再生医療等製品の無菌製造法に関する指針1 (別添1)...

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1 (別添1) 主任研究者:櫻井信豪(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審議役) 再生医療等製品の無菌製造法に関する指針 再生医療等製品の無菌製造法に関する指針」作成班 分担研究者紀ノ岡正博 (国立大学法人大阪大学) 協力研究者池松 靖人 (株式会社日立プラントサービス) 大岡 和広 (セルジーン株式会社) 佐藤 陽治 (国立医薬品食品衛生研究所) 鮫島 正 (テルモ株式会社) 中村 奈央 (大日本住友製薬株式会社) 三浦 巧 (国立医薬品食品衛生研究所) 水谷 学 (国立大学法人大阪大学) 宮武 佑樹 (ムンディファーマ株式会社) 森 由紀夫 (株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング) (独立行政法人医薬品医療機器総合機構、医薬品品質管理部) 倉持憲路、鳴瀬諒子、植田真美、大森一二、近藤耕平、寶田哲仁、平山恵美子

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(別添1)

主任研究者:櫻井信豪(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審議役)

再生医療等製品の無菌製造法に関する指針

「再生医療等製品の無菌製造法に関する指針」作成班 分担研究者: 紀ノ岡正博 (国立大学法人大阪大学) 協力研究者: 池松 靖人 (株式会社日立プラントサービス) 大岡 和広 (セルジーン株式会社) 佐藤 陽治 (国立医薬品食品衛生研究所) 鮫島 正 (テルモ株式会社) 中村 奈央 (大日本住友製薬株式会社) 三浦 巧 (国立医薬品食品衛生研究所) 水谷 学 (国立大学法人大阪大学) 宮武 佑樹 (ムンディファーマ株式会社) 森 由紀夫 (株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング) (独立行政法人医薬品医療機器総合機構、医薬品品質管理部) 倉持憲路、鳴瀬諒子、植田真美、大森一二、近藤耕平、寶田哲仁、平山恵美子

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目 次

1. 序論

2. 適用範囲

3. 用語の定義又は説明

4. 要求事項

4.1. 製造環境

4.2. 原料等及び操作

4.3. 微生物管理試験

5. 製品の作業所

5.1. 作業所の分類

5.2. 構造設備

5.3. 無菌操作等区域を構成する構造設備の分類

5.4. 環境モニタリング

6. 製造設備及びユーティリティ

6.1. 一般要件

6.2. 適格性評価

6.3. 維持管理

6.4. 校正

6.5. 変更管理

7. 作業所の衛生管理

7.1. 洗浄剤及び消毒剤

7.2. 清浄化及び消毒

7.3. 手順のバリデーション

7.4. 清浄化及び消毒の実効性のモニタリング

8. 職員

8.1. 職員の教育訓練

8.2. 職員の健康管理

8.3. 職員の監督

9. 更衣

9.1. 一般要件

9.2. 開放式設備を用いる場合

9.3. アイソレータシステムを用いる場合

10. 原料等及び工程資材の管理

10.1. 一般要件

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10.2. 出発原料としてのヒト細胞

10.3. 細胞以外の原料等

10.4. 工程資材

10.5. 滅菌

10.6. 供給者管理

11. 無菌操作要件

11.1. 一般要件

11.2. 原料等及び工程資材の搬入

11.3. 無菌操作等区域の開放作業

11.4. 充てん・包装

11.5. 保管

12. 無菌操作工程の適格性評価

12.1. 一般要件

12.2. 無菌操作工程の適格性評価方法

12.3. 無菌性保証に関する運用管理

13. 微生物学的試験

13.1. 無菌試験

13.2. マイコプラズマ否定試験

13.3. エンドトキシン試験

14. 微生物迅速試験法

14.1. 微生物迅速試験法の適用

14.2. 微生物迅速試験法のバリデーション

【参考情報】

A1. HEPA フィルターの完全性

A2. 無菌中間製品の保管及び輸送の管理

A3. 滅菌工程

A4. 無菌製造設備の定置洗浄化(CIP)

A5. 無菌製造設備の定置蒸気滅菌(SIP)

A6. 無菌充てん工程

A7. ろ過滅菌工程

A8. バイオハザード対策用キャビネット/アイソレータシステム/バリアシステム/ブ

ローフィルシール

A8.1. バイオハザード対策用キャビネット(安全キャビネット)

A8.2. アイソレータシステム

A8.3. アクセス制限バリアシステム (RABS)

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A8.4. ブローフィルシール

A9. 製薬用水

A10.有害生物管理

A10.1. 一般要件

A10.2. 有害生物管理プログラム

A10.3. 防除対策

A11. バイオセーフティ及びバイオセキュリティ対策

A12.試験検査

1. 序論

本指針は、再生医療等製品の製造に係る製造業者及び薬事監視員に対して無菌性保証に

関する基本的な考え方及び製造管理のあり方を示し、再生医療等製品に係る品質の確保に

資することを目的とする。

再生医療等製品は、主に、ヒト由来の細胞・組織から得た、生きた細胞等を用いるため、

多くの点で医薬品と異なる特性を有する。例えば、製造において最終滅菌法やろ過滅菌法

にて製品を無菌化できないため、製造開始から出荷まで、全工程を通して無菌操作を行う

必要がある。その際、できる限り外部からの微生物等の混入リスクが低減できる、製造工

程、構造設備あるいは工程資材等を設計・導入し、継続的に運用することが求められる。

一方で、再生医療等製品の製造工程では、単純な対数的増殖を進める増幅(拡大)培養

とは異なり、不安定な幹細胞・体性細胞を目的の機能を有する細胞へと変化させる等の工

程を含んでいる。そのため、原料である細胞に対しては速やかな作業が必要で有り、無菌

性確保のための処置や作業に長く時間をかけられない場合がある。

再生医療等製品は、生きた細胞そのものが期待される効能効果・性能発揮をするため、

多様で複雑な品質特性を有する。一方、試験にて品質特性を正確に把握することは容易で

はないことから、従来の無菌医薬品製造とは異なり、種々の操作においては、操作環境並

びに動作が細胞品質特性に変動を生じさせるリスクが存在する。そのため、再生医療等製

品の製造工程の管理では、ロット内の製品間における品質の均質性を維持するため、操作

時間の変動による細胞品質の変化について留意し、環境や動作の再現性・互換性を確認す

る必要がある。さらには、再生医療等製品の製造工程の多くは、主に作業者による手作業

となるため、取り扱う細胞の特性や実施する培養作業の本質的な理解が十分でないと、一

定の品質の製品を製造ごとに得ることは容易でない。よって、製造管理及び品質管理に係

る従事者の教育訓練のレベルが製品品質に大きく影響することを理解し、製造工程を管理

することが重要である。特に、原料に均一性がなく、製造工程の変動パラメータが製造の

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初期に明確にできない場合もあり、種々の工程において限られたロットで製造プロセスの

堅牢性を確認することが困難な場合が多い。このような場合、個々の製品の品質特性や 作

業手順、方法又は作業環境等を考慮し、製造活動の中で品質の確認を行い、製品品質を確

保することが重要である。また、再生医療等製品の形態や製造方法は多様であり、その無

菌操作における微生物汚染のリスクを、画一的な方法で評価することは、一般的に困難で

ある。よって、個々の製品の特性や製造方法に応じた実効的な管理ができるよう、無菌性

保証に係る管理戦略を確立することが必要である。

最終製品の品質確保においては、再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関す

る省令(平成 26 年厚生労働省令第 93 号)(以下「GCTP 省令」という。)に則り一貫した

品質システムを構築した上で、製品の特性に応じて適切な製造管理及び品質管理を実施、

運用する必要がある。本指針においては、GCTP 省令に準じ、品質システムの中でも特に、

無菌性の維持に関する考え方を示す。なお、GCTP 省令、規制当局からの通知等による要

求事項以外は、本指針と同等以上の、又は合理的な根拠に基づく他の方法により製品の品

質が確保される場合においては、一律に本指針に示す方法の適用を求めるものではない。

2. 適用範囲

本指針は、無菌操作法により再生医療等製品の製造を行う製造所での、構造設備並びに

製造管理及び品質管理に適用する。ただし本指針における再生医療等製品は、遺伝子治療

を目的として人の細胞に導入して使用する製品を除く。

3. 用語の定義又は説明

3.1. アイソレータシステム: 製品への汚染を防止する構造設備のバリア形態で、原則

として外部に対して開放部が無く、物品の導入出時においても外部との隔絶が維持される、

無菌操作等区域を構成する構造設備の方式。

3.2. 開放式(構造設備): 製品への汚染を直接的に防止する構造設備のバリア形態で、

外部に対して開放部がある無菌操作等区域を構成する構造設備の方式。

3.3. 原料等: 原料、材料、原材料及びその他の試薬の総称をいう。例えば、原料には

出発原料としてのヒト細胞、材料には足場材料等、原材料には培地・培地添加成分(血清添

加物、成長因子、サイトカイン等)、その他の試薬として緩衝液・酵素等が該当する。

3.4. 構造設備: 作業所における製造に必要な環境を維持するための建築物並びに設

備。

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作業室や管理室等のレイアウトに加え、各作業室の仕様や清浄度維持に必要な空調システ

ムを含んでいる。

3.5. 工程資材: 製品及び中間製品に直接あるいは間接的に接触し、無菌性の確保に影

響を及ぼす資材で、「原料等」に含まれないものをいう。例えば、培養フラスコ、遠心チュ

ーブ、ピペット、チップ、フィルター、製品が直接接触する容器(1 次容器)、あるいは培

地・培地添加成分の保存容器等が該当する。本指針では、最終製品に含まれる、GCTP 省

令の「資材」に相当する 1 次容器も工程資材に含める。

3.6. 作業所/作業室: 作業所とは、製造作業を行う場所を指す。作業所のうち作業室

は、作業所のうち製造作業を行う個々の部屋をいう。製品の種類、剤型及び製造工程に応

じ、塵埃又は微生物による汚染を防止するのに必要な構造及び設備を有している。

3.7. 消毒: 一般的には、病原菌など有害な微生物を除去、死滅、無害化することであ

り、本指針では対象物又は対象物の表面等の局所的な部位に生存する微生物を減少させる

ことを指す。

3.8. 除染: 空間や作業室を含む構造設備内に生存する微生物をあらかじめ指定された

菌数レベルにまで減少させる処理を指す。

3.9. 清浄: 浮遊微粒子及び微生物などが低減されており、品質に影響を与えない状

態。

3.10. 清浄化: 品質に影響しうる汚れや粒子などの異物を取り除くことで、キャリー

オーバーを含む汚染の原因とならないように処理すること。清掃や無菌化等の必要な処理

が実施される。

3.11. 清浄度: 浮遊微粒子及び微生物などが品質に影響を与える汚染の度合い。

3.12. 清浄度管理区域: 作業所のうち、製品等(無菌操作により取り扱う必要のある

ものを除く)の調製作業を行う場所及び滅菌される前の容器等が作業所内の空気に触れる

場所。

3.13. 清浄度レベル: 本指針では環境空気の単位体積当たりに含まれる浮遊粒子数と

モニタリング手法に応じた微生物コロニー数とによって区分された清浄度の階級。

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3.14. 清掃: 空間に対して、主に異物を取り除く処理を指す。

3.15. バリア形態: 対象となる構造設備において、外部からの汚染を防止(バリア)

する形態。

3.16. バリア性能: バリア形態により変化する汚染防止の能力。

3.17. 無菌化: 汚染源を消毒又は除染・滅菌により無菌状態(Aseptic な状態)に処理

すること。

3.18. 無菌性: 本指針においては外来性の菌汚染が無いこと。

3.19. 無菌操作等区域: 作業所のうち、無菌操作により取り扱う必要のある製品等の

調製作業を行う場所、滅菌された容器等が作業所内の空気に触れる場所及び無菌試験等の

無菌操作を行う場所。

3.20. 有害生物: 製造環境にとって不要な動物(小動物や昆虫類等)の総称。

3.21. 連続モニタリング: 計画された対象期間又は時間において、連続的に実施され

るモニタリング。

3.22. ろ過滅菌用フィルター: 微生物捕捉性能が検証されたフィルターを指す。一般

に、適切な条件下で培養された指標菌 Brevundimonas diminuta (ATCC 19146、 NBRC 14213)

又はこれより小さな適切な菌を用いて、フィルターの有効ろ過単位面積(cm2)当たり 107

CFU 以上をチャレンジし、フィルターの二次側に無菌のろ液が得られることを保証する。

4. 要求事項

再生医療等製品の無菌性を保証するためには、製造における環境、原料等及び工程資材、

操作に対し品質リスクマネジメントを実施することで、製品に対する微生物汚染リスクを

低減し、試験及び検査の適切な実施により評価することが求められる。

GCTP 省令に適合するためには、上述を考慮し、適切な組織構成、手順、工程、資源等

を用意し、製品の無菌性を保証する信頼性を確保すること。その際、工程中での製品の微

生物汚染を回避するために必要な管理基準を設定し、適切な製造管理及び品質管理に係る

体制を構築すること。また、各製造所、各製品における固有のリスクに柔軟に対応した、

適切な検証方法を含むこと。

適切な製造管理及び品質管理を実現するために、以下の項目を満たすこと。

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4.1. 製造環境 1) 製品の作業所 (5章)

製品の無菌性を維持するために作業所の環境基準を決定し、適切に汚染リスクを低下

させる構造設備をもって作業所を構築し、維持されていることをモニタリングし、確

認すること。

2) 製造設備及びユーティリティ (6章)

作業所に設置される製造設備及びユーティリティは、設置環境における清浄度を満た

すよう設計し検証すること。

3) 作業所の衛生管理 (7章)

作業所では、種々の定常的な生産活動により清浄度が低下するため、日常的又は定期的

に適切な清浄化をもって作業所を管理すること。また、メンテナンスやトラブル等の非

定常的な負荷に対しても、適切に清浄度を回復できること。

4) 職員 (8章)

製造に従事する職員は、製造環境の維持に必要な知識及び技能を有していること。ま

た、作業時においては作業に適した健康状態であること。

5) 更衣 (9章)

作業者は作業所並びに製品に対する汚染源となるため、更衣により適切に汚染リスク

を低下させること。

4.2. 原料等及び操作 1) 原料等及び工程資材の管理 (10章)

製造工程で使用する原料等及び工程資材については、用途、使用される環境、製品と

の接触の有無等を考慮して、製品の無菌性を保証できるよう適切な管理手順を構築す

ること。

2) 無菌操作要件 (11章)

再生医療等製品の製造工程における無菌操作では、微生物汚染リスクを低減するため

に、作業の種類に応じて適切な清浄度の環境で作業すること。また、作業を行う環境

への原料等及び工程資材の搬入に関わる消毒又は除染・滅菌の手順及び動線を設定

し、搬入による微生物の持ち込みを回避すること。

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3) 無菌操作工程の適格性評価 (12章)

