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東京外国語大学論集第 82 号(2011423 本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較 -2003年から2009年までの年度ごとの比較について- 真鍋 求 1.研究目的 2.対象者と測定項目およびデータの取り扱い 3.結果と考察 4.まとめ 1.研究目的 本学学生の体力水準の現状と推移を明らかにするため、2005 年度と 2009 年度に実施した文 部科学省の新体力テスト(以降、体力テストと表記する)の結果を比較し、本論集79号の研 究ノートに掲載した。この結果を含め、今回は本学学生の体力の現状と体力要素の特性を明ら かにするため、本学の測定結果と全国平均との比較を行った。具体的には 2003 年度から 2009 年度まで 7 カ年の本学の測定結果と、文部科学省が公表している年代別集計結果との比較を行 った。 これまで本学ではスポーツ・身体運動基礎科目において継続的に体力テストを行ってきた。 4月当初に履修者全員を対象として屋内で実施可能な測定項目の測定を行い、授業の種目によ っては屋外で実施する測定種目の測定も行ってきた。 1999 年に文部科学省はそれまでのスポー ツテストと運動能力テストにかえて、新体力テストを導入した。このテストは8つの基本的な 体力要素を測定するものである。8つの体力要素とはスピード、全身持久力、筋パワー、巧緻 性、筋力、筋持久力、柔軟性および敏捷性であり、これらを測定する種目として、握力(筋力)上体起こし(筋力・筋持久力)、長座体前屈(柔軟性)、反復横とび(敏捷性)20mシャトルラン・ 持久走 (全身持久力) 50m走(スピード)、立ち幅とび(筋パワー)、ソフトボール投げ・ハンド ボール投げ (巧緻性、筋パワー)などが設定されている。この変更以降、本学ではこれらの 測定項目のうち 20mシャトルランを除く8種目と、旧運動能力テストからの継続で背筋力、踏 み台昇降運動を加えた10種目について測定を行ってきた。 本稿では 2003 年から 2009 年までの 7 カ年について、本学学生の測定結果と全国平均を比較 して体力要素ごとに差がみられるか検討し、また 7 カ年の推移を検討する。これにより本学学

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東京外国語大学論集第 82 号(2011) 423

本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較

-2003年から2009年までの年度ごとの比較について-

真鍋 求

1.研究目的

2.対象者と測定項目およびデータの取り扱い

3.結果と考察

4.まとめ

1.研究目的

本学学生の体力水準の現状と推移を明らかにするため、2005 年度と 2009 年度に実施した文

部科学省の新体力テスト(以降、体力テストと表記する)の結果を比較し、本論集79号の研

究ノートに掲載した。この結果を含め、今回は本学学生の体力の現状と体力要素の特性を明ら

かにするため、本学の測定結果と全国平均との比較を行った。具体的には 2003 年度から 2009

年度まで 7 カ年の本学の測定結果と、文部科学省が公表している年代別集計結果との比較を行

った。

これまで本学ではスポーツ・身体運動基礎科目において継続的に体力テストを行ってきた。

4月当初に履修者全員を対象として屋内で実施可能な測定項目の測定を行い、授業の種目によ

っては屋外で実施する測定種目の測定も行ってきた。1999 年に文部科学省はそれまでのスポー

ツテストと運動能力テストにかえて、新体力テストを導入した。このテストは8つの基本的な

体力要素を測定するものである。8つの体力要素とはスピード、全身持久力、筋パワー、巧緻

性、筋力、筋持久力、柔軟性および敏捷性であり、これらを測定する種目として、握力(筋力)、

上体起こし(筋力・筋持久力)、長座体前屈(柔軟性)、反復横とび(敏捷性)、20mシャトルラン・

持久走 1(全身持久力) 50m走(スピード)、立ち幅とび(筋パワー)、ソフトボール投げ・ハンド

ボール投げ 2 (巧緻性、筋パワー)などが設定されている。この変更以降、本学ではこれらの

測定項目のうち 20mシャトルランを除く8種目と、旧運動能力テストからの継続で背筋力、踏

み台昇降運動を加えた10種目について測定を行ってきた。

本稿では 2003 年から 2009 年までの 7 カ年について、本学学生の測定結果と全国平均を比較

して体力要素ごとに差がみられるか検討し、また 7 カ年の推移を検討する。これにより本学学

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424 本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較 -2003年から2009年までの年度ごとの比較について-:真鍋 求

