微燃性冷媒を使用したシフヨチテウ゠ケヱ (店舗用ハチク ......2017/12/24...

92
微燃性冷媒使用した (店舗用)の評価報告書 日冷工 環境企画委員会 微燃性冷媒安全検討WG ミニスプリットリスクアセスメントSWG(Ⅱ) 【活動期間】2013 年 3 月 22 日~2017 年 4 月 11 日 作成日 2017 年 4 月 11 日 主査 渡部 岳志 【パナソニック(株)】 委員 (輸送・保管) 山田 【ダイキン工業(株)】 (据付) 村上 健一 【三菱重工サーマルシステムズ(株)】 (使用室内) 土橋 一浩 【日立ジョンソンコントロールズ空調(株)】 (使用室外) 鈴木 啓浩 【東芝キヤリア(株)】 (修理) 利行 【(株)富士通ゼネラル】 (廃棄) 鈴木 康巨 【三菱電機(株)】 オブザーバー 平良 繁治 【ダイキン工業(株)】 佐々木俊治 【日立ジョンソンコントロールズ空調(株)】 山口 広一 【東芝キヤリア(株)】 大井手正彦 【三菱電機(株)】 事務局 長谷川一広 【(一社)日本冷凍空調工業会】 以上、最終レポート作成時メンバー 以下、当 SWG に参加頂いた方々を記す 委員 (据付) 藤野 哲爾 【三菱重工サーマルシステムズ(株)】 オブザーバー 矢嶋龍三郎 【ダイキン工業(株)】 長谷川 隆 【ダイキン工業(株)】 平原 卓穂 【三菱電機(株)】 滝本 【三菱電機(株)】 高市 健二 【パナソニック(株)】

Upload: others

Post on 21-Jul-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

微燃性冷媒を使用したスプリットエアコン

(店舗用パッケージエアコン)のリスク評価報告書

日冷工 環境企画委員会 微燃性冷媒安全検討WG

ミニスプリットリスクアセスメントSWG(Ⅱ)

【活動期間】2013 年 3 月 22 日~2017 年 4 月 11 日

作成日 2017 年 4 月 11 日

主査 渡部 岳志 【パナソニック(株)】

委員 (輸送・保管) 山田 剛 【ダイキン工業(株)】

(据付) 村上 健一 【三菱重工サーマルシステムズ(株)】

(使用室内) 土橋 一浩 【日立ジョンソンコントロールズ空調(株)】

(使用室外) 鈴木 啓浩 【東芝キヤリア(株)】

(修理) 藤 利行 【(株)富士通ゼネラル】

(廃棄) 鈴木 康巨 【三菱電機(株)】

オブザーバー 平良 繁治 【ダイキン工業(株)】

佐々木俊治 【日立ジョンソンコントロールズ空調(株)】

山口 広一 【東芝キヤリア(株)】

大井手正彦 【三菱電機(株)】

事務局 長谷川一広 【(一社)日本冷凍空調工業会】

以上、最終レポート作成時メンバー

以下、当 SWG に参加頂いた方々を記す

委員 (据付) 藤野 哲爾 【三菱重工サーマルシステムズ(株)】

オブザーバー 矢嶋龍三郎 【ダイキン工業(株)】

長谷川 隆 【ダイキン工業(株)】

平原 卓穂 【三菱電機(株)】

滝本 直 【三菱電機(株)】

高市 健二 【パナソニック(株)】

免責事項

本報告書は,最新の技術情報に基づき万全を期して作成しておりますが,掲載された情報の正確性を

保証するものではありません.また,本報告書に掲載された情報・資料を利用,使用する等の行為に関連

して生じたいかなる損害についても,当工業会並びに著者は何ら責任を負いません.

著作権

本報告書の著作権は当工業会並びに著者が有しています.許可なく全体あるいは一部の転載,複製は

お断りします.

目次

1. はじめに ・・・ P. 1

1.1 店舗用パッケージエアコンのリスク評価概要 ・・・ P. 1

2. 店舗用パッケージエアコンの想定されるリスクモデル ・・・ P. 2

2.1 店舗用パッケージエアコンの特徴 ・・・ P. 2

2.2 リスクが高くなると想定される設置モデル ・・・ P. 3

3. 微燃性冷媒リスクアセスメントの手法 ・・・ P. 4

3.1 微燃性冷媒リスクアセスメント手法 (ISO/IEC Guide51 及び R-map) ・・・ P. 4

3.2 許容できるリスク(着火事故発生確率)の設定 ・・・ P. 6

3.3 着火事故が発生する要因 ・・・ P. 6

4. 冷媒リークシミュレーション ・・・ P. 7

4.1 室内モデル ・・・ P. 7

4.1.1 室内モデルの算出結果 ・・・ P. 7

(a)天井設置モデル ・・・ P. 7

(b)床置き設置モデル ・・・ P.11

4.1.2 床置きスリム形での送風運転による漏えい冷媒攪拌効果の確認 ・・・ P.17

4.2 室外モデル ・・・ P.22

4.2.1 室外モデルの空間容積 (地上設置、狭小設置、半地下設置) ・・・ P.22

4.2.2 室外モデルの算出結果 ・・・ P.22

(a)地上設置モデル,(c)半地下設置モデル ・・・ P.22

(d)狭小設置モデル ・・・ P.23

4.2.3 冷媒「R1234yf」及び「R1234ze(E)」の算出結果 ・・・ P.24

4.2.4 室外モデルの算出結果(輸送・保管・廃棄ステージ検討用) ・・・ P.27

5. 着火源の特定 ・・・ P.29

5.1 微燃性冷媒の着火源 ・・・ P.29

5.2 着火源存在確率 ・・・ P.30

5.2.1 使用(室内)ステージの着火源存在確率 ・・・ P.30

5.2.2 使用(室外)ステージの着火源存在確率 ・・・ P.35

6. 各ライフステージの FTA ・・・ P.36

6.1 輸送保管ステージ ・・・ P.36

6.1.1 輸送保管ステージの着火源 ・・・ P.36

6.1.2 輸送保管ステージの漏えいモード ・・・ P.37

6.1.3 中型倉庫保管時の FTA ・・・ P.37

6.1.4 狭小倉庫保管時の FTA ・・・ P.37

6.1.5 ワゴン車輸送時の FTA ・・・ P.38

6.1.6 輸送保管ステージのまとめ ・・・ P.38

6.2 据付ステージ ・・・ P.39

6.2.1 据付ステージの着火源 ・・・ P.41

6.2.2 据付ステージの冷媒漏えいパターン ・・・ P.43

6.2.3 室外機の FTA ・・・ P.43

6.2.4 室内機の FTA ・・・ P.45

6.2.5 据付ステージの安全対策 ・・・ P.47

6.2.6 据付ステージのまとめ ・・・ P.48

6.3 使用(室内)ステージ ・・・ P.54

6.3.1 使用(室内)ステージの着火源 ・・・ P.54

6.3.2 使用(室内)ステージの FTA ・・・ P.54

(a)事務所の FTA ・・・ P.55

(b)飲食店厨房の FTA ・・・ P.55

(c)カラオケルームの FTA ・・・ P.55

(d)飲食店客室の FTA ・・・ P.57

(e)工場の FTA ・・・ P.57

6.3.3 使用(室内)ステージの安全対策 ・・・ P.58

6.3.4 使用(室内)ステージのまとめ ・・・ P.58

6.4 使用(室外)ステージ ・・・ P.59

6.4.1 使用(室外)ステージの着火源 ・・・ P.59

6.4.2 使用(室外)ステージの FTA ・・・ P.60

(a)地上設置の FTA ・・・ P.60

(b)各階設置の FTA ・・・ P.60

(c)半地下設置の FTA ・・・ P.60

(d)狭小設置の FTA ・・・ P.61

6.4.3 使用(室外)ステージの安全対策 ・・・ P.61

(a)半地下設置の安全対策 ・・・ P.61

(b)狭小設置の安全対策 ・・・ P.64

6.4.4 使用(室外)ステージのまとめ ・・・ P.64

6.5 修理ステージ ・・・ P.65

6.5.1 修理ステージの着火源 ・・・ P.65

6.5.2 修理ステージの冷媒漏えいパターン ・・・ P.66

6.5.3 室外機の FTA ・・・ P.66

6.5.4 室内機の FTA ・・・ P.67

6.5.5 配管(天井裏)の FTA ・・・ P.68

6.5.6 安全対策 ・・・ P.68

6.5.7 まとめ ・・・ P.68

6.6 廃棄ステージ ・・・ P.70

6.6.1 撤去 FTA ・・・ P.70

(a) 撤去作業時の着火源 ・・・ P.70

(b) 撤去作業時の冷媒漏えいモード ・・・ P.71

(c) 撤去作業時の FTA ・・・ P.72

6.6.2 運搬 FTA ・・・ P.73

(a) 運搬時の着火源 ・・・ P.73

(b) 運搬時の冷媒漏えいモード ・・・ P.73

(c) 運搬時の FTA ・・・ P.73

6.6.3 保管 FTA ・・・ P.73

(a) 保管時の着火源 ・・・ P.74

(b) 保管時の冷媒漏えいモード ・・・ P.74

(c) 保管時の FTA ・・・ P.74

6.6.4 解体 FTA ・・・ P.74

(a) 分解作業時の着火源 ・・・ P.74

(b) 分解作業時の冷媒漏えいモード ・・・ P.75

(c) 分解作業時の FTA ・・・ P.75

6.6.5 安全対策 ・・・ P.75

(a) 撤去における安全対策 ・・・ P.75

(b) 解体における安全対策 ・・・ P.76

6.6.6 まとめ ・・・ P.76

7. RAの結果及び必要とされる安全対策 ・・・ P.78

7.1 第一次モデル(代表的なモデル) ・・・ P.78

7.2 第二次モデル(比較的リスクが高くなると想定されるモデル) ・・・ P.79

7.2.1 RA 結果 ・・・ P.79

7.2.2 必要とされる安全対策 ・・・ P.80

7.3 第三次モデル(30kW までのリスクが高くなると想定されるモデル) ・・・ P.81

7.3.1 RA 結果 ・・・ P.81

7.3.2 必要とされる安全対策 ・・・ P.83

8. 冷媒誤充塡に対するリスク評価 ・・・ P.84

9. まとめ ・・・ P.85

参考文献 ・・・ P.86

白 紙

1. はじめに

2013 年 3 月より,日冷工環境企画委員会内の「微燃性冷媒安全検討 WG」傘下に,店舗用パッケージエア

コン(以下,店舗用 PAC)を取り扱う製品別 SWG として,ミニスプリットリスクアセスメント SWG(Ⅱ)

が発足し,(2017 年 4 月まで計 42 回)の SWG 活動を行った.本 SWG では,微燃性冷媒を使用する店舗用

PAC のリスクアセスメント(以下,RA)を,先行するミニスプリット(RAC)SWG,並びにビル用マルチ

SWG の手法を参考にしながら実施した.本報告書は,RA の手法,条件設定,結果,及び対策等について,

具体的な導出過程を明確にしながら,まとめている.

なお,本 SWG には,店舗用 PAC 製造メーカー7 社から委員を一名ずつ選出し,表 1-1 の通り,RA を分担

した.また,オブザーバーとして,下記メンバー以外にも多数の方々に参加協力いただいている.(別表参照)

表 1-1 ミニスプリットリスクアセスメント SWG(Ⅱ)委員 (敬称略)

担当 会社名 SWG 委員

主査(全般) パナソニック株式会社 渡部 岳志

輸送・保管ステージ ダイキン工業株式会社 山田 剛

据付ステージ 三菱重工サーマルシステムズ株式会社 村上 健一

室内(使用)ステージ 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社 土橋 一浩

室外(使用)ステージ 東芝キヤリア株式会社 鈴木 啓浩

修理ステージ 株式会社 富士通ゼネラル 藤 利行

廃棄ステージ 三菱電機株式会社 鈴木 康巨

1.1 店舗用パッケージエアコンのリスク評価概要

微燃性冷媒を使用した店舗用 PAC の RA を第一次,第二次,第三次と 3 段階に分けて実施した.対象冷媒

は R32,R1234yf,R1234ze(E)で行った.第一次では,一般的に広く使用されているモデルとして,『一般

事務所設置(天井カセットタイプ室内機)』『室外機地上設置(現地追加冷媒充塡無し)』『準耐火中型倉庫保

管』を選定し,第二次では,冷房定格能力 14.0kW(6HP)以下の床置き設置室内機を除く様々な設置条件

を対象に,比較的リスクが高くなると考えられるモデルを抽出した.第三次では,床置き設置室内機も含め,

かつ,冷房能力 30kW(12HP)までの全ての店舗用PACシステムを対象として,評価を実施した.

また,リスクを低減するために求められる安全対策について,日本冷凍空調学会「微燃性冷媒リスク評価

研究会ファイナルレポート 第 7 章 スプリットエアコン(店舗用パッケージエアコン)のリスク評価」及

び,日本冷凍空調工業会 「微燃性(A2L)冷媒を使用した業務用エアコンの冷媒漏えい時の安全機能要求

事項(JRA4070)」,「微燃性(A2L)冷媒を使用した業務用エアコンの冷媒漏えい時の安全確保のための施設

ガイドライン(JRA GL-16)」等にまとめ,機器製造業者並びに施工業者に効果的に周知されるように情報発

信を実施した.図 1-1 に,当 SWG の RA 活動日程を示す.

◆:アウトプット

2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度

4 9 10 3 4 9 10 3 4 9 10 3 4 9 10 3

図 1-1 店舗用パッケージエアコンのリスクアセスメント日程

課題

抽出

第一次

第二次

第三次

冷媒評価まとめ,安全対策立案 ◆最終報告書

◆学会プログレスレポート ◆学会ファイナルレポート ◆学会プログレスレポート

◆GL-16

◆JRA4070

1

2. 店舗用パッケージエアコンの想定されるリスクモデル

2.1 店舗用パッケージエアコンの特徴

微燃性冷媒使用時のリスクの観点から,店舗用PACの特徴をミニスプリットエアコン(家庭用エアコン,

以下RAC)とビル用マルチエアコン(以下ビル用マルチ)と対比して,表 2-1 にまとめた.

まず,空調能力は,3.6-30kW と中程度の大きさであり,それに比例して,冷媒量も 2-19kg とRACとビ

ル用マルチの中間に位置している.冷媒量に関しては,日本市場の約 20%が 30m以上の室内外配管長で施工

されるケースがあり,現地にて冷媒が追加充塡される場合も想定する必要がある.一方,室内機が複数台接

続される場合があるが,個別空調運転が出来ないため,必ず同一空間に設置されるので,個別空調されるビ

ル用マルチと比較すると,漏えい時のリスクは小さくなる.ここで,改めて店舗用 PAC の対象を定義するが,

本 SWG では,接続される室内機が同時発停するシステムのみを対象とした.店舗用であっても,個別運転

されるシステムは,微燃性冷媒を使用する RA の観点では,冷媒漏えい時の室内でのリスクは,ビル用マル

チと同様に考える必要がある.

次に,室内機の形態については,業務用の用途に使用されることから,RACとは異なり,ビル用マルチ

室内機とほぼ同様の仕様となっている.室内機の設置場所も,自然換気開口のある事務所や飲食店,あるい

は,機械換気を有する密閉度の高いカラオケルーム等,ビル用マルチに近い環境となっている.

室外機の形態については,一部氷蓄熱式も含まれるが,全て空冷式であり,屋外設置が基本となっている.

よって,屋内機械室設置となる水冷式システムよりは設置上のリスクは軽減する.しかしながら,店舗用P

AC室外機の場合,横吹きスリムタイプの為,雑居ビル等の路地隙間の狭小空間に設置されることがあり,

換気の悪い狭小設置環境での評価が必要と考えられる.

保管・輸送についても,小容量の店舗用PAC室外機は,RAC室外機と同様に取り扱われることがあり,

狭小空間倉庫やワゴン車輸送での評価を追加した.

2

表 2-1 エアコンの製品形態による特徴の比較

製品形態 ルームエアコン 店舗用PAC ビル用マルチ

製品馬力(室外基準) 0.8~3HP 1.5~12HP 5~60HP

冷房定格能力 2.2~8.0kW 3.6~30kW 14.0~168kW

冷媒量 1~2kg 2~19kg 5~50kg

主な設置システム

(外:内)

基本 1 台:1 台

個別マルチ有り

1 台:1~4 台

全室内機は同一空間

1~3 台:1~64 台

各室内機は個別空間

主な室内機タイプ

壁掛け形

床置き形

天井カセット形

天井カセット形

天井吊形

壁掛け形

ビルトインダクト形

床置き形(スリム形)

天井カセット形

天井吊形

壁掛け形

ビルトインダクト形

床置き形(ペリメータ形)

主な室外機タイプ 空冷式 横吹き 空冷式 横吹き

氷蓄熱式(空冷)横吹き

空冷式 上吹き

氷蓄熱式(空冷)上吹き

水冷式(機械室設置)

主な室内機設置場所 住宅(居住空間)

事務所

厨房/食堂

工場

カラオケ(密閉度:高)

事務所

厨房/食堂

工場

カラオケ(密閉度:高)

主な室外機設置場所 地上(屋上)

ベランダ

地上(屋上)

各階設置

半地下

狭小地(路地隙間)

地上(屋上)

各階設置

半地下

機械室

主な保管場所 準耐火中型倉庫

狭小(販売店)倉庫

準耐火中型倉庫

狭小(販売店)倉庫

準耐火中型倉庫

主な輸送形態 トラック

ワゴン車

トラック

ワゴン車(3HP 以下)

トラック

2.2 リスクが高くなると想定される設置モデル

微燃性冷媒のリスクが高くなる要因は,「冷媒量:多」「漏えい冷媒:滞留」「換気:少」「着火源:多」等

が考えられる. 表 2-2 にリスクが高くなると想定される設置モデルをまとめた.

表 2-2 店舗用PACの想定される主なリスクモデル

条件 理由 一般的使用モデル リスクが高くなるモデル

配管長 冷媒量:大 30m以内(チャージレス) 長配管(現地追加有)

室内機設置高さ 漏えい時の滞留 天井設置モデル:1.8m以上 床置き設置モデル:0m

室内機設置場所 着火源:多

事務所 厨房

自然換気:有無 カラオケルーム

室外機設置場所 漏えい時の滞留 地上(屋上)

各階設置

半地下設置

狭小設置

保管場所 漏えい時の滞留 準耐火中型倉庫 狭小(販売店)倉庫

輸送形態 着火源:多 トラック ワゴン車

3

3. 微燃性冷媒リスクアセスメントの手法

3.1 微燃性冷媒リスクアセスメント手法 (ISO/IEC Guide51 及び R-map)

微燃性冷媒を使用した場合のリスクは,現行冷媒(R410A)よりも微かに燃焼性を有することによる漏え

い冷媒への着火事故の発生である.その着火メカニズムは,図 3-1 として表され,各要因の確率を掛け合わ

せた数値が着火事故発生確率となり,許容されるレベル以下となるかがリスクアセスメントのポイントとな

る.許容されるレベルを上回る場合は,安全対策を行いリスクの低減が求められる.

図 3-1 微燃性冷媒の着火メカニズム

RA はミニスプリット,ビル用マルチ各 RA-SWG の手法と同様に,図 3-2 の ISO/IECguide51 の反復改善

プロセスに基づくリスクアセスメント項目に燃焼性の検討項目を a から t として具体化して実施した.

図 3-2 ISO/IEC guide51 の反復改善プロセスに基づく燃焼性リスクアセスメント項目

着火源

存在確率

気流(滞留,換気)

[可燃空間存在確率] 着火条件の成立

冷媒漏えい

発生確率

4

a.「評価対象範囲の選定」

店舗用 PAC の評価対象範囲を,3 段階(第一次~三次)に分けて選定した.

b. 「リスクアセスメント手法の選択」

FTA,ETA,FMEA などの評価手法から,今回の燃焼性のリスクアセスメントは,「着火源の存在」と「可

燃域の生成」が同時に存在した場合に発生する事象であり事象間の独立性が高い点,また発生確率の計

算が容易である点から FTA を採用した.

c.「ライフサイクルのステージ選択」

製品を製造から輸送,据付,使用,修理,廃棄までどのようなステージに分けて評価するかを選択.製

造のステージについては各社で個別評価をするため,本 RA からは除外した.

d.「店舗用 PAC 設置環境の設定」

選択された製品がどのような環境,具体的には設置空間やそこでの換気の有無,滞留条件のレベル,着

火源の存在確率などを調査し,リスクアセスメントすべき環境を決定.

e.「ハザード(危害の程度)の設定」

燃焼性による危害度はここでは予測が困難であった為,致命的にしてⅣと設定した.

f.「許容値(事故発生確率)の設定」

店舗用 PAC 製品として,社会的に容認できる危害の発生頻度を設定.(3.2 章 参照).

g.「冷媒漏えい率と漏えい速度,漏えい量,初期漏えい濃度の調査設定」

エアコンサービス会社等の調査または漏えいした配管等のサンプル抽出などの解析から漏えい速度,漏

えい量に関する値を設定し,また漏えい箇所とその初期漏えい濃度を設定(3.3 章 参照).

h.「可燃時間空間体積(可燃時空積)の計算」

d 項で設定された環境において,g 項で設定された漏えいの速度,量,濃度に基づき CFD シミュレーシ

ョン等を行い可燃時間空間体積を算出.(4 章 参照).

i.「着火源の予測と着火性の区別」

文献や大学,産総研での実験検討から冷媒に対する着火源として電気接点やライターフリント,静電気

などのスパークとなるか,ろうそくやマッチ類,燃焼機器等の裸火となるかを明確化しそれによる着火

性の程度を区別.(5 章 参照).

以上の項目を整理した後,具体的に FTA を作成しリスクの評価を実施した.

j.「FTA 作成と精査」

燃焼性の FTA 作成では,着火源の存在と可燃域生成空間の存在は独立したツリーで構成し,最終段階で

その確率を掛け合わせて事故発生確率を算出し内容を精査(6 章 参照).

k.「R-Map での評価」

算出した事故発生確率と危害の程度から R-Map 上で許容可能かどうかを評価.(図 3-3 参照)

l.「リスク許容可能の判断」

上記評価に基づきリスク許容可否が確認できれば,リスク評価を終了.

許容できない場合は,以下のリスク低減策の立案と再検討を行う.

m.「リスクの低減」

リスク低減の手段として機器の改良,安全手段の導入,マニュアルの整備,必要ならば法規制を考案し,

事故発生確率の値を大きくしている項目のリスク低減を図る.

n.o.p.「FTA 要素の見直し」

リスク低減策に基づく g,h,i の要素の見直し.

q.「FTA 再作成と再精査」

m のリスク低減で考案実施する項目を適切なツリーの位置に付け加え,FTA を再作成,事故発生確率を

再算出し内容を精査.

r.「R-Map での評価」

前述 k に同じ.

5

図 3-3 消費生活用品に用いる R-Map

s.「リスク許容可否の判断」

前述 l に同じ.

この m から s のループを FTA の計算値が許容可能となるまで,もしくは危害の程度が許容できるまで何度も

繰り返す.許容できれば製品化を行う(7 章 参照).

t.「製品化(要件確認)と安全対策の文書化」

製品化に対しては FTA で設定した項目や m のリスク低減で考案した項目が正確に反映されることが必須,

また設定した項目が市場で反映されるように文書(ガイドライン)化する.

3.2 許容できるリスク(着火事故発生確率)の設定

店舗用PACの市場ストック 780 万台(60 万台 x 製品寿命 13 年)に対して,100 年に一度重大事故が発生

するレベルを許容範囲とした.また,各ライフステージにおいて,使用時以外は,常に機器を取り扱う作業

者が携わっているので,作業者はリスクを制御する立場であることから,事故が起きた際にも自己防御によ

る危害度低減が可能だと考え,許容値を 10 倍している.

・使用時 :1.3 x 10-9

・使用時以外(輸送・保管,据付,修理,廃棄時):1.3 x 10-8

3.3 着火事故が発生する要因

着火事故発生メカニズムは,図 3-1 のように考えられる.通常,店舗用PACから冷媒が漏えいすること

は無いが,何らかの理由により漏えいした場合,その冷媒が設置環境において可燃濃度に達し燃焼し得る状

態となる存在確率と,その空間に着火源が存在する確率を掛け合わせたものが着火事故発生確率として算出

できる.

まず,製品からの冷媒漏えい確率は,機器の設計仕様が近いビル用マルチSWGの調査結果 3-1)及び店舗用

PACでの日冷工各社アンケートにより,以下とした.

・室内機 : 緩慢漏れ 1.03 x 10-3, 急速漏れ 1.50 x 10-5

・室外機 : 緩慢漏れ 6.13 x 10-2, 急速漏れ 1.34 x 10-3, 噴出漏れ 1.37 x 10-4

また,据付,修理,廃棄等の作業ステージでは,作業者の冷媒回収ミスやバルブ誤動作などのヒューマン

エラーにより冷媒漏えいが発生する.ヒューマンエラーの確率は,店舗用PACの作業現場では、業務用か

ら家庭用まで広範囲の製品を取り扱う作業者が存在する為、専門性の高いビル用マルチを取り扱う作業者の

エラー確率:10-4(ビル用マルチSWGにて設定)よりも 10 倍高い数値:10-3 を設定した.

次に,漏れた冷媒が設置空間内で可燃濃度となる空間容積とその持続時間を 3 次元濃度解析シミュレーシ

ョンにより求めた.主な設置モデルの冷媒リークシミュレーションを次章にまとめる.

また,その可燃空間に存在する着火源については,公益社団法人日本冷凍空調学会の微燃性冷媒リスク評

価研究会で得られた結果を元に,店舗用PACの設置環境での存在確率を各々算出した.それらについては,

5 章にまとめる.

6

4 冷媒リークシミュレーション

各モデルにおいて,機器漏えい冷媒量,冷媒漏えい速度,設置空間容積,気流条件等により,漏えいした

冷媒の3次元濃度解析を行い,燃焼下限濃度(LFL)~燃焼上限濃度(UFL)となる可燃空間体積および持続

時間を算出した.この可燃空間体積と持続時間を掛け合わせたものを,可燃空間時空積と定義し,1 回の冷

媒漏えいにおける可燃空間発生度合いとして使用している.

漏えい冷媒の 3次元濃度解析結果より,各条件における可燃空間時空積を(室内)4.1章,(室外)4.2章に

まとめる.

4.1 室内モデル

4.1.1 室内モデルの算出結果

(a)天井設置モデル

代表的な室内設置モデルである事務所天井設置は,設置条件がビル用マルチと同様のため,ビル用マルチ

SWGにて東大と共同で解析したシミュレーション結果を使用した.これは,室内機の形態,設置条件が店舗

用 PACと共通であることから,冷媒量の条件のみを変更して考えることができるからである.また,ミニス

プリット SWGの検討において,IEC60335-2-40における許容冷媒量算出式や片岡の論文を参考にして,「可

燃空間時空積は,床面積や漏れ高さが変わった場合,漏れ高さ×床面積の 1/2乗で漏れ量を割った値の 3乗に

比例する」との仮定を用いられており,本 SWGでも同様に活用した.以下に簡易式(4.1.1)を示す.

V1=V0((m1h0A01/2)/(m0h1A1

1/2))3 (4.1.1)

ここで,V1:換算した設定可燃空間時空積 (m3min)

V0:3次元解析で求めたベース可燃空間時空積 (m3min)

m0:ベース冷媒漏れ量 (kg)

h0:ベース漏れ高さ (m)

A0:ベース床面積 (m2)

m1:設定冷媒漏れ量 (kg)

h1:設定漏れ高さ (m)

A1:設定床面積 (m2)

表 4-1-1は,ビルマル SWGの必要とされる室内条件に対して,東京大学がシミュレーションした結果を抜

粋したものである.当 SWGでは,事務所のドア下に自然換気口の有無を想定比較した No.1,3条件と,カラオ

ケルームのような機械換気のある空間を想定した No.5条件を流用し,漏えい冷媒量に応じた可燃空間持続時

間及び空間をシミュレーショングラフより読み取った.図 4-1-1,表 4-1-2,4-1-3,4-1-4に結果をまとめる.

