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水素キャリヤーガスによる GC/MS分析の基礎 2013.2.22 GC研究懇談会 アジテント・テクノロジー(株) 代島茂樹 発表時とは一部資料が異なります

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Page 1: 水素キャリヤーガスによる GC/MS分析の基礎水素キャリヤーガスによる GC/MS分析の基礎 2013.2.22 GC研究懇談会 アジテント・テクノロジー(株)代島茂樹

水素キャリヤーガスによるGC/MS分析の基礎

2013.2.22 GC研究懇談会 アジテント・テクノロジー(株) 代島茂樹

発表時とは一部資料が異なります。

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本日の内容

1) GC/MSにおける水素キャリヤーガス等の特徴と測定上の注意

2)測定感度とノイズ

3)マススペクトルの質

4)まとめ

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GC/MSにおけるヘリウム以外、水素等のキャリヤーガス使用とその注意-1

1)水素、窒素は発生装置及びボンベでの入手が容易でヘリウムの代替候補

2)キャピラリーカラムでの分離やMSの感度の観点から水素の方が窒素より有利だが、可燃・爆発性、反応(還元)性のあるガスのため取り扱い注意(最近はGCに多くの安全機構が搭載)

3)市販のGC-MSはヘリウムで最高の性能が得られるように設計(水素等の使用では十分な性能は発揮しにくい)

4)水素の場合、真空ポンプによる排気効率が下がるため真空度の低下が起こり種々の問題の原因となる(特に測定感度の低下)

5)水素等を使用する場合、カラム流量を出来るだけ下げ(1ml/min以下)、真空度の低下、イオン化の際の影響を最小限にする必要あり

6)水素の場合、溶媒にジクロロメタンや二硫化炭素の使用は避ける(塩化水素や硫化水素の発生あり)

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GC/MSにおけるヘリウム以外、水素等のキャリヤーガス使用とその注意-2

7)水素の場合、注入口での反応を抑えるため出来るだけ温度を下げる

8) カラム流量を下げるには内径の細いカラムが最適、また、水素の場合、内径を細くしないと制御が困難になる恐れ(後で例示)、メソッドの変更

(例えば30m x 0.25mm x 0.25μmを20m x 0.18mm x 0.18μmにする)

9)内径の細いカラムではクロマトピーク幅が狭くなるためSCAN速度、SIMのdwell timeを調節し、sampling points数を一定以上確保する必要あり(特に水素)

10) カラム流量が少ないため高圧(パルスド)注入を推奨

11)水素は金属にもぐりこみ脆弱化させる性質があるため、イオン源周りの材質(特にマグネット)に対策が必要

12)水素は配管等に吸着した成分を引き剥がし、イオン源まで運び、BGの増大を招くことがあるため、切替後、暫くは実測定は行わず安定化するまで一定時間待つ必要あり (一週間にわたる場合あり) (後で例示)

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オーブン温度 He H2 N250℃ 7.7 1.1 6.8

100℃ 10.5 3.0 9.5200℃ 16.3 6.8 14.7

50℃ 3.8 -5.5 2.5100℃ 5.7 -4.7 4.1200℃ 9.6 -3.0 7.2

50℃ -0.9100℃ 0.3200℃ 2.8

50℃ -6.1100℃ -5.3200℃ -3.8

50℃ 20.5 10.1 19.2100℃ 25.1 13.1 23.4200℃ 34.1 19.1 31.6

50℃ 9.1 -2.9 7.4100℃ 11.6 -1.8 9.4200℃ 16.5 0.3 13.4

50℃ 3.1100℃ 4.6200℃ 7.8

50℃ -3.6100℃ -2.6200℃ -0.6

  (1.0ml/min)

(30cm/sec)

(45cm/sec)

(15cm/sec)

30mx0.25mmi.d.

(30cm/sec)

  (1.0ml/min)

(45cm/sec)

(15cm/sec)

20mx0.18mmi.d.

GC-MSにおける各カラムにおけるキャリヤーガスとカラムヘッド圧(psi)の関係

黒字:高精度での制御可能青字:制御可能赤字:設定不可能(困難)

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GC メソッドトランスレーションヘリウムのメソッドを水素へトランスレーション可能

GC-MSにも適用可能

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200000400000600000800000

100000012000001400000160000018000002000000

Time-->

Abundance

TIC: ToxCKO_H2_4.D\data.ms

4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00 16.00 18.000200000400000600000800000

10000001200000140000016000001800000200000022000002400000260000028000003000000

Time-->

AbundanceTIC: ToxCKOHe_4.D\data.ms

水素

ヘリウム

20m x 0.18mm id x 0.18 um DB-5MSUI

毒物チェックアウトサンプル測定例キャリヤーガスを水素に変更した直後ではTICCのピーク形状悪く、テーリングも見られる。

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200000400000600000800000

100000012000001400000160000018000002000000220000024000002600000

Time-->

Abundance

TIC: RT330Lock_1.D\data.ms

毒物チェックアウトサンプル測定例(水素キャリヤー)、イオン源の焼きだし等の後の測定

TICCのピーク形状の大幅な改善、テーリングもほぼ解消

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キャリアーガス存在下におけるGCーMSの測定感度に及ぼす要因(MS側)

