界 数 間 構 し 相 間 と 化 的 に の 軸 造 対 の し 性 …...研 究 論 文 7 〉...

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ろう。」と、田辺は、絶対無を媒介とした複素数体系の歴史的構造

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Page 1: 界 数 間 構 し 相 間 と 化 的 に の 軸 造 対 の し 性 …...研 究 論 文 7 〉 ホ ワ イ ト ヘ ッ ド と 田 辺 元 に お け る 生 成 論 に つ

〈研

究論

ホワイトヘッドと田辺元における

生成論について

田辺元

は、理論物理学上の課題である相対論と量子論と

の統一

に関して新

方法論を提出し、相対論的空時世界の複素変数函数論

的性格を媒介にして、相対論の側

から両者の結合を原理的

に可能

化しようと試みる。相対論

において

は時間

を世界空間

の第四

次元

として扱い、時間

を空間化す

る。こ

れに対

して

、量子論で

は、空

の連続性

に対

する時

間の非連続性。量子

性を維持する。従

って、

相対

論と量子論

は、その世界存在の構造において対立す

る。し

し、田辺

は、数学上の位相学

がもつ連続即切断とい

う歴史主義的

構造

から相対論的世界

に位相学的性格

を見

る。そ

の世界空間

は時

間軸の方向

に虚数単位で測

られる故

に、空時世界

は単に実変数函

の双曲線的非ユ

ークリッド空間のみなら

ず、さらに複素変数函

の表現す

る世界

でもあると見る。そして

、この相対論的空時世

の複素

数的多次元

体系性と時間座標の虚数

表示

の原理的必然性

尾 崎   

を虚数の存在論的意味

から探る。

虚数に関して

は、数学的対象は関係の項

としてのみ存在するか

ら、実数と係り

なく存在し、両者

を外的

に結合して複素数が新

に成立す

るので

はなく、逆に先ず実数の拡張

として複素数

が成

し、その要

素として実数部

と虚数部とが定

立される。従

って、複

素数体系を表現する平面

は。自己否定性を媒介として、自己

の内

に矛盾的対立者を含み、モ

の矛盾的統一によぴ発展するとこ

ろの、

裏に無底の深み

を湛えた無的立体

に他たらない。それは「あたか

われ

われ

の歴史的自己E(個別)

