締付システムの 較正とテストに · 2020-07-18 ·...

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1 締付システムの 較正とテストに 関するポケット ガイド

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Page 1: 締付システムの 較正とテストに · 2020-07-18 · チのテストと較正の標準策定に取り組んでいま す。このような標準が発行されるまでは、使用す

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締付システムの較正とテストに関するポケットガイド

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2 | 締付システムの較正とテスト

アトラスコプコの 較正サービス

アトラスコプコは、各地域の認定機関によって認定された較正試験所を世界中の

さまざまな場所に有しており、ツールメーカーの中でも特別な地位を占めていま

す。提供している較正サービスは、トルクだけではありません。アトラスコプコは、

角度、力および電気的値に関する較正サービスのプロバイダーでもあり、世界 20か国以上で較正試験所を運営しています。もちろん、ほとんどの較正サービスと

機械能力テストをお客様の工場でも実行可能です。お客様からはこうしたオンサ

イトサービスをご依頼いただくことが多く、ダウンタイムを最小限に抑えること

ができます。弊社の認定試験所は、ISO/IEC 17025 に準拠して認定されており、

ISO 9001、ISO 10012、IATF 16949 などのすべての品質標準要件を満たしています。

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締付システムの較正とテスト

1. はじめに 4

2. 測定と較正が必要な理由 4

3. 定義 4

4. 基準と標準 8

5. 測定および較正試験所 10

6. 較正のタイプ 11

7. 較正手順 13

8. 証明書の要件 15

9. 較正間隔 16

10. 較正担当者の要件 16

11. 角度較正の特殊性 17

12. 締付システムの較正作業における 特別な考慮事項 18

13. 力較正における特殊性 19

14. 油圧レンチ 20

15. 適切な較正のタイプ 22

16. 品質保証、信頼性および環境保護 22

17. 業界の要件 25

18. 資産管理 26

19. 較正のメリット 27

20. 詳細な情報ソース 27

21. プロフェッショナルな較正サービスプロバイダー 28

22. アトラスコプコの輸送ソリューション 28

23. トレーニング、セミナーおよびワークショップ 30

付録 31

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4 | 締付システムの較正とテスト

はじめに

このポケットガイドは、製造物責任などの問題を

考慮して、高い信頼性、品質、安全性でボルト締

め組立ツールを使用できることを目的としていま

す。このガイドでは、産業用ツールに関する測定

および較正の重要な用語を定義し、電動/空圧式

ナットランナのテスト間隔や方法など、多くのこ

とをご提案しています。また、測定機器の較正お

よび関連する較正手順を実行できる担当者の要件

についても説明しています。

Tensor電動ナットランナとコントローラ

測定機器は、定期的にテストおよび較正を

実施した場合にのみ正確に機能します。

1

定義

このセクションでは、誤解を避けるため、いくつ

かの重要な用語の定義を説明します。実際に、こ

れらの用語は誤った文脈で使われていたり、間

違って理解されていたりすることが多く見受けら

れます。

3

測定と較正が 必要な理由

空圧ツールと電動ツールは、定期的に測定し、検

証する必要があります。較正された測定機器はこ

うした目的のために使用され、定期的な検証に

よってツールが適切かつ正確に機能することが保

証されます。

現在の品質要件では、メーカーが担う最終製品責

任により、この手順は不可欠となっています。適

切に整備、調整されたツールのみが期待どおりの

生産成果を達成し、不適切な締付による多額のコ

スト発生と安全性の低下を防ぎます。定期的な測

定と較正点検の実施により、メーカーの生産問題

とそれに伴う法的影響を防ぐことができます。

適切な測定は、産業品質保証の基本的かつ不可欠

な要素です。これは、品質管理システムの国際規

格(ISO 9001、ISO 10012、QS 9000、IATF 16949

2

など)に準拠するほか、製造物責任の問題(22 ペー

ジを参照)および環境保護にも関係します。

精度は、測定機器の較正と調整(必要な場合)に

よって保証されます。多くの標準が機器の較正に

関する要件を規定しており、いくつかの品質標準

では、定期的に較正を実行して、常に実際の測定

値と正しい値との偏差を把握することを求めてい

ます。用途によって求められる精度に達するよう

に、機器を適切に較正する必要があります。

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測定

測定は、システムまたは測定機器の正しい機能や

精度などの要件が満たされているかどうか判断す

ることを意味します。通常、測定結果は 1 つの測

定値または一連の測定値です。測定結果は常に、

おおよそ正確な推定値を表し、測定の不確かさが

含まれています。測定の目的は、不明な要因につ

いて明確な説明を行うことです。

標準 (測定標準)