生の体力の現状と体力要素の特性を明らかにすることを目的とする。

2. 対象者と測定項目およびデータの取り扱い

2.1. 対象者

スポーツ・身体運動履修者には新入生を含め第 4 年次まで、さまざまな学年・年齢の学生が

含まれている。本稿では比較する対象者の特性を絞り込むため、当該年度の 4 月 1 日現在で年

齢が 18 歳であった学生に限定して全国との比較を行った。

2.2. 測定項目

測定を行った種目は、文部科学省の新体力テスト項目として握力、反復横とび、長座体前屈、

上体起こし及び立ち幅とびの6種目に加え、従来から継続して測定している踏み台昇降運動及

び背筋力を加えた8種目である。踏み台昇降運動は有酸素能力の指標とされ、特に心肺の持久

性を示すとされている。なお持久走と50m走およびハンドボール投げについては本学で測定

を実施しなかった年度があるため、今回は提示をしないこととした。

2.3. データの取り扱い

集計したデータのうち±3SD を超えるものや、文部科学省新体力テストの得点表から大きく

外れたデータに関しては、測定ミスや誤記入の可能性が高いことから集計からは除外した。ま

た同学期に 2 コマを超えて実技授業を履修する受講生もいるので、データの重複を避けるため

に、このような場合は本学の授業コードが小さい授業のデータを採用し、それ以外は除外した。

ただし踏み台昇降運動と背筋力については新体力テストの項目にはないため、測定が行われた

最終年度(1999 年度)の文部科学省の公式結果と比較を行った。

3. 結果と考察

3.1. 本学の集計結果

表1に 2003 年から 2009 年までの 7 カ年に実施した本学学生の測定結果を示した。1-A が

男子、1-B が女子の集計である。

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東京外国語大学論集第 82 号(2011) 425

表1 本学集計

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 A 18才男子

18才 18才 18才 18才 18才 18才 18才

握力 標本数 107 78 139 135 120 149 111

(Kg) 平均値 40.86 39.13 41.21 39.92 39.81 39.68 39.93

標準偏差 5.67 5.80 6.23 6.62 6.15 5.60 6.37

上体起こし 標本数 111 77 135 129 119 137 111

(回) 平均値 29.62 30.27 30.65 30.31 30.15 29.68 30.07

標準偏差 5.39 6.20 5.24 5.41 5.68 5.82 5.27

長座体前屈 標本数 111 76 135 132 119 150 111

(cm) 平均値 45.65 48.12 47.46 47.42 48.57 49.25 48.11

標準偏差 9.65 9.89 10.70 10.49 10.37 11.22 11.11

反復横とび 標本数 111 77 136 134 119 142 110

(点) 平均値 54.75 58.34 56.89 56.75 56.66 57.06 57.02

標準偏差 7.47 7.74 6.53 6.95 6.46 7.18 7.50

立ち幅とび 標本数 111 78 134 132 114 146 111

(cm) 平均値 231.57 229.54 228.88 228.31 224.40 229.25 225.00

標準偏差 30.96 20.31 20.07 23.99 20.68 24.66 24.30

背筋力 標本数 111 78 123 135 119 148 112

(Kg) 平均値 120.00 112.36 112.83 111.47 117.45 107.26 109.02

標準偏差 25.32 23.54 21.40 24.63 23.61 21.97 23.23

踏み台昇 標本数 95 76 136 134 122 147 111

動運(指数) 平均値 59.33 61.92 56.91 57.44 54.60 59.11 59.0

標準偏差 11.05 11.08 12.21 9.76 9.91 12.61 11.85

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 B 18才女子

18才 18才 18才 18才 18才 18才 18才

握力 標本数 316 294 342 370 373 302 296

(Kg) 平均値 26.16 25.38 25.46 25.21 24.52 24.85 24.81

標準偏差 4.42 4.69 3.96 4.39 4.1 4.24 4.17

上体起こし 標本数 320 296 334 360 371 300 295

(回) 平均値 21.63 21.87 22.79 22.84 22.94 22.88 22.99

標準偏差 4.79 5.09 4.55 4.88 5.10 5.41 5.63

長座体前屈 標本数 319 287 342 365 370 303 296

(cm) 平均値 46.82 46.26 48.09 47.03 46.90 46.85 48.58

