環境配慮型曳船(ハイブリッドタグボート)システ …...ihi 技報 vol.54 o.1 (...

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68 IHI 技報 Vol.54 No.1 ( 2014 ) 1. 緒    言 新潟原動機株式会社は国内初となるタグボート用ハイブ リッド推進システムを開発した.本システムは,ハイブ リッド自動車と同様に,エンジンとモータおよびリチウム イオン電池を用いた推進システムであり,従来機構に比 べ,約 20%燃料消費量を低減することができ,環境負荷 の低減に貢献できる. 2. ハイブリッドタグボートの概要 本ハイブリッド推進システムではタグボートの運航状況 によって,主機関,リチウムイオン電池,ディーゼル発電 機,モータなどの特性に合わせた最適な推進動力源を使用 するように制御することで,エネルギー効率の無駄を削減 することが可能になる.本システムの特長を要約すると以 下のとおりである.また,従来機構とハイブリッド機構の 比較を1 に示す. (1) Z 型推進装置( Z ペラ )にモータを一体型とし て搭載し,システムのコンパクト化を図る. (2) 主機関およびモータによる 2 種類の駆動動力源, ディーゼル発電機関およびリチウムイオン電池によ 2 種類の電力供給源があるため,一方に不具合が あっても,もう一方で対応できるので,冗長性があ るといえる. (3) 低速航行時は積極的にリチウムイオン電池を用 い,主機関を停止させることによって燃料消費を削 減する. (4) 急激な負荷変動に対しモータが主機関をアシスト することによって,瞬時の黒煙排出を防止できる. 船舶に搭載するリチウムイオン電池は,蓄電・放電性能 はもとより船舶搭載を見据えた安全性を有し,電池システ ムとして高度な制御が必要である.リチウムイオン電池の 充電は主に陸上電源( 以下,陸電 )からの給電を利用し, 船内発電機からも給電( 充電 )が可能である. 3. 運 航 モ ー ド 本システムでは運航の形態によってモードを使い分けし ており,移動中に使用する「移動モード」,作業中に使用 する「 作業モード 」の,二つのモードをもっている. 2 に一般的な港湾タグボートの運航データモデル を示す.作業現場までの行き,帰りの移動中に使用するに は「 移動モード 」を,大型船舶の離着岸で作業するため には「 作業モード 」を選択する.これは,タグボートの 船橋にある操縦盤に切替スイッチが設けられ,船長の判断 環境配慮型曳船( ハイブリッドタグボート )システムの開発 Development of the Hybrid Tugboat System 白 石 浩 一 新潟原動機株式会社 技術センター ZP 設計グループ 南   俊 一 新潟原動機株式会社 技術センター ZP 設計グループ グループ長 古 寺 正 識 新潟原動機株式会社 技術センター E&E グループ タグボートは船体に対して大出力の推進用主機関を有しているが,稼働時間の多くは低負荷で使用される.タグ ボート全体をシステム効率の良い状態で稼働させるには,動力の複合化が必要であると考え,ハイブリッド推進シ ステムを開発した.本システムは,エンジンとモータおよびリチウムイオン電池を用いた推進システムであり,従 来機構に比べ燃料消費量および CO 2 排出量は,目標の 20%低減を達成できた.2013 3 月に,日本初のハイブ リッドタグボートが就航した.リチウムイオン電池はタグボート内の発電機で充電できるほか,停泊場岸壁に設置 された給電設備からも充電が可能である. The main engine of tugboats is designed for high-power propulsion relative to its hull, but most of their operation time is spent with low loads. In order to improve the performance of such ships, we came to the conclusion that a composite system was needed and developed a hybrid propulsion system. This system consists of an engine and a propulsion system using a motor and lithium ion batteries and it has achieved the fuel consumption and CO 2 emissions reduction goal of 20% in comparison with conventional tugboats. The lithium ion batteries can be charged by the power generator and also by plugging in to electric power on land ( shore power ). On March 2013, Japan’s first hybrid tugboat was put into service.

