統合型gisの高度利用に関する調査報告書 · 1...

59
統合型 GIS の高度利用に関する調査報告書 平成 21 年 3 月 浦 安 市

Upload: others

Post on 13-Jun-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

統合型GISの高度利用に関する調査報告書

平成 21年 3月

浦 安 市

Page 2: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 目 次 -

1.調査の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2.調査の手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

3.各課保有情報の地図化適合性分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

3-1 元資料の選定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

3-2 事務事業の地図化適合性の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

1)事務事業評価結果一覧表の整理

2)地図化適合性評価

3-3 地図化適合性の評価結果の集計分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

1)事務事業数による地図化適合性集計分析

2)トータルコスト(決算額)による地図化適合性集計分析

3)地図化適合性の高い部・課

4)事務事業の対象別件数と地図化適合性

4. アンケート調査及びヒアリングなどの詳細調査・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

4-1.アンケート調査票の設計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

4-2.アンケート調査及びヒアリングなど詳細調査の対象とする課の選定 24

4-3.アンケート調査及びヒアリングなど詳細調査の実施・・・・・・・・・・・ 24

4-4.アンケート調査及びヒアリングなど詳細調査の結果・・・・・・・・・・・ 24

1)地図化適合性と地図化要望アンケート調査の集計結果

2)ヒアリング調査結果

3)ヒアリング調査結果のまとめ

5.テストデータの作成と評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

5-1.基礎データの収集方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

5-2.テストデータ作成の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

5-3.テストデータの作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

1)共用データの地図化

2)みどり公園課データの地図化

3)保育幼稚園課データの地図化

4)健康増進課データの地図化

5)防犯課データの地図化

5-4.テストデータを踏まえた「情報の地図化」に対する評価・・・・・・ 48

1)各課の事務に関連する情報の地図化に対する評価

2)地図化の効果が期待できると評価された情報項目

6.統合型GIS高度利用に向けたシステムの拡充と推進上の留意点・・・ 50

6-1.統合型GIS高度利用に向けたシステムの拡充・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

1)政策検討や事務事業改善に向けた統合型GISの高度利用の方向性

2)統合型GISの高度利用における標準的な手順の設定

3)統合型GISの高度利用を実現するためのシステムの整備方針(案)

4)統合型GIS高度利用を実現するシステムの整備費および保守費

5)統合型GIS高度利用を実現するシステムの整備効果

6-2.統合型GIS高度利用を推進するにあたっての留意点・・・・・・・・・・ 56

Page 3: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 1 -

1.調査の目的

浦安市(以下、「本市」という。)では、地理情報の整備と蓄積を積極的に行い、統合型地理情報システム

1(以下「統合型 GIS」という。)を構築し、地理情報の共有化による重複整備費用の抑制や、効率的な地理

情報の活用を進めている。

また、公開型地理情報システム2(以下「JAM」という。)を整備し、市民にインターネットを通して、

防災マップや水害マップなど様々な地図を公開するとともに、犯罪情報提供システムと連携し情報提供して

いる。さらに、JAM と電子申請システムを連携し、オンライン申請に関する事務の効率化と市民の利便性

向上に努めている。

このような中、統合型GISに各課が行っている事務事業に関するデータを取り込み、加工して、効果的に

可視化することができれば、本市にとって政策や施策・事務事業の検討や事務事業の評価などの有効な道具

として、活用できるものと考えられる。

このため、この調査は、各課の事務事業を精査し、地図化の適合性を調査するとともに、地図化できる事

業を選定し、既存システム上でテストを行い、統合型GISが政策や施策・事務事業の検討や事務事業の評価

などの有効な道具となりうるか、その高度利用の可能性について検証するとともに、統合型GISの高度利用

に向けたシステム構成、データの管理、推進体制などの基本的な枠組みを検討するものである。

2.調査の手順

本調査の手順は以下に示すとおりである。

注) GIS:Geographic Information Systemの略。地理情報システムと同義。地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデ

ータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術。(国土地理院)

1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

えば道路、街区、建物、河川など)を各部局が共用できる形で整備し、利用していく庁内横断的なシステム。

2 公開型地理情報システム(JAM):インターネットを利用して、地域住民同士、地域住民と市との間で、地図を介した情

報交換を可能にするシステム。「JAM」とは、Joint Active Mapの略。

3.各課事務事業について地図化適合性を分析

5.テストデータの作成と有効性検討

4.詳細調査(アンケート調査及びヒアリング)

6.統合型GISの高度利用に向けた方策と課題

Page 4: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 2 -

3.各課保有情報の地図化適合性分析

3-1 元資料の選定

各課保有情報の地図化と、政策や施策・事務事業の検討や事務事業の評価への活用可能性を検討するに

際して、各課保有情報に地図化可能な情報がどの程度含まれているかを分析する必要がある。しかしなが

ら、これらすべてを統一的に把握できるデータはない。

一方で、各課が行っている主な事務を統一的なフォームで網羅的に整理した資料として「事務事業評価

表」がある。事務事業評価表には「地図化可能な情報」が存在するか否かは明示されていないが、記載さ

れている情報を分析することで、地図化可能な情報がどの程度含まれているかを推測することが可能であ

る。そのため、本調査では、地図化適合性調査の基礎資料として事務事業評価表を用いることとする。な

お、事務事業評価表は平成15年度から毎年作成し市民にも公表しており、フォームは3,4頁に示すとおり

である。

また、本調査で対象とする事務事業数は、平成19年度事務事業評価表に記載されている709事業とする。

Page 5: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 3 -

(参考)事務事業評価表の構成

出典:浦安市公式HP(総務課)

Page 6: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 4 -

Page 7: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 5 -

3-2 事務事業の地図化適合性の評価

1)事務事業評価結果一覧表の整理

①事務事業評価表の整理

『事務事業評価表』は、1つの事業につき2頁で構成されており、これらすべてのデータを709事業

分まとめても、そのままの形では地図化適合性の分析が困難なため、『地図化適合性』の評価に必要と思

われる情報を中心に10項目を設定し、一覧表に整理することとした。この結果を「各課事務事業評価表

の要点・地図化適性の分析表(1)」として取りまとめた。

なお、「各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析表(1)」には、事業コード番号など地図化適

合性の判定に直接関係しない項目も加え、事務事業の概要が一覧に把握できるようにした。(11 頁、各

課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析サンプル表(1)参照)

表 事務事業評価表の整理項目と地図化適合性の分析視点

項目 項目別の情報内容と地図化適合性の分析視点

1.事業コード番号 事務事業を組織系統により整理をするためのコードを設定した。部コード-課コー

ド-係・班コード-事業番号で構成した。ホームページに掲載されている組織表の

順番に従って付番した。(例:08-05-02-001)

2.事業内容 事業の内容がイメージしやすいように任意の名称を加えた。(例:計画策定、施設

維持管理、支援、健診、訪問相談、情報システム整備、リサイクル)

3. 事務事業評価・対

象事務事業名 事務事業評価表の1頁目、上段左のタイトル欄の情報項目であり、事業CDと事務事

業名ならびに関連予算細事業名。①事務事業コード(平成19年度、公式番号)、②『事

務事業名』③関連予算細事業名、④事業種別(5区分)を抽出した。

→ 『事務事業の性格』を概略的に把握する。

4. 対象業務 事務事業評価表の事業の目的・概要のなかから対象物(施設、活動、人等)と、業務概

要を抽出した。

→ 『地理的情報要素』の有無の判断の参考にする。

5. 対象者・施設等 事務事業評価表の対象という項目から、具体的な事業の対象として特定される公共

施設、設備、ネットワーク、土地等、または市民、団体等の対象者、利用者等につい

て抽出した。

→ 事務事業対象が『地理的情報要素』をもち、地図化表現が可能かを評価する。(地

理的要素の有無)

6. 実績(H18年度) 事務事業評価表の「活動、対象、成果」の3指標と、効率性指標で、事業の実績が数

値で示されている。H18年度以前からの継続事業の場合は「H18年度=実績」の値を

実績として取り上げ、H19 年度からの新規事業については「H19 年度=見込み」とし

た。コストの内訳は、委託費や管理費等の予算額+職員人件費の合計(トータルコ

スト)とした。

→ 地図化情報の対象となりうる数値情報か、地域特性を指標する属性データとし

て使用できるかを判断する。

Page 8: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 6 -

7. 事業実施・委託等 事務事業評価表の年間活動を取り上げ、『H18 年度=事業の流れ、職員の作業内容』

『H19年度=の変更点』を抽出する。また、業務委託等については『指定管理者』『補

助金給付』の該当をチェックした。

→ 年度の事業の実施メニュー、対象、箇所、運営管理の方法等の具体的な内容、新

年度の変更点などを把握する。

8. 事業の目的等 事務事業評価表による2頁目の評価項目を集約した情報項目である。事業実施の根

拠、経緯、現在の状況、問題点・課題を整理した。

→ 事業の目的・意義、事業の経緯、実情、重要性、必要性の有無、今後の方向性、住民

の意識、要望など、コメントとして把握できる。

9. 法令関係 事務事業評価表の『行政の守備範囲』の区分及びコメントを抽出して示した。

→ 法律による義務として実施する事業か、法令の裁量事業として実施する事業

か、市の守備範囲として独自に行う事業か、市の事務効率化のために実施する

内部管理系事務事業など、根拠となる法令や義務・責任の有無を視点とした事

業の性格が把握できる。

10. 市民・議会の要

望 事務事業評価表による『市民や議会等からの要望・意見』を抽出した。

→ 事業実施に対する市民、議会の関心の度合い、それらの具体的な内容などを把

握する。

②各事務事業の対象の区分

地図化適合性を判断するうえでの参考とするために、「各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析

表(1)」の「対象業務」、「対象者・施設等」の内容について、事務事業の対象を下表により区分し、地

図化適合性を評価した。(12頁、各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析サンプル表(2)参照)

表 事務事業の対象と地図化適合性

事務事業の対象 地図化適合性

年代、性別、その他の特性等で特

定される市民(通学児童など)

対象が場所と密接に関連するため、

地図化適合性がある。

市民

全市民(相談に訪れる不特定の

市民)、地域地区の住民、特定目的

の組織団体

業務実施時に対象となった市民の

住所付き名簿を作成すれば、地図化が

可能である。

市職員(職員研修・労働衛生管

理等)、委員会(審議会、運営委員

会等)

地図化の対象となりにくい。 行政関係者

委託事業者、指定管理者 地図化の対象となりにくい。

1.対人系サー

ビス(人)

市民以外 来訪者、市内勤務者、市内事業

対象が場所と密接に関連するため、

地図化適合性がある。

Page 9: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 7 -

施設系 公共施設、土地(各部門が管轄する

市有施設、土地、設備・資機材等)

対象が場所と密接に関連するため、

地図化適合性がある。

2.インフラ系

サービス(物)

ネットワー

ク・エリア系

公共交通、供給処理、集配、情報

通信設備等(道路管理、鉄道、バス、

下水道、ゴミ収集、通信ネットワー

ク等)

対象が場所と密接に関連するため、

地図化適合性がある。

業務記録・進捗記録の管理が必

要な事業(月次で記録・集計が必

要な事業)

業務上データ化されている可能性

が高く、地図化適合性がある。

3.事業の進捗

記録・集計・報告

市民の意見・要望、相談業務の受

付処理が重要な事業

市民の意見・要望の地図化は、事業

化の検討に必要なため、地図化適合性

がある。

4.計画策定事業 総合計画(基本構想、基本計画、

実施計画)、部門計画(行政分野別

計画、特定テーマ別計画等)

計画図が有る場合は、関係部門に情

報提供をできるため、地図化適合性が

ある。

全市・部門別の意識調査 市民ニーズの把握、事業化の検討の

方向を探る上で、特定の場所と関連付

けられる事項は、地図化適合性があ

る。

5.市民意識調査

各課業務アンケート 事務事業の改善、事業化の検討に役

立つ情報であり、特定の場所と関連付

けられる事項は地図化適合性がある。

予算編成・執行、決算事務、基金

管理、市債発行管理、会計事務、

税務、入札、契約、徴収等

各種市税徴収、国民健康保険や介護

保険の料金徴収と給付などにおいて、

対象者や訪問先の所在地を把握する

必要があるため、地図化適合性があ

る。

その他は、地図化の対象となりにく

い。

6.予算・財務・会計・税務等

補助金、給付金の交付 補助金、給付金の交付が地域に与え

る影響を把握する上で有効であり、地

図化適合性がある。

Page 10: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 8 -

2)地図化適合性評価

①地図化適合性評価の方法

『地図化適合性』の評価項目は、「各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析表(1)、(2)」を