英語では「standard(規格/標準)」という用語は、

要件が記載された書面や較正プロセスで使用する

標準測定機器を表すのに使用されます。この段落

では標準測定機器についてのみ取り上げます。

標準とは特定の数量の定義であり、基準の一種で

す。よく知られている標準に、ブランズウィック

のドイツ国立研究所(PTB)が所有している原子

時計があります。この時計は原子物理学の定数を

用いて秒を定義することで、時間を事実上、「標

準化」します。この定数はセシウム原子時計を使

用して得られます。この定数を基準として、1 秒

や 1 時間がどの程度の長さであるか、使用してい

る時計が正常に作動しているか、または調整が必

要であるかを知ることができます。もう 1 つ非常

によく知られている標準として、フランスのセー

ヴルにある国際度量衡局(BIPM)のキログラム(質

量)原器があります。

また、トルク、力、温度など、他の物理的な要素

の標準もあります。ほとんどの国が、特定の国に

適用され国際的レベルでも比較できる独自の国内

規格を持っています。生産工程で使用される標準

のことを作業標準といいます。

調整

調整は、実際の値と要求される測定値の偏差が可

能な限り小さくなり、機器の仕様範囲内に収まる

ように測定機器を設定するプロセスであり、測定

機器に対する物理的な変更を意味します。

調整は通常、較正と密接に関連しています。これ

ら 2 つのプロセスの目的は、偏差を検出して文書

化することです。較正プロセス中に、測定機器ま

たはコントローラの出力に示される測定値が許容

範囲外になった場合は、測定値がこれらの許容範

囲内に収まるまで機器を調整する必要がありま

す。

較正:規定の測定システムを使

用して、2 つの値(較正対象の

機器が示した値と、基準機器が

示した値)を互いに比較します。

調整:測定機器 またはコントローラの出力の測

定値が許容範囲外である場合

は、機器を調整する必要があり

ます。

較正

較正は、測定機器または制御装置の測定値と、上

位の基準機器が示す値との偏差を特定し、文書化

することです。これは、2 つの値(1 つの値と、1つの既知の固定値)を互いに比較することを意味

します。

測定機器の較正時には、規定の条件下における入

力と出力の相関が特定され、文書化されます。入

力はトルクや回転角度など、測定される物理的な

要素です。出力は通常、測定機器の電気信号です

が、表示値の場合もあります。

キログラム原器

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6 | 締付システムの較正とテスト

機械能力指数(Cm 値)は、ツールが動作点で要

求品質を製造する一般的な能力に関する基準で

す。動作点は指定された範囲の中央に位置して

いなければなりません。指数は、機械の再現性

を示します。系統誤差は考慮されません。それ

に対して、重要機械能力指数(Cmk 値)は、ツー

ルの動作点と目標値との偏差を示します。つま

り、要求動作点に対する準拠性を示します。Cmk

では、機械の系統誤差も考慮されます。

指定された範囲に対して標準偏差が小さいほ

ど、Cm 値は高くなり、生産工程の信頼性は高く

なります。つまり、3 本のダーツをボードに投

げた場合、それらは常に特定の場所に刺さりま

すが、「常に真ん中に命中するとは限らない」 

ということです。機械を指定された範囲の中心

に正確に設定した場合、Cmk 値は Cm 値と等しく

なります。設定が指定された範囲の中心から離

れるに従って Cmk 値は小さくなります。

目標は、可能な限り高い Cm 値と Cmk 値を実現

することです。ダーツボードの図は、このこと

を図解しています。

Cmk 値が高い場合のみ、高い Cm 値を得られます。

左:高 Cm 値、低 Cmk 値。ナッ

トランナの場合、この値は、

機器動作の再現性(繰り返し

精度)が高いにもかかわらず、

常に正しくない結果であった

ことを意味します。

中央:低 Cm 値、低 Cmk 値。ナッ

トランナは、ほぼすべての締

付で異なる結果を示します。

右:高 Cm 値、高 Cmk 値。この特

定のケースでは、ナットランナ

は常に高い再現性(繰り返し精

度)で正しい結果を提供するか、

常に指定されたトルク範囲に収

まります。

検証

検証とは、機器がメーカーによって規定された仕

様に適合することを確認するための、基準機器に

対して行う点検プロセスです。

認定

認定とは、独立した認定認証機関による、基準と

標準に関するプロセスおよびルーティンの確認す

る事です。認証機関によって発行された証明書は、

標準に準拠している証明です。証明書は通常、期

限付きで発行され、個別に検証されて準拠性を保

証します。

精度

精度は、測定機器や機械が真値に近い値を供給す

る能力を示します。機械能力指数 Cm および Cmk

は通常、精度に関して使われます。これらの指数

は、電動ツールの品質と適合性を評価する方法と

して自動車業界で確立されました。

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測定の不確かさ

測定の不確かさは、動作条件における測定機器の

精度の基準です。測定の不確かさは定量ではなく、

各測定機器で個別に測定されます。これは、測定

機器が要求品質プロセスに適しているかどうかを

判断するのに使用されます。過度の精度をもつ測

定機器は高価であるため、最適な測定機器を選択

することでコストを節約できます。

許容範囲

許容範囲は、上限と下限の差異、すなわち目標値

からの許容偏差です。つまり、指定された許容範

囲内に測定値が収まっている限り、目標値からの

偏差は許容されます。

トレーサビリティ

トレーサビリティは、測定機器が示した値を、1つまたは複数の段階を経て、国内規格と比較する

プロセスを示します。各段階で測定機器は、より

高いレベルの測定標準を用いて較正された測定標

準(基準)と比較されます。

トレーサビリティ: 測定標準(基

準)でさえ、常に絶対的に正確

というわけではありません。較

正の階層において、使用した標

準による測定の不確かさは、頂

上から最下部に向かうにつれて

増加します。このため、各測定

標準または測定機器は、より高

い精度の標準を使用して較正す

る必要があります。

あらゆる測定値が測定の不確かさの条件となりま

す。この不確かさは、階層の最上位の標準から離

れるに従って増大します(下図参照)。各標準ま

たは測定機器は、より高いレベルの基準を使用し

て較正する必要があります。経験則として、較正

に使用される標準(基準)は、較正対象の機器よ

りも少なくとも 5 倍高い精度を有している必要が

あります。

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8 | 締付システムの較正とテスト

測定機器

測定に使用する機器と、これらの機器を検証する

のに使用する標準(基準)の両方が測定機器です。

また、通常、品質保証に使用する機器と他の目的

に使用する機器は区別されます。

データアナライザに接続されたトランスデューサ

(上図)やトルク/アングルレンチ(右図)など

の品質保証に使用する測定機器は、常に高い精度

の基準を使用して適切に較正する必要がありま

す。

以下に、品質保証と工業生産の、最も重要な基準

と標準について簡単に説明します。このリストは、

すべての基準と標準を網羅しているものではあり

ません。

ISO 9000:この国際規格は、品質管理システムの

基本原則と条件を定義しています。この規格は、

品質管理の実施に関する特定の要件に準拠するた

めに、会社の経営陣が満たすべき要件を規定して

基準と標準4

います。これは社内で品質管理を実施するためと、

会社が特定の要件に準拠していることを第三者に

実証するための、双方に使用されます。

ISO 9001:この国際規格は、組織の製品がお客様

の要件および法律に適合していることを実証する

必要がある場合や、顧客満足度の向上を目標とす

る場合の、品質管理システムの前提条件を定義し

ています。この規格は、品質管理システム全体の

モデルについて説明しています。

QS 9000:この米国規格は、米国市場において自

動車メーカーの特別な要件を満たすように策定さ

れました。自動車業界の特殊なニーズに合わせて

ISO 9001 システムを改良したものです。2006 年

以降、すべての QS 9000 認証は失効し、国際規格

IATF 16949 に差し替えられました。

IATF 16949:品質管理システムの要件です。この

仕様は、自動車業界の車両およびスペアパーツ生

産における、ISO 9001 の適用に関する特別な要件

について規定しています。この規格の以前のバー

ジョンは、ISO/TS 16949 として知られています。

VDA 6.1 ~ 6.4:ドイツの自動車業界のこれらの

実務規範は、ドイツの自動車メーカーのサプライ

ヤに義務付けられるもので、IATF 16949 の要件と

ほぼ同じです。VDA 6 は、「管理」および「製品

とプロセス」の 2 つの領域に分類されています。

ISO/IEC 17025:この規格は、測定および較正試

験所の能力に関する一般的な要件を定義していま

す。ISO/IEC 17025 により、認定試験所は、有効

な測定結果をもたらすことを実証し、作業の信頼

性を向上させることができます。

ISO 10012:この規格は、測定管理システムの品

質要件について規定しています。規格は、測定プ

ロセスの効果的な管理および測定機器の計量確認

に関するガイダンスを提供しており、測定機器と

測定プロセスの両方が本来の目的に適しているこ

とを保証するのに役立ちます。

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以下の基準と標準では、締付システムに関して使用される最も重要な較正および測定手順について規定しています。

EURAMET/cg-14:これは、トルク較正の最も重

要な標準の 1 つです。トルク測定機器の較正手順

について規定しています。較正プロセスの結果を

分類しています。等級は、対象の測定機器の精度

を示しています。この規格は、ベースとなってい

るドイツの DIN 51309 とほぼ同じです。

DIN 51309:上記を参照してください。

VDI/VDE 2646:トルク測定機器の較正の、最小

要件を定義しているドイツの規格です。手順が

EURAMET cg-14 よりも大幅に簡単であるため、

一般的に工場規格とも呼ばれています。EURAMET cg-14 と異なる点は、測定結果が分類されていな

いことです。

VDI/VDE 2645-2:比較的新しい規格で、締付シ

ステムで使用される電動ツールの機械能力テスト

(MCT)の非常に包括的な手順について規定して

います。この手順では、測定された測定値のさま

ざまな統計的分析を使用して、ツールの性能の評

価を提供します。この規格は、トルクなどの制御

可能な目標変数のあるツールのみをカバーしてい

ます。ストール型ツールは、この規格ではカバー

されていません。

VDI/VDE 2647:この規格は、電動ツールのツー

ルタイプテスト(ホモロゲーション、13 ページを

参照)の手順を定義しています。規格は非常に包

括的であり、特定のツールタイプが特定の生産工

程に適当であるかを検証するのに使用します。

VDI/VDE 2648:この規格は、直接的(第 1 部)

またはジャイロスコープを介して間接的(第 2 部)

に回転角度を測定する、回転角度センサおよび測

定機器のトレーサブルな較正の手順を定義してい

ます。これは現在、トランスデューサの角度較正

用の、国際市場で唯一検証済みの較正規格である

ため、この領域の数多くの国内基準の基本として

使用されています。

参考情報: 関連用語の詳細な定義

については、VIM 発行の

「International Vocabulary of Basic and General Terms in Metrology(国際計量計測用語 - 基本および一

