結合されており、自由に回転できましたが、結合部が一体となって

いる場合を「ラーメン」と呼びます。

ラーメンの結合部は、互いに回転できないため大きな力が加わります。

そして、部材には引っ張り力や圧縮力などの軸力も多少加わりますが、部材を曲げようとする力(曲げモーメント)が

発生します。この曲げモーメントの発生により部材の強度を保つことができます。

ラーメン構造は複数の四角形の組み合わせにより構成されます。四角形であるため、力が加わると平行四辺形のよ

うに変形することになります。

この変形を防ぐために結合部を強く接合します。

ラーメン構造は自由で大きな開口をとることが出来るため、鉄筋コンクリートなどの建築物に利用されています。

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トラスの計算方法

図のような二等辺三角形の A点に荷重 10N が加えられたときの、各部材に発生する力を求めます。

A点に 10N の荷重が働くとき、このトラス構造は二等辺三角形であるため、B点、C点に働く 反力 RB , RC

はそれぞれ 5N となります。トラスの各節点はつりあっているため、各節点の水平分力と垂直分力の和はそ

れぞれゼロとなります。

・ 水平分力のつりあい

FBC + FABcos30 = 0 ・・・(1)

・ 垂直分力のつりあい

FABsin30 + RB = 0 ・・・(2)

(2)より、

FAB = - 5/sin30

= - 10N (圧縮力)

FAB = -10を(1)に代入

FBC= - FABcos30

= - (-10)×√3 /2

= 8.6N (引張力)

