cfd 解析を用いた温度成層型蓄熱槽におけるディフューザー...

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CFD CFD CFD 300mm 3000mm 150mm 4 1 d d Ar in 1.7 30mm type1 type1 type2 type1 type3 type1 6600mm 2100mm 30mm 350mm 2000mm 175mm 200mm 2 type1 type2 Numerical Study on Diffuser Shape for Water TES Tank by CFD Analysis YU Yifei, SAGARA Kazunobu, YAMANAKA Toshio, KOTANI Hisashi MOMOI Yoshihisa, KOBAYASHI Tomohiro,KITORA Hisataka and TAGUCHI Yuichiro 1 Ar dg u in d = ( ) ρρ 0 2

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  • CFD 解析を用いた温度成層型蓄熱槽におけるディフューザー形状に関する研究

    正会員○兪 一非 *1 同 相良 和伸 *2 同 山中 俊夫 *3

     同 甲谷 寿史 *4 同 桃井 良尚 *5 同 小林 知広 *6

     同 木虎 久隆 *7 同 田口 雄一郎 *74. 環境工学 -18. 熱源システム

    温度成層型蓄熱槽 ディフューザー 蓄熱性能 CFD

    1.はじめに

     近年、電力負荷平準化に貢献できる蓄熱式空調シ

    ステムが多く建物に導入されている。蓄熱式空調シ

    ステムとは、蓄熱及び放熱過程を通じ、夜間の安価

    な電力を利用して熱エネルギーを蓄え、昼間の冷暖

    房負荷の処理に利用する空調システムである。そし

    て、水を蓄熱媒体として利用する蓄熱式空調システ

    ムは、連結完全混合槽型蓄熱槽と温度成層型蓄熱槽

    に分類される。

     温度成層型蓄熱槽とは、水の密度差を利用し、温

    度の異なる水を混合させずに蓄える蓄熱槽である。

    高い蓄熱性能が期待できる温度成層型蓄熱槽におい

    て、流入・流出口として設けられるディフューザー

    の形状、サイズ、設置位置、設置個数などの決定は、

    高性能蓄熱槽を設計するために非常に重要である。

     本研究では、蓄熱性能の向上を目的とし、ディ

    フューザーに取付けられるパンチングメタルの境界

    条件を与えるために、CFD解析を用いてパンチングメタルの圧力損失係数を求めた上で、ディフューザー

    の形状とパンチングメタル付きのディフューザーが

    蓄熱性能に及ぼす影響を検討する。

    2.ディフューザー形状

    2.1 ハーフパイプ型

     ディフューザーの設計において、蓄熱性能の向上

    とイニシャルコストの低減を考慮した上で、ハーフ

    パイプ型ディフューザーを検討した。外径 300mm、長さ 3000mm のパイプを半割りして、切断面と同じ大きさの蓋(以下、ディフューザー蓋と呼ぶ)、ハー

    フパイプ両端に蓋(以下、両端蓋と呼ぶ)を設置し、

    内径 150mm の配管を 4 本取付けた形状を想定した。ディフューザー蓋下面からハーフパイプ上面までの

    距離を開口部隙間幅と呼び、式(1)に示す開口部の

    アルキメデス数によって決定する。

    開口部隙間幅 dd は開口部アルキメデス数Arin が 1.7となる 30mmとした。図1に開口部隙間から水を水平に吹出すハーフパイプ型 type1を示す。ハーフパイプ型 type1の検討を行った上で、ディフューザー蓋の有無をパラメータとしたケーススタディを行うため、

    水を上向き垂直に吹出すハーフパイプ型 type2の検討を行った(図2参照)。また、水の上向きの流速を抑え、

    上方に均一に流入するように、ハーフパイプ型 type1

    のディフューザー蓋に代えてパンチングメタルを取

    付けたハーフパイプ型 type3を検討した(図3参照)。2.2 円盤型

     円盤型ディフューザーは放射状の均等な流入・流

    出が期待できることから採用例が多い。本研究で検

    討した新たな形状のディフューザーを用いた場合の

    蓄熱性能と比較するために、図4に示す円盤型につ

    いての検討を行った。開口部アルキメデス数を等し

    く設定するために、ハーフパイプ型 type1の水平に吹出す流速と合わせて、開口部周長と開口部隙間幅を

    それぞれ 6600mm(直径 2100mm)と 30mmとした。2.3 ボックス型

     ハーフパイプ型より施工性が良いという観点か

    ら考えると、ステンレス板を折り曲げて製作する

    ボックス型を検討した。一枚のステンレス板を横幅

    350mm、奥行き 2000mm、高さ 175mm の両端蓋なしの細長いボックスに加工して、内径 200mmの配管を2本取付けた形状を想定した。パンチングメタルの有無をパラメータとし、両端蓋なしパンチングメタル

