クラシカル・オステオパシーによる脊柱バランス調 zの効果...

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クラシカル・オステオパシーによる脊柱バランス調整の効果の検証 JCO 28期 真野 俊博 背景: 現在オステオパシーの治療というと、一般的には肩こり、腰痛など筋骨格系への対処が主 流となっている。だが本来、オステオパシーはA.T.スティルがおこなっていたように、 呼吸器系、循環器系、消化器系、その他の全身性疾患などほぼ全ての疾患に対応できるは ずである。しかし、知識としてはわかっていても実際にそのような疾患に対応できるオス テオパスはほとんどいないのが、現状ではないだろうか。そこで、なぜスティル他、初期 のオステオパスが治療できていたものが、現在ではできなくなってしまったのか、その理 由と、ではどうしたらよいのかという点について考えてみた。 目的: 背景の部分でも述べたように、現在のオステオパスがなぜ内臓疾患や全身性疾患に対応で きないのかを考えると、やはり時代背景があげられるであろう。スティルの時代から比べ ると、薬剤も効果的なものが増え、検査技術も飛躍的に向上し一般の人たちもオステオパ スでさえも、そういった病気はアロパシー医学で治療するものと思っているのではないだ ろうか。しかし、実情をよく観察してみると糖尿病、高血圧など、一度薬を飲み始めると、 生涯飲み続けなければならないことが多く根本的な治癒ではなく症状を抑えているだけだ ということが見えてくる。ではこれらの疾患を根本的に治癒させるためにオステオパシー が何をすべきかを考えるため、当時の文献を調べてみた。その結果、もっとも重要なこと は「肋骨を含め、後頭骨から尾骨までの脊柱全体の配列を正すこと」という結論に達した。 既に臨床を行っている治療家の方たちは、そんな当たり前のことはいまさら言われなくて もわかっている。と思うかもしれないが、単一分節の機能障害を個々に治療するのではな く全体のバランスを考えながら治療を行うことは、治療を行った経験がある人達ならそれ ほど簡単なことではないということは理解できると思う。現在オステオパシーでは、脊柱 の配列が多少乱れていても可動性があればよしとする考え方が主流である。しかし、ステ ィルは可動性も当然大切だが、あくまでも「骨を正しい位置へと戻しなさい」という言葉 を、再三繰り返している。これがなされなければ、神経伝達も血液循環もリンパの流れも 正常化しないと言っている。脊柱の配列を調整するには、本来なら足部、膝、股関節、骨 盤、体幹、上肢帯など、それぞれの部位の評価を行い、それとともに機能障害の箇所を矯 正、そして全体のバランス調整をしていかなければならない。しかし、まだ経験の浅いオ ステオパスなどはそれを短時間で行うことが難しいのではないかと考え、今回はその手法 としてイギリスのオステオパス、ジョン・ワーナム DO の考案したクラシカル・オステオ パシーによる身体調整を用いる。つぎに、今回参考にした3名の人物、A.T.スティル、 エドガー・ケイシー、J.M.リトルジョンの紹介と彼らが述べた事柄について紹介する。

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  • クラシカル・オステオパシーによる脊柱バランス調整の効果の検証

    JCO 28期 真野 俊博

    背景:

    現在オステオパシーの治療というと、一般的には肩こり、腰痛など筋骨格系への対処が主

    流となっている。だが本来、オステオパシーはA.T.スティルがおこなっていたように、

    呼吸器系、循環器系、消化器系、その他の全身性疾患などほぼ全ての疾患に対応できるは

    ずである。しかし、知識としてはわかっていても実際にそのような疾患に対応できるオス

    テオパスはほとんどいないのが、現状ではないだろうか。そこで、なぜスティル他、初期

    のオステオパスが治療できていたものが、現在ではできなくなってしまったのか、その理

    由と、ではどうしたらよいのかという点について考えてみた。

    目的:

    背景の部分でも述べたように、現在のオステオパスがなぜ内臓疾患や全身性疾患に対応で

    きないのかを考えると、やはり時代背景があげられるであろう。スティルの時代から比べ

    ると、薬剤も効果的なものが増え、検査技術も飛躍的に向上し一般の人たちもオステオパ

    スでさえも、そういった病気はアロパシー医学で治療するものと思っているのではないだ

    ろうか。しかし、実情をよく観察してみると糖尿病、高血圧など、一度薬を飲み始めると、

    生涯飲み続けなければならないことが多く根本的な治癒ではなく症状を抑えているだけだ

    ということが見えてくる。ではこれらの疾患を根本的に治癒させるためにオステオパシー

    が何をすべきかを考えるため、当時の文献を調べてみた。その結果、もっとも重要なこと

    は「肋骨を含め、後頭骨から尾骨までの脊柱全体の配列を正すこと」という結論に達した。

    既に臨床を行っている治療家の方たちは、そんな当たり前のことはいまさら言われなくて

    もわかっている。と思うかもしれないが、単一分節の機能障害を個々に治療するのではな

    く全体のバランスを考えながら治療を行うことは、治療を行った経験がある人達ならそれ

    ほど簡単なことではないということは理解できると思う。現在オステオパシーでは、脊柱

    の配列が多少乱れていても可動性があればよしとする考え方が主流である。しかし、ステ

    ィルは可動性も当然大切だが、あくまでも「骨を正しい位置へと戻しなさい」という言葉

    を、再三繰り返している。これがなされなければ、神経伝達も血液循環もリンパの流れも

    正常化しないと言っている。脊柱の配列を調整するには、本来なら足部、膝、股関節、骨

    盤、体幹、上肢帯など、それぞれの部位の評価を行い、それとともに機能障害の箇所を矯

    正、そして全体のバランス調整をしていかなければならない。しかし、まだ経験の浅いオ

    ステオパスなどはそれを短時間で行うことが難しいのではないかと考え、今回はその手法

    としてイギリスのオステオパス、ジョン・ワーナム DO の考案したクラシカル・オステオ

    パシーによる身体調整を用いる。つぎに、今回参考にした3名の人物、A.T.スティル、

    エドガー・ケイシー、J.M.リトルジョンの紹介と彼らが述べた事柄について紹介する。

  • またJ.M.リトルジョンの考え方に関しては、今回の論文テーマのクラシカル・オステ

    オパシーの基礎となるものなので、詳しく述べることとする。

    ・アンドリュー・テイラー・スティル (Andrew・Taylor・Still)(1828-1917)