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6. 摩擦力と摩擦係数

摩擦とは物体の動きに逆らうように働く力のことです。

床の上に置いてある荷物を図に示す方向に押すと、荷物と床の接触面に 摩擦力(摩擦抵抗) が発生します。摩

擦力は荷物を押した方向と反対方向に働きます。

これは経験則で理解できると思います。

この摩擦力を利用した代表的な機械製品は、自動車のブレーキやクラッチです。これらの製品は、止まっている物

体を動かしたり、逆に動いている物体を止めたりするものです。

このように摩擦によってさまざまな機能を実現することができます。

また、部品間で焼きつきを起こすなど、摩擦が問題で機能や性能を損なうこともあり、摩擦は機械設計で重要な要

素となります。

摩擦力には

静止している物体を動かそうとしたときに発生する 「静止摩擦力」

動いている物体に発生する 「動摩擦力」

転がっている物体に発生する 「ころがり摩擦力」

があります。

それぞれについて以下に説明します。

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6-1. 静止摩擦力

静止している物体にある一定以上の大きさの力を加えると、物体は移動を開始します。移動を開始する直前の摩

擦力を 「最大静止摩擦力」といいます。

荷物は、自分の重みによって床を押す力 (W) と反対向きに垂直抗力(N)を物体が受けます。なぜなら、力は押す

側だけでなく、反対方向にも働くとされている「作用反作用の法則」によるからです。

このとき、最大静止動摩擦力の大きさは次の式で求めることができます。

F'=μN

F' :最大静止摩擦力

μ :静止摩擦係数

N :垂直抗力

この式より、最大静止摩擦力は垂直抗力に比例し、接触面の面積とは無関係であることがわかります。

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6-2. 動摩擦力

物体を移動させると、それを妨げるように摩擦力が発生します。このように物体の移動中に発生する摩擦力のことを

「動摩擦力」 といいます。

最大静止摩擦力と同様に、作用反作用の法則により、荷物の重みによって押す力 (W) と反対向きに垂直抗力

(N)を物体が受けます。

このとき、動摩擦力の大きさは次の式で求めることができます。

F'=μ'N

F' :動摩擦力

μ' :動摩擦係数

N :垂直抗力

この式から、動摩擦は最大静止摩擦力と同様に垂直抗力に比例していることがわかります。また、移動速度とは無

関係であることも理解できます。

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6-3. ころがり摩擦力

ボールや円柱のような回転体のような形状がころがる場合に発生する摩擦力を 「ころがり摩擦力」 といいます。こ

の摩擦力は静止摩擦力や動摩擦力を比較すると遥かに小さな摩擦力となります。

従って、摩擦が発生するところに、「ころがり摩擦」 を使うことで、なめらかな動作を実現させることができます。ボー

ルベアリングがその代表的な部品です。

ボールベアリングを軸受と軸の間に取り付けることで、「動摩擦力」を「ころがり摩擦力」に変換することができ、摩擦

力が低減され、機械性能を向上させることができます。

6-4. 静止摩擦係数と動摩擦係数の関係

摩擦係数は摩擦力を接触面に作用する垂直抗力で割った無次元量(μ=F/N)で求めることができ、摩擦試験機

で測定が可能です。一般的には動摩擦係数より静止摩擦係数が大きくなります。

静止摩擦係数 > 動摩擦係数

床におかれた荷物を押していくと、ある一定の荷重以下では荷物は動きませんが、静止摩擦力の限界を超えると

荷物は動き出します。荷物が動き出した時点から動摩擦力に切り替わるため、荷物が軽くなります。図で示すとちょ

うど下図のようになります。

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摩擦係数は近似的に成り立つものとして取り扱われており、実際に発生する摩擦力は様々な要因により異なってき

ます。

<摩擦係数に影響を及ぼすもの>

・ 接触面の材質

・ 油などの潤滑剤の有無

・ 表面粗さ

例えば、物体の表面には小さな凹凸があり、機械加工の種類や方法によってその状態は変化します。凹凸の度合

いを規定するのが表面粗さとなります。

6-5. 摩擦係数一覧

以下に鉄と各種純物質との摩擦係数を示します。

<鉄と各種純物質との摩擦係数>

アームコ鉄球面(半径 3.2mm)/平面,荷重 2.7N,滑り速度 0.05mm/s

出典:機械工学便覧

ベリリウム 0.43 パラジウム 0.65

炭素 0.15 銀 0.32

マグネシウム 0.34 カドミウム 0.67

アルミニウム 0.82 インジウム 0.32

ケイ素 0.58 スズ 0.29

カルシウム 0.67 アンチモン 0.26

チタン 0.59 テルル 0.35

クロム 0.53 バリウム 0.89

マンガン 0.57 セリウム 0.5

鉄 0.52 タンタル 0.58

コバルト 0.46 タングステン 0.47

ニッケル 0.58 イリジウム 0.51

銅 0.46 白金 0.56

亜鉛 0.5 金 0.54

ゲルマニウム 0.66 タリウム 0.68

セレン 0.43 鉛 0.52

ジルコニウム 0.55 ビスマス 0.4

コロンビウム 0.57 トリウム 0.82

モリブデン 0.47 ウラン 0.5

ロジウム 0.54

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<各種非鉄金属材料の摩擦係数>

出典:機械工学便覧

上記より、全ての摩擦係数は 1より小さな値であることが分かります。

これは物体を吊るした時にかかる荷重より、床に置いて引っ張った時のほうが一般的に小さな荷重で動かすことが

できることを示しています。

例えば、1kgの荷物を 1kgの力で引っ張ったときの摩擦係数が 1 となります。

つまり、摩擦係数とは 「滑りにくさを表した係数」 であり、値が大きい程、滑りにくいこと を表しています。

高分子量高密度ポリエチレン 0.06 ~ 0.3

充てん材入りナイロンとアセタール 0.15 ~ 0.4

充てん材入り強化フェノール積層材 0.1 ~ 0.4

充てん材入りPTFE 0.05 ~ 0.32

エポキシで結合した青銅/鉛入りPTFE 0.08 ~ 0.3

充てん材入りポリイミド 0.15 ~ 0.5

充てん材入りオキシベンゾイルポリマー 0.15 ~ 0.5

青銅ーグラファイト複合材 0.15 ~ 0.3

青銅強化PTFE 0.04 ~ 0.25

PTFE繊維基材料 0.04 ~ 0.25

カーボンーグラファイト 0.15 ~ 0.4

エレクトログラファイト 0.15 ~ 0.35

Niーグラファイト、鉄ーグラファイト 0.2 ~ 0.4

TaーMoーMoS2複合材 0.1 ~ 0.2

コバルトで結合したWC 0.25 ~ 0.4

セラミックで結合したCaF2 0.2 ~ 0.5

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7. 機械の動きについて(運動学)