標準偏差 9.74 8.90 9.23 8.82 9.14 10.1 9.31

反復横とび 標本数 320 295 326 366 371 298 293

(点) 平均値 45.13 46.78 45.86 46.52 47.29 46.74 47.49

標準偏差 6.16 5.79 4.82 5.59 5.82 6.67 5.84

立ち幅とび 標本数 320 293 330 355 361 293 290

(cm) 平均値 167.30 168.66 170.92 167.28 167.66 167.62 167.27

標準偏差 24.60 22.25 20.28 20.29 19.95 26.21 21.46

背筋力 標本数 323.00 296.00 340.00 369.00 364.00 297 297.00

(Kg) 平均値 70.05 66.80 65.61 61.62 64.26 59.2 61.53

標準偏差 14.85 15.71 15.07 15.18 14.45 16.92 17.31

踏み台昇 標本数 224 294 337 367 367 300 289

(指数) 平均値 56.72 58.07 53.74 55.14 54.29 56.34 56.74

標準偏差 9.03 11.20 9.59 10.13 9.77 11.22 11.07

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426 本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較 -2003年から2009年までの年度ごとの比較について-:真鍋 求

3.2. 測定項目および体力要素の比較

横軸は測定した年度を、縦軸には種目ごとの測定単位を示した。本学の平均の推移を丸印

(●)と実線で示し、全国の平均は三角(▲)と破線で示した。また図中のアスタリスクの印

はT分布表の危険率を示しており、「*」が P<0.05 を、「**」が P<0.01 を、「***」が P<

0.001 をそれぞれ表している。

3.2.1. 握力および背筋力(静的筋力)について

図1及び図2にそれぞれ男女の握力の平均値を示した。図から明らかなように、男女とも全

ての年度で本学平均が全国平均よりも下回っている。しかもこれらの差は統計的に有意(P<

0.001)であった。これは本学学生は明らかに静的筋力要素としての握力が低いことを示すもの

と考えられる。一方全体の推移については、本学および全国の双方とも 2003 年度のみ平均値が

やや低いようであるが、全体として増減の様子はうかがえない。

同じく筋力要素としての背筋力の結果を、図3と図4にそれぞれ男女の結果を示した。前述

したように 1999 年から全国では測定が行われていないことから、図3図4とも本学の推移のみ

を示した。とりわけ女子において減少の傾向が見られる。また参考までに 1997 年の背筋力の

18 才男女の全国平均と比較した場合、全ての年度で有意に低いことが認められた。以上を勘案

すると背筋力については 2000 年以降減少傾向にあることが示唆される。

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東京外国語大学論集第 82 号(2011) 427

図1  握力(18才男子)

32

34

36

38

40

42

44

46

48

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

Kg全国平均

本学平均

******

*** *** *** ******

図2 握力(18才女子)

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

Kg全国平均

本学平均

*** ******

******

*****

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428 本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較 -2003年から2009年までの年度ごとの比較について-:真鍋 求

図3 背筋力(18才男子)

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

130

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

Kg 本学平均

図4 背筋力(18才女子)

52

54

56

58

60

62

64

66

68

70

72

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

Kg 本学平均

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430 本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較 -2003年から2009年までの年度ごとの比較について-:真鍋 求

図6 上体起こし(18才女子)

