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燃料噴射装置KN-6S 型 INJECTOR
燃料噴射装置KN-6S 型インジェクタ※
1.はじめに
近年の環境対応から,車には低燃費,低エミッションが求められ,インジェクタについては,低回転から高回転領域迄の幅広い流量レンジで正確な燃料の噴射が必要となる.このため,インジェクタの性能を常に車の進化に合わせて向上させ,同時に低価格化も実現する必要がある.
2.インジェクタの開発の狙い
実機からインジェクタへ要求される性能は以下に大別される(Table 1).
製品技術紹介
入 戸 慎 一*1 小 野 康 幸*2 加 藤 元*1 木 村 亮 平*1
Shinichi IRITO Yasuyuki ONO Gen KATO Ryohei KIMURA
岡 田 翔 太*3 水 野 誠*4 松 崎 義 和*5
Syouta OKADA Makoto MIZUNO Yoshikazu MATSUZAKI
*1 開発本部 第三開発部 *2 生産本部 生産技術四部 *3 生産本部 品質技術部 *4 生産本部 丸森工場
*5 購買本部 第一購買部
※ 2012 年 9 月 11 日受付
Table 1 ENGINE demand and INJECTOR requirement
エンジンへの要求 インジェクタへの要求
① 排出ガス低減 噴霧微粒化、粒径分布低ペネトレーション
② エンジン停止時蒸散ガス低減 弁部リーク量低減
③ 気筒間バラツキ対応 流量バラツキ低減
④ アイドル時低回転数化 MinQ低減*
(LFR拡大)
⑤ 異種燃料対応 アルコール燃料対応E85%~E100%
⑥ 商品性 作動音低減
*MinQ:Min流量 LFR:MaxQ/MinQ
Fig. 1 INJECTOR cross section
KN-6型2003年より量産
KN-6S型2011年より量産
KN-10型2007年より量産
インナーカラー
カシメ
インナーカラー
圧入
インナーカラー
圧入
スリーブ
カプラー
3.インジェクタ性能向上
このインジェクタの特徴は,KN-6 型を小変更に抑え KN-10 型の技術を踏襲することで量産ラインをフル活用して,設備投資を最小限に留め,低価格で高性能とした点である.
Table 1 の要求に対応した KN-10 型を Fig. 1に示す.KN-6 型に対して要求を満足するために開発された KN-10 型は高性能ではあるが,価格面で課題があった.よって KN-10 型の性能を維持し価格競争力のあるインジェクタを必要とし,KN-6S 型インジェクタを開発し(Fig. 1),2011 年 11 月より上市した.現在は,E85 燃料用などに適用拡大中である.
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ケーヒン技報 Vol.1 (2012)
(4) 作動音低減 実車商品性に影響のある作動音は,小型
カプラーの採用により音の放射面積を縮小し,低減している.
以上より,KN-6 型の価格と KN-10 型の性能を両立した KN-6S 型の製品化を実現することができた.
◆KN-10 技術移植項目(1) MinQ 低減(LFR 拡大) コイル仕様変更と吸引部磁化促進によ
り,駆動パルス Off 時のバルブ戻り時間(Toff)短縮とバラツキ縮小で,MinQ 低減を実現している(Fig. 2,3).
(2) 噴霧微粒化 燃費及び排出ガスに大きな影響のある噴
霧粒径は,噴孔直上圧の関係(Fig. 5)から,目標粒径を確保できるようシート径
(KN-10 > KN-6S > KN-6)を設定し,圧力損失低減により,微粒化を実現している(Fig. 4).
(3) 流量調整精度向上 排出ガスに大きな影響のある動的流量
は,KN-10 型と同様のインナーカラー圧入調整方式を採用して,カシメ時のインナーカラー変形による調整位置バラツキを抑え,動的流量変化を低減している.
Fig. 2 A lift waveform
リフト
時間
パルス
Toff
無効時間短縮
斜線部.Q低減(LFR向上)
Fig. 3 Magnetic circuit comparison
飽和非飽和
吸引部
磁化促進
レイアウト 非通電時 立上始め フルリフト パルスオフ
KN-6S
KN-6
KN-10
Fig. 4 Pressure in INJECTOR
噴孔
直上圧小
直上圧大VS
バルブシート(VS)
ニードルバルブ(NV)
圧力大圧力低
シート径
VSNV
Fig. 5 An atomized particle size VS pressure in INJECTOR
噴孔前圧(kPa)
噴霧粒径(μm)
目標値
KN-6S 型インジェクタの開発完了により,実機要求を満足し価格競争力のある製品を上市することができました.
最後に本開発の開始より完了迄に携わり御指導,御助言をしてくださったすべての方々,御協力をしてくださったすべての皆様に深く感謝します.大変ありがとうございました.
(入戸・小野・加藤・木村・岡田・水野・松崎)
著 者
入 戸 慎 一