移植・再生外科学 - f.kpu-m.ac.jp · 態生理 輸液・輸血 血液浄化療法...
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教室の主要テーマである臓器移植�特に腎臓移植�肝臓移植及び膵臓移植は順調に軌道に乗り症例を積み重ね進んでおります�また一般外科�腎不全外科�血液浄化など多方面にわたる臨床�研究と再生医学の実現に向け日夜取り組んでおります�����年は��例の腎移植(うち脳死下�例�心停止下�例)���例の生体肝移植��例の膵移植と計��例の移植を行い過去最高となりました(表)� ����年は��例の腎移植(うち献腎移植�例)��例の生体肝移植��例の脳死下膵移植を行いました�また平成����年��月��日には予定の生体肝移植と平行し�脳死膵単独移植�脳死腎移植とマンパワーの少ないなか初めて�日�例の臓器移植を実施しました�
医局のスタッフ
現在の医局構成員は�吉村了勇教授(昭和��年卒)以下�岡島英明准教授(昭和��年関西医大卒)�牛込秀隆講師(平成�年卒)�昇修治助教(平成��年卒)�坂井利規後期専攻医(平成��年卒)�鈴木智之後期専攻医(平成��年卒)
となっており�臓器応答探索医学講座の松山昌秀講師(平成�年大阪市大卒)もともに診療に当たっています�また�越野勝博大学院生(平成��年福井医大卒)が本学細胞分子機能病理学で再生医療に関する基礎的研究を行っておりま
医学フォーラム ���
�部 門 紹 介�
移植・再生外科学
表
す�これに数人の研修医のローテーターが加わり日々の臨床にあたっています�さらに�中村緑佐先生(平成��年卒)�中尾俊雅先生(平成��年卒)�原田俊平先生(平成��年卒)�増田康史先生(平成��年卒)の将来有望な若手が入局し�中村�原田両先生は近江八幡市民総合医療センターで外科レジデントとして�増田先生は研修医として修錬中であり�中尾先生は大阪鉄道病院にて外科レジデントの修練中です� � .腎移植
����年�月末までに第�外科時代からの累計で���例の腎移植を行いました�成績も抗����モノクロール抗体とカルシニュウリンインヒビターを用いた最新の免疫抑制プロトコールでは��年生着率��%���年生着率��%と向上しております�近年�型から�型へという様な血液型不適合移植が生体腎移植の�割から�割の率で行われ�成績も血液型一致症例と遜色無いようになってきており今後更に増えて行く事と思われます�また夫婦間移植も増えており�年間移植症例の�割位はご夫婦間の移植になっております�さらにウイルス感染症など合併症を減らすべく当科主導の高用量ミゾリビンプロトコールの全国多施設共同研究も進んでお
ります�今後は血液透析を経ないで移植する未透析移植の増加も見込まれるとともに�更なる長期生着を目指すべく�移植後の悪性腫瘍�メタボリックシンドロームといったものの予防�早期発見にも重点的に取り組んでいく必要があると考えられます� � .生体肝移植
平成��年�月に本院での第一例目が胆道閉鎖症の男児に行われた後�院内からの紹介患者も増加し�成人症例を中心に月一例ペースで行い�平成��年�月末で累計��例の生体肝移植を施行しております�当院は肝臓移植の全国��認定施設の�つとして�現在�名の末期肝硬変の患者さんが移植を希望し待機中です�伝統的に本学肝臓内科が極めて高水準の診療をされています関係で�多くの成人肝硬変�や肝癌の症例をご紹介いただき����年��月にはウイルソン病による肝不全児が滋賀県よりヘリコプターにて緊急搬送され当院で生体肝移植も行い�また翌年�月には院内紹介の薬剤性急性肝不全に対する緊急生体肝移植も実施ました�いずれも順調に経過しており�全国レベルと比しても良好な成績を収めております�近年�成人の�型肝硬変・肝癌に対する移植症例が急増し
医学フォーラム���
移植腎生着率 時代別
てきており�移植後の再発肝炎への対応などが今後の課題となっております� � .膵臓移植
����年�月��日�当院初(本邦��例目)の脳死下膵腎同時移植が施行され����年�月までに�例の膵臓移植を実施いたしました��例めの方は約�ヶ月で無事退院され�社会復帰されています�先日�年の検査入院をされましたが�透析とインスリンを完全離脱し�糖尿合併症も一部改善傾向にあります�当院は膵臓移植の全国��認定施設の�つとして�他にまだ��名の�型糖尿病の患者さんが移植を希望し待機中です�最近脳死臓器提供の増加につれて本学待機中の患者さんが移植候補になる事が増えており�この分野での症例の増加が見込まれます�
