建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用...

4
建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用する風圧の実測 -気流性状と風力係数について- ()WindStyle ○吉田幸彦 松山哲雄 日大生産工 丸田榮蔵 千葉工大 上田 宏 1.はじめに 本研究は、実測により、建物に併設された 仮設足場のメッシュシートに作用する風圧力 のデータを収集・分析することで実現象を理 解し、風洞実験との相似性を検討することを 目的とする。 本報告では実測結果からメッシュシートに 作用する風力について明らかにすると共に、 メッシュシート単体(フレーム枠付き)で行 った風洞実験結果との比較も行った。 2.実験方法と風洞実験方法 2.1 実測現場と実測システム 1) 実測現場は千葉県君津市日建リース第三工 場で敷地内にある倉庫に仮設足場が併設され メッシュシート(充実率:70%)が張られて いる。仮設足場の寸法は幅 18.3m・高さ 9.4 mであり、倉庫の寸法は幅 16m・高さ 7.85m・ 奥行き 48mである(Photo.1Fig.1)。 メッシュシートに 13 箇所(①~⑬)の風圧 測定点が設けられている。各測定点の表側裏 側にそれぞれ円盤型静圧測定器を取り付け、 チューブを介して得られた風圧力をバラトロ ンにより測定し、メッシュシートに作用する 風力を表側計測点の圧力と裏側計測点の圧力 との差圧によって評価する。基準静圧は、仮 設足場の最上段に設置された NBS 型静圧管 から得られる圧力としている。基準風向・風 速は、3 成分の超音波風速計で測定している Photo.2Fig.2)。 Measurement of wind pressure that acts on the mesh seat in the temporary housing work stand set up by building Yukihiko YOSHIDA, Eizo MARUTA, Hiroshi UEDA, Tetsuo MATSUYAMA,Kazuki θ=0° 30° N Fig.1 構造軸と方位 Photo.2 円盤型静圧測定器 Fig.2 風圧測定点と測定機器 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 NBS タイプ円筒静圧管 避雷針 超音波風速計 円盤型静圧測定器 :倉庫外形 Photo.1 実測現場

Upload: others

Post on 08-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用 …建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用する風圧の実測 -気流性状と風力係数について-(有)WindStyle

建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用する風圧の実測

-気流性状と風力係数について-

(有)WindStyle ○吉田幸彦 松山哲雄 日大生産工 丸田榮蔵 千葉工大 上田 宏

1.はじめに 本研究は、実測により、建物に併設された

仮設足場のメッシュシートに作用する風圧力

のデータを収集・分析することで実現象を理

解し、風洞実験との相似性を検討することを

目的とする。

本報告では実測結果からメッシュシートに

作用する風力について明らかにすると共に、

メッシュシート単体(フレーム枠付き)で行

った風洞実験結果との比較も行った。

2.実験方法と風洞実験方法 2.1 実測現場と実測システム 1) 実測現場は千葉県君津市日建リース第三工

場で敷地内にある倉庫に仮設足場が併設され

メッシュシート(充実率:70%)が張られて

いる。仮設足場の寸法は幅 18.3m・高さ 9.4mであり、倉庫の寸法は幅 16m・高さ 7.85m・

奥行き 48mである(Photo.1、Fig.1)。 メッシュシートに 13 箇所(①~⑬)の風圧

測定点が設けられている。各測定点の表側裏

側にそれぞれ円盤型静圧測定器を取り付け、

チューブを介して得られた風圧力をバラトロ

ンにより測定し、メッシュシートに作用する

風力を表側計測点の圧力と裏側計測点の圧力

との差圧によって評価する。基準静圧は、仮

設足場の最上段に設置された NBS 型静圧管

から得られる圧力としている。基準風向・風

速は、3 成分の超音波風速計で測定している

(Photo.2、Fig.2)。

Measurement of wind pressure that acts on the mesh seat in the temporary housing work stand set up bybuilding Yukihiko YOSHIDA, Eizo MARUTA, Hiroshi UEDA, Tetsuo MATSUYAMA,Kazuki

