先端デバイス向け研磨パッド...先端デバイス向け研磨パッド 松村 進一...
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先端デバイス向け研磨パッド
松村 進一
ニッタ・ハース㈱ CMP 事業部 製品技術グループ パッドチーム
1. はじめに
1980 年代の後半に IBM がデバイスの平坦化に研磨を用いることを開始し、その後 1990 年代前半から中盤に日本で
も CMP が広まった。当時はアルミ配線の層間絶縁膜の平坦化が主であったが、その後上下の配線間を接続するタン
グステンプラグや、素子間分離のための浅溝分離(STI)、Cu 配線形成のためのダマシン工程など応用範囲を広げてい
き、それに合わせて専用のスラリーなども開発された。研磨パッドとしては IC1000TMと SUBATMの積層パッドが標
準的に用いられるようになり、現在に至るまでデファクトスタンダードとして使用されている。(図1)あらゆる工程
において適用範囲の広い研磨パッドであったが、近年各工程の性能要求が厳しくなってきており、研磨性能も十分満
足出来なくなってきた。樹脂組成やポア構造を見直しチューニングしたパッドの開発も進めている。このように、現
状では研磨対象材料やその目的により、研磨スラリーと研磨パッドは様々な組み合わせが用いられているが、この二
つの消耗材料が研磨性能を左右する大きな要素である。ここでは、この2大要素の一つである研磨パッドについて、
要求される性能とそれに影響を与えるパッド物性や Dow 社/ ニッタ・ハース社で取り組んできた要素技術について紹
介を行う。今回のテーマでもある先端デバイス向けにはどのような研磨パッドが必要になってくるか、その要求性能
と方向性について述べていきたい。
2. Dow/ニッタ・ハースでの取り組み
先端デバイス向けの研磨パッドについて検討する前に、Dow/ニッタ・ハースでは様々な顧客の要求に対して CIP(顧
客別改善活動)を展開してきた。内容については生産性の改善や安定性の向上、寿命延長や資材コスト低減など多岐
にわたり、これらの活動を通して一つ一つの要素技術の開発・蓄積がなされてきている。ここでは、これまでに取り
組んできた要素技術について紹介する。
2.1 顧客要求事項(これまで)
CIP 活動の内容を紹介する前にこれまでの顧客要求事項について述べる。大きく分けて生産性向上による効率化と
歩留まり向上によるコスト低減の 2 種類である。生産性向上については、研磨レート向上、段差緩和性改善、パッド
長寿命化などである。また、歩留まり向上については、研磨性能である低欠陥性、加工面内均一性および平坦性の改
善などが挙げられる。これらの要求事項は、今後も基本的に大きく変わることはないと考えられるため、これまで取
り組んできた要素技術を基にして対応可能と考える。
2.2 生産性向上
2.2.1 溝設計による研磨レートの向上
生産性向上の一つとして溝設計による研磨レート向上が挙げられる。研磨パッドの溝形状には大別して、穴形状、
同心円形状、格子形状(図2)があり、各種工程に応じてこれらの中から組み合せて使用されている。溝の役割とし
ては、基板へのスラリー供給と研磨反応生成物の排出が主になるが他にも研磨温度のコントロールや研磨後の基板貼
付き防止など多岐にわたる。溝の構成は基板との接触面積やスラリーの流入、排出量の決定、研磨パッドの変形量な
どに影響を与える。
研磨レートの向上にはパッド表面状態とスラリー供給および排出のバランスが重要であると考える。その為には溝
の構成として溝幅と溝ピッチと溝深さの最適化が求められる。ニッタ・ハースでは顧客毎に最適な溝構成について評
価検討し提案を行っている。さらに、溝深さの深溝化によるロングライフ提案も行っている。
2.2.2 BIF パッドによる立上げ時間の短縮
通常、研磨パッド使用時にはダイヤモンドドレッサーによるコンディショニング(目立て)とダミーウェハによる
研磨などを行う立ち上げ処理(ブレークイン)を行っている。Dow/ニッタ・ハースではあらかじめ研磨パッド表面を
顧客でのブレークイン後の表面に近くなるように表面加工を施した BIFパッド(Break In Free図3)を開発し顧客へ
展開している。顧客毎のブレークイン状態に合わせた最適な表面状態を事前に準備出来ることにより、大幅なブレー