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Page 1: 環境配慮型曳船(ハイブリッドタグボート)システ …...IHI 技報 Vol.54 o.1 ( 2014 ) 69 でモード切替を行う. まず,「移動モード」における,推進装置のプロペラ回

68 IHI 技報 Vol.54 No.1 ( 2014 )

1. 緒    言

新潟原動機株式会社は国内初となるタグボート用ハイブリッド推進システムを開発した.本システムは,ハイブリッド自動車と同様に,エンジンとモータおよびリチウムイオン電池を用いた推進システムであり,従来機構に比べ,約 20%燃料消費量を低減することができ,環境負荷の低減に貢献できる.

2. ハイブリッドタグボートの概要

本ハイブリッド推進システムではタグボートの運航状況によって,主機関,リチウムイオン電池,ディーゼル発電機,モータなどの特性に合わせた最適な推進動力源を使用するように制御することで,エネルギー効率の無駄を削減することが可能になる.本システムの特長を要約すると以下のとおりである.また,従来機構とハイブリッド機構の比較を第 1 図に示す.

( 1 ) Z 型推進装置( Z ペラ)にモータを一体型として搭載し,システムのコンパクト化を図る.

( 2 ) 主機関およびモータによる 2 種類の駆動動力源,ディーゼル発電機関およびリチウムイオン電池による 2 種類の電力供給源があるため,一方に不具合が

あっても,もう一方で対応できるので,冗長性があるといえる.

( 3 ) 低速航行時は積極的にリチウムイオン電池を用い,主機関を停止させることによって燃料消費を削減する.

( 4 ) 急激な負荷変動に対しモータが主機関をアシストすることによって,瞬時の黒煙排出を防止できる.

船舶に搭載するリチウムイオン電池は,蓄電・放電性能はもとより船舶搭載を見据えた安全性を有し,電池システムとして高度な制御が必要である.リチウムイオン電池の充電は主に陸上電源(以下,陸電)からの給電を利用し,船内発電機からも給電(充電)が可能である.

3. 運 航 モ ー ド

本システムでは運航の形態によってモードを使い分けしており,移動中に使用する「移動モード」,作業中に使用する「作業モード」の,二つのモードをもっている.

第 2 図に一般的な港湾タグボートの運航データモデルを示す.作業現場までの行き,帰りの移動中に使用するには「移動モード」を,大型船舶の離着岸で作業するためには「作業モード」を選択する.これは,タグボートの船橋にある操縦盤に切替スイッチが設けられ,船長の判断

環境配慮型曳船( ハイブリッドタグボート )システムの開発Development of the Hybrid Tugboat System

白 石 浩 一 新潟原動機株式会社 技術センター ZP 設計グループ

南   俊 一 新潟原動機株式会社 技術センター ZP 設計グループ グループ長

古 寺 正 識 新潟原動機株式会社 技術センター E&E グループ

タグボートは船体に対して大出力の推進用主機関を有しているが,稼働時間の多くは低負荷で使用される.タグボート全体をシステム効率の良い状態で稼働させるには,動力の複合化が必要であると考え,ハイブリッド推進システムを開発した.本システムは,エンジンとモータおよびリチウムイオン電池を用いた推進システムであり,従来機構に比べ燃料消費量および CO2 排出量は,目標の 20%低減を達成できた.2013 年 3 月に,日本初のハイブリッドタグボートが就航した.リチウムイオン電池はタグボート内の発電機で充電できるほか,停泊場岸壁に設置された給電設備からも充電が可能である.

The main engine of tugboats is designed for high-power propulsion relative to its hull, but most of their operation time is spent with low loads. In order to improve the performance of such ships, we came to the conclusion that a composite system was needed and developed a hybrid propulsion system. This system consists of an engine and a propulsion system using a motor and lithium ion batteries and it has achieved the fuel consumption and CO2 emissions reduction goal of 20% in comparison with conventional tugboats. The lithium ion batteries can be charged by the power generator and also by plugging in to electric power on land ( shore power ). On March 2013, Japan’s first hybrid tugboat was put into service.