    なしのボックス型 type1、両端蓋ありパンチングメタル付きのボックス型 type2を検討した(図6参照)。

    Numerical Study on Diffuser Shape for Water TES Tank by CFD AnalysisYU Yifei, SAGARA Kazunobu, YAMANAKA Toshio, KOTANI Hisashi

    MOMOI Yoshihisa, KOBAYASHI Tomohiro,KITORA Hisataka and TAGUCHI Yuichiro

     (1)Ar d g uind= ∆( )

    ρ ρ0

    2

  • 3.解析概要

    3.1 解析空間

     CFD 解析において、実大冷水蓄熱槽(幅 2.6m(X)×

    奥行き 4.6m(Y)×水深 5.8m(Z),槽容量 69m3)を対象蓄熱槽とした(図7参照)。また、計算負荷軽減のため、

    空間の対称性を考慮して上部半槽の1/4を解析空間

    (幅 1.3m(X)×奥行き 2.3m(Y)×水深 2.9m(Z))とした(図7参照)。ディフューザーの平面上の設置位置は蓄熱

    槽の中心とし、鉛直方向の設置位置は設置水深(水

    面から蓋を除くディフューザー上面までの距離)を

    140mmと固定した。本報では、放熱過程での性能評価を行うことを想定しているため、高温水が配管の

    下部から流れ込み、ディフューザーの隙間から吹出

    される。

    3.2 解析ケース

     形状の違いによる蓄熱性能の差異を検討するため

    に、解析空間において、ディフューザー形状をパラ

    メータとし、ハーフパイプ型 type1、type2、type3、円盤型、ボックス型 type1、type2の 6条件を設定した(表1参照 )。

    図1 ハーフパイプ型 type1 [mm](a)アイソメ図 (b)断面図 (c)平面図

    300

    配管×4 外径170φ 内径150φ

    ディフューザー蓋

    隙間幅30

    両端蓋

    ハーフパイプ 外径300φ 内径280φ

    3000

    375

    375

    375

    375

    375

    375

    375

    375

    設置水深 水面

    配管×4 外径170φ 内径150φ

    両端蓋

    ハーフパイプ 外径300φ 内径280φ

    図2 ハーフパイプ型 type2 [mm]

    パンチングメタル 開口率22.7%

    配管×4 外径170φ 内径150φ

    両端蓋

    ハーフパイプ 外径300φ 内径280φ

    図3 ハーフパイプ型 type3 [mm]

    下部円盤2100φ

    ディフューザー蓋       上部円盤

    配管 外径170φ 内径150φ

    (a)アイソメ図 (b)断面図

    隙間幅30

    設置水深水面

    図4 円盤型 [mm](a)アイソメ図 (b)断面図 (c)平面図

    350

    175

    2000

    500

    500

    500

    500

    両端蓋なしのボックス型

    配管×2 外径220φ 内径200φ

    設置水深 水面ボックス

    両端蓋

    配管×2 外径220φ 内径200φ

    パンチングメタル 開口率22.7%

    図5 ボックス型 type1 [mm] 図6 ボックス型 type2 [mm]

    (a)対象蓄熱槽(全槽,69m3) (b)上部半槽の1/4 (c)XY平面図 (d)A-A' 断面図

    4600

    5800

    2600

    2900

    2300

    2900

    1300

    XZ

    Y

    A A'

    対称面

    対称面

    水面

    流入境界流出境界

    設置水深

    槽壁

    流入境界

    流出境界

    ディフューザーーハーフパイプ型type1 設置水深

    槽壁

    槽壁

    図7 解析空間 [mm]