基に、『地理的情報要素』の有無と『データの状態』の良・不良の2つとした。地図化適合性評価の検討

フローは以下のとおりとした。

判定基準

①『地理的情報要素』

の有無

事務事業の対象(市民、特定のグループ、階層、公共施設、土地、ネットワーク

等)について、町丁目、字、地番、学校区、区間など、場所を特定できる情報が含

まれていると考えられる場合、『地理的情報要素』が有りとした。

②『データの状態』

の良・不良

活動指標・対象指標の欄に『実績値』が毎年掲載されており、その実績値の根拠

となるデータが管理されている。また、その内容が『地理的情報要素』と関連があ

ると考えられる場合、『データの状態』が良とした。

上記の地図化適合性評価は、事務事業評価表に基づく推定であり、市行政全体としての傾向を把握す

るための資料としては有用であるが、個別事務事業の地図化適合性を検討するには、「場所を特定できる

情報の蓄積状況」や「地図化に対する各課の要望」など、さらに詳細な調査が必要である。

このため、4課をサンプリングし、アンケート調査やヒアリングによる詳細な調査を実施した。(22

頁 4.アンケート調査及びヒアリングなどの詳細調査を参照。)

集 計

事務事業

NO地図化適合性はないと想定される事業

NO地図化適合性があると想定される事業

地図化適合性が大きいと想定される事業

YES

YES

①地理的情報要素の有無

②データの状態の良・不良

Page 11: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 9 -

全709事務事業の判定結果は、「各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析表(1)、(2)」に下記

のとおり、色分け表示した。

『地図化適合性はない』と想定される事務事業

事務事業の対象の全部について【地理的情報要素】がないものを、この区分とした。

ただしこの中には、他の事務事業の関連データとして地図化の有効性があるもの、他の事務事業の地

図化データを活用することで大きな効果を期待できるものが含まれている可能性がある。

(例)

・審議会、委員会、協議会、市民団体、業界団体等の運営の支援(補助金等)を対象とする事務事業

で、地域性が関連しない事務事業(単独の事務事業の場合)。

・相談、指導、啓発、セミナー、研修、イベント等の事務事業で、対象者を氏名や住所で特定しない

事務事業。

・単独の市有施設の運営管理、維持管理等の事務事業で、地域性がない場合。

・総務、企画、財務会計、税務等の内部管理系事務事業のうち、【地理的情報要素】がない事務事業。

『地図化適合性がある』と想定される事務事業

事務事業の対象の全部または一部について【地理的情報要素】があるものを、この区分とした。

(例)

・中小企業支援事業や、行政サービスセンター運営事業などのように、複数の事業を一体にした『統

合型』の事務事業で、その一部に地図化の効果が期待できる事務事業。

・財務・会計、税務、保険等の事務事業で、例えば、市税の課税・徴収、国保の給付や徴収等の対象

者が【地理的情報要素】として特定できる事務事業。

・市内各地域を巡回して対人サービスを実施している事務事業。

『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業

事務事業の対象の全部または一部について【地理的情報要素】があるもののうち、事務事業の対象の

【地理的情報要素】がより明確なものを、この区分とした。

(例)

・すでに地図化による実績がある事務事業、及び現在は未着手だが、同様に効果が期待される、都市整備

及び環境整備等の都市基盤系の事務事業。

・建物や土地、あるいは設備・資機材等の市有財産の管理、有効利用を推進する事務事業。

・各部門の公共施設や地域ごとにおかれた地域施設の運用管理や情報通信等の事務事業。

・健康・福祉系ならびに教育系の事務事業のうち、住民記録システムのデータとリンクできる特定階層の

市民を対象とした事務事業。

・健康福祉、教育、防災、防犯、清掃に関する事務事業。

Page 12: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 10 -

・市民や市民団体による地域活動や地域形成に関する活動等を支援する事務事業。

②事務事業別地図化適合性評価結果

全709事務事業に関する地図化適合性評価結果を、「各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析サン

プル表(1)、(2)」(11,12頁参照)の形式で整理した。

全事務事業に関する評価結果は、資料編の「各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析表(1)、(2)」

に掲載した。

Page 13: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 11 -

表-『各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析』サンプル表(1) 事務事業評価

資料

:H

19年

度事

務事

業評

価表

 実

績値

はH

18年

度実

績に

よる

 表

の記

入事

項に

誤り

があ

れば

、修

正を

お願

いし

ます

NO

係班

事業

コー

ド番

号事

業内

容事

務事

業評

価・対

象事

業名

対象

業務

対象

者・施

設等

実 

績(H

18

年度

)事

業実

施、委

託等

事業

の目

的等

法令

関係

市民

・議

会の

要望

001

総合

計画

01-02-01-001

●計

(総

合計

画策

定)

003 

第2

期基

本計

画策

定事

(基本

計画

審議

会委

員15名

分報

酬・基

本計

画審

議会

経費

・基

本計

画策

定市

民会

議委

員20名

分報

酬・基

本計

画策

定経

費・

まち

づくり

シン

ポジ

ウム

経費

・実

施計

画策

定経

費)

事業

種別

:時

限事

①市

民と

行政

が市

の現

状・

課題

の共

有化

を図る

②多

様な

主体

が参

画し

市民

と行

政の

協働

によ

る計

画策

定を

行う

③情

報の

共有

化と

目標

達成

を互

いに

共有

でき

る仕

組み

をつ

くる

①市

民会

議委

員②

職員

③人

●活

動:課

内打

合せ

・会

議回

数(30回

)●

対象

:市民

会議

等の

開催

数(12回

)、市

民会

議委

員数

(240

人)、職

員数

(1384人

)●

成果

:市民

会議

に参

加し

た委

員の

のべ人

数(1

297人

)、市

民会

議以

外の

方法

で寄

せら

れた

意見

の数

(71件

●コ

スト

65,

222千

H18年

度-

第2

期基

本計

画策

定浦

安市

民会

議準

備会

(3回

)を

経て

8月

より

公募

市民

206

名・学

識委

員・職

員委

員か

らな

る第

2期

基本

計画

策定

市民

会議

を立

ち上

げ月

に1回

のペ

ース

で会

議を

開催

した

(8回

)。

市民

会議

を6つ

の分

科会

に分

け、会

議の

準備

や資

料の

用意

・まと

め等

を実

施。

H19年

度-

市民

会議

は5月

の中

間報

告以

降ま

とめ

の段

階に

入り

9月

末に

提言

書を

市長

へ提

出す

る提

言報

告会

を行

う。

この

提言

書を

受け

て庁

内各

部と

の第

2期

基本

計画

の内

容に

つい

て調

整す

る。

※ 時

限事

業(

H20年

度ま

で)

平成

20年

度か

ら29年

度ま

での

10ヵ

年を

計画

期間

とし

た第

2期

基本

計画

をH18年

度か

ら2ヵ

年で

策定

する

。こ

の第

2期基

本計

画は

、市

民主

体の

計画

づく

りを

目標

のひ

とつ

とし

て考

えて

おり

、さま

ざま

な場

面で

市民

参加

を図

って

いく

。200人

を超

える

委員

数か

らな

る市

民会

議を

設置

し、こ

の基

本計

画を

策定

する

法令

等に

よる

義務

※市

が行

うま

ちづ

くり

の計

画を

策定

する

こと

は、市

の基

本で

ある

。基

本構

想は

地方

自治

法第

2条

第4項

で義

務づ

けら

れて

いる

第2

期基

本計

画策

定浦

安市

民会

議は

9月

末の

提言

書の

提出

で役

目を

終え

るこ

とと

なる

が、今

後の

行政

内で

の第

2期

基本

計画

策定

過程

を見

守っ

てい

きた

い。ま

た、途

中で

策定

状況

の報

告な

どを

行っ

てほ

しい

、な

どの

意見

があ

る。

002

総合

計画

01-02-01-002

●計

(総

合計

画・実

施計

画進

行管

理)

004 

総合

計画

・実施

計画

進行

管理

事業

(施

策評

価検

討経

費・企

画関

係調

査経

費)

事業

種別

:-

①計

画的

に行

政サ

ービ

スの

総合

的な

展開

と向

上を

図る ②

総合

計画

に基

づき

事業

を実

践す

る③

市の

まち

づく

りの

方向

性を

理解

して

もら

①浦

安市

総合

計画

・実

施計

画事

業②

職員

③市

●活

動:課

内打

合せ

会議

回数

(10回

)、実

施計

画事

業の

ヒア

リン

グ,会

議等

の開

催数(62回

)●

対象

:実施

計画

に計

上し

た事

業の

数<具

体的

施策

数56件>140件

●成

果:計

画ど

おり

実施

され

た画

事業

数(成

果指

標目

標を

達成

した

実施

計画

事業

の数

)/実

施計

画事

業(100%)

、●

コス

ト830千

円※

H19年

度1,

355千

H18年

度-

第3次

実施

計画

の実

施状

況調

査を

行う

とと

もに

現基

本計

画の

取り

組み

状況

につ

いて

報告

書を

まと

めた

。また

、人

口推

計シ

ステ

ムの

更改

やデ

ータ整

理を

引き

続き

行っ

た。

H19年

度-

第3次

実施

計画

の進

捗状

況を

調査

分析

する

。現在

、策

定業

務を

進め

てい

る第

2期

基本

計画

の評

価手

法に

つい

て調

査研

究す

る。

 基

本構

想並

びに基

本計

画を

効率

的に

実施

して

いく

ため

、実

施計

画を

策定

し、そ

の実

施計

画を

確実に

進行

管理

する

こと

で計

画的

なま

ちづ

くり

を推

進し

てい

く。

①事

業計

画と

進捗

状況

を明

らか

にす

る②

事業

の成

果を

(市民

が)評

価す

法令

等に

よる

義務

※市

が行

うま

ちづ

くり

の計

画を

策定

する

こと

は、市

の基

本で

ある

。基

本構

想は

地方

自治

法第

2条

第4項

で義

務づ

けら

れて

いる

総合

計画

審議

会に

おい

て、

計画

を様

々な

機会

を通

じて

市民

に周

知し

、施

策の

実施

にお

いて

も情

報提

供し

、意

見を

聞く

こと

,適

切な

時期

に見

直し

を行

うこ

と,計

画の

具現

化に

向け

て積

極的

な市

民参

加の

推進

と民

活を

図る

こと

など

答申

され

た。

003

企画

・政

策調

査01-02-02-001

●調

(政

策調

査研

究提

案)

005 

政策

調査

研究

事業

( 企

画関

係調

査経

費)

事業

種別

:新

規事

①新

たな

事業

の立

案(ア

ンテ

ナ職

員制

度)

②新

たな

政策

の立

案(賢

人会

議)

①ア

ンテ

ナ職

員②

賢人

会議

委員

H19年

度【

新規

事業

】●

活動

:提案

件数

(ア

ンテ

ナ員

制度

30件

)、開

催数

(賢人

会議

3回

)●

対象

:アン

テナ

職員

数(1

0名

)●

成果

:事業

化数

(3件

)、

制作

立案

数(賢

人会

議1

件)