製品の無菌性に影響を及ぼす全ての工程における作業手順、構造設備、原料等及び工

程資材、及び職員等を管理するシステムを設計し、適切な時期にバリデーションを行

い、無菌操作工程の適格性を確認・評価すること。必要に応じて、計画的に製造開始

後の重要工程パラメータ、環境モニタリングデータ、職員の動作、原料等及び工程資

材の受入管理状態などの品質情報を継続的にモニタリングすることで、適格性評価を

補完すること。

4.3. 微生物管理試験 (13 章、14 章) 工程内管理試験及び出荷試験において、微生物学的試験法により無菌性を保証するシス

テムを構築すること。試験結果の判定に時間的制約等がある場合には、微生物迅速試験法

の採用を検討すること。

5.製品の作業所

5.1. 作業所の分類 再生医療等製品に係る作業所は、外部からの浮遊微粒子及び微生物による汚染の程度が、

定められた限度内に維持されるよう管理された区域であり、その作業内容により、無菌操

作等区域と清浄度管理区域に分類される。

1) 無菌操作等区域は、無菌操作(製品等及び工程資材並びこれらと直接接する面が環境

に曝露される製造作業)を行う領域であり、微生物及び微粒子を許容レベル以下に制

御するために、供給する空気、原料等及び工程資材、構造設備並びに職員を高度に管

理した環境であり、無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針(平成 23 年 4月 20 日付事務連絡、以下「無菌医薬品製造指針」という。)における、グレード A 環

境にすること。

2) 清浄度管理区域は、区域の役割に応じてさらに分類され、役割に応じた清浄度レベル

が要求される。無菌医薬品製造指針の清浄度レベルの範囲(グレード A~D)から、

作業内容に適した清浄度レベルを設定すること。また、隣接する無菌操作等区域を構

成する構造設備のバリア形態(開放式/アイソレータシステム)により清浄度レベル

の下限が異なることに注意すること。構造設備のバリア形態については「5.3.無菌

操作等区域を構成する構造設備」を参照のこと。

3) 各清浄度レベルに求められる環境微生物の管理基準は、モニタリング手法に応じて無

菌医薬品製造指針を参照し、適切に決定すること。

5.1.1. 無菌操作等区域 無菌操作等区域は、製品への汚染を直接的に防止する構造設備を用いて、製造作業にお

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いて製品の無菌性が維持できるよう設計されなければならない。

1) 製品、原料等及び工程資材が環境に開放されることにより、製品の無菌性に直接影響

を与える空間となる領域を無菌操作等区域とする。気流がある場合は、その上流側を

含む空間とする。

2) 無菌操作等区域は、構造設備のバリア性能に影響を与える、少なくとも内部操作に伴

う外乱を抽出し、開放操作におけるリスクアセスメントにおいて、清浄度が管理基準

を満たすことを評価すること。開放を伴わない作業に対しては、必要に応じて次の開

放操作を開始する前に、非作業時の状態での清浄度が回復するための条件を明確化す

ること。

3) 無菌操作等区域の設定においては、無菌操作等区域の汚染に対するリスクアセスメン

トを実施し、汚染リスクを可能な限り低減する構造設備を検討すること。リスクアセ

スメントは汚染リスク全般に対し実施されるが、その中で、次の項目についての確認

を含むこと。

① 工程資材(外装表面)のバイオバーデンレベル

② 職員の入室頻度

③ 気流の方向/境界部分においてキャリーオーバーされる可能性

④ 微粒子数の回復時間

4) 製品の無菌性を確保する上で特に重要な箇所をリスクアセスメントにより特定し、浮

遊微粒子数及び微生物数について適切な方法及び頻度によりモニタリングを行うこ

と。開放作業中に無菌操作等区域を直接測定することが困難な場合は、例えば、作業

履歴を反映するモニタリングポイントや無菌性に影響を与える外乱要因等のモニタ

リングを組み合わせることで、清浄度の適格性が検証されたワーストケースと比較で

きること。

5) 粉末を扱う製造作業においては、稼働時に浮遊微粒子数の規定を満足することができ

ない場合がある。そのような場合においては、空気のサンプリング箇所を工夫する、

粉末がない状態で測定を行う等の方法により、実際に汚染の原因となる微粒子のレベ

ルを把握し、目的とする空気の品質が維持されていることを確認すること。

5.1.2. 清浄度管理区域 1) 清浄度管理区域は、無菌操作等区域の支援区域であるほか、滅菌前の工程資材が、環

境に開放される製造作業を含む区域である。無菌操作等区域に隣接し、上位の清浄度

への影響を考慮すべき区域と、無菌操作等区域に隣接せず、滅菌前の細胞以外の原料

等又は工程資材に係る調製を行う区域や、無菌操作等区域で使用する機器、器具等を

洗浄する区域等から構成される。

2) 清浄度管理区域のうち、無菌操作等区域のバックグラウンドとして定義される場合、

清浄度レベルの設定においては、製品への汚染を直接的に防止する構造設備のバリア

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形態に加え、支援作業が与える影響を考慮すること。開放式の構造設備内で無菌操作

が行われる場合は無菌操作等区域のバックグラウンドをグレード B とし、アイソレー

タシステムのように原則として開放部位を持たない構造設備又はそれと同等の環境

下で無菌操作が行われる場合は、品質リスクに応じてグレード D 以上の清浄度レベ

ルを設定すること。

無菌操作等区域の清浄度に対する影響度について行うリスクアセスメントに際して

は、上位の清浄度への汚染リスクを低減するために、次の項目についての確認を含む

こと。

① 工程資材のバイオバーデンレベル

② 職員の出入り頻度

③ 境界部分におけるバイオバーデンのキャリーオーバー

④ 微粒子数の回復時間

3) 清浄度管理区域のうち、無菌操作等区域のバックグラウンドとして定義されない区域

の場合は、当該区域における作業に適切な清浄度レベルを設定すること。なお、当該

区域内にて処理された対象物に伴い製品に混入するおそれのある異物が確実に除去

できない場合は、グレード C 以上の管理基準とすること。

4) 秤量や滅菌前の調製工程はグレード C 以上の環境で行うことが望ましい。粉体を扱

うことにより、作業時に浮遊微粒子数の規定を満足することができない場合におい

ては、空気のサンプリング箇所を工夫する、粉末がない状態で測定を行う等の方法

により、実際に汚染の原因となる微粒子のレベルを把握し、目的とする空気の品質

が維持されていることを確認すること。

5.2. 構造設備 本指針における構造設備とは、作業所における製造に必要な環境を維持するための建築

物ならびに設備である。作業室や管理室等のレイアウトに加え、各作業室の仕様や清浄度

維持に必要な空調システムを含んでいる。

本指針は外来性の菌汚染リスクを管理対象としているが、再生医療等製品の製造におい

ては、非滅菌の生物由来原料を用いるケースも想定される。これらの取扱いにおいては本

指針に加え、少なくとも「国立感染症研究所病原体等安全管理規定」、「生物学的製剤等の

製造所におけるバイオセーフティの取扱いについて」(平成 12 年 2 月 14 日医薬監第 14

号)、その他関連する規定などを参考にすること。

5.2.1. 一般要件 1) 再生医療等製品に係る製品を製造するための区域は、清浄度管理区域と無菌操作等区

域に分類される。

清浄度管理区域と無菌操作等区域には、そこで行われる作業に対して適切な清浄度レ

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ベルを維持するため、HEPA フィルター等の適切なフィルターによりろ過した空気を

供給し、適切な差圧を設けるかバリア性能をもたせるとともに、差圧やバリア性能が

維持されていることを監視できるようにすること。

2) 汚染リスクと、清浄度を維持する目的に応じて、清浄化(清掃)、消毒又は除染・滅菌

が可能な構造とすること。

3) 無菌操作等区域及び清浄度管理区域はトイレ、飲食等を行う場所から明確に区分され

ていること。

4) 無菌操作等区域及び清浄度管理区域は作業毎に明確に区分され適切な広さを有する

こと。

5) 職員、製品等及び工程資材、廃棄物等の流れ並びにそれらの管理が容易になるよう、

かつ各動線の交錯が少なくなるような設備の配置を考慮すること。

6) 機器、器具等の清浄品と非清浄品、滅菌品と非滅菌品との混同など、逸脱を予防する

ような運用又は区画を考慮すること。

7) 清浄化及び維持管理が容易な構造とし、設計された機能及び性能を維持できるように

定期的に点検を行い、必要に応じてメンテナンスすること。

8) 無菌操作等区域のバックグラウンドに設定された部屋については、設定された清浄度

の管理基準を満たすために重要なシール部やパッキン類に注意すること。また、結露

を防止するための断熱材についても有効に機能するように注意すること。

9) 天井は効果的にシールされていること。

10) 気流を妨げる又は粒子あるいは微生物がたまる凹凸構造、窓、扉周り等の横桟の設置

は、清浄化の妨げとなるため可能な限り避けること。やむを得ない場合は容易に清掃

できる構造とすること。無菌操作等区域にスライディングドアを設置する場合には、

発塵がないことを確認すること。

11) 更衣区域、衣類保管及び衣類処分のための適切な場所を設けること。

12) 無菌操作法に係る作業を無菌操作等区域外から観察できるように、ガラス等の窓、ビ

デオカメラ等を適切に設置すること。

13) 開放状態にある容器又は製品の暴露を最小限にとどめると同時に、無菌操作等区域に

設置される設備は作業を行う職員や維持管理のための職員のアクセスが容易な配置

とすること。

14) 無菌操作等区域の近傍に設置する必要のない備品、機器及び器具は無菌操作等区域か

ら離すこと。

15) 清浄度管理区域における各作業室は、当該室と直接関係のない職員の日常的な通路と

ならないように、廊下を適切に配置すること。

16) 機器・器具の洗浄、消毒又は除染・滅菌の為の設備並びに廃液等の処理は、時間的、

空間的な独立性を考慮し、作業時の清浄度に影響を与えないこと。

17) 壁、床及び天井の表面は、清掃可能で洗浄剤や消毒剤・除染剤等に耐える材質である

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こと。

18) 無菌操作等区域には排水口や流しを設置しないこと。グレード B の管理区域は、原則

として排水口や流しを設置せず、やむを得ず排水口を設ける必要がある場合は、排水

口からの汚染を防止できる必要な構造とすること。また、グレード C 及び D の管理

区域に排水口を設ける場合には、清掃が容易で消毒ができるトラップ及び排水の逆流

を防ぐ装置を有するなど、排水口からの汚染防止を考慮すること。床に溝を設ける場

合には浅く、清掃が容易な構造であること。

19) パイプやダクト、その他のユーティリティを設置する場合は、奥まった部分など、清

掃が困難な表面が無いようにすること。

20) 温度及び相対湿度は作業所における職員の快適性及び微生物汚染の潜在的リスクに

直接的な影響を及ぼす。そのため無菌操作等区域及び清浄度管理区域は、それらの管

理基準を適切に設け、維持、管理及びモニタリングを行うこと。

21) 各区域の清浄度を維持するために、区域の室圧は扉などで隣接する清浄度の管理基準

の低い区域の室圧よりも高く設定すること。ただし、封じ込め施設の場合はこの限り

ではない。構造上差圧の確保が難しい場合は、清浄度レベルの高い区域から隣接する

清浄度レベルの低い区域への気流方向を確保すること。

22) バイオセーフティの観点から異なる要求がある場合は、エアロック等を組み合わせる

ことで、封じ込め及び清浄度の管理基準を満たす構造設備を構築すること。

23) 清浄度管理区域と清浄度管理区域に隣接する区域とはエアロックにより分離するこ

と。清浄度管理区域と清浄度管理区域に隣接する部屋との間には、原料等、滅菌済み

の工程資材、滅菌が困難な工程資材等の受渡しのため、必要に応じて、消毒又は除染・

滅菌作業のためのパスルームやパスボックスを設けること。

24) パスボックス内の清浄度は使用目的に応じて定めること。

25) エアロック扉には同時に開かないような装置(機械式、電気式のほか目視又は音を利

用した方式等)を備えること。

26) 着衣を行う空間の微粒子濃度はその着衣により作業する部屋の微粒子清浄度(非作業

時の)と同じとすること。更衣室とする場合はエアロックの機能を設けること。

27) 更衣に伴う一時的な微粒子の増加を速やかに低減させるため、着衣を行う空間の容積

や換気回数(回復時間)を考慮すること。空気を上部から供給し下部から排気するこ

とが望ましい。

28) 開放式の無菌操作等区域に隣接するグレード B の清浄度管理区域の更衣は進入と退

出を物理的に分離することが望ましい。ただし、入出の時間をずらすことで対応する

こともできる。

29) 更衣室は、作業する部屋の清浄度に合わせ適切に設けること。同じ清浄度内でも原料

等及び工程資材、製品などへの交叉汚染のリスクがある場合には、別途更衣室を設け

ることが望ましい。

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30) 原料等の秤量作業又は工程資材の洗浄作業を行う部屋は隣接する他の部屋への影響

を考慮し、シール性や気流方向に注意すること。

31) 無菌操作等区域の構造設備は、開放状態の製品の暴露及び職員の介入が可能な限り少

なくなるような設計を心がけること。

32) 無菌操作等区域においては、製品及び工程資材等の重要表面(製品と接触する或いは

製品が触れる雰囲気と接触する表面)の無菌性を維持するような気流パターンとする

こと。

5.2.2. 空調システム 1) 空調システムは、扉の開閉、製造設備の運転等製造作業に由来する短期的な変動に対

してのみならず、外気条件の季節変動、設備の経年変化等の長期的な変動に対しても、

常に適切に稼働する状態にあるよう維持されなければならない。

2) 空調システム及びその管理プログラムの基本要素には、温度、相対湿度、風量、換気

回数、一方向気流、室間差圧、HEPA フィルターの完全性、浮遊微粒子数、微生物等

が含まれる。

3) 空調システムは基本要素の要求を継続的に満たすための機能を有すること。また、適

切な頻度をもってその機能を確認できること。

4) 管理プログラムの基本要素の内、作業室の温度並びに相対湿度については、微生物汚

染の潜在的危険性に直接的な影響を及ぼすためモニタリングを行える機能を有する

こと。ただし、製品並びに工程資材が周囲環境から影響を受けない場合は、その限り

ではない。

5) 差圧により清浄度管理レベルが異なる領域を管理する場合は、室間差圧及び気流の逆

転が起きない十分な差圧を維持できること。扉を閉じた定常状態で 10~15 Pa 又はそ

れ以上の差圧を維持することが望ましい。エアロックを用いる場合の設計は、5.2.

