特別プログラム · 2018-04-25 · 「輸液については一番詳しい職種の...

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特別プログラム 薬剤師部会パネルディスカッション 看護師部会パネルディスカッション 栄養士・管理栄養士部会パネルディスカッション NST フォーラム フェローシップ応募者セッション

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Page 1: 特別プログラム · 2018-04-25 · 「輸液については一番詳しい職種の はず」と院内での講演を頼まれたりもしたが、実際に輸液 の処方設計に関与できることは極めて稀であった。薬剤

特別プログラム

薬剤師部会パネルディスカッション

看護師部会パネルディスカッション

栄養士・管理栄養士部会パネルディスカッション

NSTフォーラム

フェローシップ応募者セッション

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(232) 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018

薬剤師部会パネルディスカッション2月 22日(木) 8:45~10:45 第 1会場 パシフィコ横浜 国立大ホール

地域における栄養管理の問題を考える

司会:倉田なおみ(昭和大学薬学部社会健康薬学講座地域医療薬学部門)二村昭彦(藤田保健衛生大学七栗記念病院 薬剤課)

コメンテーター:吉田貞夫(沖縄メディカル病院 内科)

PPD-01NSTからWAVESへ

東葛クリニック病院 消化器外科1)

藤田保健衛生大学 医学部 外科・緩和医療学講座2)

秋山和宏1) 東口髙志2)

目の前の“いのち”に危機があるとき、何とかしたいと切実に思うのが人間であろう。とりわけ医療人の場合、その性は顕著となる。人間社会の営みの中で、我々は医学を発展させ、今日の医療システムを構築してきた。しかしながら、その営みは超高齢社会を招来させ、一人の高齢者が複数の病気を抱えることから、個々の病気を治すだけでは済まない事態を生じさせてきた。超高齢社会の様々な問題は循環構造化しており、従来のやり方では太刀打ちできなくなっている。この超高齢社会の生態系の中で、我々は医療人としてどのような取り組みをして行けば良いのだろう? 十数年来、病院内ではマネジメントにおける様々な革新があった。なかでも大なるものはNSTであろう。それは要素還元主義のサイエンスによる局所介入ではなく、栄養という身体にとっての要所(ツボ)への加療から一気に全体治癒に向かわせる手法であった。病院におけるNSTの成功を地域社会、社会全体にまで波及させる手段を模索して行くべきである。NSTには 3つの手順があったと考える。まず、入院患者の低栄養状態への「気づき」であり、次に様々な職種の医療人への栄養教育という「学び」である。その基盤の上にはじめてNSTのチーム医療が実績を上げることが出来たのである(「実践」)。すなわち「気づき」「学び」「実践」が抽出される。本日のテーマは「地域における栄養管理の問題を考える」である。これは、東口髙志本学会理事長が提唱するWAVES(WE Are Very Educators for Society)の主題でもある。今や、病院NSTは地域社会におけるWAVESへの適応拡大が求められ、我々医療人の主戦場も疾病を有する身体から生態系としての超高齢社会に代わろうとしている。先の「気づき」「学び」「実践」をもとに超高齢社会への処方箋を提案したい。これからの薬剤師においては、従来の処方箋を社会的文脈での処方箋に読み替えて、積極的に社会に働きかけるべきである。志ある薬剤師の参集に期待する。

PPD-02 保険薬局を訪れた潜在的フレイルの高齢者数と薬剤師のフレイル認知度

昭和大学薬学部 社会健康薬学講座地域医療薬学部門

熊木良太 石田麻緒 倉田なおみ

超高齢化社会が進む日本において、健康寿命を延伸するためにフレイルの早期発見・予防は重要である。そのためにはWAVESのような高齢者のフレイルをチェックする機会が必要であるが、そのような場は少ない。そこで、多くの高齢者が訪れる保険薬局はフレイルチェックの場として最適であると考えた。65 歳以上の歩行に問題のない保険薬局来局者を対象とし、平成 29 年 5~6 月の12 日間、Fried の評価 5項目を用いてフレイルチェックを実施した。その結果、被験者 98 名のうち、24 名(24.5%)がフレイル、60 名(61.2%)がプレフレイルに該当した。このことから、薬局に訪れる高齢者の多くは潜在的なフレイルであり、低栄養のリスクを抱えていることが示唆された。また、保険薬局はフレイルチェックの実施に適切な場であることが明確となった。一方、保険薬局薬剤師を対象にフレイルに関する意識調査を実施したところ、フレイルを「知っている」との回答は 30.7% と少なかった。患者がフレイルかどうかを意識して服薬指導を行う薬剤師はさらに少なく、薬局薬剤師のフレイル認知度や栄養状態に対する意識は、残念ながら低いことが明らかとなった。地域において、保険薬局にはフレイルや低栄養の患者が多く訪れているにもかかわらず、薬局薬剤師の知識はまだ追い付いていない現状がある。フレイルの早期発見は重要であり、地域高齢者と触れ合う機会の多い薬局薬剤師がその役割を果たすべきと考える。そして、フレイル予防を効果的に行っていくためには、医師、看護師、管理栄養士やリハビリスタッフなどとの地域連携が重要である。薬局薬剤師がフレイルに関心を持ち、フレイルを早期発見し、地域での予防を行うことは、高齢者の健康寿命の延伸に繋がると考える。謝辞:研究にご協力いただきました保険薬局の先生方に深謝いたします。

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日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018 (233)

PPD-03 栄養療法における病院薬剤師と地域多職種の連携

三豊総合病院 薬剤部1) NST2)

篠永 浩1)2) 水田 稔2)

これからの栄養サポートは、外来・入院・在宅をいかに「繋ぐ」かが重要となる。中でも在宅を中心とした地域全体の栄養サポートを望む声は大きい。しかし栄養サポートはNSTの普及によって医療機関を中心に必要性が認識されてきたが、医療機関との関わりが少ない地域の高齢者への具体的な取り組みが進んでいるとは言い難い。薬剤師が先頭に立って在宅栄養療法の舵を取り「顔の見える連携」体制を構築していくことができれば、その意義は大きい。病院であれ地域であれ,薬剤師には栄養サポートチームのコアメンバーの役割を担うようになって欲しい。香川県では ITによる全県的な医療連携かがわ遠隔医療ネットワークがあり、他の医療機関へ転院する場合にはシームレスな情報提供が行える。NSTもこのシステムを活用しているが、在宅における地域包括ケアの中での専門職による栄養管理はまだまだ十分ではない。地域では独立した専門職が別個に散在しており、同じ組織に属していないため、地域連携NSTをスムーズに運営するためには、地域多職種を繋ぐ役割を創出することが重要となる。そこで、今年度より当院ではNST専門療法士を「地域連携担当薬剤師」に配置し、全入院患者を対象に、退院後に薬学的な介入が必要と思われる症例のフォローを行っている。その結果、入院中に多職種連携支援を始めることで、退院後のかかりつけ医師、ケアマネジャー、訪問看護師、かかりつけ薬剤師に対して薬学的且つ栄養学的な提案を行うことが可能となった。薬剤師が介護サービスの内容を把握し、患者と家族の生活視点に立つことの意義は大きい。栄養管理と薬学的管理には大きな接点があり、それぞれを独立して考えるのではなく、一体として考えることで多角的且つ巨視的なサポートが可能となるだろう。今回当院での取り組みを紹介することで、薬剤師による地域連携の中での栄養管理を考える一助になれば幸いである。