    オステオパシーの創始者。1828年バージニア州ジョーンズビルに生まれ、医師となる。

    1864年頃脳髄膜炎で一度に3人の子供達を失い当時の医学に疑問を感じる。そこでか

    れは体に本来備わっているはずの、自然治癒力を最優先する治療法を研究する。観察を続

    けているうちにどんな病気の患者にも必ず筋骨格系の問題があることを発見し、そこから

    医学の見直しを行う。彼はホメオパシー、ハイドロセラピー(水治療法)、磁気療法などさ

    まざまな治療法について研究したが、最終的には手技により筋骨格系の異常を正す方法に

    たどりついた。そして1874年に自らの治療法を「オステオパシー」という名称で発表

    し数多くの患者をオステオパシー治療により治癒させる。その後、彼の技術を学びたいと

    いう人達の要望に答え、1892年にはミズーリ州カークスビルに米国で最初のオステオ

    パシー医科大学「アメリカン・スクール・オブ・オステオパシー(ASO)」を設立する。そ

    の後オステオパスはアメリカ全州で正式な医師として認められ、M.D(メディカル・ド

    クター)に対し、D.O(ドクター・オブ・オステオパシー)の称号を与えられる。現在

    のD.Oは投薬、手術も行うがスティル自身は薬の使用を完全に否定し手術も必要最小限

    にとどめていた。

    ・エドガー・ケイシー (Edgar・Cayce)(1877-1945)

    1877年、ケンタッキー州に生まれる。23歳の時に、原因不明の失声症になるが 1 年

    後の1901年に催眠療法で回復する。このとき、ケイシーは催眠状態では話すことがで

    き、自らの病気の原因と治療法を正確に述べて回復することができた。この催眠療法がき

    っかけで透視能力を発揮するようになる。その後は催眠状態で、医学、工学、宗教など、

    あらゆる分野の質問に答え、彼の話す内容はあたかも本を読むようによどみなく語られる

    ため、のちに「リーディング」と呼ばれるようになる。その情報の正確さから、トーマス・

    エジソンやニコラ・テスラなども彼と交流していた。彼の病気の治療に関するリーディン

    グには、オステオパシーが頻繁に出てくることはよく知られているが、ケイシーとスティ

    ルに交流があったことはあまり知られていない。二人は50歳ほど年齢が離れているが、

    お互いに相手の仕事に敬意を払っておりケイシーはスティルの治療を受け、スティルはケ

    イシーに何度かリーディングをとってもらったという。残念なことにスティルは1917

    年に亡くなっており、現在速記録として残っているケイシーリーディングは1923年以

    降のもののため、スティルがケイシーにどのような質問をし、それにケイシーがどう答え

    たかを我々は知ることができない。

  • ・ジョン・マーチン・リトルジョン (John・Martin・Littlejohn) (1865-1947)

    1865年スコットランドのグラスゴーに生まれる。彼は健康上の理由からより温暖で乾

    燥した土地へ移るようアドバイスされ、1892年英国を離れて米国へ移住する。そこで

    英国では治癒不能といわれていた頸部の疾患がスティルの治療により完治したため、それ

    をきっかけにカークスビルでオステオパシーの教育を受けることとなる。彼はオステオパ

    シーを学ぶ前は基礎医学(検死医)を勉強しておりASOでオステオパシーを学んだ後、

    そのまま学校に残って生理学を教え、オステオパシーを特に生理学者としての立場から研

    究を進めた。その後、スティルとの考え方の違いからASOを離れ、シカゴに「アメリカ

    ン・カレッジ・オブ・オステオパシー・アンド・サージェリー」を設立する。その後、彼

    は英国に戻り、1917年に「ブリティッシュ・スクール・オブ・オステオパシー」を設

    立する。リトルジョンは米国から英国に戻った最初のオステオパスではなく、それ以前に

    ダナム、ウィラード・ウォーカー、ホーンなどが戻り1911年には「ブリティッシュ・

    オステオパシー・アソシエーション」を設立している。しかし、実際のところ英国の、そ

    してヨーロッパのオステオパシーを形作ってきたのは、リトルジョンの脊柱バイオメカニ

    クス理論であることは間違いない。後述するが、彼の脊柱バイオメカニクスの理論とケイ

    シーリーディングの内容には、多くの共通点があり、リトルジョンが数年間スティルと一

    緒に ASO で教えていたことを考えると、彼もケイシーリーディングの内容を知っていた可

    能性はある。しかし彼の脊柱力学の考え方が純粋に臨床における観察に基づいたものなの

    か、ケイシーリーディングを参考にしたものなのかは、現在ではスティルのケイシーに対

    する質問とその答えと同様に知る術はない。

    本論文のテーマは、スティルの著書にも繰り返し出てくる、脊柱全体のバランスを整える

    ということであり、その目的を達するうえでは数あるオステオパシーのテクニックの中で、

    リトルジョンの考え方が最も適していると考え、彼の理論を基にして彼の教え子の一人で

    あるジョン・ワーナム D.O が考えた「クラシカル・オステオパシー」の一連の手順を実験

    の手法として用いることとした。

  • 次に彼らの著作などからの抜粋を紹介する。

    ・A.T.スティル

    今回は被験者の一人が肝機能障害を持っているため、肝臓疾患の章からの抜粋を紹介する

    「Research and Practice」 P.109 A.T.Still 肝臓疾患の治療の一部分

    After the description just given I think the operator is just about ready to proceed to