般用語)」を参照してください。

ISO 5393:電動組立ツールの性能試験方法を規定

しています。この分野をカバーしている唯一の国

際基準です。最近更新され、電気/バッテリ駆動

式/空圧式の締付システムもカバーするように拡

張されました。この基準は、受入基準を推奨また

は設定していません。

ISO 6789:この基準はトルクレンチの較正手順を

定義しており、2 部構成になっています。第 1 部

はレンチメーカー向けで、適合宣言の最小要件に

ついて規定しています。第 2 部では、較正の要件

の代わりに測定の不確かさの判定について規定し

ています。第 2 部は産業ユーザー向けです。

ISO 376:この規格は、力トランスデューサの較

正手順を規定しています。とりわけこのようなト

ランスデューサは、多くの組立工程で使用される

プレスシステムの較正に使用することができま

す。較正プロセスは、引っ張りと圧縮の両方をカ

バーしています。この規格の登場により、多くの

国内規格が統一され、差し替えられました。

VDI 2862:較正規格ではありませんが、この基準

ではネジ部品を使用したジョイントの分類につい

て規定しています。また、特定の用途に適したツー

ルを選択するためのガイドでもあります。この選

択は、特定のツールに必要な較正のタイプに大き

く影響します。

VDI:ドイツ技術者協会は、国際基準

を利用できない領域、国際基準が失

効した領域、または国際基準が業界

の現在の要件を満たしていない領域

の、国内基準および仕様を積極的に

策定しています。 多くの VDI 基準が、長年にわたって

事実上の国際標準および/または、

しばしば国際基準の基礎として使用

されています。

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10 | 締付システムの較正とテスト

ISO:国際標準化機構は、材料、製品、

プロセス、およびサービスが、目的に

適していることを保証するために使用

できる基準と標準を策定しています。

ユーザーには、多数の較正試験所、さまざまな較

正手順および測定手順の選択肢があります。特定

の目的に適した試験所や手順を見つけるのは必ず

しも容易ではありません。

ほぼすべての国に、国内の較正試験所の質を保証

する責任を担う認定機関があります。認定試験所

は、絶えず中立的に評価され、監視されます。こ

れにより、認定試験所が実施する較正サービスは、

高い品質と信頼性が保証されています。

測定および 較正試験所

5

通常、認定較正試験所と非認定のメーカー較正試

験所は、区別する必要があります。

認定較正試験所

認定較正試験所は、測定機器の測定された要素に

関して、認定によって規定された測定範囲内への

較正作業を実行します。発行された較正証明書は、

実行された較正作業が規定の標準または手順に準

拠し、国内の測定標準に対してトレーサブルであ

ることを認証します。このトレーサビリティは、

ISO 9000 系および ISO/IEC 17025 標準で必要とさ

れています。

ほとんどの国内認定機関は、ILAC(国際試験所認

定協力機構)のメンバーです。これは、較正証明

書が、他の ILAC 加盟国でも同様に承認されるこ

とを意味します。

非認定メーカー較正試験所

メーカー較正試験所は、国内当局または機関の認

定を受けていません。これらの試験所は、その会

社独自の手順に従って測定と較正作業を実行しま

す。該当する基準および標準への厳密な適合は保

証されません。使用される測定基準は、トレーサ

ブルな方法で較正されるとは限りません。これら

の試験所の品質は通常、独立機関によって監督さ

れていません。このため製造物責任訴訟で、これ

らの試験所が発行した較正証明書を裁判所が認め

るかどうかは、非常に疑わしいと言わざるを得ま

せん。このような賠償責任手続きにおいて裁判所

は、適切な品質保証プロセスが適用されたかどう

か、較正手順が現在の較正技術水準に準拠してい

るかどうかを判断する必要があります。例外的な

場合にのみ、メーカー較正試験所はこれらの要件

のすべてに適合します。

認定較正試験所でプロフェッショナルな較正を

行っている較正エキスパート

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多数の較正試験所およびプロバイダーがさまざま

な測定および較正サービスを提供しています。適

切なサービスを選択することは簡単ではありませ

んが、品質および安全上の理由から大変重要なこ

とです。最初の手順は、較正対象が生産ツールま

たは測定機器のどちらであるかを特定することで

す。これは、較正方法が非常に異なり、目的もさ

まざまであるためです。生産ツールは、生産ライ

ンでの再現性と安定性の要件を満たす必要があり

ます。それに対して、測定機器ははるかに高い精

度を必要としますが、生産ツールと同様の耐久性

を備えている必要はありません。どちらの場合も、

結果のトレーサビリティの問題は重要です。

認定較正(測定機器)

認定較正は、規定の基準と標準に従って、検証済

みの手順を使用して実行します。これは、認定較

正試験所のみが実行できます。較正に使用される

測定機器は、国内規格に対してトレーサブルであ

る必要があります。また、測定の不確かさを計算

し、証明書に記載する必要があります。認定較正

試験所は、計量に関する多くの専門知識を有して

います。

このため、認定較正証明書は、関連する製造物責

任問題が発生した場合に、証拠として提出されま

す(15 ページを参照)。また、ILAC 合意により、

認定較正証明書は国際的に有効です。

較正のタイプ6

認定試験所は、認定の中で明確に定

められている測定機器で、較正を実

行します。この作業は、国内認定機

関によって定期的に検証および監視

されています。

工場較正試験所は、国家当局または

機関の認定を受けておらず、独立機

関による手順と結果の管理および検

証が行われていません。

通常、トルク測定機器の認定較正は、欧州規格

EURAMET cg-14 または同等の国内規格に従って

実行します。認定角度較正は、VDI/VDE 2648 ま

たはこの基準に類似する国内適合に従って実行し

ます(9 ページを参照)。

測定機器の認定較正を実行している様子。

ILAC(International Laboratory Accreditation Cooperation:国際試

験所認定協力機構):ほとんどすべての工

業先進国によって署名された協定。加盟国

の認定試験所の証明書は、他の ILAC 加盟

国でも認められています。

傾向:不審な非認定較正プロバイダーに

よって提供される多数の疑わしい較正を

回避するために、認定較正の数は急速に増

えています。

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12 | 締付システムの較正とテスト

メーカー較正(測定機器)

メーカー較正(「作業標準較正」または「ISO 較正」

とも呼ばれる)には通常、較正試験所の単独責任

下で実施する、簡易測定手順が含まれます。較正

範囲は試験所ごとに異なり、多くの場合、非常に

制限されています。メーカー較正サービスは、国

内または国際規格の要件に必ずしも準拠していな

い場合があります。使用される測定機器には、国

内規格に対するトレーサビリティが欠如している

ことがあります。また、多くの場合、測定の不確

かさの説明はありません。較正証明書の内容に対

する公的義務はありません。このことは確かに問

題で、多くの非認定較正プロバイダーが疑わしい

較正サービスを非常に低価格で提供し始めたこと

で、近年、さらに大きな問題となっています。こ

のため、一般的な傾向は、信頼できる文書化され

た測定結果を確実に得られる認定較正に向かって

います。

ただし、多くの認定較正試験所では、簡易的な低

コストの代替手段として、メーカー較正も提供し

ています。メーカー較正サービスを提供している

信頼できる較正試験所は、メーカー較正において

も、定義および検証済みの測定手順に従って較正

を行っています。簡易的ではありますが、国内ま

たは国際規格に基づいていて、ユーザーにも明ら

かにされます。これらの認定試験所は、基準機器

のトレーサビリティを保証しており、メーカー較

正実行時にもこれを保証します。

認定較正(生産用のツール)

多くの国(特にアジアおよび北南米)では、生産

用のツールの認定較正を提供しています。このよ

うな較正が世界規模で提供されない理由は、動的

な生産ツールの較正の可否、および較正方法につ

いて論争が続いているためです。このことにより、

一部の国内機関がこの種の認定を提供し、他の機

関は提供しないという状況になっています。また、

これまでに確認された主な問題として、これらの

認定を提供しているどの国内機関も、1 つの共通

の較正手順に合意できなかったことが挙げられま

す。このため、非常に多くの異なる較正手順と結

果が存在することになりました。これらは比較で

きないため、ほとんどの場合、このような較正証

明書の国際的承認を得ることはできません。した

がって、この種の認定較正は残念ながら、ILAC 合

意によってカバーされていません。

機械能力テスト(生産ツール)

機械能力テスト(ツール較正または比較測定とも

呼ばれる)は、ツールの Cm および Cmk 値を判断

するために実行されます。結果とその統計的評価

に基づいて、ツールが特定の用途に適しているか

どうかを判断することができます。

設備の整った試験所では、テストベンチなどを使

用して、実際の締付用途をシミュレーションする

ことができます(13 ページの写真を参照)。通常、

一連の「ソフト」および「ハード」の締付をシミュ

レーションして、ツールが該当する要件に適合し

ているかどうかを判断します。

「認定ツール較正」(上記参照)とは異なり、機械

能力テスト(MCT)は業界によって国際的に認め

られているプロセスです。このような MCT の実

行方法を規定している最もよく知られた国際規格

は、ISO 5393 です。過去数年間に国際的な承認を

得たもう 1 つの標準として、ドイツの VDI/VDE 2645-2 があります。

自転車のボトムブラケットには右ネ

ジと左ネジがあります。正しいトル

クを加えるには、ナットランナは時

計回りと反時計回りの方向に等しく

正確に動作する必要があります。

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13

ホモロゲーション

(生産用のツール)