●コ

スト

13,

274千

H19年

度-

政策

調査

研究

事業

とし

て「ア

ンテ

ナ職

員制

度」と

「賢

人会

議」

を創

設し

た。

※ア

ンテ

ナ職

員制

度の

スタ

ート

の年

であ

った

が実

際の

アン

テナ

職員

も10

名と

なり

、様々

な情

報や

アイ

ディ

アが

提案

され

てい

る状

況で

ある

。今後

はこ

うし

た情

報や

アイ

ディ

アを

デー

タベ

ース化

し、各

部課

に発

信す

ると

とも

に必

要な

もの

は早

く事

業化

して

いく

仕組

みを

確立

する

必要が

ある

 先

進的

ある

いはユ

ニー

クな

取り

組み

をし

てい

る国

内外

の自

治体

、民

間企

業、各

種団

体な

どか

ら本

市に

有益

な情

報を

収集

・研

究活

用し

、新

たな

事業

化を

図る

「ア

ンテ

ナ職

員制

度」

と市

長の

総合

的な

政策

ブレ

ーン

とし

て専

門的

・学

術的

な視

点や

民間

の経

営感

覚を

行政

運営

に生

かす

「賢

人会

議」

によ

り日

々変

化す

る市

民ニ

ーズや

社会

経済

情勢

に対

応し

た事

業及び

政策

を実

現を

目指

す。

市の

守備

範囲

※ア

ンテ

ナ職

員が

提案

した

事業

を直

に市

長が

事業

化の

指示

を行

う※

市長

の政

策的

ブレ

ーン

とし

て市

のト

ップ

に対

して

アド

バイ

スを

行う

なし

004

人権

・男

女共

同参

画01-02-03-001

●対

(D

V対

策)

006 

DV

対策

事業

(D

V対

策推

進事

業)

事業

種別

:実

施計

画事

DV

が暴

力で

ある

とい

う認

識を

深め

ると

とも

に、男

女が

互い

の人

権を

尊重

する

社会づ

くり

市民

●活

動:研

修会

(講

演会

)実

施回

数(8回

)、D

V防

止用

カー

ド配

布部

数( 6,0

00

枚)

●活

動:2

0歳

以上

女性

市民

人口

(60,494人

)●

成果

:DV

研修

会(講

演会

)に

参加

した

市民

数(22

人)

●コ

スト

1,817千

H18年

度-

DV

研修

会、D

V被

害者

等グ

ルー

プ相

談等

の実

施、D

V相

談支

援カ

ード

の増

刷、D

V被

害者

支援

を行

なう

民間

団体

が運

営す

る(ス

テッ

プハ

ウス

)へ

の助

成、配

偶者

暴力

被害

者緊

急避

難支

援。

H19年

度-

変更

点な

 夫

また

はパ

ート

ナー

から

の暴

力を

潜在

化さ

せな

い。ま

た、容

認し

ない

社会

環境

をつ

くる

ため

、D

Vに

つい

ての

認識

を深め

るた

めの

啓発

活動

を行

なう

。ま

た、D

V被

害者

に対

して

相談

を通

じて

安全

等を

確認

しな

がら

問題

解決

に向

けて

の情

報提

供を

行う

とと

もに

緊急

避難

支援

の充

実を

図る

法令

によ

る裁

量事

業 ※D

V防

止法の

中で

地方

公共

団体

の役

割と

して

配偶

者か

ら暴

力の

防止

およ

び被

害者

を保

護す

る責

務を

有す

る。

市民

意識

調査

の結

果。

部 名

課 名

01 

市長

公室

02

 企

画政

策課

『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業

『地図化適合性はない』と想定される事務事業

『地図化適合性がある』と想定される事務事業

Page 14: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 12 -

計画

策定

事業

市民

以外

施設

系ネ

ット

ワー

ク・エ

リア

NO

係班

事業

コー

ド番

号事

業内

容事

務事

業評

価・対

象事

業名

対象

業務

対象

者・施

設等

特定

階層

(年

代、性

別、

特性

等で

特定

され

る市

民)

※住

所で

特定

①全

市民

②地

域地

区の

住民

③特

定目

的の

組織

団体

①市

職員

②審

議会

、協議

会等

①委

託事

業者

②指

定管

理者

外来

者市

内企

業・

勤務

公共

施設

土 地

(市

有施

設 

 ・財

産)

設備

・資

機材

公共

交通

供給

処理

集配

、情報

通信

設備

及び

施設

001

総合

計画

01-02

-01-00

1

●計

(総

合計

画策

定)

003 

第2

期基

本計

画策

定事

業 (基

本計

画審

議会

委員

15名

分報

酬・

基本

計画

審議

会経

費・基

本計

画策

定市

民会

議委

員20名

分報

酬・基

本計

画策

定経

費・ま

ちづ

くり

シン

ポジ

ウム

経費

・実

施計

画策

定経

費) 

事業

種別

:時

限事

①市

民と

行政

が市

の現

状・

課題

の共

有化

を図

る②

多様

な主

体が

参画

し市

民と

行政

の協

働に

よる

計画

策定

を行

う③

情報

の共

有化

と目

標達

成を

互い

に共

有で

きる

仕組

みを

つく

①市

民会

議委

員②

職員

③人

11

11

11

11

11

11

002

総合

計画

01-02

-01-00

2

●計

(総

合計

画・実

施計

画進

行管

理)

004 

総合

計画

・実

施計

画進

行管

理事

(施

策評

価検

討経

費・企

画関

係調

査経

費)事

業種

別:-

①計

画的

に行

政サ

ービ

スの

総合

的な

展開

と向

上を

図る

②総

合計

画に

基づ

き事

業を

実践

する

③市

のま

ちづ

くり

の方

向性

を理

解し

ても

らう

①浦

安市

総合

計画・実

施計

画事

業②

職員

③市

11

11

11

11

11

003

企画

・政

策調

01-02

-02-00

1

●調

(政

策調

査研

究提

案)

005 

政策

調査

研究

事業

( 企

画関

係調

査経

費)

事業

種別

:新規

事業

①新

たな

事業の

立案

(ア

ンテ

ナ職

員制

度)

②新

たな

政策の

立案

(賢

人会

議)

①ア

ンテ

ナ職

員②

賢人

会議

委員

1

004

人権

・男

女共

同参

01-02

-03-00

1

●対

(D

V対

策)

006 

DV

対策

事業

(D

V対

策推

進事

業)

事業

種別

:実施

計画

事業

DV

が暴

力で

ある

とい

う認

識を

深め

ると

とも

に、男

女が

互い

の人

権を

尊重

する

社会

づく

市民

11

補助

金給

付金

予算

編成

・執

行、

決算

事務

、基金

管理

、市債

発行

管理

、会計

事務

、税務

、入札

、契

約、徴

収融

部 名

課 名

対人

系サ

ービ

総合

計画

部門

計画

イン

フラ

系サ

ービ

ス事

業の

進捗

記録

・集

計・報

告市

民意

識調

査予

算・財

務会

計・税

務等

01 

市長

公室

02

 企

画政

策課

行政

関係

者業

務記

録・

進捗

記録

の管

理が

必要

な事

業(月

次で

記録

・集

計が

必要

市 民

全市

・部

門別

の意

識調

各課

業務

アン

ケー

市民

の意

見・要

望・苦

情、相

談業

務の

受付

処理

が重

要な

事業

『地図化適合性はない』と想定される事務事業

『地図化適合性がある』と想定される事務事業

『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業

当該する項目

表-『各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析』サンプル表(2) 事務事業の対象

注:表の左側の「事業コード番号」、「事業内容、事務事業評価・対象事業名」、「対象業務」、「対象者・施設等」の項目は

各課事務事業評価表の要点・地図化適性の分析サンプル表(1)と同じ。

Page 15: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 13 -

3-3 地図化適合性の評価結果の集計分析

全 709 件の事務事業評価について、『事務事業数』、『トータルコスト』の2つの視点で地図化適合性分

析を行い、集計、構成比を算出した。結果は以下の通りであり、本市の事務事業の多くについて地図化適

合性があることがわかる。

1)事務事業数による地図化適合性集計分析

事務事業数からみた地図化適合性率の構成比は、以下の通りで、地図化適合性のある事務事業(B+C)は、

456事業であり、全事務事業数の64%を占める。

A.

分析対象とした事務

事業数(合計)

B.

『地図化適合性が大きい』

と想定される事務事業

C.

『地図化適合性がある』

と想定される事務事業

D.

『地図化適合性はない』と

想定される事務事業

709 342 114 253

100% 48% 16% 36%

Page 16: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 14 -

2)トータルコスト(決算額)による地図化適合性集計分析

全709件の事務事業評価について、各事務事業のトータルコスト(決算額)で集計し、地図化適合性区

分について金額の構成比を算出した。結果は以下の通りで、地図化適合性のある事務事業(B+C)は、全事

務事業トータルコスト(決算額)の90%を占める。

注:事務事業評価表に記載されている「トータルコスト」とは、当該事務事業に関する物件費や扶助費、また補助金や人件費などの予

算額または決算額の合計。

3)地図化適合性の高い部・課

部・課別の事務事業評価をもとにした地図化適合性を、地図化適合事務事業数、地図化適合事務事業ト

ータルコストの2つの側面からみると、以下のような特徴がみられる。

①地図化適合性のある事務事業数の多い分野

部単位で、地図化適合性が大きいと想定される事務事業数の多い順にみると、1位が健康福祉部(6

課)、2位が都市整備部(7課)、3位が都市環境部(9課)、4位がこども部(3課)、5位が総務

部(6課)の順である。

都市整備部では、まちづくりに関する計画検討や法指定、開発指導、道路整備、市街地整備などのま

ちづくり全般に関する多様な事務事業が、地図化適合性の高い事務事業として判定された。また、都市

A.

事務事業費合計(H18 年

度)単位:千円

B.

『地図化適合性が大き

い』と想定される事務事

C.

『地図化適合性があ

る』と想定される事務

事業

D.

『地図化適合性はな

い』と想定される事務

事業

41,768,325 25,584,580 11,969,021 4,214,724

100% 61.3% 28.7% 10.1%

Page 17: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 15 -

環境部では、環境保全の推進や環境学習、斎場の運営、ごみなどの処理や資源再利用、清掃事業などの

事務事業が、地図化適合性の高い事務事業として判定された。このように、市民生活を支える都市施設

やその運営にかかわる事務事業は全般的に地図化適合性が高いことがわかる。

健康福祉部では検診・健診、各種福祉サービスなど特定の市民を対象とする事務事業が地図化適合性

の高い事務事業として判定された。また、こども部では保育園や幼稚園や子育ての支援など特定の市民

を対象とする事務事業が地図化適合性の高い事務事業として判定された。特定の市民を対象とする事務

事業は全般的に地図化適合性が高いことがわかる。

総務部では統計調査や防災対策、防犯対策、情報処理などで、地図化適合性の高い事務事業として判

定された。

表 地図化適合性分析 事務事業数

《部別集計、地図化適合性が大きいと想定される事務事業数が多い順》

A.分析対象とした事務事業評価数

B. 『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業

C. 『地図化適合性 が ある』と想定される事務事業

D. 『地図化適合性 は ない』と想定される事務事業

地図化適合性構成比 (B+C)/A×100)

1 健康福祉部(6課) 198 94 40 64 68%

2 都市整備部(7課) 67 60 4 3 96%

3 都市環境部(9課) 70 47 10 13 81%

4 こども部(3課) 55 23 11 21 62%

5 総務部(6課) 42 22 5 15 64%

6 生涯学習部(12課) 80 22 12 46 43%

7 教育総務部(6課) 58 19 9 30 48%

8 市民経済部(7課) 52 18 11 23 56%

9 消防本部(5課) 34 18 4 12 65%

10 財務部(7課) 23 12 5 6 74%

11 市長公室(3課) 20 6 3 11 45%

12 選挙管理委員会事務局 4 1 0 3 25%

13 会計管理者(1課) 1 0 0 1 0%

14 議会事務局(2課) 4 0 0 4 0%

15 監査委員事務局 1 0 0 1 0%

合計 709 342 114 253 64%

Page 18: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 16 -

課別に、地図化適合性のある事務事業数みると、1位が健康増進課(33事業)、2位が道路管理課(32

事業)、3位が高齢者支援課(30 事業)、4位が障害者福祉課(21 事業)、5位が保育幼稚園課(14

事業)の順である。

道路管理課、保育幼稚園課は、全事業に地理的情報要素があり、地図化適合性率が高い。

健康福祉部の健康増進課、高齢者支援課、障がい福祉課が上位をしめるのは検診・健診、各種福祉サ

ービス等、個人レベルの特定階層を事業対象とする事務事業が多く、また、助成や給付など相対的に事

業数自体が多いためである。

これらの課では、今後積極的に情報の地図化を進めることで、事務事業の改善に役立てることが期待

される。

表 地図化適合性分析 事務事業数順表示

《課別集計:地図化適合性が大きいと想定される事務事業数の多い順》

A. 分析対象 とした 事務事業 評価数

B. 『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業

C. 『地図化適合性がある』と想定される事務事業

D. 『地図化適合性はない』と想定される事務事業

地図化適合性構成比 (B+C)/A×100)