PPD-04 ひとりNSTのススメ~でも本音は在宅でも多職種協働がしたい

ファーマシーはとり薬局

荒木玲子

【はじめに】栄養療法の重要性を端的に表した「万病に効く薬はないが、栄養は万病に効く」。これは私が病院NSTメンバーとして活動し始めたばかりの頃に JSPEN教育セミナーで出会った大好きな言葉である。【病院薬剤師と栄養療法】病院薬剤師が臨床栄養の場で薬剤師として他職種から何を求められるか。十分にその職能を活かし、患者さんを happy にする仕事ができているだろうか。調剤業務や服薬指導に時間を取られ一番大切な「栄養療法という薬物療法の土台作り」に貢献できるのは一部の薬剤師だったように思う。「輸液については一番詳しい職種のはず」と院内での講演を頼まれたりもしたが、実際に輸液の処方設計に関与できることは極めて稀であった。薬剤師のNST専門療法士試験の合格率は常に上位であるが、資格を得ても実際には活かしていない薬剤師も多くいる。私は結核病棟担当だったため、多くの低栄養患者と接してきた。褥瘡患者も多く、ライフワークに変貌した褥瘡ケアも学ぶことができた。【保険薬局に勤務して】病院を退職し、病院門前の保険薬局に勤務して 2年がたとうとしている。退職後の進路に保険薬局を選んだのは、在宅患者さんに喜んでもらえる仕事がしたかったからである。在宅には患者は医療者が思っているほどきちんと服薬ができていない現実や、生活習慣病で栄養管理が必要な患者が多数存在している。長いこと治らない褥瘡の患者にも少しアドバイスをすればたちまちのうちに治癒することもできている。【地域において薬局薬剤師ができる栄養ケア】在宅は生活の場であり、医療はその一部に過ぎない。長い間の生活習慣は一朝一夕に改められるわけもなく、一薬剤師にできることも限られている。私のスタンスは「きっかけ作り」。最後まで自分だけで完結するのではなく、あくまでも「気づき」のお手伝い。「そういえば薬局のおばちゃん、なんか言ってたなぁ」そう思い出してもらえれば幸いである。

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(234) 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018

PPD-05 医療・介護依存度の高い在宅患者における栄養管理の現状と課題

株式会社フロンティアファーマシー

前田桂吾

在宅患者と一口に表現するが、介護力不足ゆえに在宅サポートが行われているケース(慢性疾患や認知症など)と、神経難病や小児在宅で高カロリー輸液を使用している患者や在宅緩和ケアの患者とでは医療・介護依存度に大きな違いがある。また、在宅現場はまさに患者の生活の現場であるため、「管理」というよりは、患者側の価値観や生活スタイルに医療を溶け込ませていくことが必要である。そして、在宅医療におけるチーム医療は病院におけるチーム医療と異なり、患者ごとに関与する職種や顔触れが変わる。また、「患者の生活を支える」という視点を主眼に置くと、患者ごとにそれぞれの職種がチームの中での役割や立ち位置を変えていく必要がある。以上のような観点から今回のパネルディスカッションでは、医療・介護依存度の高い在宅患者における栄養管理について、高カロリー輸液を使用している場合の病院から在宅への移行の実際や病院薬剤師と薬局薬剤師の連携、在宅チームの中での薬剤師の役割や立ち位置、そして在宅チーム医療の中での栄養管理の現状と課題をお示しし、在宅現場において栄養管理をさらに進めるための方策を考える契機としたい。

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日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018 (235)

看護師部会パネルディスカッション2月 23日(金) 9:30~11:30 第 1会場 パシフィコ横浜 国立大ホール

『「栄養看護」を考える! 病院-在宅のジレンマと未来』

司会:清水孝宏(那覇市立病院 看護部)豊田実和(リハビリ訪問看護ステーションハピネスケア)

NPD-01 高齢心不全患者の退院支援における病棟看護師の役割

公立学校共済組合 関東中央病院 看護部

神田由佳

<はじめに>2025 年問題を抱える本邦では、未曾有の高齢化社会を控え高齢者・超高齢者を中心に心不全患者は増加傾向にある。しかし、治癒が困難と思われる高齢者の心不全管理については、エビデンスと言えるデータは限られており、医療費の増大や高齢者のQOL低下などの社会的問題が課題となっている。今回、A病院心不全患者の再入院率を後ろ向きに調査し、文献的考察を踏まえて急性期病院の看護師の役割について検討したため報告する。<目的>A病院に入院した過去 5年間の心不全患者の再入院に関する因子を調べ、病棟看護師の役割について検討する。<方法>研究デザイン:後方視的カルテ調査。対象:A病院の循環器内科病棟に入院した心不全患者(19歳未満は除外した)期間:2012 年 4 月 1 日~2017 年 3 月 31 日調査項目:再入院の有無までの期間・BMI・体重減少率・食事内容・エネルギー充足率・家族構成・認知症の有無など。<結果>心不全で入院した患者 756 名、性別:男性 422 名56.8%、女性 334 名 44.1%、年齢平均:81±11.13 歳であった。そのうち、1年以内に再入院となった患者は 172 名 22.7%、平均年齢:82±8.91 歳、男性:53.5% であり、体重減少や摂取量必要量以下を認めた。<考察>再入院した患者では体重減少や食事摂取量が少なかったという結果から、適切なリハビリと栄養を整えることが必要であることがわかった。臨床的かつ社会的特徴を理解し、総合的に把握・評価することで、Fried らが提示している高齢者のフレイルサイクルに似た心臓悪液質に陥る悪循環を防ぐことができると考える。<結論>急性期看護師として、入院当初から食事・運動を含めた実生活の把握を行い、患者・家族が退院後も継続可能な方法を選択することができるよう、在宅看護師との看・看連携を密に行うことが重要である。

NPD-02 地域包括ケア病棟で食べる生活を支援する

健和会大手町病院 看護部

岩﨑日香

入院を機会に、身体機能や認知機能、高次脳機能、経済的、精神的などの変化に対応が困難となり、急性期病棟からの退院が困難となることがある。このような患者を地域に、円滑に帰すことを目的に、地域包括ケア病棟は、2014 年の診療報酬改定で新設された。食べることは、疾患の改善や維持だけでなく、生きる意