ここまでで解説してきました内容は、「力のつりあいが取れている状態」、つまり「静力学」について解説してきまし

た。

実際の機械は、停止状態のみではなく、さまざまな運動を行います。そこでここからは、機械が時間とともに位置や

速度が変化する運動学について解説いたします。

機械が行う運動には、

直線運動

円運動

放物運動

落下

などがあり、これら単体もしくは組み合わせにより、目的の運動を実現しています。

例えば、自動車のエンジンの場合、ガソリンの燃焼圧力により、ピストンが動き往復運動を行います。ピストンの往

復運動は、クランクシャフトによって回転運動に変わります。

クランクシャフトの回転運動は、トランスミッション内に組みつけられた歯車などによって動力が伝達され、タイヤの

回転運動に変わり自動車が動きます。

したがって、運動を伴う機械設計をおこなう場合は、これらのメカニズムを理解しておく必要があります。

7-1. 直線運動

7-1-1. 速度とは

時間の経過によって位置を変えることを「運動」といいます。

例えば直線運動の場合、移動した軌跡を結んだ線が直線になりますが、直線間の移動時間によって、私たちは

「早い」とか「遅い」という表現をします。

これを定量的に表したものが速度です。

速度は一定時間(例えば1秒間)にどれだけ移動したかを表すものであり、

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速度 Vは V = x

t [m/s] で表します。

x : 移動した距離

t : 所要時間

速度の単位は、m/s 以外にも、m/min や自動車の速度計で使われる km/h などがあります。例えば 15m/s の場

合、1秒間に 15m進みます。

なお、速度は方向を持っているため、ベクトル量となります。

7-1-2. 加速度とは

停止している電車が走り出すとき、速度がしだいに増加します。走行中に自動車のアクセルを踏むと速度がしだい

に増加します。

このように停止している 又は 移動している物体の速度がしだいに 増加 または 減少 する割合を加速度といい、

次の式で表せます。

速度変化の割合 = (最後の速度 v2-最初の速度 v1)/所要時間

a = 𝒗𝟐−𝒗𝟏

計算結果がプラスのときは、速度が増加し、マイナスのときは、速度が減少します。

例えば、10 m/sで移動している物体が、10秒間に 20 m/sの速度になった場合の加速度は、

加速度 a = ( 20 - 10 ) /10 = 1 m/s2 となり、値がプラスなので、1秒間に 1m/sずつ速度が速くなることを示して

います。

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7-2. 円運動

円運動とは、ある一点を中心に一定の距離を保って回転運動することをいいます。

7-2-1. 角速度とは

図のように t 秒間に角度 θ だけ回転したとき、単位時間あたりの角度の変化を角速度といいます。

角速度 = 回転角度/所要時間

ω = θ

𝑡

なぜ、直線運動のように、移動した距離を所要時間で割らないのかというと、同じ速度で回転していても回転半径

によって速度が変わってしまうからです。

図のように一緒に回転している2つの円の回転速度は同じです。しかし、円の外周の移動距離(周速度)は異なっ

てしまいます。

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角速度を求める際に使われる角度の単位は、通常 ラジアン が用いられます。

ラジアンとは、円の半径と円弧の長さが同じとなるような角度のことであり、図に示す角度を 1rad(ラジアン)と呼びま

す。

7-2-2. 角加速度とは

回転する物体の速度が増加または減少する割合のことを角加速度といい次の式で表します。

角加速度 = (最後の角速度ω2-最初の角速度ω」1)/所要時間

a = ω2−ω1

𝑡 [rad/s2]

7-2-3. 回転速度

自動車のエンジンの回転単位には rpmが使われています。

これは1分間にエンジンが何回転するかを表しています。

スポーツカーには一般的にタコメーターが付いています。

右の写真のように、×1000 r/min と単位が表記されていますが、rpm と同

じです。

例えばメーターの針が3を指している場合は、3000rpmということです。つ

まり、1分間に 3000回転エンジンが回ります。

これを回転速度といいます。

度 ラジアン (rad)

