株式会社jvcケンウッド -...

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JVCケンウッドは、世界20カ国以上で事業展開しており、連結子会社は70あまりにも上る。同社では、これら国内外子会社 の資金を可視化し、集約することで、有利子負債を圧縮し、M&Aなどの成長戦略に活用することを目指している。その実現 のために、同社が導入したのが、クラウド型財務管理ソリューション「キリバ・エンタープライズ」だ。 KYRIBA CASE STUDY 株式会社JVCケンウッド 為替リスク管理を含むグローバル財務管理システムを選択 CASE STUDY 株式会社JVCケンウッド様 JVCケンウッド財務部長の若松浩隆氏は、「海外生産比率や海外子会社の高まりに伴い、 グループの資金が、海外の子会社に滞留するという構造になっていました。余剰資金を設備 投資やM&Aなどの成長戦略に活用したり、有利子負債の返済に充てたりしたいと考えていま した」と、かつて直面していた課題を語る。 むろん、これまでも子会社の預金残高情報の把握は行っていた。財務部財務管理グループ グループ長の北村正次郎氏は次のように紹介する。「これまで各子会社には、毎月末の残高 を表計算ソフトのスプレッドシートで報告してもらっていました。すべての数字をまとめるに は急いでも数日間かかります。それでいて、把握できるのは月末のピンポイントの残高だけな ので、評価がしづらいというのが悩みでした」。 北村氏によれば、データの品質にも課題があったという。グループ内の再編のほか、M&A (合併・買収)も頻繁に行われてきたため、現地企業の担当者が代わることも多く、業務の 標準化も容易ではない。 若松氏も次のように語る。「有利子負債を圧縮するためには、必要な運転資金量の見極めが大切です。子会社から資金繰り表を集めて いましたが、その精度はまちまちでした」。どの企業でも、資金繰りは保守的になりがちだ。万一に備えて、数億円の余裕を持とうとする ところもあるだろう。それが1社だけならいいが、数十社が同様に考えると、余剰資金は相当な額になる。 JVCケンウッド 財務部長 若松 浩隆氏 JVCケンウッド 財務部 財務管理グループ グループ長 北村 正次郎氏 クラウド型財務管理ソリューション導入目的と効果 目的:❶キャッシュポジションの適正化及び余剰資金の活用 ❷グループのファイナンシャルリスク管理の強化 ❶国内外子会社のキャッシュポジションを リアルタイムに可視化 ❷財務管理業務の自動化・効率化 ❸為替リスク管理の高度化 ・子会社のキャッシュポジションを月末 残高ベースから日次で把握でき、必要運 転資金の見極めが可能 ・可視化により資金繰り精度の向上、さら には余剰資金の集約により不必要な現 預金・借入を削減 ・M&A子会社も可視化し、買収後の財務 ガバナンス構築にも寄与 ・システム活用によりマニュアル作業から 自動化が可能となり、管理業務がスピー ドアップ。自動可視化率は90%以上 ・SWIFT接続時の不要口座の整理により、 グループ全体の保有口座を約360から 約250口座に集約できた副次効果も ・「キリバ・FXモジュール」と「360T(マルチ バンク為替取引システム)」の導入・連携 により、グループの為替エクスポージャー を本社からリアルタイムに正確に把握、 一括ヘッジ可能な仕組みを構築 ・脱表計算ソフト・システム化により管理 業務の堅確性を担保

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  • JVCケンウッドは、世界20カ国以上で事業展開しており、連結子会社は70あまりにも上る。同社では、これら国内外子会社