欲や生命の維持に繋がり、退院後の生活を見据えた支援が重要となる。入院時に、SGAや嚥下リスク、口腔環境の評価、褥瘡リスク、転倒リスクの評価と機能的自立度評価表(FIM)を用いて問題を抽出した後、回復する機能の予測や退院後の支援環境も考慮する必要がある。食事準備の評価内容としては、服装や排泄、誘導手段、坐位姿勢、足台、テーブルの高さ、着席の配置、離床の耐久性、食事の形態の適正、言語聴覚士との連携、食事時間に合わせて誘導時間の調整、箸とスプーンの選択、飲水のとろみ剤の有無、義歯の装着の有無等の環境側面の準備も重要となる。身体機能や認知機能、高次脳機能、嚥下機能に問題の有る患者は、見守りをしながら食事の機能を評価することで、食事形態や嚥下機能、姿勢、認知機能などを重視した支援ができる。適宜、機能を繰り返し評価して行くことで、身体能力や認知機能の改善に繋がり、食事への関心が高まり、喫食量が増え希望とする場所に退院できるケースもある。地域に退院するためには、早期に患者や家族、退院後の環境や支援状況を把握して、継続的な支援が可能かを判断する必要がある。また、支援者に食事の環境や食事形態の見学、食事援助の技術などを看護師や言語聴覚士、理学療法士、栄養士などから在宅や施設スタッフに、伝達をする環境つくりが重要となる。口から食べる意欲と生きる幸せの活力を継続するためには、途切れない地域との連携を看護師は、牽引する責務がある。

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(236) 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018

NPD-03 病院から在宅療養の場へシームレスな栄養療法を届けるために~退院支援・調整の重要性~

一般社団法人愛生会 山科病院 入退院管理室

山田圭子

2025 年開始を目指した地域包括ケアシステムの概念は「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステム」とされている。当院でも、急性期病床に加え、平成 26 年の診療報酬改定で地域包括ケア病床が新設され、院内の急性期病床のみならず、近隣の急性期病院からも患者を受け入れ、治療の継続とその治療支援に重点をおいたNST活動を行っている。そして最終的に、在宅療養への場へシームレスな栄養療法を届けるために退院支援・調整を行っている。入院時から在宅療養に向けた退院支援が必要になった背景には、①医療制度改革により、早期退院を評価するようになったため、継続した医療の必要な退院患者が増加した。②高齢者・要介護者の増加により、療養生活に長期的な支援が必要になった。③独居・高齢者世帯の増加といった家族形態の変化に伴い介護力の低下がみられる。そこで、病院で働く看護師には、入院早期から病気や障害を持つ患者に関わる中で、患者を俯瞰でとらえることが求められている。まず、入院前の生活状況の確認を行う中で栄養問題となる原因を探り、患者や家族の在宅療養への意思確認をしながら療養生活をイメージできるような栄養管理を提示すること、その栄養管理が継続できるようなシンプルケアに移行し支援すること、退院後の環境整備を行い、人・物・経済的問題などを社会資源に繋ぐなどのマネジメントが重要である。退院前には、退院前カンファレンスを開き病院スタッフと在宅スタッフが集まり、患者や家族を交えて具体的な支援体制を検討することで、安定した退院後の療養生活の確保ができる。今回は、症例を交えて在宅療養に栄養療法を届けるプロセスを紹介する。

NPD-04 切れ目ない栄養管理と食べることを同時に支援するために

鹿児島市医師会病院 看護部

松尾晴代

超高齢社会を迎え、医療技術の進歩、健康志向の変化で着実に長寿化が進んでいる。一方で、疾病構造の複雑化、複合疾患の併存により、急性期治療重視の治療計画のみでは早期回復に向けた援助を十分に提供できない。病院や施設だけで完結した医療・介護を担うことに限界が生じ、従来型の急性期医療の考え方では問題解決が難しくなった。高齢化や認知症高齢者の激増、地域格差などの時代背景が連動し、治療より生活支援などを考慮した医療に需要が置かれ、医療と介護の一体的な提供が推進されている。急性期医療では、治療の過程で安静を必要とする時期がある。安静の状態が続くことは、臓器の廃用や筋萎縮などを引き起こし、身体面や精神面、認知機能の低下に影響する。高齢者の身体的変化は個人差が大きい。高齢になるほど、栄養状態が悪化し、体重が減少しやすく、様々な病気に罹患しやすい。これらが、どのような生活上の機能障害、社会参加の障害と関連するかという視点が必要である。そこには、生活を支える医療者として、質の高い十分な栄養管理と食支援、リハビリが求められている。栄養管理は、低栄養状態の回復のみでなく、患者のQOLを考慮し適切に実施することである。医療上の問題を含め、全ての過程において、「QOLの向上」と「生活の維持」への支援が求められている。医療の現場から退院に向けた環境調整の一連の流れの中で、嚥下障害や低栄養の管理とともに、情報共有や意思決定支援、ゴール設定などが必要である。看護師は、常に看護を通して「その人のために何ができるか」「どうしたら良いか」を考えながら多職種と連携している。退院支援を看護師の役割と切り離して考えるのではなく、患者の生活背景を見据えた栄養管理、食べることを支援するために果たすべき役割について考える場にしたいと思う。

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日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018 (237)

NPD-05 病院から在宅へ~訪問看護師の立場から見た現状と問題点~

よさみ訪問看護センター

谷口めぐみ

わが国では今、世界で類を見ない少子高齢化が進行しており、医療や介護を必要とする高齢者は増加の一途をたどっている。しかし希望すれば国民の誰もが適切な医療が受けられる社会保障制度が整備されていて、疾患を抱える高齢者も安心して病院へ受診、入院することができる。一方で、病院内では早期退院に向けた他職種協働による退院支援の強化により、治療は終了したものの、栄養状態も含めた全身状態の改善を待たずに在宅に戻されることで、再入院となってしまうケースも少なくない。以前、大学病院勤務でNSTの専従としてチーム回診を実施していた時には、管理栄養士や薬剤師、専門看護師や認定看護師などあらゆるエキスパートの知恵や知識と、さまざまな栄養補助食品など豊富な武器を持って、栄養治療に携わることができていた。訪問看護師となり在宅での栄養管理を行うようになった時、協働すべき医療スタッフによる「ご飯が食べられないなら果物でも食べておいて」という驚くような指導や、患者の栄養管理に興味をしめさない、食べられない理由を考えようとしない言動、金銭的な理由もあり使用可能な栄養補助に関する選択肢の少なさなど、想像を超える現実に直面した。病院では室温調整もされ、清潔を保つことが当たり前にできたが、夏でもセーターを着て毛布を被り、お風呂に入ることを拒否し続ける独居高齢者の水分補給や栄養管理に四苦八苦している現状がある。栄養は日々の活力の源であり、心身共に豊かな暮らしを続けるためにも、栄養状態はできる限り良好に保たねばならない。医療や栄養管理における看護師の役割は、各職種や関係機関を繋げ、豊富な知識や技術を携えて、ケアを必要としている方に寄り添って考えられる存在でなければならない。病院から在宅へ、安心して生活が続けられるよう切れ目のない看護を実現するためには何が必要か、最新の知識を多職種で共有し、これからの高齢化社会に立ち向かう術についての一考を述べる。

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(238) 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018

栄養士・管理栄養士部会パネルディスカッション2月 23日(金) 14:30~16:30 第 1会場 パシフィコ横浜 国立大ホール

地域包括ケアにむけた栄養管理~症例を通して考える~

司会:岡田晋吾(北美原クリニック 外科)田中弥生(駒沢女子大学 人間健康学部 健康栄養学科)