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69IHI 技報 Vol.54 No.1 ( 2014 )

でモード切替を行う.まず,「移動モード」における,推進装置のプロペラ回転数と,プロペラ出力の関係を第 3 図に示す.推進装置のプロペラ回転数が設定回転数以下のモータ推進領域においては,Z ペラの内蔵クラッチを離脱状態にしてモータジェネレータを速度制御し,プロペラを回転させて推進を行う(第 4 図).次に「作業モード」の推進装置プロペラ回転数と,プロペラ出力の関係を第 5 図に示す.静止から定速の全領域を主機が駆動し,アイドル回転数以上ではモータジェネレータがトルクアシストする.

( a ) 従来機構

( b ) ハイブリッド機構

( 注 )     :追加装置

主機関

中間軸

Z ペラ発電機関

タグボート内電力

タグボート内電力

主機関

中間軸

Z ペラ発電機関

リチウムイオン電池

モータ/ジェネレータ

サイズダウン

第 1 図 従来機構とハイブリッド機構の比較Fig. 1 Comparison of the conventional system and the hybrid system

0

200

400

600

800

1 000

0:00:00 0:30:00 1:00:00 1:30:00 2:00:00

回転数

( m

in-1

)

0

20

40

60

80

100

負荷率

(%)

移動( 行き ) 作 業 移動( 帰り )

時 刻 ( h :min : s )

:左舷主機回転数 ( min−1 ):右舷主機回転数 ( min−1 ):左舷主機負荷率(%):右舷主機負荷率 (%)

第 2 図 運航データモデルFig. 2 General operating data of harbor tugboats

プロペラ出力

プロペラ回転数

モータ推進領域 ハイブリッド領域

主機関アイドル回転数

切替回転数

小 大

小大

モータ推進

主機関 +モータアシスト

第 3 図 移動モードFig. 3 Transit mode

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70 IHI 技報 Vol.54 No.1 ( 2014 )

4. 操    船

「移動モード」,「作業モード」を使って,運航の操船を紹介する.第 6 図はそれぞれの状態における運転モードであり,港湾平面の模式図を基に,停泊,移動,作業としたときの電気系統を示す.停泊では,陸電供給からリチウムイオン電池を充電させて,満充電状態とし,出港する.「移動モード」において,低負荷(低速)から高負荷 (高速)に系統切替するには,推進用ハンドルの操作を上昇させることで自動的に行われる.なお,「移動モード」から「作業モード」への切替

は,第 6 図 - ( a ) に示す③ ⇔ ④の位置で船長の判断で手動でモード切替を行う.

5. シミュレーション

ハイブリッドシステムの構成や効果を確認するため,推進出力を 2 機 2 軸の片舷分で 2 200 PS ( 1 618 kW ) として検討した.実運航データから第 3 図に示す運航データモデルを作成し,ハイブリッドシステムの効果を確認するため,従来型タグボートとハイブリッドタグボートで,運航中の燃料消費量,CO2 排出量,にどれだけの差があるかを確認するためのシミュレーションを実施した.第 7 図にそれぞれシミュレーションで得られた燃料消費量の比較を従来型の合計を 100%とした率で示す.ハイブリッドシステムでの運航において,低速での航行時はリチウムイオン電池からの電力によってモータで推進力が得られ,この間,主機関はアイドルストップすることによって燃料消費量などの削減に効果がある.シミュレーションの結果から,従来型に比べ燃料消費量

25%,CO2 排出量 25%の削減効果があることが確認され,当初目標としていた燃料消費量 20%,CO2 排出量 20%を達成できた.