1.27)から 29)項の着衣を行う空間に準じる。

6) 製品の無菌性を確保する上で特に重要と考えられる差圧については、差圧が維持され

ていることを常時モニタリングすること。ここで、常時とは、断続又は連続のモニタ

リングを包含している。さらに、異常時に備えて警報システムを備えることが望まし

い。

7) 無菌操作等区域の気流は、原則として一方向気流とし、無菌操作等区域の清浄度を維

持できるような流速及び均一性を有すること。また、近接する清浄度の低い区域から

の逆流の無い気流を維持し、汚染を防止すること。流速は製品特性並びに設備変動に

応じて設定し、開放操作を行う場所において適切に無菌操作が行える事を確認するこ

と。従来型の開放式クリーンブースやアクセス制限バリアシステム(RABS)を使用

する場合、0.45 m/sec ± 20%の平均風速が推奨される。アイソレータシステムや特殊な

適用事例においては、より遅い風速が適切な場合もある。

15

8) 製造作業中の差圧変動及び気流パターンを定めて文書化し、実際の差圧及び気流の状

態が工程に適したものであることを実証すること。また、職員の介入による乱気流が

環境の清浄度レベルに及ぼす影響について検討し、当該作業に係る手順書に反映する

こと。

9) 適切な気流が確保されていることを、設備の設置時の検証においてスモークテスト等

の方法により確認すること。また、気流パターンを変更した場合、又はその可能性が

ある場合においては、再度同様の確認を行うこと。

10) 一方向気流を設定する場合においては、風速の変化が気流パターンに影響を及ぼす可

能性があるので、予め定められた間隔にて、各 HEPA フィルターの吹出し風速につい

て間接的若しくは直接的にモニタリングを行い、定められた風速が維持されているこ

とを確認すること。

11) 換気回数は、作業内容の製品に対する汚染リスクを評価し、定められた清浄度レベル

を維持するために適切な換気回数を設定すること。通常、グレード B を設定した領域

では 30 回/時間、グレード C を設定した領域では 20 回/時間を確保することが望まし

い。所定の換気回数が維持されていることを定期的に検査すること。

また、作業室内において床付近の塵埃や微生物が室内に舞い上がり環境を劣化させる

ことを防ぐために、必要に応じて上昇気流の発生を抑制すること。グレード D を設定

した領域においても、微生物や異物汚染のリスクに応じて同様の配慮をすることが望

ましい。

12) 製造作業が終了し作業者が退室した後、室内の清浄度は速やかに非作業時の管理レベ

ルに復帰することが求められる。清浄度管理区域においては、15~20 分程度で浮遊微

粒子数が非作業時の管理レベルに到達することが望ましい。

5.3. 無菌操作等区域を構成する構造設備の分類 無菌操作等区域を構成する構造設備の内、製品への汚染を直接的に防止する構造設備は、

その外部へのバリア形態により、開放式とアイソレータシステムの構造設備に分類される。

5.3.1. 開放式 本指針における開放式とは外部に対して開放部がある構造設備の方式であり、具体的な

構造設備としては一般的にはバイオハザード対策用キャビネット(安全キャビネット)や

工程中に開放する RABS 等が該当する。

1) 開放部においては気流を用いて汚染源となる微粒子並びに微生物の侵入を制御する

必要がある。気流によって付随する汚染源の侵入を制御できない搬入対象(職員の腕

や工程資材、ユーティリティなどを含む)は適切な搬入手順の運用により管理する必

要がある。

2) 開放部を除く部分においては、気流を除く物理的な遮蔽を用いて汚染源の侵入を防ぎ、

16

当該構造設備内において製品等の無菌性を維持するような気流パターンが確保され

ていること。

3) 開放部ではバリデートされた複合的な処理を経由することで搬入対象の搬入を許容

する。複合的な処理とは、外装の更新や消毒又は除染・滅菌の処理など、段階的に対

象のバイオバーデンレベルを低下させ、実質的に無菌的な状態とする無菌化の方法で

ある。

5.3.2. アイソレータシステム 本指針におけるアイソレータシステムとは、物品の導入手順を含む無菌操作時において、

隣接する清浄度管理区域に対して開放部が無い無菌操作等区域を構成する構造設備の方

式である。

1) 無菌操作等区域を、原則として気流を除く物理的な遮蔽を用いて隔離し、汚染源とな

る作業者を含む外部からの物質的な侵入を許容しないこと。

2) 汚染源が除染又は滅菌により無菌化可能な場合は、原則として、その処理を経由して

搬入すること。

3) 除染又は滅菌を適用できない製品等を搬入する場合には、エアロックを用いて開放式

と同等の清浄化処理を行うこと。

4) 気流を除く物理的な遮蔽を担う構成材料では、堅牢性の高い金属製や樹脂製板の隔壁

以外に、堅牢性が比較的低いグローブ等も許容する。

5.4. 環境モニタリング 環境モニタリングの最も重要な目的は、再生医療等製品の製造プロセスにおいて、製造

環境が適切な管理状態であることを保証することにある。再生医療等製品の製造プロセス

は多様であり、製品の製造環境からの外因性汚染を回避し、無菌性を担保するには、リス

クベースで評価した製造環境が得られる製造設備の選定や製造に従事する職員の管理が

必要である。環境モニタリングは、再生医療等製品の製造環境の清浄度を維持する上で、

無菌操作等区域及び清浄度管理区域において、微生物数及び微粒子数が設定された基準を

超えないよう管理すること、環境の悪化を事前に把握し製品の汚染を防ぐこと、及び清浄

度維持のための清浄化及び消毒又は除染・滅菌の効果を継続的に評価することにある。環

境モニタリングは微生物管理と微粒子管理の二つに分けられる。微生物管理は、環境に存

在する全ての微生物を解明することではなく、環境のバイオバーデンを科学的に推定する

こと、再生医療等製品が適切な管理状態において製造されたことを保証すること、及び必

要に応じた環境維持操作(消毒又は除染・滅菌)を行うことを目的としている。

5.4.1. 一般要件

17

1) 適用

環境モニタリングの対象とする製造環境は、無菌操作等区域及び清浄度管理区域であ

る。環境モニタリングは設計された製造環境が適格に管理されていることを確認でき

るように運用しなければならない。

2) 環境モニタリングプログラム

環境モニタリングプログラム及びそれを実施するための手順書を作成すること。また

実施に当たって適切な記録が作成されるようにすること。モニタリングプログラムの

作成に当たっては、環境汚染のリスクアセスメントを行ない、汚染のリスクを適切に

モニタリングすることができるよう、製造工程、職員、対象物、頻度、サンプリング

場所及び、処置基準などを考慮し作成する。

3) モニタリングの対象物

モニタリングの対象物は微生物及び浮遊微粒子とする。

① 微粒子は粒径 0.5 μm 以上の浮遊微粒子とする。環境モニタリングをより適切に行う

ために、必要に応じて、他の粒子径(例:5.0 μm 以上)の計測も行う

② 微生物モニタリングの対象は細菌及び真菌とする

③ 微生物モニタリングの対象微生物は空中浮遊微生物と壁、床、建具及び製造設備並び

に作業衣等に付着している付着微生物とする

4) 環境モニタリングプログラム作成

環境モニタリングプログラムは稼働性能適格性評価の実施に先立ち策定し、稼働性能

適格性評価終了後に最終版とする。この最終版とは、稼働性能適格性評価で設定した

環境モニタリングプログラムを再度評価し、日常的管理プログラムの手順書に定め運

用に移行することをいう。稼働性能適格性評価においてはワーストケースの設定も含

むため、試料採取箇所及び測定頻度は多くなりがちであるが、稼働性能適格性評価の

終了後に日常管理として制定するプログラムにおいては簡略化も可能である。また、

アイソレータシステムのような環境からの汚染リスクに対して堅牢な設備を採用し

ている場合、設備の定期・非定期の点検整備監視により、製造時の微生物モニタリン

グの試料採取箇所や頻度の簡略化も可能であり、リスクアセスメントによるリスクが

小さいこと及び一定期間の微生物が検出されないなど、堅牢性が確認された設備にお

いては、空中浮遊微生物のモニタリングを省略することも可能である。

また、第十七改正日本薬局方参考情報に掲載されているサンプリングポイント数など

の情報を参考にしてもよい。

5) モニタリングの対象物及び箇所

モニタリングを実施する対象物には、作業室、製造機器(必要に応じて工程制御装置)、

製造環境に接触する空気、製造環境を維持するための空気及び接触する圧縮空気又は

ガスを含むこと。製品品質へのリスクを考慮して設定すること。

18

ただし、製造装置や工程で用いる圧縮空気やガスなどはろ過滅菌フィルターの完全性

試験などにより保証される場合は別途定めること。

6) モニタリングの頻度

試料採取頻度は、設定された製造環境の空気の清浄度及び作業時と非作業時とで区別

し、製品品質へのリスクを考慮して設定すること。職員に係る試料採取の頻度につい

てもあらかじめ定めておくこと。製造作業と非製造作業の区分けは製造業者により、

製品品質へのリスクを考慮して決定すること。

7) モニタリングの方法: 試料採取方法及び検出方法

作業所の区域毎のモニタリングポイントは、作業室の大きさ、作業内容、原料等及び

工程資材、製品の工程フローなどを考慮して、環境汚染のリスクアセスメントを実施

の上、製品品質への固有の影響を考慮して適切な分布と採取箇所数を定めること。製

品汚染評価に重要と考えられるポイントは適宜追加すること。

① 無菌操作等区域における環境モニタリングは設計された製造環境を維持できるよう

に行い、モニタリングを行うことで汚染リスクを増やさないこと。また製造工程での

試料採取は標準操作手順書に定められ、特に製品等及び製品に直接接触する工程資材

の表面及び無菌操作等区域へ職員が直接アクセスする場合の付着菌等の試料採取は、

製造工程の操作完了後直ちに行うこと

② 浮遊微粒子の測定装置及び空中浮遊微生物の採取装置は適格性評価が実施された校

正済装置を使用すること。微粒子のサンプリング量は 1 m3 当たりに換算できる量と

すること

③ 空中浮遊微生物のサンプリングには落下法、衝突法又はろ過法、表面付着微生物のサ

ンプリングにはコンタクトプレート法、拭取り法等適切な方法を1つ又は複数用いる。

表面付着微生物のサンプリングの対象は壁、床、建具及び製造設備並びに作業衣等で

あり、対象とする面積は採取する対象物の形状や状態により適宜選定し、原則として

機器、器具等の表面のサンプリング対象面積は 24~30 cm2 とする。空中浮遊菌数測定

のサンプリング量は、モニタリング対象区域の清浄度やモニタリング頻度などの総合

的な根拠考察により、適切なサンプリング量とする。無菌操作等区域では、空中浮遊

菌の 1 回のサンプリング量は 1 m3 を原則とする。落下菌の測定は通例、直径 90 mm

のプレートを用い、最大曝露時間は 4 時間とする

④空中浮遊菌又は付着菌の検出及び測定に用いる培地は好気性菌、真菌(酵母及びカビ)、

嫌気性菌等の検出対象菌に適した培地を用いる。使用する培地については、必要に応

じて発育阻害物質の確認等を行い、培地として必要な性能を有し、適切なモニタリン

グの実施に支障のないものを用いる。発育阻害物質の確認とは、培地での菌の捕集や

培養行為において、アルコール、抗菌物質等が付着することにより、モニタリングの

成績に影響を及ぼさないことを確認することである

⑤ 培養温度は検出対象微生物の増殖に適した温度とする

19

8) モニタリングの警報基準値及び処置基準値

モニタリングの対象物及び箇所について警報基準値及び処置基準値を設定すること。

① 処置基準値の設定に際しては無菌医薬品製造指針の環境微生物の許容基準を参考に

してもよい。ただし、平均化により、汚染リスクを過小評価しないこと。無菌操作等

区域で菌を検出した場合、許容基準値であっても製品への影響を評価する

② 警報基準値は稼働性能適格性評価の結果に基づき設定する

③ 設定基準値に達した場合においての原因究明の必要性の調査、製造停止等採るべき措

置について定めておくこと。原則として、警報基準値からの逸脱は、製造を中止する

必要はないが、必要な措置及び対策を講じること。その場合処置基準値からの逸脱は、

該当箇所に関連する製造工程において製造された製品の出荷前に原因の究明を行う

こと。ただし、製造後直ちに使用する必要があるなどの理由で、出荷後に処置基準値

からの逸脱が判明した場合は採るべき措置について定めておくこと。また、必要に応

じて是正措置及び回復の検証を行う。この回復の検証は、微粒子のように即座に測定

し判断可能なものもあるが、職員の付着菌のように再現性が得られない場合もあり、