コメンテーター:篠 聡子(東京女子医科大学病院 看護部)宮下 剛(森田病院 リハビリテーション部)

DPD-基調

地域包括ケアシステムに向けた栄養管理~高度急性期病院から在宅までの栄養情報提供書を利用した事例検討~

北美原クリニック1) 駒沢女子大学2)

岡田晋吾1) 田中弥生2)

2025 年開始を目指した地域包括ケアシステムの一助として「食生活及び栄養障害の改善、疾病の再発予防や疾病の予防ができ、地域住民が住み慣れたところでその人らしい生活を送ることができる」とある。すなわち療養者が病院から施設、在宅に移り変わっても適切な栄養管理が必要であるということである。そのためには栄養管理に関する情報の提供、ケアマネジャーを中心とした多職種の協力、地域社会に密接した全療養者への主観的栄養アセスメントの徹底などEBMに基づく栄養管理を地域包括ケアシステムで共有することが必務である。しかしながら、在宅訪問栄養指導を行っている管理栄養士は未だ少ない。また高度急性期病院から中核の地域連携病院や介護福祉施設、在宅に向けての栄養に関わる連携も十分とは言えず、退院後に在宅での食事提供が儘ならず低栄養状態となるケースも少なくない。今後、地域に管理栄養士の顔の見える拠点としてこれからはじまる認定栄養ケア・ステーションなどと積極的に発信、収受する必要がある。これらは栄養ケアを実施することが退院後の患者のQOL向上や低栄養の重症化予防に寄与することだけでなく、我々の業務負担軽減や資質向上にも繋がると思われる。そこで本栄養士・管理栄養士部会では、「地域包括ケアシ

ステムと管理栄養士の必要性」について医師の立場からお話しいただいた後、模擬症例にて高度急性期病院、地域連携型中核病院、在宅訪問栄養指導までの栄養管理や栄養情報提供書をそれぞれのお立場でお話しいただくこととした。さらに、病院に認定栄養ケア・ステーションを置いた管理栄養士に事例を報告していただき、訪問看護師、言語聴覚士等との多職種連携を踏まえた全体討論の場も設けた。地域包括ケアでの栄養情報提供の必要性を理解し、患者の良好な栄養管理を途絶えないようにすることが責務であり、今後の対応に期待するところである。

DPD-01 急性期病院からの転院先や在宅訪問管理栄養士への栄養情報提供を考える

川崎医科大学附属病院

槇枝亮子 遠藤陽子

【はじめに】管理栄養士が栄養診断を行い、「栄養情報提供書」を作成するにあたっての現状と課題について症例を通して報告する。【症例 1】69 歳男性、食道胃接合部癌と診断され手術目的でA病院に入院。<入院時栄養評価>身長161cm、体重 64.3kg、BMI24.8kg/m2、Alb4.0g/dL、SGA:栄養状態良好。目標栄養量はEne1900kcal、Pro70g。<経過>術前は常食+プロシュアⓇ2P。入院 18 日目に経横隔膜的食道亜全摘術施行後、TPNと腸瘻からEN投与、術後7日目より術後三分粥食から開始しEN併用の栄養管理を行った。術後 16 日目より術後全粥食(1600kcal)とプロシュアⓇ(経口摂取)にUPし術後 18 日目に退院。地域連携中核病院であるB病院でドセタキセル+TS�1 併用療法を施行することとなり、栄養管理方法及び入院中の経過、生化学検査値について情報提供。【症例 2】81 歳男性、くも膜下出血と診断され即日A病院に入院。<入院時栄養評価>身長 163cm、体重 61.0kg、BMI23.0kg/m2、Alb3.9g/dL、SGA:栄養状態良好。目標栄養量はEne1500kcalPro55g<経過>入院翌日開頭クリッピング術施行。機能障害:右片麻痺、失語、摂食嚥下障害、右半側空間無視、認知機能低下。術後、経鼻経管栄養開始。入院 30 日目の嚥下評価でRSST:教示理解困難、水のみテストでは嚥下反射惹起遅延あり、入院 35 日目、胃瘻造設。入院 44 日目、B病院にリハビリ及び嚥下訓練目的で転院となり、栄養管理方法及び入院中の経過、生化学検査値、EN投与留意点、嚥下機能上の問題点について情報提供。【まとめ】地域包括ケアが進む中、適切な栄養管理が継続されるためには、管理栄養士の医療機関を超えた情報共有が不可欠であり、「栄養情報提供書」はなくてはならないものと考える。そして、施設間での適切な情報伝達や収受を可能とする栄養ケアプロセスを踏まえたスキルが求められる。

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日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018 (239)

DPD-02 急性期病院と在宅療養のリエゾン的存在である地域連携型中核病院の役割

医療法人新都市医療研究会「君津」会 南大和病院

宮司智子 工藤美香

【はじめに】施設間を超え栄養管理を繋ぐためには収受した栄養情報の活用と、在宅療養へのニーズに合わせたリエゾン的栄養管理が必要である。これらの管理栄養士の役割について検討する。【症例 1】A病院退院後 18 日目に地域連携型中核病院であるB病院に入院。ドセタキセル・TS�1 療法(2投 1休)開始。栄養情報提供書にて、食事摂取状況、栄養状態の推移、生化学検査値と栄養診断情報等を確認。<入院時栄養評価>体重 61.5kg、BMI23.7kg/m2、Alb3.0g/dL、SGA:中等度栄養不良、目標栄養量Ene 1700kcal、Pro65g。<経過>2クール目のドセタキセル投与後退院、外来にて 4クール目施行後、TS�1 で治療継続。その間つかえ感、味覚異常、口内炎等の症状有し栄養指導を継続。転院 6か月後リンパ節転移あり、食事摂取困難、胸水貯留。PS4、Alb1.9g/dL と全身状態悪化にて化学療法中止。症状コントロール目的で在宅療養の方針となり、訪問栄養食事指導を希望される。食事摂取状況、有害事象、生活情報等をCクリニックに情報提供。【症例 2】B病院回復期リハビリテーション病棟にリハビリと嚥下訓練目的で入院。栄養情報提供書にて、経腸栄養剤の種類・量等を確認、目標栄養量は胃瘻よりEne1600kcal と設定。<経過>VF検査施行後、嚥下訓練開始。ST、PTと連携しリハビリ進捗状況に合わせ経口摂取への移行プランを調整、経過良好。退院前栄養投与量はEne1800kcal(経口:日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013 コード 2�1:900kcal、経腸:900kcal)で、介護者に嚥下調整食の作り方等の指導実施。完全経口移行目的に嚥下訓練継続のため、訪問栄養食事指導を希望され、Cクリニックに介護力等の生活情報を含む栄養情報提供。【まとめ】地域連携型中核病院の管理栄養士には、収受した栄養情報を読み解き在宅復帰を念頭に置いたリエゾン的栄養管理の実施と、在宅療養継続のためのニーズを把握し、生活の視点を入れた栄養情報提供が求められる。