1 0506 健康増進課 57 33 6 18 68%

2 0806 道路管理課 32 32 0 0 100%

3 0504 高齢者支援課 60 30 10 20 67%

4 0502 障がい福祉課 51 21 16 14 73%

5 0602 保育幼稚園課 18 14 4 0 100%

6 0706 環境レンジャー課 14 12 1 1 93%

7 0701 環境保全課 13 10 2 1 92%

8 0703 ごみゼロ課 16 9 3 4 75%

0204 防犯課 8 8 0 0 100%

0708 みどり公園課 10 8 0 2 80% 9

1405 保健体育安全課 19 8 3 8 58%

0807 交通安全課 10 7 1 2 80% 10

1301 消防本部総務課 13 7 2 4 69%

注:『地図化適合性が大きい』と想定される事業数の上位10課を表示。

課別に、地図化適合性構成比(地図化適合性のある事業数の割合)を見ると、都市整備部所属課なら

びに都市環境部所属課の値が高くなっている。また、内部管理系部門も施設の運営管理をテーマとする

事務事業を持つ課が、上位に上がっている。

また、総務課など内部管理系部門も施設の運営管理を対象とする事務事業を持つ課が、上位に上がっ

Page 19: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 17 -

ており、防災課や防犯課などは、地図上で、場所、ルート、地域(エリア)等の地理的情報要素が特に

重要な意味を持つ課であり、地図化適合性率は100%である。

表 地図化適合性分析 地図化適合性構成比順表示

《課別集計:地図化適合性構成率が高い順》

A. 分析対象 とした 事務事業 評価数

B. 『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業

C. 『地図化適合性がある』と想定される事務事業

D. 『地図化適合性はない』と想定される事務事業

地図化適合性構成比 (B+C)/A ×100)

1 0806 道路管理課 32 32 0 0 100%

2 0602 保育幼稚園課 18 14 4 0 100%

3 0204 防犯課 8 8 0 0 100%

4 0801 都市政策課 8 6 2 0 100%

5 0804 市街地開発課 6 6 0 0 100%

6 0203 防災課 5 5 0 0 100%

7 0304 営繕課 4 4 0 0 100%

8 0707 下水道課 4 4 0 0 100%

9 0704 クリーンセンター 4 3 1 0 100%

10 0802 都市計画課 4 3 1 0 100%

11 0805 まちづくり事務所 2 2 0 0 100%

12 0206 庁舎建設課 1 1 0 0 100%

13 0302 契約管財課 2 1 1 0 100%

14 0306 固定資産税課 1 1 0 0 100%

15 0702 斎場課 1 1 0 0 100%

16 1304 指令課 1 1 0 0 100%

17 1406 給食センター 2 0 2 0 100%

18 0706 環境レンジャー課 14 12 1 1 93%

19 0701 環境保全課 13 10 2 1 92%

20 0407 商工観光課 8 3 4 1 88%

21 0708 みどり公園課 10 8 0 2 80%

22 0807 交通安全課 10 7 1 2 80%

23 0803 建築指導課 5 4 0 1 80%

24 0305 市民税課 5 2 2 1 80%

注:地図化適合性構成比80%以上の課を表示。

Page 20: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 18 -

②地図化適合性のある事務事業トータルコスト(決算額)の大きい分野

地図化適合性のある事務事業トータルコスト(決算額)を部単位でみると、『地図化適合性が大きい』

の区分では、1位が健康福祉部、2位が都市環境部、3位がこども部、4位が都市整備部、5位が教育

総務部の順となった。1位の健康福祉部は、検診・健診サービスや各種の福祉サービスとしての助成が

多い。2位の都市環境部、4位の都市整備部は、コストの大きい施設の建設・維持管理などの経費によ

り、トータルコストが大きくなっている。3位のこども部、5位の教育総務部が上位に上がっているの

は、保育幼稚園施設や学校施設の整備、各種の助成、就学に関する助成や給付などによるものと思われ

る。

『地図化適合性がある』の区分では、市民経済部が1位である。国保給付費が大きなウエイトを占め

ているためで、徴収業務との関連で情報の地図化による支援が想定できる。税務、徴収、監査等の事務

事業では、対象となる個人の住所や法人の所在地が地理的情報要素として特定できるため、徴税業務な

どに地図化情報が活用できる可能性がある。

表 地図化適合性分析 部別『地図化適合性が大きい』と想定されるトータルコスト順表示

《部別集計:地図化適合性が大きいと想定される事務事業のトータルコスト順》 事務事業 トータルコスト (単位:千円)

分析対象とした事務事業数

『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業費

『地図化適合性がある』と想定される事務事業費

『地図化適合性はない』と想定される事務事業費

事務事業費合計

(H18年度)

1 05 健康福祉部(6課) 198 6,616,231 963,944 1,116,663 8,696,838

2 07 都市環境部(9課) 70 5,330,688 214,045 260,414 5,805,147

3 06 こども部(3課) 55 4,477,806 688,434 349,357 5,515,597

4 08 都市整備部(7課) 67 2,610,377 35,250 22,129 2,667,756

5 14 教育総務部(6課) 58 2,179,438 1,320,831 378,298 3,878,567

6 15 生涯学習部(12課) 80 1,586,613 538,049 686,252 2,810,914

7 04 市民経済部(7課) 52 917,461 7,344,894 649,842 8,912,197

8 03 財務部(7課) 23 829,208 417,256 39,257 1,285,721

9 13 消防本部(5課) 34 419,266 158,168 85,358 662,792

10 02 総務部(6課) 42 384,032 221,639 310,535 916,206

11 01 市長公室(3課) 20 170,724 66,511 176,357 413,592

12 11 選挙管理委員会事務局 4 62,736 0 35,604 98,340

13 09 会計管理者(1課) 1 0 0 62,466 62,466

14 10 議会事務局(2課) 4 0 0 0 0

15 12 監査委員事務局 1 0 0 42,192 42,192

合 計 709 25,584,580 11,969,021 4,214,724 41,768,325

注:「トータルコスト」とは、当該事務事業推進に関する物件費や扶助費、または補助金や人件費などの予算額または決算額の合計。

Page 21: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 19 -

地図化適合性のある事務事業トータルコスト(決算額)を課単位でみると、1位が保育幼稚園課、2

位が介護保険課、3位が下水道課、4位が道路管理課、5位がクリーンセンター、6位が健康増進課、

7位が市民スポーツ課、8位がみどり公園課、9位が障害福祉課、10位が教育施設課の順であった。

表 地図化適合性分析 課別『地図化適合性が大きい』と想定されるトータルコスト順表示

《課別集計:地図化適合性が大きいと想定される事務事業のトータルコスト順》 事務事業 トータルコスト (単位:千円)

事務事業数

『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業費

『地図化適合性がある』と想定される事務事業費

『地図化適合性はない』と想定される事務事業費

事務事業費合計

(H18年度)

1 0602 保育幼稚園課 18 3,841,678 67,242 - 3,908,920

2 0505 介護保険課 10 3,580,628 125,556 3,920 3,710,104

3 0707 下水道課 4 2,065,801 - - 2,065,801

4 0806 道路管理課 32 1,746,908 - - 1,746,908

5 0704 クリーンセンター 4 1,294,690 138,628 - 1,433,318

6 0506 健康増進課 57 1,084,685 17,130 657,206 1,759,021

7 1512 市民スポーツ課 10 974,601 72,282 31,303 1,078,186

8 0504 高齢者支援課 60 931,938 159,862 231,795 1,323,595

9 0502 障がい福祉課 51 906,125 529,268 111,670 1,547,063

10 1402 教育施設課 4 857,271 - 598 857,869

11 0708 みどり公園課 10 794,408 - 93,058 887,466

12 0703 ごみゼロ課 16 786,783 46,386 22,915 856,084

13 1403 学務課 10 559,740 5,555 2,236 567,531

注:『地図化適合性が大きい』と想定される事業費500百万円以上の課を表示。

注:「トータルコスト」とは、当該事務事業推進に関する物件費や扶助費、または補助金や人件費などの予算額または決算額の合

計。

保育幼稚園課は、保育園や幼稚園の管理運営経費、介護保険課は、介護医療費の決算額が大きな割合

を占めている。これらの課に加え、健康増進課や高齢者支援課、障がい福祉課を合わせると、検診業務

や疾病予防等の医療、福祉に関する助成事業や支援事業など、福祉に関する経費が大きな割合を占めて

おり、その適切な運用を考える上で、地図化にどう取り組むかの検討が重要と思われる。

また、施設系(インフラ系)サービスでは、下水道課、道路管理課、クリーンセンター、学校施設課

が上位に入っている。施設の建設維持管理の面でも地図化への取り組みを検討すべきであることがわか

る。

なお、表中にはないが32位の国保年金課では、『地図化適合性があると想定される』に区分された事

務事業のトータルコストが7,201,516千円となっており、課単位では本市 大の事業決算額である。内

訳は、国民健康保険の保険給付事業の金額であり、事業対象者は地理的情報要素として特定できるため、

Page 22: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 20 -

国民健康保険税賦課徴収事業の実績と合わせて、コスト管理の観点から地図化の効果が発揮される可能

性がある。また、市税徴収関係も事業対象者が関係も事業対象者が地理的情報要素として特定できるた

め、同様の効果が期待できる。

4)事務事業の対象別件数と地図化適合性

事務事業の対象ごとに該当する事務事業の件数と全 709 事務事業に対する割合を集計した。(なお、1

つの事務事業に関して複数の対象があることが多いため、件数の合計は709とは一致しない。)

その結果をみると、約半数の361件(51%)は業務記録(月次集計等)の作成を含む業務であり、この

業務記録が地図化の基礎データとして活用できれば、各課データの地図化がかなり進むと思われる。

表 全体・事務事業の対象の類型別集計

事務事業の対象 件数 割合

年代、性別、その他の特性等で特定される市

民(通学児童など)

272 38%市民

全市民(相談に訪れる不特定の市民)、地域

地区の住民、特定目的の組織団体

334 47%

市職員(職員研修・労働衛生管理等)、委員

会(審議会、運営委員会等)

203 29%行政関係者

委託事業者、指定管理者 177 25%

1.対人系サービ

ス(人)

市民以外 来訪者、市内勤務者、市内事業所 102 14%

施設系 公共施設、土地(各部門が管轄する市有施設、

土地、設備・資機材等)

243 34%2.インフラ系サ

ービス(物)

ネ ッ ト ワ ー

ク・エリア系

公共交通、供給処理、集配、情報通信設備等

(道路管理、鉄道、バス、下水道、ゴミ収集、通

信ネットワーク等)

109 15%

業務記録・進捗記録の管理が必要な事業(月

次で記録・集計が必要な事業)

361 51%3.事業の進捗

記録・集計・報告

市民の意見・要望、相談業務の受付処理が重

要な事業

121 17%

4.計画策定事業 総合計画(基本構想、基本計画、実施計画)、

部門計画(行政分野別計画、特定テーマ別計

画等)