その場合は、一定期間の入室禁止や再教育、あるいは作業内容の見直しなど、措置も

含めた総合的要素により回復とする判断を行う

5.4.2. 日常管理要求項目 日常管理とは、環境モニタリングプログラムであらかじめ決められた所定の頻度や順序

で管理することである。日常管理の要求項目には、少なくとも以下に示す項目が含まれて

いなければならない。

1) モニタリングプログラムの実施

モニタリングプログラムに従って、日常的に微生物及び微粒子のモニタリングを実施

すること。

2) 微生物管理

微生物汚染は日常的にモニタリングすること。微生物管理に係る環境モニタリングプ

ログラムには、製品に及ぼすリスクの評価を可能にする環境菌叢及び分離菌の特性に

ついての定期的な調査を含むこと。

3) 試料の採取

無菌操作等区域において製品等及び資材に接触する箇所の試料採取は、無菌操作の完

了後直ちに行うこと。

4) 製造用ガス

原料等、製品及び製品に直接接触する工程資材に直接吹き込むガス中の微生物の有無

については定期的にモニタリングし管理すること。

5) 日常調査

20

製造環境の維持のため、日常のデータに基づく傾向分析を行い、傾向分析基準値を設

定すること。製造環境の変化が基準値内(警報基準内)であっても通常域(傾向分析

基準)から外れる傾向を事前に検知し、その要因の調査を実施することにより、環境

維持を適切に行い、空調装置等環境維持装置の維持管理、消毒又は除染・滅菌の方法

の是正にも活用する。

5.4.3. 環境モニタリングの留意事項 製品の種類、大きさ、製造装置の仕組み、自動化レベル、容器や栓の滞留時間、空調装

置など、構造設備の構成により製品への汚染リスクは異なるため、必要性に応じた適切な

モニタリングプログラムを確立し、運用すること。環境モニタリングの対象となる空中浮

遊微粒子と空中浮遊微生物は、対象とする空気の品質が維持管理されていることを確認す

ることにあり、得られたそれぞれのデータは互いに補完しているため、実際に汚染の原因

となる微粒子のレベルを把握することで目的とする空気の品質が維持されていることを

確認することも可能である。

1) モニタリング頻度は作業の内容、作業時間等に応じて増減してもよいが、製品への汚

染状況を適切にモニタリングできる頻度であることが必要である。無菌操作等区域と

して定義した製造環境は、原則、作業時に常時のモニタリングを行うこと。常時とは、

断続又は連続のモニタリングを包含している。また、清浄度管理区域の内、無菌操作

等区域のバックグラウンドに定義される区域については、必要に応じて、無菌操作等

区域の環境が維持管理されていることを立証するデータを有していなければならな

い。

2) 職員のレベルは、作業への従事頻度、付着菌モニタリングの結果、プロセスシミュレ

ーション試験への参加回数等を追跡し判断する必要がある。職員のレベルにより職員

の付着菌測定頻度を設定することも必要である。無菌操作の経験の浅い職員について

は特に頻度を増やすことを推奨する。

3) 清浄度管理区域については、品質リスクマネジメントに基づき、製品、実施される工

程、作業内容等によりモニタリング頻度を決める。工程資材を環境に曝露しない場合

などリスクが低い場合は測定箇所及び測定頻度を適宜減らすことができる。

4) 施設の運転開始直後(稼働性能適格性評価の開始時などのモニタリングデータが十分

に得られていない場合)、長期運転停止後又は一部変更後においては、モニタリング

を強化すること。

5) 無菌操作等区域へ職員が直接アクセスする場合は、作業内容の製品汚染リスクに応じ

て、無菌操作等区域が管理されていることをモニタリングしておくこと。

6) 無菌操作等区域における微粒子管理は、原則として準備作業を含め無菌操作中の連続

モニタリングをすること。また、作業域に出来るだけ近い位置で測定を行なうこと。

7) 製造作業が行われていない時間帯の微粒子モニタリングは、空調の不具合発見など、

21

環境維持継続性の観点から適宜実施する。

8) 微粒子の計測については、サンプル量及び吸引能力により評価判定が異なるので、適

切な評価ができるような機器及び評価方法によること。

9) 環境モニタリングの評価基準と試料採取頻度

無菌操作等区域として定義した製造環境では、浮遊微粒子及び微生物は製造作業時に

モニタリングが必要であり、無菌操作等区域のモニタリングができない場合はその周

辺環境となる清浄度管理区域のモニタリングが必要である。清浄度管理区域として定

義した製造環境は、清浄度基準により分類した清浄度に相当する第十七改正日本薬局

方参考情報に掲載されているモニタリング頻度を参考にしてもよい。

環境モニタリングのポイントと頻度を決定するためのリスクアセスメント項目には

少なくとも以下に示す事項が含まれていること。

① 製品の汚染を直接的に防止する構造設備と作業室の設計

② 製品の汚染を直接的に防止する構造設備の消毒又は除染・滅菌

③ 製品の汚染を直接的に防止する構造設備の設置作業室の空調設備

④ 作業室の消毒又は除染・滅菌

⑤ 作業者の動線

⑥ 作業者の教育訓練

⑦ 物(製品や工程資材など)の動線

⑧ 清掃と洗浄

⑨ 定期点検や校正並びに維持管理

6. 製造設備及びユーティリティ

6.1. 一般要件 1) この章において「製造設備」とは、再生医療等製品に係る製品の製造に用いる滅菌装

置、ろ過装置、セルソーター、遠心分離機、培養装置、洗浄装置等のほか、安全キャ

ビネット、アイソレータシステム、空調機器(HVAC システム)等から構成される環

境設備をいう。

2) この章において「ユーティリティ」とは、再生医療等製品に係る製品の製造に用いる

各種用水、ピュアスチーム、圧縮空気、各種ガス類等を供給する設備をいう。

3) 製造設備及びユーティリティは、品質リスクマネジメントによる評価、結果から再生

医療等製品の無菌性に及ぼす影響を最小のものとするように設計すること。なお、環

境設備については「5.製品の作業所」の要件を満たすこと。また、製造設備及びユー

ティリティの形状及び材質は、清浄化、消毒又は除染・滅菌及び維持管理を実施する

ことが容易なものとすること。

22

4) 人の動線及び気流パターンなどを考慮して、再生医療等製品、原料等及び工程資材の

動線が適切になるよう設備の配置を行うこと。特に無菌操作を行う無菌操作等区域及

びそのバックグラウンドとなる区域では、室内の清浄空気の給気口から換気口及び排

気口への流れに配慮すること。

5) 製造設備及びユーティリティの設計及び配置は無菌操作に与える影響を最小のもの

とするよう配慮すること。また、機器の運転、保全、修理、調整など行う際に、無菌

操作等区域のバックグラウンドとなる清浄度管理区域の環境に影響がでないよう配

慮した設計とすること。

6) 無菌操作等区域においては、原則として一方向気流を維持し、乱流の発生及び発塵を

最小のものとすること。また、塵埃の滞留を防止するよう配慮すること。

7) 職員への負担を軽減するよう構造設備及び機器を配置すること。

8) 再生医療等製品及び再生医療等製品と接触する工程資材の表面や開口された培養容

器等の汚染に配慮し、無菌操作等区域内で行う無菌操作が短時間で行えるよう設備を

設計すること。

9) 製品品質に影響を与えないよう作業者の体格やスキルを考慮した設計をすること。

10) エアロゾルの付着が想定される場所や培養容器の破損、損傷などにより培養液が飛散

する可能性のある場所は、清浄化並びに消毒又は除染・滅菌ができる構造、材質を考

慮し設計すること。

11) 製造設備並びにユーティリティは、操作手順並びに管理パラメータとその許容範囲を

手順書に適切に記載すること。

12) 再生医療等製品に係る無菌性を保証するために、滅菌済みの製造設備、工程資材の使

用期限を設定すること。

13) 無菌操作法による無菌製品の製造で適用される設計概念は多様であることから、無菌

性保証を高める他の適切な技術もまた適用すること。

14) 連続式の滅菌装置については、コンベアベルトが無菌操作等区域とこれより環境グレ

ードの低い区域を行き来することがあってはならない。ただし、ベルト自体が常時滅

菌される場合(トンネル式乾熱滅菌機など)はこの限りではない。また、非無菌側の

空気が滅菌ゾーンに流入しないことを適切な方法により常時監視すること。

6.2. 適格性評価 1) 製造設備及びユーティリティに係る適格性評価を実施すること。

2) 製造設備及びユーティリティの適格性評価のため、責任の割当てその他必要な事項に

ついて、計画書及び手順書を作成すること。

3) 製造設備及びユーティリティは、要求される品質水準、製造時の使用量に対する設備

能力、適用される法的要件(法令及びガイドラインなど)、使用する材質や機能などの

要求仕様を明確にした文書(ユーザー要求仕様書;URS)を作成し、それとともに設

23

計時適格性評価により検証すること。

4) 設備据付時適格性評価は、文書化した手順に従って、製造設備及びユーティリティが

設計仕様に基づいて設置されていることを確認すること。

5) 運転時適格性評価は、製造設備及びユーティリティが設計仕様のとおりの機能を有す

ることを確認すること。製造設備及びユーティリティを無菌操作等区域で運転する場

合、その規定された清浄度が維持されることを確認すること。

6) 無菌操作等区域において行われる再生医療等製品に係る製品の無菌性に影響を及ぼ

す全ての工程について、その影響を科学的に評価し、当該工程に係るバリデーション

を適切に実施すること。

7) 作業者の人数により適格性評価に影響を与える可能性がある設備については、その製

品特性に応じた適用可能な試験方法、適格性評価方法を検討し、妥当性の検証を行う

こと。

8) 滅菌装置、ろ過装置、セルソーター、充てん装置、打栓装置、密封装置、洗浄装置等

に係る設備の適格性評価においては、当該工程における再生医療等製品に係る製品の

無菌性保証レベルを評価すること。連続した工程に係る複数の装置については、これ

らをまとめて評価しても差し支えない。

9) 製品と直接接触する工程資材(重要表面)に直接暴露する設備・機器の表面の無菌性

については、製品の無菌性保証レベルを損なうことがないよう留意すること。

6.3. 維持管理 1) 製造設備及びユーティリティの予防的な維持管理のため、責任の割当てその他必要な

事項について、計画書及び手順書を作成すること。

2) 製造に使用する製造設備及びユーティリティの清浄化、消毒又は除染・滅菌及び当該

製造設備及びユーティリティの次回製造においての使用許可について手順書を作成

すること。清浄化、消毒又は除染・滅菌に係る手順については、再現性があり、かつ

有効な方法により装置の清浄化、消毒又は除染・滅菌を行うことができるよう十分に

詳細な内容を含むものであって、次の事項を含むものであること。

① 製造設備及びユーティリティの清浄化、消毒又は除染・滅菌に係る責任の割当て

② 清浄化、消毒又は除染・滅菌に係る計画

③ 製造設備及びユーティリティの清浄化、消毒又は除染・滅菌の方法(洗浄剤の希釈方

法を含む。)及び使用する器具、薬品等についての十分な説明

④ 必要な場合においては、適切な清浄化、消毒又は除染・滅菌を保証するために行う製

造設備及びユーティリティの部品の分解及び組立てに係る指図

⑤ 先行ロットの表示の除去又は抹消に係る指図

⑥ 使用までの間における清浄な製造設備及びユーティリティの汚染防止のための指図

⑦ 実施可能な場合においては、使用の直前の清浄度レベル及び無菌性についての検査

24

⑧ 製造作業の完了から製造設備及びユーティリティの清浄化、消毒又は除染・滅菌まで

の間の最大許容時間

3) 再生医療等製品に係る製品の無菌性に及ぼす影響を最小のものとするため、製造設備

及びユーティリティは清浄化及び乾燥を行った上で保管し、必要な場合においては消

毒又は除染・滅菌を行うこと。

4) ある製造設備及びユーティリティを用いて、同じ再生医療等製品に係る製品の連続す

るロットを継続生産又は期間生産(キャンペーン生産)する場合においては、微生物

汚染を防止できることがバリデートされた間隔により当該装置の清浄化、消毒又は除

染・滅菌を行うこと。

5) 清浄化の手順並びに洗浄剤及び消毒剤・除染剤の選定は品質リスクマネジメントによ

る評価を基にその根拠を示すこと。

6) 製造設備及びユーティリティは、その内容物及び清浄の程度について適切な方法によ

り識別すること。

7) 製造設備及びユーティリティは、それを修理や点検のために停止させた場合は、必要

に応じて運転再開の前に適切な手順で消毒又は除染・滅菌を行うこと。

6.4. 校正 1) 再生医療等製品に係る各製造設備及びユーティリティにおいて、製品の無菌性を保証

するために重要な制御、測定及びモニタリングに係る計器(以下「重要計器」という。)