クイン時間の短縮が可能となっている。その結果、生産性の向上やダミーウェハの低減などに貢献しており好評を得
ている。
2.3 歩留り向上
顧客からの返却品の表面状態を解析することで欠陥の原因がグレージング(研磨反応生成物の付着)であることが
分かり、コンディショニング条件の最適化をすることによってグレージングが低減され安定した低欠陥性が得られて
いる。(図4)今後はコンディショニングに適した研磨パッドの設計が必要であると考える。また、下地層の圧縮率最
適化によって基板のエッジプロファイル改善を行い面内均一性の向上が図られ安定した研磨性能が得られている。
3. 次世代向け研磨パッド(2xnm 世代)について
3.1 次世代向け研磨パッドへの要求事項
これまでの要求事項であった生産性と歩留まり向上はどの世代においても基本的には変わらないが、微細化が進む
につれて求められる研磨性能として低欠陥性と平坦性の両立が挙げられる。これらの研磨性能を達成する研磨パッド
の特性としては欠陥性能に対して一般的にはパッド基材の硬さ特性の影響が大きいと考えられている。しかし、欠陥
性を改善するには低硬度化の方向になるが平坦性は低下してしまうというトレードオフの関係がある。これら二つの
特性をどのようにバランスさせるかが今後重要な課題となっている。
3.2 VISIONPADTMシリーズ
上記の課題に対して Dow/ニッタ・ハースでは基材特性の最適化を行った VISIONPADTMシリーズを開発し顧客へ
のリリースを行っている。(図5)具体的には IC パッドシリーズよりも基材組成とポアレベルを最適化し低欠陥性お
よび平坦性を達成している。各種工程や用途に応じたラインナップを取り揃えており、様々な顧客要求への対応が可
能となっている。一部の製品では国産化も進めており顧客での評価においても良好な結果が得られている。
3.3 テクスチャビリティーの制御
低欠陥性を達成するためには、パッド最表面側がどのような状態で基板と接しているかを把握することが重要であ
る。最近では基板との接触部の状態を評価できるようになり、実際の接触部の割合とパッド基材の相関関係が分かっ
てきている。この接触部の状態(面積や分布状態)はパッド基材の組成やポアレベルなどにより大きく依存している。
また、研磨の進行に伴い基板との摩擦やグレージングなどにより接触部分の状態は刻々と変化して行く。ドレッサー
によるコンディショニングを行うのは接触部の状態をブレークイン後の状態に戻す為である。研磨により接触部の状
態が変化することにより局所的な研磨圧力の集中や研磨スラリーの砥粒を均一に保持することが不可能な状況となり
スクラッチの発生や研磨レート異常などの不具合が発生してしまう。(図6)よって、研磨中に接触部分の状態を如何
に維持できるかが研磨の安定性確保や欠陥不良低減に対して重要な課題であると考える。これらの要求に対してパッ
ド基材やポアレベルの制御とコンディショニング条件の最適化により低欠陥性を達成している。
4. 次々世代向け研磨パッドついて(1xnm 世代)
4.1 次々世代向け研磨パッドへの要求事項
さらなる微細化に伴い研磨対象である絶縁膜の低誘電率化や DOF 低下による高平坦化性能、配線では Cu ダマシン
プロセスの多くの課題があり、RIE 配線形成が出来る材料変更による絶縁膜平坦化 CMP プロセスへのシフト、空中
配線(Air-Gap)上の絶縁膜平坦化におけるクラック抑制など様々な課題が指摘されている。(図7)1)
これら CMP 研磨への要求をまとめると、絶縁膜の低誘電率化や空中配線上絶縁膜平坦化では通常の研磨圧力では
ダメージが大きいため低負荷での研磨にて対応する必要が出てくる。そのため、研磨レート低下などによる生産性へ
の懸念が想定される。また、低ダメージ化に伴い研磨圧力制御の精度向上や DOF 低下に伴うより厳しい絶縁膜平坦度
への要求が挙げられる。
4.2 次々世代研磨パッドの方向性
研磨パッドに求められる性能としては、さらなる低欠陥性能も当然の事ながらこれまでの要求事項と大きく異なっ
ているのは低ダメージ化への対応になる。その結果、欠陥性能には優位に働くが研磨レートが低下するため、これを
如何に維持できるかが課題となる。また、より厳しい平坦度への要求もあるため次世代パッドのところでも話した低