DPD-03 在宅訪問栄養食事指導における栄養情報提供書の活用

地域栄養サポート 自由が丘

米山久美子

【はじめに】退院時に栄養食事指導を受けても実施困難な在宅療養者が見られ、在宅訪問管理栄養士の役割は極めて大きく、管理栄養士同士の栄養情報の共有が必要と考える。今回、Cクリニックから当事業所に指示があり、在宅訪問栄養食事指導を行う模擬症例を通して、栄養情報提供書の必要性と課題について報告する。【症例 1】退院後5日目に、栄養情報提供書をもとに身体状況、食事摂取量、食事形態、経済力等含めアセスメント実施。<初回栄養評価>体重 58.6kg、血清Alb 値 1.8g/dL、SGA:高度栄養不良、目標栄養量はEne1600kal、Pro60g。<経過>がん性腹膜炎によるイレウスやオキシコンチンの副作用に注意が必要であり、経口摂取と在宅中心静脈栄養法が併用される。その後、胸水、腹水軽減に対しビタミンB1・糖・電解質・アミノ酸液を主体とした末梢静脈投与に変更された。医師や看護師と連携し、月 2回訪問し覚醒時に食事ができるよう食品のストック、市販食品の活用等をアドバイスし最期まで食べられるよう支援。【症例 2】栄養情報提供書を確認し、胃瘻からの栄養投与方法、摂取栄養量、食事形態、経済力等含めアセスメント実施。投与ルートは経口摂取と胃瘻からで、目標栄養量Ene1600kcal、Pro60g。<経過>医師と相談し、投与時間短縮のため薬剤扱いの半固形化栄養剤に変更。またリハビリが実施され、経口摂取は日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013 の分類コード 3が喫食可能となった。調理負担軽減目的に、朝は胃瘻から栄養剤投与、昼・夕食は経口摂取とし、市販品の活用やレシピの提案を行った。孤立しやすい環境であり、夫婦各々に合う地域のサロンや通所介護を紹介。その後、ADLと低栄養が改善し、半年後まで経過観察。【まとめ】栄養情報提供書を通しシームレスな食事・栄養管理支援が期待できる。今後、地域の医療機関や施設間の連携だけでなく、栄養ケア・ステーションなどの早急な体制つくりが望まれる。

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(240) 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018

NSTフォーラム2月 22日(木) 13:30~15:30 第 3会場 パシフィコ横浜 会議センター 3階 301+302

『病院NSTから在宅・地域連携NSTへ』~在宅医療の質向上のためにNSTができること~

司会:児玉佳之(医療法人社団佳生会 こだま在宅内科緩和ケアクリニック 内科・緩和ケア内科)千葉正博(昭和大学病院 外科学講座小児外科学部門)

コメンテーター:東口髙志(藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座)

NST-01 機能強化型在宅療養支援診療所における多職種連携在宅栄養サポートチーム(在宅NST)の活動

医療法人医純会すぎうら医院 在宅診療部1)

藤田保健衛生大学 外科・緩和医療学講座2)

医療法人医純会すぎうら医院 栄養管理部3)

中山真美1) 東口髙志2) 杉浦弘明1) 花田 梢1)

馬庭章子3) 金本由紀子3) 佐藤幸恵1)

【背景】病床数削減と在院日数短縮により、慢性期患者の療養は在宅へとシフトし、神経難病・末期がん患者・重度認知症等の医療介護依存度の高い患者が在宅療養している。当院在宅患者の約 75%に低栄養(at risk 含)、嚥下障害(疑い含)を認める。患者が安定した療養生活を送るために在宅NSTは必須である。【目的】島根県医療連携推進事業「出雲在宅NSTプロジェクト」には、病院NSTメンバー(医師・看護師・管理栄養士・療法士・薬剤師・歯科医師・歯科衛生士)に加え、在宅NSTメンバーとしてケアマネ・介護ヘルパー・福祉用具相談員が参加している。栄養支援の必要がある患者の在宅NST介入アウトカムを検証する。【方法・結果】在宅NSTメンバーのうち、医師・看護師・管理栄養士・ケアマネを必須 4職種とした。当院在宅患者 103 名のうち、必須 4職種以上の介入は 34 名(33%)であった。疾患内訳は、重度認知症(11 名 32.3%)末期がん(8名 23.5%)神経難病(4名 11.7%)、介入理由は低栄養(19 名 55.8%)、低栄養+嚥下障害(8名 23.5%)が多かった。NSTメンバー数は必須 4職種が最も多く(18 名52.9%)、5職種(7名 20.5%)6職種以上(9名 26.4%)であった。全県下ネットワークシステムによる医療介護連携カルテを共有し、静止画動画を駆使した情報共有を行った。この活動により在宅患者の栄養状態改善、QOL向上、ADL改善等のアウトカムが確認できた。【考察・結論】在宅医療特有のメンバー編成や多職種連携を実践している当院NST活動は、栄養支援を必要とする在宅患者に有効であった。しかし、介護度により保険サービスに限界がある事、複数事業所の同時訪問は保険算定が出来ない事、患者家族・在宅スタッフの知識不足等の問題がありNST介入の障害となっている。今後さらに症例を増やし、効果を検証する必要がある。

NST-02在宅でのNST活動の有用性とは?

株式会社ハピネスケア リハビリ訪問看護ステーションハピネスケア

豊田実和

<はじめに>フレイルやサルコペニアに対する予防的介入の観点や、摂食嚥下障害患者への対応など、在宅医療においても栄養管理は重要である。訪問看護ステーションにおいて栄養管理が特に重要視されるのは、主に終末期、摂食嚥下障害、神経難病患者、重症心身障害児の成長への支援などであり、患者の暮らしの中での望みを叶えることを頼りに介入することが多い。診療報酬を獲得するための在宅でのNST活動の有用性とはどんなところにあるのか、訪問看護ステーションの立場から在宅の現場で経験したことをもとにお伝えする。<活動の実際>訪問看護ステーションでの栄養にまつわる関わりの実際は、胃瘻からの経管栄養、摂食不良による脱水に対する静脈栄養、褥瘡の治癒促進のための栄養管理、重症心身障害児の食事支援などで、クリニックや薬局と連携している。補助食品を摂取していただくには、患者家族の経済的事情も考慮しなければならないため、信頼関係の構築と、栄養管理の効果を患者・家族が実感できるよう関わることが重要である。<考察>訪問看護師は、患者に関わるチームにおいて、その病状に従い、相談しながら療養生活における環境調整を行う。チーム内のメンバーコーディネート、役割分担により、他職種を活かし、患者にとって良いケアが提供され、より患者自身の自立が促されるように関わる。栄養管理において、患者の栄養管理のニーズに従って、環境調整をする場合、現状では管理栄養士が地域で報酬を得られる機会は少ない。 TNTを受講している医師数も少ない。在宅医療の領域で、チームの栄養に関するケアを行うにあたり、専門職に出会える確率が低い状態で、その専門性をどう担保すべきかが課題ではないだろうか。

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日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018 (241)

NST-03 在宅医療専門診療所における在宅NSTの目的と管理栄養士の役割

医療法人社団佳生会 こだま在宅内科緩和ケアクリニック 栄養科1) 診療部2) 看護部3) 医事課4)

