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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2017 2 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, February, 2017 港町の地形と都市形態による分類 - 明治末期~昭和初期の地形図による比較分析 - Classification of port town of Japan by topography and city form : Comparative analysis by topographic map from the end of the Meiji era to the early Showa era 神山裕作 * ・岡崎篤行 ** Yusaku Kamiyama * Atsuyuki Okazaki ** Basic research of modern port town is fewer than other cities. In addition, since it is necessary for a port town before the early modern period to have a natural good port, it is presumed that the topography and the city form of the port town are related to each other. Because there are few materials of early modern times and it is difficult to comparative analysis, this research is classified by city form of port town and topography located by using modern materials. It is aimed at grasping the relationship of each. As a result of the analysis, it was found that there are many port towns where the mountain is approaching and located in the bay and whose urban area is in contact with the sea, and all the port towns located in the meander are all in contact with rivers. keywards: port town, morden period, tohography, map, Sea of japan, Seto inland sea キーワード : 港町 , 近代 , 地形 , 地図 , 日本海 , 瀬戸内海 1 研究の背景と目的 歴史を活かしたまちづくりが行われるようになり、現代 の都市の基礎となる近世の都市史研究が進められている が、近世港町は他の都市に比べ基礎研究が少ない。また、 近世以前の港町は天然の良港 (1) を持つことが必要とされて いる 1) ため、地形と港町の都市形態は関係していることが 推測される。近世の資料は少なく港町の比較分析が困難で あるため、本研究は近世に近い時期で入手可能な近代の地 形図を用いて、近代港町の位置する地形と都市形態 (2) に着 目し分類することで、それぞれの関係性を把握することを 目的とする。 2 研究の位置づけ 近世・近代港町を分類した既往研究は、近世の都市空間 の成立条件と展開経過によって分類したもの 2) と、近代の 人口増加の過程によって分類したもの 3) がある。本研究で は地形と都市形態に着目し、日本全国の近代港町を分類す ることに特徴がある。 3 研究対象地と調査方法 本研究は近代港町を対象に分類を行うため主要な近代港 町を網羅する必要がある。高橋 3) は、「明治初期人口5千 人以上、または、大正末期人口1万人以上」を基準に日本 全国の港町を抽出しており、近代で人口が比較的多い港町 215ヵ所を挙げている (3) 。これら215ヵ所の港町は人口規 模により近代の主要な港町を網羅していると推測できるた め、本研究の対象とする。調査は明治末期から昭和初期の 地形図 (4) 213枚 (5) の比較により行う。地形図213枚はそれ ぞれ、スタンフォード大学のホームページ 4) から165枚、 日本図誌大系 5) 10冊から46枚、国土地理院謄本交付サービ スから2枚入手した。 4 地形と都市形態による港町分類 4 -1 地形による港町分類方法(図1)  山地が迫っている地形である場合、水深が大きく港湾 に適することが考えられるため、最初に山地の迫ってい る低地 (6) に市街地が位置する港町を山際低地 (7) 、そうでは ない港町を一般低地 (7) に分類する。次に一般低地から川幅 1.5m以上 (8) の河川の有無で海岸洲と河成低地に分類し、 河成低地から河川の流路によってそれぞれ、扇状地、蛇行 原、三角州に分類する。また、内海・湾に位置する地形で ある場合、波浪の静穏度が高く港湾に適する地形であると 考えられるため、各5タイプからさらに港町が内海、また は湾に位置するかで合計10タイプに分類する。 網状流路 蛇行流路 分岐流路 図 -1 地形による港町分類方法 山際低地 一般低地・扇状地 一般低地・蛇行原 一般低地・三角州 一般低地・海岸州 山際低地 一般低地・扇状地 一般低地・蛇行原 一般低地・三角州 一般低地・海岸州 山際低地 一般低地・扇状地 一般低地・蛇行原 一般低地・三角州 一般低地・海岸州 YES YES NO NO 山際低地 平坦低地 扇状地 平坦低地 蛇行原 平坦低地 三角州 平坦低地 海岸洲 YES NO 山地 市街地 市街地 市街地 市街地 市街地 河成低地 *  神山 裕作 非会員・新潟大学工学部都市計画研究室 ** 岡崎 篤行 正会員・新潟大学工学部建設学科 教授・博士 ( 工学部 ) - 208 -