の校正のため、責任の割当てその他必要な事項について計画書及び手順書を作成し、

これらの文書に従って校正を行うこと。

2) 重要計器の校正に当たっては、トレーサビリティを確保できる認証された標準器が存

在する場合においては、それを用いて実施すること。

3) 上記の校正に係る記録は保管すること。

4) 重要計器の校正に係る現状を認識し、実証することができるようにしておくこと。

5) 校正基準に適合しない計器は使用しないこと。

6) 重要計器が校正基準から逸脱した場合においては、前回の校正以降において、これら

の逸脱が当該計器を用いて製造した製品の無菌性に影響を及ぼしたか否かを判定す

るために、調査及び評価を行うこと。

6.5. 変更管理 1) 再生医療等製品に係る製品の無菌性に影響を及ぼすおそれのある製造設備及びユー

ティリティ(パラメータを含む。)並びにその手順に係る変更の確認、照査、承認及び

記録のため、責任の割当てを含め必要な事項について、手順書を作成すること。

2) 1)の変更については、当該構造設備・機器の能力及び機能への影響が製品品質に及ぼ

25

す影響をリスクの観点から、適切な者が作成された内容の照査を行った上で、承認す

ること。

3) 提案された変更が再生医療等製品に係る無菌性に及ぼしうる影響を品質リスクマネ

ジメントにより評価すること。

4) 承認を受けた変更を実施する場合においては、その変更によって影響を受ける全ての

文書が確実に改訂されるものとするよう手順書に規定すること。

5) 当該変更を実施する前に、その機器の使用に関わる職員は教育訓練を受けていること。

6) 重要な工程の変更が、滅菌済みの製造設備に設定した使用期限に及ぼす影響を評価す

ること。

7. 作業所の衛生管理

7.1. 洗浄剤及び消毒剤

1) この章において「消毒」とは消毒又は除染・滅菌を示す。「洗浄剤」とは作業所内の異

物混入の原因となる汚れや微粒子を含む異物を除去するための清浄化を主目的とし

た薬剤を示している。「消毒剤」とは、作業所内の微生物管理レベルを適切に維持する

ための消毒を主目的とした薬剤を示しており、環境設備や作業室に定期的に用いる除

染剤を含む。目的を明確に分けて取り扱うこと。

2) 目的に対して妥当性が確認された洗浄剤及び消毒剤を使用すること。なお、定期的な

環境モニタリングにおいて把握された菌数及び菌種の状況から使用している消毒剤

の有効性を確認すること。

3) 無菌操作等区域及び清浄度管理区域のうち無菌操作等区域のバックグラウンドとな

る区域において使用する洗浄剤及び消毒剤は、無菌性を保証した上で販売されている

物をそのまま用いるときのほかは、事前にろ過等により無菌化処理を行い、かつ微生

物による汚染を受けないように管理すること。

4) 洗浄剤及び消毒剤を自家調製する場合においては、手順書に従って行うこと。またそ

の調製の記録を作成し、保管すること。販売されている洗浄剤及び消毒剤を希釈して

使用する場合は、その希釈液、希釈濃度、有効期限、保管方法、及び該当する場合は

滅菌方法、その他の必要な事項を文書化して、承認を受けること。

5) 消毒剤は、適切な有効期限を設定し、期限内のものを使用すること。

6) 消毒剤の継足し使用は行わないこと。

7.2. 清浄化及び消毒 1) 品質部門により承認された薬品の使用、清浄化及び消毒のスケジュール、消毒剤の適

用法、必要に応じて消毒後の清浄化、職員の安全に関する諸注意並びに清浄用具の手

26

入れ及び保管について手順書に記載すること。

2) 製品と接触する表面の洗浄又は消毒を行った場合においては、洗浄剤及び消毒剤が除

去できることを適切な評価法を用いて確認すること。

3) 消毒剤は、製造環境に対しては原則として清浄化の後に適用すること。使用した洗浄

剤の残留が懸念される適用部位は、その洗浄剤は、消毒剤の効果に悪影響を及ぼさな

いこと。

4) 消毒剤の選択及び使用に当たっては、少なくとも以下のことを考慮すること。

① 保管及び使用に関しては消毒剤の供給者の指示事項に従うこと。

② 消毒剤及び消毒手順の選択に当たっては、職員の安全性を考慮すること。

③ 環境より分離される微生物に対して、使用している薬剤の有効性が疑われる場合は、

必要に応じてその有効性を評価し、消毒剤の変更や交互に使用することを考慮するこ

と。

④ 環境モニタリングにおいて芽胞形成細菌又は真菌の存在が示唆された場合において

は必要に応じて殺芽胞剤又は殺胞子剤を使用すること。

⑤ 消毒剤の使用は、消毒方法、消毒の適用箇所、及び消毒作用を発現させるのに必要な

時間を考慮すること。

⑥ 洗浄剤及び消毒剤は、それを適用する表面への性質(腐食性など)を考慮して決定す

ること。

5) 殺芽胞剤又は殺胞子剤を非定常的に使用する可能性がある場合においては、使用する

薬品の種類、使用濃度、適用方法等をあらかじめ文書で定めておくこと。

6) 燻蒸剤(エアゾールの場合を含む。)を使用する場合においては、その使用する薬品の

性質に応じて上記の項目を準用すること。

7) 消毒剤、洗浄剤及びそれらに使用するための器具類は、無菌操作等区域内に保管しな

いこと。

7.3. 消毒手順のバリデーション 1) 消毒手順に係る効果及び頻度は、環境モニタリングプログラムを通して確立すること。

2) 使用する消毒剤については、製造所毎に微生物学的評価を行い、適切な管理手順を定

めること。

3) 消毒剤の有効性は、環境モニタリングプログラムの中で表面から採取される微生物数

を規格値の範囲内で管理する観点から評価すること。

4) 除染については、適用する清浄度レベルに応じた微生物の減少効果を、バイオロジカ

ルインジケータ(BI)を用いて評価すること。

7.4. 清浄化及び消毒の実効性のモニタリング

27

1) 清浄化及び消毒の実効性を総合的な環境モニタリングプログラムの中で規定するこ

と。

2) 微生物に関するモニタリングにおいて、器物表面の付着菌数については、定期的にト

レンドの評価を行うこと。処置基準値を超えたり、通常と大きく異なる菌種構成とな

ったり、それらが続いたりしたときに、原因を特定する調査を実施すること。また、

必要な場合においては、再発を防止する措置を採ること。

3) 使用薬品の種類及び濃度での実効性が疑われる事例が生じた場合は、例えば消毒前後

の微生物の種類及び菌数の減少を調査する等の再評価を行うこと。

8.職員

人は無菌操作等区域における最大の汚染リスク源であるので、再生医療等製品の作業

所においては、人に起因する汚染を排除することが重要である。再生医療等製品の製造

に従事する職員には、その業務を行うために必要な基本知識、及び実際の作業内容に関

する手順について教育訓練を継続的に行うことにより、その能力及びモラルを維持する

こと。さらに、再生医療等製品の製造においては非滅菌原料を取り扱う可能性もあるこ

とから、内在性細菌・ウイルス等の封じ込めに関する技能・知識も必要とされる。

また、安全キャビネット、アイソレータシステム等、人の介在による微生物汚染を低減、

あるいは封じ込め機能を有する設備をはじめとして、再生医療等製品の製造に係る装置・

設備等を運用する職員には、その装置・設備の構造、特性、操作方法、稼動時の監視方法、

及び維持・点検管理に関する教育訓練が重要となることを考慮すること。

8.1. 職員の教育訓練 1) 再生医療等製品の作業に関する手順書には、無菌操作環境を汚染しないことを保証

するため、職員が遵守すべき事項を具体的に記載すること。職員はこれを履行する

こと。

2) 再生医療等製品の作業所において作業に従事する職員に対し、各職員が有する経験

と知識・技能に応じて当該作業に関する教育及び訓練を計画し実施すること。

3) 再生医療等製品の作業に関する教育訓練の内容及び実施頻度は、作業の内容並びに担

当職務、職員の知識・技能及び経験に応じて定められるものであること。教育訓練の

内容には以下のような事項が含まれる。これらの内容を全て同時に行う必要はないが、

文書化された計画に基づいて逐次実施すること。

① 職員の衛生管理

・ 作業所入室時の衛生面における制限(化粧をしていないこと等)

・ 作業衣、作業用のはき物、手袋、作業帽及び作業マスク(以下「作業衣等」という。)

28

を破損させるおそれのある装身具(例えば突起がある指輪、イヤリング、時計等)

の制限

②微生物学の基本的知識・技能

・ 微生物の種類、性質、検出法等に関すること

・ 微生物の増殖、不活化及び、死滅並びにエンドトキシン産生に関すること

・ 消毒法及び除染法・滅菌法の基本的知識・技能に関すること

・ 環境モニタリング方法に関すること

③ 更衣手順

・ 手洗い、手指消毒、脱衣、着衣等の一連の更衣に関すること

・ 管理者による規定遵守の定期的な確認

・ 無菌操作等区域に持ち込まれる汚染を最小限にとどめるための 9 章に掲げる更衣要

件等に従った更衣手順を定めること

④ 無菌操作及び、細胞培養の知識・技能

・ 基本となる無菌操作技術

・ 取り扱う細胞の種類、性質、培養方法に関すること

・ 無菌操作等区域内及び清浄度管理区域における行動制限に関すること

⑤ 当該職員が関わる再生医療等製品の製造技術

・ 製造する製品、中間製品及び原料等及び工程資材の特性、取り扱いに関すること

・ 作業工程、工程管理に関すること

・ 使用する装置・設備・器具の構造、特性、操作及びその点検・校正・管理方法に関

すること

・ 工程中で異常が生じた場合に採るべき措置

⑥ 設備及び製造環境の清浄化及び消毒又は除染・滅菌

・ 使用する洗浄剤及び消毒剤・除染剤の適用対象に関すること

・ 使用する洗浄剤及び消毒剤・除染剤の使用濃度、調製方法及び有効期間に関するこ

・ 使用する洗浄剤及び消毒剤・除染剤の留意事項に関すること

⑦ 汚染製品の危険性

汚染された再生医療等製品を投与された場合において引き起こされる患者の健康被

害の可能性に関すること

29

⑧ バイオセーフティ及びバイオセキュリティに関すること

・ 感染リスクのある製品を扱う場合、その性質(バイオセーフティレベルや感染様式)

や扱い方

・ 作業室への入退室時における手順

・ 作業室内の装置、器具等の取扱い方法並びに作業手順

・ 感染リスクのある製品を扱う場合、その搬送等に関する容器及び手順

・ 廃棄物等の処理方法

・ 緊急時の安全対策

4) 教育訓練は実施する項目を文書化し、知識・技能に関する事項については教育訓練

の効果を評価すること。特に重要な手技などについては、実技確認に基づいた認定

制度の採用も推奨する。

5) 清浄度管理区域のうち、無菌操作等区域のバックグラウンドとして規定する区域への

入室資格を得ていない者の当該区域への入室は原則として禁止すること。機器の故障

等によりやむなく入室の必要が生じたときは、対象区域の監督者の承認を受けること

とし、当該区域内への入室中においては入室資格を持つ職員が付添うこと。

6) 清浄度管理区域のうち、無菌操作等区域のバックグラウンドとして規定する区域に、

一時的に出入りする必要がある他の職員(管理者、品質部門の職員及び維持管理を行

う職員を含む。)に対しては、必要に応じて以下の事項について教育訓練を行うこと。

① 職員の衛生管理

② 微生物学、及び必要に応じたバイオセーフティ並びにバイオセキュリティの基本的知

③ 更衣手順

④ 無菌操作等区域及び、無菌操作等区域のバックグラウンドとして規定する清浄度管理

区域における行動についての注意点

7) 無菌操作等区域及び無菌操作等区域のバックグラウンドとして規定する清浄度管理

区域における作業に従事する職員の人数は、作業シフト毎に、作業前も含め可能な限

り少数とすること。製品及び滅菌済みの原料等及び工程資材に触れる作業、又はそれ

らが曝露される環境における作業に従事する職員は、特定できるようにしておくこと。

8) 無菌操作による製造工程に従事する職員に対する教育訓練及び細胞加工に関する技

能評価は、初めて作業に従事する際や手順が変更された際だけでなく、定期的に職員

の技能が維持されていることを確認すること。定期的なプロセスシミュレーションへ

の参加により、技能が維持されていることを確認することもできる。

9) 無菌操作等区域における作業に従事する全ての職員は、原則として年 1 回以上のプロ

セスシミュレーションに参加すること。職員を無菌操作等区域における作業に従事さ

30

せる際の可否を判断するため、当該工程についてのプロセスシミュレーションに参加

させるか、又は当該工程と同等の技能による無菌操作と見なせる他の工程のプロセス

シミュレーションに参加させること。

8.2. 職員の健康管理 1) 職員は発熱、皮膚損傷、風邪、下痢等無菌操作に影響を及ぼすおそれのある身体症状

を管理者に報告すること。

2) 報告を受けた管理者は、無菌操作に影響を及ぼす身体症状を報告した職員に対して、

清浄度管理区域に入ることを許可してはならない。

8.3. 職員の監督 1) 清浄度管理区域のうち、無菌操作等区域のバックグラウンドとして規定する区域へ

の入室資格を得た、経験の浅い職員は、無菌操作等区域に係る作業について、あら

かじめ定められた期間、上級の職員の監督下におき、無菌作業について指導と評価

を受けること。

2) 無菌操作等区域における作業に従事する職員は、当該区域に適用される微生物のモ

ニタリングやプログラムに従った管理を受けること。

なお、微粒子測定及び微生物学的方法などにより確認した結果は、教育訓練の実効

性の確認結果として、当該職員に知らせること。

3) 微生物の検査のために作業衣等に培地を接触させる場合においては、清浄度管理区

域のうち、無菌操作等区域のバックグラウンドとして規定する区域からの退室時に

おいて実施すること。

4) ある職員の無菌作業衣等の付着微生物のモニタリングプログラムにおいて得られた

結果が好ましくない傾向を示している場合においては、直ちに当該職員に対して必

要な教育訓練を実施すること。また、当該職員の付着菌数に改善傾向がみられない

場合においては、無菌操作等区域における作業以外の作業への配置の変更について

も検討すること。

9.更衣

再生医療等製品の製造所において各区域の環境は、施設・設備等の設計仕様だけではな

く、その適切な運用により実現する。運用面において最大の汚染リスク源となるのは人で

あり、毛髪や皮膚などの人体由来、あるいは外部の汚染源の持ち込みを防ぐために、適切

な更衣を定めることが必要である。特に、再生医療等製品の製造においては、製造環境の

無菌性を損なうおそれのある対象物の取り扱いや工程も想定されるが、このようなリスク

31

がある場合には、それを考慮した適切な更衣を定めておくこと。

9.1. 一般要件 1) 清浄度管理区域へ立ち入る際の手洗い、手指消毒、脱衣、着衣等、一連の更衣手順

を適切に定めること。

2) 作業衣等は、9.2、9.3 項を参考にして、取り扱う製品、施設、設備、及び作業内

容等のリスクに応じ、適切に定めること。

3) 作業衣等は、作業性やその周辺環境への発塵防止に優れているものを選定するこ

と。着用時には、身体に合ったものであること、ホコロビや破損がないことに注意

を払うこと。

4) 作業衣等の交換頻度、消毒又は除染・滅菌の方法及び保管方法等は、交叉汚染防止

の観点等も考慮し、再生医療等製品の品質や作業域の環境管理に影響を与えないよ

うな条件をもとに適切に規定し、管理すること。

5) 原則として、作業衣等を適切な消毒又は除染・滅菌を行わずに再着用は行わない。

再着用する場合においては、その使用の妥当性を立証するデータを有しているこ

と。

6) 微生物汚染の検査のため培地などを接触させた作業衣等は、洗浄及び滅菌しない限

り再着用しないこと。

7) 無菌操作等区域における作業に係る更衣においては、脱衣と着衣区域を適切に区分

することが望ましい。なお、更衣場所には更衣手順等のイラスト表示や、無菌作業

衣着用後の状態を確認できるようにする設備を設置することが望ましい。

8) 無菌操作等区域における製造休止時に通常の管理状態を解除し、設備等の点検又は保

全のために当該区域内での作業、及び、当該区域のバックグラウンドとして規定する

清浄度管理区域に入室する場合においても、その服装と手順を定めておくこと。また、

その手順には持込機材の取扱いを含むこと。

9.2. 開放式設備を用いる場合 1) 無菌操作等区域に対して開放式の構造設備を用いる場合は、職員の身体の一部が無菌

操作等区域の内部に侵入するため、更衣を汚染リスクに応じて設定することが求めら

れる。直接的な無菌操作を行わない場合であっても、作業帽や手袋の着用など、毛髪

や体表面の露出による異物の落下を防止するような更衣が必要である。

2) 無菌操作等区域のバックグラウンドとして規定する清浄度管理区域は、一般に、安全

キャビネット等、無菌操作等区域の開放部の周辺環境に隣接する区域であり、無菌操

作等区域の環境維持に影響を及ぼさないような更衣が求められる。

3) 手袋等の破損しやすい更衣については、ピンホールなどによりリークが生じていない

ことに十分留意すること。

32

9.3. アイソレータシステムを用いる場合 無菌操作等区域のバックグラウンドとして規定する清浄度管理区域における更衣は、そ

の役割に適した更衣をリスクに応じて設定することが求められる。なお、アイソレータシ

ステムの設備を用いる場合であっても、作業帽や手袋の着用など、毛髪や体表面の露出に

よる異物の落下を防止するような更衣が望ましい。

10. 原料等及び工程資材の管理 10.1. 一般要件 1) 製造で使用する原料等及び工程資材は、微生物管理が必要である。

2) 無菌操作等区域で使用する原料等及び工程資材は、原則として、無菌性の保証及び確

保が必要である。

3) 無菌操作等区域で使用する滅菌困難な原料等及び工程資材は、リスクベースで評価し、

適切な手順を構築して、管理すること。

10.2. 出発原料としてのヒト細胞 1) 原料として受け入れる細胞について、製造工程投入前に微生物汚染の評価が困難な場

合と、セルバンクのようにあらかじめ微生物汚染が否定された細胞を用いた製造を開

始する場合では、リスクは異なる。原料となる細胞を製造施設に受け入れる際の微生

物汚染リスクは、細胞の受け入れの状態に応じて適切に評価して対策を検討すること。

2) ドナーから採取された細胞又は組織(以下「ヒト細胞」という。)は、微生物汚染や感

染リスクを否定できないケースもあり、バイオセーフティの観点も含めて適切に管理

すること。また、容器外装が汚染されているケースも想定されるため、必要に応じて

製造施設での受け入れ時に容器外装を消毒又は除染すること。

3) 細胞の病原性リスクレベルは、検査結果の有無や、病原性微生物の無菌化及び不活化

の有無、並びに製造に伴うウイルス等の増幅リスク等を踏まえて適切に判断すること。

4) 製品の投与・移植後に発症した感染症の原因究明のため、次に掲げる事項が記録され、

保存される必要がある。

① 細胞を作製した機関名

② 細胞を作製した年月日

③ 細胞の検査等の結果

④ 細胞を作製する作業の経過

⑤ 細胞のロットの番号

⑥ ①から⑤までに掲げる以外で、当該製品の品質及び安全性の確保に関し必要な事項

33

【参考情報】

生物由来原料基準(平成 30 年厚生労働省告示第 37 号)