表 4-1-1 ビルマル SWGにおける小部屋のシミュレーション条件設定と結果

小部屋:(床面積)42.3m,(漏れ高さ)2.7m,(想定設置場所)事務所中央天井

No 冷媒 冷媒量

[kg]

漏えい

速度

[kg/h]

強制換気

[m3/h]

ドア下

隙間 条件

可燃空間時空積

[m3min]

1

R32 26.3 10

0 無 密閉空間 1.70 x 100

3 0 有 ドア下(1500x10mm)

での自然換気 8.30 x 10-1

5 169 有 機械換気有(1.5回/h) 7.00 x 10-1

7

図 4-1-1 No.1,3,5条件 SIM 結果グラフから冷媒量に応じた時空積の読み込み【R32】

表 4-1-2 No.1(自然換気無し事務所)の冷媒漏えい量による時空積の読込み結果【R32】

冷媒

漏えい量

[kg]

漏えい

時間

[min]

グラフから

読み取った

時空積[m3min]

算出式

(参考:簡易読取り)

2 12 4.00 x 10-2 0.004 x (12-2)

3 18 6.40 x 10-2 0.004 x (18-2)

4 24 8.80 x 10-2 0.004 x (24-2)

6 36 1.42 x 10-1 0.004 x (30-2)+0.005 x (36-30)

8 48 2.02 x 10-1 0.004 x (30-2)+0.005 x (48-30)

19 114 7.30 x 10-1 0.004 x (30-2)+0.005 x (48-30)+0.008 x 114-48)

表 4-1-3 No.3(自然換気有り事務所)の冷媒漏えい量による時空積の読込み結果【R32】

冷媒

漏えい量

[kg]

漏えい

時間

[min]

グラフから

読み取った

時空積[m3min]

算出式

(参考:簡易読取り)

2 12 4.00 x 10-2 0.004 x (12-2)

3 18 6.40 x 10-2 0.004 x (18-2)

4 24 8.80 x 10-2 0.004 x (24-2)

6 36 1.384 x 10-1 0.004 x (24-2)+(0.004+0.0044) x (36-24)/2

8 48 1.936 x 10-1 0.004 x (24-2)+(0.004+0.0044) x (36-24)/2+(0.0044+0.0048) x (48-36)/2

19 114 5.632 x 10-1 0.004x(24-2)+(0.004+0.0044)x(36-24)/2+(0.0044+0.0048)x(48-36)/2+0.0056x(114-48)

表 4-1-4 No.5(機械換気)の冷媒漏えい量による時空積の読込み結果【R32】

冷媒

漏えい量

[kg]

漏えい

時間

[min]

グラフから

読み取った

時空積[m3min]

算出式

(参考:簡易読取り)

2 12 4.00 x 10-2 0.004 x (12-2)

3 18 6.40 x 10-2 0.004 x (18-2)

4 24 8.80 x 10-2 0.004 x (24-2)

6 36 1.360 x 0-1 0.004 x (36-2)

8 48 1.890 x 10-1 0.004 x (36-2)+(0.004+0.0045) x (40-36)/2+0.0045 x (48-40)/2

19 114 5.058 x 10-1 0.004x(36-2)+(0.004+0.0045) x(40-36)/2+0.0045x(48-40)/2+0.0048x(114-48)

上表で得られた各条件の可燃時間時空積を基に,式(4.1.1)の簡易式を用いて,各モデルの可燃空間時空

積を比例計算して,表 4-1-5にまとめた.

8

表 4-1-5 店舗用 PACの室内モデルの可燃空間時空積の算出【R32】

モデル

面積

[m2]

[m]

漏えい

速度

[kg/h]

冷媒

[kg]

SIM 条件 可燃空間

持続時間

[min]

可燃空間

時空積

[m3min]

タイ

プ

床面積

[m2]

高さ

[m]

時空積

[m3min]

事務所

3HP 天井設

置/ 自

然換気

42.3 2.7 10 3

No.3 42.3 2.7 6.40x10-2 18 6.40x10-2

6 1.38x10-1 36 1.38x10-1

厨房

6HP 57.2 2.5 10

4 No.3 42.3 2.7

8.80x10-2 24 6.97x10-2

8 1.94x10-1 48 1.53x10-1

カラオケ

2HP

換気

無し 14 2.5 10

2 No.1 42.3 2.7

4.00x10-2 12 2.62x10-1

3 6.40x10-2 18 4.19x10-1

次に,R32同様に R1234yfの可燃空間時空積を求めた.HFO冷媒は,滝澤の論文にあるように湿度により

燃焼性が異なることが明らかになっており,高湿度の条件(27℃露点)での規定が議論されている.今回,

HFO冷媒の RA については,27℃露点条件での可燃空間時空積を用いて評価を行った.図 4-1-2にビルマル

SWGが実施した前述した R32の No.1,3,5条件に対する R1234yfのシミュレーション結果を示す.

図 4-1-2 【R32】No.1,3,5条件に対応する R1234yfのシミュレーション結果(27℃露点)

前述と同様に,店舗用 PACの冷媒量に応じた可燃空間時空積をグラフから読取り簡易式より比例計算を

した結果を,表 4-1-6と図 4-1-3にまとめる.

9

表 4-1-6 店舗用 PACの室内モデルの可燃空間時空積の算出【R1234yf(27℃露点)】

モデル

面積

[m2]

[m]

漏えい

速度

[kg/h]

冷媒

[kg]

SIM 条件 可燃空間

持続時間

[min]

可燃空間

時空積

[m3min]

タイ

プ

床面積

[m2]

高さ

[m]

時空積

[m3min]

事務所

3HP

天井

設置/

自然

換気

42.3 2.7 10 3

No.4 42.3 2.7 6.60x10-2 18 6.60x10-2

6 1.63x10-1 36 1.63x10-1

厨房

6HP 57.2 2.5 10

4 No.4 42.3 2.7

9.70x10-2 24 7.69x10-2

8 2.33x10-1 48 1.85x10-1

事務所

12HP 169.2 2.7 10 19 No.4 42.3 2.7 6.61x10-1 114 8.17x10-2

厨房

12HP 80 2.5 10 19 No.4 42.3 2.7 6.61x10-1 114 3.17x10-1

図 4-1-3 No.4(自然換気有り事務所)の冷媒漏えい量による時空積の読込み結果【R1234yf】

10

(b)床置き設置モデル

<2HPクラス>

漏えい冷媒が室内の底部に高濃度で滞留し易い床置き設置モデルについて,評価条件と安全対策を検討し

た.各社のカタログ推奨設置面積,建材(ドア)の寸法仕様などから評価条件を設定した.

表 4-1-7 室内機床置形の冷媒リークシミュレーション条件(2HPクラス)

項目 評価条件 条件設定の背景 備考

冷媒 R32 - -

居室の広さ 14㎡ 各社カタログの空調設置面積の目安 表 4-1-8

自然換気条件 ドア下隙間 800㎜×3㎜ 大手建材メーカーのドア仕様(カタ

ログ値)および市場実態調査結果

図 4-1-4

漏えい個所 室内機内部のフレア部か

ら濃度 100%

漏えい解析による,フレア部漏えい

と熱交下部漏えいの比較結果,およ

び,漏えい実験結果より

図 4-1-5

表 4-1-8 空調設置面積の目安(2HPクラス)

用途 算出基準負荷 2HP(4.5kW:冷房定格能力)

空調面積

一般事務所 105~230 W/m2 22~48m2

一般商店 155~230 W/m2 22~32m2

食堂 130~370 W/m2 14~38m2

理美容 230~310 W/m2 17~22m2

注:各社カタログ記載値の最小~最大値を抜粋して記載

11

図 4-1-4 ドア下隙間調査結果

図 4-1-5 床置形室内機の冷媒漏えい箇所およびシミュレーションモデル

12

冷媒リークシミュレーションを行った結果,機器を運転しない場合は,自然換気口があったとしても床面

近くに高濃度で滞留して可燃空間が長時間発生した.(図 4-1-6)

濃度解析シミュレーションの妥当性を検証するため,実証試験を実施した.シミュレーションと実証試験

の結果を比較するとほぼ一致することが分かった.(図 4-1-7)

図 4-1-6 冷媒リークシミュレーション結果

図 4-1-7 冷媒リークシミュレーションおよび実証試験測定

13

参考に,評価条件を検討する中で,シミュレーション条件を振って検討した結果を紹介しておく.

・自然換気条件(ドア下隙間 10㎜と 3㎜)

漏えい冷媒量 3㎏,床面積 11㎡の条件では,可燃空間時空積は殆んど変わらない結果となった.

図 4-1-8 冷媒リークシミュレーション 自然換気条件変化

・冷媒漏えい箇所(フレア部と熱交換器)

漏えい冷媒量 3㎏,床面積 11㎡の条件では,フレア部からの冷媒漏えいに対して,熱交換器下部から冷媒

を漏えいさせた場合,室内機内部で拡散してから室内機外部へ漏えいするため,可燃空間時空積は非常に

小さく約 3/100程度の大きさになった.

図 4-1-9 床置形室内機の冷媒漏えい箇所

フレア部漏えい 熱交下部部漏洩

14

<5HP,12HP>

5HPクラスシステムと 12HPクラスシステムを想定した冷媒リークシミュレーションも実施した.

表 4-1-9 室内機床置形の冷媒リークシミュレーション条件(5H,12HPクラス)

項目 計算条件 備考.

5HPクラス 12HPクラス

冷媒 R32

居室の広さ 43㎡ 100㎡ 5HPクラス

図 4-1-11~13

12HPクラス

図 4-1-14~16

自然換気条件 ドア下隙間 800㎜×10㎜ ドア下隙間 1200㎜×10㎜

漏えい個所 室内機内部のフレア部から濃

度 100%

室内機内部のフレア部から濃

度 100%

5HPクラスのシステムを想定し,冷媒量 5.45㎏,8㎏の冷媒リークシミュレーションを行った.

冷媒量 5.45㎏の場合には,可燃空間時空積が非常に小さい値となったが,冷媒量 8㎏の場合は 2ケタ数値が

変わるレベルまで増加する結果となった.

図 4-1-10 5HP クラスシミュレーションモデル 図 4-1-11 可燃域の容積と高さの時間変化

図 4-1-12 可燃域の時間変化

15

12HPクラスのシステムを想定し,冷媒量 19㎏の冷媒リークシミュレーションを行った.

床面積が約 100㎡と広いため,可燃空間時空積の値は非常に小さくなり,床面に生成した可燃域の高さは約

10cm程度となった.

床面積と漏えい冷媒量が可燃空間時空積の値に大きく影響することが分かった.

図 4-1-13 12HP クラスシミュレーションモデル 図 4-1-14 可燃域の床面からの高さ

図 4-1-15 12HP クラス冷媒リークシミュレーション結果

16

4.1.2 床置きスリム形での送風運転による漏えい冷媒撹拌効果の確認

床置き室内機の場合,漏えい冷媒が床面近くに高濃度で滞留し易いために,天井設置室内機と比較して,

非常に大きな可燃空間時空積となることがわかったが,室内機の送風ファンを運転させることにより,滞留

している冷媒が部屋全体に攪拌され可燃空間を低減できるかを確認した.

前項の床置き2HPクラスの実証試験において,冷媒漏えい時に実際に送風ファンを運転して評価した.

漏えい開始約1分後にファンを 10m3/minにて送風運転すると,部屋全体に漏えい冷媒が攪拌され,均一濃

度となり可燃空間が解消することがわかった.ファンの起動タイミングは,室内機から 1m離れた床面高さ

100mmの濃度が 5vol%になる時点とした.店舗用PACで使用される床置き室内機は,スリムタイプで吹出

し口が床面から比較的高く,送風運転による漏えい冷媒の攪拌効果が高い.床置き設置モデルの安全対策と

して,冷媒漏えいセンサーの設置と室内機の強制送風運転が有効と考えられる.

図 4-1-16 送風ファン停止時と運転時の漏えい冷媒の濃度比較

ただし,部品の故障や停電などが理由で,送風運転できない場合も考えられるため,対策として拡散運転

できないケースの発生確率も検討した.機器の部品故障および停電の影響を検討した結果を表 4-1-9に示す.

表 4-1-10 PAC床置形室内機で送風ファンを運転できない確率の考え方

17

次に、床置き設置モデルの安全対策として,冷媒漏えいセンサーにて漏えいを検知した場合に室内機を強

制送風運転させた場合の冷媒撹拌効果を定量的に確認すべく,いくつかの条件でシミュレーションを実施し

た.冷媒漏えいセンサーを室内機内部の底面中央に設置したと想定,冷媒を漏えいさせてセンサー設置部の

冷媒濃度が1%となったタイミングで強制送風運転させるという条件とした.図 4-1-17に計算モデルとシミ

ュレーション結果を示す.

送風運転を開始すると,漏えいした冷媒が床置き室内機の吹出し口から室内空間に吐出され,冷媒の濃度

が均一化されて可燃空間がほとんど発生しないという結果が得られた.

図 4-1-17 床置きスリム形の送風運転による漏えい冷媒撹拌シミュレーション結果【R32】

18

この冷媒撹拌効果には送風時の風量が大きく影響するため,送風時の風量を変化させたシミュレーション

もあわせて実施した.その計算結果を表 4-1-11に示す.

送風時の風量については,現在製品化されている床置きスリム形の最小風量から 10m3/min を選定,また,

攪拌効果の冷媒種による違いについてもあわせて評価している.

冷媒量は 8.9kgとし,R1234yfは湿度影響を受けるため高湿条件で評価を行なった.

漏えい冷媒の密度の違いにより持ち上がり易さに差が生じることから,R32に比べて密度の大きな R1234yf

にて攪拌効果を得られるように検討を進めた.その結果,現在販売されている床置きスリム形の製品寸法や

風量仕様値から妥当と考えられる送風風量 10m3/min 以上,送風風速 1.0m/s以上であれば可燃空間時空積がほ

ぼ 0となり,着火事故発生確率が許容レベルを下回り攪拌運転が有効に機能することが確認できた.

表 4-1-11 床置スリム形 送風撹拌時の風量・冷媒種による可燃空間時空積 算出結果

冷媒種 密度

LFL

[高湿] 床面積 高さ

自然

換気口

(幅×高さ)

冷媒量 漏えい

速度

送風

風量 可燃空間時空積

kg/m3 % m2 m mm kg kg/h m3/min m3・min

R32 2.14 14.5 14 2.5 800x3 8.9 10 10 0.25

5 10.49

R1234yf

[27℃露点] 4.73 6.2 14 2.5 800x3 8.9 10

10 0.89

7.5 161.7

5 341.9

また,部屋の形状が上記の冷媒攪拌効果に影響を及ぼすかどうかを確認するため,部屋の形状変化させた

シミュレーションについても実施した.

強制送風運転により室内ユニットから吹出された空気が,ユニット対面の室内壁面に衝突することによる

攪拌効果への影響を評価するため,部屋の形状を①略正方形②横長③縦長の 3形状設定して計算を実施した.

図 4-1-18(1)~(4)に計算モデルとシミュレーション結果を示す.

このシミュレーションでは,冷媒を全量漏えいさせた後に強制送風運転を行なうという条件で計算を行な

った.三つの部屋形状全てにおいて,強制送風運転開始後 30秒以内に可燃空間が消滅,可燃空間時空積の値

もほぼ同値となり,部屋形状による優位差は見られなかった.

19

図 4-1-18(1) 床置きスリム形漏えい冷媒撹拌シミュレーション 部屋形状による影響評価【R32】

図 4-1-18(2) 床置きスリム形漏えい冷媒撹拌シミュレーション① 部屋形状略正方形【R32】

D W

2.5m

冷媒漏洩口

10[kg/h],20℃

流量10[m3/min]

(漏洩後作動)

ドア下隙間

0.8×0.003m室内空間モデル

冷媒漏洩口

0.59×0.22

ユニット吸込口

0.59×0.37

ユニット吹出口

0.6×0.248

吹出

口上

端高

0.6

ゆかおき計算モデル

D(室内奥行) m 3.9 2.0 7.0

W(室内幅) m 3.6 7.0 2.0

空間体積 m3 35 35 35

吹出口上端高さ m 1.5 1.5 1.5総メッシュ数(トリムメッシュ) - 約22万 約22万 約22万

Δt s 0.25s 0.25s 0.25s質量流量 kg/h 10 10 10漏洩量 kg 3 3 3

漏洩時間 min 18 18 18

温度 ℃ 27 27 27

可燃範囲 vol%

ユニット吹出風量 m3/min 10 10 10

可燃域ゼロ時間 min 19.21 19.45 19.13

可燃空間時空積 m3min 28.7 28.2 28.1解析結果

計算モデル

14.5~29.5

条件1略正方形

条件2横長

条件3縦長

解析条件

・冷媒漏洩量3kg

冷媒漏洩終了後送風運転開始

(b)Y断面-18分後(冷媒漏洩終了)

(c)Y断面-18.25分後 (d)Y断面-19分後

ユニット中心断面の時間経過に対するR32の可燃領域変化

(a)Y断面-6分後

ゆかおき

吹出口

吸込口

漏洩口

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0 500 1000 1500

可燃

体積

[m3]LFL-UFL

時間[s]

時間経過に対する可燃領域の変化

漏洩時間18min

可燃体積

ゼロ時間19.21min

LFL:14.5Vol%

UFL:29.5Vol%

0

0.5

1

1.5

2

2.5

0 100 200 300 400

可燃

体積

[m3]LFL-UFL

時間[s]

時間経過に対する可燃領域の変化(400sまでの拡大図)

全内容積の0.5%を

超える値4.75min

LFL UFL

(e)X断面-19分後

Y断面 X断面視点:ゆかおき側

20

図 4-1-18(3) 床置きスリム形漏えい冷媒撹拌シミュレーション② 部屋形状横長【R32】

図 4-1-18(4) 床置きスリム形漏えい冷媒撹拌シミュレーション③ 部屋形状縦長【R32】

・冷媒漏洩量3kg

冷媒漏洩終了後送風運転開始

ユニット中心断面の時間経過に対するR32の可燃領域変化

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0 500 1000 1500

可燃

体積

[m3]LFL-UFL

時間[s]

時間経過に対する可燃領域の変化

漏洩時間18min

可燃体積

ゼロ時間19.13min

LFL:14.5Vol%

UFL:29.5Vol%

0

0.5

1

1.5

2

2.5

0 100 200 300 400 500

可燃

体積

[m3]LFL-UFL

時間[s]

時間経過に対する可燃領域の変化(400sまでの拡大図)

全内容積の0.5%を超え

る値3.9min

LFL UFL

(a)Y断面-6分後 (b)Y-断面-18分後(冷媒漏洩終了)

(c)Y断面-18.25分後 (d)Y断面-19分後

漏洩口

ゆかおき

吹出口

吸込口

(e)X断面-19分後

Y断面

X断面視点:ゆかおき側

・冷媒漏洩量3kg

冷媒漏洩終了後送風運転開始

ユニット中心断面の時間経過に対するR32の可燃領域変化

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0 500 1000 1500

可燃

体積

[m3]LFL-UFL

時間[s]

時間経過に対する可燃領域の変化

漏洩時間18min

可燃体積

ゼロ時間19.45min

LFL:14.5Vol%

UFL:29.5Vol%

0

0.5

1

1.5

2

2.5

0 100 200 300 400

可燃

体積

[m3]LFL-UFL

時間[s]

時間経過に対する可燃領域の変化(400sまでの拡大図)

全内容積の0.5%を超え

る値4.05min

(a)Y断面-6分後

(b)Y断面-18分後(冷媒漏洩終了)

(c)Y断面-18.25分後

(d)Y断面-19分後

LFL UFL

漏洩口

ゆかおき

吹出口

吸込口

Y断面

X断面視点:ゆかおき側

(e)X断面-19分後

21

4.2 室外モデル

4.2.1 室外モデルの空間容積(地上設置,狭小設置,半地下設置)

室外機の漏えい冷媒の濃度解析シミュレーションを実施するにあたり,まず設置モデルの空間容積につい

て市場での据え付け状況を考慮し規定した.各階設置および半地下設置については,設置制約が存在するこ

とを考慮し,冷媒量の大小によらず空間容積を一定とした.

上記を表 4-2-1に示す.

表 4-2-1 各設置モデルの空間容積

冷房能力:14kW以下 14kW超 30kW以下

モデル 設置環境 冷媒量 床面積 高さ 空間容積 冷媒量 床面積 高さ 空間容積

kg m2 m m3 kg m2 m m3

(a)地上設置 四面開放 4

50 2.0 100 19 50 2.5 125 8

(b)各階設置 3 面閉塞・1 面開放 4

3.6 4.0 14.4 19 3.6 4.0 14.4 8

(c)半地下設置 4 面閉塞・上部開放 4

15.34 3.5 53.7 19 15.34 3.5 53.7 8

(d)狭小設置 1 面部分開放 4

7.5 2.0 15 19 7.5 2.5 18.8 8

4.2.2 室外モデルの算出結果

(a)地上設置モデル,(c)半地下設置モデル

室外機の設置モデルについて,漏えい冷媒の濃度解析シミュレーションを実施した.漏えい冷媒がほとん

ど滞留しない一般的な「(a)地上設置」と,4面閉塞により滞留しやすい「(c)半地下設置」の濃度解析を示す.

図 4-2-1~2の通り,「(c)半地下設置」の場合,漏えいした冷媒が長時間滞留し,可燃濃度空間を生成するこ

とがわかった.冷媒量 8kgのシステムでは,可燃空間時空積が「(a)地上設置」に対し,約 10000倍高くなる

結果となった.可燃空間時空積を表 4-2-2に示す.

図 4-2-1 図 4-2-2

(a)「地上設置」の可燃空間解析結果 (c)「半地下設置」の可燃空間解析結果

22

表 4-2-2 可燃空間時空積 算出結果【R32】

モデル

【R32】

設置環境 床面積 高さ 冷媒量 漏えい

速度

漏えい

箇所

可燃空間

持続時間

可燃空間時空積

(停止時)

- m2 m kg kg/h - min m3・min

室外機

地上設置 四面開放 50 2

4 75 熱交換器全体

3.3 1.40 x 10-1

8 6.5 2.80 x 10-1

室外機

各階設置

三面閉塞

1 面開放 3.6 4.0

4 75 熱交換器全体

3.3 3.30 x 10-1

8 6.6 6.64 x 10-1

室外機

半地下設置

四面閉塞

上部開放 15.34 3.5

4 75 熱交換器全体

15.9 2.08 x 101

8 595.3 5.97 x 103

(d)狭小設置モデル

店舗用PAC特有の設置条件である「(d)狭小空間設置」は,以下のモデルで解析した.雑居ビルの路地隙

間に横吹き室外機が設置され,左右に障害物があり換気し難い設置環境を想定した.室外機の前後 2面は閉

塞,右面も閉塞,左 1面のみ僅かに通路が確保されている条件とした.1 面開口寸法として,人が通れる寸

法の 0.6mと,0.3mの 2条件で解析した.この2条件では,可燃空間時空積が2倍以上の差が生じた.可燃

空間時空積を表 4-2-3に示す.

室外機障害

障害

建物

建物 図 4-2-3 室外狭小設置のシミュレーションモデル

図 4-2-4 室外狭小設置の可燃空間解析結果

0.3 or 0.6 (m)

23

表 4-2-3 室外狭小設置の可燃空間時空積 算出結果

モデル

【R32】

隙間距離 障害物

開口寸法 床面積 高さ 冷媒量

漏えい

速度

漏えい

時間

可燃空間時空積

(停止時)

m m m2 m kg kg/h min m3・min

室外機

狭小設置

1.5

1 面部分

開放

0.3

7.5 2

4

75

4.9 3.24 x 100

0.6 3.5 8.30 x 10-1

0.3 8

8.6 9.75 x 100

0.6 7.0 3.75 x 100

4.2.3 冷媒「R1234yf」及び「R1234ze(E)」の算出結果

冷媒種による差は,高湿度条件では,若干 R1234yf及び R1234ze(E)のほうが R32よりも可燃空間時空積が

大きくなった.各冷媒の係数を表 4-2-4に示す.本冷媒係数については,ビル用マルチSWG,チラーSWG

で実施した東大シミュレーションの結果および滝澤先生の論文を引用した.また可燃空間時空積の結果を表

4-2-5~7および図 4-2-5~7に示す.

表 4-2-4 各冷媒の係数

拡散物質 モル質量

比重 (air 基準)

拡散係数 可燃領域(vol%)

Kg/kmol - m2/s LFL UFL

Air 29.0 1.0 - - - R32 52.0 1.8 1.4 x 10-5 14.3 28.9

R1234yf (27℃露点)

114.0 4.0 9.0 x 10-6 5.1 14.2

R1234ze(E) (27℃露点)

114.0 4.0 7.4 x 10-6 5.3 14.2

表 4-2-5 室外地上設置の可燃空間時空積 算出結果【R1234yf,R1234ze】

6.44x10-2

5.80x10-2

6.70x10-2

5.85x10-2

5.44x10-2

4.74x10-2

2.06x10-1

1.86x10-1

4.31x10-1

3.76x10-1

8.27x10-1

7.21x10-1

24

冷媒量:4kg 冷媒量:8kg 冷媒量:19kg

図 4-2-5 地上設置の可燃空間解析結果【R1234yf,R1234ze】

表 4-2-6 室外半地下設置の可燃空間時空積 算出結果【R1234yf,R1234ze】

冷媒量:4kg 冷媒量:8kg 冷媒量:19kg

図 4-2-6 半地下設置の可燃空間解析結果【R1234yf,R1234ze】

3.38x100

2.75x100

1.22x10+1

1.18x10+1

2.17x10+1

2.09x10+1

3.32x10+2

1.95x10+2

1.83x10+4

1.76x10+4

1.31x10+5

1.28x10+5

25

表 4-2-7 室外狭小設置の可燃空間時空積 算出結果【R1234yf,R1234ze】

冷媒量:4kg 冷媒量:8kg 冷媒量:19kg

図 4-2-7 狭小設置の可燃空間解析結果【R1234yf,R1234ze】

9.72x10-1

8.81x10-1

1.39x100

1.31x100

1.91x100

1.73x100

5.54x100

4.94x100

1.30x10+1

1.23x10+1

3.44x10+1

3.09x10+1

26

4.2.4 室外モデルの算出結果(輸送・保管・廃棄ステージ検討用)

倉庫保管時やワゴン車輸送時の可燃空間時空積を算出するため,室外機を狭小地に設置したモデルを想定

して漏えいシミュレーションを実施した.計算条件は図 4-2-8に示すように,四方を壁に囲まれた狭小設置で,

無風状態を想定した.

(注:本項に紹介する計算条件は,輸送・保管時の可燃空間時空積を算出するために,実際の据付条件を無

視した内容となっている.室外機の据付・使用・修理ステージで採用する可燃空間時空積は,

4.2.2項の漏えいシミュレーション結果を元に算出している.)

図 4-2-8 室外機狭小設置モデル(輸送・保管時検討用)

図 4-2-9 可燃体積の時間変化

27

図 4-2-10 可燃域の時間変化

表 4-2-8 解析条件と解析結果まとめ

漏洩口壁高さA

(m)冷媒量

(kg)漏洩流量

(kg/h)漏洩流速

(m/s)

可燃空間平均容積

[m3]

可燃空間継続時間

[h]

可燃空間時空積

[m3h]狭小-4kg 熱交表面 1.1 4 10 8.92E-04 3.80 1.59 6.04狭小-8kg 熱交表面 1.1 8 10 8.92E-04 4.07 3.60 14.64

解析結果解析条件

解析で得られた可燃時間時空積を基に,式(4.1.1)の簡易式を用いて,倉庫保管のモデルの可燃空間時空

積を比例計算し,表 4-2-9にまとめた.