が、自ら

の過去的伝統的存在

を、未来

的本質

に照らして自覚することにより、革新行為一

自由

主体として絶対無A

の現在に成立することに比

せられるであ

ろう。」と、田辺は、絶対無を媒介とした複素数体系の歴史的構造

を見る。複素数体系は自己

が自己

の函数

だる自己映写的自覚の統

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㎜ ・ 〃 ㎜㎜㎜ .I・ 一 一 一 一 一 一一

一であり、過去既存的

統一は裏に革新的未

来性を自己の映像とし

て伴

う。その平面

上に描かれる曲線

は、それに対

する自覚本質

映写面に

おける写像

を媒介として、無底の裏付けを有する表現

ならない。それ

は歴史的行為

的自覚の本質的構造を示

す、歴史

循環即発展

を支え

る行為主

体の自覚形式である。自己の内的本

を展開して、発展即還帰

、進出即遡源という自発

自立性を実現

するところに、複素変数函数論

の特

徴がある。複素函数における

収斂円

は、曲線上

の各点

が一

々複素数に相当し、無に裏付

けられ、

それ

を自己の本質

的根底として自由

を自覚

するとこ

ろの地

盤を象

する。それ

が相互独

立・完結にして

、し

かも接続

され

るとこ

に歴史の非連続的創造即連続的発展

の構造

が表明さ

る。「複素

変数函数論

の世界こそ、ま

さに具体的

には歴史主義的構造

を有す

べき相対性論的空時世界

を、数学的

に表現す

る筈のもので

はない

か。」

として、アイ

ンシュタイ

ンやミ

ンコフスキ

ーも空時

世界

複素変数函数論的構造には思い到らなかった、と指摘する。

そして、相対論

的世界

の幾何学的表現としての双曲線的性格

別の存在論的必

然性

をもち、従来この点を見過ごして、時間を

世界

空間

の第四次元と予

め前

提したことが、相対論

的世界

構造を

見誤らせた。時間が現在を中心として過去と未来とに亘り転換的

交互

性を維持しつつ対

立する構造は、まさに双曲

線的で

ある。過

と未来

とが交互

的に否定対

立しな

がらその交互規定

が渦動的

環的

に統一

され

る限り

、そ

の現在

の中心

の各

々の周囲に円環

が描

かれつつ接続

されて

、現在から現在へと時

が推移する。こ

の渦流

は数学的

には解析

接続

であり

、その収斂円は過去と未

来とが交互

転換的限定

において

その位置

を交換しえるように準同

・比論性

立させ

る範囲

を表す

。そこで

は各現在の局所性

が揚棄され不確

定化

されて、非局所的

となる。ここに時間

と空間

とは区別

される。

過去と未来との等方性・比論性は、各現在を中心とする有限部分

おいてのみ成立し、そ

のような中

心に相関的

な局所性を離れて、

過去と未来との全体に旦り両者の比論・準同性を確定することは

できない。時間軸に関しては、空間軸におけ

るように実数系列の

系列として

座標を全体的に完結

させることはできず、虚数座標

もって表現

し、双

曲線的にその両方向、過去と未来

とを隔離・背

馳せしめる

れが時間

を空間

に還元不可

能にする。全体

の双曲

線的構造が、単に局部的にのみユークリッド的平直性を呈し、系

列の系列

とい

う多

次元

的循環性

を示す。そのような局部的

循環性

が現在

から現在

へと切

断されながら接続されることにより

、相対

論的空時世界

が当

然に複素

変数

の函数関係において具体化

され、

その変数の変化の過

程、物理学的には運動の力

学的経

過が、解析

接続によ

って表現

される。その解析接続の要素

となる等質等方性

が、微視的物理学的に量子性として解

釈されるなら

ば、そこに複

素変数函数論の位相学的性格を媒介にして、相対論

と量子論

とを

結合・統一

する途

を見出すこと

ができよう。

殊相対論

が双曲線空間によ

って表現されるのに対

して、一般

Page 3: 界 数 間 構 し 相 間 と 化 的 に の 軸 造 対 の し 性 …...研 究 論 文 7 〉 ホ ワ イ ト ヘ ッ ド と 田 辺 元 に お け る 生 成 論 に つ