10.3. 細胞以外の原料等 1) 原料等の受入れから保管、使用に当たっては、汚染を避けるよう注意すること。

2) 無菌操作等区域に搬入される原料等は、以下のいずれかに従うこと。

① 無菌性が確認されていること

② 当該原料等の特性及びバイオバーデンレベルに応じた、適切な滅菌が行われているこ

と。この場合、あらかじめ定められた頻度でバイオバーデンの測定を実施し、規格値

内であることを確認すること

③滅菌が困難な原料等については、無菌性を担保するためにリスクベースで評価を行い、

適切に管理を行うこと

3) 清浄度管理区域に搬入する際は、容器外装を適切な方法で消毒又は除染・滅菌するこ

と。

4) 原料等は、エンドトキシン量が管理されていること。

① 製造工程において、脱パイロジェン処理が行われない場合、定められたエンドトキシ

ン量以下であることが保証されていること

② 製造工程において脱パイロジェン処理が行われる場合、当該原料の特性及びエンドト

キシン量のレベルに応じて、適切な脱パイロジェンの方法を設定すること。なお、処

理前の原料のエンドトキシン量を管理することが望ましい

5) 原料等が無菌であることを要求される場合においては、無菌性を保証するバリデーシ

ョン結果を確認すること。また、ロットごとに無菌試験を行うこと。原料等メーカー

の無菌試験の CoA の内容を確認することにより、無菌試験を省略することは可能で

あるが、その場合、原料等メーカーが適切に無菌性を保証できる製造、試験方法であ

ること等を確認する必要がある。

6) 原料等の滅菌を行う場合には、あらかじめ滅菌方法のバリデーションを実施し、滅菌

後の無菌性が保証されることを確認すること。

7) 複数の原料等を用いて最終の原料等を調製する場合には、最終調製液の無菌性を確認

すること。

8) 微量の原料等で、無菌化が困難な微量の原料等を調製に使用せざるを得ない場合には、

最終調製液や最終製品の無菌性への影響を評価し、リスクを低減させる適切な対応を

行うこと。

9) 培地は、使用前に適切な方法により滅菌すること。

34

10) 原料等が、蒸気滅菌、放射線滅菌等によるパラメトリックリリース又はドシメトリッ

クリリースによっている場合においては、当該パラメトリックリリース又はドシメト

リックリリースのバリデーションを実施すること。

11) 原料等の脱パイロジェン処理を行う場合においては、そのバリデーションを実施する

こと。一般に脱パイロジェン工程は、添加したエンドトキシンを 3 log 以上減少させ

ることが要求される。

10.4. 工程資材 1) 工程資材の受入、確認、保管方法、試験検査及び判定基準を制定すること。

2) 工程資材の受入から保管、使用にあたっては、汚染を避けるように注意を払うこと

3) 容器及び栓の洗浄が必要な場合は、バリデートされた適切な方法で行うこと。なお、

洗浄に水を使用する場合、最終すすぎには注射用水又はそれと同等の品質の水を使用

すること。

4) 無菌操作等区域内に搬入される工程資材は適切な方法で滅菌が施されていること。ま

た、外面の消毒又は除染・滅菌を実施する場合においては、それらに対する耐薬品性

を考慮すること。脱パイロジェン工程を設定する場合は、工程資材の特性に応じて適

切な方法を設定すること。

5) 工程資材は、必要に応じてエンドトキシン量を管理し、定められたエンドトキシン量

以下であることを確認すること。

6) 滅菌済みの工程資材は微生物汚染及びパイロジェン汚染を防止するための適切な保

護を行うこと。

7) 工程資材は、対象製品、使用目的、作業内容、作業設備により、内部への微生物の侵

入を防ぐために必要な密閉性等が確保されていることを確認すること。

8) 滅菌した工程資材は、使用されるまで無菌状態が維持されることが確認された方法に

より保管すること。

9) 工程資材に滅菌を行う場合は滅菌方法のバリデーションを実施すること。

10) 工程資材の脱パイロジェン処理を行う場合においては、そのバリデーションを実施す

ること。一般に脱パイロジェン工程は、添加したエンドトキシンを 3 log 以上減少さ

せることが要求される。

11) 滅菌済み工程資材は、使用対象となる製品、中間製品、使用目的により、必要に応じ

て滅菌バリデーションが行われていることを確認すること。

12) 無菌操作等区域外に持ち出され、かつ、内部を無菌状態で維持することが必要な工程

資材については以下の要件を満たすこと。

① 充てんされている内容物が外部環境から隔離され、保管又は輸送期間を通じて、微生

物の侵入を防ぐ状態を維持できる構造であること。特に凍結保存の場合は物性変化に

留意すること

35

② 温度、圧力、振動、衝撃等、保管及び輸送の条件を考慮した強度を有すること

③ 一次容器(細胞及び組織が直接触れる容器)だけでは微生物汚染のリスクが回避でき

ない場合には、二次容器(一次容器を収納する容器)や包装と組み合わせること

10.5. 滅菌 10.5.1. 滅菌 1) 原料等及び工程資材については、製品の無菌性保証レベルを維持できる適切な方法に

より滅菌を行うこと。また、製品に直接触れない場合でも、無菌操作等区域内で使用

する工程資材等については、品質リスクマネジメントにより製品への影響を評価した

上で、適切な方法により滅菌を行うこと。

2) 自ら滅菌を行う原料等及び工程資材については、未滅菌のものと滅菌済みのものとが

混同されることがないよう適切な識別管理を行うこと。

3) 滅菌済みの原料等及び工程資材については、滅菌後の再汚染を防止するための必要な

措置を適切に講ずること。

4) 滅菌済みの原料等及び工程資材の保管にあたっては、無菌性及びその他必要な特性を

損なわない方法によること。保管場所、保管方法、保管環境、保管期間等をあらかじ

め定め、適正に管理すること。

10.5.2. ろ過滅菌 1) 培地や薬液等、液体の原料等を滅菌する場合には、通常ろ過滅菌法を使用する。供給

者からろ過滅菌されたものを受け入れる場合には、自らろ過滅菌を行う場合の無菌性

保証レベルを満たしていることを確認すること。

2) 製造工程で使用する液体の原料等の使用量や使用する工程を踏まえ無菌性に対する

リスクを考慮し、信頼性が確保された適切なろ過滅菌用フィルターを用いること。

3) ろ過滅菌フィルターの選定には、化学的特性、物理的特性、生物学的安全性、ろ過滅

菌性能等を考慮し、適切に選定すること。

4) 使用後の完全性試験は、上記 2)と同じくリスクに応じて実施するかを決定すること。

5) 気体を清浄化するろ過フィルター(例 ベントフィルターなど)は、ろ過後の気体の

特性や用途に応じて、適切なろ過滅菌性能を有するフィルターを選定すること。

10.6. 供給者管理 1) 外部の滅菌業者に原料等及び工程資材の滅菌処理工程を委託する場合には、要求する

滅菌保証レベルが確保されることをあらかじめバリデーションにより確認しなけれ

ばならない。

2) 供給者から滅菌済みとして供給される原料等及び工程資材を使用する場合は、品質リ

スクマネジメントにより製品に与える影響を評価した上で、適切な滅菌保証レベルが

36

維持されていることを確認すること。製造業者から滅菌保証レベルが確保されている

こと示すデータを入手し、確認することも一つの手法である。

3) 供給者と取り決めを結び、供給者から入手した無菌性に関する情報が変更されていな

いことを確認するため、継続的に情報入手に努めること。

11. 無菌操作要件

11.1. 一般要件 1) 再生医療等製品を製造する際に使用する培地などの原料等は、微生物の栄養源にもな

り汚染リスクも高い。そのため、原料等供給者及び調製法並びに製造する再生医療等

製品の種類、特性及び製造工程に応じて、必要な管理項目を適切に定め管理し、無菌

操作等区域に搬入すること。

2) 再生医療等製品の無菌操作に係る作業区域については、作業の種類に応じて清浄度レ

ベルを適切に定め管理すること。設備がアイソレータシステムの場合においては周辺

環境の清浄度を低減することも含め、汚染防止のために必要な清浄度レベルを設定し

管理すること。

3) 工程内管理及び品質管理(重要工程のモニタリングを含む)においては、微生物管理

の観点から、装置の滅菌、環境微生物モニタリング等の記録及び逸脱に係る記録を作

成し、保管すること。

4) 一つの作業区域や培養装置で、連続して異なるロットの加工作業を行う場合には、交

叉汚染と取り違えのリスクを考慮し、あらかじめ適切な運用方法を手順化しておくこ

と。特に、自家培養製品の場合には、感染リスクや細胞・組織の特性が患者ごとに異

なることを考慮して手順を適切に設定すること。必要に応じて設定した処置・手順の

効果が期待できる十分な妥当性をバリデーションにより確認・検証すること。

5) 無菌操作による製造工程の無菌性に関する適格性は、プロセスシミュレーションによ

り確認すること。

6) 無菌操作による製造工程に従事する職員は、あらかじめ必要な教育訓練を受けること。

・ 無菌操作等区域及び清浄度管理区域で作業を行う為の更衣を行った後は、粒子を発

生させるなど気流を乱すおそれがある不必要な動作(会話を含む)を避けること。

また、壁、床及び清浄化済表面に不必要に接触しないこと

・ 無菌操作等区域における作業に従事する者は、無菌操作を行う対象物にあたる気流

の上流を遮断すること、横切ること等の動作を、可能な限り避けること。また、無

菌操作に不要なものに触らない、あるいは持ち込まないこと

37

11.2. 原料等及び工程資材の搬入 1) 出発原料である細胞は、あらかじめ定められた安全性情報を収集し、適切に管理を行

うこと。毎回同じように実施できない場合は、作製ごとに微生物に関する安全性情報

を可能な限り収集し、それらの情報に基づき適切な管理が実施できる手順を定めるこ

と。

2) 消毒を行った後に原料等及び工程資材を無菌操作等区域に搬入する場合は、適切な消

毒剤を選択し、その効果を確認し、消毒操作の適切性を評価しておくこと。

3) 除染をおこなった後に無菌操作等区域に搬入する場合は、除染バリデーションを実施

し、除染の適切性を評価しておくこと。

4) 製造工程において、清浄度の異なる区域(例えば、インキュベータと安全キャビネッ

ト等)を複数回往復する場合、移動中の微生物汚染を避けるため、適切な容器を選択

し、可能な限り動線を短くするよう検討すること。

11.3. 無菌操作等区域の開放作業 1) 無菌操作等区域において、工程資材の容器等を開放状態とし、細胞基材、培地、緩衝

液及びガスの添加を行う場合には、無菌性と封じ込めを考慮した設備を使用し、汚染

を防止するための管理及び手順を定めること。

2) 微生物による汚染が懸念される所見が認められた場合には、速やかに原因と影響につ

いて検証し、必要な措置を採ること。

3) 製品間の交叉汚染を避けるため、操作後には無菌操作等区域及び清浄度管理区域を清

浄化すること。

4) 生物由来原料、生理活性の高い物質や病原性物質、有毒性物質、ウイルス、微生物等

を取り扱う場合には交叉汚染等のリスクに応じた適切な構造設備を考慮すること。

5) 微生物による汚染が発生した場合の措置(汚染源及び汚染範囲の特定、他の製品との

隔離、構造設備の消毒又は除染・滅菌、汚染品の廃棄等)をあらかじめ定め文書化し

ておくこと。

11.4. 充てん・包装 1) 再生医療等製品は最終滅菌できないものが多く想定されることから、使用する構造設

備・機器・器具・工程資材の準備段階から、作業後の洗浄・清浄化までの全ての工程

に関する具体的操作手順並びにその他必要な事項(使用構造設備・機器・工程資材の

管理項目、クリーンルームでの行動、責任者体制、許容される介入等)について、明

瞭に記載された手順書を作成すること。

2) 充てん・包装作業に関連する構造設備・機器・工程資材等の準備工程を含めて、作業

38

中の環境モニタリングを適切に行い、その結果を評価すること。環境モニタリング頻

度等は、本指針の環境モニタリングの項を参照とすること。

3) 無菌的に調製された中間製品が入った容器と充てん・包装装置(充てんラインを含む)