表 4-2-9 店舗用 PACの倉庫保管モデルの可燃空間時空積の算出【R32】

モデル 床面積

[m2]

高さ

[m]

漏えい

速度

[kg/h]

冷媒量

[kg]

SIM 条件 可燃空間

時空積

[m3min]

床面積

[m2]

高さ

[m]

時空積

[m3min]

倉庫保管 1000 - 10 4.0 7.2 2.4 3.62x102 2.21x10-1

倉庫保管 1000 - 10 7.0 7.2 2.4 3.62x102 1.19

狭小倉庫 15 2.7 10 4.0 7.2 2.4 3.62x102 1.21x102

28

5. 着火源の特定

5.1 微燃性冷媒の着火源

着火事故は、2つのトリガーにより発生する。1つは、可燃空間となっている場所に、瞬間的なスパーク

が発生した場合であり、もう1つは、継続的な裸火に、可燃空間が接触してくる場合である。これら2つの

トリガーにより、着火事故発生確率の各要因が異なるため、着火源も 2つに分けて表 5-1-1にまとめた。

微燃性冷媒の着火源の評価については、日本冷凍空調学会による「微燃性冷媒リスク評価研究会」5-1),5-2)

において、産学官共同で評価した.そこで得られた着火源評価結果より、室内に多く存在するコンセント、

電源スイッチ、喫煙用具のうちの電子ライターのスパーク(オイルライター、マッチは着火源)、人体から発

生する静電気では着火しないことがわかった.可燃空間中に発生する瞬間的なスパークの着火源は、強燃性

のプロパン(R290)に比べて、微燃性冷媒では大幅に減少することがわかる.

表 5-1-1 微燃性冷媒の着火源 ○:着火、×:着火せず

着火源 R32、R1234yf、

R1234ze(E) R290(参考)

スパーク

(可燃空間

中で発生)

電気部品

電化製品(火災要因) ○ ○

機器内電気部品(5kVA 以下の電磁開閉器) × ○

電源コンセント × ○

照明用スイッチ × ○

喫煙器具

マッチ ○ ○

石油ライター ○ ○

電子ライター × ○

作業ツール

金属スパーク(フォークリフト爪) ○ ○

電動工具 × ○

冷媒回収機 × ○

人体 人体からの静電気 × ○

裸火

(可燃空間

と接触)

喫煙器具 マッチ ○ ○

石油・電子ライター ○ ○

燃焼式設備

燃焼式暖房機 ○ ○

燃焼式給湯器 ○ ○

燃焼式ボイラー ○ ○

燃焼式調理器 ○ ○

作業ツール ロウ付バーナー ○ ○

29

5.2 着火源存在確率

各設置モデルにおける着火源の存在確率を市場データ 5-3),5-4)から集計した。店舗用PACの設置される場所

は、業務用として、ビル用マルチに近く、同様の手法で算出した。室内、室外の使用時の着火源の存在確率

について、以下にまとめる.作業ステージ等の着火源存在確率については、6章の各 LSの項で改めて説明す

る.

5.2.1 使用(室内)ステージの着火源存在確率

室内使用条件の着火源存在確率を表 5-2-1-1~表 5-2-1-4に示す.

・店舗用PACの設置モデルとして代表的な「事務所モデル」

・着火源が多いとされる「厨房モデル」

・密閉空間となる「カラオケルームモデル」

・床置きスリム形の設置ケースの中で着火源が多いと考えられる「飲食店客室モデル」

・店舗用PACの設置ケースの中では比較的大空間となる「工場モデル」

について、それぞれ着火源の洗い出しと着火源存在確率の算出を行なった.

裸火を伴う機器については機器の使用率を設定して算出し,その他の機器(主に電化製品)は NITE 事故

情報の機器の発火事故確率から算出した.

30

表 5-2-1-1 室内使用ステージの着火源存在確率①「事務所モデル(第一次・第二次)」「厨房モデル(第二次)」 着火源存在確率 【単位】 事務所 厨房 ※発火・発煙事故件数は、NITE 統計による。

スパーク

(時間・空

間当りの 発生回数)

【回

/m3min】

室内機 5.7x10-16 4.5x10-16

Pt(空間的遭遇確率)=台数*事故件数/市場台数/設置体積/(365×24×60) 台数 1 台、発火・発煙事故件数:3 件/年、市場存在台数:88.4百万台 事務所確率=1 台×年間着火事故件数 3 件/88.4百万/設置空間体積 114m3/(365*24*60) 厨房確率=1 台×年間着火事故件数 3 件/88.4百万/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

電化 製品

空気清浄機 7.0x10-16 - 台数 0.2台、事故件数:3.6件/年、存在台数:17.3百万台 存在確率=0.2×3.6/17.3百万/114/(365*24*60)

加湿器 5.6x10-16 - 台数 0.09台、事故件数:3 件/年、存在台数:8.11百万台 存在確率=0.09×3/8.11百万/114/(365*24*60)

携帯電話 7.6x10-16 - 台数 8.12台、事故件数:23件/17年:寿命 10年、出荷台数:23.9百万台。 存在確率=8.12台×年間着火事故件数(23/17)件/(出荷台数 23.9百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 114m3/(365*24*60)

パソコン 1.2x10-14 - 台数 8.12台、事故件数:174件/17年:寿命 10年、出荷台数:11.8百万台 存在確率=8.12台×年間着火事故件数(174/17)件/(出荷台数 11.8百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 114m3/(365*24*60)

照明器具 1.3x10-15 1.6x10-15

事務所 10台、厨房 15台、事故件数:227件/17年:寿命 10年、出荷台数:165百万台 事務所存在確率=10台×年間着火事故件数(227/17)件/(出荷台数 165百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 114m3/(365*24*60) 厨房存在確率=15台×年間着火事故件数(227/17)件/(出荷台数165百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

トラッキング 6.7x10-16 1.1x10-15

事務所 10箇所、厨房 20箇所、事故件数:202件/17年:寿命 10年、出荷台数:298百万台 事務所存在確率=10箇所×年間着火事故件数(202/17)件/(出荷台数 298百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 114m3/(365*24*60) 厨房存在確率=20箇所×年間着火事故件数(202/17)件/(出荷台数 298百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

冷蔵庫 - 1.6x10-14 台数 3 台、事故件数:267件/17年:寿命 10年、出荷台数:3.88百万台 存在確率=3 台×年間着火事故件数(267/17)件/(出荷台数 3.88百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

冷凍庫 - 3.8x10-15 台数 2 台、事故件数:16件/17年:寿命 10年、出荷台数:0.658百万台 存在確率=2 台×年間着火事故件数(16/17)件/(出荷台数 0.658百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

食器洗浄機 - 9.7x10-15 台数 2 台、事故件数:71件/17年:寿命 10年、出荷台数:1.511百万台 存在確率=2 台×年間着火事故件数(71/17)件/(出荷台数 1.511百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

電話機 - 2.5x10-16 台数 1 台、事故件数:18件/17年:寿命 10年、出荷台数:5.67百万台 存在確率=1 台×年間着火事故件数(18/17)件/(出荷台数 5.67百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

テレビ - 1.1x10-15 台数 1 台、事故件数:355件/17年:寿命 10年、出荷台数:25.2百万台 存在確率=1 台×年間着火事故件数(355/17)件/(出荷台数 25.2百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

換気扇 - 5.5x10-15 台数 4 台、事故件数:105件/17年:寿命 10年、出荷台数:5.96百万台 存在確率=4 台×年間着火事故件数(105/17)件/(出荷台数 5.96百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 143m3/(365*24*60)

喫煙器具 (マッチ/石油ライター)

8.8x10-07 - P=喫煙者が室内に居る確率×0.209×17.1/設置空間体積/(24×60)*0.05 ・喫煙者が室内に居る確率:0.1 ・喫煙率:0.209(日本人成人) ・喫煙本数:17.1 本/日/人(2013年JT調査)、マッチ・石油ライター使用率:0.05

着火器具 (マッチ/石油ライター)

- 1.2x10-06 P=5/設置空間体積/(24*60)*0.05 ・ガスバーナーへの着火に利用 5 回/日、マッチ・石油ライター使用率:0.05

裸火

(存在 確率) 【-】

燃焼

設備

ガス給湯器 8.3x10-03 6.7x10-02 【事務所】0.1台×使用 2h/日。【厨房】2 台×使用 60 分/日×普及率 80%

燃焼式暖房機 - 2.7x10-05 0.001台×使用 4h/日×60/365日

ガスコンロ - 3.1x10-01 15台×使用時間率 0.023×普及率90%

ガス炊飯器 - 5.0x10-02 2 台×使用 2h/日×普及率 30%

ガスオーブン - 5.8x10-04 2 台×普及率 2.9E-04

コーヒーサイフォン - 8.7x10-04 3 台×普及率 2.9E-04

ガスバーナー - 6.9x10-04 0.5台×使用 0.2分/回×10回/日

ガスロースター - 5.8x10-04 2 台×普及率 2.9E-04

注記 設置空間体積は,事務所:114.2m3、厨房:143m3として計算した.

31

表 5-2-1-2 室内使用ステージの着火源存在確率②「カラオケルームモデル(第二次)」「飲食店客室モデル(第三次)」

着火源存在確率 【単位】 カラオケ ルーム

飲食店 客室

※発火・発煙事故件数は、NITE 統計による。

スパーク

(時間・空

間当りの 発生回数)

【回

/m3min】

室内機 2.8x10-15 1.8x10-15

Pt(空間的遭遇確率)=台数×事故件数/市場台数/設置体積/(365×24×60) 台数 1 台、発火・発煙事故件数:3 件/年、市場存在台数:88.4百万台 カラオケ確率=1 台×年間着火事故件数 3 件/88.4百万/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60) 飲食店確率=1 台×年間着火事故件数 3 件/88.4百万/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

電化 製品

空気清浄機 1.7x10-14 1.1x10-16 カラオケ 1 台、客室 0.01台、事故件数:3.6件/年、存在台数:17.3百万台 カラオケ存在確率=1×3.6/17.3百万/23.3/(365*24*60) 飲食店存在確率=0.01×3.6/17.3百万/35.0/(365*24*60)

加湿器 3.0x10-14 2.0x10-16 カラオケ 1 台、客室 0.01台、事故件数:3 件/年、存在台数:8.11百万台 カラオケ存在確率=1×3/8.11百万/23.3/(365*24*60) 飲食店存在確率=0.01×3/8.11百万/35.0/(365*24*60)

携帯電話 1.8x10-15 1.2x10-15

台数 4.0台、事故件数:23件/17年:寿命 10年、出荷台数:23.9百万台。 カラオケ存在確率=4 台×年間着火事故件数(23/17)件/(出荷台数 23.9百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60) 飲食店存在確率=4 台×年間着火事故件数(23/17)件/(出荷台数 23.9百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

パソコン - 4.7x10-16 台数 0.1台、事故件数:174件/17年:寿命 10年、出荷台数:11.8百万台 存在確率=0.1台×年間着火事故件数(174/17)件/(出荷台数 11.8百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

照明器具 2.6x10-15 4.4x10-16

カラオケ 4 台、客室 1 台、事故件数:227件/17年:寿命 10年、出荷台数:165百万台 カラオケ存在確率=4 台×年間着火事故件数(227/17)件/(出荷台数 165百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60) 飲食店存在確率=1 台×年間着火事故件数(227/17)件/(出荷台数165百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

トラッキング 1.3x10-15 4.3x10-16

カラオケ 4 箇所、客室 2 箇所、事故件数:202件/17年:寿命 10年、出荷台数:298百万台 カラオケ存在確率=4 箇所×年間着火事故件数(202/17)件/(出荷台数298百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60) 飲食店存在確率=2 箇所×年間着火事故件数(202/17)件/(出荷台数 298百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

カラオケ機器 6.5x10-15 - 台数 1 台、事故件数:5 件/17年:寿命 10年、出荷台数:0.369百万台 存在確率=1 台×年間着火事故件数(5/17)件/(出荷台数 0.369百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60)

カメラ・ビデオカメラ 1.8x10-16 1.2x10-18

カラオケ 1 台、客室 0.01台、事故件数:8 件/17年:寿命 10年、出荷台数:21.9百万台 カラオケ存在確率=1 台×年間着火事故件数(8/17)件/(出荷台数 21.9百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60) 飲食店存在確率=0.001台×年間着火事故件数(8/17)件/(出荷台数 21.9百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

電話機 1.5x10-15 1.0x10-15

台数 1 台、事故件数:18件/17年:寿命 10年、出荷台数:5.67百万台 カラオケ存在確率=1 台×年間着火事故件数(18/17)件/(出荷台数 5.67百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60) 飲食店存在確率=1 台×年間着火事故件数(18/17)件/(出荷台数 5.67百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

テレビ 6.8x10-15 4.5x10-17

カラオケ 1 台、客室 0.01台、事故件数:355件/17年:寿命 10年、出荷台数:25.2百万台 カラオケ存在確率=1 台×年間着火事故件数(355/17)件/(出荷台数 25.2百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60) 飲食店存在確率=0.01台×年間着火事故件数(355/17)件/(出荷台数 25.2百万台× 寿命 10年)/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

扇風機 6.6x10-17 4.4x10-17

台数 0.001台、事故件数:221件/17年:寿命 10年、存在台数:1.60百万台 カラオケ存在確率=0.001台×年間着火事故件数(221/17)件/(出荷台数 1.60百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 23.3m3/(365*24*60) 飲食店存在確率=0.001×年間着火事故件数(221/17)件/(出荷台数 1.60百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 35.0m3/(365*24*60)

喫煙器具 (マッチ/石油ライター)

2.7x10-07 3.6x10-07 P=利用人数×0.209×17.1/空間容積/(利用時間/24)*0.05 ・利用人数:4 ・利用時間:カラオケ 3hr/回、客室 2hr/回 ・喫煙率:0.209(日本人成人) ・喫煙本数:17.1本/日/人(2013年JT調査)、マッチ・石油ライター使用率:0.05

着火器具 (マッチ/石油ライター)

4.8x10-08 4.8x10-08 P=0.004/空間容積/(利用時間/24)*0.05 ・ローソクへの着火に利用、1 本につき 1 回使用、存在本数 0.004本。 ・マッチ・石油ライター使用率:0.05 ・利用時間:カラオケ 3hr/回、客室2hr/回

裸火 (存在 確率) 【-】

燃焼

設備

燃焼式暖房機 7.1x10-05 2.8x10-04 0.001台、年間稼動時間:カラオケ 1241hr、客室 4817hr、半分の時間を暖房として使用。 カラオケ 0.001台×(1241×1/2)/(24×365) 飲食店 0.001台×(4817×1/2)/(24×365)

ガスコンロ 6.1x10-05 9.2x10-03 カラオケ 0.001台、客室 0.1台。利用時間:カラオケ 3hr/回、客室 2hr/回 カセットガス 1 本分の燃焼時間 110分、1 回に 1/10本使用。

ローソク 6.7x10-05 1.0x10-04 0.004本、着火時間 3 分、利用時間:カラオケ 3hr/回、客室2hr/回

囲炉裏 - 2.8x10-04 0.001台、客室年間稼動時間:4817hr、半分の時間を暖房として使用。暖房時のみ

注記 設置空間体積は,カラオケルーム:23.3m3、飲食店客室:35.0m3として計算した.

32

表 5-2-1-3 室内使用ステージの着火源存在確率③「事務所モデル(第三次)」「厨房モデル(第三次)」 着火源存在確率 【単位】 事務所 厨房 ※発火・発煙事故件数は、NITE 統計による。

スパーク

(時間・空

間当りの 発生回数)

【回

/m3min】

室内機 5.7x10-16 1.3x10-15

事務所 4 台、厨房 4 台 Pt(空間的遭遇確率)=台数×事故件数/市場台数/設置体積/(365×24×60)

発火・発煙事故件数:3 件/年(NITE 統計)、市場存在台数:88.4百万台 事務所確率=4 台×年間着火事故件数 3 件/88.4百万/設置空間体積 456m3/(365*24*60) 厨房確率=4 台×年間着火事故件数 3 件/88.4百万/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

電化 製品

空気清浄機 7.0x10-16 - 台数 0.8台(0.2台/部屋×4 部屋)、事故件数:3.6件/年、存在台数:17.3百万台 存在確率=0.8×3.6/17.3百万/456/(365*24*60)

加湿器 5.6x10-16 - 台数 0.36台(0.09台/部屋×4)、事故件数:3 件/年、存在台数:8.11百万台 存在確率=0.36×3/8.11百万/456/(365*24*60)

携帯電話 7.6x10-16 - 台数 32.48台、事故件数:23件/17年:寿命 10年、出荷台数:23.9百万台 存在確率=32.48台×年間着火事故件数(23/17)件/(出荷台数 23.9百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 456m3/(365*24*60)

パソコン 1.2x10-14 - 台数 32.48台、事故件数:174件/17年:寿命 10年、出荷台数:11.8百万台 存在確率=32.48台×年間着火事故件数(174/17)件/(出荷台数 11.8百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 456m3/(365*24*60)

照明器具 1.3x10-15 1.6x10-15

事務所 40台、厨房 21台、事故件数:227件/17年:寿命 10年、出荷台数:165百万台 事務所存在確率=40台×年間着火事故件数(227/17)件/(出荷台数 165百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 456m3/(365*24*60) 厨房存在確率=21台×年間着火事故件数(227/17)件/(出荷台数165百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

トラッキング 6.7x10-16 1.1x10-15

事務所 40箇所、厨房 28箇所、事故件数:202件/17年:寿命 10年、出荷台数:298百万台 事務所存在確率=40箇所×年間着火事故件数(202/17)件/(出荷台数 298百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 456m3/(365*24*60) 厨房存在確率=28箇所×年間着火事故件数(202/17)件/(出荷台数 298百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

冷蔵庫 - 1.6x10-14 台数 4 台、事故件数:267件/17年:寿命 10年、出荷台数:3.88百万台 存在確率=4 台×年間着火事故件数(267/17)件/(出荷台数 3.88百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

冷凍庫 - 4.1x10-15 台数 3 台、事故件数:16件/17年:寿命 10年、出荷台数:0.658百万台 存在確率=3 台×年間着火事故件数(16/17)件/(出荷台数 0.658百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

食器洗浄機 - 1.0x10-14 台数 3 台、事故件数:71件/17年:寿命 10年、出荷台数:1.511百万台 存在確率=3 台×年間着火事故件数(71/17)件/(出荷台数 1.511百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

電話機 - 3.6x10-16 台数 2 台、事故件数:18件/17年:寿命 10年、出荷台数:5.67百万台 存在確率=2 台×年間着火事故件数(18/17)件/(出荷台数 5.67百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

テレビ - 1.6x10-15 台数 2 台、事故件数:355件/17年:寿命 10年、出荷台数:25.2百万台 存在確率=2 台×年間着火事故件数(355/17)件/(出荷台数 25.2百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

換気扇 - 5.9x10-15 台数 6 台、事故件数:105件/17年:寿命 10年、出荷台数:5.96百万台 存在確率=6 台×年間着火事故件数(105/17)件/(出荷台数 5.96百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 200m3/(365*24*60)

喫煙器具 (マッチ/石油ライター)

8.8x10-07 - P=喫煙者が室内に居る確率×0.209×17.1/空間容積/(24×60)*0.05 ・喫煙者が室内に居る確率:0.1 ・喫煙率:0.209(日本人成人) ・喫煙本数:17.1 本/日/人(2013年JT調査)、マッチ・石油ライター使用率:0.05

着火器具 (マッチ/石油ライター)

- 1.2x10-06 P=7/設置空間体積/(24*60)*0.05 ・ガスバーナへの着火に利用 7 回/日、マッチ・石油ライター使用率:0.05

裸火

(存在 確率) 【-】

燃焼

設備

ガス給湯器 8.3x10-03 1.0x10-01 【事務所】0.1台、使用 2h/日。【厨房】3 台、使用 60 分/日。普及率 80%

燃焼式暖房機 - 5.5x10-05 0.002台×使用 4h/日×60/365日

ガスコンロ - 4.4x10-01 21台×使用時間率 0.023×普及率90%

ガス炊飯器 - 7.5x10-02 3 台×使用 2h/日×普及率 30%

ガスオーブン - 8.7x10-04 3 台×普及率 2.9E-04

コーヒーサイフォン - 1.2x10-03 4 台×普及率 2.9E-04

ガスバーナー - 9.7x10-04 0.7台×使用 0.2分/回×10回/日

ガスロースター - 8.7x10-04 3 台×普及率 2.9E-04

注記 設置空間体積は,事務所:456.0m3、厨房:200.0m3として計算した.

33

表 5-2-1-4 室内使用ステージの着火源存在確率④「工場モデル(第三次)」「事務所(氷蓄熱)(第三次)」

着火源存在確率 【単位】 工場 事務所

(氷蓄熱) ※発火・発煙事故件数は、NITE 統計による。

スパーク

(時間・空

間当りの 発生回数)

【回

/m3min】

室内機 8.6x10-16 4.8x10-16

Pt(空間的遭遇確率)=台数×事故件数/市場台数/設置体積/(365×24×60) 工場 4 台、事務所 1 台、発火・発煙事故件数:3 件/年(NITE 統計)、

市場存在台数:88.4百万台 工場確率=4 台×年間着火事故件数 3 件/88.4百万/設置空間体積 300m3/(365*24*60) 事務所確率=1 台×年間着火事故件数 3 件/88.4百万/設置空間体積 135m3/(365*24*60)

電化 製品

空気清浄機 6.6x10-16 5.9x10-16 工場 0.5台、事務所 0.2台、事故件数:3.6件/年、存在台数:17.3百万台 工場存在確率=0.5×3.6/17.3百万/300/(365*24*60) 事務所存在確率=0.2×3.6/17.3百万/135/(365*24*60)

加湿器 5.9x10-16 4.7x10-16 工場 0.25台、事務所 0.09台、事故件数:3 件/年、存在台数:8.11百万台 工場存在確率=0.25×3/8.11百万/300/(365*24*60) 事務所存在確率=0.09×3/8.11百万/135/(365*24*60)

携帯電話 1.8x10-15 7.6x10-16

工場 50台、事務所 9.6台、事故件数:23件/17年:寿命 10年、 出荷台数:23.9百万台 工場存在確率=50台×年間着火事故件数(23/17)件/(出荷台数 23.9百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60) 事務所確率=9.6台×年間着火事故件数(23/17)件/(出荷台数 23.9百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 135.0m3/(365*24*60)

パソコン 2.8x10-15 1.2x10-14

工場 5 台、事務所 9.6台、事故件数:174件/17年:寿命 10年、 出荷台数:11.8百万台 工場存在確率=5 台×年間着火事故件数(174/17)件/(出荷台数 11.8百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60) 事務所確率=9.6台×年間着火事故件数(174/17)件/(出荷台数 11.8百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 135.0m3/(365*24*60)

照明器具 3.1x10-15 1.1x10-15

工場 60台、事務所 10台、事故件数:227件/17年:寿命 10年、 出荷台数:165百万台 工場存在確率=60台×年間着火事故件数(227/17)件/(出荷台数165百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60) 事務所存在確率=1 台×年間着火事故件数(227/17)件/(出荷台数165百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 135.0m3/(365*24*60)

トラッキング 2.5x10-15 5.6x10-16

工場 100箇所、事務所 10箇所、事故件数:202件/17年:寿命 10年、 出荷台数:298百万台 工場存在確率=100箇所×年間着火事故件数(202/17)件/(出荷台数 298百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60) 事務所存在確率=10箇所×年間着火事故件数(202/17)件/(出荷台数 298百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 135.0m3/(365*24*60)

工作機械 9.3x10-15 - 台数 50台、事故件数:19件/17年:寿命 10年、出荷台数:3.82百万台 存在確率=50台×年間着火事故件数(19/17)件/(出荷台数 3.82百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60)

電源ブレーカ 1.4x10-14 - 台数 10台、事故件数:62件/17年:寿命 10年、出荷台数:1.69百万台 存在確率=10台×年間着火事故件数(62/17)件/(出荷台数 1.69百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60)

冷蔵庫 5.1x10-16 - 台数 0.2台、事故件数:267件/17年:寿命 10年、出荷台数:3.88百万台 存在確率=0.2台×年間着火事故件数(267/17)件/(出荷台数 3.88百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60)

電話機 4.7x10-16 - 台数 4 台、事故件数:18件/17年:寿命 10年、出荷台数:5.67百万台 存在確率=4 台×年間着火事故件数(18/17)件/(出荷台数 5.67百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60)

テレビ 2.6x10-15 - 台数 5 台、事故件数:355件/17年:寿命 10年、出荷台数:25.2百万台 存在確率=5 台×年間着火事故件数(355/17)件/(出荷台数 25.2百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60)

扇風機 2.1x10-14 - 台数 4 台、事故件数:221件/17年:寿命 10年、出荷台数:1.60百万台 存在確率=4 台×年間着火事故件数(221/17)件/(出荷台数 1.60百万台×

寿命 10年)/設置空間体積 300m3/(365*24*60)

喫煙器具 (マッチ/石油ライター)

- 8.8x10-07 P=喫煙者が室内に居る確率×0.209×17.1/空間容積/(24×60)*0.05 ・喫煙者が室内に居る確率:0.1 ・喫煙率:0.209(日本人成人) ・喫煙本数:17.1 本/日/人(2013年JT調査)、マッチ・石油ライター使用率:0.05

裸火 (存在 確率) 【-】

燃焼

設備

ガス給湯器 8.3x10-03 8.3x10-03 台数 0.1台×使用 2h/日。

ガスバーナー 1.4x10-01 - 台数 2.1台×使用 2.5h/日、235/365日

注記 設置空間体積は,工場 300.0m3、事務所(氷蓄熱)135.0m3として計算した.

34

5.2.2 使用(室外)ステージの着火源存在確率

室外使用条件について,代表的な「地上設置モデル」と,「各階設置モデル」,「半地下設置モデル」,「狭小

設置モデル」について,着火源存在確率を表 5-2-5にまとめた.

このように設置モデル毎に,それぞれ着火源存在確率を算出した.

表 5-2-5 室外「地上」,「各階」,「半地下」,「狭小」の着火源存在確率比較 着火源存在確率 【単位】 地上 各階 半地下 狭小

スパーク

(時間・空

間当りの

発生回数) 【回

/m3min】

室外機 1.4x10-14

9.5x10-14

2.5x10-14

9.1x10-14

Pt(空間的遭遇確率)=5.6/7,800,000/空間容積/(365×24×60)

事故件数:5.6件/年(NITE ).存在台数:7.8百万台.

喫煙 器具

作業者 3.6x10-10

1.3x10-9

1.7x10-9

1.7x10-9

【作業者の喫煙】 P=機器近傍確率x 0.1[年間サービス率]x[喫煙率]×(16[本]/空間容

積/(24×60))x0.05[スパーク]×0.01[訓練無視確率] ・機器近傍確率:地上:0.2、各階:0.1、半地下・狭小:0.5 ・作業者の喫煙率:0.322(日本人男性:JT調査) ・喫煙本数(執務時):16本/日(総務庁調査) ・[スパーク]マッチ・石油ライター使用率:0.05 【使用者(ユーザー)の喫煙】 P=使用者が周辺に居る確率×[喫煙率]×(17.1[本]/空間容積

/(24×60))x0.05[スパーク]×[周辺喫煙可率] ・周辺に居る確率:地上・半地下・狭小:0.05、各階:0.0125 ・喫煙率:0.209(日本人成人)・喫煙本数:17.1 本/日/人 ・周辺喫煙可率:地上・半地下・狭小:0.9,各階:0.5

使用者 5.6x10-8

5.4x10-8

1.1x10-7

1.1x10-7

裸火

(存在 確率) 【-】

喫煙

作業者 6.0x10-8

3.0x10-8

1.5x10-7

1.5x10-7

【作業者の喫煙】 P=機器近傍確率x0.1[年間サービス率]x0.322[喫煙率]×(16[本]x5[秒/本:裸火燃焼時間]/(24x60x60))×0.01[訓練無視確率] 【使用者(ユーザー)の喫煙】 P=使用者が周辺に居る確率x0.209[喫煙率]×(17.1[本]x5[秒/本:

裸火燃焼時間]/(24x60x60))×[周辺喫煙可率] 使用者 9.3x10

-6 1.3x10

-6 9.3x10

-6 9.3x10

-6

燃焼式 給湯器 6.6x10

-4 2.2x10

-4 2.2x10

-4 2.2x10

-4

P=運転率×0.001[普及率] ・運転率…地上 :0.66(24H/日、20日/月) 地上以外:0.22(8H/日、20日/月)

35

6. 各ライフステージの FTA

6.1 輸送保管ステージ

店舗用 PACの輸送保管ステージは,一般的に以下の工程で進められる.