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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2017 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, February, 2017

港町の地形と都市形態による分類

- 明治末期~昭和初期の地形図による比較分析 -

Classification of port town of Japan by topography and city form : Comparative analysis by topographic map from the end of the Meiji era to the early Showa era

神山裕作 *・岡崎篤行 **

Yusaku Kamiyama*・Atsuyuki Okazaki**

Basic research of modern port town is fewer than other cities. In addition, since it is necessary for a port town before the early modern period to have a natural good port, it is presumed that the topography and the city form of the port town are related to each other. Because there are few materials of early modern times and it is difficult to comparative analysis, this research is classified by city form of port town and topography located by using modern materials. It is aimed at grasping the relationship of each. As a result of the analysis, it was found that there are many port towns where the mountain is approaching and located in the bay and whose urban area is in contact with the sea, and all the port towns located in the meander are all in contact with rivers.

keywards: port town, morden period, tohography, map, Sea of japan, Seto inland seaキーワード : 港町 , 近代 , 地形 , 地図 , 日本海 , 瀬戸内海

1 研究の背景と目的 歴史を活かしたまちづくりが行われるようになり、現代の都市の基礎となる近世の都市史研究が進められているが、近世港町は他の都市に比べ基礎研究が少ない。また、近世以前の港町は天然の良港(1)を持つことが必要とされている1)ため、地形と港町の都市形態は関係していることが推測される。近世の資料は少なく港町の比較分析が困難であるため、本研究は近世に近い時期で入手可能な近代の地形図を用いて、近代港町の位置する地形と都市形態(2)に着目し分類することで、それぞれの関係性を把握することを目的とする。

2 研究の位置づけ 近世・近代港町を分類した既往研究は、近世の都市空間の成立条件と展開経過によって分類したもの2)と、近代の人口増加の過程によって分類したもの3)がある。本研究では地形と都市形態に着目し、日本全国の近代港町を分類することに特徴がある。

3 研究対象地と調査方法 本研究は近代港町を対象に分類を行うため主要な近代港町を網羅する必要がある。高橋3)は、「明治初期人口5千人以上、または、大正末期人口1万人以上」を基準に日本全国の港町を抽出しており、近代で人口が比較的多い港町215ヵ所を挙げている(3)。これら215ヵ所の港町は人口規模により近代の主要な港町を網羅していると推測できるため、本研究の対象とする。調査は明治末期から昭和初期の地形図(4)213枚(5)の比較により行う。地形図213枚はそれぞれ、スタンフォード大学のホームページ4)から165枚、

日本図誌大系5)10冊から46枚、国土地理院謄本交付サービスから2枚入手した。

4 地形と都市形態による港町分類4 -1 地形による港町分類方法(図1)  山地が迫っている地形である場合、水深が大きく港湾に適することが考えられるため、最初に山地の迫っている低地(6)に市街地が位置する港町を山際低地(7)、そうではない港町を一般低地(7)に分類する。次に一般低地から川幅1.5m以上(8)の河川の有無で海岸洲と河成低地に分類し、河成低地から河川の流路によってそれぞれ、扇状地、蛇行原、三角州に分類する。また、内海・湾に位置する地形である場合、波浪の静穏度が高く港湾に適する地形であると考えられるため、各5タイプからさらに港町が内海、または湾に位置するかで合計10タイプに分類する。

河川が通

ている

山地に囲まれている

河川の形状

網状流路

蛇行流路

分岐流路

内海・湾に位置する

位置する

位置しない

図 -1 地形による港町分類方法

対象地215ヵ所の港町

山際低地

一般低地・扇状地

一般低地・蛇行原

一般低地・三角州

一般低地・海岸州

山際低地一般低地・扇状地一般低地・蛇行原一般低地・三角州一般低地・海岸州

山際低地一般低地・扇状地一般低地・蛇行原一般低地・三角州一般低地・海岸州

YES

YESNO

NOっ

山際低地 平坦低地扇状地

平坦低地蛇行原

平坦低地三角州

平坦低地海岸洲

YES

NO

山地

市街地

市街地

市街地

市街地

市街地

河成低地

* 神山 裕作 非会員・新潟大学工学部都市計画研究室** 岡崎 篤行 正会員・新潟大学工学部建設学科 教授・博士 ( 工学部 )

