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6月13日(
木)
─S305─
専門職教育講演 6 Day 1/第 16会場/18:00~19:00
座長 金子 文成(慶應大)
CEL06–1 バランスと姿勢制御
東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
鈴木 誠
ひとが目的をもった動作を遂行していくためには,バランスが保たれていることが必要である.しか
し,疾病や障害によってそのバランスを保つ能力が低下すると,日常動作の遂行に支障をきたすこと
がある.そのようなバランス能力の低下した対象者に対し,運動機能回復や日常動作の再建に専門性
を有する理学療法士や作業療法士は生活復帰を射程に捉え,それぞれの治療法を用いて介入を行って
いる.その上で,リハビリテーション専門職の中でも,「バランス」や「姿勢制御」といった用語の共通
理解を得ておくことは,チーム医療の実践には必要不可欠であると考える.
バランスは,身体運動学ではしばしば安定性や姿勢制御のような学術用語とも互換的に用いられる場
合がある.バランスとは,力学的には「ある物体に方向が正反対の等しい 2つの力が同時に作用する
時,物体の位置の変化(運動)がおこらない状態」と定義されており,本来用語自体には調整過程は含ま
れていない.よって,バランスという力学的平衡状態と,姿勢制御という調整過程のそれぞれの意識
した使い分けが必要であろう.つまり,ひとが姿勢を保つために制御を行い,その結果としてバラン
スという状態がある.そして,バランスという平衡状態を調整する能力が,バランス能力と捉えるこ
とができる.その上で,ひとのバランスとその調整能力の解釈には重力の作用点である重心,床反力
の作用点である圧中心,物体が床と接している面の外縁を最短距離で結んだ支持基底面,といった力
学的視点で整理すると理解しやすい.つまり,静止立位を例にとれば,呼吸や心臓の拍動によるわず
かな重心の動揺に対し,バランスを保つために足底で形成される支持基底面内で圧中心を絶えず変動
させ姿勢を保っている.また,歩行を例にとれば,圧中心と重心線の距離を長くとることで重力モー
メントを大きく得て,新たな支持基底面を形成しながら重心移動を行っている.そのような身体運動
をバランスとその保持能力の難易度順に並べると,①圧中心を調節し重心を支持基底面のほぼ中央に
保持できる能力レベル,②圧中心を調整し重心を支持基底面内の全領域で保持できる能力レベ
ル,③圧中心を調整し重心を支持基底面内で自由に止めたり動かしたりすることが出来る能力レベ
ル,④新たな支持基底面を形成し圧中心を調整して重心を移動することができる能力レベル,と 4 段
階に分けることができる.その中で,①と②が静的バランスに相当しその調整能力が静的バランス能
力,③と④が動的バランスに相当しその調整能力が動的バランス能力と解釈することができる.この
ような視点をもとに,我々がこれまで行ってきた脳卒中後遺症患者を対象に重心と圧中心の空間的位
置関係に着目したバランス分類と,その能力評価尺度について紹介し,静的バランスと動的バランス,
動作遂行能力との関係性について述べていきたい.
一方,バランスをシステム論的に捉える時代的潮流の中で,我々は身体諸機能の特に筋力に注目して
いる.なかでも足関節筋力は姿勢保持の際の圧中心調整に深く関与しており,足部による制御は足関
節戦略としても広く知られている.ひとが日常動作を行う上で最大筋力(静特性)を発揮することは少
なく,むしろ目標とする張力をどれだけの速さで発揮できるかという時間的な収縮特性(動特性)に注
目する必要があると考える.そのような視点において,我々の研究データをもとに足関節筋力の動特
性と動作遂行能力との関係について紹介していきたい.