単一のツールをテストする MCT とは異なり、ホ

モロゲーションはツールタイプのテストです。こ

の目的のために、最大 3 つの同じタイプで、時間

のかかる手順を実施します。一部のテストは、極

端な条件下で実行されます。テスト期間は、MCTよりも大幅に長くなります。ホモロゲーション手

順では、ツールの代表的な Cm および Cmk 値も測

締付ツールの機械能力は、このテストベンチな

ど、トレーサブルに較正された測定機器を使用

して定期的にテストする必要があります。

定します。通常、ホモロゲーションは、生産工程で、

特定の機械タイプを使用するための承認を得るた

めに実行されます。自動車業界では通常、ホモロ

ゲーションが義務付けられており、VDI/VDE 2647に従って実行されます。

ホモロゲーションは、品質の問題が特定のタイプ

のツールに起因すると疑われる場合にも実行され

ることがあります。この場合の目的は、特定のツー

ルタイプの動きに関する包括的な情報を取得する

ことです。

典型的な較正手順では、いくつかの規定の手順に

従います(次ページの図を参照)。

1. 機能のテストと目視検査により、較正する機器

の損傷を特定します。目的は、機器のハウジング、

ディスプレイ、ケーブル、または接点の損傷を

特定することです。検査対象には、較正に必要

な付属品と技術文書(技術データ、運転マニュ

アル、サービスマニュアルなど)も含まれます。

その後、較正対象機器で機能テストを実行しま

す。このテストでは、機器の正常な動作を検証

します。また、基本設定、セルフテスト機能、

ゼロ点調整もカバーしています。

2. 検査後には、機器が現在の状態で較正に適して

いるかどうか、または修理が必要かどうかを判

断する必要があります。修理が必要な場合、較

正試験所はお客様と連絡を取り、修理作業の範

囲と費用についての合意を得ます。機器の修理

が不可能な場合、試験所は機器を廃棄して交換

することを提案します。

較正手順7

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14 | 締付システムの較正とテスト

3. 機器が較正に適している場合は、規定の基準ま

たは標準に従って較正手順を実行します。機器

を最適化する必要があり、それについてお客様

の合意が得られた場合は、機器の調整を実行し

ます。調整後、較正手順を再度実行します。

4. 較正手順の完了後、試験所の専門家が測定デー

タの妥当性を確認します。逸脱がある場合は、

較正手順を再度実行するか、機器を修理する必

要があります。

5. 妥当性確認の結果を許容できる場合は、該当す

る基準と標準に従って、較正証明書およびその

他の関連文書が発行されます。最後に、較正済

みの機器にラベルが付けられます。通常、ラベ

ルには推奨される次の較正の期日が記載されま

す。ただし、正しい間隔で較正を行う責任はお

客様が負うものとします。

通常の較正手順:目視検査と機能テストから開始、

較正および測定結果の妥当性確認、文書の発行と

機器へのラベル貼付で終了。

工場較正ラベル

認定較正ラベル(縮尺:1:1)

較正手順

修理、または廃棄の

可能性

終了

NG

OK

いいえ

はい

目視検査と機能テスト

起動

機器が較正に適して

いるか?

規定の手順に従って較正、

必要に応じて調整を実行

測定データの妥当性確認

OK または NG

較正証明書/文書の発行

機器への

ラベル貼付

atlascopco.com

2019 20 21 22次回の較正日

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15

証明書には、どのような情報が含まれている必要

があるでしょうか ? 証明書の種類は、各サービス

プロバイダーによって大幅に異なります。

認定較正証明書に含める必要がある情報は明確に

定義されており、次の情報が含まれている必要が

あります:

• 測定機器の、固有の識別情報(タイプおよびシ

リアル番号)

• 較正日

• 顧客名および住所

• 基準のリストと国内規格に対する トレーサビリティに関する情報

• 較正手順/基準

• 環境条件

• 得られた較正結果(該当する場合、調整の前後

の結果)

• 測定の不確かさ

• 有効期間の間隔

• 調整値または較正値

• 予想される使用上の制限事項(結果による)

• 測定機器の個体較正番号

• 認定較正試験所の一意の識別情報

• 較正作業者の名前と署名

• 較正試験所責任者またはその代理人の名前と署

メーカー較正の場合、条件はこれほど明確ではあ

りません。メーカー較正は較正プロバイダーの単

独責任で実行されるため、発行される較正証明書

は上記と大幅に異なることがあります。現在、拘

束力のある要件はなく、発行される証明書は署名

やスタンプのない単純な売上伝票から、数ページ

にわたる非常に包括的な較正証明書までさまざま

です。

ただし、高品質なサービスを提供しているプロ

フェッショナルな較正試験所は、メーカー較正で

あっても、証明書に少なくとも以下の情報を保証

しています:

• 測定機器の一意の識別情報

• 較正日

• 基準のリストと国内規格に対するトレーサビリ

ティに関する情報

証明書の要件8 • 較正手順/基準

• 較正結果

• 測定機器の個体較正番号

• 周囲条件

• 機関の識別情報と較正作業者の署名

機械能力テスト(MCT)に対して発行される証明

書は、較正証明書に似ていますが、機器の種類と

適用される手順にある程度依存します。適切な証

明書には、少なくとも以下の情報が含まれている

必要があります。

• ツール固有の識別情報

• 顧客名および住所

• テスト日

• 基準器のリスト

• テスト手順/標準

• 最大値、最小値、指定された目標値と測定値

• 調整値

• 規定のエラー制限

• 測定された Cm 値および Cmk 値

• 機関の識別情報と較正実行者の署名

メーカー較正、認定較正を問わず、情報の欠落ま

たは不完全さは、試験所またはサービスプロバイ

ダーの能力の欠如を示しており、お客様はその信

用性を確認する必要があります。責任問題が発生

した場合、および結果のトレーサビリティを証明

する場合には、適切な証明書が必要です。情報の

欠落、誤解を招く情報、誤った情報は、お客様に

とって重大なリスクとなります。

右:プロフェッショナルな試験所が較正証

明書で提供する最小限の情報。認定較正お

よび機械能力テストの証明書のサンプルを

付録に掲載しています。

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16 | 締付システムの較正とテスト

較正間隔は用途により異なるため、個別に決定する必要があります。

多くの場合、測定機器および生産機器では年 1 回の較正が推奨されています。

測定機器と生産機器に要求される較正間隔につい

て、お客様から頻繁に問い合わせを受けます。較

正結果は常に現在の状態を示し、時間の経過とと

もに変化するため、この質問に対する一般的な回

答はありません。要求される較正間隔は、次のよ

うなさまざまな要因に依存します。

• 測定または生産した量

• 許容範囲

• 測定機器および設備の状態

• 過去の較正結果の安定性

• 要求精度

• 品質保証要件

• 周囲条件

つまり、較正間隔はユーザーと特定の用途に依存

するため、個別に判断および監視する必要があり

ます。通常、会社の品質管理者がこの作業を担当

します。新しい機器の場合は、実際の状態が反映

されるように、較正間隔を段階的に変化させるの

が有効です。

この方法の場合、最初は較正間隔を比較的短い期

間に設定します。その後、較正結果の長期安定性

に応じて、以降の較正間隔を長くまたは短くする

ことができます。ただし、ほとんどの場合、測定

機器および生産機器では年1回の較正が適切です。

通常、安全性が重視される用途では、6 か月毎ま

たは 3 か月毎に実行します。

較正担当者に関する制限はほとんどありません。

較正会社または試験所を選択するときには、正し

い手順を適用するプロフェッショナルなパート

ナーを確実に選択する必要があります。較正は法

的に保護された手順ではないため、市場にはプロ

フェッショナルなサービスを提供しないプロバイ

ダーが多数存在します。言い換えると、多数の低

コストの較正プロバイダーが、非常に疑わしい品

質の較正サービスを提供している状況です。

実際には、重要なのは機器に貼られた較正ラベル

だけではありません。最も重要なものは、適用さ

れた較正手順と得られた結果の文書です。次の質

問も考慮する必要があります。

1. 較正対象機器のすべての測定範囲が測定されま

したか ?