    adjust the spine from the occiput to the sacrum after the manner given in other

    chapters on spine and rib adjustment. If the upper dorsal presents an imperfect

    alignment of the spinous processes(and often when the spinous processes are all in a

    atraight line), on careful examination we may find lateral curvature with convex

    bulging to the right or to the left, from the second to the eighth dorsal. A good method of

    correcting such is to hook your fingers strongly on the opposite side of the spinous

    processes and in the concavity of the curvature, then push the neck, not the head but

    the neck towards that concavity. Then I place my upper hand on the back of the neck

    and bend the neck forward and down with a rotary motion. We should adjust all ribs

    carefully in this region, and never treat such cases more than once or twice a week for

    fear of unnecessary soreness.

    これまでに与えた説明により、治療者は既に他の章で述べたような脊柱と肋骨の調整方法

    によって、脊柱の後頭骨から仙骨までの調整を始める準備ができたことと思う。もし、上

    部胸椎の棘突起が正しく整列していなければ(そして、しばしば棘突起は直線的になって

    いる)、慎重に検査することにより、胸椎2番から8番において右か左への側湾を見つける

    かもしれない。この側湾を正す良い方法は、側湾部分の棘突起において側湾の対側と側湾

    カーブの側の両側に指をしっかりと引っかけ首を、頭ではなく首を側湾カーブの凹側に向

    けて押す。それから上方手を首の後方に当て、ひねりを加えながら前下方に曲げる。その

    部分の全ての肋骨も慎重に検査し、調整しなければならない。またこのようなケースでは、

    不必要な痛みを生じさせる恐れがあるため週に1回から2回以上の治療を行ってはならな

    い。

    ・エドガー・ケイシー

    1、NO.1130-1 腎機能障害 37歳、男性 に対するリーディングの抜粋

  • Also we find that only the corrective measures made in the manner in which the

    condition has increased would not eliminate entirely the disturbing conditions, any

    more than would the medicinal values in the system do other than change the chemical

    reactions for the body. First then, as we find, we would have three to six osteopathic

    adjustments and manipulations; particularly in the 9th 10th 11th and 12th dorsal

    center-to be sure, coordinating the lumber axis and the upper dorsal and cervical area

    with the corrective measures that would be maintained by one making a perfect

    alignment through the cerebrospinal system.

    また我々の見るところ、この状態を増大させた部分だけを矯正するような治療法では、

    障害となっている状態を完全に取り除くことはできない。これは、身体に薬効成分を与え

    ても、身体に対する化学反応に変化をもたらすほどのことしかできないのと同じである。

    まず、3回から6回オステオパシーによる調整とマニピュレーションを行う。特に胸椎の

    9,10,11,12番を念入りに行う。もちろん、脳脊髄系全体にわたって完全に整列

    させることのできる人の施す矯正方法によって、腰椎軸と上部胸椎と頸椎部位を協調させ

    ながらである。

    2、NO.2019-1 てんかん 52歳、男性 に対するリーディングの抜粋

    After the two days of applying the Packs, we would begin then with the osteopathic

    adjustments,-with particular reference to a subluxation as will be found indicated in the

    lower portion of 9th dorsal center, or 9th 10th and 11th. Coordinate such correction with

    the lumber axis and the upper dorsal and cervical centers.

    二日間、ひまし油パックをしたなら、次にオステオパシーによる調整を始める。この場合、

    特に胸椎の9番から下の部分、つまり9、10、11番にあるサブラクゼーションに対し

    て念入りに施すようにする。これらの調整を腰椎軸、上部胸椎、頸椎の中枢との協調を取

    りながら行うようにせよ。

    3、ケイシーリーディングを基にして医師に向けて書かれた本からの抜粋

    「Physician’s Reference Notebook」William. A. McGarey M.D 1968

    (1)喘息治療からの一部分 P.58

    Osteopathic adjustments vary according to the conditions found, of course. Stress

  • should always be placed on correcting subluxations while balancing the lumber axis

    with the cervical and the 9th dorsal. The balancing or coordinating is not a simple thing

    but apparently has much to do with correction of various incoordinations within the

    body proper.

    もちろん、見つかった状態に応じたオステオパシーの調整は状態を改善させるが、ストレ

    スはサブラクゼーションを矯正しても、腰椎軸、頸椎、胸椎9番をバランスさせない限り、

    取り除くことは出来ない。これらをバランス、または協調させることは単純なことではな

    いが、この不協調を正すことは体を正常化させる上で大変価値のあることである。

    (2)糖尿病治療からの一部分 P.118

    Undoubtedly, diabetes exists without the definite subluxations of the vertebrae which

    have been named. In these case, however, abnormal autonomic impulses still appear to

    be coming to the pancreas. Thus it would be advisable in all cases of diabetes, since we

    cannot always apprise the need for this type of therapy, to institute a course of

    osteopathic manipulations and adjustments. Specific adjustments of these particular

    vertebrae should be made as well as general adjustments. They should be given in

    series, six to eight. They should coordinate the 4th lumber with the 3rd cervical in

    conjunction with the dorsal vertebrae that are being treated. It is important to

    remember that a pressure might be alleviated, but correct flow of nerve impulses cannot

    come about consistently unless the balance is maintained over a period of time. This is

    why more than one treatment is necessary.