32 5%

全市・部門別の意識調査 22 3%5.市民意識調査

各課業務アンケート 20 3%

予算編成・執行、決算事務、基金管理、市債

発行管理、会計事務、税務、入札、契約、徴

収等

44 6%6.予算・財務・会計・税務等

補助金、給付金の交付 148 21%

Page 23: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

- 21 -

4. アンケート調査及びヒアリングなどの詳細調査

事務事業評価表の分析では、全事務事業の地図化適合性を概括的に捉えることができるが、さらに正確な

適合性の判断には、事務事業担当者に対する地図化対象データの有無などに関するアンケート調査と、地図

化に対する要望などに関するヒアリングの実施が必要である。

このため、4課をサンプリングして、地図化可能なデータの確認、地図化の要望などに関してアンケート

調査及びヒアリングを実施し、併せて各課保有データを収集した。

4-1.アンケート調査票の設計

平成19年度事務事業評価表に掲げられた各事務事業に加え、事務事業評価表にないが新規の取り組みを

検討しているものについて、以下の事項を調査する。

表 アンケート調査の調査項目

項目 内容

地図化に対する要望の有無 地図化要望の有無

対象のデータの有無 所在地付き電子データの有無

対象の諸元・事業履歴等の有無 地図データの有無(アナログデータ、電子データ)

継続的に更新しているか

事業評価の結果(実績) 事務事業評価についての所在地付き電子データの有無

継続的に更新しているか

市民意見要望データの有無 市民の意見や要望に関する所在地付き電子データの有無

継続的に更新しているか

浦安市第2期基本計画・第1次実施計画

との関連及び特記事項

調査票のサンプルを23、24頁に掲げる。

なお、将来の全課調査に備えて 76 課分のアンケート調査原票を作成した。(別添資料の『各課アンケー

ト調査(アンケート調査記入要領及び解答用紙)』参照。)

Page 24: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

22

Page 25: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

23

Page 26: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

24

4-2.アンケート調査及びヒアリングなど詳細調査の対象とする課の選定

これまで、「地理情報システムが利用されてこなかった課」で、「地図化適合性の分析において、比較的

適合性が高いと判断される事務事業が多い課」のなかから、地図化対象のデータの有無を把握し、サンプ

ルデータの提供を受けるとともに、地図化に対する要望を把握するため、みどり公園課、保育幼稚園課、

健康増進課、防犯課の4課を「詳細調査対象課」として選定した。

4-3.アンケート調査及びヒアリングなど詳細調査の実施

事前にアンケート票を配布し記入を依頼し、記載済みアンケート票を元にヒアリングを実施し、その際

に確認された各課保有データの提供を依頼した。

実施日時 ヒアリング調査対象課 場 所

12/17(水) PM 15:00~17:00 みどり公園課 第二庁舎

12/18(木) AM 10:00~12:00 保育幼稚園課 第二庁舎

AM 09:00~12:00 健康増進課 健康センター 12/19(金)

PM 13:30~15:30 防犯課 本庁舎

4-4.アンケート調査及びヒアリングなど詳細調査の結果

1)地図化適合性と地図化要望アンケート調査の集計結果

表 地図化合適性の評価・地図化要望

『地図化要望あり』

課 係・班

A.事務事業数計

B.『地図化適合性が大きい』と想定される事務事業数

C.『地図化適合性がある』と想定される事務事業数

D.『地図化適合性はない』と想定される事務事業数

事務事業数

割合

管 理 2 2 0 0 1 50.0%

緑化推進 8 6 0 2 5 71.4%

みど

り公

園課 小 計 10 8 0 2 6 66.7%

保 育 3 2 1 0 2 66.8%

子育て支援センター 3 3 0 0 1 33.3%

幼稚園 7 4 3 0 1 16.6%

施設管理 5 5 0 0 3 60.0%

保育

幼稚

園課

小 計 18 14 4 0 7 38.9%

予 防 7 7 0 0 6 85.7%

成人保健 29 14 4 11 0 0.0%

保健指導 21 12 2 7 10 47.6%

健康

増進

小 計 57 33 6 18 16 28.1%

防犯課 8 8 0 0 4 50.0%

合 計 93 63 10 20 33 35.5%

Page 27: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

25

2)ヒアリング調査結果

①みどり公園課(2係:緑化推進、管理)

a.みどり公園課の業務分掌

公園・墓地・街路樹などの整備や維持管理、緑化の推進に関すこと

b.地図化適合性評価結果

事務事業評価表に基づく事務事業数は 10 事業で、公園施設の管理業務が主であることから、事務

事業のほとんどが地理的情報要素を持つ。8 事業(80%)について『地図化適合性が大きい』と判定

(想定)された。

c.地図化要望

『地図化要望あり』は6事業(全課合計の66.7%)である。

対象物の発生場所などの詳細の情報が得られない事業については地図化困難。墓地公園関係の事務

事業は、墓地公園が1か所のみであるため、地図化の必要がないという理由で、地図化の要望が無か

った。

・今後の公園施設の「バリアフリー化」について、誘致圏の高齢者分布の地図化情報が有効である。

・公園緑地に対する住民からの意見要望の発生場所を地図上に落とし、内容が記録され、閲覧でき

れば迅速な処理が可能で、それが集計出来れば報告書として使える。

・児童の通園通学路と街路樹等植栽との関係で、枝が視界を遮り、交通安全上問題であるとの指摘

がある。通園通学路と街路樹の関係が地図化出来れば、視覚遮断カ所の剪定や植え替えなど、適

切な対応が出来る。

・墓園運営管理では、通常の公園施設の維持管理業務の他に、今後の需要想定や管理費滞納徴収な

ど、経営上の視点から、高齢者年齢階層別の分布や管理費滞納者の地図化がこれらの問題解決に役

に立つ可能性がある。

d.保有データの現状

公園の維持管理、施設改修、緑化推進関係では、実績データや計画データは、いくつかのファイル

に台帳化(情報の一覧、リスト)されたエクセルデータに記録されているが、地図化データとして使用

するためには、統一的な整理が必要である。公園台帳システムも一部の使用にとどまっている。

e.地図化対象データに関する課題

管理情報を地図データとして使用するためには、情報記録・保管・更新・活用について、記録フォー

ムの統一と地図データ化するまでの一連の処理手順の作成、街路樹等の植栽工事データの整備、住民

の意見・要望などの地図化できるデータの記録方法などの確立が課題である。

ただし、現場の仕事が多いので、複雑でなく手間を要しない方法が必要である。

Page 28: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

26

②保育幼稚園課 (4係:保育、子育て支援センター、幼稚園、施設管理)

a.保育幼稚園課の業務分掌

保育所および幼稚園の入・転園、私立保育園(12 園)・幼稚園(14 園)への通園・就園補助に関する

ことなど

b.地図化適合性評価結果

事務事業数は18事業で、保育園、幼稚園、子育て支援センター、つどいの広場等の施設運営、支援、

相談、補助金給付などとなっている。保育幼稚園施設は幼児・児童の通園施設であり、地域地区の福

祉・教育に関わるため、事務事業のほとんどが地理的情報要素を持つ。18事業(100.0%)が『地図化

適合性が大きい』または『地図化適合性がある』と判定した。

c.地図化要望

『地図化要望あり』は7事業(課合計の38.9%)である。

・保育園施設の運営事業各種については、本市の緊急課題として『待機児童の解消』があり、地

図化の必要があると判断された。幼稚園関連事業は支援事業が中心のため地図化要望は、幼稚

園預かり保育事業等一部の事業にとどまる。

・つどいの広場については、地図化要望はあるが、現状では、利用者受付において、電子データ

による住所付きのデータの記録がないため、地図化不能である。

d.保有データの現状

保育園の場合は、入所者のデータと管理用のデータを管理しており、2つのシステムがある。

保育者の入所者と管理用データは、電子データ(エクセル、CSVデータ)で管理しており、月一回

程度更新している。

電子データの住所は、「1丁目1番1号」を「1-1-1」と記載するなど、住民記録データと異なって

いる場合があるので、地図化の際は、住民記録データの住所に合わせて修正する作業がでてくる。

e.地図化対象データに関する課題

今後エクセルなどで(地図化に使用できる)データをつくる場合は、統一基準を定め、フォーマッ

トを揃える必要がある。

施設系では、紙データや不揃いなデータの場合が多い。利用者の住所付きデータ(町丁目までで可)

を入手できるように、受付簿のフォームを統一化することが必要。

Page 29: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

27

③健康増進課(3係:予防、保健指導、成人保健)

a.健康増進課の業務分掌

予防接種、母子の保健指導、市民の健康づくり、救急診療所、休日救急等歯科診療所など。

b.地図化適合性評価結果

事務事業評価表に基づく事務事業数は 57 事業で、がん検診、各種健診、相談事業、イベント、地

区活動(母子保健)など、事業は多様である。39事業(68.4%)が『地図化適合性が大きい』または『地

図化適合性がある』と判定された。

c.地図化要望

『地図化要望あり』は16事業(28.1.6%)であった。

予防係と保健指導係担当の事務事業については、地図化要望が多かったが、成人保健係担当の事務

事業については、地図化要望が全く無かった。

(予防係 :担当事務事業は7事業)

救急診療、感染症予防に関する事業が主であり、地図化要望有りは 6 事業(全課合計の 10.5%)

であった。救急診療所の利用者の地理的分布の把握、感染症発生の対策において、地図化の効果へ

の大きな期待があった。また危惧される新型インフルエンザの発生対策においては、健康増進課が

情報総括する役割にあり、発生地区の広がりや時系列情報の地図化、関連情報の可視可による高度

な意志決定の支援など、危機管理の場での地図情報の活用可能性に期待が持たれた。

(成人保健係 :担当事務事業は29事業)

各種がん検診事業、各種健診事業、相談事業、衛生施設の支援等の事業を所管する。『地図化適合

性が大きい』または『地図化適合性がある』の判定(想定)は18事業(62.1%)である。

地図化要望は全く無かった。『検診および健診者数の上限が年度の予算で決ってしまうため、受診

率(検診および健診の必要な人数に対する受診者数の割合)を問題にしていない』、『保健師が多忙

なため、受診率の低い地区でのPR や説明会の開催など、受診率向上の活動に当てる時間の余裕が

ない』、『地図化情報の活用方法についての知識や情報が不十分で利用場面が思いつかない』などが、

その主な理由であった。

(保健指導係:担当事務事業は21事業)