2. 結果は試験所の規定の範囲に収まっています

か ? (試験所は、測定範囲と測定の不確かさに基

づいて認定されます。試験所が、実際に測定可

能な精度よりも高い精度を表示した場合、これ

はプロフェッショナルな取り組みを示すもので

はなく、深刻な知識不足を意味します。)

3. 技術的な見地から、試験所は相応の地位にあり、

較正を実施するのに必要な能力を備えています

か ?

較正間隔9 較正担当者の要件10

機械能力テストおよび /またはメンテナンスのラベル。

atlascopco.com検査 調整値

2019 20 21 22

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17

角度較正の特殊性114. 包括的な較正レポート(15 ページのセクショ

ン 8 を参照)を受け取りましたか ? または較正

結果と測定の不確かさが記載されていない較正

証明書のみを受け取りましたか ?

5. 較正プロバイダーは、較正の前に機器の安全性

および機能テストを実行しましたか ? 安全で信

頼できる較正サービスを受けるための良い方法

は、認定較正試験所を選択することです。ただし、

試験所が認定を受けている測定要素(トルク、

力など)に注意を払う必要があります。認定試

験所で実施されるすべての較正が、実際の認定

較正であるとは限りません。

一般原則として、認定試験所は相当の計量能力を

提供します。適合手順は、検証済みの測定方法と、

適切にトレーサブルな基準機器のみが較正に使用

されることを保証しています。認定試験所は、国

内認定機関によって絶えず監視されるため、高品

質の較正サービスが保証されています。

適切な較正サービスプロバイダーを選択するため

の、より詳細なチェックリストが付録に掲載され

ています。

注意 認定試験所で実施されるすべて

の較正が、実際の認定較正であ

るとは限りません。

必ずプロフェッショナルなパートナー

を選択してください(疑わしい品質の

較正サービスを提供する低コストの較

正サプライヤを選択しないでくださ

い)。

回転角度較正は、VDI/VDE 2648 規格に準拠して

実行されます(9 ページを参照)。トルクおよび回

転角度トランスデューサなどの直接測定システム

(VDI/VDE 2648、第 1 部)と、トルクおよび回転

角度レンチなどの間接測定システム(VDI/VDE 2648、第 2 部)は区別されています。

最初のケースである直接測定システムの場合、手

順には、0° ポイントの規定と、このポイントから

さまざまな手順で測定を実行することが含まれま

す。測定は、通常、時計回りと反時計回りの両方

向で実行します。

間接測定システムの場合、手順はより複雑です。

高品質のトルクおよび角度レンチは、航空機で使

用されるものと同じタイプのジャイロスコープで

動作します。これらの機器には、規定の 0° ポイ

ントがありません。このため、これらは基準なし

システムとも呼ばれます。このようなシステムの

較正は非常に複雑で、特別な機器を備えた認定試

験所でのみ実行できます。そのような較正作業で

は、実際の動作条件下での適切な機能と結果を検

証できるように、トルク負荷の条件下で回転角度

を測定します。

直接および間接測定システム用の回転角度

較正システム。

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18 | 締付システムの較正とテスト

締付システムの較正作業では、トルクと回転角度

という特に重要な 2 つの測定要素があります。こ

れら 2 つの要素は、個別に、または組み合わせて

考慮されます。

トルク

締付システムに関して、トルク較正は、使用する

機器の適切な機能とボルトジョイントの品質を保

証するために、最も広く使用されている方法です。

生産現場で測定機器を使用して、締付ツールによ

る品質を検証することは一般的です。

回転角度

回転角度の較正は、角度管理の締付手順において

重要です。実際には、これらの手順はトルク管理

の締付手順ほど頻繁には使用されていませんが、

特定の用途においては非常に有用であり、次第に

重要になりつつあります。回転角度で締付プロセ

締付システムの 較正作業における特別な考慮事項

12 スを管理する場合は、測定値(その結果としてボ

ルトジョイント)が正しいことを保証できるよう

に回転角度も較正する必要があります。これは「設

定されたトルク」(トルク/角度レンチなど)を

測定する品質管理機器にも当てはまります。品質

管理機器の場合、角度は、結果を評価するための

重要なパラメータの 1 つとして使用されるためで

す。

トルクと回転角度

ボルトジョイントがより複雑になるにつれて、企

業にとっても、回転角度較正がより重要なテーマ

になっています。特に安全重視のジョイント(VDI 2862で定められたカテゴリAジョイント)の場合、

管理変数(トルクなど)に加えて監視変数(角度

など)を文書化する必要があります。このような

場合は、通常、回転角度が最も実用的なソリュー

ションです。安全重視のボルトジョイントの例と

して、自動車のシートベルトやエアバッグの取り

付け、白物家電(洗濯機など)のアース接続、ま

たは風力タービンのローターブレードなどがあり

ます。これらのボルトジョイントが破損すると、

負傷や死亡に至る直接的なリスクが生じます。

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19

トルク/回転角度のプロット

ボルトジョイントは、両方の変数が同時に OK の

場合のみ、正しいとみなされます(下のグラフ)。

トルクと回転角度を組み合わせた手順で締め付け

たボルトジョイントの場合、トルクと回転角度の

両方の値が指定された「範囲」に収まっている必

トランスデューサーまたはレンチの

回転角度較正は、必ずトルク較正と

ともに実行してください。トルク較正は、

特定の重要なパラメータを決定する基礎と

して使用されます。

アトラスコプコは、プレスツールの

テストと較正に関する独自の標準を

開発しました。この標準は、力量だけでな

く、その変位の較正もカバーしています。

これは、組立工程で両方の変数が必要なた

めです。

力較正の特殊性13多くの生産施設で、力を利用したシステムが使用

されています。代表的な用途として、ベアリング

やプラグの組立があります。正しい機能および製

品の品質を保証できるように、そのようなプレス

システムも較正する必要があります。

この種のシステムは生産ツールであるため、機能

を保証するための適切な較正の種類は MCT(12ページを参照)です。ただし、現時点では、MCTに適用できる国際的な検証済みの手順はありませ

ん。このため、このようなシステムのメーカーは

独自の手順を使用しています。ほとんどの場合、

このようなシステムでは、力の較正に加え、変位

の較正も必要です。これは、組立工程で両方の変

数が使用されるためです。このようなシステムを

較正するときに、特に変位の較正は忘れられがち

ですが、これは全般的な組立品質にとって極めて

重要です。

較正を実行するための測定機器の力較正、または

上記ツールの MCT は標準化されています。力ト

ランスデューサの力較正は、国際規格 ISO 376 に

従って実行されます。

試験所でプレスツールシステムの較正を実行して

いる様子

要があります。収まっていない場合、ボルトジョ

イント全体を OK と評価することはできません

(19 ページのグラフを参照)。トルク

トルク回転角度

OKNG

角度

トルク回転角度

NG OK

角度

トルク回転角度

OKOK

角度

トルク

トルク