6. ハイブリッドタグボートの設計

タグボートの大きさは従来と同じとして,ハイブリッド構成機器の大きさからタグボート内の配置を検討した.実運航における種々の条件でのシミュレーションおよびタグボート内レイアウト検討を基に,最適性を検討した結果,環境性能,経済性,実運航をバランスさせる主機関容量,電池容量,モータジェネレータ容量を決定した.ハイブリッド構成機器の設置に当たっては,さまざまな安全対策が施され,異常警報を陸上の管理者に送信可能にするため,遠隔監視システムを導入した.これによって,陸上からハイブリッド構成機器の状態を監視することができる.ハイブリッド化することで従来型にはない機器類が増えたが,船内機器配置の最適化によってすべての機器を搭載することができた.第 8 図にハイブリッドタグボート内レイアウトの概略と機器容量を示す.

7. リチウムイオン電池

リチウムイオン電池の船舶への適用に当たっては,日本では船舶用としての採用実績が少ない.よって,安全性の

モータジェネレータ

カップリング

入出力軸

上部ベベルギヤ

動力伝達用クラッチ主機エンジンからの入力

モータジェネレータからの入力

垂直軸

下部ベベルギヤ

入力軸台 床

プロペラ

プロペラ軸

第 4 図 ハイブリッド用 Z ペラFig. 4 Z type propulsion ( with motor/generator )

プロペラ出力

プロペラ回転数

ハイブリッド領域

主機関アイドル回転数

小 大

小大

主機関 +モータアシスト

第 5 図 作業モードFig. 5 Work mode ( Bollard-Pull mode )

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71IHI 技報 Vol.54 No.1 ( 2014 )

船内負荷

  高負荷( 高速 )③

  作業( 高負荷 )④

GE

補機関

船内負荷

主機関 M

Li電池

陸 電Li電池

インバータ

インバータ

ZP

GE 補機関 主機関 MZP

船内負荷Li電池

Li電池

インバータ

インバータ

GE 補機関 主機関 MZP

GE 補機関 主機関 MZP

陸 電

船内負荷Li電池

Li電池

インバータ

インバータ

GE 補機関 主機関 MZP

GE 補機関 主機関 MZP

陸 電

Li電池

Li電池

インバータ

インバータ

GE 補機関 主機関 MZP

GE 補機関 主機関 MZP

陸 電

( a ) 港湾平面模式図による運航状態

( b ) 運航の電気系統

( 注 ) ・ :各状態における運転モード ・ GE :主発電機 ・ ZP : Z ペラ ・ M :モータジェネレータ

① ④ ・ Li :リチウムイオン ・ :稼働停止 ・ :稼働中

停 泊港

移 動

作 業

曳船作業

③ ⇔ ④④

タグボート

  陸 電①   発電機②

船内負荷Li電池

陸 電Li電池

インバータ

インバータ

GE 補機関 主機関 M

陸 電

ZP

GE 補機関 主機関 MZP

  低負荷( 低速 )③

停 泊

 モード

移 動

 モード

作 業

第 6 図 運航の状態Fig. 6 Operating modes

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72 IHI 技報 Vol.54 No.1 ( 2014 )

担保として考えれば,より高い安全性を有するリチウムイオン電池を使用することが望ましい.本システムには電極を LiFePO4(りん酸鉄リチウム)とした IHI ( A123system ) のリチウムイオン電池を採用した.正極に LiFePO4 を使用しているので,内部短絡による発熱で高温になっても酸素分離しにくく,熱暴走

( thermal runaway ) が起こりにくい.このため火災や爆発の危険性が非常に低い.安全性担保の確認のため,一般社団法人電池工業会の

SBA 規格を主とした規格を基に安全性試験を行い,十分に安全性があることを確認した.なお,本ハイブリッドシステムには,電圧調整装置( DC/

DC コンバータ),やバッテリ制御ユニット ( BCU ) 含めた電池システムも IHI 製のものを採用した(第 9 図).