30° π/6

45° π/4

60° π/3

90° π/2

180° π

360° 2π

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7-3. 落下

空間内で物体に何も支えがない場合、物体は地上に落下します。なぜなら、地球には重力が働いているからです。

物体の落下速度は徐々に早くなります。これは物体に加速度が働くからです。このように地球の重力によって働く

加速度のことを、 「重力加速度」 といいます。

重力加速度は、g という記号で表記され、その値は通常 g = 9.8 m/s2 となります。

そして、初めの速度がゼロの落下のことを「自由落下運動」といい、落下をはじめてから t 秒経過したときの速度

は、次の式で求めることができます。

速度 v = g × t

また、落下した距離を h とすると、h は次の式で求めることができます。

h = 𝟏

𝟐 × gt2

投げおろした場合

下方へ初速 v0 で投げおろした場合の t 秒経過したときの速度と距離

v = v0 + gt

h = v0t + 𝟏

𝟐×gt2

打ち上げた場合

上方へ打ち上げた場合の t 秒経過したときの速度と距離

v = v0 - gt

h = v0t - 1/2×gt2

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7-4. 水平投射 (水平に打ち出した場合)

次に物体を水平方向に投射した場合について考えてみます。

この場合、重力の働かない水平方向と、重力が働く鉛直方向に分けて考えます。

水平方向

初速 v、所要時間 t 水平方向の移動距離 x としたとき、

x = vt

鉛直方向

鉛直方向は初速 0 となり、重力加速度により落下するため、

鉛直方向の移動距離を y としたとき、

h = 𝟏

𝟐×gt2

これらの式より 時間 t を省略すると以下の式となります。

h = g

𝟐v2 × x2

ここで鉛直方向の式は自由落下の式とまったく同じであることがわかります。

つまり、鉛直方向は自由落下と同じように落下することがわかります。

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7-5. 斜方投射 (斜めへ打ち上げた場合)

物体を斜めに打ち上げた場合、下図のような軌跡を描いて物体は落下します。この軌跡を 放物線 といい、物体

が行う運動を 放物運動 といいます。(※先ほど説明した水平投射も放物運動です。)