    確かに糖尿病は、これまで述べられたような明確なサブラクゼーションなしで発症するこ

    とがある。(この文章の前段でT6~T9のサブラクゼーションに関する記述がある。)

    しかしながら、それらのケースでも膵臓への異常な自律神経のインパルスが発生している。

    多くの場合、明確なサブラクゼーションが無いために私たちは患者達全員にオステオパシ

    ー治療が必要だと伝えることができないが、上記の状態から本来は全ての糖尿病患者にオ

    ステオパシーのマニピュレーションと調整を勧めることが望ましい。障害部位への調整は

    全体的な調整と並行して行われるべきである。この調整は6回から8回のシリーズとして

    行い、休息を挟んだあと次の6回から8回のシリーズをおこなう。(通常は週2回程度の頻

    度で行い、3週間程度の休息を勧められることが多い。また休息期間には、ひまし油パッ

    クなどが勧められることが多い。-筆者)

    この治療は、腰椎4番と頸椎3番と胸椎との関連の協調を取るべきである。覚えておくべ

    き重要なことは、矯正により障害分節の圧迫は緩和されるが、全体的な調整によってバラ

  • ンスが整うまでは、神経インパルスは正常に流れないということである。これが、なぜ1

    回以上の治療が必要なのかという理由である。

    4、次に、ケイシーリーディングにおいて、一貫して述べられている、病気とその治癒と

    の関係を端的に示したリーディングの一部を紹介する。これはオステオパシーの哲学であ

    る「人間は Body, Mind, Spirit の三つの部分から成り立っており、すべてがつながり合っ

    ている」という考えとも共通する部分があるので、今回の論文のテーマとは関係しないが

    あえてここに紹介する。

    NO.3124-2 多発性硬化症 35歳 男性 に対するリーディング

    When the body becomes so self-satisfied, so self-centered as to renounce, refuse, or does

    not change its attitude, so long as there is hate, malice, injustice, those things that

    produce that which is at variance to patience, longsuffering, brotherly love, kindness,

    gentleness, there cannot be healing to that condition of the body. As first indicated what

    would the body be healed for ? That it might gratify its own physical appetites ? That

    it might add to its own selfishness ? Then (if so)it had better remain as it is. If there is

    the change in mand, in intent, in purpose, and the body expresses same in its speech, its

    acts, and there is the suggested, we will find improvement. But first the change of heart,

    the change of mind, the change of purpose, the change of intent.

    しかし、本人があまりに自己満足し、あまりに自己中心的であり、霊的なことを拒否して

    いるその態度を改めないならば、また憎しみや敵意や不正や嫉妬があるかぎり、また忍耐

    や辛抱や隣人愛や、やさしさと矛盾する何かが心の中にあるかぎり、肉体の治癒は望めな

    い。この人は何のために病気を治したいのか。自分の肉欲を満足させるためか、ますます

    利己的になるためか、もしそうならば今のまま治らぬほうがよいのだ。もし心の持ち方や

    目的が変わり、言葉にも行いにも変化を現すならば、そしてその上で指示したような治療

    法を行うなら、本当によくなるだろう。だが、まず心と精神と目的と意図とを変えなくて

    はならない。

    ・J.M.リトルジョン

    今回の実験で使用したクラシカル・オステオパシーはリトルジョンの理論を基礎としてお

    り、彼の考えと「クラシカル・オステオパシー」という言葉は、ほぼ同義語といっても過

    言ではない。A.T.スティルはオステオパシーを、1に解剖学、2に解剖学、3に解剖学、

    とあくまでも解剖学を中心に考えていたが、リトルジョンは生理学的、生体力学的にオス

  • テオパシーの研究を進めた。彼のバイオメカニクス理論は、フライエットの関節運動力学、

    ジンクの筋膜パターン、フルフォードの頭蓋理論など他のオステオパス達が提唱した理論

    と比べても非常に難解で簡単には理解することはできない。リトルジョンのコンセプトは

    通常の建物のような支柱、テコ、支点などからなる構造を支持するために重力の圧縮力を

    利用するニュートン力学の概念に基づいているが、現在では人体という複雑な構造をより

    よく説明できるモデルとして、建築家バックミンスターフラーの提唱したテンセグリティ

    ー構造が用いられ良好な結果を得ている。しかしながらリトルジョンの手法が患者の治療

    に対して効果をあげてきたことは事実である。

    *テンセグリティー:連続してつながっている張力のネットワーク(柔構造)が、不連続

    な圧縮材(剛構造)を支える構造。

    次にクラシカル・オステオパシーに関する文献からの抜粋を記載する。

    (全日本オステオパシー協会による翻訳資料を参考とした)

    クラシカル・オステオパシーの特徴

    ・身体調整(Total Body Adjustment)を主眼とした治療である。

    ・活性化力が全身にどのような影響を与えるかを考えて、生体の持つ活力を中心に治療を

    行う。病変は生理的な障害である。初期のオステオパス達はこれをオステオパシー病変

    (Osteopathic Lesion)と呼んでいた。これは現在、体性機能障害(Somatic Dysfunction)