8. ハイブリッドタグボートの就航

これまでの開発において得られた結果から,環境負荷低減に対しハイブリッドシステムは大いに有効であることが確認できた.この効果を確認するため,ハイブリッドタグ

ボートの建造を開始し,2013 年 3 月に日本郵船株式会社グループの株式会社ウィングマリタイムサービスが導入するタグボート「翼」( 256 トン)として横浜港に就航した.陸上からの給電もできるプラグイン機能を備えたハイブリッドタグボートの就航は日本初となる(第 10 図および第 11 図).今回,就航したハイブリッドタグボートは従来機構のディーゼルエンジンに加え,モータジェネレータとリチウムイオン電池を搭載し,最高速度は時速 15 kn

(約 28 km/h),モータジェネレータ駆動では 10 kn(約19 km/h)で航行できる.リチウムイオン電池はタグボート内の発電機で充電できるほか,停泊場岸壁に設置された給電設備からも充電できる.

35%

59%

6%

100%

13%2%

60%75%

行 き 作 業 帰 り 合 計

燃料消費率

(%)

100

80

60

40

20

0

:従来型:ハイブリッド型

第 7 図 シミュレーション(燃料消費率)Fig. 7 Simulation results ( fuel consumption rate )

モータ/ジェネレータ400 PS ( 294 kW )

主機関1 800 PS ( 1 324 kW )

リチウムイオン電池( 150 kW・h )

インバータ

Z ペラ2 200 PS ( 1 618 kW )

主発電機 ( 400 kW ) アクティブフィルタ

第 8 図 ハイブリッドタグボート内レイアウト概略と機器容量Fig. 8 Layout and capacity of the hybrid tugboat

充 電

放 電バッテリ制御ユニット( BCU )

バッテリ

昇 圧

降 圧

第 9 図 リチウムイオン電池Fig. 9 Lithium ion battery

第 10 図 ハイブリッドタグボート「翼」全景Fig. 10 Hybrid tugboat “Tsubasa”

第 11 図 「 Hybrid」表示Fig. 11 “Hybrid” Logo

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73IHI 技報 Vol.54 No.1 ( 2014 )

ハイブリッドタグボートの主要目を次に示す.全長 ( Loa ) 37.20 m

全幅 ( B ) 9.80 m

深さ ( D ) 4.40 m

喫 水 3.35 m

総トン数 256 トン資 格 JG(国土交通省海事局)航行区域 沿海区域(限定)船 速 15.0 kn

最大曳航力 前 進 55 t

後 進 52 t

主機関 ニイガタ 6L28HX,2 台 1 324 kW,2 台モータジェネレータ 294 kW,2 台推進器 ニイガタ ZP-31,2 台リチウムイオン電池 IHI ( A123system )

150 kW·h,2 台

9. 結    言

ハイブリッドタグボート「翼」の就航後,運航データを収集し,実際にシミュレーションのとおり効果が得られていることを確認した.収集したデータによれば,目標の燃料消費量 20%削減,

CO2 排出量 20%削減を超える結果が得られた.今後も運航データの収集を行い,運航の最適な運用方法を検討し,

さらなる燃料消費量,CO2 排出量削減を図っていきたい.開発したハイブリッド推進システムは,まずタグボートへの展開を念頭において開発したものであるが,上記の特長からタグボート以外の,例えば,サプライボート,小型フェリー,観光船などにも適用が可能である.ハイブリッド推進システムは複数の動力源を有しており,船舶の要求する運航状況によって組み合わせるモータ,リチウムイオン電池,主機関,ディーゼル発電機それぞれの容量と制御の最適化によって,さまざまな用途に適用が可能なシステムである.

― 謝  辞 ―

開発に協力いただいた海洋政策研究財団(旧財団法人シップ・アンド・オーシャン財団)に感謝申し上げます.また,本研究の一部は一般財団法人日本海事協会の「業界要望による共同研究」スキームによって同協会の支援を受け実施し,建造,検証のステップにこぎつけられた.同協会および共同研究者である日本郵船株式会社グループに対し,ここに記し,感謝の意を表します.

参 考 文 献

( 1 ) 公益社団法人日本マリンエンジニアリング学会:第 57 回特別基金講演会 講演予稿集 2013 年 3 月

( 2 ) 一般社団法人日本作業船協会:作業船協会機関誌「作業船」 第 313 号 2013 年 10 月