水平投射と同様に、重力の働かない水平方向と、重力が働く鉛直方向に分けて考えます。

水平方向

投射の初速を v0 投射の角度をθ 所要時間 t としたとき、初速 v0の x方向の速度 v0x は初速と同じ一定速度

で移動するため、

v0x = v0 cosθ

x = v0 cosθ t

となります。

鉛直方向

同様に鉛直方向は落下運動していることと同じであるため、

v0y = v0 sinθ

h = v0 sinθ t - 1/2×gt2

となります。

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8. 円運動 ( 向心力、遠心力、慣性力 )について

半径 r、速度 Vで等速円運動をする質点には、中心に向かい大きさが

α=𝐕2

r の加速度が生じます。これが質点の円運動を可能にさせるもので、

これを 向心力 (求心力ともいう) と言います。

例えば、遊園地の回転ブランコの椅子に働く向心力は、ロープの張力の水平成分となります。

円運動する質点のつり合いを考えるときには、向心力(求心力)と逆向きで大きさが等しい力が働いていると仮定す

ることにより可能となります。この仮定的な力を 遠心力 と言います。

一般に、動的な質点のつり合いを考えるとき、それと方向が反対で、大きさの等しい力を仮定すると便利です。この

力を 慣性力 といい、遠心力もその一つです。このように、動力学的問題を単に力のつり合いと言う静力学的問

題に帰結する考え方を 「ダランベールの原理」 と言います。

いま、質量が mの物体に、力 fが加わって、αの加速度を生じたとき、運動の方程式はニュートンの第 2法則より

f=mα となります。 これに ―mα を考えれば、物体はつり合います。

r

質点

速度 V

向心力α

遠心力 向心力α

向心力

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α=V2

r でありますから、向心力 (求心力) の大きさは f = m

V2

r という公式となります。

遠心力は向きが反対ですから、-mV2

r となります。

糸に球をつけて円運動させている状態を考えたとき、糸が切れて向心力(求心力)が消滅すると、

球がその円運動の接線方向へ飛び去るのは、遠心力の働きではありません。向心力(求心力)が消えれば、遠心力

もなくなります。球が接線方向に飛ぶのは、物体の慣性によります。

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9. 衝突と反発係数について

衝突と言う状態を知る前に理解しておかなければならないことがあります。

同じ物体であっても、それが静止しているか、運動しているかによって、その性質は大きく異なります。運動している

物体は、衝突したとき他の物体に力を加えたり、仕事したりします。

しかしながらその物体が静止すれば、これらの働きは生じません。したがって、物体は運動していることによって、

ある働きをする能力をもっていることになります。

このように物体自身の変化ではなく、状態の相違によってもつ性質を 物理的性質 と言いますが、特に運動状態

でもつ性質には、「運動量」 と 「運動エネルギー」 があって、どちらも運動する物体のもつ重要な性質となってき

ます。

9-1. 物体の運動量

物体が他の物体の力を作用したり、他の物体から力を作用されたりすれば、その力の向きによって、加速されたり

減速されたりして速さが変化します。 このとき力の働きに比例して変化する物体のもつ物理量としては、物体の質

量 m と その速度υ の積 mυ が変化するので、この mυを 運動量 と言います。

静止している物体に力 Fを加えたときは、ニュートンの第 2法則 (運動の法則) F=ma より加速度 aは力に比例

し、a=F/m となります。t 秒後の速度υは、υ=at となり、このときの運動量 mυは、mυ=mat=Ft で示されま

す。

つまり、加えた力 Fに比例した、運動量 mυをもつことになります。

また、運動量の向きはその速度の向きによって異なりますので、運動量は大きさと向きをもつ量ですから、ベクト

ル量となります。 特に、Ftを力積 と言います。

加速度 a = F/m

m F

運動量 mυ

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9-2. 運動量保存の法則

二つの物体 A,B が、たがいに作用、反作用の等しい大きさの力だけを受けている時は、一方の運動量の増加と

他方の運動量の減少は等しく、A,B の運動量の和は、力の作用した前後で変わりません。m1υ1=m2υ2 で表され、

これを 運動量保存の法則 と言います。

例えば、下図に示すように質量 m1、m2の二つの物体 A、B が一直線上を運動しながら互いにゴムひもを通じて F

の力を作用しあっているとき、ある瞬間の物体の速度を、右向きを正として、それぞれ、υ1、υ2とします。

この状態から、何らかの変化があって、速度が、υ1‘、υ2’になったとします。この状態を運動量保存の法則で表し

ますと、m1υ1‘+ m2υ2’=m1υ1+m2υ2となります。

9-2-1. 衝突と反発係数

下図に示すように Aの速度υ1がBの速度υ2より大きい(υ1>υ2)とき、衝突 という状態が発生します。

また、衝突前後の速度の比は「反発係数」といい、球の硬さなどによって決まる定数となります。

反発係数 eは以下の式であらわされます。

e = 衝突後の速度/衝突前の速度 = (υ1‘-υ2’) /(υ1-υ2)

A B

υ2 υ1

m1 m2 F -F A B

υ2‘ υ1‘

m1 m2 F -F

ゴムひも

A B

υ2 υ1

A B

υ2‘ υ1‘ υ2‘ υ1‘

A B

衝突 衝突後 衝突前

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10. 振動

10-1. 振動とは

物体が一定の時間間隔をおいて、「平衡の状態を中心として繰り返し変動する現象」です。言い換えますと、

一定間隔の間を一定時間で、物体が行ったり来たりすることです。例えば、ばねに「おもり」をつけた後に、引っ張

って離すと、「おもり」が上下に振動します。振動はこのように質量をもつ「おもり」と「ばね」からなる系で考えることが

多いです。

振動の発生はねじの緩みを起こしたり、機械性能に影響を及ぼしたり、最悪は機械の破損につながります。機械は

この振動を抑えるためにさまざまな工夫が施されています。例えば自動車では走行時に発生する振動を抑えるた

めに、「ダンパー」 や 「防振ゴム」 などが用いられます。

10-2. 振動の種類

聞き慣れない難しい言葉が並ぶと思いますが、こんな種類があるのかとの認識で良いです。

・非減衰自由振動 ··················· 外部から抵抗力の働かない振動

・減衰自由振動 ······················· 外部から抵抗力が働く振動

・非減衰強制振動 ··················· 外部から周期的抵抗力の働かない振動

・減衰強制振動 ······················· 外部から周期的抵抗力の働く振動

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次にそれぞれについて解説しますが、実設計で必要となることはあまり少ないため概要の理解で十分です。