相対論の幾何学的表現は空間曲率正の楕円空間、リーマン空間で

ある。この特殊から一般への拡張は、単なる形式的な区別ではな

く、立場の逆転という主体的否定を含む内容的二律背反的対立の

弁証法的転換を意味する。前者の双曲線空間の絶対否定を通じて

後者の純粋空間たる理念を実現する。双曲線的空間と楕円的空間

の関係について、「個体的主体の絶対無的行為が、構造上種

立に比せられるべき前者すなわち双曲線的空間を絶対否定して、

類的統一たる後者すなわち楕円的空間をその復活に対する根柢と

なし、同時に前者を後者の実現具体化に対する否定契機として、

双方を弁証法的に媒介し、もって純粋空間の理念としてのリーマ

ン空間をぱ、『世界』空間にまで現実化することにより、「始めて

特殊相対性論から一般相対性論への拡張を可能ならし

る。」と

いう。

ところで、複素平面においては空間次元と時間次元とは外的に

結合するのではなく、内部から自己否定的に両次元を滲透・交徹

せしめ、単なる平面に止らず。複素函数として自発自展す

べき深

さをもつ。その自己否定的契機の動的深部的擬立体性から、複素

平面上の直線が双曲線的に互に背離して交ることがない。この双

曲線的背離構造が一般相対論世界の楕円的閉合空間にいかにして

包まれるのか。その解決として、田辺は、複素函数の解析接続に

おける収斂円がその内部においてはどの径路をとっても同一の可

想極限に収斂し、その間に相互の分裂・背離のないことに着眼す

る。「

双曲線的『世

界』の自己分裂性は、一般に低次元形象

が高次元

形象に於て自己還帰的統一にもたらさるる如

く、複素

数的『世界』の深部擬立体性

に依り

、楕円的『世界』の自己還帰

的統一にまで揚棄せられる。

その矛盾的統一

の全体を、局

所的に

象徴するのが、すなわち収斂円に外ならない。」双曲線空間の複

素数的構造はそ

の自発自展性

により楕円空間

の収斂円的閉鎖集合

の内部に包括されるのは、連続性の要素を空間的点としてではな

く、動的緊張的「切断」として把え、それを非連続即連続の連続

体に

おけ

る局所的即非局所的な要素

とし、その含む弁証法的否定

的統一

が対自的

に展開される場合で

ある。その時

、解析接続の要

たる収

斂円の自由不

確定帯において

、双曲線的背離が同時に相

交るという矛盾が止揚される、とする。こうして複素函数論的構

造は特殊相対論の双曲線空間と一般相対論の楕円空間とを統一す

る媒介契機となり、その際に生じる世界の時間次元

の不確定性こ

そ、量子論の時間量子

性に対応す

。相対論の世界は、静

的固定

的に分

散する出来事の集合で

はなく、実践的個体の局所的即非局

所的な渦動的統一として自発・自展

する動的連続であり、それ

表現す

るのがリ

ーマン空間

的一般相対論

の世界

に他ならないので

る。

他方

、ホワイ

トヘッドは、生成

と同様

に消滅

にも力点を置くが、

れは非

連続

の連続に対応しよう。消滅は時間

的には過去であり

過去

は客

体化

されたも

のとして残るとい

う客体的不滅性こそ、彼

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一 一 -- ●・   一 一 一 一 一一 一●- -

の思

想の核心をなす。そ

れは、行為的

媒介

の結果

が伝統として維

持されるという田辺の立場

とも対応

る。田辺

は、「

歴史には、

歴史以

前に発する絶対

の始

めというも

のはない。

どこまでも過去

が未

来に対

し交互的相関相対的であるという

が、

史の根

本性

格」だとする。過去

を前提

とす

で、

ホワイ

トヘッドも

「各

契機は先

行する世界

をそれ自身の本質において活動的

なも

として前提す

る。」という。過去はその主体性を失

って

現実

を失

わず

、因果性

を構成する。田辺は、過去からの蓄積

として

ポテ

ンシャル・

エネルギ

ーを「

将来の運動の可

能性として貯蔵せ

られる

ところ

の過去

の転

換的持

続性」

と規定

し、現実の運動に先

行するとす

る。し

かも、それは同一性

的有で

はなく、自己否

定的

無的基底とい

う性格

をもつ。ホワ

イトヘッド

は、「

それ自身の生

きた直接性

を奪いとられたもの

が、生成

の他

の生きた直接性にお

いて

、実在的

な構成要素

となる、つまり

生きて

いるものによる死

んだも

のの我

有化

が、客

体的不

滅性」だという。それは田辺のい

う「有って無ぐ、無くして有るもの、無に於ける持続」とも対応

し、過

去が純粋な無に帰してしまわない点で

、両

者は一致する。

ホワイ

トヘッドはこ

の過去の客

体的不

滅性を頑固

な事

実ともいい、

これ

が近代哲学

の最

も弱い点で

あると指

摘す

る。

ホワイト

ヘッドの生成

論では、生成

の主体

がその生成を完成す

ると主体的直接性を失い、スーパージェクト(脱体)となってそ

の客体的不

滅性

を得る。つまり

、消

滅した過去

は頑固

な事

実とし

て残る。こ

の過去

の力

が次の新しい生成

の主体に

とって与件とし

て機能するの

が、作用因である。それは事実に

おける潜勢態(リ

ル・

ポテン

シャ

ル)であり、それに対して概念的な潜勢態

は現

実性を欠如したものとして永遠的客体(純粋な

ポテン

シャル)