    と呼ばれるものとほぼ同義語である。

    ・体の各部分が全体的に働くように相互調整をすることを目的とする。心臓、腎臓、肝臓、

    血液循環の改善が最も重要であり、これらは神経系の調整を行うことで改善できる。

    ・身体を安定的な状態にするために脊椎の構造に働きかける。全体的な治療をすることに

    より各部分がよくなっていく。

    クラシカル・オステオパシー治療の基本的な考え方

    ・原則: 体に調和をつくり、一定のパターンでリズミカルに行う。

    ・哲理: 人間の活性、活力、気を引き出す。活性が全身にどのような影響を与えるかを

    考えて、生体の持つ活力を中心に治療を行う。

    ・力学: 重力に対する拮抗力(作用、反作用)について考察し、力が脊柱全体、特に腰

    部と腹部に掛かるものについて研究を行った。上下の体腔(胸腔、腹腔)の圧

    をバランスさせること。そして力のかかる線(力点)がどこを通っているかを考え

    てバランスを調整する。

    ・技法: 長テコ法を使用する。現在のオステオパシーは短テコ法が最も多く使用されて

    いる。しかし長テコ法のほうが的確で強く、スローで患部に傷をつけることな

    く行うことができる。

  • 全身の身体調整を行うべき病態

    1、体質性疾患

    2、虚血症

    3、潜在する病気の過程がまだ決まっていないもの

    急性例を除く治療の初期段階では、脊柱の特定病変に注意するというよりむしろ、特定の

    症例に必要な上下位の全体的関節治療が最良の治療技法である例が非常に多い。身体の全

    機能間の協力の必要性にもとづき、呼吸、消化、排泄などの相互調整を試みる。しかし全

    体的治療という用語が漠然としたとか非特定的といった意味ではないことに注意しなけれ

    ばならない。組織の分析から正確な診断と治療計画が要求される。ただ、治療は少数の関

    節やその周辺に焦点を定めないものではなく、またその小さな部位に限定するものでもな

    い。むしろ、全体として身体を治療すべきである。各部位は特有な必要性や力学/生理学

    的調和を確立する必要に応じて治療する。

    次にリトルジョンが身体を表すために使用した、4タイプのアーチと5本の重力線、力の

    平行線について説明する。可能な限り簡略化して説明するため詳細を知りたい方は、リト

    ルジョン他の文献を参照していただきたい。

    4つのアーチ

    ・構造的アーチ

    ・機能的アーチ

    ・セントラルアーチ(ダブルアーチとも呼ばれる)

    ・生理学的アーチ

    5本の重力線

    ・前後方向のライン (AP ライン)

    ・後前方向のライン (PA ライン)

    ・中央重心線

    ・前方中心のライン (AC ライン)

    ・後方中心のライン (PC ライン-2本のラインがクロスする)

    力の平行線

    ・身体前方のライン

  • 4つのアーチの説明

    1、構造的アーチ

    解剖学者によって記載された様式であり、局所解剖学に基づく。

    アーチ キーストーン

    頸椎部 C2-T1 C2/3

    胸椎部 T2-T12 T5/6

    腰椎部 L1-L5 L3

    仙骨部 仙骨-尾骨

    * リトルジョンは、環椎は頭部に属すると考えていた。

    * 「キーストーン」という用語はリトルジョンによって用いられ、アーチの中で最も

    重要な椎骨であり、その力学の中央重心線に関連し、必ずしも湾曲の最大点では

    ないことを意味する。

    2、機能的アーチ

    湾曲がユニットとして機能する方法に基づく。機能は構造によって決定づけられる。こ

    の場合、脊柱の構造とそれらの支持筋群である。したがって、それらを分析することに

    よって、脊柱の機能(そして構造)によって定義される一連のアーチを構築することが

    できる。機能的アーチの特徴は以下の通りである。

    ・C5とT9は関節面の方向の移行点としてあげられ、したがって運動の移行点として

    表 表現される。

    ・L5はC1と類似の役割を持ち、腰椎と仙骨の間の結合点と想定される。(リトルジョ

    ンはC1を頭部に含めたが、のちにワーナムは機能的アーチにおいてそれが後頭骨と

    C C2の間の回転軸と考えた。)

    したがって、これらの点-C5,T9、L5(C1)はアーチ間のピボット(回転軸)

    と表現される。これらのピボットが多くのストレインを受けやすいことは明白である。

    アーチ アーチ間ピボット

    上部 C2-C4 C5

    中部 C6-T8 T9

    下部 L5

    仙骨部

  • 3、セントラルアーチ(ダブルアーチ)

    脊柱と身体の支持に関するもので、いくつかのコンセプトに基づく。

    ・胸椎は一時性湾曲である。それは発生学的な後湾カーブを成人期まで保持しており、し

    たがって安定して強固である。頸椎、腰椎は二次性で支持より代償の領域であり、一次

    性湾曲と重力の双方に適応する。

    ・T4は頭部と頸部の圧迫力が1次性湾曲によって支持される点と表現される。

    ・L3はこのポイントより下の全てを吊るしている身体の重心と表現される。

    ・上記のポイントは両方とも主要なピボットの部位でもある。T4は後述する上下の三角

    形の間の連結の地点であり、L3は小三角形の頂点である。これらは比較的安定した胸

    椎グループの端の可動点と表現される。

    したがって、セントラルアーチは脊柱を支持し、アーチの頭方端は頭部と頸部から生じて

    いる圧迫のための基礎であり(T4)、尾方端はL3と以下の骨盤および下肢からのサスペ

    ンションの位置でもある。したがってセントラルアーチはT5からL2までに及び、後湾

    と前湾の両方で構成されているため、ダブルアーチと呼ばれることもある。

    アーチ キーストーン

    上部 C2-T4

    中部 T5-L2(セントラルアーチ) T9

    下部 L3以下

    4、生理学的アーチ

    これはフォースの線、オステオパシー・センター、自律神経系制御、そしてオシレー

    ション・センター(関節面の方向によって描写される円の中心)のかなり複雑な分析

    に基づく。キーポイントはC7である。そしてT9は頸椎と胸椎と腰椎部のそれぞれ

    のオシレーション・センターであり、2つの湾曲の頭方ピボットを定義するのはこれ

    らである。それぞれの領域のオステオパシーおよび自律神経センターの分析は、起こ

    り得る生理学的機能障害のタイプの予測を可能にする。

    アーチ キーストーン

    上部 C7-T8 T9

    下部 T10-尾骨

    これらのアーチとその回転軸の分析は、機能障害のパターンとそれらをいかに治療するか

    の理解を可能にするが、個々のアーチを分析しそれらを統合することは複雑なため、

    4本のアーチを合成した「ピボット・モデル」に次第に単純化された。

  • ・ピボット(回転軸)モデル

    この単純化した解釈は、ピボットとして以下をあげる。

    ・後頭骨/C1

    ・C5

    ・T4

    ・T9

    ・T12/L1(胸腰連結)