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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2017 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, February, 2017

図 -5 都市形態による港町分類方法と結果

(14)

(31)(4)

(3) (49)

(54)

(36)(22) (2)

括弧内は港町の町数を示す。

街路が水域に沿う・沿わない分類基準(1) 地形図を目視して街路と水域の角度が 20 度以下である場合、街路が水域に沿うとする。(2) 河川の開削工事によって流路が変わった場合、本来の流路を準拠する。

補注街路 市街地

海川 川

街路が河川に沿う 街路が河川に沿わない

う沿に海が路街

に海が路街

いなわ沿

るす接に海が地街市

に海が地街市

いなさ接

河川海

市街地が河川に接する市街地が河川に接さない

市街地が水域に接する・接さない分類基準(1) 市街地から水域の距離が 10m 以下で接しているとする。(2) 市街地から水域の距離が 10m 以上あるが、その間が砂浜である場合接しているとする。(3) 埋立・干拓によって水域が本来と異なる場合は、その都市の地誌を確認して判断する。(4) 川幅が 1.5m 以下の河川は本研究の分類で扱う河川とは別とする。

4-2 地形による港町分類結果(表1) 山際低地の港町が124ヵ所に対し一般低地の港町は91ヵ所で山際低地の港町の方が多い。そのうち内海・湾に位置する港町(タイプA)が110ヵ所で、地形分類におけるタイプ中で最も多い。横浜を例として図-2に示す。内海・湾に位置しない港町は山際低地と一般低地の蛇行原にのみ存在する。内海・湾に位置しない港町のうち、山際低地の港町(タイプB)が14ヵ所に対し、蛇行原の港町(タイプE)が19ヵ所で、蛇行原の港町の方が多い。江差と新潟を例として図-3、図-4に示す。4-3 都市形態による港町分類方法(図5) 最初に海、または河川の港町か判断するために「市街地が海、または河川に接しているか」で分類し、次に近世型の港町は街路が水域に沿っていることが推測されるため、「街路が海、または河川に沿っているか」で分類することで、合計9タイプに分類する。4-4 都市形態による港町分類結果(図5) 市街地が海にのみ接し街路が海に沿わない港町(タイプ2)が54ヵ所で最も多い。また、タイプ5が4ヵ所、タイプ3が3ヵ所、タイプ9が2ヵ所で、他の都市形態タイプと比べて少ない。室蘭をタイプ2の例として図-6に示す。

表 -1 地形による港町分類結果

補注 括弧内は港町の町数を示す。

0

市街地は海に接する

河川は見られない

北側の街路は海に沿っているが、中央より南側の街路は格子状で海に沿っている様子はない

山際低地(124)

一般低地(91)扇状地(14) 蛇行原(43) 三角州(25) 海岸洲(9)

内海・湾に位置する(182)

タイプA110ヵ所横浜など

タイプC14ヵ所神戸など

タイプD24ヵ所青森など

タイプF25ヵ所東京など

タイプG9ヵ所

函館など

内海・湾に位置しない(33)

タイプB14ヵ所江差など

0ヵ所タイプE19ヵ所新潟など

0ヵ所 0ヵ所

図 -2 横浜地形図 (A タイプ )

0 2kmN

1

図 -3 江差地形図 (B タイプ )

タイプ9

タイプ8

タイプ7

タイプ1

タイプ2

タイプ3

タイプ4

タイプ5

タイプ6

図 -4 新潟地形図 ( タイプ E)

図 -6 室蘭地形図 ( タイプ 2)

1 2km

0 2kmN

1

0 2kmN

1

内海・湾に位置していない

新潟市街地

河川が蛇行流山地が迫った狭い低地でない

内海・湾に位置していない 山地が迫った狭い低地である

江差市街地

湾 ( 東京湾・横浜湾 )に位置している

山地が迫った狭い低地である

横浜市街地

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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2017 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, February, 2017