⇒工場から製品を出荷(トラックによる輸送)

⇒中大型倉庫での保管

⇒中大型倉庫からの出荷~据付現場への納入(トラックによる輸送)

⇒販売店等の狭小倉庫への一次保管

⇒狭小倉庫からの出荷~据付現場への納入(トラックあるいは小型製品の場合は小型車両による輸送)

これらの工程のうち,着火源の発生と製品室外機からの冷媒漏えいが同時に発生する可能性が考えられる

工程として以下の 3つのパターンを評価対象とした.

① 中型倉庫での保管

② 販売店等の狭小倉庫での保管

③ 小型車両(ワゴン車)による輸送

おもな評価条件を表 6-1-1に示す

表 6-1-1 輸送保管ステージで想定した主な条件

中型倉庫保管 狭小倉庫保管 ワゴン車輸送

空間広さ 1000㎡ 15m2 ×2.7m 4.65m2 ×1.34m

保管(輸送)台数 2300台 5台 -※

漏えい台数 5台 2台 -※

対象馬力

(冷媒量)

第二次 6HP(4㎏) 6HP(4㎏) 3HP(3㎏)

第三次 12HP(7㎏) - -

想定した作業時間 倉庫での作業:8hr/日 倉庫での作業:2hr/日 製品輸送時間:2hr/日

※ワゴン車輸送の場合,可燃域の生成確率を 1としたため,台数の想定は無し

6.1.1 輸送保管ステージの着火源

輸送保管時の着火源は,各パターンで以下を想定して FTA に組み込んだ.

表 6-1-2 輸送保管ステージにおける着火源

着火源

中型倉庫保管 作業者の喫煙

フォークリフトによる静電気スパーク※,金属接触スパーク

狭小倉庫保管 作業者の喫煙

石油ストーブの点火時のスパーク

石油ストーブの裸火

ワゴン車輸送 作業者の喫煙

※フォークリフトの静電気のエネルギーについては,本 SWGの実施期間中において,定量データが無か

36

ったため,着火源と仮定して,倉庫内の着火リスクの FTA 評価を行った.

着火源の考え方を以下に示す.

作業者の喫煙

考え方:煙草の点火スパーク存在確率 × 作業者が禁煙を無視する確率

⇒煙草の点火スパーク存在確率:作業時間,作業者人数,床面積,喫煙率等から算出.

⇒作業者が喫煙を無視する確率:ADL レポート 6-1)を参考に 1/100とした.

フォークリフトによる着火源

考え方:フォークリフトの存在確率 ×(静電気スパーク発生確率 + 金属接触スパーク発生確率)

⇒フォークリフトの存在確率:

始動時にスパークが発生するとして,その頻度を稼働時間,台数,床面積から算出

⇒静電気スパークの発生確率:

フォークリフトの稼働時間に対する,始動時のスパーク継続時間の比率

⇒金属接触スパーク発生確率:

パレットを引きずりながら走ったときにスパークが発生すると仮定してもとめた推定値

石油ストーブによる着火源

考え方:ストーブ点火時のスパークと裸火としての着火源の発生確率

⇒点火時のスパークの発生確率:作動回数を 2回/日とし,年間作業時間に対する発生確率

⇒裸火の発生確率:ストーブ点火継続時間を 2hr/回とし,年間作業時間に対する発生確率

6.1.2 輸送保管ステージの漏えいモード

冷媒漏えいモードについては,静的な状態での冷媒漏えいを想定する倉庫保管時と運搬による振動がある

輸送時が考えられる.ただし,倉庫内や輸送時の冷媒漏えい頻度の情報が無かったことから,本 WGにおい

ては,3.3章に示した製品からの冷媒漏えい発生確率を用いて検討を行った.

実際には,工場での製品組立完了時に出荷検査を受けてから時間が経過していないことや据付作業等による

製品内部のバルブ操作も行っていないことから,冷媒漏えい頻度は使用時の頻度に比べて少ないと考えられ

る.3.3章に示した製品からの冷媒漏えい発生確率を用いることで,現実よりも厳しい評価を実施しているこ

とになる.

6.1.3 中型倉庫保管時の FTA

中型倉庫保管時の FTA を図 6-1-3に示す.1000m2に 2300台の室外機を保管している倉庫を想定した検討

であり,空間が広いため着火源の存在確率が非常に小さく,室外機からの冷媒漏えいの不具合が支配的なリ

スク要因となった.倉庫保管台数 2300台の中で,5台分の冷媒漏えいが発生する想定としたが,着火事故発

生確率は許容値を下回る結果となった.

6.1.4 狭小倉庫保管時の FTA

狭小倉庫保管時の FTA を図 6-1-4に示す.小さな倉庫に一時保管する機器として,6HPクラスを想定し,

冷媒量 4㎏とした.倉庫の広さは 15㎡×天井高さ 2.7mで設定している.着火源は喫煙,石油ストーブを想定

した.石油ストーブの使用頻度より,石油ストーブによる着火源の存在確率が支配的なリスク要因となった.

倉庫保管台数 5台の中で,2 台分の冷媒漏えいが発生する想定としたが,着火事故発生確率は許容値を下回

る結果となった.

37

6.1.5 ワゴン車輸送時の FTA

ワゴン車輸送時の FTA を図 6-1-5に示す.一般的な 1BOXタイプのワゴン車サイズとし,輸送する機器は

3HPクラスを想定し冷媒量 3㎏とした.一般的なワゴン車の車内容積 4.65m2 ×1.34m に対して冷媒量が多い

ため,時空積の扱いをせず,可燃域の生成確率を 1とした.また,車内の換気の有無は車の実際の使用シー

ンを想定し,換気機能として外気取入れ機能の利用の有無,窓を開けているかをアンケート結果を元に考慮

して FTA に組み込んだ.可燃域の生成確率を 1にしたことで,煙草による着火源の存在確率が支配的なリス

ク要因となったが,着火事故発生確率は許容値を下回る結果となった.

6.1.6 輸送保管ステージのまとめ

輸送保管時のリスク評価として,中型倉庫保管,狭小倉庫保管,ワゴン車輸送の 3つのパターンについて,

着火事故確率を算出した結果,いずれもリスク許容値を満足する結果となった.

表 6-1-6 輸送保管ステージのまとめ【冷媒 R32】

評価パターン 高さ×床面積 保管

台数

製品能力

冷媒量

可燃空間

時空積

着火確率

(1台あたり)

第二次

中型倉庫保管 1000㎡ 2300台 6HP

4.0㎏

2.21×10-1

m3・min 1.44×10-11~1.51×10-11

狭小倉庫保管 2.7m×15㎡ 5台 6HP

4.0㎏

1.21×10+2

m3・min 1.26×10-11~1.26×10-11

ワゴン車輸送 1.34m×4.65㎡ - 3HP

3.0㎏ - 4.32×10-11~1.73×10-10

第三次 中型倉庫保管 1000㎡ 2300台 12HP

7.0㎏

1.19

m3・min 7.91×10-11~8.30×10-11

38

6.2 据付ステージ

店舗パッケージエアコンの据付作業は一般的に以下の手順で行われる.

① 室内機,室外機を設置場所に搬入,室内機は天井,壁面,床面に,室外機は地上,各階設置,屋上,半

地下,狭小地に据付する.

② 室内機,室外機を接続する接続配管を設置する.室内機,室外機はフレア接続する場合とロウ付け

接続する場合がある.(冷房能力 20kW以上の室内機,室外機は接続配管とロウ付け接続する場合があ

る.)

③ 接続配管の長さ,引き回しによりロウ付けが必要となる場合がある.その場合は窒素置換を行う.

④ 1台の室外機に 2台以上 4台までの室内機を接続する場合がある.その場合は液,ガスともに分岐管を

室内機,室外機の接続配管中にロウ付けをする.

⑤ 室内機,室外機の信号線,電源線との結線を行う.

⑥ ⑤の作業終了後,室外機の操作弁は閉じたまま,気密試験を窒素で行う.

⑦ 気密試験完了後,真空引きを行い,室外機の操作弁を開放し,室外機内のプレチャージ冷媒を

システム内に充塡させる.

⑧ 室外機内にプレチャージされた冷媒量以上が必要な場合,追加チャージを行う.

⑨ ⑧まで終了後,試運転を実施する.

パッケージエアコンにおいては冷媒量や配管長などさまざまな形態があるため,冷媒量や室内機,

室外機の設置場所別に評価条件を表 6-2-1に第二次(比較的リスクが高くなると想定されるモデル),

第三次(30kWまでのリスクが高くなると想定されるモデル)と設定した.

表 6-2-1評価条件

第二次 第三次

空間 馬力,冷媒量/配管長 空間 馬力,冷媒量/配管長

室内 天井形

事務所

42.3m2×H2.7m

自然換気

3HP,3kg/30m以下 169m2×H2.7m

自然換気

3×4HP,19kg/120m

3HP,6kg/75m

天井形

厨房

57.2m2×H2.5m

自然換気

6HP,4kg/30m以下 80m2×H2.5m

自然換気

3×4HP,19kg/120m

6HP,8kg/75m

天井形

カラオケ室

9.7m2×H2.5m密閉

空間

1.5HP,2kg/30m以下 ― ―

1.5HP,3kg/50m

床置形

飲食店

― ― 14m2×H2.5m

自然換気

2HP,3kg/50m

床置形

工場

― ― 99.846m2×H3m

自然換気

3×4HP,19kg/120m

氷蓄熱

事務所

― ― 7.5m2×H2.5m

自然換気

6HP,9kg/75m

室外 通常(地上)

50m2×H2m

全開放

6HP,4kg 50m2×H2.5m

全開放

12HP,19kg

6HP,8kg

各階

3.6m2×H4m

前面開放

6HP,4kg 3.6m2×H4m

前面開放

12HP,19kg

6HP,8kg

半地下 15.34m2×H3.5m

四方閉

6HP,4kg 15.34m2×H3.5m

四方閉

12HP,19kg

6HP,8kg

狭小 W5m×D1.5m

H2m

一面部分開放

6HP,4kg W5m×D1.5m

H2.5m

一面部分開放

12HP,19kg

6HP,8kg

39

据付ステージの着火事故発生確率の検討において,表 6-2-1の室内機,室外機各ケースについてそれぞれ

FTA を作成し,室内機,室外機間の接続配管に伴う着火事故発生確率は室内機に含めた. 接続配管におけ

る可燃空間の時空積ついては,床置室内機におけるシミュレーション結果(漏れ高さ 0.5m,漏れ流量 15kg/h)

から,漏れ高さを 0.5mとして推定した.

推定した接続配管の可燃空間時空積を,表 6-2-2に示す.

表 6-2-2 接続配管の可燃空間時空積

第二次 第三次

馬力,冷媒量/配管長 可燃空間時空積

(m3,min)

馬力,冷媒量/配管長 可燃空間時空積

(m3,min)

室内

据付

条件

天井形

事務所

3HP,3kg/30m以下 1.81×102 3×4HP,19kg/120m

5.76×103

3HP,6kg/75m 1.45×103

天井形

厨房

6HP,4kg/30m以下 2.73×102 3×4HP,19kg/120m 1.77×104

6HP,8kg/75m 2.18×103

天井形

カラオケ室

1.5HP,2kg/30m以下 4.89×102 ― ―

1.5HP,3kg/50m 1.65×103

床置形

飲食店

― ― 2HP,3kg/50m 9.51×102

床置形

工場

― ― 3×4HP,19kg/120m 1.27×104

氷蓄熱

事務所

― ― 6HP,9kg/75m 3.81×103

室内機,室外機の各 FTA においての可燃空間時空積は,4 章 冷媒リークシュミレーション結果を用いて

おり,FTA の数値確率割付表に記載する.

据付全般での FTA 作成での前提条件を以下とした.

据付頻度はパッケージエアコンの製品寿命より 13年に 1回とした.

(但し,全据付の 1%については期間 4年のリースの場合がある)

リニューアル需要などから既設配管による据付が 35%

ツイン,ダブルツインの組み合わせが 20%と仮定

表 6-2-3 据付時の検討モデル

検討モデル 対象 据付作業時間(※)

第二次チャージレス 6HP以下のチャージレス冷媒量

室内機床置形を除く

作業時間 4時間

第二次最大冷媒量 6HP以下の最大冷媒量

室内機床置形を除く

作業時間 6時間

第三次最大冷媒量 12HPまでの最大冷媒量

室内機床置形を含む

(床置飲食店 2HP最大冷媒量

検討)

作業時間 8時間

※気密試験を 24時間実施する案内がある場合があるがその試験時間は除外する.

40

6.2.1 据付ステージの着火源

据付ステージの着火源として表 6-2-4を想定し,室外機,室内機でそれぞれ対応する着火源を FTA に組み

込んだ.

表 6-2-4 据付ステージの着火源

機器と作業内容(着火源)

喫煙以外による

着火

(a) 室内機,室外機,ロウ付け作業時

(ガスバーナー)

(b) 室外機,据付作業中 (電気,暖房機器系)

(c) 室内機,据付作業中 (電気,暖房機器系)

(d) 接続配管,据付作業中 (電気,暖房機器系)

(e) 室外機,エレベータ内運搬時 (電気系)

喫煙による着火 (f) 喫煙のマッチ,オイルライター

(a)室内機,室外機,ロウ付け時

パッケージエアコンの場合,室内機 1台と室外機1台の接続の場合から,分岐管キットを利用する室内

機 4台と室外機1台の接続の場合があり,ロウ付け作業を行うことがある.どちらもガスバーナーが着火源

となり得る.すべてアセチレンバーナーを使用していると想定した.

ロウ付け作業による冷媒への着火リスクの算出は以下の FTA の考え方で算出している.

図 6-2-1 ロウ付け時の着火リスクとアセチレンバーナーの存在確率

可燃空間に

バーナーが存在する確率

可燃空間の発生

による冷媒への着火

着火源の作動による

冷媒への着火

・バーナーと可燃空間の

空間的遭遇確率

・ロウ付け作業中の

可燃空間の時間・体積

・バーナーの時間・体積

あたりの存在率

はリスク算出の考え方

41

(b)室外機据付作業中(電気,暖房機器系)

室外機の据付作業中の着火源として,室外機基板の電気スパークとボイラー(給湯器)も着火源として

考慮した.この値は使用ステージでの室外機(停止時)の値を採用した.

(c)室内機据付作業中(電気,暖房機器系)

(d)接続配管据付作業中(電気,暖房機器系)

感電事故,波及事故の事故分析 6-2) より,室内や天井裏の火災発生確率(1 受電設備当りの 1年間の値)

を求め,受電設備≒建屋 1件とし,(財団法人)日本不動産研究所のオフイスビルストックデータ(2009年

12月時点)を用いて空間容積等を求め,電気系,暖房機器系の着火源存在確率を算出した.

(e)室外機,エレベータ内運搬時 (電気系)

ビルの高所階や屋上に据付する場合について,エレベータ等で搬入する場合がある.冷媒がプレ

チャージされた室外機がエレベータでの搬入中に過失から受傷,冷媒が漏えいし,エレベータ内の

電気機器のスパークが重なった火災リスクを想定した.上述の感電事故,波及事故の事故例とハイン

リッヒの法則から,エレベータを含むビルとしての電気スパークの発生率を以下のように求めた.

感電事故,波及事故の調査分析(H21年度,中国電気管理技術者協会編)から,下記の(1)~(3)

が得られ,火災発生事故確率は 2.7×10-5(件/年)となる.

(1)受電設備の事故発生率:約 0.1%(/年)

(2)受電設備の感電事故発生件数:177件(H10 ~H21の 12年間) ⇒ 177/12=14.75件(/年)

(3)火災件数:2 件(H17 ~H21の 5年間) ⇒ 2/5= 0.4件(/年)

(4) 従って,漏電による火災発生事故発生確率 Po は

Po = 0.1%×0.4/14.75 (/年)= 2.7 ×10-5 (/年)

着火源(=裸火)とした場合,着火源の存在確率は火災確率の 300倍として(重大事故の発生

確率は原因確率の 1/300である,ハインリッヒの法則(ミニスプリット SWG(Ⅰ)にて適用)を参考に,

着火源存在確率 P1=2.7×10-5×300=8.14×10-3

次に,受電設備≒建屋1軒と仮定し,かつ,建屋1軒の空間容積については,表 6-2-4のデータを用

いて,以下の値を仮定すると,

1建屋(ビル)の空間容積 = 8814 ×104(m2)×2.7(m)/5555 = 4.3×104(m3)

表 6-2-5 オフィスビルストック (2009.12 財団法人)日本不動産研究所)

床面積(万 m2) 棟数(棟)

東京区部 4,946 2,476

大阪 1,348 836

名古屋 519 348

横浜 444 363

福岡 347 360

札幌 243 242

仙台 212 219

千葉 193 104

神戸 185 175

広島 166 197

京都 109 132

さいたま 102 103

計 8,814 5,555

42

この場合の時間,体積当りの着火源存在確率 P3は,以下となる.

P3{/(m3,min)} =P1(/年)/(365×24時間×60)(min/年)/(4.3 ×104)(m3)

=3.6×10-13

(f)喫煙のマッチ,オイルライター

喫煙による着火として,サービスマンの多くが男性であることを想定し「成人男性の喫煙率」と,

基本的にサービス現場で喫煙することは訓練で禁止されていることから「サービスマンが訓練を

無視する確率」を掛け合わせて算出している.

6.2.2 据付ステージの冷媒漏えいパターン

据付時に起こりえる冷媒漏えいパターンを表 6-2-6に示す.冷媒漏えいの確率を算出するために,冷媒漏え

いに至った原因別にシナリオを分けて考えた.

表 6-2-6 据付時に起こり得る冷媒漏えいパターン

冷媒漏えいの要因 室内機 室外機

据付作業に伴う冷媒漏えい バルブ誤操作,バルブ不良

既設配管不良

気密試験忘れ

窒素置換を行わない

バルブ誤操作,バルブ不良

既設配管不良

気密試験忘れ

窒素置換を行わない

据付作業に伴わない冷媒漏えい 室内機が損傷し,窒素置換

の代わりに微燃性ガスを使用した

室外機が損傷しプレチャージし

た冷媒が漏えいした

6.2.3 室外機の FTA

室外機の据付作業は,機体の設置場所への搬入⇒設置場所への固定⇒室内機(接続配管)への

接続⇒気密試験⇒真空引き⇒操作弁作業による冷媒充塡⇒追加チャージ⇒配線結線(電源線,内外

信号線結線)⇒試運転の作業を行うが,本 FTA では配線結線までを考慮した.

室外機の FTA を図 6-2-2「R32冷媒,室外機地上設置,冷房能力 30kWでの最大冷媒量 19kg」条件

図 6-2-3に「R32冷媒,室外機半地下設置,冷房能力 30kWでの最大冷媒量 19kg」で算出した確率を示

した.

43

図 6-2-2 据付ステージ(室外機,地上設置,冷房能力 30kW,冷媒量 19kg,R32)の FTA

未対策 対策1

対策1,28.02E-10 8.02E-11

7.19E-11

7.94E-02

1.00E-01

1.17E-09 6.67E-10 3.96E-12 8.26E-09

1.70E-03 1.51E-03 3.22E-03

1.00E-03 3.96E-09

1.00E-01

3.02E-03 2.21E-07

4.40E-06 2.66E-04

4.35E-11 2.66E-04

据付時の着火

年間据付率

ロウ付作業による

冷媒への着火作業者の喫煙によ

る着火

・作業者の喫煙率

・作業者が指示を無視

着火源と可燃空間が時

間的に遭遇する確率

・マッチ・ライターの着火時間・マッチ・石油ライターの使用率・可燃空間の持続時間比率

冷媒が作業者側に

漏洩

・冷媒漏洩発生確率

・作業者側に漏洩する確率

ロウ付け、喫煙以

外の着火源による

冷媒への着火

室外機運搬時

(エレベータ)

による着火

冷媒漏洩確率 可燃空間に着火源が存在する確率

・エレベータ運搬中に

機体を損傷し漏洩に

至る確率

・可燃空間時間・体積

・時間体積当たりの

着火源存在確率

(ビル建屋の事故発生

確率)

冷媒漏洩発生

確率

・バルブ不良、据付時に漏れ

・既設配管利用時に検圧作業不良

・バルブ誤操作

・工事不良(接続不良)

・据付中に破損し冷媒漏れ

着火源存在確率

・可燃空間時間・体積

(室外機・使用ステージ

と同値)

・時間体積当たりの

着火源存在確率

可燃空間に

バーナーが存在する確率

可燃空間の発生

による冷媒への着火着火源の作動による

冷媒への着火

冷媒漏洩発生確率

・バルブ不良(漏洩あり)、窒素置換、

気密試験、真空引きを実施しない

・エレベータや運搬時に機体を損傷し

ロウ付け時に作業箇所へ漏洩

・窒素置換時に置換気体を(微)燃性冷媒

で実施(ラベル確認せず)

・連接設置する現場で隣接室外機に漏洩

があり作業箇所に漏洩

・バーナーと可燃空間の空間的遭遇確率 ・ロウ付け作業中の可燃空間の時間・体積

・バーナーの時間・体積あたりの存在率

対策2

冷媒漏洩検知器

の携行

対策1

作業者への教育

リスクが最も大きい リスクは喫煙の次に大きい

44

図 6-2-3 据付ステージ(室外機,半地下設置,冷房能力 30kW,冷媒量 19kg,R32)の FTA

地上設置の場合,着火リスクはサービスマンの喫煙,ロウ付け作業によるリスクの順に大きい.一方で

半地下設置の場合は,ロウ付け作業,ロウ付けおよび喫煙以外の作業による着火リスクが大きい.室外機側

のロウ付け作業は液,ガスの 2箇所としている.(フレア接続によりロウ付けがない場合もあるが,シビアケ

ースとして 2箇所とした) 半地下設置の場合でロウ付けの着火リスクや,ロウ付けおよび喫煙以外の作業

によるリスクが大きくなった理由は冷媒漏えい時の可燃空間の時空積が大きいことである.

6.2.4 室内機の FTA

FTA 上での室内機の据付作業は,機体の搬入⇒室内設置場所への固定⇒接続配管の設置⇒接続配管のロウ

付け(分岐管のロウ付け含む)⇒室内機機体と接続配管の接続⇒信号線結線(電源線を結線する場合もある)

と考慮した.気密試験や冷媒充塡は室外機の作業とした.室内機の FTA を図 6-2-4「R32冷媒,室内機天井設

置,冷房能力 30kWでの冷媒量 19kg」条件,図 6-2-5に「R32冷媒,室内機床置き設置,冷房能力 4.5kWで

の冷媒量 3kg」で算出した確率を示した.

天井設置,事務所の場合には,作業者の喫煙による着火リスクが最も大きい.ロウ付け作業による着火

リスクは,接続配管でのロウ付け箇所が多い(20箇所)に設定したが,6.19×10-11と喫煙のリスク 8.26×10-9

未対策 対策1

対策1,2

4.40E-06 1.00E+00

7.23E-053.02E-03

9.07E-06 2.40E+01

3.96E-09

1.70E-03 1.51E-03 3.22E-03

1.00E-03

1.00E-01

3.67E-07 3.67E-085.64E-09

7.94E-02

8.26E-094.40E-06 3.96E-122.18E-07

1.00E-01

据付時の着火

年間据付率

ロウ付作業による

冷媒への着火作業者の喫煙によ

る着火

・作業者の喫煙率

・作業者が指示を無視

着火源と可燃空間が時

間的に遭遇する確率

・マッチ・ライターの着火時間・マッチ・石油ライターの使用率・可燃空間の持続時間比率

冷媒が作業者側に漏洩

・冷媒漏洩発生確率

・作業者側に漏洩する確率

ロウ付け、喫煙以

外の着火源による

冷媒への着火

室外機運搬時

(エレベータ)

による着火

冷媒漏洩確率 可燃空間に着火源が存在する確率

・エレベータ運搬中に

機体を損傷し漏洩に

至る確率

・可燃空間時間・体積

・時間体積当たりの

着火源存在確率

(ビル建屋の事故発生

確率)

冷媒漏洩発生

確率

・バルブ不良、据付時に漏れ

・既設配管利用時に検圧作業不良

・バルブ誤操作

・工事不良(接続不良)

・据付中に破損し冷媒漏れ

着火源存在確率

・可燃空間時間・体積

(室外機・使用ステージ

と同値)

・時間体積当たりの

着火源存在確率

可燃空間に

バーナーが存在する確率

可燃空間の発生

による冷媒への着火着火源の作動による冷媒への着火

冷媒漏洩発生確率

・バルブ不良(漏洩あり)、窒素置換、気密試

験、真空引きを実施しない

・エレベータや運搬時に機体を損傷しロウ付

け時に作業箇所へ漏洩

・窒素置換時に置換気体を(微)燃性冷媒で

実施(ラベル確認せず)

・連接設置する現場で隣接室外機に漏洩が

あり作業箇所に漏洩

・バーナーと可燃空間の空間的遭遇確率 ・ロウ付け作業中の可燃空間の時間・体積・バーナーの時間・体積あたりの存在率

対策2

冷媒漏洩検知器

の携行

対策1

作業者への教育

リスクが最も大きい リスクはロウ付の次に大きい

45

に対し小さい.

図 6-2-4 据付ステージ(室内機,天井設置,事務所,冷房能力 30kW, 冷媒量 19kg,R32)の FTA

一方で飲食店,床置きの場合,ロウ付けによる着火リスクが喫煙を上回る.この条件での接続配管のロウ

付け箇所は 6箇所とした.冷媒漏えい時の時空積の影響も受けたためである.

未対策 対策1

対策1,2

6.19E-11 1.48E-17 8.25E-092.68E-14

2.70E-06 9.91E-09

3.22E-03

1.00E-01

6.60E-10 6.60E-116.56E-11

7.94E-02

1.00E-01

1.70E-03 1.51E-03

1.24E-04 1.20E-13

3.11E-07 1.99E-04

1.27E-08 1.99E-04

据付時の着火

年間据付率

ロウ付作業による

冷媒への着火作業者の喫煙によ

る着火

・作業者の喫煙率

・作業者が指示を無視

着火源と可燃空間が時

間的に遭遇する確率

・マッチ・ライターの着火時間・マッチ・石油ライターの使用率・可燃空間の持続時間比率

冷媒が作業者側に

漏洩

・冷媒漏洩発生確率

・作業者側に漏洩する確率

ロウ付け、喫煙以外の

着火源による冷媒へ

の着火(室内機)

冷媒漏洩発生

確率

・バルブ不良、据付時に漏れ

・既設配管利用時に検圧作業不良

・バルブ誤操作

・工事不良(接続不良)

・据付中に破損し冷媒漏れ

着火源存在確率

・可燃空間時間・体積

・時間体積当たりの

着火源存在確率

可燃空間に

バーナーが存在する確率

可燃空間の発生

による冷媒への着火着火源の作動による

冷媒への着火

冷媒漏洩発生確率

・バルブ不良(漏洩あり)、窒素置換、

気密試験、真空引きを実施しない

・エレベータや運搬時に機体を損傷し

ロウ付け時に作業箇所へ漏洩

・窒素置換時に置換気体を(微)燃性冷媒

で実施(ラベル確認せず)

・バーナーと可燃空間の空間的遭遇確率 ・ロウ付け作業中の可燃空間の時間・体積

・バーナーの時間・体積あたりの存在率

対策2

冷媒漏洩検知器

の携行

対策1

作業者への教育

ロウ付け、喫煙以外の

着火源による冷媒へ

の着火(接続配管)

冷媒漏洩発生

確率

着火源存在確率

・バルブ不良、据付時に漏れ

・既設配管利用時に検圧作業不良

・バルブ誤操作

・工事不良(接続不良)

・据付中に破損し冷媒漏れ

・接続配管が室内側(壁面内)にある場合

・可燃空間時間・体積

・時間体積当たりの

着火源存在確率

リスクが最も大きい

46

図 6-2-5 据付ステージ(室内機,床置き設置,飲食店,冷房能力 4.5kW,冷媒量 3kg)の FTA

6.2.5 据付ステージの安全対策

各 FTA から,着火事故確率に対して,支配的な着火源は喫煙,ロウ付けバーナーであることがわかった.

