国際学術出版のプロセス――cfpから出版まで the process of international academic...

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http://www.***.net 国際学術出版のプロセス CFPから出版まで マルチメディア振興センター 七邊 信重

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http://www.***.net

国際学術出版のプロセス CFPから出版まで

マルチメディア振興センター

七邊 信重

自己紹介

七邊信重(ひちべのぶしげ)

専門

メディア(ゲーム、アニメ等)

情報社会

著作

『デジタルゲームの教科書』

『妖怪ウォッチが10倍楽しくなる本――妖怪ウォッチのゲーム・アニメ学』

2

本日の発表内容

「ビデオゲーム研究」の現状

本発表の目的: 情報提供

CFPから出版までのプロセス

投稿までの経緯

共同作業での論文作成

査読から出版までのプロセス

まとめと今後の課題

3

「ビデオゲーム研究」の現状

海外

ビデオゲーム研究は、多くの研究者が参加する活発な研究領域に

日本

研究人口がかなり小さく、学術的に実りのあるコミュニケーションを行える場も限定的

他のゲーム研究者とコミュニケーションするために、英語で発表や論文投稿を積極的に行う必要がある

4

本発表の目的: 情報提供

国際学術出版: 英語での研究成果発表手段の一つ

本発表では、「論文集への投稿」という形での国際学術出版に関する情報を提供

具体的に、『Transnational Contexts of Culture,

Gender, Class, and Colonialism in Play: Video

Games in East Asia』という論文集における、論文募集(Call for Papers、CFP)から出版までに行ったことを紹介

原稿作成・翻訳

査読・コメント・チェック対応など、著者間、著者・編者間、著者・他研究者間のやりとり 5

Transnational Contexts of Culture, Gender, Class, and Colonialism in Play: Video Games in East Asia

Pulos, Alexis, Lee, S.

Austin. (ED.)(2016).

Palgrave Macmillan.

8章中4章が日本のゲーム文化についての論文

ただし、日本からの成果は1本のみ(拙稿)

姉妹編の書籍には、日本からの成果が2本掲載

価格

eBook: $79.99

Hardcover: $99.99

6

著者から見たCFP発表から 出版までのプロセス

7

年月 イベント

2015年 1月 CFP発表

2月 アブストラクト・CV提出

3月 アブストラクト採択

7月 論文(初稿)提出

コメント受領(Lehtonen氏) 9月 コメント受領(匿名査読者)

チェック・コメント受領(Noppe氏)

2016年 1月 論文(修正稿)提出

6月 出版段階に入ったとの連絡

7月 論文(最終稿)、索引等提出

9月 著者連絡先を提出

12月 出版

投稿までの経緯

CFPの発見

「東アジアのビデオゲーム文化・産業研究」募集

2015年1月21日、DiGRAサイトでCFPを見る

DiGRAのMLか、同学会が提供するRSSフィードで情報入手?

論文投稿を考える

「日本の同人・インディーゲーム制作者の意識や制作実践の特徴」に関する論文

職場の同僚で英語論文投稿の経験が豊富な田中絵麻氏に声をかけ、共著論文作成を目指す

8

DiGRAサイトのCFP

9 出典:http://www.digra.org/cfp-book-chapters-for-video-games-in-east-asia/

投稿の理由: コミュニケーション!

①ゲーム文化・産業研究の成果を発表しても、学術的に深いコミュニケーションをできる研究者が日本には少ない。

②日本語で論文を書いても、国際的には何も書いていないのと同じと感じる機会が度々あり、英語での情報発信の必要性を痛感していた。

③論文の一部を英語化したスライドや、時には日本語論文を読んでくれる海外の研究者が多い。

英語論文を用意することで、こうした研究者の期待に応えられるし、また問い合わせへの回答も容易になる。

④日本の同人・インディーゲームに関する海外の研究の多くが、二次情報(メディア記事等)に基づく中、一次情報(インタビューデータ)に基づいた研究を発信することで、日本のゲーム文化に関するより正確な情報を提供できる。

10

共同での論文作成:アブストラクト・CV

2月15日、アブストラクトとCurriculum Vitae

(CV)を作成し、編者のAlexis Pulos氏と S.

Austin Lee氏にメールで提出

3月下旬、アブストラクト採択通知を受領

研究の進捗、方法、問い、社会・学会への貢献等に関する質問を五つ受領。これらに回答

質問の回答は、編者が本の編集をする際に必要とするとのこと

11

共同での論文作成: 論文

手順

①七邊が日本語論文作成

②田中氏が英語に翻訳

③七邊が翻訳論文を修正・加筆

当初)日本語 途中)英語

④田中氏が原稿に修正・加筆

以下、③④を反復(5回くらい?)