を接続する場合、その接続箇所は無菌性が保証できる方法により行うものとする。

4) 充てん・包装に使用される容器は、あらかじめ定められた方法で密閉し、適切な手順

で内容物の漏出がないことを確認すること。

11.5. 保管 1) 再生医療等製品を患者に投与・移植する前、あるいは製造工程の途中で一時的に細胞

を保管する場合がある。あらかじめその適切性が確認され、定められた保管条件にお

いて、保管期間を通じて、微生物汚染に対するリスクを考慮して適切な管理を行うこ

と。

2) セルバンクのように、長期間保管する必要がある場合には、内容物が微生物に汚染さ

れていないことを定期的あるいは使用時に確認すること。

12. 無菌操作工程の適格性評価

12.1. 一般要件 無菌操作工程(手順、構造設備、機器、器具、原料等及び工程資材、環境、職員等を含

む)が適切に設計され、維持管理されていることを検証・確認することは、製造所において

恒常的に無菌製品を製造するために重要である。一般的には無菌操作工程のバリデーショ

ンとして、プロセスシミュレーションが要件とされているが、再生医療等製品特有の多様

な製造工程に考慮し、製品毎に固有のリスクを的確に洗い出し、適切で合理的な検証方法、

判定基準を設定し、定期的に確認することが求められる。

12.2. 無菌操作工程の適格性評価方法 12.2.1. プロセスシミュレーション

再生医療等製品の製造工程に対するプロセスシミュレーションテストは、細胞あるいは

細胞と直接接触する培養液、薬液等の代わりに微生物培養用培地などを用い、その他の手

順、構造設備、原料等及び工程資材、環境、人員等を実生産と同様の条件で製造作業を実

施することにより、一連の無菌操作工程の適格性を評価する。実生産と同様の条件とは、

製造プロセスにおける無菌性保証に対し、実際に起こり得るワーストケース条件を再現す

ることを意図する。

12.2.2. 実施要領 1) 対象工程

39

プロセスシミュレーションは、無菌操作等区域への原料等及び工程資材等の搬入から

無菌操作終了後の細胞容器の搬出に至る全ての工程を対象とする。

ただし、再生医療等製品の特徴を考慮し、一連の製造工程の期間が長い、又は一連の

操作が複数の工程から構成される等の場合、単位操作ごとにプロセスシミュレーショ

ンを計画することも可能であるが、その場合はリスク評価により正当化すること。

2) 時期と頻度

① 製造開始前の評価

設計された製造手順、構造設備、機器、原料等及び工程資材、環境等を組み合わせ、

期待されたように最終製品の無菌性が確保されることを、実生産前にプロセスシミュ

レーションを連続3回、原則として別々の日に実施することにより確認する。ただし、

実生産を想定できるよう特有の変動要因(構造設備・機器、人員等)の影響を考慮し、

組み合わせ、繰り返し回数、実施間隔等を適切に設定しなければならない。

② 製造開始後の評価

製造開始後、定期的に無菌操作工程の適格性をプロセスシミュレーションにより評価

しなければならない。実施頻度は半年に1回を下回らないこととするが、半年に1回

を下回る場合は、それを正当化できるリスク評価を行うこと。また、様々な予測でき

ないリスクの顕在化の可能性も考慮し、製造当初に頻度を高めて実績データを蓄積し

た後に適切に頻度を見直すことも重要である。

作業所において、無菌性保証に影響を与える工程の変更、構造設備・機器等の変更、無

菌操作工程に携わる職員の変更、環境モニタリングの異常、汚染製品の検出等が発生

した場合には、製品品質への影響を考慮した適切な回数のプロセスシミュレーション

をその都度実施しなければならない。

3) 構造設備

作業所に設置されている無菌操作工程に使用する全ての構造設備について、その機能、

使用方法、使用工程、等による無菌性確保への影響度を考慮した上で、各構造設備を

適切に組み合わせ、プロセスシミュレーションを実施すること。

設備の運転条件(速度や稼働時間)は、汚染リスクの高い条件を設定し、構造設備の

キャリブレーション、適格性評価、清掃、洗浄、滅菌、定期保守等は、プロセスシミ

ュレーション実施前に標準操作手順書に従って行うこと。また、構造設備の稼働実績、

不良・故障に対する修繕履歴、重要部品の交換・更新、耐用年数等の無菌性保証に及ぼ

すリスク評価行い、実施計画へ反映することも検討すること。

なお、各無菌操作工程及び構造設備・機器を 6 箇月以上使用しなかった場合は、再使

用する前に当該工程の製品品質への影響を考慮したプロセスシミュレーションを初

期計画に準じて実施すること。

4) 原料等及び工程資材

40

無菌操作等区域に搬入する原料等及び工程資材は、それぞれの無菌操作工程において

実製造を反映できる実用的で最大量となるケースを想定して行う。また、実生産と同

様の標準操作手順書に従って洗浄・滅菌処理を行った原料等及び工程資材を使用する

こと。

バルクの場合は一製造単位の量を用い、プロセスシミュレーションを実施すること。

5) 職員

再生医療等製品の無菌操作工程は、手作業で行われることが多く、プロセスシミュレ

ーションには無菌操作工程に従事する各職員の無菌操作スキルが大きく影響するこ

とが推測されるため、無菌操作工程に携わる職員に対する、無菌操作に関する教育訓

練が重要である。教育訓練によるスキル取得の認定に加え、技能の確認としてプロセ

スシミュレーションに少なくとも年 1 回の頻度で参加しなければならない。

また、実施する職員数は、実生産の勤務シフト等を考慮し、対象工程に同時に従事す

る最大職員数で実施すること。

12.2.2.1. 実施手順 1) 培地の選択と性能試験

製造工程において細胞あるいは細胞と直接接触する培養液、薬液等の代わりに、ソイ

ビーン・カゼイン・ダイジェスト培地又は他の適当な微生物培養用培地などを使用す

る。無菌操作の工程に液体以外の原料等又は工程資材を含む場合(例えば、滅菌済み

足場材料)は、実製造で使用するものを用いることを原則とする。

使用する微生物培養用培地は、日本薬局方の培地性能試験により、あらかじめ微生物

の発育が確認されているものを用いること。また、器材や足場材料等が微生物の発育

を阻害する可能性がある場合は、日本薬局方の発育阻止活性試験により判定結果への

影響を確認しておくこと。

2) 培養及び観察

①細胞あるいは細胞と直接接触する培養液、薬液等の代わりに微生物培養培地を用いて、

対象となる製造工程作業を実施する

② 培地を充てんした容器を旋回や反転させ、容器内全面に培地を接触させる。培地充て

ん量は、旋回や反転させることで容器内全面に接触し、微生物の生育を確実に判別で

きる量とする

③ 容器を 20~35 ℃の範囲内の設定温度で 14 日間以上培養する。この範囲以外の温度で

培養する場合は、その妥当性を示すこと。培養温度は設定温度に対して± 2.5 ℃の範囲

内であること

④ 異なる二つの温度で培養する場合には低い温度で 7 日間以上、次いで高い温度で 7 日

間以上培養する

⑤ 培養最終日に菌の発育の有無を観察する

41

3) 判定基準と対処

実施した全ての容器で汚染が認められない場合、「適合」と判定する。ただし、容器に

漏れが認められたもの、又は損傷したものは記録した上で評価対象から除去する。

汚染が認められた場合は、汚染菌の同定及び性状検査を含め汚染原因の特定を行い、

是正策を講じた後再度プロセスシミュレーションを実施すること。

12.2.2.2. 実施における留意事項 1) 実施にあたり、日本薬局方 参考情報「培地充てん試験(プロセスシミュレーション)」

を参考にすること。

2) プロセスシミュレーションは、実施前の計画書から、実施中の記録及び報告書等を全

て文書化しなければならない。

3) 日常的に発生することが明らかな一時的な介在作業(例えば、原料等・工程資材の供

給、環境モニタリング、製造作業の記録等)及び想定される無菌操作中の突発的な作

業(ライン修正、設備の調整、部品の修理又は交換など)については、実用的な範囲で

ワーストケースを考慮してシミュレートすること。

4) 不活性化ガスを日常的な製造で使用している場合でも、嫌気的な条件でのシミュレー

ションを目的としていない限り、不活性化ガスを空気に代えること。

5) アイソレータシステムは微生物の混入に対して堅牢性が高い構造を有しているため、

初期評価を行った後、以下の条件を満たし、微生物による汚染リスクの低いことが立

証できる場合は、プロセスシミュレーションの実施頻度を低減することができる。

① 構造的に職員と再生医療等製品の曝露する環境が完全に隔離されていることが確認

できること

② アイソレータシステムのリスク要因(グローブ、差圧制御、搬出入操作、除染機能、

等)について、それぞれ適切な技術と管理により対処されていること

③ アイソレータシステムでの再生医療等製品の無菌操作の適切性を確実にするための

他の要素(外部の空調設備、構造設備・機器や工程資材などの細胞接触面、内部環境清

浄化性能など)が適切な評価法により保証されていること

12.3. 無菌性保証に関する運用管理 再生医療等製品においては、原料として無菌ではない細胞を製造工程に使用する場合が

あり、また手作業に依存する工程も多いため、実製造においては無菌性確保に関するリス

クへの対応は慎重に行う必要がある。細胞を用いずにあらかじめ設計した手順、設備、環

境、原料等及び工程資材等を用いて実施するプロセスシミュレーションテストでは、この

ようなリスクに対する検証が必ずしもできない場合もあるため、実製造の工程中や最終製

品に関する無菌性に関連するモニタリングの評価結果が、原料細胞に起因する汚染リスク

42

を含めた製造システムの無菌性に関する堅牢性評価に有効な場合も考えられる。

このように無菌性の品質確保のための管理戦略として、原料細胞に起因する無菌性保証

への影響を考慮し、本指針で記載した無菌性保証に関わる種々の管理項目(5~11 章)か

ら、品質リスクマネジメントに基づき、その目的に照らして妥当な評価方法・指標を選定

するべきである。実生産開始後に計画的に収集したモニタリング成績により、無菌操作工

程の適格性を確認・評価し、結果に応じて手順、仕様、運用、管理等を見直すことは、実

生産前の製造実績が少ない再生医療等製品には重要であると考える。

13. 微生物学的試験

再生医療等製品は、 一般的な医薬品と同様の微生物学的試験法を適用するのが難しく、

最終製品や製造方法の特性に基づいて、適切な微生物学的試験法を選択する必要がある。

再生医療等製品の工程内管理試験及び出荷試験への適用については、「再生医療等製品(ヒ

ト細胞加工製品)の品質、非臨床試験及び臨床試験の実施に関する技術的ガイダンス」(平

成 28 年 6 月 14 日付け薬機発第 0614043 号)を参考にできる。試験法の選定、評価におい

ては、第十七改正日本薬局方一般試験法及び参考情報を参考にすることができる。

再生医療等製品の出荷時試験としては、無菌試験、マイコプラズマ否定試験、エンドト

キシン試験等が実施されるが、最終製品の無菌試験だけでは無菌性を保証する上で十分と

は言えない場合においては、工程内でも微生物管理を実施することが望ましい。

13.1. 無菌試験 無菌試験は、第十七改正日本薬局方一般試験法に規定する無菌試験法を基本とする。原

則として最終製品を試験検体として実施することが求められているが、検体量の限界や試

験に要する時間の制限等から、必ずしも本無菌試験法を適用できない場合が考えられる。

その場合は科学的に合理的な試験方法を採用することが可能であるが、その際には、その

方法に合わせて、採取できる検体量、各試験に使用される検体量の配分等を考慮し、最善

となる試験方法を設定することが求められる。

13.2. マイコプラズマ否定試験 マイコプラズマ否定試験は、第十七改正日本薬局方参考情報「バイオテクノロジー応用

医薬品/生物起源由来医薬品の製造に用いる細胞基材に対するマイコプラズマ否定試験」

を参考にすること。なお、「C.核酸増幅法(C 法)」を採用する場合、適切なバリデーショ

ンを行い、原則として、いずれの菌種に対しても 10 CFU/mL 以下を検出可能な感度を有し

た試験方法を用いることが望ましい。

13.3. エンドトキシン試験

43

エンドトキシン試験法は、日本薬局方一般試験法に規定するエンドトキシン試験法を参

考にするが、再生医療等製品への適用に当たっては以下に留意すること。

1) 再生医療等製品に係る原料、工程資材、製造用水等のエンドトキシンレベルを適切に

設定し管理すること。

2) エンドトキシン試験は、あらかじめ反応干渉因子試験による評価を行い、試料溶液に

反応干渉因子が存在しない有効希釈倍数を明確にしておくこと。

3) エンドトキシン試験については、適切なバリデーションを実施すること。

14. 微生物迅速試験法

近年の科学技術の進歩により微生物迅速試験法が多く開発されており、無菌試験や工程

内の微生物管理(製造環境や製造用水の微生物モニタリング等)などにおいて、迅速な品

質判断に貢献している。特に無菌試験において従来の培養法では、判定期間に時間を要す

るため、技術的に適切な方法を採用し、出荷時点までに結果を把握するのが望ましい。ま

た、工程内の微生物管理試験に加え製造環境の微生物モニタリングに対し微生物迅速試験

法を適用することにより、可能な限り迅速かつ広範囲に微生物汚染の監視が可能となり、

最終製品の無菌性保証を高めることができるため積極的な活用が期待される。

微生物迅速試験法の選択に当たっては、採用する試験方法の原理や測定の特性などを踏

まえ、慎重に評価すること。微生物迅速試験法の適用に当たっては当該試験法の検出精度

や特異性等に関する情報収集と当該試験法の妥当性確認を十分に行うべきである。

14.1. 微生物迅速試験法の適用

1) 適用する微生物迅速試験法の評価(バリデーション)を実施すること。評価に当たっ

てはそれぞれの測定法で測定対象となる標準試料を用いて実施すること。

2) 微生物迅速試験法は測定対象及び測定原理が従来の培養法と異なるため、これまで蓄

積されたデータと相関が得られないことがある。この場合においては従来法との相関

を求めずに、微生物迅速試験法で得られた結果を用いた、新たな管理方法の妥当性を

検証すること。

3) 微生物管理試験に関して、警報基準値(アラートレベル)と処置基準値(アクション

レベル)を設定する場合には、適用する微生物迅速試験法から得られたデータを元に

科学的根拠(統計学的手法や傾向分析等)により設定することができる。

14.2. 微生物迅速試験法のバリデーション 1) バリデーションに当たっては、日本薬局方参考情報微生物迅速試験法の「2.バリデー

ション」を参考とし、分析法のバリデーションによって実施すること。更に適用機器

44

のメーカーによる基礎的な検証結果なども含めて用途に応じた適切な性能を確認す

ること。

2) 試験方法のバリデーションに当たっては、測定対象が微生物の存在や量の指標となる

科学的根拠を明らかにし、従来法と比較して優位な点と共に、利用に当たって考慮す

べき点について検討すること。

3) リスクアセスメントを用いた試験プロセスの変更管理により、微生物迅速試験法によ

る管理戦略を継続的に改善すること。

【参考情報】

適用に当たっては、以下の公定法を参考にすること。

1) 第十七改正日本薬局方参考情報「微生物迅速試験法」。

2) European pharmacopeia 2.6.27. MICROBIOLOGICAL EXAMINATION OF CELL-

BASED PREPARATIONS.

3) 21 CFR Part 610,Section 610.12 Sterility.