漏えい冷媒の滞留が少なく可燃空間時空積が小さい場合はサービスマンの喫煙のリスクの寄与が大きくな

る傾向である.そのため,対策としてサービスマンへの教育,冷媒漏えい検知器の携行が効果ある.

未対策 対策1

対策1,21.71E-08 1.71E-09

2.29E-10

7.94E-02

1.00E-01

2.06E-07 7.29E-14 4.42E-15 8.25E-09

3.11E-07 6.64E-01

1.70E-03 1.51E-03 3.22E-03

1.00E-01

6.46E-03 6.57E-01

2.70E-06 1.64E-09

1.24E-04 5.90E-10

据付時の着火

年間据付率

ロウ付作業による

冷媒への着火作業者の喫煙によ

る着火

・作業者の喫煙率

・作業者が指示を無視

着火源と可燃空間が時

間的に遭遇する確率

・マッチ・ライターの着火時間・マッチ・石油ライターの使用率・可燃空間の持続時間比率

冷媒が作業者側に

漏洩

・冷媒漏洩発生確率

・作業者側に漏洩する確率

ロウ付け、喫煙以外の

着火源による冷媒へ

の着火(室内機)

冷媒漏洩発生

確率

・バルブ不良、据付時に漏れ

・既設配管利用時に検圧作業不良

・バルブ誤操作

・工事不良(接続不良)

・据付中に破損し冷媒漏れ

着火源存在確率

・可燃空間時間・体積

・時間体積当たりの

着火源存在確率

可燃空間に

バーナーが存在する確率

可燃空間の発生

による冷媒への着火着火源の作動による

冷媒への着火

冷媒漏洩発生確率

・バルブ不良(漏洩あり)、窒素置換、

気密試験、真空引きを実施しない

・エレベータや運搬時に機体を損傷し

ロウ付け時に作業箇所へ漏洩

・窒素置換時に置換気体を(微)燃性冷媒

で実施(ラベル確認せず)

・バーナーと可燃空間の空間的遭遇確率 ・ロウ付け作業中の可燃空間の時間・体積

・バーナーの時間・体積あたりの存在率

対策2

冷媒漏洩検知器

の携行

対策1

作業者への教育

ロウ付け、喫煙以外の

着火源による冷媒へ

の着火(接続配管)

冷媒漏洩発生

確率

着火源存在確率

・バルブ不良、据付時に漏れ

・既設配管利用時に検圧作業不良

・バルブ誤操作

・工事不良(接続不良)

・据付中に破損し冷媒漏れ

・接続配管が室内側(壁面内)にある場合

・可燃空間時間・体積

・時間体積当たりの

着火源存在確率

リスクが最も大きい

47

表 6-2-7 安全対策の内容と効果

対策内容 効果 全体への着火

事故確率への効果

対策 1;サービスマンへの教育

(据付作業時に喫煙をしない,冷媒漏えいに気が付いたら

バーナーを消す)

1/10 約 1/10

対策 2;冷媒漏えい検知器の携行

(作業前,作業中に冷媒漏えいのチェックを実施)

1/10 約 1/7

6.2.6 据付ステージのまとめ

R32冷媒を使用した第二次,第三次のリスクアセスメント値について表 6-2-8~6-2-10にまとめる.

R1234yfおよび R1234ze (E) についての評価条件について表 6-2-11,6-2-12にまとめる.

R1234yfおよび R1234ze(E)についてのリスクアセスメント結果について表 6-2-13~6-2-18にまとめる.

R1234yfおよび R1234ze(E)を使用した場合,リスクアセスメント値は R32対比上昇する.安全対策無しで,

目標のリスク値(1.3×10-8)を超えるケースは,室外機 半地下,第三次の飲食店(床置き)である.これらは,

6.2.5項の R32同様の対策により許容値内となった.

表 6-2-8 第二次チャージレス結果(R32)

第二次チャージレス結果(R32)

室内機

設置モデル能力(HP)

可燃空間 接続配管 未対策 対策

高さ(m)×床面積(m2)

冷媒量(kg) 時空積 時空積リスクアセスメント値

対策リスクアセスメント値

B-1 事務所(天井)事務所

2.7×42.33HP3kg

6.40×10-2 1.81×102 6.59×10-10 不要 ―

B-2 厨房(天井)厨房

2.5×57.26HP4kg

6.97×10-2 2.73×102 6.59×10-10 不要 ―

B-3 カラオケ(天井)カラオケ2.5×9.7

1.5HP2kg

2.62×10-1 4.89×102 6.69×10-10 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

室外機

設置モデル能力(HP)

可燃空間 接続配管 未対策 対策

高さ(m)×床面積(m2)

冷媒量(kg) 時空積 時空積リスクアセスメント値

対策リスクアセスメント値

B-5 地上設置全開放2×50

6HP4kg

2.94×10-2 - 6.72×10-10 不要 ―

B-6 各階設置前面開4×3.6

6HP4kg

6.99×10-2 - 6.89×10-10 不要 ―

B-7 半地下四方閉

3.5×15.346HP4kg

2.08×101 - 4.06×10-9 不要 ―

B-8 狭小地一面部分開放

2×7.56HP4kg

3.24×100 - 1.64×10-9 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策 作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

48

表 6-2-9 第二次最大冷媒量結果(R32)

表 6-2-10第三次最大冷媒量結果(R32)

第二次最大冷媒量結果(R32)

室内機

設置モデル能力(HP)

可燃空間 接続配管 未対策 対策

高さ(m)×床面積(m2)

冷媒量(kg) 時空積 時空積リスクアセスメント値

対策リスクアセスメント値

B-1 事務所(天井)事務所

2.7×42.33HP6kg

1.38×10-1 1.45×103 6.63×10-10 不要 ―

B-2 厨房(天井)厨房

2.5×57.26HP8kg

1.53×10-1 2.18×103 6.64×10-10 不要 ―

B-3 カラオケ(天井)カラオケ2.5×9.7

1.5HP3kg

4.19×10-1 1.65×103 6.77×10-10 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

室外機

設置モデル能力(HP)

可燃空間 接続配管 未対策 対策

高さ(m)×床面積(m2)

冷媒量(kg) 時空積 時空積リスクアセスメント値

対策リスクアセスメント値

B-5 地上設置全開放2×50

6HP8kg

2.80×10-1 - 7.53×10-10 不要 ―

B-6 各階設置前面開4×3.6

6HP8kg

6.64×10-1 - 8.49×10-10 不要 ―

B-7 半地下四方閉

3.54×15.36HP8kg

5.97×103 - 3.60×10-7 要 4.54×10-9

B-8 狭小地一面部分開放

2×7.56HP8kg

9.75×100 - 2.77×10-9 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策 作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

第三次最大冷媒量結果(R32)

室内機

設置モデル能力(HP)

可燃空間 接続配管 未対策 対策

高さ(m)×床面積(m2)

冷媒量(kg) 時空積 時空積リスクアセスメント数値

対策リスクアセスメント数値

3次1 事務所(天井)事務所

2.7×1693×4HP19kg

6.97×10-2 5.76×103 6.61×10-10 不要 ―

3次2 厨房(天井)厨房

2.5×803×4HP19kg

2.70×10-1 1.77×104 6.75×10-10 不要 ―

3次3-1 飲食店(床置)飲食店2.5×14

2HP3kg

3.43×102 9.51×102 1.71×10-8 要 2.30×10-10

3次3-2 工場(床置)工場

3×1003×4HP19kg

2.33×101 1.27×104 2.30×10-9 不要 ―

3次4 事務所(氷蓄熱)氷蓄熱2.7×7.5

6HP9kg

1.71×10-1 3.81×103 6.68×10-10 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

室外機

設置モデル能力(HP)

可燃空間 接続配管 未対策 対策

高さ(m)×床面積(m2)

冷媒量(kg) 時空積 時空積リスクアセスメント数値

対策リスクアセスメント数値

3次5 地上設置全開放2.5×50

12HP19kg

6.39×10-1 - 8.02×10-10 不要 ―

3次6 各階設置前面開4×3.6

12HP19kg

1.52×100 - 1.0×10-9 不要 ―

3次7 半地下四方閉

3.54×15.312HP19kg

5.77×104 - 3.67×10-7 要 5.64×10-9

3次8 狭小設置一面部分開放

2.5×7.512HP19kg

2.29×101 - 5.33×10-9 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策 作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

49

表 6-2-11 R1234yfにおける評価条件

第二次 第三次

空間 馬力,冷媒量/

配管長

空間 馬力,冷媒量/

配管長

室内 天井形

事務所

42.3m2×H2.7m

自然換気

3HP,3kg/30m以下 169m2×H2.7m

自然換気

3×4HP,19kg/120m

3HP,6kg/75m

天井形

厨房

57.2m2×H2.5m

自然換気

6HP,4kg/30m以下 80m2×H2.5m

自然換気

3×4HP,19kg/120m

6HP,8kg/75m

室外 通常(地上)

50m2×H2m

全開放

6HP,4kg 50m2×H2.5m

全開放

12HP,19kg

6HP,8kg

各階

3.6m2×H4m

前面開放

6HP,4kg 3.6m2×H4m

前面開放

12HP,19kg

6HP,8kg

半地下 15.34m2×H3.5m

四方閉

6HP,4kg 15.34m2×H3.5m

四方閉

12HP,19kg

6HP,8kg

狭小 W5m×D1.5m

H2m

一面部分開放

6HP,4kg W5m×D1.5m

H2.5m

一面部分開放

12HP,19kg

6HP,8kg

表 6-2-12 R1234ze(E)における評価条件

第二次 第三次

空間 馬力,冷媒量 空間 馬力,冷媒量

室外 通常(地上)

50m2×H2m

全開放

6HP,4kg 50m2×H2.5m

全開放

12HP,19kg

6HP,8kg

各階

3.6m2×H4m

前面開放

6HP,4kg 3.6m2×H4m

前面開放

12HP,19kg

6HP,8kg

半地下 15.34m2×H3.5m

四方閉

6HP,4kg 15.34m2×H3.5m

四方閉

12HP,19kg

6HP,8kg

狭小 W5m×D1.5m,

H2m

一面部分開放

6HP,4kg W5m×D1.5m,

H2.5m

一面部分開放

12HP,19kg

6HP,8kg

50

室内機

B-1

B-2

B-3

室外機

B-5

B-6

B-7

B-8

対策

第二次最大冷媒量結果(R1234yf)

室内機

B-1

B-2

B-3

室外機

B-5

B-6

B-7

B-8

表 6-

表 6

室内機

B-1 事務所(天井)

B-2 厨房(天井)

B-3 カラオケ(天井)

室外機

B-5 地上設置

B-6 各階設置

B-7 半地下

B-8 狭小地

対策 作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

第二次最大冷媒量結果(R1234yf)

室内機

事務所(天井)

厨房(天井)

カラオケ(天井)

室外機

地上設置

各階設置

半地下

狭小地

-2-13 第二次チャージレス

6-2-14 第二次

可燃空間

時空積

事務所(天井) 6.60×10-2

厨房(天井) 7.69×10

カラオケ(天井) ―

可燃空間

時空積

地上設置 2.06×10-1

各階設置 4.89×10-1

3.32×10

5.54×10

作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

第二次最大冷媒量結果(R1234yf)

可燃空間

時空積

事務所(天井) 1.63×10-1

厨房(天井) 1.85×10-1

カラオケ(天井) ―

可燃空間

時空積

地上設置 4.31×10-1

各階設置 1.02×100

1.83×104

1.30×101

二次チャージレス

第二次最大冷媒量

可燃空間 接続配管

時空積

-2 1.90×102

7.69×102 4.14×102

リスクアセスメント許容値 <1.3×10

可燃空間 接続配管

時空積

-1 -

-1 -

3.32×102 -

5.54×100 -

リスクアセスメント許容値 <1.3×10

冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

接続配管

時空積

-1 1.70×103

-1 2.57×103

リスクアセスメント許容値 <1.3×10

接続配管

時空積

-1 -

0 -

4 -

1 -

リスクアセスメント許容値 <1.3×10

二次チャージレス結果(R1234yf)

最大冷媒量結果(R1234yf)

接続配管 未対策

リスクアセスメント値

2 6.59×10-10

2 6.60×10-10

リスクアセスメント許容値 <1.3×10

接続配管 未対策

リスクアセスメント値

6.91×10-10

7.32×10-10

3.58×10-8

1.88×10-9

リスクアセスメント許容値 <1.3×10

未対策

リスクアセスメント値

6.69×10-10

6.70×10-10

リスクアセスメント許容値 <1.3×10

未対策

リスクアセスメント値

7.68×10-10

8.86×10-10

3.60×10-7

3.10×10-9

リスクアセスメント許容値 <1.3×10

(R1234yf)

(R1234yf)

対策

対策リスクアセスメント値

-10 不要 ―

-10 不要 ―

― ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策

対策リスクアセスメント値

-10 不要 ―

-10 不要 ―

要 5.33×10

不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策

対策リスクアセスメント値

不要 ―

不要 ―

― ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策

対策リスクアセスメント値

不要 ―

不要 ―

要 4.54×10

不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策

リスクアセスメント値

対策

リスクアセスメント値

5.33×10-10

対策

リスクアセスメント値

対策

リスクアセスメント値

4.54×10-9

51

表 6-2-15 第三次最大冷媒量結果(R1234yf)

表 6-2-16 第二次チャージレス結果(R1234ze(E))

第三次最大冷媒量結果(R1234yf)

室内機

可燃空間 接続配管 未対策 対策

時空積 時空積リスクアセスメント数値

対策リスクアセスメント数値

3次1 事務所(天井) 8.17×10-2 6.77×103 6.62×10-10 不要 ―

3次2 厨房(天井) 3.17×10-1 2.08×104 6.78×10-10 不要 ―

3次3-1 飲食店(床置) ― ― ― ― ―

3次3-2 工場(床置) ― ― ― ― ―

3次4 事務所(氷蓄熱) ― ― ― ― ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

室外機

可燃空間 接続配管 未対策 対策

時空積 時空積リスクアセスメント数値

対策リスクアセスメント数値

3次5 地上設置 8.27×10-1 ― 8.30×10-10 不要 ―

3次6 各階設置 1.96×100 ― 1.06×10-9 不要 ―

3次7 半地下 1.31×105 ― 3.67×10-7 要 5.64×10-9

3次8 狭小設置 3.44×101 ― 7.01×10-9 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策 作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

第二次チャージレス結果(R1234ze(E))

室外機

可燃空間 接続配管 未対策 対策

時空積 時空積リスクアセスメント値

対策リスクアセスメント値

B-5 地上設置 1.86×10-1 - 6.89×10-10 ― ―

B-6 各階設置 4.40×10-1 - 7.27×10-10 ― ―

B-7 半地下 1.95×102 - 2.19×10-8 要 3.93×10-10

B-8 狭小地 4.94×100 - 1.82×10-9 ― ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策 作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

52

表 6-2-17 第二次最大冷媒量結果(R1234ze(E))

表 6-2-18 第三次最大冷媒量結果(R1234ze(E))

第二次最大冷媒量結果(R1234ze(E))

室外機

可燃空間 接続配管 未対策 対策

時空積 時空積リスクアセスメント値

対策リスクアセスメント値

B-5 地上設置 3.76×10-1 ― 7.63×10-10 不要 ―

B-6 各階設置 8.91×10-1 ― 8.73×10-10 不要 ―

B-7 半地下 1.76×104 ― 3.60×10-7 要 4.54×10-9

B-8 狭小地 1.23×101 ― 3.03×10-9 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策 作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

第三次最大冷媒量結果(R1234ze(E))

室外機

可燃空間 接続配管 未対策 対策

時空積 時空積リスクアセスメント値

対策リスクアセスメント値

3次5 地上設置 7.21×10-1 ― 8.14×10-10 不要 ―

3次6 各階設置 1.71×100 ― 1.03×10-9 不要 ―

3次7 半地下 1.28×105 ― 3.67×10-7 要 5.64×10-9

3次8 狭小設置 3.09×101 ― 6.50×10-9 不要 ―

リスクアセスメント許容値 <1.3×10-8

対策 作業者への教育冷媒漏洩検知器の携行+作業者への教育

53

6.3 使用(室内)ステージ

使用(室内)ステージでは,店舗用パッケージエアコンの設置ケースとして代表的なものの中からリスク

シナリオを想定して FTA を作成し,着火事故発生確率を算出した。

FTA を作成したリスクシナリオを、表 6-3-1に示す.

表 6-3-1 使用(室内)ステージの想定シナリオ【R32】

室内機からの冷媒漏えい発生確率は,3.3章に示したとおりである.

冷媒漏えい時に発生する可燃空間の体積とその持続時間の積である可燃空間時空積の算出方法は,天井設

置形の室内機については東京大学のシミュレーション結果をもとに冷媒量や対象空間容積の違いを考慮して

算出した.具体的には,(漏れ高さ×床面積の 1/2乗)で冷媒漏れ量を除した値の 3乗に可燃空間時空積が比

例するとして計算した.(4.4.1項参照)

空調機運転時の可燃空間時空積については,停止時の 1/10,000とした.

床置スリム形についてはベースとする冷媒漏えい計算結果が存在しなかったため,濃度解析シミュレーシ

ョンを実施して可燃空間時空積を求めた.

6.3.1 使用(室内)ステージの着火源

使用(室内)ステージでは、想定シナリオ毎に着火源を設定し,FTA に組み込んだ.

想定シナリオ毎の着火源とその存在確率は,表 5-2-1-1~表 5-2-1-4に示したとおりである.

なお着火源の存在確率は対象空間の容積,着火源の数量により変化するため,対象空間の容積,着火源の

数量が変化する場合には存在確率の再計算が必要となる.

6.3.2 使用(室内)ステージの FTA

先にも述べたとおり,使用(室内)ステージでは想定シナリオ毎に評価条件や着火源を設定して FTA に組

み込んでいる.

116

第三次

蓄熱槽分の冷媒が増加

9.0

14.0事務所 50 2.7 1.71×10-1

天井カセット形

(氷蓄熱)

冷媒が下部に滞留着火源が多い3.0

工場 100 3.030.0

2.33×101

天井カセット形

床置スリム形

最大容量機種・最長配管(冷媒量最大)19.0

飲食店厨房

80 2.530.0

2.70×10-1 着火源が多いケース最長配管(冷媒量最大)19.0

10

10

10

114

114

冷媒が下部に滞留冷媒量最大19.0

飲食店客室

14.0 2.54.5

3.43×102 149

18

可燃空間時空積

(m3・min)冷媒量(kg)

7.1

事務所 169 2.730.0

6.97×10-2

7.1

8.73×102

10

2.514.0

1.53×10-1 着火源が多いケース

第一次

事務所 42.3 2.7

室内機形態

天井カセット形

天井カセット形

特徴設置空間

事務所 42.3 2.7 6.40×10-2 代表的な設置ケース

設置場所

3.0

漏えい速度kg/h

10

可燃空間継続時間

(min)

5410

冷房能力(kW)床面積

(m3)高さ(m)

密閉空間(1回あたり3時間利用)3.0

第二次8.0

カラオケルーム

9.7 2.43.6

1.38×10-110

10

2

36

48

90

第一次モデルと同一ケースで最長配管(冷媒量最大)6.0

飲食店厨房

57.2

54

FTA は,大きく二つの部分に分けられる.

着火源の作動を着火トリガーとして,「可燃空間時空積×着火源存在確率」を着火確率として算出する部分

と,燃焼式暖房機やガスコンロのような継続的な裸火が存在している空間に冷媒が漏えいして,可燃空間が

発生することを着火のトリガーとする「着火源(裸火)の時間的遭遇確率×可燃空間の空間的遭遇確率」を着

火確率として算出する部分の二つである.

使用(室内)ステージの各シナリオにおいて,FTA の構成は共通とし,着火源の種類や個数,可燃空間時

空積の値,対象空間の容積,冷媒量等の,着火リスクに影響を与える因子をシナリオに応じて変化させるこ

とにより,各シナリオ間の違いを表現した.

なお,裸火を点ける際のスパークも着火源のひとつとして着火源存在確率を求める必要があると考えられ

るが,裸火の継続時間から求める時間的遭遇確率の方が大きく支配的となるため、裸火を点ける際のスパー

クは裸火の継続時間の一部として評価した。

(a)事務所の FTA 事務所の FTA を図 6-3-2-2,図 6-3-2-3,図 6-3-2-4,表 6-3-2-2,表 6-3-2-3,表 6-3-2-4に示す.

事務所設置のケースは,業務用として使用される店舗用パッケージエアコン,ビル用マルチエアコンでは代

表的な形態である.室内機は天井カセット形とし,ドア下に隙間(自然換気口)のある一般的な事務所を想

定した.

第一次リスクアセスメントでは最も販売台数の多い 7.1kWクラスを選定,冷媒量は現地追加充塡を行わな

い 3kgを想定した.

第二次リスクアセスメントでは,設置条件は第一次と同じとし,冷媒の現地追加充塡を想定した冷媒量 6kg

の条件とした.

第三次リスクアセスメントは、冷媒量が最も多くなる条件を想定し,同一空間に店舗用パッケージエアコ

ンで最大容量となる 30kWクラスを設置し,冷媒も現地で最大量追加充填されたとして 19kgを想定した.室

内機は 7.1kW機種の 4台接続として,冷媒漏えい発生確率を高くなるように設定した.

また第三次リスクアセスメントでは,氷蓄熱システムについても評価を行なった.氷蓄熱システムは室外

機近傍に氷蓄熱槽を有しているが,着火リスクに対する差異としては,同一能力当りの冷媒量が増加する点

のみである.室内設置空間に対する冷媒量比率が厳しくなる為,室内条件に追加した.一般的に事務所・学

校等に納入されているため,室内条件は天井設置形を選定した.店舗用としては 14.0kW が最大であり,最

大配管長時の冷媒量 9kgと設定した.

(b)飲食店厨房の FTA 飲食店厨房の FTA を図 6-3-2-5, 図 6-3-2-6, 表 6-3-2-5,表 6-3-2-6に示す.店舗用パ

ッケージエアコンが設置される物件としては比較的着火源の多い形態であり,着火事故発生確率が高くなる

ことが予想されたため評価対象とした.室内機は天井カセット形とし,対象空間には事務所と同様にドア下

に自然換気口のある条件を想定した.厨房には一般的に設置されていると考えられる換気扇による機械換気

の効果は考慮せず,より厳しい条件での評価とした.

第二次リスクアセスメントで厨房用エアコンとしてのボリュームゾーンである 14kWクラスを選定し,冷

媒の追加充填を考慮した冷媒量 8kgで評価した.

第三次リスクアセスメントでは,冷媒量が最も多くなる 30kWシステムを想定し,最大冷媒量である 19kg

での評価とした.室内機は先に述べた事務所のケースと同様に 7.1kW機種の 4台接続とした.空調機の容量

が大きくなる分室内空間も広く設定し,同時に着火源も増加させて検討した.

(c)カラオケルームの FTA カラオケルームの FTA を図 6-3-2-7,表 6-3-2-7に示す.防音性を確保するためド

ア下の隙間等を設けず密閉空間となるカラオケルームについては,ベースとする冷媒漏えい計算結果が存在

しなかったため,漏えい冷媒が可燃濃度となりえる容積の空間に滞留(室内下部に沈降)したと仮定して可

燃空間時空積を算出した.カラオケルームの 1回の利用時間を 3時間とし,この間密閉空間を維持して漏え

いした冷媒が滞留し続けるという条件で評価している.実際は,室内全体に冷媒が拡散するため可燃空間が

55

存在し続ける可能性は低くなる.また利用者や従業員の出入りにより密閉状態が継続しないと考える方が自

然なため,実使用状態よりも厳しい条件での評価であるといえる.

第二次リスクアセスメントにおいて,カラオケルームの特徴である小部屋に冷媒が漏えいした場合のリス

クアセスメントを行うこととして,店舗用パッケージエアコンの最小容量となる 3.6kW機種を選定した.室

内空間は,3.6kW機種の一般的な設置床面積の下限である約 10m2とし,ここにこのクラスの最大冷媒量 3kg

の冷媒漏えいにより可燃空間が発生することを想定した.

図 6-3-2-1に,評価したカラオケルームのモデルと漏えいした冷媒が室内下部に滞留した場合を仮定した条

件を示す.

今回想定した床面積の場合,3kgの冷媒が高さ 0.46m以下の空間に滞留すると,その空間の冷媒濃度は UFL

を超えるため可燃空間となり得ない.一方、高さが 1.0mを超えると,その空間の冷媒濃度は LFL を下回り,

この場合も可燃空間が生成されない.よって、冷媒が滞留する空間の高さが 0.46m以上 1.0m以下の条件で可

燃空間時空積を求めて着火事故発生確率を算出している.

冷媒漏えい速度は,通常の急速漏れ(10kg/h)では利用者が漏えいに気づき扉を開放する可能性が高いと

考え,緩慢漏れとすることとした.緩慢漏れは 1kg/h以下の漏えい速度を想定しており,全冷媒量 3kgの漏

えいには最低 3時間(=カラオケルーム 1回の利用時間)を要する.冷媒が滞留する空間高さ 1.0m(LFL 側)

では全量が漏えいして初めて可燃空間が生成されることから,本ケースにおいて漏えい速度 1kg/h以下では

可燃域が生成されることなく利用時間が終了することになる.そこで漏えい速度の選定は,1回の利用時間 3

時間の内に LFL 側で可燃域が生成され,かつ利用者が漏えいに気づきにくい(漏えい速度が遅い)という二

点に配慮し,2kg/hとした.

3.3章に示したように,冷媒の漏えい速度により漏えいの発生確率は異なる.漏えい速度が 1kg/hを超える

と急速漏れの冷媒漏えい確率を適用するが,本ケースでは緩慢漏れの発生確率を適用し,より厳しい条件で

の評価としている.

このように,カラオケルームモデルでの漏えい冷媒は室内下方に滞留すると仮定して評価を行なったが,

一方着火源としてはカラオケルーム内の全ての空間に存在する着火源を取り上げることとし,更に厳しい条

件として評価を行なった.

可燃空間時空積の計算結果を表 6-3-2-1に示す.

図 6-3-2-1 カラオケルームモデルとカラオケルームの冷媒滞留仮定条件【R32】

56

表 6-3-2-1 可燃空間時空積 算出結果【R32】

可燃濃度

限界高さ

滞留高さ 床面積 高さ 【R32】冷媒量 漏えい速度 可燃空間

継続時間 可燃空間時空積(停止時)

m m2 m kg kg/h min m3・min

h1:UFL 0.46 9.7 2.4 3 2

138 6.16 x 102

h2:LFL 1.0 9.7 90 8.73 x 102

(d)飲食店客室の FTA 飲食店客室の FTA を図 6-3-2-8, 図 6-3-2-9, 表 6-3-2-8,表 6-3-2-9に示す.飲食店客

室は漏えいした冷媒が下部に溜まりやすい床置きスリム形が設置されるケースが多く,比較的狭い空間であ

る上に事務所等に比べて着火源が多くなる傾向にあることから,リスクシナリオに選定した.室内空間容積

が最も小さくなる 4.5kW機種を選定し,ドア下の隙間からの自然換気有りの条件を想定した.また飲食店厨

房と同様に,一般的に設置されていると考えられる換気扇による機械換気は考慮しない条件とした.