母子保健に関する各種健診事業、相談事業、地区活動を所管する。保健指導の対象者は、市内在

住の母子である。『地図化適合性が大きい』または『地図化適合性がある』の判定は14事業であっ

た。そのうち地図化要望は 10 事業であり、幼児の体力と遊び場としての公園施設の関係、訪問相

談事業における訪問計画など、地域や地区の特性や課題を把握する上で、関連情報の地図化につい

て大きな関心が寄せられた。

『情報の重ね合わせで、虐待のデータと1.6~3歳児の健診データや母子関連の他の事業データと

の重ね合わせが出来れば、何か別の要素要因が何か見えてくる』、『地域の特性が出てくるかもしれ

ない』との意見もあった。

Page 30: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

28

d.保有データの現状

全体として検診・健診事業は、事務処理用の情報システムが導入されている。地図化データ(電子

データ)の入手は可能である。

救急診療や健診事業で保険の適用があるもの、市民の利用者負担の支払いがある事業では、そのレ

セプトデータから住所記録の電子データがとれる。

e.地図化対象データに関する課題

訪問相談事業や地区活動では、現在の記録データは紙媒体であり、地図化できない状況にある。地

図化を想定して、記録媒体を電子データ(エクセル)としてフォーマットを統一し、更新データを情報

の地図化に反映できる方法を整備する必要がある。

社会福祉協議会など組織が違う場合では、それぞれ地域の区分の方法などが違うので、必要な情報

の共有化ができないことになる。情報共有化の観点から地域区分の統一化が課題である。

④防犯課

a.防犯課の業務分掌

防犯意識の普及宣伝、自主防犯組織の活動の支援に関することなど。

b.地図化適合性評価結果

事務事業評価表に基づく事務事業数は8事業で、防犯活動啓発、防犯パトロール、防犯設備装置の

設置、犯罪情報の配信、防犯組織の支援等の事業である。『地図化適合性が大きい』または『地図化適

合性がある』の判定は8事業(100.0%)であった。

c.地図化要望

所管する事務事業は、すべて地図化適合性ありだが、特に効果が期待できる事務事業を選定した。

『地図化要望有あり』は、4事業(50.0%)である。

・防犯課にとっては『犯罪の抑止、犯罪発生率の低下』が 終目標であるが、防犯課が所管する事

務事業は、防犯対策の一部分を担っているにすぎず、他課の事務事業との複合的、相乗的な連携

によって達成されるものである。

・犯罪発生情報と防犯対策実施情報、建物情報(市街地形態、建物の種類、用途、新旧、密度)、交

通情報(道路の位置、形態、交通量)、人口情報(居住人口、密度、階層、昼夜間、滞留)など

の情報を重ね合わせて地図上に可視可することができれば、犯罪が発生する背景条件としての要

素や要因、因果関係の分析など、防犯対策のシミュレーション検討が可能となる。また、潜在的

な危険区域や教育指導、防犯資機材の効果的な配置が期待できる。ただし現状では、部門計画と

しての防犯計画の策定作業は、事務事業には指定されておらず、個別の事務事業を総合的に評価

する作業も、事務事業としてはない。

・学校関係では、『学校等防犯対策事業』があり、PTA の通学路のパトロールなど地域との連携な

ど、防犯課の事業と重複する部分がある。これらの活動の連携や情報の共有化が課題としてある。

・防犯活動の啓発(PR、教育、訓練指導、相談等)は、防犯講習会の開催、事業者パトロール隊や

Page 31: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

29

かけこみ110番、防犯指導員による教育指導、活動支援などに関する事務事業であり、住民、事

業者、防犯活動組織といった、市民の防犯意識の向上と組織的な地域の防犯力の強化がテーマで、

地図化効果が期待できる。

・警備会社による防犯パトロール事業があるが、巡回ルートの記録を取るのが困難な事情があって

除外したが、将来的に GPS による走行経路を記録する機材等が導入できれば高い地図化効果が

発揮できる。

・防犯設備の配置は、犯罪抑止、記録、通報のための資機材として、スーパー防犯灯の設置、防犯

カメラの設置などである。既存の設置場所、設置を要する場所などが地図上で特定できれば、犯

罪発生率との関係が検証できる。

d.保有データの現状

防犯設備の配置(スーパー防犯灯、防犯カメラ)については、配置場所のリストがあり、地図化が

可能である。

犯罪発生状況は、JAMで確認できる。

防犯活動組織(自治会等)、かけこみ110番、防犯ボランティアの一覧がある。

e.地図化対象データに関する課題

基準を定めて記録の取り方や情報管理の方法を早期に検討・実施する必要がある。

組織的な防犯活動については、防犯講習、教育指導・防犯訓練、パトロール等の防犯活動の履歴を

実績として数値評価し、測定することで『地域の防犯力』の指標となる。地域コミュニティを活動単

位として、データ化し、評価することも課題である。

Page 32: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

30

3)ヒアリング調査のまとめ

①基礎データの整備状況と地図化の可能性

a.基礎データが整備されている分野

対人サービスで、各事務事業の情報システムが導入されており、保険の適用、給付金や補助金の支

払いがある場合は、受益者のデータは住所付きで存在する。事務事業に関連する施設、土地、地物(保

存樹木など)は概ね台帳化され、住所付きの電子データ(エクセル等)が存在する。ただし、住所デ

ータの書き方が不統一な場合が多く、これを統一することが必要である。

b.基礎データの整備が不十分な分野

相談、講習会、施設開放、イベント等の対人サービスでは、受付簿が紙媒体で、対象者の住所情報がな

い場合が多い。住所欄付きの受付簿を用意する必要がある。

電話などで市民から直接各課に寄せられる意見要望については、発生場所を住所付きのデータとし

て記録管理していない例がある。市民の意見要望の記録簿を用意する必要がある。

c.基礎データの整備にあたって留意点

各課担当者は、「データの作成や入力に手間のかかる方法では、実務に追われて対応できない」と言

っており、できるだけ簡潔な入力方法が必要とされる。

②地図化の有用性

a.集計・報告への活用

記録管理や集計など、報告書作成を支援する効果に興味が示された。

b.各課横断的なデータの相互活用

地図化による情報の効果的把握と関連課・他部門の情報の共有化、重ね合わせで地域特性の把握、事

業計画の立案、因果関係や相乗効果など、課題の抽出から問題の解決の方策検討などへの活用に大き

な期待が寄せられた。

施設の維持管理に関する分野では、施設の使用料金の滞納徴収や利益管理、将来需要の予測など面

で、施設利用に関する人口・世帯・年齢階層の将来予測や所得階層の分布など、他部門のデータが有

効に使える場合がある。

c.総合的な対策検討における支援効果

『基本計画策定事業』のように、庁内の関連課を含めた横断的な事務事業においては、情報の地図

化、可視化の効果が有効に発揮され、様々なケース設定によるミュレーション検討が可能になり、意

志決定を支援することができる。

Page 33: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

31

e.プロジェクトチーム、タスクホースでの活用

総合防犯対策、まちづくり総合対策、地域開発プロジェクト、高齢者福祉総合対策など、複数の部

署が協力して取り組むべき施策を検討する場合には、各部署の保有する地図データを持ち寄って総合

的な検討を行うことが可能となるものと思われる。

また、市民と市その他関係機関が協力して取り組む市民マラソンや文化事業等の大規模イベント開

催にあたって、観客誘導の検討など、運営計画の検討に活用することが期待できる。

f.危機管理業務への支援効果(緊急対策の実施、応急・復旧・復興対策への支援効果)

新型インフルエンザ対策、大規模震災対策、対策本部の情報管理などにおける意志決定を支援する

システムとして導入効果が期待できる。被害の発生地点・場所から周辺への被害の広がり、要介護者の

分布、共有情報として人口階層別人口分布(町丁目)、建物・用途分布、道路情報、医療施設、福祉施

設、避難地・避難場、防災施設等の必要な情報を地図上に表現し、さらに事態の推移と影響予測、各種

の対策の展開を地図上に表現できれば、的確な情報の提供と重要な意志決定を支援することができる。

③地図の活用を促進するために必要な取り組み

a.担当者の積極的な取り組み姿勢の醸成

地図化が可能な分野であっても、事務担当者が『地図化の意味がない』、『地図化に馴染まない』と

判断する場合がある。担当者の問題意識や取り組み意識の有無が事務業務データを地図化していくか

どうかの決定的な要件の一つになる。

担当職員が、活用方法を具体的にイメージできるよう、事務業務データを地図化するメリット、地

図活用に関する基礎的な知識、導入効果の理解を促していくことが必要である。

b.多くの課から共通に整備要望のあるデータの地図化

住民記録システムに基づく住民データや、各種統計データなど、多くの課から共通に整備要望のあ

るデータの地図化を早期に進め、各課の職員が事務事業を地図化することによる利便性を実感できる

ようにする。

c.保有データを簡便に地図化できる環境の提供

各課が管理している住所付きのデータをJAMに取り込むことで、自動的に地図上にデータが配

置される仕組みを構築するなどして、容易にデータを地図化して検討することができる環境を整備す

る必要がある。

d.情報システムの開発と活用方法の検討

当該事務事業のサービス対象者の分布や、問題が多発している場所を地図に表示して確認するなど、

地図の活用によって各課の事務の改善が図られることを実感できる情報システムを開発することが必

要である。

また、犯罪発生状況と、防犯灯、防犯カメラ、防犯パトロール、袋小路の分布、単身世帯や共働き

世帯など昼間不在となる住宅の分布を地図上に重ね合わせ、総合防犯対策検討の参考資料にするなど、

複数の事務事業を総合的に検討できるような情報システムの開発や活用方法の検討が必要である。

Page 34: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

32

5.テストデータの作成と評価

多くの課での利用が想定される共用データと、アンケート調査及びヒアリングなど詳細調査の対象に選

定した4課が保有するデータを基に、各課の地図化要望を踏まえて、テストデータを作成し、その有効性

について、各課の意見を聴取した。

5-1.基礎データの収集方法

地図化の基礎データは、住民記録システムのデータなどの多くの課が利用すると想定される共用データ

と、各課がその事務遂行の過程で整備してきた事務データである。

事務データは、各課が保有する「表形式データ(エクセルデータ)」、「各課の事務処理用の情報システ

ムで管理されているデータ」の2種類とし、各課から電子媒体で提供を受けた。

データ内に住所情報が記載されていることを条件とした。

紙媒体の台帳類は、先に電子データすることが前提となるので、本調査では使用しないこととした。

5-2.テストデータ作成の方法

各課から収集した基礎データを以下の手順で地図化した。

①アドレスマッチング3

収集したデータは、住所情報を元にアドレスマッチングによって地図上の座標を付加する。

1丁目1番1号を1-1-1と表現するなど、アドレスマッチング用ソフト4に不対応の発生状態を

チェックする。(注:その結果を反映して、その後、アドレスマッチング用ソフト自体の改善が図られ

た。)

アドレスマッチング用ソフトに不対応のものに関して、住所情報をチェックし、補正を加えて可能な

範囲で対応する。

以上を通じて、番や号に関する情報の欠落などアドレスマッチング用ソフトの改善では対応不可能な

住所情報の問題点を把握し、改善の方向性を確認する。

②地図や集計表、グラフの作成など

上記基礎データをアドレスマッチングにより、統合型GISに取り込んで地図を作成するとともに、

基礎データを基に集計表やグラフを作成する。

地図や集計表、グラフから特徴や課題を読み取る。

注)3: アドレスマッチング(別名ジオコーディング)とは、住所や地名、駅名など、日常生活で使用している、場所を示すキ

ーワードを、緯度・経度などの座標値に変換する技術。

4: アドレスマッチング用ソフトとは、場所を示すキーワードを含む一覧表に自動的に座標値を付与するために用いるソフ

トウエア。

Page 35: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

33

5-3.テストデータの作成

1)共用データの地図化

①住民記録システムのデータ

住民記録システムのデータを地図に表示することに関しては、多くの課から要望が上げられているの

で、共用データとして、住民記録システムのデータに住所に該当するXY座標を付け、地理情報化した。

161,540件中、161,366件(99.9%)の地理情報化に成功し、市民一人一人の居住する建物位置まで特定

できた。

上図の例では、猫実・堀江・当代島地区などの古くからの市街地や、第1期埋立の富岡・美浜・入船・

集合住宅や弁天の戸建て住宅地には、65歳以上の高齢者が多数住んでいることがわかる。また、第2期埋

立の日の出の集合住宅も高齢者が多いことがわかる。

Page 36: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

34

②市長への手紙データ

市民から市長に寄せられる要望等として整理されている「市長への手紙」の地理情報の内、公園に関

する項目のみ整理し、地理情報化を行った。結果を以下に示す。

市長への手紙データを地図化するには、以下に示すような前処理を行わなければならず、その作業に

多くの時間を要した。

・問題とする事案(例:〇〇通りに暗くて危険)に関わる場所の記載が不明確。

→ 文章を読み取って、場所を特定した。

・長文の意見が多く、一通の手紙で複数の指摘事項が記載されている例が多い。

→ 一つのテーマが一つの文章になるように、長文を分解した。

今後、市長への手紙を地理情報として活用するためには、

・データを収集整理する段階で、テーマの分類、住所コードの付与などの作業を行う。

・場所やテーマをメニュー選択する市民意向収集システムを構築する。

・JAMを利用して直接入力できるようにする。

などの対策が望まれる。

公園をクリックすると、

手紙の全文が表示され

る。

Page 37: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

35

・公園、緑地・街路樹維持管理事業

管理班役割分担(H20):住居表示データ無し

緑地整備進捗表:住居表示データ無し

・公園施設等改修整備事業

街区公園改修一覧表:住居表示データあり。アドレスマッチング不整合データ多数。

事業実績:住居表示データあり。

実施計画:住居表示番号無し。

・生垣設置奨励事業

生垣台帳:住居表示データあり。

・保存樹木指定事業

保存樹木指定一覧:住居表示データあり。アドレスマッチング不整合データ多数。

・緑化推進事業

平成20年度緑化活動支援:住居表示データあり。

公園里親一覧:住居表示データなし。

・高齢者分布と公園(バリアフリー対策の必要性の把握)

・街区公園・児童公園250m圏内の幼児数

・保存樹・生垣助成の実施状況

2)みどり公園課データの地図化

①みどり公園課管理データと位置情報の状況

みどり公園課から提供されたサンプルデータは以下のとおりである。

この内、データ数が多く住所データが付属するものを対象に地図化した。(下表中太字で記述)