18

19

20

21

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24

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

回全国平均

本学平均

***********

***

*

3.2.3. 長座体前屈(柔軟性)について

柔軟性の指標とされる長座体前屈の結果を、図7と図8にそれぞれ男子と女子の結果を示し

た。図7から明らかなように、男子においては本学学生は全ての年度で全国平均より下回って

いることが見て取れる。また検定の結果 2003 年と 2006 年度のみ有意(P<0.05)に低いことが

認められた。一方女子の結果は 2003 年、2005 年および 2009 年で本学平均が全国平均よりも有

意(P<0.05~0.01)に高く、逆に 2007 年度においては有意(P<0.05)に下回っていることが

示された。以上の結果から柔軟性要素については本学男子はやや低く、女子は概して平均的か

やや優れていると考えられた。

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432 本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較 -2003年から2009年までの年度ごとの比較について-:真鍋 求

3.2.4. 反復横跳び(敏捷性)について

敏捷性の指標として体力テストでは反復横跳びが測定項目に採用されている。図9に男子の

反復横跳びの集計結果を示した。図9から明らかなように全ての年度で本学平均が全国平均を

上回っている。検定を行った結果 2005 年のみ有意(P<0.05)に本学が高いことが示された。

一方、図10に示した女子ではこの傾向は明確で 2005 年を除く 6 カ年で、本学平均が全国平均

に比べ有意(P<0.05~0.01)に高い値を示した。これまで本学の学生は敏捷性が高い傾向にあ

ることを報告してきたが、今回の比較からとりわけ女子において本学学生が敏捷であることが

改めて認められた。また全体の推移をみると、女子において本学・全国共に若干の増加傾向が

伺える。

図9 反復横跳び(18歳男子)

50

51

52

53

54

55

56

57

58

59

60

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

回 全国平均

本学平均

***

***

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東京外国語大学論集第 82 号(2011) 433

図10 反復横跳び(18才女子)

40

41

42

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44

45

46

47

48

49

50

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

回全国平均

本学平均

*

*** ***

*** ***

*

3.2.5. 立ち幅跳び(全身パワー)について

図11と図12にそれぞれ男女の立ち幅跳びの集計結果と全国との比較を示した。 この測定項

目については唯一 2005 年の女子において本学平均が全国より有意に高い値を示した他は、本学

と全国の平均値には差が認められなかった。また全体の推移をみると、男女とも本学・全国双

方に減少傾向が伺える。とりわけ男子においてより強い減少傾向がみられた。

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東京外国語大学論集第 82 号(2011) 435

3.2.6. 踏み台昇降運動(持久力)について

全身持久力要素としての踏み台昇降運動の結果を、図13と図14にそれぞれ男女の結果を

示した。前述したように 1999 年から全国では測定が行われていないことから、図13図・14

とも本学の推移のみを示した。全体の推移を見ると、踏み台昇降運動については 2000 年以降減

大きな変動はみられないと思われる。一方 1997 年の全国平均と比較した場合、多くの年度で有

意に低いことが認められた。

図13 踏み台昇降運動(18才男子)

40

45

50

55

60

65

70

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

指数 本学平均

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436 本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較 -2003年から2009年までの年度ごとの比較について-:真鍋 求

図14 踏み台昇降運動(18才女子)

40

45

50

55

60

65

70

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

指数 本学平均

4. まとめ

本学で 2003 年度から 2009 年度に実施した文部科学省新体力テストの結果を、同省が公表し

ている全国の集計結果と年度ごとに比較を行った。とりわけ 18 歳(当該年度の 4 月 1 日時点)