(e)工場の FTA 工場の FTA を図 6-3-2-10,表 6-3-2-10に示す.床置きスリム形が使用される頻度が高いと考

えられる設置ケースのうち,最大冷媒量となる 30kWシステムが設置される大空間として工場を想定した.

また工場では事務所や飲食店とは異なる着火源の存在が想定されたため,リスクシナリオに選定した.

57

6.3.3 使用(室内)ステージの安全対策

店舗用パッケージエアコンの設置ケースとして代表的なものの中からリスクシナリオを想定して FTAを作

成し,着火事故発生確率を算出した.

その結果,飲食店客室に床置きスリム形室内機を設置したケースにおいて許容レベルを満足しない結果と

なった.床置きスリム形室内機では,冷媒が漏えいした場合に室内空間下部に滞留し易く,また着火源が比

較的多いことが原因と考えられる.

安全対策として,「室内機下部に冷媒漏えいセンサーを備え,漏えい検知した場合に強制送風運転する」の

適用が効果的であることを確認した.

表 6-3-3-1 使用(室内)ステージの安全対策の内容と効果【R32】

6.3.4 使用(室内)ステージのまとめ

使用(室内)ステージについて、前述のとおり評価した結果を表 6-3-4-1にまとめる.

第三次の飲食店客室において着火確率が許容レベルを上回る結果となったが,安全対策を適用することで

着火事故発生確率を許容レベル以下に低減できることを確認した.

表 6-3-4-1 使用(室内)ステージのまとめ【R32】

第二次

第一次天井

カセット形事務所 42.3 2.7

室内機形態

設置場所設置空間 冷房能力

(kW)

7.16.40×10-2 3.37×10-12 -

3.0

安全対策床面積

(m2)高さ(m)

冷媒量(kg)

可燃空間時空積

(m3・min)

-6.0

飲食店厨房

57.2 2.514.0

1.53×10-1天井カセット形

事務所 42.3 2.77.1

8.0カラオケルーム

9.7 2.43.6

8.73×102 8.71×10-11

1.38×10-1 4.20×10-12

2.530.0

2.70×10-1 7.97×10-11

-3.0

天井カセット形

事務所 169 2.730.0

6.97×10-2

着火確率

[≦1.3×10-9

]

未対策 対策有

1.71×10-1 3.62×10-12 -

9.0

不要

不要

不要

不要

19.0

14.0

30.02.33×101 1.05×10-9 -

-19.0

7.61×10-13 -19.0

1.03×10-10 -

3.0第三次 床置

スリム形

漏えいセンサー検知時室内ファン強制ON

(最小風量10m3/min

  かつ 最小風速1.0m/s)

飲食店客室

14.0 2.5 3.43×102 9.39×10-9 1.00×10-12

4.5

不要

不要

不要

不要天井

カセット形(氷蓄熱)

事務所 50 2.7

工場 100 3.0

飲食店厨房

80

飲食店客室

14.0 2.5 3.0 9.39×10-9 1.00×10-12

漏えいセンサー検知時室内ファン強制ON

(最小風量10m3/min

  かつ 最小風速1.0m/s)

床置スリム形

室内機形態

設置場所設置空間

冷媒量(kg)

着火確率

[≦1.3×10-9] 安全対策床面積

(m2)高さ(m)

未対策 対策有

58

6.4 使用(室外)ステージ

使用(室外)ステージでは,店舗用パッケージエアコンの設置ケースとして代表的なものの中からリスク

シナリオを想定してFTAを作成し,着火事故発生確率を算出した.

設置場所と機器の能力ランク(冷媒量)をパラメータとし,表 6-4-1に示す設置ケースについてFTAを作

成した.設置場所としては,代表的な「地上設置」および「各階設置」,「半地下設置」,「狭小設置」とし,

機器としては代表的な「冷房能力:14kW以下」と店舗用として最大クラスの「冷房能力:30kW」とした.

表 6-4-1 使用(室外)ステージの設置ケース【R32】

設置場所 設置

環境

設置空間

冷媒量 漏えい

速度 漏えい

箇所

可燃空間

時空積

(停止時) 特徴

面積 高さ

m2 m kg kg/h m3・min

第一次 地上設置 四面開放 50 2 4 75 熱交換器

全体

1.40 x

10-1

代表的なケース

(冷房能力:14kW

以下)

第二次

地上設置 四面開放 50 2

8 75 熱交換器

全体

2.80 x

10-1

第一次モデルの

長配管仕様

各階設置 3 面閉塞

1 面開放 3.6 4

6.64 x

10-1 第一次モデル(冷

房能力:14kW以

下)の設置場所違

いかつ長配管仕様

半地下

設置

四面閉塞

上部開放 15.34 3.5

5.97 x

103

狭小設置

1 面部分

開放

(0.3m)

7.5 2 9.75 x

100

第三次

地上設置 四面開放 50 2.5

19 75 熱交換器

全体

6.39 x

10-1

冷房能力:14kW超

30kW以下で長配

仕様(冷媒量最大)

各階設置 3 面閉塞

1 面開放 3.6 4

1.52 x

100

半地下

設置

四面閉塞

上部開放 15.34 3.5

5.77 x

104

狭小設置

1 面部分

開放

(0.3m)

7.5 2.5 2.29 x

101

室外機からの冷媒漏えい発生確率は,3.3章に示した「急速漏れ:1.34×10-3」および「噴出漏れ:1.37×10-4」

を加算して 1.477×10-3とした.

可燃空間時空積については,濃度解析シミュレーションを実施して可燃空間時空積を求めた.各階設置に

ついては地上設置のシミュレーション結果をもとに対象空間の違いを考慮して算出した.

空調機運転時の可燃空間時空積については,停止時の 1/10,000とした.

6.4.1 使用(室外)ステージの着火源

使用(室外)ステージでは,店舗用パッケージエアコンの代表的設置ケースである「地上設置」「各階設置」

59

「半地下設置」「狭小設置」について,着火源とその存在確率を設定し,FTAに組み込んだ.

各設置ケースの着火源とその存在確率は,表 5-2-5に示したとおりである。

なお着火源の存在確率は対象空間の容積,着火源の数量により変化するため,対象空間の容積,着火源の

数量が変化する場合には存在確率の再計算が必要となる.

6.4.2 使用(室外)ステージのFTA

先にも述べたとおり,使用(室外)ステージでは設置ケース毎に着火源存在確率を設定してFTAに組み

込んでいる.

FTAは,大きく二つの部分に分けられる.

着火源の作動を着火トリガーとして,「可燃空間時空積×着火源存在確率」を着火確率として算出する部分

と,石油・ガス給湯器のような継続的な裸火が存在している空間に冷媒が漏えいして,可燃空間が発生する

ことを着火のトリガーとする「着火源(裸火)の時間的遭遇確率×可燃空間の空間的遭遇確率」を着火確率と

して算出する部分の二つである.

使用(室外)ステージの各設置ケースにおいて,FTAの構成は共通とし,着火源存在確率,可燃空間時

空積の値,対象空間の容積,冷媒量等の着火事故発生確率に影響を与える因子の値を設置ケースに応じて変

えることにより,各設置ケースの違いを表現した.

また対象冷媒は,R32,R1234yf,R1234ze(E)の3冷媒種とし,FTAの構成は共通で,それぞれの冷媒の

可燃空間時空積の値を用いてFTAを作成した.

(a)地上設置の FTA 地上設置のFTAを図 6-4-7に示す.地上設置のケースは,業務用として使用される店

舗用パッケージエアコン,ビル用マルチエアコンでは代表的なケースである.設置場所には,4方に障壁が

なく,漏えい冷媒が滞留しない一般的な設置であり,室外機は横吹きタイプとした.

第一次リスクアセスメントでは、販売ボリュームゾーンである冷房能力:14kW以下の機器で、店舗用 PAC

では約 80%の設置がチャージレスなので、現地追加冷媒は無しのケース(冷媒量:4kg)を想定した.

第二次リスクアセスメントは,第一次RAに対し,現地での冷媒最大量追加充填を想定した,冷媒量:8

kgの条件とした.

第三次リスクアセスメントは,冷媒量が最も多くなる条件を想定し,店舗用パッケージエアコンで最大容

量となる冷房能力:30kWクラスとし、冷媒も現地で最大量追加充填されたとして 19kgを想定した.

(b)各階設置の FTA 各階設置のFTAを図 6-4-8に示す.各階設置のケースは代表的なベランダ設置を想定

し,背面,両側面側の3面閉塞、吹出し側の前面側はガラリ等が設置されていることを想定し開放とした.

第二次リスクアセスメントは,冷房能力:14kW以下の機器で,現地での冷媒最大量追加充填を想定した,

冷媒量:8kgの条件とした.

第三次リスクアセスメントは,冷媒量が最も多くなる条件を想定し,店舗用パッケージエアコンで最大容

量となる冷房能力:30kWクラスとし、冷媒も現地で最大量追加充填されたとして 19kgを想定した.

(c)半地下設置の FTA 半地下設置のFTAを図 6-4-9に示す.半地下設置のケースは,四面閉塞で上部開放

とし、漏えい冷媒が滞留しやすく,着火リスクは最も高くなるが、設置としては稀なケースである.着火事

故発生確率が許容レベルを上回る結果となったため、「冷媒漏えい検知時に室外ファンを作動する」という対

策を織り込んだFTAを作成した。対策ケースを図 6-4-10に示す.この際,室外ファンの故障率についても

加味している.

第二次リスクアセスメントは,冷房能力:14kW以下の機器で,現地での冷媒最大量追加充填を想定した,

冷媒量:8kgの条件とした.

第三次リスクアセスメントは,冷媒量が最も多くなる条件を想定し,店舗用パッケージエアコンで最大容

量となる冷房能力:30kWクラスとし、冷媒も現地で最大量追加充填されたとして 19kgを想定した.

60

(d)狭小設置の FTA 狭小設置のFTAを図 6-4-11および図 6-4-11に示す.狭小設置のケースは店舗用PAC

特有の設置条件である.雑居ビルの路地隙間に横吹き室外機が設置され,左右に障害物があり換気し難い設

置環境を想定した.室外機の前後2面は閉鎖,左右の片側一面も閉鎖,左右の反対側1面のみ僅かに通路が

確保されている条件とした.1面開口寸法として人が通れる寸法の 0.3mと 0.6mnの2条件を想定した.

モデルケースを図 6-4-1に示す.

第二次リスクアセスメントは,冷房能力:14kW以下の機器で,現地での冷媒最大量追加充填を想定した,

冷媒量:8kgの条件とした.

第三次リスクアセスメントは,冷媒量が最も多くなる条件を想定し,店舗用パッケージエアコンで最大容

量となる冷房能力:30kWクラスとし、冷媒も現地で最大量追加充填されたとして 19kgを想定した.

室外機障害

障害

建物

建物

図 6-4-1 室外狭小設置のモデルケース

6.4.3 使用(室外)ステージの安全対策

室外の「半地下設置」「狭小設置」において,一部許容レベルを満足しない結果となったため,支配的なリ

スク要因を整理し,実現性の高い安全対策を選定しリスクを許容レベル以下に低減させた.

冷媒種による差は,高湿度条件では,若干 R1234yf及び R1234ze(E)のほうが R32よりも可燃空間時空積が

大きくなり,着火事故発生確率が上昇したが,同様の安全対策を講じることにより,許容できるレベルに低

減できた.

(a)半地下設置の安全対策 半地下設置の安全対策を表 6-4-2にまとめた.半地下設置の使用時は,滞留する

高濃度の漏洩冷媒を除去するために,「機器の強制送風攪拌運転」が有効な安全対策となった.

半地下高さについては,自然風の発生頻度等を考慮すると,1.2m以下であれば可燃域はほとんど発生しな

いため,冷媒量規制は設けない.1.2m超の場合は,M/A≦1/2×LFL×熱交上端高さの冷媒量規制をする.店舗

用PAC室外機は横吹き筐体であることから,熱交上端高さは製品高さでも構わない.ビルマルチSWGに

て解析した結果を図 6-4-2,3に示す.

店舗用PACは横吹き筐体のため,冷媒を半地下外に放出するためには,水平方向に風を壁に当てて冷媒

を半地下高さまで持ち上げる必要があり,「最少風速」「壁と室外機(吹出側)との最大距離」「半地下高さ」

を規制することとした.

「壁と室外機(吹出側)との最大距離」を規定しない場合,熱交換器周辺に可燃域を生成する結果となっ

た.解析結果を表 6-4-3(上段)および図 6-4-4に示す.

安全対策として「壁と室外機(吹出側)との最大距離:3m以下」「半地下高さ:2m以下」を規定した場

合,可燃域は生成されない結果となった.解析結果を表 6-4-3(下段)および図 6-4-5に示す.

0.3 and 0.6 (m)

61

表 6-4-2 半地下設置時に必要とされる安全対策

店舗用PAC ビル用マルチ

冷媒量 M≦1/2×LFL×熱

交上端高さ×A

M>1/2×LFL×

熱交上端高さ×A

M≦1/2×LFL×

熱交上端高さ×A

M>1/2×LFL×

熱交上端高さ×A

半地下高さ

1.2m以下 不要 不要 不要 不要

半地下高さ

1.2m超

2m以下

不要

①冷媒漏えいセンサー検知時に横吹

室外ファン強制 ON (最小風速:

4m/s かつ 室外機吹出側から壁

面までの距離:3m以下)

または,②局所強制排気装置

不要

冷漏洩えいセンサー検知

時に上吹室外ファン強制

ON

(最小風速:1m/s)

半地下高さ

2m超

3.3m以下

不要 ・局所強制排気装置 不要

冷漏洩えいセンサー検知

時に上吹室外ファン強制

ON

(最小風速:1m/s)

半地下高さ

3.3m超 不要 設置禁止 不要 設置禁止

図 6-4-2 漏洩高さ規定(ビルマルチSWG解析結果より)

62

図 6-4-3 熱交上端高さと漏洩相当高さ規定(ビルマルチSWG解析結果より)

表 6-4-3 可燃空間時空積 算出結果【R32】

設置環境 床面積 高さ 冷媒量 漏洩速度 漏洩箇所 可燃空間

持続時間

可燃空間時空積

(停止時)

- m2 m kg kg/h - min m3・min

・壁との距離 8m

・風速 3.7m/s 15.34 3.5 19 75 熱交換器全体 15.2 1.08 x 100

・壁との距離 3m

・風速 3.7m/s 15.34 2.0 19 75 熱交換器全体 0 0.00 x 100

図 6-4-4 「壁と室外機(吹出側)との最大距離:8m」「半地下高さ:3.5m」の場合

63

図 6-4-5 「壁と室外機(吹出側)との最大距離:3m以下」「半地下高さ:2m以下」の場合

(b)狭小設置の安全対策 狭小設置に対しては,「最低 1面 0.6mの人がアクセスできる通路を確保」すれば許

容レベル以下となることがわかった.安全対策ケースを図 6-4-6に示す.

室外機障害

障害

建物

建物

図 6-4-6 室外狭小設置の安全対策ケース

6.4.4 使用(室外)ステージのまとめ

使用(室外)ステージについて,前述のとおり評価した結果を表 6-4-4に示す.

半地下設置および狭小設置において着火事故発生確率が許容レベルを上回る結果となったが,安全対策を

適用することで着火事故発生確率を許容レベル以下に低減できることを確認した.

表 6-4-4 使用(室外)ステージのまとめ【R32】

設置場所 設置

環境

設置空間

冷媒量

可燃空間時

空積

(停止時)

着火確率

[≦1.3×10-9] 安全対策概略 床

面積 高さ

m2 m kg m3・min 未対策 対策

第一次 地上設置 四面開放 50 2 4 1.40 x 10-1 6.35x10-11 不要 -

第二次

地上設置 四面開放 50 2

8

2.80 x 10-1 3.13x10-10 不要

- 各階設置

3 面閉塞

1 面開放 3.6 4 6.64 x 10-1 5.79x10-10 不要

半地下

設置

四面閉塞

上部開放 15.34 3.5 5.97 x 103 7.14x10-7 1.68x10-10

機器の強制送風

撹拌運転

狭小設置 1 面部分

開放 7.5 2 9.75 x 100 5.96x10-9 5.77x10-10

最低1面 0.6mの人

がアクセスできる

通路を確保

第三次

地上設置 四面開放 50 2.5

19

6.39 x 10-1 2.61x10-10 不要

- 各階設置

3 面閉塞

1 面開放 3.6 4 1.52 x 100 6.15x10-10 不要

半地下

設置

四面閉塞

上部開放 15.34 3.5 5.77 x 104 4.65x10-6 1.14x10-9

機器の強制送風

撹拌運転

狭小設置 1 面部分

開放 7.5 2.5 2.29 x 101 8.49x10-9 3.97x10-10

最低1面 0.6mの人

がアクセスできる

通路を確保

0.6 (m)以上

64

6.5 修理ステージ

修理,サービス時のリスクとして,室外機,室内機,配管(天井裏)についてそれぞれ FTA を作成し,

着火事故発生確率を算出した.室外機の FTA を基本形とし,室内機で発生し得ない事象については,確率

数値を「0」とした.室内機と室外機を接続する配管については,天井裏での作業にシナリオを限定し FTA

を作成した.修理ステージで想定した主な条件を表 6-5-1 に示す.これらの数値は,製品の設置場所や能力

によるものではないため,同じ値を使用している.

表 6-5-1 修理ステージで想定した主な条件

想定条件 理由(内訳)

修理作業時間 2 時間 [圧縮機交換を想定]

冷媒回収(30 分),部品交換(20 分)

真空引き(30 分),冷媒充塡(10 分)

試運転(30 分)

ロウ付け作業時間 8 分 [圧縮機交換を想定]

・ロウ付け時間:2 分

・ロウ付け箇所:2 ヶ所(吐出管,吸入管)

⇒ ロウ付け回数:4 回(取外し,取付け)

ロウ付け時の作業空間 1m3 [着火したバーナーを取り回す範囲]

高さ:2m,幅:1m,奥行:0.5m

可燃空間時空積については,室内,室外ともに使用ステージと共通の数値を用いているが,可燃空間の持

続時間が修理作業時間の 2 時間を超える場合は、漏えい開始から修理作業時間である 2 時間までの可燃空間

時空積を求めて用いた.

6.5.1 修理時の着火源

修理時の着火源として下記①~④を想定し,FTA に組み込む際に前提とした条件を記載した.室外機・室

内機・配管(天井裏)でそれぞれ対応する着火源を FTA に組み込んだ.室内・室外によらずロウ付け作業

を行うことがあるため,どちらもバーナーが着火源と成り得る.天井裏のロウ付け作業については,作業前

にはサービスマンが点検口を開けるため,事前に天井裏で可燃濃度が発生していてもロウ付け作業前には

LFL 以下に濃度低下すると考え,天井裏でのロウ付け作業に限り着火源 ON がトリガーとなるケースは存在

しないと考えた.また,サービスマンが作業中に客先の室内で喫煙することはないと考え,室内側ではサー

ビスマンの喫煙を着火源から除外している.(FTA では喫煙の項を「0」としている)

①ロウ付けバーナー

アセチレンバーナーを使用している想定とした.

②サービスマンの喫煙

サービスマンの多くが男性であることを想定し「成人男性の喫煙率」と,基本的にサービス現場で喫

煙することは訓練で禁止されていることから「サービスマンが訓練を無視する確率」を掛け合わせて

算出している.

③天井裏の電気スパーク

存在確率の算出方法は使用ステージ(室内)と同様だが,空間体積を天井裏(2.7m x 2.7m x 0.8m)に

置き換えた.

65

④ロウ付けバーナー,サービスマンの喫煙以外

サービス作業とは関係のない着火源については,使用ステージ(室内,室外)の着火源存在確率と同

様の値とした.

リスク評価を進める中で,特にロウ付けバーナーによる冷媒への着火リスクが支配的であることがわかっ

てきたため,シナリオを細分化して確率を算出することでリスク評価の精度を上げた.

6.5.2 修理時の冷媒漏えいパターン

修理時に起こり得る冷媒漏えいパターンを表 6-5-2 に示す.冷媒漏えいの確率を算出するために,冷媒漏

えいに至った原因別にシナリオを分けて考えた.大きな分類では,修理作業を行うことで冷媒漏えいしたケ

ースと,修理作業とは関係のない要因で冷媒漏えいしたケースに分けた.更に,修理作業の中でもロウ付け

バーナーによる着火リスクが高いことから「ロウ付け作業による冷媒漏えい」と「ロウ付け以外の作業によ

る冷媒漏えい」に分けて考えた.それぞれのケースで冷媒漏えい確率を算出し,FTA では対応する着火源と

の遭遇確率と掛け合わせることで冷媒への着火確率を算出した.

表 6-5-2 修理時に起こり得る冷媒漏えいパターン

冷媒漏えいの要因 内容

修理作業に伴う冷媒漏えい ロウ付け作業 冷媒回路内に冷媒が残存したままロウ

付け作業することで漏えい

ロウ付け作業以外

・冷媒充塡

・冷媒回収

・冷媒放出

バルブ誤操作や故障,ホースの接続ミス

などによる冷媒漏えい

修理作業に伴わない冷媒漏えい 通常使用している中で発生する

冷媒漏えい(他ステージと同様)

6.5.3 室外機の FTA

室外機の FTA を図 6-5-1 に示す.図内の各数値は「R32 冷媒,室外地上設置,冷房能力 14kW での最大冷

媒量 8kg」の条件で算出した確率を示した.

修理時の主な着火源として「ロウ付けバーナー」と「サービスマンの喫煙(マッチ,ライター)」を取り上

げ,それぞれのシナリオを FTA に組み込んだ.特にロウ付けバーナーによる冷媒への着火が支配的であっ

たため,シナリオを細分化してそれぞれの確率を算出している.具体的には,冷媒漏えいする場所がロウ付

けしている場所か,または別の場所かによって,バーナーと遭遇する確率が異なるため,FTA 上で区別して

確率を算出した.想定する冷媒漏えい速度についても,各シナリオに合わせて設定しており,ロウ付けして

いる場所から漏えいする場合は,急激に漏れることが考えられるため,漏えい速度は「噴出漏れ(75kg/h)」

を想定している.一方,別の場所から漏えいしてきた場合は,サービスマンが気付かない程度の漏えいであ

ることから,「緩慢漏れ(1kg/h)」を確率数値に反映させている.

66

修理・サービス作業中の冷媒への着火

年間サービス率

ロウ付けバーナーに

よる冷媒への着火

サービスマンの喫煙

による冷媒への着火

バーナー、喫煙以外の

着火源による冷媒への着火

冷媒が

サービスマン側へ漏洩冷媒漏洩

発生確率

バーナー、喫煙以外

の着火源が可燃空間に存在

・サービス中の喫煙時間率

・マッチ・ライターの着火時間

・マッチ・石油ライターの使用率

・可燃空間の持続時間比率

着火源と可燃空間が

時間的に遭遇する確率

・サービスマンの喫煙率

・サービスマンが禁煙を無視

ロウ付け作業を伴う

サービス比率サービス作業で

漏洩した冷媒への着火

サービス作業以外で

漏洩した冷媒への着火

ロウ付け作業による

冷媒漏洩発生確率可燃空間に

バーナーが存在

ロウ付けしている場所から

漏洩した冷媒への着火ロウ付けしている場所以外から

漏洩した冷媒への着火

・バーナーと可燃空間の

空間的遭遇確率 (噴出漏れ想定)

サービス作業以外

での冷媒漏洩

可燃空間に

バーナーが存在

1.0x10-1

可燃空間の発生による

冷媒への着火

可燃空間が発生している場所での

バーナー点火による冷媒への着火

・ロウ付け作業中の可燃空間の時間・体積

・バーナーの時間・体積あたりの存在確率

・サービスマンが漏洩に気付かない確率

・バーナーと可燃空間の

空間的遭遇確率 (緩慢漏れ想定)

・サービスマンが漏洩に気付かない確率

着火源の作動による

冷媒への着火

可燃空間の発生による

冷媒への着火

着火源の作動による

冷媒への着火

5.57x10-10

・冷媒回路内に冷媒が残存している確率

(回収忘れ、回収不十分)

・冷媒残存に気付かない確率

・冷媒漏洩発生確率

・サービスマン側に

漏洩する確率

5.1x10-9 1.4x10-11 4.0x10-10

6.1x10-76.7x10-3 3.3x10-3 1.2x10-3 2.9x10-7

4.2x10-21.2x10-7 3.2x10-10

3.4x10-7 9.5x10-4

6.1x10-43.0x10-5

2.9x10-5 9.2x10-4

4.3x10-96.1x10-4

5.7x10-4 4.5x10-5 4.3x10-9

図 6-5-1 修理ステージの FTA

6.5.4 室内機の FTA

FTA の構成は室外側と同様であるが,室内側で実施することのない作業(冷媒充塡,冷媒回収など)に関

するリスク,及びサービスマンが室内で喫煙することについては,確率数値を「0」として算出した.従っ

て,サービス作業に伴うリスクや,喫煙によるリスクは室外側よりも低くなるが,可燃空間時空積の影響が

室外側よりも大きくなる.

67

6.5.5 配管(天井裏)の FTA

天井裏でのサービス作業について,リスクが高いと思われる接続配管の修理作業や,室内機の交換作業

に着目し,着火確率を算出した.漏えいした冷媒の状態としては,天井裏の床面に滞留していることを想

定しているが,実際の天井裏での作業では点検口が開いており,漏えいした冷媒のほとんどが点検口から

流出するため,可燃濃度になる確率は更に低いと考えられる.

室外機の FTA と比較して,着火源とシナリオが限定されていることから,各事象の確率を厳しめに設定

しても最終的な着火確率は許容レベル以下となった.

6.5.6 安全対策

各 FTA から,着火事故確率に対して支配的な着火源は,ロウ付けバーナーであることがわかった.従っ

て,作業中のロウ付けバーナーの取り扱いに関して対策を施すことが,リスクの低減に最も効果的である.

これらを踏まえ,対策内容と効果を表 6-5-3 に示す.

表 6-5-3 安全対策の内容と効果

対策内容 効果 全体の着火事故確率

への効果

①サービスマンへの教育

(冷媒漏えいに気付いたら直ちにバーナーを消す) 1/10 1/10

②冷媒漏えい検知器の携行

(作業前,作業中に冷媒漏えいのチェックを実施) 1/10 1/2~1/3

6.5.7 まとめ

R32,R1234yf および R1234ze(E)の冷媒について,同じ条件でそれぞれ FTA を作成した.FTA の構成は 3

冷媒とも共通で,可燃空間時空積の値に冷媒種それぞれの値を用いた.各冷媒における着火事故確率を表

6-5-4 に示す.

図 6-5-2~図 6-5-21にR32におけるFTAを示し,表 6-5-5~表 6-5-11に数値割付表を示す.図 6-5-22~6-5-39

に R1234yf における FTA を示し,表 6-5-12~表 6-5-17 に数値割付表を示す.図 6-5-40~6-5-48 に R1234ze(E)

における FTA を示し,表 6-5-18~表 6-5-20 に数値割付表を示す.

R32 に対して,R1234yf および R1234ze(E)の可燃空間時空積の値が大きくなる分だけ,着火事故発生確

率は若干大きくなったが,安全対策が必要な条件,およびその内容は,3 冷媒とも同様であることが確認で

きた.