扇状地 三角州 海岸州外 内 内 外 内 内B C D E F G

1 ○稚内 ○余市 ○岩内 ○四方 △木更津 ○函館○小樽 △湾月 △大洗 ◎神戸 (太1 計1) △根室○増毛 △釜石 ○寺泊 ◎御影△気仙沼 △横須賀 ○糸魚川 (瀬2 日1△浦賀 △神奈川△大磯 △亀崎△渥美福江 △高浜

○出雲崎  計3)

○宮津 ◎福良

○平

◎由良 ◎黒崎

□石垣

◎下津井 ◎尾道

(日5 太1

◎阿賀 ◎瀬戸島

 東1 計7)

◎安下庄 ◎土生◎日比 ◎津田◎志度 ◎八幡浜△室戸 ◎大里○崎戸 □牛深 瀬18◎別府 ◎佐賀関 日13□鹿屋 □名護 太14

東4計49

2 △室蘭 △塩釜 ○松前 △伊達 ◎堺 △船橋△横浜 △三崎 ○江差 △小田原 ◎三田尻 △千葉△大浜 △常滑 □平良 ○魚津 (瀬2 計2) ◎泉佐野△尾鷲 △蒲郡 (日2 東1 ○滑川 ◎岸和田◎相生 ○浜田  計3) ◎丸亀 ◎貝塚◎笠岡 ◎玉島 ◎島原 (瀬3 太2◎連島 ◎仁保島 (瀬1 日2  計5)◎琴浦 ◎三原  太2 東1◎竹原 ◎鞆  計6)◎徳山 ◎久賀○須佐 ◎長府◎柳井津 ◎下関◎須恵 ◎坂出◎門司 ◎若松◎戸畑 ○富江○厳原 ○御領□垂水 □東南方 瀬25□西南方 □名瀬 日9□北種子 □那覇 太12

東8計54

3 □阿久根 ○新湊 △焼津 日1(東1 計1) (日1 計1) (太1 計1) 太1

東1計3

4 ○氷見 ○七尾 ○青森 △八戸 △品川○小浜 □鹿児島 ◎明石 △那珂湊 ○敦賀 瀬3□指宿 (日1 瀬1 ○金石 ◎高松 日6

 計2) (日1 太2 ◎今治 太3 計3) (瀬2 日1 東2

太1 計4 計145 △四日市 ○直江津 日1

△高知 (日1 計1) 太2(太2 計2) 計3

6 ○野辺地 ○川内 ○留萌 ○東岩瀬 ◎長州 ○柏崎 △東京○輪島 △伊東 (日1 計1) ○東水橋 (瀬1 計1) ○美川 ◎西宮○舞鶴 赤穂 (日2 計2) ○杵築 ◎広島△田辺 ◎湯浅 (日3 計3)◎撫養○萩 ◎宇和島 ○福岡◎三津浜 ◎小倉 ◎大分 瀬11○長崎 ○五島福江 (瀬4 日1 日15□水俣 ◎臼杵 太3□串木野 ○姪浜 東2

 太1 計6 計317 網走 大津 △石巻 △釧路 ◎伝法

◎洲本 ◎箕島 △清水 ○能代湊 ◎徳島◎川之江 ○松江 ◎高砂 ○酒田 (瀬2 計2)○唐津 □佐敷 □川尻 △銚子 瀬7◎佐方 (瀬1 日2 ○沼垂 日10

 東1 計4) ○新潟 太2○三国 東2○鳥取 オ1

琵1計23

� △相良 △川崎 △新居 △延岡 △八雲 ○土崎港 △吉田 △土浦△田原 ◎小松島 △新宮 (太1 計1) ○上磯 ○本荘 △熱田 ○米子

(太2 計2) △沼津 ○大野 △桑名△津 ◎大須賀 ◎大阪長浜 (日3 太1 ◎尼崎近江八幡  計4) ◎福山◎伏見 □八代◎淀 ◎中津◎飾磨 ◎鶴崎  ◎岡山 (瀬5 太3◎観音寺  東1 計9□大川 瀬12◎行橋 日5□隈之城 太14(瀬6 日1 東3 太3 東2 琵2琵2 計14) 計36