10-2-1. 非減衰自由振動

外部から抵抗力の働かない振動を 「自由振動」 といいます。このタイプの振動の波形は下図に示すように同じ波

形が繰り返されます。

この系に振動が次第に減少していくような「減衰作用」がない時に、質量 m の運動方程式は微分方程式で表さ

れますが、ここでは記述しませんが、解は以下のようになります。

x=Acos(√𝒌/𝒎・t-θ)

ここで、kはばね定数 A,θは初期条件により決まります。変位 xは時間 tに対して周期運動を行います。

また、このような振動を 「単振動」 または 「調和振動」 と言います。

ここで振動数という言葉を聞いたことがあると思います。振動数は、「1秒間にどのくらいの振動を繰り返すのか」 を

表します。

例えば、1秒間に20回の振動を繰り返す場合の振動数は20です。

また、1秒間の振動数のことを周波数といいます。先ほどの場合の周波数は20Hzです。

ここで、Aは振幅、√𝒌/𝒎 は円振動数、θは初位相です。

振動数 fn、周期 T、円振動数の間には以下の関係があります。

fn = 𝟏

𝑻 =

2𝝅√𝒌/𝒎

単振動では周期に従って振動数は与えられた系の m と kのみで定まります。

時間 t

変位 x

A

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10-2-2. 減衰自由振動

減衰とは、振動が次第に減少してくことをあらわしています。減衰は減衰力によって発生します。

減衰力は 「摩擦」 または 「非弾性的抵抗」、「空気抵抗」 及び 「内部摩擦」 などの為、振動のエネルギーが、

内部で熱となって費やされたりすることにより生じる運動に抵抗する力です。「粘性減衰」、「構造減衰」 などがあり

ます。

例えば、下図のようにばねに固定された台車を動かすと左右に振動を起こしますが、摩擦や空気抵抗などにより次

第に減衰していきます。このような振動を「減衰振動」といいます。

下図に示すように、台車はばねが圧縮されたり、引っ張られたりすることで抵抗しますが、内部にオイルが密封され

たダッシュポットの装置が付いている場合、この抵抗力は速度に比例します。

例えば、液体が入った注射器をイメージして頂くとわかりますが、ピストンをゆっくり動かすと抵抗が少ないですが、

早く動かすと抵抗が大きくなります。

抵抗力が速度に比例する形式の減衰を 「粘性減衰」 といい、その比例定数を粘性減衰係数 c と言います。

時間 t

変位 x

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ばね定数 k、粘性減衰係数 cの系の質量 mの運動方程式は微分方程式で表すことができますが、ここでは

解のみ記述します。

解は cの値によって運動が無周期運動 または 減衰振動になります。この境界の cの値 cc=2√𝑚𝑘 を

臨界減衰係数と言います。

またβ=𝑐

𝑐𝑐 を 粘性減衰比率 と言います。

βが 1 より大きいとき、等しいとき、小さいときにより、3種類の解が得られます。

物体 mの変位 xは、

(a)β>(c>cc)1の場合

x = 𝑒−𝛽(√

𝑘

𝑚・𝑡)

(A𝑒√𝑘

𝑚・√β2−1・𝑡

+ 𝐵𝑒√𝑘

𝑚・√β2−1・𝑡

となり振動することなくつり合いの位置に近づきます。この状態を 過減衰の状態 と言います。

(b)β=1(c=cc)の場合

x=𝑒√𝑘

𝑚・𝑡・(A+Bt)