大泉宏子1) 児玉佳之2) 北田優子3) 柴田由香3)

中川真由美3) 上谷内友美3) 石井寛樹4)

国により在宅医療が推し進められている昨今、病院から在宅へのスムーズな移行のためには病院NSTと在宅NSTの連携が非常に重要となる。しかし、在宅NSTという言葉自体は広まりつつあるが、診療所や訪問看護ステーション、保険調剤薬局などの多事業所が関わり医療や介護を支えている在宅では、多事業所が上手く連携して定期的に合同カンファレンスを開催できているような在宅NSTはほとんどない。また、一部の報道でもあるように在宅の医療レベルは十分に高いとはいえないのも現状である。訪問診療の対象者は「疾病、傷病のために通院による療養が困難な患者」であり、病状が重く、ADLの低下を認めている。そしてそのほとんどが栄養不良状態であり、栄養管理を必要としている。さらには口から食べること、栄養管理を実施して筋力を保ち、免疫を向上させることはQOL向上につながる。そのため、訪問診療対象者にチーム医療の一つとしてNSTが関わることは在宅医療の質向上という観点からも重要である。当院は患者の約 7割が終末期がんの在宅医療専門診療

所であるが、これらの現状を踏まえ、在宅NSTの確立を第一の目標とし、2017 年 5 月より単独診療所型NST(訪問NST)を院内に構築した。メンバーは医師、看護師、管理栄養士、医事課から成り、メンバー内のNST専門療法士 3名が中心となり活動している。管理栄養士は常勤であり、患者ほぼ全員の栄養状態を把握し、訪問栄養食事指導を積極的に実施している。今回は当院で実施している在宅NSTの取り組みと在宅NSTにおける管理栄養士の役割などについて報告する。

NST-04 在宅医療における栄養サポート―保険薬局の位置づけと多職種との協力体制を考える

株式会社ヤナセ薬局 在宅医療部

柴田賢三

株式会社ヤナセ薬局在宅医療部(当薬局)では、「薬局が備えるべき基本体制」および「薬局における薬物療法(薬学的管理)の実施」について全て準拠した体制となっており、24 時間対応体制の確立、輸液管理システムの整備(注入ポンプレンタルによる総合的な投与管理)、医療・衛生材料の提案や提供、医療用麻薬や輸液製剤の処方設計の提案、各種注射剤の無菌調製、患者宅へ薬剤や栄養剤の供給と指導、薬剤使用状態の把握と定期的な評価、連携医療機関に対する情報のフィードバック等を基本業務としている。このような体制を備えることは在宅医療において必要とされる薬剤や医療機器を迅速かつ安全に提供し、患者のQuality of life(QOL)の改善や患者・家族の不安の緩和に極めて重要であると考えられる。在宅医療を受ける患者や自宅看取りが加速度的に増加している当薬局の担当地域においては、医療機関で行われてきた栄養管理をそのまま継続するだけでは不十分であり、その時々に応じた栄養管理に可変・発案し、最後まで栄養管理がQOLの維持や向上の一部として存在し得るサポートを薬局として行う必要がある。在宅医療というフィールドにおいては栄養サポートチームという個別の組織が存在することは現実的には難しいため、夫々の患者で結成された在宅医療チームが協力して栄養サポートも行うという概念が必要である。しかし、各職種が専門分野に専念しつつ栄養サポートに対してどこまで連携してアセスメント・実践していくかまでは定まっていない。当薬局介入患者は 7割以上が終末期がん患者であり、介入期間も 21 日(中央値)と短い。在宅医療を担う保険薬局として特殊な環境下にはあるが、どのような在宅医療にも対応できる体制が整った次のステップとして、各職種が負担を増やすことなく栄養サポートを行っていけるよう薬局としてサポートできる部分を模索中である。

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(242) 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018

NST-05 「地域の中にあったらいいな!」の実現を目指して~「みんなの健康サロン海凪」の役割~

一般社団法人 みんなの健康サロン 海凪

中村悦子

地元の急性期病院で、透析看護、外来看護、訪問看護の経験を経て、栄養サポート室の専従という立場で栄養看護に関わってきた。これらの経験から痛感したことは入院中に栄養障害を指摘された場合、退院後も継続した栄養管理が必要となるケースが少なくないにもかかわらず、地域でのフォローアップ体制が十分ではないという現状だった。そのため、住民が日常生活の場においても適切な栄養ケアを継続していく仕組みの構築が急務と思われた。そこで、「栄養ケアの軌道修正」を実践する居場所作りを目指し、急性期病院で栄養サポートチーム(以下NSTと略す)の一員として在宅医療と、栄養管理の重要性を学んだ看護師の視点で、歯科開業医とともに地元のショッピングセンターの中に「一般社団法人みんなの健康サロン海凪」を立ち上げた。病院では低栄養や誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者との関わりが多かったが、地域では低栄養のみではなく脂質異常症も課題であり、入院加療をするまでもないが生活を整えるためのアドバイスが必要な住民が少なくない。看護師等の潜在専門職のプロボノ精神に期待しつつ、地域の高齢者や障害者の自助、共助の可能性も追求しながら取り組んでいる活動を報告する。

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日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018 (243)

フェローシップ応募者セッション2月 22日(木) 9:00~10:45 第 8会場 パシフィコ横浜 会議センター 5階 503

司会:片多史明(亀田総合病院 神経内科)柴崎美紀(杏林大学 保健学部看護学科)

F-1 消化器外科手術における周術期の骨格筋量に注目した検討と取り組み

前橋赤十字病院 外科

荒川和久

【目的】周術期の骨格筋量,術前の低筋肉量(サルコペニア)や術後の骨格筋量の減少が術後合併症や予後など種々の術後経過に影響するという報告が様々な領域でされている.今回,周術期の骨格筋量に焦点をあてた検討と取組みについて報告する.【方法】検討 1)当院で施行した代表的な消化器外科手術である胃全摘,幽門側胃切除,結腸切除,直腸切除,肝葉切除・胆管切除,膵頭十二指腸切除,膵体尾部切除の 7つの術式について,術後 12 か月目までの骨格筋量の推移を調べた.検討 2)術後骨格筋量の減少が大きかった膵頭十二指腸切除術において,骨格筋減少における有意な周術期因子を検討した.項目は術前(年齢・性別・総リンパ球数・アルブミン・トランスサイレチン・PNI・mGPS・CONUT・SMI),術中(出血量・膵の性状・胃の切除範囲),術後(感染性合併症・経管経腸栄養・脂肪肝・補助化学療法・原疾患の再発)で検討した.検討 3)検討 2の結果を受けて,骨格筋減少への対策として,術前に筋肉量を増やしておく目的で術前リハビリテーション+栄養療法(アミノ酸製剤)を,術後の筋肉量減少の抑制目的に同様にリハ栄養(+経管経腸栄養)を行い,その効果を検討した.【結果】検討 1)胃全摘,幽門側胃切除,膵頭十二指腸切除,膵体尾部切除で術後 1か月目に約 10%の骨格筋減少を認め,術後 12 か月後までほぼ回復することはなかった.検討 2)有意差のあった項目は,年齢・感染性合併症・経管経腸栄養・脂肪肝であった.検討 3)術前リハ栄養により,血清学的栄養指標のRTP 3 項目は全て上昇し,骨格筋量は 5.2%増加した.InBody 測定での phase angle も上昇した.膵頭十二指腸切除症例(年齢 77~88 歳,平均 82.5 歳)での術後 1か月目の骨格筋量は,術前リハ栄養施行前と比べて 1.5%の減少と,高齢者においても骨格筋量の減少を抑制し,かつ血清学的栄養指標の低下も抑えていた.【考察および結論】術前・術後のリハ栄養により術後の骨格筋量減少が抑えられた.