専門医修練カリキュラム
Ⅰ.カリキュラムの特徴と目的
移植外科学�一般外科学及びその周辺医療の習熟を目指す医師を対象とする� 併せて大学院進学による医学博士修得を含んだ総合的プログラムである�大学病院と関連病院外科における移植一般消化器外科の修練を通して広い一般外科のベースの上に��世紀の外科医療の主体となる移植外科の習熟を目指す�移植外科として腹部臓器�特に腎臓移植�肝臓移植�膵臓移植の�分野の臨床外科修練を行い�併せて周辺医療として日本透析医学会の認定医を修得する�Ⅱ.教育課程
別紙のごとく�臨床修練及び大学院進学の予定を定めている����)基本カリキュラム(�年) 初期臨床研修修了者で外科医を志す医師に対して日本外科学会専門医習得に必要な修練を広く行う�具体的な修練内容として�一定レベルの手術を適切に実施できる能力を取得するための�基本的手術手技に習熟することは勿論の事�一般外科医に必要な局所解剖�病理学�病態生理�輸液・輸血�血液浄化療法�血液凝固と線溶現象�栄養・代謝学�感染症�臨床免疫
学�創傷治癒�周術期の管理�集中治療�救命・救急医療についての基礎的知識を習熟する�この間�消化器外科とのローテイトを希望によっておこなう� 外科診療に必要な検査・処置・麻酔手技について習熟し�外科治療の適応についての判断を養う� 国内・国際学会における研究発表・論文作成のトレーニングも併せて行う����)専門医カリキュラム 専門医コースにおいては�日本外科学会専門医習得に不足している経験を補うと共に大学病院�関連病院において移植外科学の���������の修得を開始する� この時期の初期�年間を関連病院に在籍する医師は一般消化器外科学の習得に務め将来の消化器外科専門医習得も視野に入れておく�その医師は習得後大学において�消化器外科のベースの上に移植外科の���������の習得を行う�移植の���������としては現在最も広く日本で行われている腎臓移植手術(生体�死体)�肝臓移植手術(生体�死体)を中心に行い�併せて脳死膵臓移植を修得する�周辺医療として血液浄化療法を修得する為�日本透析医学会認定医の資格も得られる様指導する� 腎臓移植は生体�死体を含めて年��~��例で�主に生体腎移植である�日本で�番目に症例が多く�全国の��~��人に�人は当教室の患者である�肝臓移植は生体肝臓移植を年�~��例実施し�全国��の実施認定施設の�つである�脳死膵移植については全国��の実施認定施設の�つで�����年�月に第�例を施行�現在まで�名の患者が脳死膵移植をうけている�腹部移植は消化管�肝・胆・膵�泌尿器にわたる手術であり�手術術式・手技は当然�術前・術後管理においても該当領域の応用的な技量・知識を必要とする� またこれに伴い基本的な肝疾患�腎疾患�膵疾患の診断と病態の評価ができる様に指導する�外科治療の適応についての判断を養い�基本的に手術手技に習熟することも必要である�上記移植手術に助手・術者として入り手術手技
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に習熟する�具体例等(ア)手術では主に術者�第一助手として手
術に参加し手術の流れに沿った役割分担ができる�
(イ)周術期の緊急事態に対処できる�(ウ)脳死体�心臓死体より臓器の摘出を行
う����)大学院 �年目以降においては大学院へ進学を推奨し�医学博士を習得する様指導する� 大学院においては現在の医学の進歩から考えて��年間完全に臨床を離れる事は手技が重要な位置を占める外科においては難しい�従って��年目と�年目は臨床も併せて従事する事が望ましい��年目��年目は完全臨床を離れ�基礎研究に従事する�場所は希望に応じて当教室�学内基礎教室�あるいは全国のトップレベルの研究室に国内留学も可能である�できれば�年内で終了する様指導する����)海外留学 その後希望者には海外留学をできるだけ多くの人に機会を持ってもらえる様にする�現在のスタッフは全員海外留学の経験があり�米国�ヨーロッパ等の移植施設へ紹介可能である�
研 究