(c)β<1(c<CC)の場合

x = 𝑒−β√

𝑘

𝑚 ・t (Acos√𝑘

𝑚 ・ √1 − 𝛽2 ・t+Bsin√

𝑘

𝑚 ・ √1 − 𝛽2)・t

となり振幅が時間とともに減少する振動いわゆる減衰振動となります。

A,B は任意定数です。

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10-2-3. 非減衰強制振動

質量 mに、F(t)=F0sinωtの強制力が働く場合の運動方程式は微分方程式で表される。

その解は √𝒌/𝒎 と ω が等しくないとき、以下のようになります。

x=Acos√𝒌/𝒎・t+Bsin√𝒌/𝒎・t+(F0/k/(1-(ω2/𝑘

𝑚))・sinωt

となり、√𝒌/𝒎=ωのとき、振幅は無限大となりこの現象を共振と言います。共振については後程詳しく解説します。

10-2-4. 減衰強制振動

質量mに強制力 Ftが働き、さらに粘性減衰力の働く物体mの変位 xの運動方程式の解は余りに複雑なので省略

いたしますが、自由振動は時間とともに減衰力の作用により消滅するのに対し、強制振動は一定振幅の調和振動

で、定常振動を続けます。この定常状態になるまでの状態、言い換えますと、自由振動が存在する状態における

振動を過渡振動と言います。

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11. 固有振動数、共振、危険速度について

11-1. 固有振動数と共振

外部から力を加えなくても振動を起こす現象があります。この振動のことを「固有振動」

といいます。例えば、音叉(おんさ)をたたくと、音の高さが一定となる固有振動で振

動します。

また、同じタイプの音叉(おんさ)を2つ準備して、1つの音叉をたたいて音を鳴らし、

もう1つの音叉を近づけると振動をはじめます。このように物体が持つ固有振動数と同じ振動を外部から受けると大

きく振動する現象を 「共振」 (音の場合:共鳴) といいます。

固有振動数の単位は Hz であり、これは 1秒間に物体が振動する回数 を表しています。(※ 例えば、50Hz の場

合、1秒間に 50回振動する)

「固有振動数」 と 「共振」 を理解するのに最も分かりやすい例として、誰もが一度は乗ったことがある 「ブランコ」

があります。ブランコは一定の間隔で力を加えると、振れる量が大きくなります。これはブランコが持つ固有振動数

で共振するからです。

そして、固有振動数 Fn は以下の数式で表されます。

Fn = 1

2𝝅√𝒌/𝒎 ・・・(1)

固有振動数 Fn [Hz]

ばね定数 k [N/m]

質量 m [kg]

固有振動数を求めることは機械設計を行う上で非常に重要です。 例えば、洗濯機がガタガタと大きな音をたてて

揺れることがあります。これは共振によるものです。共振は機械の性能を損ない破損の原因につながります。従っ

て機械は運転範囲において共振が発生しないように設計されます。

一般的には固有振動数を高くするのが良いです。固有振動数を高くするためには、先ほどの(1)の式より

質量 m を小さくする

ばね定数 kを大きくする → 変形しづらくする。(剛性を高める)

などの方法があります。

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11-2. 危険速度

「危険速度」は「危険回転数」とも言われます。一般に軸の重心が軸の中心線上にくるように、軸を工作することは

難しく、若干の偏芯があります。

このような軸が高速回転すると、偏芯により遠心力が発生し、たわみが生じます。速度がある点に達すると、遠心力

が軸の剛性抵抗力に打ち勝って、それによって生じるたわみは偏芯を強め、ついには軸の破壊に至ります。

この軸が破壊するに至る速度を 「危険速度」 と言います。

いま質量 Mなる回転円板を有する弾性軸において、円板の偏芯を e、軸のたわみを y、

角速度をωとすると、円板に働く遠心力 Fは、下記公式で表されます。

F=Mω2(y+e)

この公式から、Mω2(y+e)=ky

k・・常数

∴ y=Mω2e/k-Mω2=e/{(k/Mω2)-1}

e≠0、k=Mω2であるとき y=∞

となるから、危険角速度ωcは、ωc=√𝑘

𝑀 gを重力加速度とすると、円板の自重Wは

W=gM、Wによるたわみを y0とすると、

W=k y0

ωc=√𝑔

𝑦0

ωcを固有振動数の公式を使って危険回転数 Ncになおすと、

Nc=60ωc/2π=30/π・(√𝑔

𝑦0 )単位は rpm となる

たわみ y0は梁のたわみとして求められますが、軸の荷重点・支持条件によって異なって

きます。様々な条件による Ncの公式については、他の文献を参照してください。

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2015年 8月 15日 発行

2016年 4月 28日 改訂 2

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