  • 3.3 解析条件

     解析条件を表2に、システム系統図を図8に示す。

    流入流量は 8時間で 1回換水する流量 8.625m3/hとしている。全ての caseは、放熱過程で性能評価を行うことを想定しており、温度の輸送が下方向への一次

    元移流拡散となっていると考えられた換水回数 t*=0.3

    の時点まで、計算時間間隔 1sとして非定常解析を行った1)。また、蓄熱槽の放熱過程の解析であるため、槽

    内初期温度を5℃、流入水温は15℃と設定している。

    解析空間での流出境界条件は、上部半槽の底面で均

    等に鉛直下向きの流速を与え、近似的な解析を行っ

    た(図7(d)参照)。3.3.1 密度に関する条件

     本解析では、温度成層に対する重要な要素である

    密度を温度の関数として与え、式(2)で表される 4

    次式2)で近似している。

    3.3.2 パンチングメタルに関する境界条件

     本解析では、穴の直径 1.5mm、間隔 3mm、60°チドリ配置の厚み 1mmのパンチングメタルを採用している。パンチングメタルに関する境界条件は式(3)に

    より、パンチングメタルの圧力損失と関係するC2 とΔmを与えている。

    式(3)ではC2×Δmの値をパンチングメタルの圧力損失係数と見なすことができると考えられる。C2 の妥当な値を求めるために、さらにCFD解析を利用して以下のようなステップで圧力損失係数の同定を行っ

    た。1)平板上のパンチングメタルを一様流にさらして、CFD解析を行う(図9参照)。2)パンチングメタル前後の圧力損失を求める。3)一様流の流速を変化させる。4)圧力損失は流速の 2乗に比例していることを確認する。5)圧力損失係数(C2×Δm)を求めて、C2 を算出する。なお、圧力損失係数の同定の検討にあたっては、等温場の解析であり、密度を 998.2kg/m3

    と固定した。

     得られた圧力損失と流速の関係を図10に示す。

    そして、その関係から近似式を求めると、圧力損失

    は一様流の流速の 2乗に概ね比例することが確認でき、圧力損失係数(C2×Δm)として 36.6が得られた。

    4.結果と考察

     解析結果より得られた槽内鉛直温度分布とその温

    度勾配分布を用い、ディフューザーの形状による蓄

    熱槽の蓄熱性能を比較する。図11に 6条件を比較した結果を示す。caseA2の温度分布と温度勾配分布により、温度勾配が最も緩やかとなり、ハーフパイ

    プ型 type2が最も悪い蓄熱性能となることが分かる。caseC1は、caseA2の温度勾配より急となり、ボックス型 type1はハーフパイプ型 type2より良いことが分かる。

     その他の 4条件に関しては、前述の 2条件より急な温度分布が見られるが、その 4条件間での温度分布に大きな差異は見られなかった。しかし、温度勾

    配分布から見ると、各時点の最大温度勾配の違いが

    わかる。温度分布がほとんど重なって比較し難くな

    る場合、最大温度勾配により蓄熱性能を比較するこ

    とができると考えられる。そのため、ディフューザー

    の形状を蓄熱性能の高い順に並べると、ボックス型

    ケース名 ディフューザー形状

    ハーフパイプ型type1

    ハーフパイプ型type2

    ハーフパイプ型type3

    円盤型

    ボックス型type1

    ボックス型type2

    固定条件 開口部隙間周長

    開口部隙間幅

    Arin

    設置水深140mm

    流入流量

    8.625m3/h

    caseB

    caseC1

    caseC2

    caseA1

    caseA2

    caseA3

    6600mm 30mm1.7

    6600mm 30mm1.7

    表1 解析ケース

    ρ θ θθ

    = + × − ×+ × −

    − −

    999 868 6 72307 10 8 87995 10

    8 0389 10 4 785

    2 3 2

    5 3

    . . .

    . . 007 10 7 4 3× − θ [ ]kg m (2)

    5℃

    15℃=10℃Δθ

    熱源機

    放熱過程蓄熱過程

    温度成層型蓄熱槽

    空調機

    図8 蓄熱式空調システム系統図

    ∆ = × ∆( )×p C m v2 212ρ  (3)

    解析ソフト

    乱流モデル

    メッシュ数

    離散化スキーム

    計算アルコリズム

    計算時間間隔

    密度

    流量

    初期温度

    流入温度

    境界条件

    FLUENT 6.3

    RNG k-ε model

    196954

    caseA1

    200066

    caseA2

    200066

    caseA3

    129104

    caseB

    200066

    caseC1

    194543

    caseC2

    QUICK

    非定常 (SIMPLE)