θ=0°約30°

N

Fig.1 構造軸と方位 Photo.2 円盤型静圧測定器

Fig.2 風圧測定点と測定機器

1

2 3 4 5 6 7 8

9 10 11 12 13

1

2 3 4 5 6 7 8

9 10 11 12 13

NBS タイプ円筒静圧管

避雷針

超音波風速計

円盤型静圧測定器

:倉庫外形

Photo.1 実測現場

Page 2: 建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用 …建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用する風圧の実測 -気流性状と風力係数について-(有)WindStyle

2.2 風洞実験方法 使用風洞は、日本大学生産工学部のゲッチ

ンゲン風洞である。実験気流は乱れ強さが約

10%に相当する一様乱流である。試験体はフ

レーム枠にメッシュシートを張ったもので、

両側にダミーフェンスを設けてある。風力は

ロードセルにて測定した(Photo.3、Fig.3)。フレーム枠の風力を予め測定し、メッシュシ

ートを張った状態で測定した風力からフレー

ム枠の風力を差し引いた。実験風向は 0°~

45°(15°ピッチ)の 4 風向である。風力係

数は(1)式より算出した。

3.実測結果 実測期間は、2003 年 10 月~2005 年 10 月ま

でとし、ここでは期間内で特に強風であった

数日を採用する(Table.1)。 風力係数 C を(2)式より算出した。

3.1 気流性状

Fig.4 は、入射風の平均風速に対する乱れ強

さ、Fig.5 は、05 年 4 月 7 日の比較的風向が安

定した 10 分間データから算出した U、W 成

分のパワースペクトルである。図より、平均

風速が増大するにつれ乱れ強さは減少する傾

向であり、20%前後の値を示した。パワース

ペクトルについては、水平成分 U のピークが

0.015Hz 付近にあるのに対し、鉛直成分 W で

は高周波領域にピークが発生する傾向となっ

た。その他の観測日のデータに関しても同様

な傾向を示した。

Photo.3 実験状況 実験風景

試験体

ダミー

試験体

マノメータ

パソコン

2分力ロードセル

ピトー管

アンプ

較正器A/D コンバーター

Fig.3 実験システム

221

21

HVPPC

ρ−

= (2)

P1:外圧 P2:内圧 ρ:空気密度 VH:基準速度

VAFCρ2

1= (1)

F:試験体の抗力 ρ:空気密度 V:基準速度

A:試験体の外郭面積

測定年月日 U (m/s) Umax (m/s) Umin (m/s) 乱れ強さ 卓越風向

03,12,27 7.503 10.823 0.325 0.245 NNW

04,2,5 7.119 10.149 0.249 0.201 SW

04,2,29 7.875 13.737 0.303 0.238 SSW

04,3,5~6 7.664 14.206 0.220 0.232 SSW

04,3,10~11 8.606 15.558 0.835 0.247 SSW

04,3,14 6.639 8.158 0.237 0.172 S

04,3,18 7.728 11.895 0.770 0.286 S

04,8,30~31 8.434 15.795 -0.007 0.184 S

05,1,30 7.135 10.948 0.289 0.246 NNW

05.4.7 6.910 13.723 0.627 0.224 S

05.4.11 4.082 12.173 0.642 0.246 WSW

05.4.28 7.067 13.960 1.006 0.238 SSW

05.4.29 5.425 12.769 0.338 0.238 SSW

05.5.18 4.713 10.348 1.092 0.189 SSW

05.5.19 4.202 11.462 0.389 0.189 SW

05.9.8 4.944 11.037 0.329 0.178 SSW

05.10.8 5.023 10.439 1.474 0.196 S

Table.1 参照 data 一覧

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

6 9 12 15風速(m/s)

乱れ

強さ

03_12_27 04_2_29 04_2_5

04_3_10~11 04_3_18 04_8_30~31

05_1_30 2005_4_7 2005_4_11

2005_4_28~29

Fig.4 入射風の乱れ強さ

Page 3: 建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用 …建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用する風圧の実測 -気流性状と風力係数について-(有)WindStyle