マウス異所性心移植モデルを用いた�����での免疫寛容の研究を行っております� 目的)移植臓器に対する免疫寛容の誘導は移植免疫学にとって最大の目標であり�そのために拒絶反応のメカニズムを解明することが急務となっています�拒絶反応のなかでも急性拒絶反応においては�リンパ球による関与がメインであり�現在の免疫抑制剤の多くはこれらリンパ球の活動を抑えることを目的とした物であります������はマクロファージや���細胞から分泌される抑制性サイトカインであり�抗原提示細胞における���������Ⅱの発現を強く抑制し�免疫反応を調節しています�また免疫寛容の誘導には末梢におけるマイクロキメリズムの存在が強く関与しています�我々の教室ではマ
ウス異所性心移植モデルを用いて�免疫寛容の誘導における�����とマイクロキメリズムの効果について研究しています� 実際は��マウスから胎児肝幹細胞を採取し�����を遺伝子導入し�������マウスをレシピエントとして�マウス異所性心移植を行い������遺伝子導入した幹細胞を�週毎に投与し�各々の群で生着期間を比較検討しました�またレシピエントの各種臓器を用いマイクロキメリズムの解析を行いました� 結果ですが�����遺伝子導入幹細胞�週毎投与群(����±���������)は������遺伝子導入幹細胞単回投与群(����±���)�遺伝子未導入幹細胞�週毎投与群(����±���)�コントロール群(����±���)に比べて有意に生着期間が延長しており����日生着したマウスも認められました�またレシピエント末梢血�及び骨髄細胞においてマイクロキメリズムが認められました� �����はマイクロキメリズムの成立及び移植臓器の生着期間延長に大きく関与しており������が免疫寛容導入への一端を担うことが示唆され������による新しい免疫抑制法の開発の可能性が期待されうる結果を得ています�
学 会 開 催
現在までに全国規模で�つの学会�研究会を主催致しました�平成��年�月に第�回日本異種移植研究会を本学図書館ホールで開催し�平成��年�月に第��回日本小児腎不全学会を大津市旅亭紅葉で開催しました�平成��年�月には第��回日本臨床腎移植学会を北陸の山城温泉で開催し数多くの参加者に来ていただきました�平成��年�月には第��回日本膵・膵島移植研究会をコミュニティ嵯峨野�そして平成��年は�つの学会を主催しました��月��日には第���近畿外科学会を京都テルサで開催���月��日~��日には第��回日本移植学会を「みやこメッセ」にて開催(日韓移植フォーラム同時開催)し�いずれも多数の参加者で盛会裏に終えることができました�
医学フォーラム���
医局の年間行事
当教室では毎年�つの研究会を主催しております�毎年秋に琵琶湖畔で開催される移植治療研究会(通称:���������������� ���)(平成��年は開講��周年記念式典�平成��年は移植学会開催のため開催せず)は�外来講師の講演�症例検討を通じ院内各部署や関連病院の先生方とのコミュニケーションの場となっています�また京滋透析・腎移植懇話会は岡名誉教授の時代に始まり年一回の開催で既に��年の長きに渡り続けられており�特別講演�教育講演�研究発表を通じ京滋地区での透析�腎移植の接点となるよう開催しております�また��回を数えました乳腺・甲状腺外科フォーラムはこれら疾患の診断治療の情報交換の場となるよう関連病院の先生方に多数参加していただき開催しております�最近�肝移植の増加を考慮し�昨年より肝移植�肝不全治療研究会を立ち上げ毎年�月に開催することにしました�研究発表という形式で無く�紹介を頂いた症例について肝臓
内科と移植外科から主治医が症例を双方の立場から紹介し検討する形式をとりました�議論が多く出るため�時間半の延長になってしまいます�
医局の一週間
移植一般外科の外来は月曜(吉村教授�岡島准教授)�水曜(吉村教授�牛込講師�昇助教)�木曜(松山講師)�金曜(岡本客員講師�鈴木・坂井医員)に行っています�また月�水�金曜には同時に血液浄化部にて松山昌秀講師を中心に院内の血液透析を担当しております�近年は血液アフェレーシスが増えてきております�毎週月曜日の午後は教授回診に続き症例検討会を行い�木曜午前��時からの病棟におけるコメディカル合同カンファレンスにて患者さんの状態報告と治療方針の検討を行っています�また毎週火曜日を移植手術日として予定の生体腎移植または生体肝移植を行っています�
(文責 教授 吉村了勇)
医学フォーラム ���