F-2 試作130cmRFBカテーテルを用いた one step 幽門輪後留置型PTEGの考案―従来法5例との比較

藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座

桂 長門

【目的/対象】胃切除の既往のない患者において、胃内にPTEG tube 先端を留置したとき、注入食の逆流で肺炎を起こす例はしばしば経験される。現在の PTEG kit には70cm Rupture Free Balloon(RFB)カテーテルがセットされているが、幽門輪後まで充分届かないため、PTEG tubeを胃内に留置後ガイドワイヤーを用いて幽門輪後へ送る操作が必要であった。2017 年岡山大会で住友ベークライト社と共同試作した 130cmRFBカテーテルによる onestep 幽門輪後留置型 PTEGを発表、現在 7例(男性 4例、女性 3例、平均年齢 77.6 歳)を経験した。今回、従来法 5例(男性 3例、女性 2例、平均年齢 77.3 歳)と、手術時間、術後 1、3、7日目の、体温、白血球数、CRP値の有意差を検討した。【結果】従来法 vs one step 法;手術時間(分)67±14 vs 37±11(p=0.01)、WBC(/cm3)1 日目 11,000±2450 vs8,700±1,400(p=0.05)、CRP(mg/dL)3 日目 3.2±1.3 vs 1.2±0.5(p=0.01)、体温(℃)3日目 36.8±0.5 vs36.0±0.8(p=0.05)において有意差が認められた。【考察】従来法では、2 step 目に難渋して時間を要し、PTEG患者の術後に影響を及ぼす因子となっていると考えられる。今後症例を重ねて検討を続けたい。【結語】130cmRFBカテーテルを用いた one step 幽門輪後留置型 PTEGは患者負担を軽減する事が示唆された。

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(244) 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018

F-3 進行舌癌における逆行性超選択的動注化学放射線療法と栄養学的予後に関する検討

横浜市立大学大学院医学研究科 顎顔面口腔機能制御学

大橋伸英

【目的】食道癌,胃癌,膵臓癌,大腸癌などの消化器癌では治療前の血液生化学的データを用いた栄養評価が生命予後と相関することが報告されバイオマーカーとして注目されている。しかし,口腔癌に関する報告は少なく治療前の栄養評価が生命予後と関連するかが明らかではない。今回われわれは各種の栄養学的バイオマーカーを用いて逆行性超選択的動注化学放射線療法(以下,動注CCRT)を施行した進行舌癌患者の治療前の栄養評価が生命予後と相関するか検討を行った。【方法】対象症例は 2008 年 7 月から 2016 年 6 月までに当科初診となった口腔癌 904 例のうち動注CCRTを施行した進行舌癌 94 例を対象とした。栄養学的バイオマーカーはCRP値と血清アルブミン値を組み合わせた三木のmodified Glasgow Prognostic Score(以下,mGPS),CRP�albumin ratio(以下,CAR),血液細胞成分を組み合わせた好中球・リンパ球数比(以下,NLR),血小板数・リンパ球数比(以下,PLR),小野寺らが提唱した血清アルブミン値と総リンパ球数を組み合わせた Prognostic nutri-tion index(以下,PNI)を用い ROC曲線からカットオフ値を算出し累積生存率との比較検討を行った。【結果】mGPSと累積生存率の関連はなかった。CAR,NLR,PLRは ROC曲線下面積(以下,AUC)が 0.5 未満であり累積生存率を予測する指標としての関連はなかった。PNI は AUCが 0.617 であり累積生存率の予測能との関連性は低かったが,カットオフ値は 49.15 と算出された。PNI において,>49.15/≦49.15 は 54/40 例存在し,PNI>49.15 および PNI≦49.15 の累積生存率はそれぞれ84.6%,65.8%であった(p=0.029)。【考察】PNI は手術施行のタイミングを判定するために使用されてきた指標だが,近年は腫瘍学的な予後指標としても使用されるようになってきている。進行舌癌患者において PNI は生命予後予測に有用である可能性が示唆された。

F-4 MNA�SFと GNRI は高齢回復期脳卒中患者における低栄養スクリーニングに妥当か?

長崎リハビリテーション病院 法人本部口のリハ推進室1)

教育研修部2) 栄養管理室3)

長崎県立大学大学院 人間健康科学科栄養科学専攻4)

西岡心大1)2)3)4)

【目的】高齢回復期脳卒中患者におけるMini NutritionalAssessment Short�Form(MNA�SF)、Geriatric Nutri-tional Risk Index(GNRI)の低栄養スクリーニングに対する妥当性を検証し、最適カットオフ値を明らかにする。【方法】対象は 2015 年 3 月~2017 年 3 月に回復期リハビリテーション(リハ)病棟に脳卒中後リハ目的で入院した65 歳以上の患者。入院採血間>7日、確定診断不明、通常時体重不明者は除外した。MNA�SF は入院日に管理栄養士が評価した。GNRI は血清アルブミン値、体重から算出した。標準検査は以下の欧州臨床栄養代謝学会低栄養診断基準を用いた;MUSTスコア≧1点かつ基準①:BMI<18.5kg/m2又は基準②:体重減少率>5%/3 月又は期間によらず>10%、かつ BMI<20(<70 歳)又は<22kg/m2(≧70 歳)。併存的妥当性の検証には受信者動作特性(ROC)曲線下面積、感度、特異度を用い、最大Youden指数(感度+特異度-1)が最大となる値を最適カットオフ値とした。予測妥当性検証には最適カットオフ値及び確立された栄養良好・栄養リスクなしの基準(MNA�SF≧12 点、GNRI≧98)を用い、指標ごとに 3群に分類し、退院時Functional Independence Measure(FIM)、FIM効率、在院日数、自宅復帰率を単変量・多変量解析により比較した。有意水準は 5%未満、必要サンプル数は 374名と推定した。【結果】解析対象者 420 名(平均年齢 78 歳、女性 41%)のうち 76 名が基準①、46 名が基準②により低栄養と判断された。低栄養に対するROC曲線下面積はMNA�SF0.891、GNRI0.869。最適カットオフ値としてMNA�SF≦5(感度79%、特異度 84%)、GNRI<93(同 79%、81%)を同定した。多変量解析によりMNA�SF≦5 は在院日数の(β=39.9)、GNRI<93 は FIM効率の(β=�.108)それぞれ独立した予測因子となった。【結論】高齢回復期脳卒中患者においてMNA�SF、GNRIは十分な併存的・予測妥当性を有していた。低栄養スクリーニングの最適カットオフ値はMNA�SF≦5 点またはGNRI<93 である。

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日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018 (245)

F-5 肝移植においてサルコペニア肥満は予後不良か?