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20 | 締付システムの較正とテスト

油圧式トルクレンチ(左)と油圧式ツール

の較正(前方に油圧ポンプユニット)。

油圧式トルクレンチ設定用のトルク /圧力図。油

圧は、必要なトルクを設定するための変数として

使用されます。

油圧式トルクレンチは、化学および石油化学産業、

パイプライン建設、風力発電システムの組立にお

いて頻繁に使用されます。これらのツールは高い

油圧を使用して、通常、20,000 N·m を大幅に上回

る非常に高いトルクレベルを発生します。ただし、

油圧式トルクレンチの動作は非常に遅いため、主

に最終的な締付段階で使用されます。これらは、

前章で説明した電気制御ナットランナシステムと

は大幅に異なります。これらの制御されたシステ

ムは、通常、非常に高速なランダウン段階と、そ

れに続く大幅に低速で、より正確な最終締付段階

の 2 段階で動作します。

油圧式トルクレンチは、最大 700 bar の油圧を発

生する特殊なポンプユニットによって駆動および

制御されます。ポンプ圧力自体は、圧力計を使用

して設定します。圧力は、おおよそのトルク値を

設定するのに使用されます。圧力とトルクの関係

は、レンチユニットに付属している圧力対トルク

表(20 ページを参照)に基づいて規定されていま

す。

動的テストは不可能

これらのツールは、重要なアプリケーションによ

く使用されるため、通常の電動または空圧式ナッ

トランナと同様にテストおよび較正する必要があ

ります。ただし、ISO 5393 または VDI/VDE 2645に準拠した動的テストは、この場合は意味があり

ません。これらの規格は、電気制御式締付システ

ムでの高度な動的プロセスを規定していますが、

油圧レンチ14

油圧レンチには適用されません。このタイプのレ

ンチでは、最後の締付段階は数度の角度にしか対

応しておらず、非常にゆっくりと実行されるため、

プロセスはほぼ静的です。

結果として、非常にさまざまな方法で作業を行う

サービスプロバイダーが市場に多数存在し、その

一部はプロフェッショナルではありません。また、

適切な機能と正しい結果を保証するための非常に

基本的な要件さえ満たしていない多様なテスト手

順が使用されています。

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油圧式トルクレンチは、プロセスおよび風力発電

業界で頻繁に使用されています。

現時点ではまだ利用できない

国際較正規格

現在、さまざまな国内委員会が油圧式トルクレン

チのテストと較正の標準策定に取り組んでいま

す。このような標準が発行されるまでは、使用す

る較正手順が、少なくともテスト結果のトレーサ

ビリティと再現性に関する基本要件を満たしてい

ることを確認することが非常に重要です。

ユーザーが注意すべきこととして、現在使用され

ている一部の較正手順では、限られたトルク範囲

でのみ油圧式トルクレンチをテストしていること

が挙げられます。つまり、ユーザーは範囲全体に

わたって、ツールが適切に動作するかどうか確信

を持つことができません。現在、20,000 N·m 超

の測定を実行できるテストシステムはほとんどあ

りません。このため、このトルク範囲を超えて動

作するトルクレンチは、テストシステムの最大ト

ルクレベルまでしかテストできません。これより

高いトルクレベルについては、通常、結果は推定

になります。トルクレンチが高いトルクレベルで

正しく機能することを確認できないため、この種

の方法はプロフェッショナルではなく、非常に危

険であることは明らかです。時間とコストを節約

するために、2 つまたは 3 つの測定ポイントのみ

を測定して、他の値を単純に補間するテスト手順

についても同じことが言えます。使用する較正手

順はまだ標準化されていないため、残念ながらこ

の種の方法は市場で非常に一般的です。このため、

ユーザーはサービスプロバイダーを入念にチェッ

クする必要があります。

トレーサブルな測定値が入手できず、テスト手順

が文書化されていない場合、持続可能な高品質を

実現することは困難です。また、製造物責任訴訟

において、メーカーが抜け落ちのない安全なプロ

セスチェーンを確立している証拠を提出すること

も困難です。

VDI 2862 の改訂および拡張版が 2013 年末に発行

されました。この規格は、締付ツールの使用のほ

かに、締付操作の分類に関する要件も規定してい

て、これは以前のように自動車産業向けの要件だ

けでなく、油圧式トルクレンチが頻繁に使用され

る一般産業向けの要件も規定しています。

このためメーカーは、特にカテゴリ A ボルトジョ

イント(= 破損した場合に死亡または負傷するリ

スクがあるため、「安全重視」としてのボルトジョ

イント分類)に使用する場合は、油圧レンチの締

付結果を文書化し、定期的に較正を実行する義務

があります。ボルトジョイントは、安全性を確保

するのに非常に重要で、これは産業プラントや風

力発電所に限ったことではありません。石油化学

プラントでも、ボルトジョイントの不良により、

多大な環境破壊リスクが生じ、重大な責任問題に

つながる可能性があります。

補間および推定された測定値が含ま

れるテスト手順はプロフェッショナ

ルではなく、多大なリスクを負って

います !

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22 | 締付システムの較正とテスト

個々のユーザーにとってどのタイプの較正サービ

スが適切であるかを判断するには、個々のニーズ

を理解し、生産に使用されるナットランナと測定

機器を区別する必要があります。一般的に、測定

機器とツールの較正/テスト方法に関するルール

を設定するのは、企業の品質管理者です。また、

品質管理者は必要な品質レベルを実現し、将来の

ニーズに備えて結果を文書化する責任も負ってい

ます。次に、業界で広く普及している、いくつか

の一般的推奨事項について以下に要約します。

生産機器

電動および空圧式ナットランナなどの生産機器

は、定期的にテストする必要があります。ISO 5393 に準拠した、標準化された機械能力テスト

(MCT)は、世界的に認められているため非常に

有益なソリューションです。急速に世界的に受け

入れられている VDI/VDE 2645-2 規格も、近々同

様のソリューションになる可能性があります。

それに対して認定ツール較正(12 ページを参照)

は、手順が国際的に有効ではなく、市場ごとに大

幅に異なるため、世界規模の運用においてはあま

り推奨されません。ただし、現地生産および運用

には適切な選択肢です。

ホモロゲーション(13 ページを参照)は、特定の

要件(入札仕様など)に応じる場合、またはツー

ルが品質問題を引き起こしていると疑われる場合

にのみ推奨されます。ホモロゲーションは非常に

広範であり、MCT やツールの較正よりもはるかに

包括的な情報を提供します。この種のテストは、

研究開発プロジェクトの最終検証に有意義です。

この場合、結果は、プロジェクトの初期段階で製

品開発用に設定した目標にツールが達しているか

どうかを示します。

測定機器

トルクトランスデューサなどの測定機器の場合、

通常、認定較正が推奨されます。ISO 9001、ISO 10012、IATF 16949 などの規格では、測定機

器をトレーサブルな方法で較正することを要求さ

れます。認定較正はこれらの要件を常に満たし、

発行された較正証明書は国際的に認められます。

これにより多くの場合、追加コストを節約できま

す。また、疑わしい較正プロバイダー(非認定)