ある時点から英語原稿をベースに修正・加筆を相互に行ったため、最終原稿の日本語版は存在しない。

論文は「シカゴ・スタイル」に基づいて作成

「シカゴ・スタイル」に関する著作を参照 12

共同での論文作成: 苦労

インタビューデータの翻訳

日本語では疑問に思わなかったインタビュイーの発言が、様々に解釈でき、どのように翻訳すべきかわからない

日本語論文では、日本語に翻訳された英語文献の該当箇所を引用

英語翻訳に合わせ、関係するすべての原書・英訳書を購入し、もとの英文を引用

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査読から出版まで: コメント・チェック

編者が設定した原稿〆切は5月末だったが、7月15日に再設定された。原稿(初稿)提出

査読期間に、共著者の田中氏の勧めで、親しくさせて頂いているゲーム産業研究者のMiikka Lehtonen氏に原稿へのコメント依頼

田中氏が同人文化に関心がある海外の研究者を検索したところ、七邊の論文を博士論文で引用し、日英翻訳のチェック業務もされてるNele Noppe氏を発見。コンタクトを取り、原稿へのコメントとチェック(有料。2回)を依頼

14

Open Japan Group(Nele Noppe氏)

15 出典:http://www.openjapangroup.com/open-japan-group/

査読から出版まで: コメント・チェック

Lehtonen氏、Noppe氏から約20件ずつのコメントを、また、9月初旬に編者経由で査読者から30以上の長大な査読コメントを頂く

日本語の学会誌(not 当学会)では、専門的だが些末なコメントを受け取ることが多い

今回、海外の研究者から受け取ったコメントは、片手間で対応できない本質的で骨の折れるもので、論文の内容を深める上で非常に有益だった

16

編者からの査読コメント(一部)

17

査読から出版まで: コメント・チェック

2016年1月 70以上のコメント・チェックに対応した原稿(修正稿)とコメント回答書を提出

6月 本が出版段階に入ったとの連絡

7月 論文のアブストラクトを加えた原稿(最

終稿)とプロフィール、索引、画像、インタビューデータ利用説明書等を提出

9月 著者連絡先を提出

12月 本が出版

2017年1月 出版社から著者が本を受領

拙章は38頁。他章の1.5倍程の長さ 18

経済面

出版に関する費用負担はなし

原稿料もなし

英文チェック

Noppe氏に2回依頼

1回目: 文法的に正しいだけでなく、英文学会誌の査読者が読んでも流暢で自然に見える文章に校正

2回目: 文法的正しさをチェック

研究者割引で、総額300ユーロ

19

まとめと今後の課題

国際出版のメリット

コミュニケーションの増加

海外連携の機会の増加

取組みのコツ

一人で取り組むのはモチベーション面で困難

「社会的」に取り組む

日本のビデオゲーム研究の課題

単著の国際出版

論文集の編集

日本の研究者が編者に

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Playful Thinking (MIT Press)

21 出典:http://www.playfulthinking.net/index.html#submit

参考文献 [1] Pulos, Alexis, Lee, S. Austin. (ED.)(2016). Transnational

Contexts of Culture, Gender, Class, and Colonialism in Play: Video

Games in East Asia. Palgrave Macmillan.

[2] DiGRA. CfP: Book chapters for “Video Games in East Asia”

DiGRA January 21, 2015 <http://www.digra.org/cfp-book-chapters-

for-video-games-in-east-asia/> (2017年1月30日アクセス)

[3] Miikka Lehtonen ischool The University of Tokyo

<https://ischool.t.u-tokyo.ac.jp/ourteam/miikka-lehtonen/>(2017年1

月31日アクセス)

[4] Open Japan Group <http://www.openjapangroup.com/open-

japan-group/> (2017年1月31日アクセス)

[5] Hichibe, Nobushige, Tanaka, Ema. (2016). Content Production

Fields and Doujin Game Developers in Japan: Non-economic

Rewards as Drivers of Variety in Games. Pulos, Alexis, Lee, S.

Austin. (ED.), Transnational Contexts of Culture, Gender, Class, and

Colonialism in Play: Video Games in East Asia. Palgrave Macmillan,

pp. 43-80. 22

ご静聴、ありがとうございました。

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七邊信重(Hichibe, Nobushige)

[email protected]

twitter: yakumo415, chimarisan