    ・L3

    ・L5/S1

    C5,T9,L3はミッドアーチ・ピボットと呼ばれ、T4,T12/L1、L5/S1

    はアーチ間ピボットと呼ばれる。これらの用語はリトルジョンの用語と一致していないが、

    実用的ではある。脊柱アーチは以下のように記載される。

    ・頸椎アーチはC1からT4に至る。(しばしばC1についてのリトルジョンの考えから、

    C2からT4と記される。)

    ・胸椎アーチはT4からT12に至る。

    ・腰椎アーチはL1からL5に至る。

    仮に、患者の脊柱アーチが上記からずれている場合、オステオパシーの治療はそのアーチ

    をより理想的のものへと近づけることであるが、一部の個人においては、多くの理由のた

    めに不可能なことがある。しかし治療によって「理想的な方向へと進む」というコンセプ

    トが大切である。

    5本の重力線の説明

    1、前後ライン (AP ライン)

    大孔前縁中央から尾骨先端へと後下方へ斜めに走行するライン。以下を通る。

    ・大孔前縁中央

    ・T11,T12

    ・L4/5の後部連結

    ・S1

    ・尾骨先端

    このラインは弓の弦のように脊柱のフォースを分解するものである。脊柱のフォースは AP

    ラインによって、逆向きにバランスされている。

    2、後前ライン (PA ライン)

  • 大孔後縁の中央から寛骨臼へと前下方へ斜めに走行するライン。以下を通る。

    ・大孔後縁中央

    ・L2/3の関節の前縁(ここで二又に分かれる)

    ・両側の寛骨臼(一部のテキストではそこから、骨盤腔を包んで、恥骨結合で結合

    する)。

    ワーナムは PA ラインについて以下の説明をしている。

    ・AP ラインと相補的である。

    ・頸部のテンションの整合性を維持するための、後頭環椎関節後方から T2 および

    R2 を結合している圧のラインを意味する。

    ・腹骨盤支持ラインを強化する。

    ・L2/3の関節から大腿骨へテンションを向ける。(腰筋と深腹骨盤筋膜を経る。

    それは L2/3で2又に分かれ寛骨臼へ向かって外側へ進むラインとして説明

    される。

    ・腹筋と骨盤臓器に関連して股関節と下肢の運動に拮抗する胸腰靭帯を経て身体の

    内腔に圧を協調させる頸部、体幹および下肢のテンションを維持する。

    腔圧のバランスを取る役割は PA ラインが T1レベルで胸腔の上極、さらに胸腔と腹腔

    の移行部、横隔膜の腰椎付着部、骨盤隔膜を通って恥骨結合において結合することで、

    理解することができる。

    3、中央重心線

    AP ラインと PA ラインの2本の斜線の間に線が引かれる場合、結果として生じる

    垂線は中央重心線となる。これは以下を通る。

    ・C2 歯突起

    ・L3椎体中央

    ・仙骨岬角前方

    ・股関節、膝関節、足関節の中央の内側

    ・前方の中足骨頭と後方の踵骨結節

    中央重心線が L3椎体を通るため、リトルジョンによって身体重心にあげられた。し

    たがって L3より上の身体はそれに支持され、脊椎、骨盤、下肢はそれに「吊るされる」

    このプロセスは従来矢状面だけで分析され、人体があたかも二次元の物体であるかの

    ように評価されてきた。三次元でそれを評価するためには、同じ手法を前額面で実施

  • することが必要である。このために用いるラインは前方および後方中心ラインと呼ば

    れる。

    4、前方中心ライン(AC ライン)および後方中心ライン(PC ライン)

    AC には AP と同じ主要な役割が割り当てられている。すなわち関節のテンションの

    維持である。そして同様に PC には PA と同じ腔圧の統合という役割が当てられてい

    る。関節のテンションの自由度がわずか1度のため、AC ラインは実際上1本のライ

    ンとして表現する。一方、腔圧が容積に関係するため2本の PC ラインが用いられる。

    AC ラインは以下を走行し、AP ラインと正確に同一となる。

    ・大孔前縁中央

    ・T11,T12

    ・L4/5の後部連結

    ・S1

    ・尾骨先端

    PC ラインは以下を走行する。(左右各1本)

    ・大孔後縁と最外側との両側の交点から内側へ

    ・T4 の前方

    ・始点の対側の寛骨臼

    AC と PC の分解も中央重心線を提供する。

    力の平行線

    ・身体前方のライン

    このラインはオトガイ結合から恥骨結合へと伸び、恥骨弓と水平に引いた線と直交する。

    この体前線は胸圧と腹圧の線を表し、機能的に恥骨弓と共同して作用する。このライン

    が前方または後方へ移動するとさまざまな機能障害が発生してくる。

    正常な重心線

    1、耳の後ろから肩関節、股関節、足首を通過する。

    2、胸腔圧と腹腔圧は正常となり、これらのバランスがよくなる。

    3、腹腔内の臓器は自由に動くことができ、浮遊することもできる。

    4、体の平衡を保ちやすくする。このためには、筋肉その他の軟部組織のバランスが大切。

  • 後方重心型(身体前方のラインが後方へシフト)