別される。ところで、とれら二

つの概念、客体的不

滅性として

機能する脱体

としての頑固な事実と永遠的客体とは、それぞれ

の業

と法

の概念とも通ずるところ

があろう。それはさて

おき、

ホワイ

トヘッドは現実的個物(アクチュア

ル・

エンテ

ィテ

ィ)に

関して二

様の在り

方を区別

する。すなわち主体(

直接性)と脱体

(客体的不滅性)

である。「現実的個物は主体

的にはたえず

るが、客体的には不滅である。」「現実的個物は、それ自身の生成

の直接性

を支配

する主体であり、またその客体的不滅性

の機能を

行使する原子的な被造物である脱体とみなしうる。」主体性の消

によ

って客体

的不

滅性を機能する脱体

は有であり

、あらゆる生

にと

って

ポテ

シャルとなる。ここに実体

の形而上学

から生成

の優位

とい

う転

換が見

られるが、これは量子力学

の影響

があろう。

消滅の分析によって、ホワイトへッドは、主体がその生成の直接

を喪失し

た後

の過去

の様態について

、脱体

、客体的不滅性、頑

な事実

として規定す

る。また絶対

性の消滅

は、客体的不滅性の

達成であ

る。そ

の絶対性

とは、生成の自己

実現

の絶対性であり、

個別的契機

は、

その最

終的主体的形

式の形成的直接性

における絶

対的実在として、「

その絶対的な自己達成

の決定的瞬間

を情

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統一として享受する。」そして完成は直接性の消滅であり、脱体

は生成の完成し終

った状態を指示

する。満足とは、脱体である。

それ

はそ

の個物

を閉鎖す

る完成

の意であ

る。「満足の達成と

、目的因

の直接性

は失

れて、こ

の契機

はその客体的不滅性

へと

移行し、この客体的不滅性の故に作用因が構成される。」過去は、

れがかつて主体であった時

と同

様に、脱体として依然として現

的であり、従

って活

動的である。その過去

が近

いものであれ、

あるいは遠いものであれ、直

接的にも間接的にも現在に働いてい

る。これ

が過去の客体的不滅性の効果であ

る。

このよ

うに主体

から脱体

への移行

は、因果性

を構成

して、時間

の累積性

、従

って時間

の不可逆性

を形造

る。「時間

の不可逆

客体的不滅性から導き出される。」ホワイトへッドによれば、時

とはたえず滅することであり、また取

って替わられることで

ある。それは生成から有への移行に、主体から客体(脱体)への

地位の変換に他

なら

ない。そして、客体

と化

した先行

の現実態

後続す

る新

たな主体

に対

して影

響することでもある。これが客体

化論

である。

それは、特定

の現

実的諸契機

がい

かにして新たな創

にと

っての原生的要素となるかということである。

つまり、一

つの現実態

が他の現実態に内在す

る関係であり

、原因

から結果

ベクトル的流れを呈する。そして、そこで

は先行

した過去

が新

しい現在の主体

にとって再生

され、再演

される

が、それはすべて

の過去

が再演

されるのではなく、部分的

にのみ再生

され、付加

体的にある。」原因(過去)から結果(現在)への移行が、時間

物理的存在は常に原因から結果への転移を示すベクトル的性格を

相対性理論に関してホワイトへッドは、アインシュタインは数

しないという。その代りに、多様な空間一時間の体系を提示する。

と見るが、この一般相対論は単に先験的構成に止らず、さらに観

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(3) 『相対性理論の弁証法』(全集第十二巻)三七九-二八〇頁。

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(8) A

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