68

表 6-5-4 着火事故発生確率と対策要否

設置モデル能力(HP)

高さ(m) x 冷媒量

床面積(m2) (kg)

1 . 天井 事務所 3HP 時空積 6.40E-02 6.25E-02

自然換気 2.7x42.3 3kg 着火確率 1.19E-10 1.16E-10

2. 天井 厨房 6HP 時空積 6.97E-02 7.33E-02

自然換気 2.5x57.2 4kg 着火確率 2.46E-10 2.59E-10

3. 天井 カラオケ 1.5HP 時空積 2.62E-01

(換気無) 2.5x9.7 2kg 着火確率 1.04E-09

全開放 6HP 時空積 2.94E-02 2.06E-01 1.86E-01

2x50 4kg 着火確率 2.23E-10 1.59E-09 1.43E-09

前面開 6HP 時空積 6.99E-02 4.89E-01 4.40E-01

4x3.6 4kg 着火確率 5.61E-10 3.99E-09 3.59E-09

四方閉 6HP 時空積 2.08E+01 ← 3.32E+02 ← 1.95E+02 ←

3.5x15.34 4kg 着火確率 1.60E-08 2.06E-10 8.38E-08 1.18E-09 6.80E-08 9.48E-10

四方閉 6HP 時空積 3.24E+00 ← 5.54E+00 ← 4.94E+00 ←

2x7.5 4kg 着火確率 1.73E-08 3.12E-10 2.53E-08 4.45E-10 2.29E-08 4.13E-10

1. 天井 事務所 3HP 時空積 1.38E-01 1.57E-01

自然換気 2.7x42.3 6kg 着火確率 1.21E-10 1.26E-10

2. 天井 厨房 6HP 時空積 1.53E-01 1.80E-01

自然換気 2.5x57.2 8kg 着火確率 2.65E-10 3.03E-10

3. 天井 カラオケ 1.5HP 時空積 4.19E-01

(換気無) 2.5x9.7 3kg 着火確率 1.04E-09

全開放 6HP 時空積 2.80E-01 4.31E-01 3.76E-01

2x50 8kg 着火確率 5.57E-10 1.59E-09 1.43E-09

前面開 6HP 時空積 6.64E-01 1.02E+00 8.91E-01

4x3.6 8kg 着火確率 1.47E-09 4.00E-09 3.59E-09

時空積 5.97E+03 1.83E+04 1.76E+04

(120分) (1.70E+03) (2.02E+03) (1.97E+03)

3.5x15.34 8kg 着火確率 1.12E-07 2.33E-09 1.61E-07 3.07E-09 1.55E-07 2.98E-09

四方閉 6HP 時空積 9.75E+00 ← 1.30E+01 ← 1.23E+01 ←

2x7.5 8kg 着火確率 1.84E-08 4.21E-10 2.63E-08 5.57E-10 2.39E-08 5.17E-10

1. 天井 事務所 3x4HP 時空積 6.97E-02 8.10E-02

自然換気 2.7x169 19kg 着火確率 4.82E-12 5.61E-12

2. 天井 厨房 3x4HP 時空積 2.70E-01 3.14E-01

自然換気 2.5x80 19kg 着火確率 1.65E-10 1.93E-10

飲食店 2HP 時空積 3.43E+02 ←

2.5x14 3kg 着火確率 9.28E-08 2.81E-09

工場 3x4HP 時空積 2.33E+01

3x100 19kg 着火確率 3.11E-09

事務所 6HP 時空積 1.71E-01

2.7.x50 9kg 着火確率 4.10E-11

全開放 12HP 時空積 6.39E-01 8.27E-01 7.21E-01

2.5.x50 19kg 着火確率 5.53E-10 1.57E-09 1.42E-09

前面開 12HP 時空積 1.52E+00 1.96E+00 1.71E+00

4x3.6 19kg 着火確率 1.48E-09 3.94E-09 3.55E-09

時空積 5.77E+04 1.31E+05 1.28E+05

(120分) (9.00E+02) (1.23E+03) (1.23E+03)

3.5x15.34 19kg 着火確率 1.18E-07 2.93E-09 1.71E-07 4.11E-09 1.66E-07 4.06E-09

隙間0.3 12HP 時空積 2.29E+01 ← 3.44E+01 ← 3.09E+01 ←

2.5x7.5 19kg 着火確率 1.91E-08 4.95E-10 2.74E-08 6.72E-10 2.49E-08 6.09E-10

30.8m3 12HP 時空積 1.20E+01

6.2x6.2x0.8 19kg 着火確率 3.65E-14

冷媒 R32 R1234yf R1234ze(E)

FTA作成の設置ケース

対策有無

未対策対策

①作業者への教育

②冷媒センサの携行

未対策対策

①作業者への教育

②冷媒センサの携行

未対策対策

①作業者への教育

②冷媒センサの携行

2次チャージレス

室内

(不要) (不要) -

(不要) (不要)

(不要) (不要)

7. 半地下

8. 狭小地

2次Maxチャージ

室内

(不要) (不要) -

-

(不要) - -

室外

5. 地上 (不要) (不要) (不要)

6. 各階

(不要) (不要)

(不要) (不要) -

(不要) - -

(不要)

四方閉 6HP ← ← ←

8. 狭小地

室外

5. 地上 (不要) (不要) (不要)

6. 各階 (不要)

7. 半地下

-

(不要) - -

4. 氷蓄熱  用室内

(不要) - -

3次

室内

(不要) (不要) -

(不要) (不要) -

3. 床置き自然換気

-

(不要) (不要)

配管 9. 天井裏 (不要) - -

四方閉 12HP ← ← ←

8. 狭小空間

室外

5. 地上 (不要) (不要) (不要)

6. 各階 (不要)

7. 半地下

69

6.6 廃棄ステージ

廃棄ステージを,その流れに沿って,撤去,運搬,保管,解体に分けて,それぞれ FTA を作成した.対象

冷媒を R32,R1234yf,R1234ze(E)の 3冷媒種とし,FTA の構成は共通で,可燃空間の時間体積の値に冷媒種

それぞれの値を用いて FTA を作成した.

撤去は,室内,天井裏,室外の 3つの空間に分けて,撤去作業に対してそれぞれ FTA を作成した.

運搬は,撤去した製品を設置場所から一次保管場所(撤去業者の倉庫)への小型車両での運搬に対して FTA

を作成した.小型車両として,運転席と荷台が同一空間にあるワゴン車を対象にした.

保管は,一次保管場所となる撤去業者の倉庫での撤去した製品の保管に対して FTA を作成した.倉庫とし

て,冷媒漏えい時に容易に可燃空間を生成しやすい狭小倉庫を対象とした.

解体は,産業廃棄物処理業者における冷媒回収後の分解作業に対して FTA を作成した.

6.6.1 撤去 FTA

製品の撤去作業は,一般的に以下の手順で行われる.この撤去作業に掛かる時間を 1時間とした.

① 液管側閉止弁を閉じ,ポンプダウン運転にて室外機へ冷媒を回収し,ガス管側閉止弁を閉じる.

ポンプダウンにて全量の冷媒回収ができない場合は,さらに冷媒回収機を用いて冷媒回収を行う.

② 元電源(ブレーカ)を切り,電気配線を製品の端子台から取り外す.

③ 接続配管を製品(室外機,室内機)の接続部から取り外す.

④ 製品(室外機,室内機),接続配管ならびに電気配線を設置場所から撤去する.

室内機と室外機で周囲の環境が異なるため,また店舗 PACの室内機は室内空間へ設置する形態と天井裏空

間に設置する形態があることも考慮して,製品撤去のリスクアセスメントは室内,天井裏,室外の 3 つの空

間に分けて行った.具体的な設置ケースは,6.3使用(室内)ステージならびに 6.4使用(室外)ステージと

同じにて評価した.表 6-6-1に具体的な評価条件を示す.図 6-6-2~図 6-6-13に R32における FTA を示す.

表 6-6-2~表 6-6-3に示す確率数値割付表には,後述する運搬,保管,解体の FTA に関する諸値も記載してい

る.

(a) 撤去作業時の着火源

撤去作業(者)に伴う着火源と,撤去作業に伴わない着火源と,の 2つを考慮する必要がある.前者には,

撤去作業そのものには使用しないが,喫煙に用いるマッチ,オイルライターといった撤去作業者が使用する

着火源も含めた.後者は,製品の設置場所に存在する着火源を反映した.なお,撤去における接続配管の取

り外し作業に,火気工具(バーナー)を用いることはないことから,前者から火気工具は除外した.

室内:前者の一つである撤去作業者が使用する着火源として,撤去作業者の喫煙に使用するマッチ,ライ

ターが考えられるが,客先における屋内では喫煙を避けることから,室内での喫煙は無しとした.また撤去

作業に伴う着火源として,電気配線の取り外し時のヒューマンエラーである活線作業による電気スパークを

想定した.撤去作業はユーザ側が業務活動していない時間に実施されることから,室内で使用される湯沸か

し器等の燃焼機器も使用されていることはないので,後者である製品の設置場所に存在する着火源として,

燃焼機器は除外することができ,ここでは漏電事故を想定した.なお,活線作業による電気スパークとは,

作業手順②において元電源を切り忘れた場合,起こり得る事象である.これら室内における着火源の中で,

ヒューマンエラーである活線作業が,支配的なリスク要因となった.

撤去 保管 解体 運搬

図 6-6-1 廃棄ステージ

70

天井裏:同様の環境にある室内と同じく,前者である撤去作業に伴う着火源として,電気配線の取り外し

時のヒューマンエラーである活線作業による電気スパークを,後者である製品の設置場所に存在する着火源

として漏電事故を,想定した.撤去作業者の喫煙に使用するマッチ,ライターは,室内同様に無しとした.

これら天井裏における着火源の中で,ヒューマンエラーである活線作業が,支配的なリスク要因となった.

室外:前者の一つである撤去作業者が使用する着火源として,撤去作業者の喫煙に使用するマッチ,オイ

ルライターを想定した.客先においても,屋外であれば撤去作業者も喫煙を控えるとは限らないとして挙げ

た.また,撤去作業に伴う着火源として,室外においても,電気配線の取り外し時のヒューマンエラーであ

る活線作業による電気スパークを想定した.室外においては,製品の撤去を依頼したユーザ以外の活動に伴

う燃焼機器の使用には制限を受けないので,後者である製品の設置場所に存在する着火源として,ユーザ側

の使用機器であるボイラー,石油ガス機器を想定した.加えて,室外機の発火発煙事故による電気スパーク

を想定した.これら室外における着火源の中で,ヒューマンエラーである活線作業が,支配的なリスク要因

となった.

なお,活線作業による電気スパークの発生しうる範囲として,製品端子台の位置を中心とした電気配線を

取りまわす範囲を想定し,室内,室外の何れにおいても 1㎥とした.

表 6-6-1 撤去における評価条件

第二次 第三次

空間 馬力,冷媒量 空間 馬力,冷媒量

室内

天井形

事務所

42.3㎡×H2.7m

自然換気

3HP

3kg,6kg

169㎡×H2.7m

自然換気

12HP(3HP×4台)

max 19kg【3.23E-2】

50㎡×H2.7m

自然換気

氷蓄熱 6HP

max 9kg

天井形

厨房

57.2㎡×H2.5m

自然換気

6HP

4kg,8kg

80㎡×H2.5m

自然換気

12HP(3HP×4台)

max 19kg【1.25E-1】

天井形

カラオケ室

9.7㎡×H2.5m

密閉空間

1.5HP

2kg,3kg - -

床置形

飲食店 - -

14㎡×H2.5m

自然換気

2HP

max 3kg【2.04E+2】

床置形

工場 - -

99.846㎡×H3m

自然換気

12HP(3HP×4台)

max 19kg【1.20E+1】

天井裏 狭小空間 6HP超

10kg超 狭小空間

12HP(3HP×4台)

max 19kg

室外 通常 50㎡×H2m

全開放

6HP

4kg,8kg

50㎡×H2.5m

全開放

12HP(3HP×4台)

max 19kg

各階 3.6㎡×H4m

前面開放

6HP

4kg,8kg

3.6㎡×H4m

前面開放

12HP(3HP×4台)

max 19kg

半地下 15.34㎡×H3.5m

四方閉

6HP

4kg,8kg【8.88E+2】

15.34㎡×H3.5m

四方閉

12HP(3HP×4台)

max 19kg【4.80E+2】

狭小 W5m×D1.5m

障害物 D1.2m

6HP

4kg,8kg

W5m×D1.5m

障害物 D1.2m

12HP(3HP×4台)

max 19kg

【 】:漏えい開始から撤去作業時間である 1時間までの可燃空間の時間体積(単位:㎥・min)

(b) 撤去作業時の冷媒漏えいモード

撤去作業に伴う冷媒漏えいと,撤去作業に伴わない冷媒漏えいと,の 2つを考慮する必要がある.

71

室内:撤去作業に伴う冷媒漏えいとして,ヒューマンエラーであるポンプダウンや冷媒回収の忘れ,ポン

プダウン後の室外機側の閉止弁の締め忘れを想定した.撤去作業に伴わない漏えいとして,室内機のガス漏

れ不具合を想定し,撤去作業中に発生しうる時間率分を織り込んだ.これら室内における冷媒漏えいモード

の中で,ヒューマンエラーであるポンプダウンや冷媒回収の忘れが,支配的なリスク要因となった.

天井裏:同様の環境にある室内と同じく,撤去作業に伴う冷媒漏えいとして,ヒューマンエラーであるポ

ンプダウンや冷媒回収の忘れ,ポンプダウン後の室外機側の閉止弁の締め忘れを,撤去作業に伴わない冷媒

漏えいとして,室内機でのガス漏れ不具合を想定した.これら天井裏における冷媒漏えいモードの中で,室

内と同様に,ヒューマンエラーであるポンプダウンや冷媒回収の忘れが,支配的なリスク要因となった.

室外:撤去作業に伴う冷媒漏えいとして,ヒューマンエラーである冷媒回収機の接続不完全による冷媒回

収中の漏れ,ポンプダウン後の室外機側の閉止弁の締め忘れ,ポンプダウンや冷媒回収忘れによる室内機ま

たは接続配管からの漏れを想定した.撤去作業に伴わない冷媒漏えいとして,室外機でのガス漏れ不具合を

想定し,撤去作業中に発生しうる時間率分を織り込んだ.これら室外における冷媒漏えいモードの中で,ヒ

ューマンエラーである冷媒回収機の接続不完全による媒回収作業中の漏れが,支配的なリスク要因となった.

表 6-6-4 撤去における着火源

室内,天井裏 室外

撤去作業(者)に伴う着火源 活線作業による電気スパーク

活線作業による電気スパーク

喫煙のマッチ,オイルライター

撤去作業に伴わない着火源 漏電事故による電気スパーク ボイラー,石油ガス機器

室外機の発火発煙事故による

電気スパーク

表 6-6-5 撤去における冷媒漏えいモード

室内,天井裏 室外

撤去作業に伴う冷媒漏えい 冷媒回収やポンプダウンの忘れ

室外機閉止弁の締め忘れ

冷媒回収機の接続不完全による

冷媒回収中の漏れ

室外機閉止弁の締め忘れ

冷媒回収やポンプダウン忘れによる

室内機または延長配管からの漏れ

撤去作業に伴わない

冷媒漏えい

室内機のガス漏れ不具合 室外機のガス漏れ不具合

(c) 撤去作業時の FTA

室内:可燃空間の時間体積として,使用 FTA における室内機停止時の値を用いた.なお,可燃空間の持続

時間が撤去作業時間の 1 時間を超える場合は,漏えい開始から撤去作業時間である 1 時間までの可燃空間の

時間体積を求め,用いた.表 6-6-1に可燃空間の時間体積の記載のある条件が,これに該当する.着火事故発

生確率は,何れの場合も許容値(1.3×10-8)を下回った.

天井裏:天井裏は空間容積が小さいことから,天井裏の空間全てが可燃濃度になるとして,可燃空間の時

間体積は用いず,可燃濃度に達する確率を1として用いた.着火事故発生確率は,何れの場合も許容値を下

回った.

室外:可燃空間の時間体積として,使用 FTA における室外機停止時の値を用いた.なお,室内同様に,可

燃空間の持続時間が撤去作業時間の 1 時間を超える場合は,漏えい開始から撤去作業時間である 1 時間まで

の可燃空間の時間体積を求め,用いた(表 6-6-1参照).着火事故発生確率は,半地下と狭小設置の場合にお

いて許容値を超えることから,対策として,撤去作業者への教育と撤去作業中の冷媒検知センサーの携行を

72

挙げ,これら対策を講じることで,許容値を下回ることを確認した.

6.6.2 運搬 FTA

運搬は,撤去した製品を設置場所から一次保管場所(撤去業者の倉庫)への小型車両での運搬に対して FTA

を作成した.小型車両として,運転席と荷台が同一空間にあるワゴン車を対象とし,6.1運搬ステージと同じ

大きさの車両にて評価した.図 6-6-14に R32における FTA を示す.

表 6-6-6 運搬において想定した主な条件

ワゴン車

車内空間 4.65㎡×H1.34m

運搬台数 室内機,室外機×1セット

対象馬力 3HP(積載可能な 1ファン小型機)

冷媒量 3kg,6kg

(a) 運搬時の着火源

車内に存在する着火源として,運搬に伴う着火源はないので,車内にいる人が使用する着火源として,喫

煙に使用するマッチ,オイルライターを想定した.

表 6-6-7 運搬における着火源

ワゴン車

着火源 喫煙のマッチ,オイルライター

(b) 運搬時の冷媒漏えいモード

撤去時と同様に,運搬に伴う冷媒漏えいと,運搬に伴わない冷媒漏えいと,の 2つを考慮する必要がある.

運搬に伴う冷媒漏えいとして,輸送振動に伴う冷媒漏えいを想定するが,ここでは,6.1 輸送ステージと

同様に,運搬中の室外機のガス漏れ不具合(急速漏えい+噴出漏えい)と室外機閉止弁の故障を想定し,運

搬中に発生しうる時間率分を織り込んだ.運搬に伴わない冷媒漏えいとして,ヒューマンエラーである撤去

作業時の室外機閉止弁の締め忘れを想定した.これら運搬時の冷媒漏えいモードの中で,後者のヒューマン

エラーである撤去作業時の室外機閉止弁の締め忘れは,車両搬入前に冷媒が室外機から抜け切るために,前

者の室外機のガス漏れ不具合が支配的なリスク要因となった.

表 6-6-8 撤去における冷媒漏えいモード

ワゴン車内

運搬に伴う冷媒漏えい 運搬中の室外機のガス漏れ不具合

運搬中の室外機閉止弁の故障

運搬に伴わない冷媒漏えい 撤去作業時の室外機閉止弁の締め忘れ

(c) 運搬時の FTA

車内は空間容積が小さいことから,天井裏と同様に,車内空間全てが可燃濃度になるとして,可燃空間の

時間体積は用いず,可燃濃度に達する確率を1として用いた.着火事故発生確率は,許容値を下回った.

6.6.3 保管 FTA

保管は,一次保管場所となる撤去業者の倉庫,具体的には,冷媒漏えい時に容易に可燃空間を生成しやす

い,6.1 保管ステージと同じ大きさの狭小倉庫での撤去した製品の保管に対して FTA を作成した.図 6-6-15

73

に FTA を示す.

(a) 保管時の着火源

倉庫内に存在する着火源として,保管に伴う着火源はないので,倉庫内にいる人が使用する着火源として,

喫煙に使用するマッチ,ライターと冬季に使用する石油ストーブを想定した.

表 6-6-9 保管において想定した主な条件

狭小倉庫

倉庫内空間 15㎡×H2.7m

保管台数 室外機 5台

対象馬力 6HP

冷媒量 4kg(5台中 4台),8kg(5台中 1台)

表 6-6-10 保管における着火源

狭小倉庫

着火源 喫煙のマッチ,オイルライター

石油ストーブ

(b) 保管時の冷媒漏えいモード

保管に伴う冷媒漏えいと,保管に伴わない冷媒漏えいと,の 2つを考慮する必要がある.

保管に伴う冷媒漏えいとして,倉庫内への搬入時の室外機転倒による冷媒漏えいが考えられたが,搬入時

は倉庫入口が開いており,万一,冷媒が漏えいしたとしても可燃空間を生成することはないことから除外し,

6.1 保管ステージと同様に,保管中の室外機のガス漏れ不具合(急速漏えい+噴出漏えい)と室外機閉止弁

の故障を想定した.保管に伴わない冷媒漏えいとして,ヒューマンエラーである撤去作業時の室外機閉止弁

の締め忘れを想定した.これら保管時の冷媒漏えいモードの中で,後者のヒューマンエラーである撤去作業

時の室外機閉止弁の締め忘れは,倉庫搬入前に冷媒が室外機から抜け切るために,前者の室外機のガス漏れ

不具合が支配的なリスク要因となった.

表 6-6-11 保管における冷媒漏えいモード

狭小倉庫

保管に伴う冷媒漏えい 保管中の室外機のガス漏れ不具合

保管中の室外機閉止弁の故障

保管に伴わない冷媒漏えい 撤去作業時の室外機閉止弁の締め忘れ

(c) 保管時の FTA

可燃空間の時間体積として,使用 FTA における室外機停止時の値を用いた.着火事故発生確率は,何れの

場合も許容値を下回った.

6.6.4 解体 FTA

解体は,産業廃棄物処理業者における冷媒回収後の分解作業に対して FTA を作成した.市中の産業廃棄物

処理業者での作業現場実態は,会員会社による解体業者調査報告を参照した.図 6-6-16に R32における FTA

を示す.

(a) 分解作業時の着火源

74

分解作業に伴う着火源と,分解作業に伴わない着火源と,の 2つを考慮する必要がある.分解作業に伴う

着火源として,室外機分解時の配管切断に火気工具(バーナー)の使用が考えられたが,前記解体業者調査

報告によると,パイプカッタや大型クリッパといった機械工具を使用しているとのことから,無しとした.

分解作業に伴わない着火源として,喫煙に使用するマッチ,ライターが考えられるが,前記解体業者報告に

よると,作業エリアから離れた別の場所に設けられた喫煙エリアでの喫煙ルールが運用されていることから,

無しとした.

(b) 分解作業時の冷媒漏えいモード

分解作業に伴う冷媒漏えいと,分解作業に伴わない冷媒漏えいと,の 2つを考慮する必要がある.

分解作業に伴う冷媒漏えいとして,前工程での冷媒回収忘れや不十分による配管切断時の冷媒漏えいを想

定した.分解作業に伴わない冷媒漏えいとして,前工程からの冷媒漏えいの継続,具体的には室外機落下に

よる冷媒漏えいを想定した.これら分解作業時の冷媒漏えいモードの中で,前者の前工程での冷媒回収の不

十分が支配的なリスク要因となった.

表 6-6-12 解体における冷媒漏えいモード

産業廃棄物処理業者

分解作業に伴う冷媒漏えい 前工程での冷媒回収忘れや不十分

分解作業に伴わない冷媒漏えい 室外機の落下

(c) 分解作業時の FTA

前記解体業者報告によると,分解作業エリアは十分な広さを有している,あるいは屋外にて分解作業を行

っているとのことから,可燃濃度に達する確率を0とした.着火源の存在確率ならびに可燃濃度に達する確

率を0としたことから,着火事故発生確率は0と,許容値を下回ったが,これは,着火源ならびに可燃空間

の生成を排除するために,前記解体業者報告で報告されているような工具選定ならびに作業環境の確保が必

要であるということを物語っている.産業廃棄物処理業者に対しても,据付,サービス,撤去に携わる業者

同等の安全配慮事項の伝達が必要である.

6.6.5 安全対策

前述の通り,半地下設置や狭小設置における室外機の撤去ならびに解体において,着火事故発生確率が許

容値を満足するために,安全対策を施す必要がある.

(a) 撤去における安全対策

室外機の半地下設置ならびに狭小設置においては,他の設置ケースと比較して可燃空間の時間体積が大き

いことから,着火事故発生確率が許容値を上回る.このため,冷媒漏えいの有無をチェックするための冷媒

検知器の携行が効果的な対策となる.さらに半地下設置においては,支配的なリスク要因となる着火源,具

体的には活線作業による電気スパークの存在を低減する必要があり,撤去作業者への教育として,冷媒検知

器の携行に加え,微燃性冷媒の特性やその着火源排除の教育も必要となる.着火源の教育の中には,作業手

順(元電源(ブレーカ)を切る→テスタで通電有無を確認する→電気配線を取り外す)の再教育も含まれる.

なお,これら対策は,室外機の半地下設置ならびに狭小設置に限る必要はなく,撤去作業現場での無用の

混乱を招かないためにも,撤去作業時の共通対策として周知していくことが望ましい.

75

表 6-6-13 撤去における安全対策

対策内容 効果 着火事故発生確率

の低減効果

撤去作業者の冷媒検知器の携行

(撤去作業中に冷媒漏えいチェック) 1/10 約 1/10

撤去作業者への教育

(微燃性冷媒の特性,着火源,作業手順) 1/10 約 1/10

(b) 解体における安全対策

産業廃棄物処理業者は,第一種フロン類充塡回収業者として都道府県知事の登録を受け,解体する室外機

に冷媒が封入されている場合は,その冷媒を回収した後に,配管を切断し,熱交換器や圧縮機の取り外しを

行う.産業廃棄物処理業者にも,据付業者や修理業者,撤去業者と同等内容の安全配慮事項を伝達すること

が必要となるが,解体作業の流れに沿って考えると,室外機の製品銘板への冷媒種名の記載に加え,冷媒回

収時の回収機接続口となるチャージポート近傍へも,冷媒種名を表示するとともに「火気注意」の注意表示

を行うことが効果的な対策の一つとなる.

6.6.6 まとめ

R32の他,R1234yfならびに R1234ze(E)についても,表 6-6-14ならびに表 6-6-15に示す代表条件において

FTA を作成した.FTA の構成は R32と共通で,可燃空間の時間体積の値に冷媒種それぞれの値を用いた.図

6-6-17~図 6-6-29に R1234yfにおける FTA を示す.図 6-6-30~図 6-6-40に R1234ze(E)における FTA を示す.

なお,R32の評価と同様に,可燃空間の持続時間が撤去作業時間の 1 時間を超える場合は,漏えい開始から

撤去作業時間である 1時間までの可燃空間の時間体積を求め,用いた(表 6-6-14~表 6-6-15参照).

R32 と比較し,可燃空間の時間体積の値が大きくなる分だけ,R1234yfならびに R1234ze(E)の着火事故発

生確率は若干大きくなったが,R32 と同様に,半地下設置と狭小設置における室外機撤去において安全対策

が必要となるが,その対策内容は R32と同じ対策内容で良いことを確認できた.

76

表 6-6-14 R1234yfにおける評価条件

第二次 第三次

空間 馬力,冷媒量 空間 馬力,冷媒量

室内

天井形

事務所

42.3㎡×H2.7m

自然換気

3HP

3kg,6kg

169㎡×H2.7m

自然換気

12HP(3HP×4台)

max 19kg【3.67E-2】

50㎡×H2.7m

自然換気

氷蓄熱 6HP

max 9kg

天井形

厨房

57.2㎡×H2.5m

自然換気

6HP

4kg,8kg

80㎡×H2.5m

自然換気

12HP(3HP×4台)

max 19kg【1.42E-2】

天井裏 狭小空間 6HP超

10kg超 狭小空間

12HP(3HP×4台)

max 19kg

室外 通常 50㎡×H2m

全開放

6HP

4kg,8kg

50㎡×H2.5m

全開放

12HP(3HP×4台)

max 19kg

半地下 15.34㎡×H3.5m

四方閉

6HP

4kg【2.04E+2】,

8kg【1.02+3】

15.34㎡×H3.5m

四方閉

12HP(3HP×4台)

max 19kg【1.14E+3】

狭小 W5m×D1.5m

障害物 D1.2m

6HP

4kg,8kg

W5m×D1.5m

障害物 D1.2m

12HP(3HP×4台)

max 19kg

ワゴン車 4.65㎡×H1.34m 3HP

3kg,6kg - -

【 】:漏えい開始から撤去作業時間である 1時間までの可燃空間の時間体積(単位:㎥・min)

表 6-6-15 R1234ze(E)における評価条件

第二次 第三次

空間 馬力,冷媒量 空間 馬力,冷媒量

天井裏 狭小空間 6HP超

10kg超 狭小空間

12HP(3HP×4台)

max 19kg

室外 通常 50㎡×H2m

全開放

6HP

4kg,8kg

50㎡×H2.5m

全開放

12HP(3HP×4台)

max 19kg

半地下 15.34㎡×H3.5m

四方閉

6HP

4kg【1.65E+2】,

8kg【1.02E+3】

15.34㎡×H3.5m

四方閉

12HP(3HP×4台)

max 19kg【1.14E+3】

狭小 W5m×D1.5m

障害物 D1.2m

6HP

4kg,8kg

W5m×D1.5m

障害物 D1.2m

12HP(3HP×4台)

max 19kg

ワゴン車 4.65㎡×H1.34m 3HP

3kg,6kg - -

【 】:漏えい開始から撤去作業時間である 1時間までの可燃空間の時間体積(単位:㎥・min)

77

7. RA 結果及び必要とされる安全対策

店舗用PACのリスクアセスメントを 3段階に分けて実施した.第一次では,一般的に使用される代表的

なモデルを選定し,第二次では,床置き室内機を除く 14.0kW以下の比較的リスクが高くなると想定される

モデルを選定し,第三次で,床置き室内機も含め 30kWまで対象範囲を広げ店舗用PAC全体の評価を行っ

た.対象冷媒は,まず R32で行い,R1234yf,R1234ze(E)も同様に可燃空間時空積を求め比較評価した.湿度

影響を受ける冷媒は,いずれも高湿度(27℃露点)条件で算出している.R1234yf,R1234ze(E)は,比較的リ

スクの高くなる第二次,第三次のモデルで評価した.