• イオン化効率・・・フィラメントからの電子をキャリアーガスが消費してしまうと試料成分のイオン化率が減少→ N2に特に不利*

• イオン透過率・・・真空度が悪いと透過率下がる→ H2に不利

• 検出器のノイズレベル→ データからH2に不利

*イオン化断面積; He : H2 : N2 ≒ 1 : 3 : 10 (電子エネルギー:70eV時)(分子の大きさ、イオン化エネルギー、電子エネルギー等に依存)イオン化エネルギー:He=24.6eV, H2=15.4eV, N2=15.6eV

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各キャリヤーガスでのノイズの特徴

• SCANでのノイズレベル、H2 >> He, N2 (測定質量範囲にも依存、He, H2は低質量域にノイズが多く、N2は全体的にノイズが広がっている)

• SIMのノイズレベル、H2 > N2 > He (m/zに依存)

検出器(SEM)/PAD(HED)のノイズ増大の考えられる要因

• 中性粒子・・・排気効率の悪さによる数の増大・・・・H2• 光子(紫外線)・・・・イオンのQポールへの衝突(生成するキャリヤーガス由来の

イオンの増大)・・・・H2,N2• Ⅹ線・・・・イオンのQポールへの衝突(同上)・・・・H2,N2• 熱電子(Stray electron)・・・・(イオン源で生じる熱電子の増大)・・・・H2,N2• (キャリヤー)ガスに関与する成分由来のイオン・・・H2(金属表面から付着成分

を引き剥がす)

以下のデータは全てAgilentの装置(シングルの四重極)用い、特定条件下で測定されたもの(一般的な傾向はあると思われるが絶対的なものではない)

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Scanモードでの感度とノイズの比較 (m/z: 45-350)農薬混合標準液100ppb (1μl注入)

Heキャリヤー

H2キャリヤー

N2キャリヤー

ノイズレベル 150,000

※リテンションタイムは各キャリヤーガスにより異なります。

ノイズレベル 45, 000

ノイズレベル 50,000

SIMモードでの感度とノイズ比較He:ノイズレベル 200、IDL 10fg; H2:ノノイズレベル 2000、IDL 15fg; N2 ノイズレベル 650、IDL 110fg)(試料はOFN, 0.1ppbあるいは1ppb使用)(m/z 272でのSIMクロマトグラムの比較)

IDL:Instrument Detection Limit

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1)水素のノイズレベルはヘリウムの6~8割5分程度

2) Scan及びSIMとも感度に大きな変化はなし

3)絶対強度はヘリウムがやや大きい、SIMにおける検出下限値はノイズが少ない分水素の方が少し低い

4)水素はメタンに一部含まれていても単にプロトン供与体として働くだけでPCIのイオン化に大きな影響なし

5)電子捕獲型NCIでは水素が一部含まれていても熱電子の生成とイオン化に大きな影響なし

ヘリウム及び水素をキャリヤーガスに用いた場合のCI(試薬ガスはメタン)の特徴

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水素キャリヤー GCーMSでのマススペクトルの質

• 各種炭化水素及び特定の官能基を有する化合物についてライブラリーの一致率を確認。

• 一致率は78-97%と比較的良好(90未満は3/29)。スペクトルの変化を必要以上に懸念する必要はない。

• 一致率が相対的に低い化合物でも全体的なスペクトルの変化は小さい。

http://www.chem-agilent.com/appnote/applinote.php?pubno=GC-MS-201302AZ-002を参照して下さい

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まとめー1

1) H2, N2を用いる際には各特徴・注意事項を把握、特にH2の場合

2) H2は高感度分析への適用には限界があるが、カバーしうる分析は多い

3) Heが入手可能であれば、その使用量を節約するメソッドが必要(測定時以外はN2への切替をするメソッド、デバイスの利用)

4)Heが入手できない場合GC-MS → H2の使用を基準に、場合によりN2GC → H2, N2の適宜使い分け

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まとめー2

1)EIでの感度はHeと比較してH2は1/2~1/10、一般的には1/5程度、 N2は1/10あるいはそれ以下、モニターする質量範囲やイオンのm/zにも依存

2) H2の場合、EIマススペクトルの変化はあるが一般的には大きくない、容易に違いが確認できるのは全体の1/10程度(定性、定量分析の際にはあらかじめ標品でマススペクトルを要チェック)

3) PCI/NCIとも感度やマススペクトルの変化は余りなしH2の場合、ノイズが減る分、S/Nやや向上の傾向