3.1 風向角と風力係数

Fig.6,7 は、測定点①における外圧係数 Cp1及び内圧係数 Cp2 を例示したものである。

Fig.8~13 は、測定点①、②、③、⑤、⑨、⑪

における風力係数 C を示したものである。縦

軸に風力係数 C、横軸に風向角θをとってい

る。 上段(①,②,③,⑤)で、風向が増加する(0°

~90°)につれて風力係数 C は低下し、他の

上段測定点に関しても同様の傾向であった。

風力係数 Cが 0と交差する風向角は①で 90°②で 60°③で 45°⑤で 30°となり、いずれ

もその風向角を境に風向変化に伴う風力係数

の変化が小さくなった。 下段(⑨,⑪)について、風力係数は 0.1 未

満と小さな値を示した。他の下段測定点に関

しても同様であった。これは、メッシュシー

トを風が通過することで、内外の圧力差がな

くなったことが要因として考えられる。 3.2 風洞実験との比較 Fig.14 に風洞実験結果と実測結果について

比較したものを示した。実測結果については、

風向毎に平均したものを用いた。風洞実験・

実測共に、風向が増大するに従い、風力係数

は減少する傾向を示した。ただし、いずれの

測定点も実測は風洞実験より小さな値を示し

た。測定点②の値が風洞実験に最も近い値を

示し、風洞実験値が実測のばらつきに入るこ

とが Fig.9 より見て取れる。

4.まとめ 本報では、実測結果を風向変化に伴う風力

係数について考察し、さらに風洞実験結果と

比較した。今後は、瞬間評価時間での風力係

数の分析を行っていく予定である。

Fig.5 入射風スペクトル

Fig.7 内圧係数 Cp2(計測点①)

Fig.10 風力係数C(計測点②)

Fig.6 外圧係数 Cp1(計測点①)

-0.5

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

-90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270風向θ(°)

風圧

係数

Cp1

2003_12_27 2004_2_5

2004_2_29 2004_3_5~3_62004_3_10~3_11 2004_3_14

2004_3_18 2004_8_30~8_31

2005_1_30 2005_4_7

2005_4_11 2005_4_28~292005_5_18~19

-0.7

-0.6

-0.5

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

-90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270風向θ(°)

風圧

係数

Cp

2003_10_132003_12_272004_2_5

2004_2_292004_3_5~3_62004_3_10~3_11

2004_3_142004_3_18

2004_8_30~8_312005_1_30

2005_4_72005_4_112005_4_28~29

2005_5_18~19

Fig.8 風力係数(計測点①)

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

-90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270風向θ(°)

風力

係数

2003_12_272004_2_52004_2_292004_3_5~3_62004_3_10~3_112004_3_142004_3_182004_8_30~8_312005_1_302005_4_72005_4_112005_4_28~292005_5_18~192005_9_82005_10_8

0.01

0.1

1

10

0.001 0.01 0.1 1 10Frequency (Hz)

nS

(n)

((m

/se

c)2

)

U成分

W成分

Page 4: 建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用 …建物に併設された仮設足場のメッシュシートに作用する風圧の実測 -気流性状と風力係数について-(有)WindStyle

参考文献

1)松山等:建物に併設された仮設足場のメッシュシー

トに作用する風圧の実測-実測システムについて-、日

本建築学会大会学術講演梗概集、2004 年 9 月

謝辞:今回の実測では、日建リース工業株式会社よ

り実測現場の提供等でご協力頂きました。ここに感

謝の意を表します。

-0.5

-0.3

-0.1

0.1

0.3

0.5

0.7

0.9

1.1

-90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270風向(°)

風力

係数

Fig.10 風力係数C(計測点③)

Fig.11 風力係数C(計測点⑤)

Fig.13 風力係数C(計測点⑪)

Fig.14 風洞実験との比較

Fig.9 風力係数C(計測点②)

-0.5

-0.3

-0.1

0.1

0.3

0.5

0.7

0.9

-90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270風向θ(°)

風力

係数

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

-90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270風向θ(°)

風力

係数

Fig.12 風力係数C(計測点⑨)

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

0 15 30 45風向θ(°)

風力

係数

C

風洞実験 実測①実測② 実測③実測⑤ 実測⑦実測⑨ 実測⑪実測⑬

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

-90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270風向(°)

風力

係数

-0.1

-0.075

-0.05

-0.025

0

0.025

0.05

-90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270風向(°)

風力

係数