    の資金を可視化し、集約することで、有利子負債を圧縮し、M&Aなどの成長戦略に活用することを目指している。その実現

    のために、同社が導入したのが、クラウド型財務管理ソリューション「キリバ・エンタープライズ」だ。

    K YRIBA C A SE STUDY

    株式会社JVCケンウッド 為替リスク管理を含むグローバル財務管理システムを選択

    CASE STUDY  株式会社JVCケンウッド様

    JVCケンウッド財務部長の若松浩隆氏は、「海外生産比率や海外子会社の高まりに伴い、グループの資金が、海外の子会社に滞留するという構造になっていました。余剰資金を設備投資やM&Aなどの成長戦略に活用したり、有利子負債の返済に充てたりしたいと考えていました」と、かつて直面していた課題を語る。

    むろん、これまでも子会社の預金残高情報の把握は行っていた。財務部財務管理グループグループ長の北村正次郎氏は次のように紹介する。「これまで各子会社には、毎月末の残高を表計算ソフトのスプレッドシートで報告してもらっていました。すべての数字をまとめるには急いでも数日間かかります。それでいて、把握できるのは月末のピンポイントの残高だけなので、評価がしづらいというのが悩みでした」。

    北村氏によれば、データの品質にも課題があったという。グループ内の再編のほか、M&A (合併・買収)も頻繁に行われてきたため、現地企業の担当者が代わることも多く、業務の標準化も容易ではない。

    若松氏も次のように語る。「有利子負債を圧縮するためには、必要な運転資金量の見極めが大切です。子会社から資金繰り表を集めていましたが、その精度はまちまちでした」。どの企業でも、資金繰りは保守的になりがちだ。万一に備えて、数億円の余裕を持とうとするところもあるだろう。それが1社だけならいいが、数十社が同様に考えると、余剰資金は相当な額になる。

    JVCケンウッド財務部長若松 浩隆氏

    JVCケンウッド 財務部 財務管理グループ グループ長 北村 正次郎氏

    クラウド型財務管理ソリューション導入目的と効果目的: ❶キャッシュポジションの適正化及び余剰資金の活用 ❷グループのファイナンシャルリスク管理の強化

    ❶国内外子会社のキャッシュポジションを リアルタイムに可視化 ❷財務管理業務の自動化・効率化 ❸為替リスク管理の高度化

    ・子会社のキャッシュポジションを月末残高ベースから日次で把握でき、必要運転資金の見極めが可能・可視化により資金繰り精度の向上、さらには余剰資金の集約により不必要な現預金・借入を削減・M&A子会社も可視化し、買収後の財務ガバナンス構築にも寄与

    ・システム活用によりマニュアル作業から自動化が可能となり、管理業務がスピードアップ。自動可視化率は90%以上・SWIFT接続時の不要口座の整理により、グループ全体の保有口座を約360から約250口座に集約できた副次効果も

    ・「キリバ・FXモジュール」と「360T(マルチバンク為替取引システム)」の導入・連携により、グループの為替エクスポージャーを本社からリアルタイムに正確に把握、一括ヘッジ可能な仕組みを構築・脱表計算ソフト・システム化により管理業務の堅確性を担保

  • 資金の可視化率90%以上 為替リスク管理も開始

    若松氏は、「資金管理に関して正しい判断をするには、全社の資金量をリアルタイムで把握すること、さらに予算と実績にどれだけの乖離があったのかを確認できる仕組みが必要でした」と話す。

    その実現のために、JVCケンウッドが選んだのが、キリバが提供するグローバル財務管理システム「キリバ・エンタープライズ」だ。米国をはじめ世界1300社で導入実績があるほか、日本でも大手グローバル企業に採用されている。

    同社での導入は2014年10月だ。北村氏は次のように振り返る。「まず、子会社各社で利用している銀行口座をすべて洗い出し、SWIFT(国際銀行間通信協会)を利用し、一つひとつ『キリバ・エンタープライズ』に接続していきました。これにより、主要約100銀行の約250口座をほぼリアルタイムでモニタリングできるようになり、可視化率が90%以上になりました」。

    まさにグループ資金の可視化が実現したわけだ。SWIFT接続手続きのために、既存の銀行口座の接続要否を調査したところ、約90の口座を減らすことができたというのも大きな成果だ。