の数が増えていて、業界の大きな問題となってい

るため、一般的に認定較正が主流になりつつあり

ます。

品質標準に基づいた較正またはテストに特定の要

件がない場合は、代替方法としてメーカー較正が

推奨されます。また、メーカー較正には超音波な

ど、認定機関がまだ認定を発行していない測定要

素がいくつかあります。そのような場合にも、メー

カー較正はふさわしい代替手段です。

照合標準器として使用するトランスデューサおよ

びその他の測定機器は、常に認定較正を行う必要

があります。さもないと、国内照合標準器として

のトレーサビリティは保証されません。通常、こ

のトレーサビリティはこのような基準機器のみを

対象としています。

すべての生産ツールは定期的に、

正しくテストする必要があります。

認定較正は、測定機器の較正に最適な方法

です。

「品質」は、非常にさまざまな文脈で広く使用さ

れている用語です。この用語は、故意にお客様を

誤解させたり、誤った安心感を与えるのに使用さ

れることさえあります。ISO 9001 規格の導入によ

り、業界にとって非常に重要な、少なくとも正し

い定義の品質が提供されるようになりました。こ

れに基づいて、規定のベンチマークを使用して品

質を評価したり、比較することができます。消費

者とメーカーの双方にとって、これはより優れた

安心感を意味します。

どうすれば絶えず高い品質を保証できるでしょう

か ? ISO 9001 規格が、その答えと実用的な手掛か

品質保証、 信頼性および環境保護

16

適切な較正のタイプ

15

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23

適切な品質保証はコスト削減要素であ

り、リコールの直接的なコストを削減す

るだけでなく、会社の評判が損なわれる

のを最小限に抑えることができます。

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24 | 締付システムの較正とテスト

りを提供します。この規格の認定を受けた組織と

企業は、規定の手順を遵守することを約束してい

ます。たとえば、結果の文書化とトレーサビリ

ティ、および正しく機能する測定機器は不可欠な

要件です。すべての測定機器と基準は定期的に適

切に較正する必要があり、その較正は特定の要件

を満たす必要があります。

品質保証は、製造物責任(製品の信頼)の基礎と

なります。製造物責任とは、不良品の出荷および

それによって生じた損害に対して損害賠償を支払

う責任のことです。不良品の責任がメーカーにあ

ることをお客様が証明できる場合、すべてのお客

様が補償を請求する可能性があります。具体例の

1 つとして、EC 指令 85/374 EC に基づく製造物責

任法が EU のすべての加盟国で実施されています。

同様の法律が世界中の他の国々で実施されていま

す。

製造物責任法は、欧州連合で製品を販売または供

給しているすべての企業および組織に適用されま

す。同様の法律が存在する他の国々でも、同じこ

とが適用されます。製造物責任の影響は米国では

特に甚大で、欠陥商品、または不良品に対して、

莫大な損害賠償が裁定される可能性があります。

製造物責任より重大ではありませんが、同様に費

用がかかる責任事項として、メーカーや輸入業者

が頻繁に発表するリコールがあります。

生産のペースが速く、コストを下げる必要があり、

製品のライフサイクルが絶えず短くなっているこ

とにより、リコールの数は過去数年間で劇的に増

加しました。これは、品質を確保するのに必要な

手順を生産時に十分に実行しなかったことによる

結果です。幸いなことに、トレーサビリティによ

り効果的なリコールが可能です。ただし、初期の

品質保証と比べて、常にコストは非常に高くなり

ます。これは、適切な品質保証は長期的には明確

なコスト削減の要因であり、お客様により良い製

品を提供するだけでなく、市場での会社の評判が

損なわれるのを最小限に抑えられることを意味し

ます。

自動車および航空宇宙産業では、最長 60 年間の

製造物責任は珍しいことではありません。製造物

責任法に関連して、メーカーは測定作業に適した

測定機器を選択する必要があります。そのような

機器の適切な使用に関する完全な文書を保存し、

体系的な測定機器管理手順を実行する必要があり

ます。この義務においては、会社が詳細な文書を

保存し、使用した測定標準を保持することも要求

されます。これらすべての要件を満たしたメー

カーは、製造物責任賠償請求に対して容易に防御

できるようになります。

品質は、製品の安全性と責任だけでなく、環境面

にも関係します。適切にテストされた測定機器と

ツールは、効率的で環境に配慮した生産の前提条

件でもあります。設計および開発から、使用、廃

棄およびリサイクルに至る製品ライフサイクル全

体で、環境保護がますます不可欠な要素になって

いるのはこのためです。環境管理システムは、

ISO 14001 に準拠して監査および認証されます。

車両の軽量化設計および構造は、資源とエネ

ルギーの削減をもたらします。ただし、この

軽量化の傾向は、重要保安部位の締付数の増

加につながります。これらのジョイントは安

全性に直接影響するため、破損リスクを最小

限に抑える必要があります。厳しい要件を満

たすには、このような締付システムの較正に

使用される機器が最高の標準を満たす必要が

あります。

自動車および航空宇宙産業では、最長

60 年間の製造物責任は珍しいことで

はありません。

Page 25: 締付システムの 較正とテストに · 2020-07-18 · チのテストと較正の標準策定に取り組んでいま す。このような標準が発行されるまでは、使用す

25

業界では、特に自動車メーカーが品質保証と安全

性に関して先駆的な役割を果たしてきました。自

動車業界の要件は、他の業種でも標準手順として

徐々に受け入れられ実行されています。

では、業界が実際に必要としているものは何で

しょうか ? 品質保証に関する ISO 9001 規格に準

拠した重要な要素の 1 つは、測定機器と生産機器

の管理です。この管理は、製品品質に関連するす

べての機器が、実際に正しく機能するのを保証す

ることを目的としています。このためには、すべ

ての機器を定期的に較正する必要があります。そ

の較正は、国内規格に対してトレーサブルでなけ

ればなりません。さらに、測定結果を文書化する

必要があります。

国内規格に対する較正結果のトレーサビリティ

は、較正証明書を発行する試験所によって証明さ

れる必要があります。ただし、メーカー較正証明

書の国際的な承認は、資格のない較正サービスプ

ロバイダーが急増している現状により、ますます

疑問視されています。このため、監査人は、国際

業界の要件17

測定機器と生産機器は定期的に較正す

る必要があります。較正は、国内規格

に対してトレーサブルでなければなり

ません。

試験所認定協力機構(ILAC、28 ページを参照)に

参加している組織が発行した較正証明書を要求す

るようになってきました。

たとえば、ドイツの DAkkS、英国の UKAS、イタ

リアの ACCREDIA などの国内認定機関はメンバー

組織であり、それらの組織が発行する較正証明書

は、欧州連合内だけでなく、世界中のほとんどの

工業先進国でも受け入れられています。これによ

り、較正プロバイダーの能力の、すべての該当要

件への適合性が保証されます。

ほとんどの業種で ISO 9001 認証取得は最小要件

とみなされていますが、この認証は現在では不十

分な場合が多く、一般的には自動車業界向けの

ISO 10012 や IATF 16949 などの拡張規格が必要と

されています。

IATF 16949 は、さまざまな国内規格の要件が組み

合わされた規格で、ISO 9001 に基づいています。

この規格は、事実上、世界中のすべての自動車メー

カーによって認められており、自動車業界での認

証に関する複雑さを解消する方法を示していま

す。以前は、欧州各国と米国で異なる規格が適用

されていたため複数の認証が必要とされていまし

た(例:米国の QS 9000、ドイツの VDA 6.1、フ

ランスの EAQS、イタリアの AVSQ など)。

ダイムラー、ゼネラルモーターズ、フォードなど

の大手自動車メーカーは、IATF 16949 の認定を受

けたサプライヤにのみ契約を発注することを決定

技術者のガイダンスと結果の自動評価を備えたプ

ロフェッショナルなソフトウェアにより、適切な

較正結果が保証されます。

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26 | 締付システムの較正とテスト

資産管理18

IATF 16949 には、較正試験所の明確

な要件が規定された規格である ISO/IEC 17025(試験所および較正機関の

能力に関する一般要求事項)との直接

的な参照が含まれています。この規格

は、ISO 9001 に準拠した品質管理シス

テムの導入が、較正試験所にとって十

分ではないことを強調しています。こ

れは、ISO/IEC 17025 では ISO 9001 で

カバーされていない技術的能力に関す

る要件が定義されているためです。較

正試験所は、品質管理システムを運用

するだけでなく、技術的に十分である

ことを実証する必要があります。これ

は、試験所が最低限の技術的要件を満

たし、技術的な根拠に基づいた結果を

実現する立場でなければならないこと

を意味しています。

規格では、試験所内で適切なコミュニ

ケーションプロセスが確立され、管理

システムの有効性に関する情報交換が

行われることを経営陣が保証する必要

があることも規定されています。さら

に試験所は、お客様からフィードバッ

クを受け取ることも保証する必要があ

ります。これは、肯定的な情報と否定

的な情報の両方を含みます。この情報

フローは、管理システム、テストおよ

び較正作業、お客様へのメリットを確

実に向上させることを目的としていま

す。ISO/IEC 17025 では、特に試験所

管理システム全体の継続的な改善が求

められています。

前述の規格とは別に、締付システムの較正に関し

ては ISO 10012 も参照する必要があります。

この規格は、測定機器の取り扱いと計量確認に関

する一般要求事項を規定しています。また、測定

機器の効果的な管理と、機器と測定プロセスが意

図した目的に適しているかどうかの判断にも役立

ちます。行き届いた資産管理システムは、製品品

質、および誤った測定結果のリスクを最小限に抑

えるのに不可欠です。

測定機器管理の目的は、測定結果に対する信頼を

生み出すことです。この方法により、製品および

サービスの品質のばらつきが防止されます。

ISO 10012 は、製品特性の定義、および資産管理

システムの評価と監査によく使用されます。

特に、ISO 10012 は、トレーサブルな規格に準拠

した、すべての機器の較正に関する特定の要件を

規定しています。会社は、トレーサビリティの連

鎖内で実行されるすべての較正の文書を保持する

必要があります。また、較正の状態を示すために、

すべての測定機器に確実かつ恒久的にマーク付け

することを保証する必要があります。マークは、

測定機器の次回の較正期限を明確に表示している

必要があります。規格では、較正証明書で提供さ

れる情報の最小要件も定義しています。

年 1 回の認定較正は、前述した業界のすべての要

件と他の多くの要件を満たし、労力とトラブルを

大幅に軽減します。認定試験所による較正により、

ユーザーは測定結果が信頼できるものであるとい

う確信を持つことができます。また、お客様間の

信頼レベルと、国内および国際市場での関係企業

の競争力を高めることができます。認定較正は、

国際的に比較可能で、監査に通る結果を保証しま

す。

しました(下のボックスを参照)。結果として、

IATF 16949 は、自動車業界のサプライチェーン全

体と、直接的、間接的なサプライヤ双方に自動的

に適用されるようになっています。このため、大

手自動車メーカーによる世界的な承認の必要性を

考慮した場合、IATF 16949 に準拠した認証が強く

推奨されます。

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27

適切な較正には、ある程度の労力と費用がかかり

ます。このため、これらのサービスが会社にもた

らす効果と具体的なメリットを知ることは重要で

す。

主なメリットは以下のとおりです。

• メーカーまたはサプライヤの保護

• ユーザーの安全性

• 結果のトレーサビリティ

• 生産における品質保証

• 品質標準への準拠

• 高いお客様満足度

• 国際的承認(認定証明書)