    1、重心線は全て後方を通過する。

    2、胸腔内圧力が変わり胸腔、腹腔の圧力が変わる。(圧力差が生じる)

    3、胸郭の扁平化が生じ、胸郭の拡大能力が低下し横隔膜、骨盤、内臓器が下垂する。

    4、重力からも内臓に大きな影響が出やすい。

    前方重心型(身体前方のラインが前方へシフト)

    1、非常に少ない。膝に影響が出やすい。

    2、いつも緊張している人に多く、「ハイハイ」せず、尻ですべる子供に多く見られる。

    3、幼児から大人への発達過程で、緊張が生じた場合に前位型になるケースがある。

    3つの三角形と3つのユニット

    PA ラインと PC ラインを合成すると、二次元において3つの三角形ができる。

    ・小三角形:両寛骨臼を結んだ線を底辺とし、L3 椎体前方を頂点とする三角形

    ・下部三角形:両寛骨臼を結んだ線を底辺とし、T4椎体前方を頂点とする三角形

    ・上部三角形:大孔後縁と外側縁の交点を結んだ線を底辺とし、T4椎体前方を頂点

    とする三角形

    リトルジョンの弟子であった、パーノール・ブラットベリは1950年代、流感が大流

    行したときに、時間短縮のため1番目に付いた椎骨だけに手技をほどこし大きな治療効

    果を得た。彼の死後、弟子のトム・ダマーがこの方法を発展、改良させた。彼はこの3

    つの三角形をスティルのオリジナルコンセプト「身体は骨盤と下肢、頭蓋と頸部と肩甲

    帯と上肢、関節で繋がれている胸郭と体幹の三連構造で構成され、3つはすべて機能的

    に独立している」に基づいて、3つのユニットに分け、検査、治療する特定調整テクニ

    ック(SAT)を考え出した。

    ・ユニット1:小三角形に関連。下肢、骨盤、L3以下の腰椎下部。このユニットは

    移動のためにある。

    ・ユニット2:上部三角形に関連。頭蓋、頸椎、T4 までの胸郭上部、肩、上肢、胸郭

    上部。頭部、頸部、胸部の自律神経機能に関連。

    ・ユニット3:下部三角形に関連。胸郭下部、T4-L3 までの椎骨。腹腔の自律神経

    機能に関連。

    その方法は一連のテストにより「原発巣」を特定してから、主要な分節に決められた手

    順で手技を行う。一回の治療では1つの分節だけに手技を施す。詳細に関しては、トム・

    ダマーの著書を参照されたい。またこの考えはスティル・テクニック第2版に載ってい

    るスティル・ラフリンテクニックとも共通する部分がある。

  • フォースの三角錘

    フォースの三角錘は図にあるように、AP,AC および PC ラインを統合することによって

    構築される。3つの三角形と3つのユニットは PA ラインと PC ラインにより 2 次元での統

    合を行ったが、フォースの三角錘は AP,AC,PC の 3 本のラインにより、3 次元での立体的

    な分析を可能とする。フォースの三角錘は上部と下部の2つに分けられる。

    上部三角錘

    底面:頭蓋骨の大孔を囲んでいる三角形。頭蓋の支持のための基礎を提供する(図)。

    頂点:T4と R3。頭部と頸部の圧縮およびねじれのフォースが作用するポイント。

    下部三角錘

    底面:左右の寛骨臼と尾骨を結んだ三角形。正確に整列するとき、これは腹部および

    骨盤器官を支持するための硬い基礎として作用し、腹部のテンションを維持す

    るのに役立つ。

    頂点:T4の前方。ここで上部三角錘と繋がる。またここは両方の三角錘が中央重心線

    と交差するポイントである。

    この下部三角錘の比較的大きい外側縁は、腹部と胸郭の下部 3 分の2で形成されてい

    るため、軟部組織はその整合性を維持するのに非常に重要である。軟部組織のトーン、

    あるいはバランスの喪失は、この三角錘を崩壊に導きそれに伴い内部の内臓に悪影響

    を及ぼす。

    2つの三角錘は、双方の頂点が交わる T4 のポイントのまわりで回転する。それゆえ、それ

    はより重要な力学的意義を持つ。どちらの問題も他方に影響し、したがっておそらくこの

    ピボットや関連する構造での症状の原因となる。統合された三角錘とは、脊柱と骨盤の支

    持、そしていかにして胸腔、腹腔および骨盤腔間の相対的な圧力差が維持されるかを意味

    する。それらは中央重心線周辺で動揺するため、関節のテンション(特に脊柱)も意味す

    る。この効果の多くは前段で述べた前方および後方重心タイプにおいて説明される。

    次に実験手法について記述する。

    ・被験者(2 名)

    被験者1 41歳 男性 症状 顎関節障害

    被験者2 42歳 男性 症状 肝機能障害、腰痛など

    ・施術者 クラシカル・オステオパシーの講義を受講し、その課程を修了した

    オステオパス。

    ・頻度 1 週間に 1 回

  • ・期間 2 ヶ月間(合計 7 回)

    ・実験開始前と終了後の検査項目

    ・レントゲン頸部、胸部、腰部、骨盤部 各々の矢状面像と冠状面像(合計8枚)

    ・クラシカル・オステオパシーの身体調整の治療手順

    検査

    仰臥位での身体調整

    1、脚のポンピングと揺動

    2、右股関節の外旋環状振揺

    3、右仙腸関節の外旋運動による仙腸関節技法

    4、右上肢帯の揺動技法

    5、右肩関節技法

    6、右肋骨技法(肋骨の上下運動、ポンプハンドル、バケットハンドル)