安全対策については,作業が伴うステージ(据付,修理,廃棄)で共通の項目(下記 A,B)を挙げており,

対策効果の数値は「R-Mapとリスクアセスメント基本編(日科技連)7-1)」に記載されている「リスク低減の

原則」を用いて設定した.

A. 作業者への教育:対策効果「1/10」

B. 冷媒漏えいセンサーの携行:対策効果「1/10」

表 7-1に「リスク低減効果と判断方法」を示す.低減効果が R-Mapの「セル数」で表されているが確率数

値としては「-1セル=10-1」を示している.上記 A は表中の⑤の中で「教育,訓練」に相当し,低減効果は「通

常:0」とされているが,本件では業界で関係団体のレビュー及び高圧ガス保安協会の認定を受けたガイドラ

インを作成していることから「完成度が高い」と考え,低減効果を「最大:1/10」とした.B については④

の「警報」に相当することから,低減効果は「通常:1/10」とした.

表 7-1リスク低減効果と判断方法(リスク低減の原則)

リスク低減レベル 低減効果(セル数)

判断方法 最大 通常 最小

①リスクの除去

本質安全:製品自身でのリスク除去 -4 -3 -2

・各リスク低減レベルにおいて、

最初は 低減効果の「通常」を

選択する。

・実績があったり、完成度高い

場合は 「最大」を選択する。

・不確定要素や不安があったり、

機能しない場合が容易に想定

される場合は「最小」を選択

する。

②リスクの低減

本質安全:製品自身でのリスク低減 -3 -2 -1

③安全装置

(停止、防護による拡大など) -2 -1 -1

④警報

(装置による異常検出など) -1 -1 0

⑤取扱説明書・注意銘版

(教育・訓練など) -1 0 0

7.1 第一次モデル(代表的なモデル)

第一次では,代表的なモデルとして,表 7-2の条件を設定した.

店舗用 PACの約 80%は,配管長が 30m以下であり,現地冷媒追加充塡を必要としない.

室内条件は,最も販売台数の多い 7.1kWクラスの四方向カセット形を選定し,自然換気口を有する事務所

への設置とした.室外条件は,設置スペースが,7.1~14.0kWのボリュームゾーンで同一となることから,

設置面積当り冷媒量の多い 14.0kWを代表モデルに選定している.設置場所は,4方に障壁がなく,漏えい冷

媒が滞留しない一般的な地上設置を選定した.輸送・保管場所は,一般的なトラック輸送と,準耐火中型倉

庫に保管されている状態を設定した.尚,トラック輸送では,荷台に着火源が存在せず着火リスクはないの

で,下表から割愛した.

これら代表的なモデルに対して,輸送保管,据付,使用,修理,廃棄各ステージにおける着火事故発生確

率を算出した.表 7-3の通り,従来冷媒(R410A)と同様の取扱いでも着火事故発生確率は,許容されるレ

ベル以下となり,追加の安全対策は不要となった.

78

表 7-2 第一次モデルの設定

条件 形態 設置場所 特徴 設置空間 冷房能力

(kW)

配管長

(m)

冷媒量

(kg) 床面積(m2) 高さ(m)

室内 天井設置 事務所 自然換気口有 42.3 2.7 7.1 ≦30 3

室外 横吹きスリム形 地上 4 面開放 50 2 14.0 ≦30 4

保管 段積保管 中型倉庫 室外機 2300台 1000 - 14.0 - 4

表 7-3第一次モデルのリスクアセスメント結果【R32】

ライフステージ

[許容レベル]

輸送

[ ≦ 1.3x10-8 ]

据付

[ ≦ 1.3x10-8 ]

使用

[ ≦ 1.3x10-9 ]

修理

[ ≦ 1.3x10-8 ]

廃棄

[ ≦ 1.3x10-8 ]

モデル【R32】 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有

内 事務所 - - 6.59x10-10

不要 3.37x10-12

不要 1.19x10-10

不要 3.12x10-12

不要

外 地上 - - 6.73x10-10

不要 6.35x10-11

不要 2.23x10-10

不要 6.05x10-11

不要

管 中型倉庫 1.55x10

-11 不要 - - - - - - - -

7.2 第二次モデル(比較的リスクが高くなると想定されるモデル)

7.2.1 RA 結果

第二次では,室内床置き設置を除く冷房能力 14.0kW以下のシステムにおいて,比較的リスクが高くなる

と想定されるモデルを,表 7-4の通り,選定した.

まず,配管長については,各システムの最大許容配管長を考慮し,それに応じた冷媒量を設定した.

室内条件は,比較的着火源の多いレストランの厨房と,自然換気口がなく密閉度の高いカラオケルームを

選定した.カラオケルームは居室空間容積の最も小さくなる 3.6kWモデルを選定した.

室外条件は,代表的な「地上設置」と、漏えい冷媒が拡散しづらい「各階設置」,「半地下設置」,および「狭

小設置」の 4つの設置場所を選定した.

輸送・保管条件は,販売店の狭小倉庫に一時保管されるケースがあり,そのモデルを追加した.また,輸

送においては,7.1kW以下の小筐体室外機の場合,着火源との遭遇がほぼないトラック輸送以外に,運転席

と荷台が同一空間となるワゴン車輸送も考えられ,運転者の喫煙等により着火リスクが高くなるモデルとし

て選定した.これらのモデルの着火事故発生確率を表 7-5,6,7に示す.

表 7-4 第二次モデルの設定

条件 形態 設置場所 特徴

設置空間 冷房能力

(kW)

配管長

(m)

冷媒量

(kg) 床面積

(m2)

高さ

(m)

室内 天井設置

事務所 最大配管・冷媒量 42.3 2.7 7.1 75 6

厨房 着火源が多い 57.2 2.7 14.0 75 8

カラオケルーム 密閉・機械換気 9.7 2.4 3.6 50 3

室外 横吹き

地上設置 4 面開放 50 2 14.0 75 8

各階設置 3 面閉塞・1 面開放 3.6 4 14.0 75 8

半地下設置 4 面閉塞・上部開放 15.3 3.54 14.0 75 8

狭小設置 1 面部分開放 7.5 2 14.0 75 8

保管 5 台平置 狭小倉庫 保管空間容積小 15 2.7 14.0 -※ 8※

輸送 小筐体 2 台 ワゴン車 荷台・運転席一体 4.65 1.34 7.1 -※ 6※

※廃棄の輸送・保管時,最大配管長分ポンプダウン考慮

79

表 7-5 第二次モデルのリスクアセスメント結果【R32】

ライフステージ

[許容レベル]

輸送

[ ≦ 1.3x10-8 ]

据付

[ ≦ 1.3x10-8 ]

使用

[ ≦ 1.3x10-9 ]

修理

[ ≦ 1.3x10-8 ]

廃棄

[ ≦ 1.3x10-8 ]

モデル【R32】 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有

事務所 - - 6.63x10-10

不要 4.20x10-12

不要 1.21x10-10

不要 3.37x10-12

不要

厨房 - - 6.64x10-10

不要 1.03x10-10

不要 2.65x10-10

不要 2.80x10-12

不要

カラオケルーム - - 6.77x10-10

不要 8.71x10-11

不要 1.04x10-9

不要 2.04x10-11

不要

地上設置 - - 7.53x10-10

不要 3.13x10-10

不要 5.57x10-10

不要 2.60x10-10

不要

各階設置 - - 8.49x10-10

不要 5.79x10-10

不要 1.47x10-9

不要 6.81x10-10

不要

半地下設置 - - 3.60x10-7

4.89x10-9

7.14x10-7

1.68x10-10

1.12x10-7

2.33x10-9

8.68x10-8

9.46x10-9

狭小設置 - - 2.77x10-9

不要 5.96x10-9

5.77x10-10

1.84x10-8

4.21x10-10

7.21x10-9

不要

狭小倉庫 1.26x10-11

不要 - - - - - - 1.22x10-8

不要

ワゴン車 1.73x10-10

不要 - - - - - - 6.66x10-10

不要

表 7-6 第二次モデルのリスクアセスメント結果【R1234yf高湿度条件(27℃露点)】

ライフステージ

[許容レベル]

輸送

[ ≦ 1.3x10-8 ]

据付

[ ≦ 1.3x10-8 ]

使用

[ ≦ 1.3x10-9 ]

修理

[ ≦ 1.3x10-8 ]

廃棄

[ ≦ 1.3x10-8 ]

モデル【R1234yf】 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有

事務所 - - 6.64x10-10

不要 4.97x10-12

不要 1.26x10-10

不要 3.83x10-12

不要

厨房 - - 6.66x10-10

不要 1.24x10-10

不要 3.03x10-10

不要 3.30x10-12

不要

地上設置 - - 7.68x10-10

不要 3.60x10-10

不要 1.59x10-9

不要 3.95x10-10

不要

各階設置 - - - - 6.55x10-10

不要 - - - -

半地下設置 - - 3.60x10-7

4.89x10-9

2.11x10-6

5.15x10-10

1.61x10-7

3.07x10-9

9.97x10-8

1.09x10-8

狭小設置 - - 3.10x10-9

不要 7.67x10-9

9.93x10-10

2.63x10-8

5.57x10-10

8.89x10-9

不要

保管:ワゴン車 1.73x10-10

不要 - - - - - - 6.66x10-10

不要

表 7-7 第二次モデルのリスクアセスメント結果【R1234ze(E)高湿度条件(27℃露点)】

ライフステージ

[許容レベル]

輸送

[ ≦ 1.3x10-8 ]

据付

[ ≦ 1.3x10-8 ]

使用

[ ≦ 1.3x10-9 ]

修理

[ ≦ 1.3x10-8 ]

廃棄

[ ≦ 1.3x10-8 ]

モデル【R1234ze】 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有

地上設置 - - 7.63x10-10

不要 3.25x10-10

不要 1.43x10-9

不要 3.46x10-10

不要

各階設置 - - - - 6.12x10-10

不要 - - - -

半地下設置 - - 3.60x10-7

4.89x10-9

2.03x10-6

4.95x10-10

1.55x10-7

2.98x10-9

9.97x10-8

1.09x10-8

狭小設置 - - 3.03x10-9

不要 7.26x10-9

9.36x10-10

2.39x10-8

5.17x10-10

8.41x10-9

不要

保管:ワゴン車 1.73x10-10

不要 - - - - - - 6.66x10-10

不要

7.2.2 必要とされる安全対策

室外の「半地下設置」「狭小設置」において,一部許容レベルを満足しない結果となったため,支配的な

リスク要因を整理し,実現性の高い安全対策を選定しリスクを許容レベル以下に低減させた.表7-8,9に安全

対策をまとめた.半地下設置の使用時は,滞留する高濃度の漏えい冷媒を除去するために,「機器の強制送

80

風攪拌運転」が有効な安全対策となった.狭小設置は最低1面0.6m以上開口寸法を設けることが有効であった.

作業時は,作業者への教育と冷媒漏洩検知センサーの携行が,効果的な安全対策となった.

冷媒種による差は,高湿度条件では,若干 R1234yf及び R1234ze(E)のほうが R32よりも可燃空間時空積が

大きくなり,着火事故発生確率が上昇したが,同様の安全対策を講じることにより,許容できるレベルに低

減できた.

表 7-8 第二次モデルの必要とされる安全対策

リスクが高い要因 使用 据付/修理 廃棄

室外機

半地下

設置

項目 冷媒の滞留 着火源の存在 作業者のヒューマンエラー 作業者のヒューマンエラー

要因 換気少 ボイラーの存在確率 冷媒回収作業

ロウ付け作業

冷媒回収作業

活線作業

安全対策 表 7-9 参照 作業者への教育 かつ 冷媒漏えいセンサーの携行

室外機

狭小設置

項目 冷媒の滞留 着火源の存在 作業者のヒューマンエラー 作業者のヒューマンエラー

要因 1 面開口少 ボイラーの存在確率 冷媒回収作業

ロウ付け作業

冷媒回収作業

活線作業

安全対策 1 面開口寸法 0.6m 以上(人がアクセス可能) 作業者への教育 かつ 冷媒漏えいセンサーの携行

表 7-9 半地下設置時に必要とされる安全対策

店舗用PAC ビル用マルチ

冷媒量 M≦1/2×LFL×

熱交上端高さ×A

M>1/2×LFL×

熱交上端高さ×A

M≦1/2×LFL×熱

交上端高さ×A

M>1/2×LFL×

熱交上端高さ×A

半地下高さ

1.2m以下 不要 不要 不要 不要

半地下高さ

1.2m超

2m以下

不要

① 冷媒漏えいセンサー検知時に横吹

室外ファン強制ON (最少風速:

4m/s かつ 室外機吹出側から壁

面までの距離:3m以下)

または,②局所強制排気装置

不要

冷媒漏えいセンサー検知

時に上吹室外ファン強制

ON

(最小風速:1m/s)

半地下高さ

2m超

3.3m以下

不要 局所強制排気装置 不要

冷媒漏えいセンサー検知

時に上吹室外ファン強制

ON

(最小風速:1m/s)

半地下高さ

3.3m超 不要 設置禁止 不要 設置禁止

7.3 第三次モデル(30kW までのリスクが高くなると想定されるモデル)

7.3.1 RA 結果

第三次では,表 7-10の通り,床置き設置室内機も含め冷房能力 30.0kWまで対象を拡げて,比較的リスク

が高くなると想定されるモデルを選定した.30.0kWシステムでは,室内外配管長が最大 120mとなり,それ

に応じたシステム最大冷媒量で評価した.また,室内機は,4 台接続を想定し,冷媒漏洩発生確率を高く設

定した.

室内床置き設置については,最も室内空間容積が小さくなる 4.5kW クラスと,最大冷媒量となる 30.0kW

(7.1kW:4台設置)の2条件を選定した.また,店舗用PACとして製品化されている小型氷蓄熱システ

81

ムも追加した.小型氷蓄熱システムは室外機近傍に氷蓄熱槽を有しているため,同一能力あたりの冷媒量が

多くなる.そこで,店舗用の氷蓄熱システムにおいて最大の冷媒量となる 9kgを選定した.

輸送・保管については,狭小倉庫,ワゴン車輸送がない為,中型倉庫のみ評価した.工場出荷時の 30.0kW

室外機の冷媒量は 7kgとして試算した.

表 7-11,12,13にリスクアセスメント結果を示す.室内「床置き設置」と室外「半地下設置」「狭小設置」で

許容レベルを満足しない結果となった.

表 7-10 第三次モデルの設定

条件 形態 設置場所 特徴 設置空間 冷房能力

(kW)

配管長

(m)

冷媒量

(kg) 床面積(m2) 高さ(m)

室内

天井設置 事務所 最大配管・冷媒量 169 2.7 30.0 120 19

厨房 着火源が多い 80 2.7 30.0 120 19

床置き設置 飲食店 下部漏洩滞留 14 2.5 4.5 50 3

工場 下部漏洩滞留 100 3 30.0 120 19

室内(氷蓄熱) 天井設置 事務所 冷媒量:多/部屋 50 2.7 14.0 75 9

室外 横吹き

地上設置 4 面開放 50 2.5 30.0 120 19

各階設置 3 面閉塞・1 面開放 3.6 4 30.0 120 19

半地下設置 4 面閉塞・上部開放 15.3 3.54 30.0 120 19

狭小設置 1 面部分開放 7.5 2.5 30.0 120 19

保管 段積保管 中型倉庫 室外機 2300台 1000 - 30.0 - 7

表 7-11 第三次モデルのリスクアセスメント結果【R32】

ライフステージ

[許容レベル]

輸送

[ ≦ 1.3x10-8 ]

据付

[ ≦ 1.3x10-8 ]

使用

[ ≦ 1.3x10-9 ]

修理

[ ≦ 1.3x10-8 ]

廃棄

[ ≦ 1.3x10-8 ]

モデル【R32】 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有

事務所 - - 6.61x10-10

不要 7.61x10-13

不要 4.82x10-12

不要 1.90x10-12

不要

厨房 - - 6.75x10-10

不要 7.97x10-11

不要 1.65x10-10

不要 7.33x10-12

不要

飲食店 - - 1.70x10-8

2.45x10-10

9.39x10-9

1.00x10-12

9.28x10-9

2.81x10-9

2.99x10-9

不要

工場 - - 2.30x10-9

不要 1.05x10-9

不要 3.11x10-9

不要 7.04x10-10

不要

氷蓄熱 6.68x10-10

不要 3.62x10-12

不要 4.10x10-11

不要 2.79x10-12

不要

地上設置 - - 8.02x10-10

不要 2.61x10-10

不要 5.53x10-10

不要 7.60x10-10

不要

各階設置 - - 1.00x10-9

不要 6.15x10-10

不要 1.48x10-9

不要 2.01x10-9

不要

半地下設置 - - 3.67x10-7

5.64x10-9

4.65x10-6

1.14x10-9

1.18x10-7

2.93x10-9

1.43x10-7

1.59x10-9

狭小設置 - - 5.34x10-9

不要 8.49x10-9

3.97x10-10

1.91x10-8

4.95x10-10

2.61x10-8

2.84x10-9

中型倉庫 8.30x10-11

不要 - - - - - - - -

82

表 7-12 第三次モデルのリスクアセスメント結果【R1234yf高湿度条件(27℃露点)】

ライフステージ

[許容レベル]

輸送

[ ≦ 1.3x10-8 ]

据付

[ ≦ 1.3x10-8 ]

使用

[ ≦ 1.3x10-9 ]

修理

[ ≦ 1.3x10-8 ]

廃棄

[ ≦ 1.3x10-8 ]

モデル【R1234yf】 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有

事務所 - - 6.62x10-10

不要 8.92x10-13

不要 5.61x10-12

不要 2.15x10-12

不要

厨房 - - 6.78x10-10

不要 9.36x10-11

不要 1.93x10-10

不要 8.33x10-12

不要

地上設置 - - 8.30x10-10

不要 4.12x10-10

不要 1.57x10-9

不要 9.77x10-10

不要

半地下設置 - - 3.67x10-7

5.64x10-9

9.94x10-6

1.28x10-9

1.71x10-7

4.11x10-9

3.41x10-7

3.71x10-9

狭小設置 - - 7.02x10-9

不要 1.23x10-8

1.14x10-9

2.74x10-8

6.72x10-10

3.68x10-8

4.01x10-9

表 7-13 第三次モデルのリスクアセスメント結果【R1234ze(E)高湿度条件(27℃露点)】

ライフステージ

[許容レベル]

輸送

[ ≦ 1.3x10-8 ]

据付

[ ≦ 1.3x10-8 ]

使用

[ ≦ 1.3x10-9 ]

修理

[ ≦ 1.3x10-8 ]

廃棄

[ ≦ 1.3x10-8 ]

モデル【R1234ze】 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有 未対策 対策有

地上設置 - - 8.14x10-10

不要 3.70x10-10

不要 1.42x10-9

不要 8.55x10-10

不要

半地下設置 - - 3.67x10-7

5.64x10-9

9.86x10-6

1.26x10-9

1.66x10-7

4.06x10-9

3.29x10-7

3.58x10-9

狭小設置 - - 6.51x10-9

不要 1.09x10-8

1.02x10-9

2.45x10-8

6.09x10-10

3.34x10-8

3.64x10-9

7.3.2 必要とされる安全対策

室内「床置き設置」については,冷媒が漏洩した場合,高濃度で室内空間下部に滞留し易いため,非常に

大きな可燃空間時空積となった.使用時の安全対策としては,「室内機下部に冷媒漏洩センサーを備え漏洩感

知した場合に,強制送風運転すること」が効果的であった.作業時は,室外条件同様,作業者への教育と冷

媒漏洩検知センサーの携行が,効果的な安全対策となった.床置き設置以外の室内条件については,第二次

と比較して,冷媒量が増加したものの室内設置空間も大きくなったために,リスクは若干減少した.

室外・保管条件については,設置環境・設置スペースが第二次と同等のため,冷媒量が増加した分だけ,

若干リスクが上昇した.しかしながら,必要とされる安全対策は大きな差異はなく,同様な対策で許容でき

るレベルを満足した.必要とされる安全対策を表 7-14にまとめた.

冷媒種による差は,第二次と同様,高湿度条件では,若干 R1234yf及び R1234ze(E)のほうが R32よりも可

燃空間時空積が大きくなり,着火事故発生確率が上昇したが,同様の安全対策を講じることにより許容でき

るレベルに低減できた.

83

表 7-14 第三次モデルの必要とされる安全対策

モデル リスクが高い要因 使用 据付/修理 廃棄

室内機

床置き

設置

項目 冷媒の滞留 空間の気流 作業者のヒューマンエラー -

要因 換気少 攪拌 ロウ付け作業 -

安全対策 漏洩センサー検知時に室内ファン強制 ON

(最小風量:10m3/min かつ最小風速:1.0m/s) 作業者への教育 かつ 冷媒漏洩センサーの携行

室外機

半地下

設置

項目 冷媒の滞留 着火源の存在 作業者のヒューマンエラー 作業者のヒューマンエラー

要因 換気少 ボイラーの存在確率 冷媒充塡,回収作業

ロウ付け作業

冷媒回収作業

活線作業

安全対策 表 7-9 参照 作業者への教育 かつ 冷媒漏洩センサーの携行

室外機

狭小設置

項目 冷媒の滞留 着火源の存在 作業者のヒューマンエラー 作業者のヒューマンエラー

要因 1 面開口少 ボイラーの存在確率 冷媒充塡,回収作業

ロウ付け作業

冷媒回収作業

活線作業

安全対策 1 面開口寸法 0.6m 以上(人がアクセス可能) 作業者への教育 かつ 冷媒漏洩センサーの携行

8. 冷媒誤充塡に対するリスク評価

微燃性冷媒を使用するシステムに必要とされる安全対策は,前項にまとめたが,旧冷媒(R410A)システ

ムに誤って微燃性冷媒を充塡した場合,前述した安全対策のリスク低減効果が見込めないために,冷媒誤充

塡した場合のリスク評価を追加した.具体的には,前項の各モデルの未対策リスク確率に,冷媒誤充塡確率

を掛け合わせたものが,許容できるレベル以下になるかを検証した.許容できるレベルを満足しない場合,

機器側に誤充塡防止のため,冷媒充塡ポートの形状を変更する等の対策が必要となる.

冷媒の誤充塡確率は,以下とした.

①据付時: 0.2(追加充塡確率)×10-3(ヒューマンエラー)×6.5(市場蓄積年数)÷13(製品寿命年数)

②修理時: 0.1(故障率)×0.15(冷媒充塡率)×10-3(ヒューマンエラー)×6.5(市場蓄積年数)

許容できるレベルは,使用者及び作業者に微燃性冷媒使用の意識がないために,10倍厳しくした.

表 8-1 に,第三次で安全対策が必要とされたモデルに誤充塡確率を加味したリスク評価結果をまとめた.

未対策の数値は,第三次【R32】(表 7-11)のものを使用している.室外条件は,構成比率を考慮して合算し

ている.(半地下設置:0.001%,狭小設置:2.78%)結果は,許容されるレベルを満足したため,冷媒充塡ポ

ート形状の変更等の追加対策を講じる必要はないと考えられる.

表 8-1 冷媒誤充塡に対するリスク評価

ライフステージ 据付 使用 修理 廃棄

許容レベル 1.3x10-9 1.3x10

-10 1.3x10-9 1.3x10

-9

誤充塡蓄積影響 据付時 据付時+修理時 据付時+修理時 据付時+修理時

誤充塡確率 1.0x10-4 2.0x10

-4 2.0x10-4 2.0x10

-4

着火事故確率 未対策 誤充塡込 未対策 誤充塡込 未対策 誤充塡込 未対策 誤充塡込

床置き 飲食店 1.70x10-8

1.70x10-12

9.39x10-9

1.88x10-12

9.28x10-9

1.86x10-12

- -

室外 半地下/狭小 3.67x10-12

3.67x10-16

2.83x10-10

5.66x10-14

5.32x10-10

1.06x10-13

1.43x10-12

2.86x10-16

84

9. まとめ

微燃性冷媒を使用する店舗用PACに対して,3 段階に分けて RA を実施した.

一般的に使用される代表モデルでは,着火事故発生確率が許容されるレベル以下となり,安全対策は不要

となった.しかしながら,構成比率は低いが,いくつかのシビアモデルケースでは,許容されるレベルを超

えたため,安全対策が必要となった.具体的には,室内「床置き設置」モデル,及び室外「半地下設置」「狭

小設置」モデルにおいて,使用時,あるいは,据付,修理,廃棄時にリスクが高い結果となり,支配的なリ

スク要因を低減するための安全対策を策定した.

微燃性冷媒を用いた機種の冷媒充塡ポート形状の変更は,冷媒誤充塡リスク影響が小さいため,不要と考

えられる.

リスクを低減するために求められる安全対策について,公益社団法人日本冷凍空調学会「微燃性冷媒リスク

評価研究会ファイナルレポート 第 7章 スプリットエアコン(店舗用パッケージエアコン)のリスク評価」

及び,日本冷凍空調工業会 「微燃性(A2L)冷媒を使用した業務用エアコンの冷媒漏えい時の安全機能要

求事項(JRA4070)」,「微燃性(A2L)冷媒を使用した業務用エアコンの冷媒漏えい時の安全確保のための施

設ガイドライン(JRA GL-16)」等にまとめ,機器製造業者並びに施工業者に効果的に周知されるように情報

発信を実施した.

85

参考文献

3-1) 公益社団法人 日本冷凍空調学会 微燃性冷媒リスク評価研究会 最終報告書 8 章 ビル用マルチエ

アコンのリスク評価 8.3.2 冷媒漏洩速度別の漏えい件数発生確率, pp.177-178, 2016

5-1) 今村友彦, Experimental Evaluation of Physical Hazard of A2L Refrigerants, The International Symposium on

New Refrigerants and Environment Technology 2014, pp.73-78, 2014

5-2) 滝澤賢二, Fundamental and Practical Flammability Properties, The International Symposium on New

Refrigerants and Environment Technology 2014, pp.79-84, 2014

5-3) 独立行政法人 製品評価技術機構ホームページ,2013 年 各種統計データ, 2013

5-4) JT(日本たばこ産業株式会社)、2013 年「全国たばこ喫煙者率調査」, 2013

6-1) Arthur D.Little, Inc., Risk Assessment of HFC-32 and HFC-32/134a(30/70wt.%) in Sprit System

Residential Heat Pumps Final Report, 1998

6-2) 感電事故・波及事故の調査分析(H21 年度 中国電気管理技術者協会編), 2009

7-1) 松本浩二, R-Map とリスクアセスメント基本編(日科技連), 2014

86