較正のメリット19

• 自動車業界の要件など、厳しい要件への適合

• 製造物責任に関する証拠

これらのメリットは、すべての企業にとって事実

上不可欠です。

一見すると、測定と較正は時間とコストの浪費要

因とみなされることがよくあります。ただし、こ

の見方は、メーカーが製品に対して賠償責任を負

わなければならなくなったときにすぐに変わりま

す。差し迫った損害賠償請求と比べて、徹底的な

テストまたは較正のコストは二次的な重要度にも

かかわらず、非常に費用対効果の高い投資とみな

すことができます。これは、長期にわたって市場

でプロとして営業し、高いお客様満足度を維持し

たい会社にとって、機器のプロフェッショナルな

較正が不可欠であることを意味します。

主なメリット:結果のトレーサビリ

ティ、やり直し作業の削減、製造物責

任訴訟での証拠。

較正と品質保証に関するその他の推奨される情報

源:

www.atlascopco.com/en-us/itba/service/service-offerings/maintenance/calibration

アトラスコプコは、測定機器の管理を含むあらゆ

るサービスを提供する、高い技術力を持った較正

サービスプロバイダーです。

www.european-accreditation.org

相互承認を目的とした欧州認定組織協会。ほとん

どの欧州認定機関が EA のメンバーです。

www.ilac.org

ILAC:国際試験所認定協力機構 EA は ILAC のメン

バーです。このため、認定証明書は ILAC メンバー

によって承認されています。

www.iso.org

ISO:国際標準化機構世界中の産業に関連する国

際規格を策定および公開しています。

このトピックに関して不明な点がある場合は、ア

トラスコプコサービスにお問い合わせください

(www.atlascopco.com)。

その他の情報源20

年 1 回の認定較正は、前述した業界の

すべての要件と他の多くの要件を満た

します。また、労力とトラブルを大幅

に軽減します。

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28 | 締付システムの較正とテスト

較正を含むさまざまなトピックに関する弊社のプ

ロフェッショナルなトレーニングについてお知ら

せします。各コースは、具体的な条件に合わせて

調整することができ、お客様の施設で開催するこ

とも可能です。

付録には、機械能力テストと認定較正証明書の例

のほか、較正サービスプロバイダーを選択するた

めのチェックリストが掲載されています。

アトラスコプコはお客様の較正パートナーです。

締付ツールと品質保証機器の専門家としてお客様

の機器の較正をサポートすることで、お客様が本

来の生産活動に専念できるようにしたいと考えて

います。弊社は認定較正と工場較正の両方を実施

しています。

アトラスコプコが使用するすべての基準機器は、

定期的に管理および較正され、国内規格に対して

直接トレーサブルです。

プロフェッショナルな較正サービスプロバイダー

21再利用可能な輸送システムと集荷

サービス アトラスコプコは、追跡機能および保険付き配送

から集配サービスに至る、お客様独自のニーズに

合わせた輸送オプションを提供しています。お客

様の高価な機器を、安全かつ効率的に、環境に配

慮した方法で取り扱います。

次のオプションがあります。

標準的な配送:いつでも測定機器の配送状況を

確認できます。ご要望に応じて、夜間至急便で機

器を配送することもできます。

アトラスコプコの輸送ソリューション

22

弊社は世界中の 20 を超える市場で較正サービス

を提供しており、ほとんどの較正をお客様の施設

で直接実行することもできます。これにより、ダ

ウンタイムおよび輸送の問題を最小限に抑えるこ

とができます。

アトラスコプコは、世界中の較正センターの国内認定を受けています。ほとんどの場所でオンサイト較正も可能です。

ブラジル Rede Brasileira de Calibração(RBC)

ドイツ Deutschland Akkreditierungsstelle(DAkkS)

中国 China National Accreditation Service for Conformity Assessment(CNAS)

東欧 Czech Accreditation Institute(CAI)

インド National Accreditation Board for Testing and Calibration Laboratories(NABL)

イタリア Accredia - L'Ente Italiano di Accreditamento(ACCREDIA)

メキシコ Entidad mexicana de acreditación, a.c. (EMA)

南アフリカ South African National Accreditation System(SANAS)

英国 The United Kingdom Accreditation Service(UKAS)

United States Laboratory Accreditation Bureau(L-A-B)

グローバル International Laboratory Accreditation Cooperation(ILAC:国際試験所認定協力機構)

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30 | 締付システムの較正とテスト

再利用可能な輸送システム:ご連絡いただけ

れば、お客様の機器を回収いたします。環境に配

慮した再利用可能な配送ボックスで集荷、返送い

たします。ボックスは次回使用の際まで、お客様

のもとで保管いただけます。配送に関する全責任

は弊社が負います。手軽にご利用いただけ、お客

様の管理費用を削減します。

集荷および配送サービス:特別な注意が必要

な測定機器の場合は、訓練を受けたドライバーに

よる集配サービスを提供いたします。お客様の測

定機器を安全にお取り扱いいたします。

アトラスコプコは、お客様の専門知識を新たにし、

さらに高めるための多数のトレーニングコース、

セミナー、ワークショップを開催しています。

トレーニング、 セミナーおよびワークショップ

23

セミナー:品質管理 – 締付システムの較正

このセミナーでは、締付ツールの機械能力テスト

に関連する測定機器の較正について取り上げま

す。プログラムには、講義と実践的な演習が含ま

れます。参加者は、次の分野の専門知識を高める

ことができます:較正および機械能力テスト。締

付および較正システムの基準、標準、規制。製造

物責任と製品安全性に関する較正。較正に準拠し

た締付プロセス。測定機器の能力。測定値の確認。

この分野の統計の基本原則。

セミナーで主に取り上げる内容:

• 較正と機械能力テストの重要性

• 較正とテストの種類

• 基準と標準

• 実際の較正とツールのテスト

• 機械能力テスト、較正および調整の違い

• 証明書の内容と解釈

• 優れたプロフェッショナルな証明書と疑わしい

証明書を区別する方法

差し迫った ISOまたは認証監査に備えることができるように、お客様の特定の要件に合わせたワーク

ショップを実施している Atlas Copco Toolsの専門家。

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31

付録

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32 | 締付システムの較正とテスト

機械能力テスト証明書のサンプル、1 ページ付録

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33

機械能力テスト証明書のサンプル、2 ページ

付録

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34 | 締付システムの較正とテスト

較正証明書のサンプル、1 ページ付録

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35

付録

較正証明書のサンプル、2 ページ

Page 36: 締付システムの 較正とテストに · 2020-07-18 · チのテストと較正の標準策定に取り組んでいま す。このような標準が発行されるまでは、使用す

36 | 締付システムの較正とテスト

較正証明書のサンプル、3 ページ

付録

Page 37: 締付システムの 較正とテストに · 2020-07-18 · チのテストと較正の標準策定に取り組んでいま す。このような標準が発行されるまでは、使用す

37

付録

較正証明書のサンプル、4 ページ

Page 38: 締付システムの 較正とテストに · 2020-07-18 · チのテストと較正の標準策定に取り組んでいま す。このような標準が発行されるまでは、使用す

38 | 締付システムの較正とテスト

MEMO

                                                                                                                                                                                                                

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MEMO

                                                                                                                                                                                                                

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アトラスコプコ AB(publ)SE-105 23 Stockholm, Sweden電話:+46 8 743 80 00登録番号: 556014-2720

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出版者: アトラスコプコ www.atlascopco.co.jp著者: ミハエル・スキビンスキ

編集者: キム・ガン・グエン タイトルの写真: トーレ・マークルンド

その他の写真: セルジオ・カステッリ、ヨッヘン・スターペル、 ハイコ・ウェンケ、トーレ・マークルンド。

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