� △茅ヶ崎 今宮 瀬1�太1 計1� �瀬1 計1� 太1

計2日8 太3 瀬3 日6 瀬9 日4 日14 太5 瀬16 日2 瀬3 日2東3 計14 太4 計14 太6 東2 計19 太6 東1 太4 計9

琵2 計24 計25

�(内海・湾の)内

山際低地

(瀬16 日6 太11 東6計36)

�瀬19 日6 太11 東3

計38�

(日3 東2 計5)

― ―

(日1 太1計2)

蛇行原一般低地

― ―

― ―

― ―

― ― ―

(瀬6 日8 太2 東2 計18)

(瀬4 日2 東1 琵1 オ1 計9)

計215

瀬46 日24 太24東14 オ1 琵1 計110

(瀬1 太3 計4) (日1 太1 計2)

― ― ― ―

(日6 太2 計8)

―――

― ―

表 -2 地形による分類と都市形態による分類照合結果

凡例 ◎…瀬戸内海 ○…日本海 △…太平洋 □…東シナ海 無印…その他合計の凡例 瀬…瀬戸内海 日…日本海 太…太平洋 東…東シナ海       オ…オホーツク海 琵…琵琶湖補注 括弧内は港町数を示す。内海・湾に位置しない港町のうち扇状地、三角州、海岸州は該当する港町が存在しないため省略。下線の都市は昭和 15年の人口が 10 万人以上。

地形

都市形態

川にの

み沿う

海にのみ沿う

海と川

に沿う

どちらにも

沿わない

(

街路が)

海に沿う

海に沿わない

川に沿う

川に沿わない

(

市街地が)

海にのみ接する

海と川に接する

川のみに接する

市街地が

どちらに

も接さな

際低地で市街地が海にのみ接する港町が多いことが分かる。タイプA1のうち16ヵ所、タイプA2のうち19ヵ所が瀬戸内海の港町で、タイプA1、A2中では瀬戸内海の港町が他の海の港町と比べて多い。5-2 蛇行原に位置する港町(図-9、図-10) 蛇行原に位置する港町(タイプD、E)のうち、タイプ1、2、9は存在していない。よってタイプD、Eの全ての港町は市街地が河川に接していることがわかる。

図 -7 尾道地形図 ( タイプ A1)

図 -8 鞆地形図 ( タイプ A2)

図 -9 酒田地形図 ( タイプ E7)

5 地形と都市形態による港町分類結果(表2)5-1 最も多い港町タイプ(図-7、図-8) タイプA2が38ヵ所で最も多く、タイプA1が36ヵ所で次に多い。タイプA6が18ヵ所で3番目に多いが、タイプA1と比べて半数である。タイプA1、A2が目立って多く、山

0 2kmN

1

0 2kmN

1

0 2kmN

1

内海に位置している

山地が迫った狭い低地である 街路が海に沿う

内海・湾に位置している

街路は雑然としており海に沿っていないと判断される

山地が迫った狭い低地である

市街地は海に接する

市街地は海に接する

市街地は河川に接し街路は河川に沿う

山地が迫った狭い低地でない

内海・湾に位置していない

河川が蛇行流

尾道市街地

鞆市街地

酒田市街地

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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2017 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, February, 2017

参考文献1) 北見俊郎 (1993), 「港湾研究シリーズ⑨港湾都市」 , pp39, 成山堂書店2) 宮本雅明 (2005), 「都市空間の近世史研究」, 中央公論美術出版3) 高橋勇悦 (1982), 「港町の展開とその分類 -- 明治初期から大正末期まで( 家坂和之先生退官記念特集 )--( 現代社会の動態 )」, 社会学研究 (42・43), pp.127-1454)Gaihōzu: Japanese Imperial Maps, “Japan 1:50,000”, Stanford University Libraries, http://stanford.maps.arcgis.com/apps/SimpleViewer/index.html?appid=733446cc5a314ddf85c59ecc10321b41( 参照 2016.8.16)