②サンプル地理情報の作成

以下の地理情報を作成した。(地図化データを次頁以降に掲載)

住所の記載については、住居表示の記載方法と不整合なものが多数あったため、公園分布図を参考に、

手作業で位置を特定しなければならないケースがあった。

住所データの記載を、住居表示に合わせることが必要。

Page 38: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

36

高齢者分布と公園

【担当課とのヒアリングでの意見や要望】

高齢者分布の多い地域の公園については、バリアフリー対策やベンチなどの休憩・休息をするための器

具を多く設置するなど、公園改修計画を検討する上で有用な地図となる。

また、これらに、市民からの意見や要望の地図を重ねることで、より、市民ニーズに沿った公園改修計

画を検討することが可能となる。

Page 39: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

37

・街区公園・児童公園250m圏内の幼児数

【担当課とのヒアリングでの意見や要望】

250m圏内に幼児数が多く分布している

公園では、子供向けの遊具の充実や安全対策

など、公園改修計画を検討する上で有用な地

図となる。

また、これらに、市民からの意見や要望の

地図を重ねることで、より、市民ニーズに沿

った公園改修計画を検討することが可能とな

る。

Page 40: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

38

生垣助成

保存樹木(5本)保存樹木(10本)保存樹木(20本)

市境

保存樹木・生垣助成図

1:22000

1500m500 0 500 1000

・保存樹・生垣助成の実施状況

Page 41: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

39

(幼稚園)

・幼稚園一覧データ

・20年度現通園者データ(年少、年中、年長)

・21年度新通園者データ(年少、年中、年長)

・平成20年度 園児・学級・教職員数一覧(平成20年5月1日)

・平成20年度 子育てすこやか広場集計表

・私立幼稚園補助金(住所記載無し)

・預かり新規利用予定者

(保育園)

・保育所一覧データ

・保育園待機児童名簿

・認可15園入所児童名簿

・保育園待機児童分布図

・保育園入園児童分布図

・幼稚園入園児童分布図

3)保育幼稚園課データの地図化

①保育幼稚園課管理データと位置情報の状況

保育幼稚園課から提供されたサンプルデータは以下のとおりである。

データ数が多く住所データが付属するものを対象に地図化した。(下表中太字で記述)

②サンプル地理情報の作成

以下の地理情報を作成した。(地図化データを次頁以降に掲載)

住所の記載については、丁目、番、号の表記および丁目、番、号の区切りが統一されていなかった。

アドレスマッチング用ソフトでこれらの不統一を完全に吸収することは出来ないので、住所データの記

載は、住居表示に合わせることが必要。

また、住居表示の町・丁目・番・号の後に建物名や部屋番号が付加されているものが多数あるが、ア

ドレスマッチング用ソフトで処理されるので不都合は生じなかった。

Page 42: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

40

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

私立みのり保育園

市立弁天保育園

私立ポピンズナーサリー新浦

市立高洲保育園

市立猫実保育園

市立東野保育園

市立浦安駅前保育園

市立当代島保育園

市立富岡保育園

市立入船北保育園

市立日の出保育園

市立ふたば保育園

市立海園の街保育園

市立入船保育園

私立しおかぜ保育園

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%

120.0%

140.0%

160.0%

180.0%

200.0%定員 入園児童数 待機児童数 児童数/定員 (園児+待機児童)/定員

保育所一覧 ??

区分 保育所名 定員入園児童数

児童数/定員

待機児童数

(園児+待機児童)/定

員保育所 私立みのり保育園 120 162 135.0% 32 161.7%保育所 市立弁天保育園 110 125 113.6% 35 145.5%保育所 私立ポピンズナーサリー新浦安 150 151 100.7% 58 139.3%保育所 市立高洲保育園 150 167 111.3% 41 138.7%保育所 市立猫実保育園 110 117 106.4% 29 132.7%保育所 市立東野保育園 150 170 113.3% 28 132.0%保育所 市立浦安駅前保育園 60 59 98.3% 19 130.0%保育所 市立当代島保育園 130 127 97.7% 37 126.2%保育所 市立富岡保育園 150 162 108.0% 16 118.7%保育所 市立入船北保育園 110 109 99.1% 18 115.5%保育所 市立日の出保育園 150 162 108.0% 11 115.3%保育所 市立ふたば保育園 110 108 98.2% 18 114.5%保育所 市立海園の街保育園 50 49 98.0% 8 114.0%保育所 市立入船保育園 170 174 102.4% 19 113.5%保育所 私立しおかぜ保育園 150 117 78.0% 39 104.0%認定保育所 エンゼルマミー認定保育所 北栄保育園認定保育所 駅型保育アップルナースリー認定保育所 愛和保育園

Page 43: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

41

保育園待機児童分布図

【担当課とのヒアリングでの意見や要望】

ほとんどの保育園では、園周辺に待機児童

が集中している中で、駅近傍の保育園では比

較的広い範囲に待機児童が分布していること

が分かる。

この地図と住民記録システムのデータの6

歳以下の人口分布地図や、町別昼夜間人口の

差を表す地図を重ねるなどすることで、今後

の保育園建設や拡充などの検討に有用である。

Page 44: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

42

保育園入園児童分布図

幼稚園入園児童分布図

Page 45: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

43

・肺がん健診データ

・乳がん健診データ

・前立腺がん検診データ

・子宮がん健診データ

・胃がん健診データ

・大腸がん検診データ

・肺がん健診状況図

・乳がん健診状況図

・前立腺がん検診状況図

・子宮がん健診状況図

・胃がん健診状況図

・大腸がん検診状況図

4)健康増進課データの地図化

①健康増進課管理データと位置情報の状況

健康増進課から提供されたサンプルデータは以下のとおりである。

全てのデータには住所データが付属しているので、地図化した。(下表中太字で記述)

②サンプル地理情報の作成

以下の地理情報を作成した。(地図化データを次頁以降に掲載)

住所の記載については、丁目、番、号の表記おが統一されており、アドレスマッチング用ソフトで

ほぼ完全に位置情報を付加することができた。

【担当課とのヒアリングでの意見や要望】

これらの地図だけでは、取り組むべき事務事業の検討は難しいが、受診すべき対象者である地区別

国民健康保険対象者分布地図を重ねることで、特に受診率の低い地区への受診率向上の働きかけがで

きる。

また、母子保健については、地区別担当制を取っているので、地図上で地区ごとの状況がわかるこ

とにより、地区の特性を分析することができ、地区に適した取り組むを進めることができる。

Page 46: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

44

肺がん健診受診状況図

乳がん健診受診状況図

Page 47: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

45

前立腺がん検診受診状況図

子宮がん健診受診状況図

前立腺がん健診受診状況図

Page 48: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

46

胃がん健診受診状況図

大腸がん検診受診状況図

Page 49: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

47

・防犯ボランティア台帳

・講習会実施状況

・移動防犯事業開催状況

・犯罪発生状況図

5)防犯課データの地図化

①防犯課データと位置情報の状況

防犯課から提供されたサンプルデータは以下のとおりである。

(今回の調査では、データの不備などがあり、サンプルデータを地図化しなかった。)

②サンプル地理情報の作成

以下の地理情報を作成した。

犯罪発生状況図は、JAM上でデータ化され、座標データが付いており、アドレスマッチングは不

要であった。

ひったくりが多い場所、路上強盗が多発している場所の分布に特徴があり、地区によって、防犯対

策の内容が異なることがわかる。

犯罪発生状況図

Page 50: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

48

5-4.テストデータを踏まえた「情報の地図化」に対する評価

作成したテストデータを参考として示し、テストデータ作成の対象とした4課(みどり公園課、保育

幼稚園課、健康増進課、防犯課)と、総合計画の検討などで他課の情報を幅広く必要とする「企画政策

課」を対象とし、地図化の必要性や表示内容に関する意見をヒアリングした。

その結果は、以下のとおりである。

1)各課の事務に関連する情報の地図化に対する評価

企画政策課においては、「各課の事務に関する情報や住民記録データの地図化は、今後の政策や施策・

事務事業の検討に価値がある。統計情報についても地図化することを望む。」との意見があった。

一方、テストデータ作成の対象とした4課の担当者は、「将来の行政サービスの将来のあり方を検討す

る上では意味があると思うが、テストデータを見ただけでは、日々の事務遂行にあたって、情報の地図

化がどのように役立つかについては、具体的なイメージが浮かんでこない」との意見もあった。

2)地図化の効果が期待できると評価された情報項目

地図化の効果が期待できると評価された情報項目を整理すると概ね以下のとおりである。

①行政サービスに関する需要情報

a.行政サービスの対象となる市民に関する情報(高齢人口分布、就学前児童分布など)

年齢区分別の人口分布など住民記録データのみから整理可能なデータの他、共働き世帯の就学前

児童分布や社会保険対象者ではない方の年齢別人口分布など、他の情報との組み合わせが必要な情

報に関する要望も多い。サービス向上の基礎情報として、各課の業務サービスの対象となる市民の

分布を整理し、地図化された情報が各課で得られるようにすることが必要である。

b.市民の要望に関する情報(市民アンケート、市長への手紙など)

各課が提供するサービスに対する市民からの要望や意見は、市民意識調査(隔年)、様々な市民ア

ンケートで調査され、日常的には、市長への手紙や各課への市民からの電話等で収集されている。

これら市民要望の地図化に関する要望があった。行政サービス評価のアウトカム指標である市民の

評価を向上させる上でも、市民要望を地図化し、各課に提供することが必要である。

c.市民生活に関連する問題点や課題を表す情報(犯罪発生状況など)

犯罪発生状況を地図表示すると地域別の特性が明らかになり、対策検討の材料として活用できる

可能性があるなど、市民生活に関連する問題点や課題を地図化することには意味がある。

②行政サービスの提供を支える資源情報

a.各課の事務関連施設に関する情報(公園、保育園、幼稚園など)

各課の事務に関連する施設に関する情報(面積、施設概要、定員、整備状況など)は、各課が保

有しており、これらを地図化することは、事務に必要な施設の地域別充足状況を把握する上で有効

である。

Page 51: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

49

b.各課の事務に関連する外部組織に関する情報(ボランティア団体など)

各課が提供するサービスの実施に当たっては、市職員、ボランティア、委託先企業などの体制が

必要な場合がある。テストデータ作成に関わった各課に関連する外部組織は件数が少ないため地図

化の必要性はそれほど高くないが、ボランティア団体の拠点や、委託先企業の事務所の分布が市民

へのサービスに与える影響を把握する上で地図化の意味はある。

③行政サービスの実績情報

a.各課の活動実績に関する情報(公園整備実績、健診受診者、防犯講習会参加者など)