    7、右鎖骨回旋技法と上肢の環状振揺

    8、左脚の揺動

    9、左股関節の外旋環状振揺

    10、 左仙腸関節の内旋運動による技法

    11、 腰椎の右回旋技法

    12、 左上肢帯の揺動技法

    13、 左肩関節技法

    14、 左肋骨技法(肋骨の上下運動、ポンプハンドル、バケットハンドル)

    15、 左鎖骨回旋技法と上肢の環状振揺

    16、 頸椎技法(牽引、後頭窩の圧縮、側屈と回旋による技法)

    腹臥位での身体調整

    17、脚のポンピング

    18、左仙腸関節と骨盤の内旋運動による技法

    19、左上肢をテコとした肋横関節の環状振揺

    20、左側より脊椎のオシレーションとアーティキュレーション

    21、右仙腸関節と骨盤の外旋運動による技法

    22、右上肢をテコとした肋横関節の環状振揺

    23、右側より脊椎のオシレーションとアーティキュレーション

    サイドラインテクニック

    24、右サイドラインテクニック

    25、左サイドラインテクニック

    胸椎の調整

    26、ドックテクニック

  • 被験者1のレントゲン写真の評価

    頸椎

    頸椎の前湾角度は施術の前後で約3°増加している。しかし特筆すべきはやはり角度の変

    化より全体のバランスの変化である。施術前の頸椎は上部が比較的直線的で、下部におい

    て前湾の角度が大きくなっているが、施術後は全体に前湾カーブがなめらかになっている。

    胸椎

    胸椎に関しては、画像がはっきりせず胸椎全体の角度を出すことができなかったため、見

    える範囲で角度を測定した。おおよそ T4~T10付近と思われる。胸椎に関しても後湾

    角が18°から25°へと増加している。全体的なバランスに関しては、画像がはっきり

    しないためもあるが、それほど大きな変化は見られないようである。

  • 腰椎

    腰椎も前湾角が46°から49°へと増加している。腰椎も頸椎ほどはっきりはしていな

    いが、やはり施術前は上部が比較的直線的なのに対し、施術後はカーブが全体的になめら

    かになっている。

    腰仙角

    腰仙角も36°から40°に増加している。

  • 被験者2のレントゲン写真の評価

    頸椎

    前湾角は41°から40へと減少している。この被験者の中部頸椎はかなり直線的になっ

    ており、前湾角はほとんど上部と下部だけで作られている。施術前と後の写真では施術前

    の方がストレートネックではあるが、それなりにバランスがとれているように見える。施

    術後ではC3、C4間で折れているように見える。全体のバランスとしては施術後の方が、

    悪くなっている印象を受けてしまう。

    胸椎

    胸椎は残念ながら、画像が悪く角度を計測することが出来なかった。角度を測ることは出

    来なかったが、画像をみるかぎり施術前、後ともに後湾が少なくかなり直線的な胸椎にな

    っている。これはスティルの肝機能障害の治療に関する記述とも一致している。

  • 腰椎

    腰椎は施術前が40°施術後が33°とかなり前湾角が減少している。全体のバランスも

    上部が直線的でL4、5間が湾曲の頂点になっているなどそれほど変化は見られない。

    腰仙角

    腰仙角は23°から26°へと増加している

  • 考察

    本論文では、スティル他の古い文献の内容から病気の治癒に最も重要なのは脊柱全体のバ

    ランスを整えることであるとの前提により、その方法としてクラシカル・オステオパシー

    の手法を使用した。

    今回は倫理上の問題もあり、2人のみを被験者とすることになった。またレントゲンの設

    備の制限があり、脊柱全体を一度に撮影することができず、クラシカル・オステオパシー

    の考えによる重心線やピボットの位置などを特定することができなかったため、整形外科

    などで一般的に使用されている方法による角度の計測のみとなった。

    被験者はわずかに2人であるが、その結果をみると全く対照的な結果となった。

    被験者1は全体のバランスが改善しているように見え、被験者2はむしろ悪化している

    ように見える。

    理由は被験者の施術に対する反応のしやすさ、施術期間中の被験者の生活の内容など多

    くの原因が考えられるがわずかに2人の被験者では推測の域を出ない。クラシカル・オ

    ステオパシーの効果について正確な実験をするのであれば、もっと多くの被験者で全身

    を撮影したレントゲン写真を使用して評価を行わなければいけないであろう。

    本論文の目的の核となる、脊柱全体のバランスを整えるということだけを考えるのであ

    れば、オステオパシーのどのようなテクニックを使用しても問題はないため、個々のオ

    ステオパスが自分に合ったテクニックで調整をおこなっていけばよいであろう。

    できることなら将来的にはオステオパシーに対して理解のある医師と連携して内臓疾患、

    全身性疾患などの患者に対して施術をおこない脊柱のバランスを整えて、画像診断、血

    液検査など数値として目に見えるかたちで初期のオステオパス達がおこなっていたこと

    を証明できたらと思う。

    最後に本論文の作成には、本間先生、萩原先生、全日本オステオパシー協会の橋本会長

    ほか多くの方々に協力していただきました。本当にありがとうございました。

    参考文献

    「 Research and Practice 」 A.T. Still M.D

    「 The Complete Edgar Cayce Readings Version 2.0 CD ROM 」

    Association for Research and Enlightenment . Inc

    「 Physicians Reference Notebook 」 William.A.McGarey M.D

    「 クラシカル・オステオパシー 」 全日本オステオパシー協会翻訳資料

    「 トリガーポイントと筋肉連鎖 」 Philipp Richter D.O & Eric Hebgen D.O

    「 大系 骨・関節の画像診断 Ⅰ,Ⅱ 」 T.R. Yochum D.C & L.J.Rowe M.D

    「 オステオパシーの哲学 ( 授業資料 ) 」 森田博也 D.O

    「 Ontario Osteopathic Association ホームページ 」 www.ontarioosteopaths.com