京都大学肝胆膵移植外科

加茂直子

【目的】近年、サルコペニア肥満は生活習慣病のリスク因子であり、肝硬変や肝癌術後において予後不良であると報告されているが、肝移植における意義は明らかではない。そこで今回、肝移植におけるサルコペニア肥満の意義について検討した。【方法】対象は 2008 年 1 月から 2016 年 3 月までに当院で成人生体肝移植術を施行した 277 例。単純 CTにて第 3腰椎レベルでの骨格筋指数(SMI)、IMAC(多裂筋CT値/皮下脂肪CT値比)、内臓脂肪面積などを計測。サルコペニア肥満の統一した診断基準はなく、BMI は浮腫や腹水のため肝移植患者では相応しくないと考え、本検討では骨格筋量低下(SMI:男性 40.31cm2/m2未満、女性 30.88cm2/m2未満)かつ内臓脂肪面積 100cm2以上をサルコペニア肥満と定義。全症例を骨格筋量と肥満で群分けし、非サルコペニア/非肥満群(NN群)、非サルコペニア/肥満群(NO群)、サルコペニア/非肥満群(SN群)、サルコペニア/肥満群(SO群)に 4分類した。肝移植後生存率をNN群と各群間で比較し、多変量解析にて肝移植後危険因子を検討。【結果】277 例中、NN群 167 例(60%)、NO群 55 例(20%)、SN群 46 例(17%)、SO群 9例(3%)。NN群 の 1年/5年生存率は 86%/80%で、NO群(84%/75%,P=0.505)、SN群(59%/46%,P<0.001)、SO群(56%/56%,P=0.056)と SN群で有意に低く、SO群で低い傾向。低 SMI(P=0.020)、高 IMAC(筋肉の脂肪化)(P<0.001)、高VSR(内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比高値)(P=0.001)、術後血液培養陽性(P<0.001)などが肝移植後独立予後不良因子。【結語】サルコペニア肥満の診断基準に関するコンセンサスが必要だが、肝移植においてサルコペニア肥満は予後不良であり、低骨格筋量と内臓脂肪優位肥満は独立予後不良因子であった。

F-6 肝切除周術期の代謝物はどのように変化するのか?―メタボローム解析を用いた網羅的な周術期の評価―

徳島大学大学院 臨床食管理学分野

奥村仙示

【目的】肝臓は生体内で栄養素代謝の重要な臓器であり、肝切除により生体の代謝物が変動すると考えられるが、肝切除後の代謝変動を経時的に評価した報告は極めて少ない。メタボローム解析は、生体の表現型に近いので代謝物の変動を網羅的に評価するのに適している新規の測定法である。本測定法を用いて、肝切除周術期の生体内代謝物動態を評価する。【方法】対象は肝細胞癌患者 16 名(年齢:67±2 歳、男性13 名/女性 3名、BMI:22.2±0.6kg/m2)とした。HBV7名、HCV3 名、アルコール性 2名、HCV+アルコール性1名、nonBnonC3 名であった。キャピラリー電気泳動�飛行時間型質量分析計(CE�TOFMS)を用いて、早朝空腹時の血清を、術前、術後 1、3、14 日目(S0、S1、S3、S14)、および尿を、術前、術後 3日目(U0、U3)に採取し、測定を行った。また、術前および術後 14 日目に、間接熱量計で安静時エネルギー消費量(REE)と非蛋白性呼吸商(npRQ)を測定した。【結果】インスリンは、術後 1日目を頂値に、有意な上昇がみられた。インスリンは分岐鎖アミノ酸(BCAA)を血管内から組織へ移動することが知られているが、BCAAのバリンは、S1 および S14 で低下し、ロイシンは S14で低下した。イソロイシンは術後有意な変動はみられなかった。芳香族アミノ酸(AAA)のフェニルアラニンはS1 および S3 で上昇、チロシンは S1 で上昇した。Fischer比は S0 に比し S1 および S3 で有意に低下したが、S14は有意な低下はみられなかった。アルギニンは、S1 で著明に低下した。3メチルヒスチジンは、U3で上昇した。REEは術後 14 日目に有意な上昇はみられなかったが、npRQは有意な低下がみられた。【考察】術後 14 日目は、npRQは低下しており全身のエネルギー代謝としては飢餓状態を示した。また、バリンおよびロイシンも回復していなかった。間接熱量計とメタボローム解析を行うことにより術後の変動を改善するBCAAを含む就寝前夜食の検討が必要と考えられた。

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(246) 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.33 supplement 2018

F-7 慢性肝疾患における骨格筋脂肪化のサルコペニア、肝発癌への関連性

小牧市民病院 消化器内科

舘 佳彦

【目的】「骨格筋の量」から評価されたサルコペニアが肝疾患の予後に関与することが報告されている。しかしながら「筋肉の質」である骨格筋の脂肪化がサルコペニアや肝発癌へ及ぼす影響は明らかにされていない。【方法】当院にて 2013 年 1 月~2017 年 2 月の期間、肝生検、腹部CTが施行された肝癌既往のない慢性肝疾患患者 288 人(67.5±10.4 歳)を対象とした。CT画像を Syn-apse VINCENTを用いて腰椎 L3 レベル骨格筋断面積を算出し「日本肝臓学会肝疾患によるサルコペニア判定基準第 1版」に沿いサルコペニアを判定した。同時に骨格筋CT値(Hounsfield unit:HU)を算出しCT値 31HUをcut off としてHU高値を骨格筋非脂肪化群(166 名)、HU低値を骨格筋脂肪化群(122 名)と定義した。1)サルコペニアと臨床因子との関連に対し単変量、Logistic 多変量解析を行った。2)新規肝発癌と骨格筋脂肪化の関連に対しKaplan�Meier 法、Log�rank test、Cox 比例ハザード解析にて retrospective に解析を行った。【結果】1)非サルコペニア群 187 人、サルコペニア群 101人に分類された。単変量解析にてサルコペニア群において、有意に高齢であり、BMI、HGB、T�B、骨格筋HU、AFPが低値であった。Logistic 多変量解析にて、低BMI(<22.5)(Odds ratio:OR 6.50,P<0.001)、骨格筋脂肪化(OR 2.23,P=0.007)を有することがサルコペニアの存在に関連する独立因子であった。2)肝生検日からの平均観察期間 2.50±1.0 年であった。新規発癌は 19 例に認められ、1/2/3 年発癌率:3.2/5.3/7.3% であった。単変量解析にて肝発癌群において、有意に肝硬変が多く、高齢であり、PLT、骨格筋HUが低値であった。Cox 比例ハザード解析にて肝硬変(Hazard ratio:HR 6.62,P<0.001)、骨格筋脂肪化(HU値 31 未満)(HR:3.50,P=0.017)が肝発癌に関与する独立因子であった。【考案】慢性肝疾患患者において骨格筋脂肪化はサルコペニアに関連する要因であり、新規肝発癌に関与することが認められた。