補注(1) 水面が静かなこと、十分な水深をもつこと、潮流の速さが適当であることなど、船舶が安全に停泊する条件を本来の地形で満たす港湾。(2) 本研究における都市形態は、交通網、市街地、地形の形態など、5 万分の 1、2 万 5 千分の 1、2 万分の 1 の地形図から判断することができる都市の要素を指す。(3) 高橋氏の論文では、明治 22 年の市町村の範囲を基本にして、港をもった集落を港町と定義している。(4) 国土地理院 ( 測量当時は日本帝国陸軍 ) が測量、修正した地形図を利用した。分類に用いられた地形図は全て明治末期から昭和初期のものである。(5) 対象地 215 ヵ所に対して分類資料である地形図は 213 枚であるが、殆どの地形図の縮尺は 5 万分の 1 で、地形図 1 枚に対して複数の港町が掲載されていることがあるため、対象地よりも地形図の数が少なくなっている。(6) 地形は標高によって山地、台地・丘陵地、低地に分けられる。港町は港湾機能を持つため低地に位置することが推測される。よって本研究の地形による分類では低地から分類する。(7) 地形学の用語ではないが、本研究では便宜的に用いる。(8)5 万分の 1 の地形図では川幅 1.5m 以上の河川は二重線で表されているため、1.5m を基準として分類をした。

5-3 内海・湾に位置しない港町(図-11、図-12) 内海・湾に位置しない都市は風浪の影響で停泊に不向きな地形であると推測できるが、そのような港町も存在する。その港町であるタイプBの港町14ヵ所のうち日本海の港町は8ヵ所、タイプEの港町19ヵ所のうち日本海の港町は14ヵ所で半数以上の港町は日本海の港町である。5-4 扇状地・三角州に位置する港町(図-13、図-14) 扇状地の港町のうち、C2タイプが6ヵ所、C1タイプが3ヵ所、他の都市形態タイプが多くて2ヵ所であり、扇状地の港町は市街地が海にのみ接するタイプが多いことがわかる。三角州の港町24ヵ所中11ヵ所がは昭和15年で人口10万人以上で、地形タイプの中で最も多く割合も高い。

6 結論(1)近代における港町は山際低地で内海・湾に位置し、市街地が海にのみ接する港町が多く、瀬戸内海に多い。(2)蛇行原の港町は、全て市街地が河川に接している。(3)内海・湾に位置しない港町は山際低地と蛇行原にのみ存在し、半数以上の港町が日本海の港町である。(4)扇状地の港町は市街地が海にのみ接するタイプが比較的多い。三角州の港町は昭和15年で人口10万人以上の都市の割合が高い。

図 -10 石巻地形図 ( タイプ D7)

図 -11 出雲崎地形図 (B1 タイプ )

図 -12 土崎地形図 (E8 タイプ )

図 -14 広島地形図 ( タイプ F6)

図 -13 魚津地形図 ( タイプ C2)

0 2kmN

1

0 2kmN

1

0 2kmN

1

0 2kmN

1

市街地は河川に接する

街路は街道と平行に伸びているため河川に沿っていない

市街地は河川に接し街路は河川に沿う

湾 ( 石巻湾 ) に位置している

河川が蛇行流

山地が迫った狭い低地である

市街地は海に接し街路は海に沿う

日本海

日本海内海・湾に位置していない

内海・湾に位置していない

扇状地

魚津市街地

網状流路の早月川が通っているが

市街地と接していない

石巻市街地

出雲崎市街地

土崎港市街地

5) 山口恵一郎 , 佐藤恍 , 沢田清 , 清水靖夫 , 中島義一 (1972.6-1980.5), 日本図誌大系 , 朝倉書店 ,6) 岡本哲志 (2010.4), 「港町のかたち ―その形成と変容」, 法政大学出版局8) 池田宗雄 (2010.4),「港湾知識の ABC」, 成山堂書店

広島市街地

河川が分岐している

内海・湾 ( 広島湾 )に位置している

0 2kmN

1

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