    1s

    多項式近似(4次式)

    流入境界

    流出境界 流速を定める

    一般化対数則

    フリースリップ

    乱流強度 : I = 1%乱流長さスケール : L = 0.07×配管内径

    槽璧

    水面

    8.625m3/h

    5℃

    15℃

    k UI

    C k L

    ==

    3 22

    3 4 3 2

    ( )

    ε µ

    表2 CFD 解析条件

  • type2、ハーフパイプ型 type3、ハーフパイプ型 type1、円盤型となる。

     以上の結果から、ディフューザー蓋を設置する場

    合とパンチングメタルを取付けた場合には、流入流

    速を抑えることができるため、良い蓄熱性能が得ら

    れると考えられる。

    5.おわりに

     本報では、温度成層型蓄熱槽におけるディフュー

    ザーの形状が蓄熱性能へ及ぼす影響を把握した。直

    接上向きに吹出すディフューザーは蓄熱性能が最も

    悪いことが分かった。ディフューザー蓋あるいはパ

    ンチングメタルを設置したディフューザーに関して

    は、上向きの流入流速が抑えられるため、より良い

    蓄熱性能が得られた。今後は新たなディフューザー

    形状とディフューザーの設置個数、設置位置を検討

    する予定である。

    *1大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 博士前期課程*2大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 教授・工学博士*3大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 教授・博士(工学)*4大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 准教授・博士(工学)*5大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 助教・博士(工学)*6大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻  日本学術振興会 特別研究員 (PD)・博士(工学)*7関西電力株式会社

    Graduate Student, Division of Global Architecture, Graduate School of Engineering, Osaka UniversityProf., Division of Global Architecture, Graduate School of Engineering, Osaka University, Dr. Eng.Prof., Division of Global Architecture, Graduate School of Engineering, Osaka University, Dr. Eng.

    Associate Prof., Division of Global Architecture, Graduate School of Engineering, Osaka University, Dr. Eng. Assistant Prof., Division of Global Architecture, Graduate School of Engineering, Osaka University, Dr. Eng.

    JSPS Research Fellow(PD), Division of Global Architecture,Graduate School of Engineering, Osaka University, Dr. Eng.

    THE KANSAI Electric POWER CO., INC.

    兪・相良他:CFD 解析を用いた温度成層型蓄熱槽におけるディフューザーの蓄熱性能への影響に関する研究、空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表論文集,pp.147-150,2010.3丹羽・相良他:温度成層型蓄熱槽の蓄熱性能最適化に関する研究、空気調和・衛生工学会論文集,pp.57-68,1994.10

    1)

    2)

    参考文献

    45×45mm

    D=1.5 P=3 60 チ゚ドリ開口率22.7%

    周囲は周期境界条件

    150mm

    一様流流出

    45mm

    一様流流入

    図9 パンチングメタル解析モデル

    Δp = 18277v 1.9369

    020406080100120140160180

    0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5流速v [m/s]

    圧力損失      [kPa]

    ∆p

    図10 パンチングメタル圧力損失の近似式

    記号

    Arin : ディフューザーの開口部のアルキメデス数 [-]dd : ディフューザーの開口部隙間幅 [mm]g : 重力加速度 [m/s

    2]u : ディフューザーの開口部の平均流速 [m/s]ρ : 初期水温での水の密度 [kg/m3]Δρ : 流入水温と初期水温での密度差 [kg/m3]θ : 水温 [℃ ]t* : 換水回数 = 実時間 /1 回換水する時間 [-]C2 : 圧力上昇係数 [-]Δm : パンチングメタルの厚み [mm]Δp : パンチングメタルの圧力損失 [Pa]v : 一様流の流速 [m/s]

    図11 ディフューザーの形状による比較

    0 5 10 15 20 25 30 35 40

    温度勾配 [℃/m](b)温度勾配分布図

    0

    580

    1160

    1740

    2320

    2900

    槽内水深 [mm]

    caseA1caseA2caseA3caseBcaseC1caseC2

    t*=0.1

    t*=0.2

    t*=0.3

    0

    580

    1160

    1740

    2320

    2900

    5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

    温度 [℃]

    (a)温度分布図

    槽内水深 [mm]

    caseA1caseA2caseA3caseBcaseC1caseC2

    t*=0.1

    t*=0.2

    t*=0.3