    若松氏は、「単に銀行口座を可視化するだけでなく、可視化することにより、どのような取り組みを行うかが重要です」と語る。

    同社では、若松氏が前述したように、当初から、海外を含む国内外の子会社を含む資金のやりとりを効率化し余剰資金を戦略的に活用したり、グループで融通したりできる仕組み作りを目指してきた。そのために「キリバ・エンタープライズ」を通じて、ほとんどの子会社が保有する資金をキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)に集約し、CMS口座を通じて資金の入出金取引を行うように変えた。「この結果、導入から3年間で、現預金は130億円以上、借入金は110億円以上、支払利息は14億円以上減らすことができました」(若松氏)というから驚く。

    同社ではこれらの資金の集約(プーリング)に加え、さらに先を見越した先進的な取り組みを進めようとしている。「その一つが為替リスク管理です」(若松氏)。

    グローバルに活躍する企業にとって、どうしても現地での為替リスクは発生する。CFO補佐の下村真輝氏は「まずは、為替エクスポージャー(為替のリスクにさらされている部分)が海外の子会社も

    含めてグループ全体でどれぐらいあるのかをリアルタイムに把握することが必要です。そのうえで、本社財務部門が為替エクスポージャーを、子会社に代わって、金融機関と為替ヘッジ取引の条件判断・取引管理を行う計画です。将来的には、グループ間でのマルチラテラル・マルチカレンシーネッティング(複数の当事者間での、異なる通貨での取引の債権・債務の相殺)を実現したいと考えています」と話す。キリバには、それを支援する「キリバ・FXモジュール」や「キリバ・ネッティングモジュール」なども用意されている。

    若松氏は、「グローバル財務管理の強化は、中期経営計画にも掲げられている重要なテーマの一つです。その点で、キリバのモジュールを活用して、経営に正しい情報を迅速に伝えられるようになったのは大きな助けになっています」と話す。グローバルファイナンスの司令塔として、本社の財務部が戦略的に取り組みを進めていることがうかがえる。そのサポーターとして、キリバへの期待も高まっている。

    JVCケンウッド CFO補佐 下村 真輝氏

    海外子会社に滞留する余剰資金の活用へ日本ビクターとケンウッドは2008年に経営統合し、2011年10月に

    両社および関連会社がJVCケンウッドとして統合された。現在、世界トップクラスのシェアを誇るカーナビゲーションシステムやカーオーディオなどの「オートモーティブ分野」を柱に、無線システムなどの「パブリックサービス分野」、映像機器、コンテンツビジネスなどの「メディアサービス分野」の3事業を展開している。

    生産拠点は国内6拠点、海外5拠点で、海外生産比率は88%に達する。また事業運営会社も19拠点に広がり、海外売上高比率は59%となっている。国内外の連結子会社は70社以上に上る(いずれも2017年3月31日現在)。

    キリバ・ジャパン株式会社〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 JR 恵比寿ビル 11F www.kyriba.jp/  [email protected]  03-6321-9454

    「オートモーティブ分野」を柱に3事業を展開その他 その他

    50%24%

    24%カーナビゲーションシステムなどの市販事業、OEM事業

    (2017年3月期)

    主な事業内容メディア事業、エンタテインメント事業

    主な事業内容無線システム事業、業務用システム事業、ヘルスケア事業

    オートモーティブ分野

    メディアサービス分野

    パブリックサービス分野

    主な事業内容

    1.6%

    『週刊東洋経済』2017 年7 月29 日号に掲載

    株式会社JVCケンウッド 会社概要・本社: 〒221-0022 神奈川県横浜市神奈川区守屋町三丁目12番地

    ・代表者: 辻 孝夫

    ・設立年月日: 2008年10月1日

    ・資本金: 100億円

    ・事業内容:映像機器・音響機器・無線機器・音楽映像ソフトメーカー