欠陥性と平坦性の両立の必要性がより高くなる。
研磨パッドの特性としては、次世代パッドよりもさらに低硬度化の方向に向かい、研磨レートを維持するためには
ポアレベルの最適化や低密度化が必要になるのではと考える。さらなる低硬度化に伴い平坦度との両立が今まで以上
に難しくなってくる。そのため、2 ステップ化などプロセス側による対応も必要になると考えられる。
Dow/ニッタ・ハースでは、これらの要求事項に適用できる材料特性を持った IKONICTM パッドシリーズを開発し
展開を開始している。VISIONPADTM シリーズ同様に各種条件に応じてポアレベルなどを最適化できるようラインナ
ップの拡充を行っている。
5.まとめ(おわりに)
これまで CMP 研磨パッドのデファクトスタンダードである IC1000TM での取り組みや、次世代パッドとして
VISIONPADTM シリーズ、次々世代パッドとして IKONICTM パッドシリーズを紹介してきたが、先端デバイス向け
の研磨パッドの方向性としては、研磨自体が低ダメージ方向へとシフトする中でパッド基材の特性もより低硬度化の
方向にシフトしてきている。それに伴い平坦化性能の維持や生産性の改善などを如何に達成して行くかが今後課題と
なると考える。
図1 ULSI における微細・薄膜多層配線の役割と材料革新の変遷
1960 1970 1980 1990 2000 20202010
100
10
1
0.1
0.01
半導体の微細化
(um
)
対象製品
※引用:2013.1.22電子ジャーナル主催「2x/1xnm時代のCMP技術徹底解説」 ㈱東芝 半導体開発センンター柴田様資料
図2 パッド溝の代表的形状パターン
図3 BIF パッド
図4 グレージング低減による欠陥改善例
P加工(Perforation)<穴形状>
Grv加工(K-Grv・M-Grv・P-Grv)
<同心円形状>
XY加工(A21・A24等)<格子形状>
×100 Laser Micro Scope
CONFIDENTIAL
欠陥発生パッド表面
パッド中心付近 中間部 外周側
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50
Height(μm)
Fre
qu
en
cy
(c
ou
nt)
30mm 180mm 325mm
グレージングによる局所平滑化
コンディショニング条件変更による最適表面の維持
欠陥改善パッド表面
パッド中心付近 中間部 パッド外周側
欠陥発生パッドの高さ頻度分布
図5 VISIONPADTMシリーズ
図6 CuCMP における接触面積率とスクラッチの関係
図7 今後の CMP 対象材料の変化
参考文献 1) ㈱東芝 半導体開発センンター柴田:電子ジャーナル主催「2x/1xnm 時代の CMP 技術徹底解説」(2013.1.22)
Pla
nari
zati
on
Defectivity Improved
VisionPad™ Products
Improved
IC1000™Pad
Politex™Pad
VP3100
VP6000
VP3500
Metals
Non Metals
VP5000
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
0 50 100 150 200 250 300 350
Contact Pressure - psi
To
tal
Scr
atc
hes
IC1000TM
PolitexTM
Soft Pad
Polish Pressure 1.5 psi
→スクラッチ
→ 荷重/接触面積
Cu代替金属配線(W,Mo,Ru,Ni,Co)へ変更
↓
RIE加工& p-CVD・SiO2
成膜によるAir-Gap化に伴いSiO2-CMPへ変遷
<Local(Metal1)配線>高密度化(微細化)低容量化(薄膜化・Low-k化)
<Global配線>配線低抵抗化RC遅延低減化
<Semi-global配線>
RC遅延低減化
<Intermediate配線>高密度化(微細化)低容量化、RC遅延低減化
Cu配線のまま(Cu-CMP)
※引用:2013.1.22電子ジャーナル主催「2x/1xnm時代のCMP技術徹底解説」 ㈱東芝 半導体開発センンター柴田様資料