の男子および女子学生について比較した結果、以下の4点が明らかになった。

(1)静的筋力要素である握力は、2003 年から 2009 年の全ての年度において本学学生の

測定結果は全国平均を下回っていた。これらの差を検定した結果、本学男子は全国平均

と比較して全ての年度において統計的に有意(P<0.001)に低いことが認められた。女

子においても同様に、全ての年度で統計的に有意(P<0.01~0.001)に低いことが認め

られた。

(2)筋持久力要素である上体起こしは、とりわけ本学の女子は全国平均を上回っており、

7 カ年のうち 6 カ年で統計的に有意(P<0.05~0.001)に高いことが認められた。男子も

平均値は全国を上回っていたが、2005 年度のみ有意に高いことが認められた。

(3)敏捷性の指標とされる反復横跳びは、とりわけ本学の女子では 2003 年から 2009 年ま

での 7 カ年のうち 6 カ年で統計的に有意(P<0.05~0.001)に全国平均を上回っていた。

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東京外国語大学論集第 82 号(2011) 437

一方男子も平均値は上回っており、そのうち 2004 年度と 2005 年度で有意に高いことが認

められた。

(4)柔軟性要素である長座体前屈は、とりわけ本学男子の平均は全国平均より下回って

おり 2003 年と 2006 年で統計的に有意(P<0.05)に低いことが認められた。

以上から本学学生は全国平均と比較して、静的筋力要素である握力が明らかに低く、逆

に反復横跳び(敏捷性)や上体起こし(筋持久力)では比較的優れていることが認められ

た。また本学の女子学生は男子学生よりも優れている項目が多く認められた。

謝辞

新体力テストの実施においては、非常勤講師の皆様に長年にわたり多大なご協力を頂きました。

またデータの確認に協力いただいた本学学生の皆さんに、末筆ではありますが御礼を申し上げ

ます。

参考文献

阿保 雅行・川辺 光・甲斐美和子(1989)「本学学生の体力に及ぼす要因の構造」『東京外国語大学論集』第

39号、pp.198-213 阿保 雅行(1990)「本学学生における体力の予測(その1)-測定値を中心に」『東京外国語大学論集』第4

0号、pp.193-216 阿保 雅行(1990a)「本学学生における体力の予測(その1)-測定値を中心に」『東京外国語大学論集』第4

2号、pp.241-263 下田 政博・百鬼 史訓・植竹 照雄、田中 幸夫・田中 秀幸(2008)「大学生の健康関連体力向上に対する

教養科目「スポーツ・健康科学実技」の役割と大学体育におけるその意義」大学体育学5pp 13-26 八田秀雄(2002)「大学生の体力の年次推移~東京大学~」体育の科学 52(1) pp39-42 松元剛(2002)「大学生の体力の年次推移~筑波大学~」体育の科学 52(1) pp 48-51 真鍋 求(2009) 「本学学生の体力の推移について-2005 年度と 2009 年度新体力テスト結果の比較」『東京外国

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438 本学学生の体力テスト結果および全国平均との比較 -2003年から2009年までの年度ごとの比較について-:真鍋 求

A Comparison of the Results of Fitness Testing at Tokyo University of Foreign Studies and the National Average -Regarding the Comparison of Annual Results Recorded from

2003 to 2009-

MANABE Motomu

A comparison was made between the results of the fitness test that was enforced by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology at Tokyo Univerisity of Foreign Studies between 2003 and 2009, with the national statistics published by the same organisation. The following four points became clear as a result of comparing male and female students aged 18 (as of the 1st of April in the year of undergoing the fitness test).

(1) Students at Tokyo University of Foreign Studies scored lower than the national average in all

years in the test to measure grip , a element of static strength. The scores of the male students were significantly low (p<0.001) in all years in comparison with the national average. The same thing can be said of the female students, scoring significantly lower that the national average in all years.

(2) Students scored significantly higher than the national average for 6 out of 7 years (p<0.05~0.001) in the sit-up test desgined to measure muscular endurance, particularly the female students. The male students also scored higher than the national average, but only the results in 2005 were significantly higher.

(3) The female students scored significantly higher (p<0.05~0.001) than the national average in 6 out of 7 years from 2003 to 2009 in the side-step test desgined to measure agility. The male students also scored higher than the national average, with significantly higher scores observed in 2004 and 2005.

(4) The male students in particular scored lower than the national average in the sit-and-reach test designed to measure flexibility, with s significantly low results observed in 2003 and 2006. Students at Tokyo University of Foreign Studies scored lower than the national average in

the grip test to measure static strength, but they comparitively excelled in the side-step (agility) test and the sit-up (muscular endurance) test. It was also observed that the female students showed a greater level of fitness that the male students in many areas.