各課の活動実績については、各課においてデータとして蓄積されている。これらの情報は、事務

事業評価における成果指標として用いられることが多い。事務事業の進捗を管理する上では、月報

や季報の様に時間軸に沿ったデータ整備が必要である。これらを地図化することで、場所別の実績

の偏りを分析することに利用できる。

Page 52: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

50

6.統合型GISの高度利用に向けたシステムの拡充と推進上の留意点

6-1.統合型GISの高度利用に向けたシステムの拡充

1)政策や施策、事務事業の検討や事務事業の改善に向けた統合型GISの高度利用の方向性

本市における統合型GISの取り組みをさらに推進し、統合型GISがより多くの課で有効に利用さ

れる状況を創出するため、本市が行っている全709事務事業に関する情報を地図データとして取り込む

ことの可能性と、その意義を検討した結果、以下のようなことが明らかになった。

以上のことから、「各課において事務事業に関するデータを随時登録することで、その結果を地図やグ

ラフなどに、簡易な操作で視覚化することができ、また、あらかじめ登録された住民の分布や、市民か

らの意見、要望、各種統計データなどの地図データや各課の様々なデータと重ねあわせて地図化するこ

とができる情報システムを構築し、政策や施策・事務事業の検討や事務事業の評価などの有効な道具と

して、活用できるものとすること」が、今後の統合型GIS高度利用に向けて取り組むべき方向性であ

ると考えられる。

●各課が担当している事務事業数の64%、事務事業にかかるトータルコスト(決算額)の90%は、

その事務事業に関する情報を地図化することが可能である。

●情報を地図化することは、各課が担当している事務事業に関する問題点やその原因を探る上で有効

である。

●住民記録システムのデータや市民アンケート、市民意識調査、市長への手紙などについては、多く

の課から地図化した情報の提供が求められている。

●計画立案部門では、計画に関連する多様な情報を把握する必要性があることから、各課の情報が地

図化され蓄積されることは有用と思われている。

●統合型 GIS の高度利用による各課の仕事量の増加を極力回避できる情報システムを導入すること

を希望している。

Page 53: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

51

2)統合型GISの高度利用における標準的な手順の設定

統合型GISの高度利用の方向性を踏まえ、標準的な手順を、以下のように設定する。

①解析用テンプレートの設定

各課の職員の多くは、情報を地図化して業務に役立てることの経験に乏しく、日常的な業務が多忙

であり、地図利用のために多くの時間をかけて試行錯誤することは困難な状況にあることを踏まえ、

各課の職員の負担を増大させずに地理情報の利用を促進するために、地図化適合性のある全事務事業

に対応して、今後の対応課題発見に役立つ解析用テンプレートを設定する。

解析用テンプレートは、事務事業の進捗状況や課題把握を容易にするために、地図の表示内容や、

グラフ・表併記などについて、工夫を凝らした画面を設定し、各事務事業の担当課がデータを入れ替

えると、自動的に画面の内容が更新されるように設定する。

②住民要望の地図化

市民意識調査、市民アンケート調査結果、市長への手紙を地図化する。

JAMや携帯電話による市民意向収集システムを使って、市民要望を取り込む。

③地図化可能な事務事業実績の地図化

各課の事務を通じて取得したデータを、住所付きのデータとして蓄積する。

蓄積したデータをアドレスマッチングし、集計して地図化する。

④基礎情報の地図化

住民記録システムのデータなどをアドレスマッチングして地図化する。

各種統計情報をエリア別に集計し地図化する。

⑤現状と課題の分析

解析用テンプレートの設定に基づき、②~④のデータを用いて、各事務事業に対応した地図や表・

グラフを自動的に更新する。

なお、計画立案などの非定型な事務を行う際には、蓄積されている地図データを活用し、独自に解

析する。

⑥JAMで各部各課に結果を配信

解析用テンプレートを用い定型化した事務事業評価報告書を各課に送付する。

⑦各課による内部利用

各課の係長・課長・部長などが、結果の地図・表・グラフを見て、課題等を把握する。

対応が必要な事項に関して各課が対応方針を定める。

Page 54: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

52

一つの画面に、地図、グ

ラフ、表など表示 解析用テンプレートの画面イメージ

⑧各種協議での利用

政策や施策、事務事業の検討、予算協議など際に基礎情報として使用する。

⑨JAMでの事務事業の進捗状況の市民への公開と市民要望の収集

解析用テンプレートを用いて作成された情報の公開の可否と時期の設定を制御する。

上記設定に基づきJAMを通じて情報を公開する。

市民がJAMを用いて、要望を登録することができるようにする。

解析用テンプレートの画面イメージ

解析用テンプレートは、「データ一覧表」「グラフ」「地図」の画面で構成し、各課が登録した各事務事

業のデータに対応して、それぞれの画面の内容が更新されるものである。「地図」画面は、年齢別人口分

布地図や各種統計情報の地図、また市民の意見や要望に関する地図などのあらかじめ登録された基礎情

報の地図や、各課が作成した地図などを掲載した地図ライブラリィから、必要な地図を重ねて表示させ

たり、並べて比較するなどの機能を有する。「グラフ」画面においては、表計算ソフトを活用し、簡単な

操作でさまざまなグラフを作成できるものとする。

また、画面上部にタブ機能を設け、経年変化や月別の変化を画面を切り替えることで、確認できるよ

うする等、現状の評価や課題の発見を手助けしやすいように工夫する。

□□課 △△係 事業CD 12-01-00-01 〇〇事業 NN年 NN月 事業実績

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3月

成果指標の推移

グラフ 過年度、本年度比較

成果指標表・コメント等

複数の地図を重ね

合わせて表示

前月 昨年度同月 地図ライブラリィ 現在 複数の画面をタブ

で切り替え

Page 55: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

53

3)統合型GISの高度利用を実現するためのシステムの整備方針(案)

統合型GISの高度利用で目指すのは、「各課への負担をあまり増加させることなく、今後の政策や施

策、事務事業の検討に必要な情報や、各課の事務事業に関連する情報を地図化して、統合型GISのデ

ータベースに取り込み、各課がこれを容易に利用できる」状況の創出である。

そのため、既存の統合型GISを基本に、「統合型GISの高度利用における標準的な手順の設定」で述

べた一連の処理を効率的にサポートするための機能拡張を行うものとする。高度利用に適合するように

機能拡張した統合型GISの全体像を以下に示す。

職員PC 職員PC 職員PC

会議室

市民のパソコンや携帯電話

●固定資産税課や都市計画課など大

量の地図を使用する部門での活用

●地図化可能な情報を扱う多くの部

門の事務事業への活用

既存の共用空間データ

拡張共用空間データ

・各課の事務に関連する情報

・住民情報(住民記録システムのデータなど)

・市民要望(市民アンケート、市民意識調査、

統合型GISの高度利用の分野

イ ン タ ー ネ ッ トJAM (機能強化) 携帯電話連携機能

アドレスマッチング用ソフトの組み込み

解析用テンプレート作成用GIS

解析用テンプレート

これまでの統合型GISの主な利用分野

LGWAN JAM (機能強化)

インターネットJAM LGWAN JAM

② ③ ④⑤

Page 56: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

54

統合型GISの高度利用を実現するために、システムの拡充が必要な項目は以下のとおりである。

①拡張共用空間データサーバの導入

既存の共用空間データに加え、下記のデータを記録するためのデータサーバを導入する。

・アドレスマッチング用住所座標対応データ(データは随時更新し、時系列で管理)

・市民アンケート調査結果、市長への手紙、市民参加用JAMを通じて収集した市民意向に住所情

報を付加したデータ

・事務事業の関連施設、事務事業の対象者(住民記録システムなどから抽出)、事務事業の実施状況

(月次報告、季報、年度報告など)などの事業関連情報に住所情報を付加したデータ

・各種統計データ

②GIS基本ソフトウエア(解析用テンプレート作成用、地図データ編集用)の導入

解析用テンプレートの作成、また地図データを直接編集できるシステムの管理やメンテナンス用の

GIS基本ソフトウェアを導入する。

③解析用テンプレートの作成

各課の職員の多くは、情報を地図化して業務に役立てることの経験に乏しく、日常的な業務が多忙

であり、地図利用のために多くの時間をかけて試行錯誤することは困難な状況にあることを踏まえ、

各課の職員の負担を増大させずに地理情報の利用を促進するために、各課の事務事業の内容に即して、

今後の対応課題発見に役立つ地図表現の雛型(解析用テンプレート)を設定する。

④LGWAN-JAMの機能強化

・各課の情報をアドレスマッチングし、拡張共用空間データとして格納できるよう機能を開発する。

・事務事業の進め方や見直しの検討に有効な情報が提供できるように、解析用テンプレートに基づき、

事業の進捗状況や問題点課題を可視化するための機能を開発する。

⑤インターネットJAMの機能強化

・解析テンプレートで作成した地図等を市民に公開するための機能を開発する。

・市民が携帯電話を使用して、市が公開している地図上に、防犯や防災などの地域情報や政策に対す

るコメント、イベントの感想や評価などを簡単に入力できる機能を開発する。

Page 57: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

55

4)統合型GISの高度利用を実現するシステムの整備費および保守費

システム整備費および年間保守費は、おおむね以下のとおりである。

表 システム整備費

項 目 数 量 単 価

(千円)

金 額(千

円)

①機器購入費 1,500

拡張共用空間データサーバ 1台 1,500 1,500

②GIS基本ソフトウェア購入費 7,000

GIS基本エンジン 1式 3,000 3,000

解析用テンプレート作成用GISソフト 5式 400 2,000

地図データ編集用GISソフト 2式 1,000 2,000

③解析用テンプレートの作成 1式 20,000 20,000

④庁内用JAMの機能強化 6,000

アドレスマッチング機能の組み込み 1式 3,000 3,000

解析用テンプレートに対応した表示機能 1式 3,000 3,000

⑤市民用JAMの機能強化 6,000

解析用テンプレートに対応した表示機能 1式 3,000 3,000

市民要望登録機能 1式 3,000 3,000

⑥携帯電話による市民要望登録機能 1式 4,500 4,500

合計 45,000

消費税 (5%) 2,250

総計 47,250

表 年間保守費

項 目 数 量 単 価

(千円/年)

金 額

(千円/年)

①GIS基本エンジン保守費 1式 400 400

②解析用テンプレート作成用GISソフト 1式 100 100

③地図データ編集用GISソフト 1式 300 300

合計 800

消費税 (5%) 40

総計 840

Page 58: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

56

5)統合型GISの高度利用を実現するシステムの整備効果

統合型GISの高度利用による効果として、以下の事項が挙げられる。

・市民要望の受け入れ体制の充実や事務事業の成果の公表により市民サービスが向上する。

・政策や施策、事業の検討の精度が上がることによって投資の効率化が図られる。

・母子保健関連業務など、市内を巡回してサービスする事務事業が効率化する。

・税金などの未納者への徴収活動が効率化する。

6-2.統合型GISの高度利用を推進するにあたっての留意点

統合型GISの高度利用を推進するには、以下の点に留意する必要がある。

1)住所記載ルールの徹底

事務量の増加を極力避けつつ、情報の地図化を進めるために、各課管理データについては、アドレス

マッチング用ソフトに適合した住所の記載ルールを定め、それに則ってを作成することを徹底すること

が必要である。

2)各課が保有する情報の地図化と蓄積の促進

共用データの地理情報化が進めば、各課における方針検討の材料として利用できるようになる。また、

各課の地図化された情報の蓄積が豊富になれば、総合計画や各種計画検討の際の検討材料として活用で

きるようになる。そのためにはまず各課が保有する情報の地図化を促進し、これを蓄積することが大切

である。

3)共通の情報源に由来するデータの一括編集

多くの課から要望のあるデータのうち、住民記録システムのデータや統計情報など共通の情報源から

作成可能なデータは、情報政策課が一括作成し、各課に提供することが必要である。

4)市民意見・要望を収集する市民活動のサポート

市の行政運営には、市民の意見・要望を捕らえ、これに適切に対応することが望まれる。現在は、各

課がそれぞれに市民の意見・要望に対応している状況である。これを補完する上で、事務事業の状況を、

地図で視覚化して市民に伝えることととともに、市民意見・要望を収集する活動を活発化していくこと

について検討をしていく必要がある。

5)個人情報保護の仕組みの堅牢化

各課の業務上管理しているデータには多くの個人情報が含まれ、就学前児童や高齢者の分布などを建

物1棟単位で表示することも可能となるので、これらのデータをもとに作成した地図を利用するには、

課内のみで使用する情報(他課には公開しない)、庁内のみで使用する情報、市民に公開する情報を区別

するなど、個人情報保護の仕組みを堅牢にしておくことが必要である。

Page 59: 統合型GISの高度利用に関する調査報告書 · 1 統合型地理情報システム(統合型GIS):地方公共団体が利用する地図データのうち、複数の部局が利用するデータ(例

57

6) 計画の立案や進捗管理、事務事業評価との連携

統合型GISの高度利用による効果をより向上させるためには、計画の立案や計画の進捗管理、また

予算の査定や事務事業評価のそれぞれの一連の事務手続きの中に、地図化による分析を取り込むことが

重要である。

このためには、それぞれの担当課である企画政策課や財政課、総務課と連携を図り、「解析用テンプレ

ート」の設計を進めるとともに、各課において作成すべき地図や地図上に表示すべき項目などの有用性

を十分検討し、地図化を進めることが必要である。