45

A1.HEPA フィルターの完全性

本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 7.3 項を参照すること。

A2.無菌中間製品の保管及び輸送の管理

本章において「無菌中間製品」とは、無菌的に調製された後、無菌状態を維持しつつ、

保管又は輸送される原料等、中間製品であって、液又は粉末のものをいう。以下に無菌中

間製品の無菌性を維持するための容器及び作業の要件を示す。本章に係る内容は、無菌医

薬品製造指針 10 章を参照すること。

A3.滅菌工程

本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 13 章を参照すること。原料等及び工程資材の

滅菌に係る一般要件については、本指針 10.5 項を参照すること。

A4.無菌製造設備の定置洗浄化(CIP)

CIP とは、適切な洗浄剤を用いて、装置、配管等を取り外すことなく一連の設備を洗浄

する方法である。実施する際の留意点は CIP 対応設備だけでなく一般的な洗浄作業全般

にも適用すること。本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 14 章を参照すること。

A5.無菌製造設備の定置蒸気滅菌(SIP)

SIP とは、装置を取り外すことなく一連の設備を滅菌する方法である。滅菌媒体として

高圧飽和蒸気を用いる方法が一般的である。本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 15

章を参照すること。

A6.無菌充てん工程

本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 16 章を参照すること。

A7.ろ過滅菌工程

本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 17 章を参照すること。本章において示される

「製品」には、培地などの原料等を含む。

46

A8.バイオハザード対策用キャビネット/アイソレータシステム/バリアシステム/ブ

ローフィルシール

A8.1. バイオハザード対策用キャビネット(安全キャビネット) A8.1.1. 一般要件 クラス II のバイオハザード対策用キャビネットは、機内の無菌環境を達成することが

できる装置である。機内の気流を制御することにより、空気が機外へ流出することを防

ぐ作業者保護機能、機外の空気が機内へ流入することを防ぐ試料保護機能、及び機内左

右に置かれた試料間同士が相互に汚染しない機能を持つ。ただし、前面が開放されてお

り密閉された空間を提供するものではない。

1) バイオハザード対策用キャビネットの内部の清浄度を再生医療等製品の無菌性を確

保できる適切なレベルに保つために、バイオハザード対策用キャビネットを設置す

る環境の清浄度を適切に設定して管理すること。

2) バイオハザード対策用キャビネットに外部から風が直接あたらない場所に設置する

こと。

A8.1.2. バイオハザード対策用キャビネットの設計 バイオハザード対策用キャビネットの設計においては、装置の構造、運転条件、バイ

オハザード対策用キャビネット内で行う各種作業に関するリスク評価を行い、結果を仕

様に反映すること。

A8.1.3. 空調システム 1) バイオハザード対策用キャビネットの内部の清浄度は、無菌操作等区域として再生

医療等製品の無菌性を確保できる適切なレベルとすること。

2) 空気の流速及び気流パターンは、バイオハザード対策用キャビネットの内部におけ

る作業内容に適した清浄環境を維持するために十分なものであること。

A8.1.4. 除染 バイオハザード対策用キャビネット内表面の除染に先立ち、必要に応じてバイオハザ

ード対策用キャビネット内表面を洗浄し、乾燥させること。

除染剤は、バイオハザード対策用キャビネットの材質、バイオハザード対策用キャビ

ネット内においての作業内容、バイオハザード対策用キャビネット内部に持ち込む原料

等及び工程資材などの量及び形態、バイオハザード対策用キャビネット内部のバイオバ

ーデン等を考慮して選定すること。

A8.1.5. 教育訓練

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バイオハザード対策用キャビネットの使用に当たっての教育訓練には、少なくとも以

下の事項を含むこと。

1) 無菌操作に関する一般事項

2) 中間製品、原料等、工程資材などの搬入及び製品の搬出

3) バイオハザード対策用キャビネットの運転、モニタリング及び維持管理

4) 工程に特異的な標準作業手順

A8.1.6. 日常管理 バイオハザード対策用キャビネットの日常管理には、少なくとも以下の事項を含むこ

と。

1) バリデーションの結果を基に、バイオハザード対策用キャビネットを運転する作業

に係る手順書を作成すること。

2) 消耗部品について、維持管理のための計画を作成し、交換の時期を明らかにしてお

くこと。

A8.2. アイソレータシステム A8.2.1. 一般要件 適切に設計されたアイソレータシステムは高度な無菌性環境が達成されるが、完全に

密閉された空間ではない。従って、薬理活性の高い薬物の製造においては内部を陰圧に

保持したアイソレータシステムが用いられることもあるが、通常の再生医療等製品に係

る製品の製造においては、内部が陽圧に保持されたアイソレータシステムが用いられ

る。また、製品の無菌性を高度に保証するためには、HEPA フィルター、グローブ、ハー

フスーツ及び各種シール部の保守・点検を含む包括的な予防保全プログラムが必要であ

る。

1) 再生医療等製品に係る製品の製造を目的とするアイソレータシステムを設置する環

境の空気の清浄度レベルは、少なくともグレード D とすること。

2) 二つのアイソレータ筐体の接続並びに原料等及び工程資材の搬入及び搬出に用いる

接続ポートは、アイソレータシステムの無菌性を維持することができる構造とする

こと。

3) ハーフスーツ、グローブ、搬出口及び接続ポートの数は、汚染の機会を少なくする

ために必要最小限とすること。

4) 製品搬出口等の開口部にあっては、外部からの汚染を防ぐことができる構造とし、

常にアイソレータシステム内部から外部へ向かう気流を確保すること。一般的には

適切な差圧を維持することにより達成する。

5) アイソレータシステムの内表面の除染手順については、適用する除染剤に対して抵

抗性の高い芽胞の 4~6 log の減少が達成されることを検証したものであること。除

48

染の程度は、アイソレータシステムの用途及びバイオバーデンを考慮して設定する

こと。アイソレータシステムに持ち込む工程資材等の除染手順についても、同様に 4

~6 log の減少を実証の上確保すること。

6) 製品と接触する表面の除染手順については、除染前のバイオバーデンをできるだけ

低く抑える方策を講じると共に、6 log 以上の減少を達成できる条件によること。

7) あらかじめ定めた基準に基づいてリーク試験を実施すること。

8) 除染の頻度は、リスクに基づいて適切に設定し、バリデーションによって確立して

定期的に見直すこと。

A8.2.2. アイソレータシステムの設計 アイソレータシステムの設計においては、装置の構造、運転条件、アイソレータシス

テムで行う各種作業に関するリスク評価を行い、結果を仕様に反映すること。

A8.2.3. 空調システム 1) アイソレータシステムの内部の清浄度は、無菌操作等区域に適合するものであるこ

と。

2) アイソレータシステムの換気回数は、微粒子及び汚染物質の増加並びに昇温を避け

るために十分な回数であること。

3) 空気の流速及び気流パターンは、アイソレータシステムの内部における作業内容に

適した清浄環境を維持するために十分なものであること。

4) アイソレータシステムの内部の空気の循環は、HEPA 規格以上のフィルターを介して

行うこと。アイソレータシステムの外部との吸排気も HEPA 規格以上のフィルター

を通すこと。

5) アイソレータシステムの差圧は設置室に対して最低 17.5 Pa 程度を保持すること。た

だし、作業にハーフスーツ、グローブを使用する場合等、作業の内容によっては、

さらに高い差圧を保持することが必要となる。運転中は差圧について連続的にモニ

タリングを行い、圧力異常低下時においては警報を発するようにされていること。

A8.2.4. 除染 1) 除染工程の確立に当たっては以下の点を考慮すること。

① アイソレータシステム内表面の除染に先立ち、必要に応じてアイソレータシステム

内表面を洗浄し、乾燥させること。

② 除染剤の投入量

③ バイオロジカルインジケータ

④ ケミカルインジケータ

⑤ アイソレータシステム及び周囲の温度分布

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⑥ 湿度

⑦ 除染剤への曝露時間(除染時間)

⑧ ガス除染剤の場合は曝露濃度

⑨ 差圧

⑩ 除染剤の拡散確認

⑪ バイオバーデン

2) 除染剤は、アイソレータシステムの材質、アイソレータシステムにおいての作業内

容、アイソレータシステムに持ち込む工程資材等の量及び形態、アイソレータシス

テムのバイオバーデン等を考慮して選定すること。除染剤は、過酸化水素のほか、

過酢酸、オゾン、二酸化塩素等である。

3) 除染に使用するミスト、蒸気又はガスの特性、及びこれらの発生装置の運転を十分

に理解した職員が除染作業を行うこと。

4) 除染後、除染剤濃度が許容基準以下に低下していることを確認すること。この許容

基準は職員の安全のほか、製品や後続工程への影響を考慮すること。

5) 除染剤はロット毎に、あらかじめ定められた除染剤の組成との同一性を確認するこ

と。

A8.2.5. 教育訓練 アイソレータシステムの使用に当たっての教育訓練には、少なくとも以下の事項を含

むこと。

1) 無菌操作に関する一般事項

2) グローブ及びハーフスーツの適切な使用方法

3) アイソレータシステムの内部除染

4) アイソレータシステムの完全性試験

5) 中間製品、原料等、工程資材などの搬入及び製品の搬出

6) アイソレータシステムの運転、モニタリング及び維持管理

7) 化学物質等安全データシートに基づいた除染剤の安全管理及びアイソレータシステ

ムとの適合性

8) 工程に特異的な標準作業手順

A8.2.6. 日常管理 アイソレータシステムの日常管理には、少なくとも以下の事項を含むこと。

1) バリデーションの結果を基に、アイソレータシステムを運転する作業に係る手順書

を作成すること。

50

2) アイソレータシステムでは比較的高い完全性が維持されていると考えられるが、絶

対的な完全性が保たれているわけではない。したがって、一定期間毎及び除染の都

度その前にリーク試験を行うこと。以下にリーク試験の例を示すが、リーク試験は

これらの方法に限らない。

① 圧ホールド試験

② ガス検出法

3) グローブの素材は使用する洗剤及び除染剤に耐性のあるものを使用すること。

4) グローブは毎使用時、目視により破れ等がないことを確認すること。

5) グローブによる作業は、グローブを保護する目的でインナーグローブを装着して行

うことが望ましい。

6) 物理的なグローブリーク試験及びスワブ法等による微生物学的なモニタリングは定

期的に行うことが望ましい。

7) 消耗資材について、維持管理のための計画を作成し、交換の時期を明らかにしてお

くこと。

8) 除染を実施するときは、温度、湿度、ガス濃度等、除染に影響を及ぼすと考えられ

る項目について、あらかじめ定めた測定ポイント箇所において測定し、記録を作成

すること。

9) アイソレータシステム内部の微粒子数は、あらかじめ定めた箇所において、一定間

隔でモニタリングを行うこと。

10) 微生物学的モニタリングは、構造設備の特徴及び作業の特性に応じたリスクに基づ

き、あらかじめ定めた箇所において一定間隔で実施すること。一般的には、アイソ

レータシステム内部の表面、グローブの表面、アイソレータシステムに搬入した工

程資材及びそれらの接触箇所等がモニタリングの対象となる。測定箇所と測定頻度

の妥当性については、定期的に評価すること。

A8.3. アクセス制限バリアシステム (RABS) アクセス制限バリアシステム(Restricted Access Barrier System、以下「RABS」とい

う。)は、無菌操作において職員と無菌操作等区域を分離し、職員による無菌操作等区域

への直接的な介入を減らすことにより、製品の高度な無菌性を達成する方策の一つであ

る。

RABS は、物理的な障壁と、HEPA フィルターを介して供給される気流、適切な管理運

用システム等を主要な要素とする、ハードとソフトを融合した無菌操作等区域を有する

システムをいう。

RABS の設備構成は、簡易的なハードウォールから、アイソレータシステムと同等の

強固な障壁と隔離性能をもつものまで様々である。また付随する空調システムの方式に

51

ついては、設置室の空調を利用するものや、独立した空調系統を持つもの等がある。本

項では、RABS の設計並びに運用に関する基本的要件を示す。

A8.3.1. 一般要件 1) RABS 内の環境や空調システムは、本指針の 5 章に示す無菌操作等区域に掛かる要

件を満足すること。

2) RABS が設置される環境の清浄度レベルは、グレード B 以上とすること。

3) 無菌操作中に職員が介入する場合は、グローブ、又はハーフスーツを介して作業を

行うこと。グローブやハーフスーツについては、製品汚染のリスクを最小限とする

ために、消毒又は除染・滅菌や点検、交換などに関して適切な手順を定め、これを

実行すること。グローブの運用に関する具体的な要件についてはアイソレータの項

(A8.2 項)を参照のこと。

4) RABS 内の製品接触面は SIP により滅菌されることが望ましい。SIP が不可能な部分

については、オートクレーブなどで滅菌した後、無菌的に組み立てること。アイソ

レータシステムのような除染工程を実施することが可能な場合は、製品接触面につ

いて更に高度な微生物学的清浄度を達成することができる。

5) RABS 内の製品の非接触面については、適切な方法により消毒又は除染・滅菌を行

うこと。

6) RABS 内へ滅菌された原料等及び工程資材を持ち込む場合は、汚染を防ぐ適切な移

送システムによって行うこと。容器に入った原料等を容器毎、RABS 内に持ち込む

場合は、容器の外面を適切な方法で除染すること。

7) 製造作業中に RABS の扉を開けて職員の介入操作を行う場合は、製品の汚染リスク

が高くなるため、以下に留意すること。

① 介入操作後に適切な消毒又は除染・滅菌を行い、潜在的な汚染リスクを排除するこ

② 扉を開けた時に RABS 内にあった容器の扱いについては、製品に対する汚染リスク

に基づき、あらかじめ適切な処置手順を定めておくこと。想定外の事象により扉を

開けた場合は、原則として RABS 内の容器を全て取り除くこと

③ 介入操作は全て記録すること

8) 無菌操作中に開ける可能性のある扉の外側には、ISO 5(少なくとも無負荷時)のプ

ロテクションブースを備えていることが望ましい。扉を開けたときに、RABS 内か

らプロテクションブースへ向かう気流が確保されること。

A8.3.2. 教育訓練

RABS の使用に当たっての教育訓練には、少なくとも以下の事項を含むこと。

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1) 無菌操作に関する一般事項

2) グローブ及びハーフスーツの適切な使用方法

3) RABS 内部の消毒又は除染・滅菌

4) 中間製品、原料等、工程資材などの搬入及び搬出手順

5) RABS の運転、監視、測定及び維持管理

6) 扉を開けて行う介入操作の手順と留意事項

A8.4. ブローフィルシール ブローフィルシールに係る内容は、無菌医薬品製造指針 19.3 章を参照のこと。

A9. 製薬用水

本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 A2 章を参照のこと。

A10.有害生物管理

A10.1. 一般要件 1) 再生医療等製品の製造所における有害生物管理は、製造環境の清浄度レベルを維持す

る上で重要である。本指針では、昆虫綱、蛛形綱(クモ、ダニ)、唇脚綱(ゲジ、ムカ

デ)、等脚類(ワラジムシ)等の節足動物を含む生物群を総称して「昆虫類」、製造環境

にとって不要な動物(ねずみ族等の小動物や昆虫類等)を「有害生物」とする。

有害生物は微生物等の汚染源となることから、無菌操作等区域並びに清浄度管理区域

における清浄度の微生物学的状態に影響を与えており、その種類と侵入経路の特定は

構造設備のバリア性能の状態を確認する上で重要である。

2) 再生医療等製品製造所において生息が発見される有害生物は、一般的に発見された区

域外から侵入し、生息環境があればその区域内で増殖する。そのため製造所における構

造設備は、無菌操作等区域並びに清浄度管理区域と区域外の外界環境との間に、有害生

物の侵入を防ぐためのバリアを必要に応じて形成するとともに、侵入リスクを低減さ

せるために防護すべき対象の周囲を有害生物が生息し難い環境に維持管理することが

重要である。また、その区域内においても、有害生物の増殖を抑制するように環境を維

持管理すべきである。

3) 無菌操作等区域並びに清浄度管理区域において、有害生物が自ら移動し内部にて繁殖

する可能性を考慮し、物資の持ち込み作業の管理手順に加え、有害生物に対応した管理

プログラム(以下「有害生物管理プログラム」という。)を確立しておかなければなら

ない。

有害生物管理は、製品と製造環境に対するリスクを考慮し、リスクアセスメント結果に

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基づき計画し、実施すること。リスクアセスメントではハザードとなる有害生物の動態

を考慮し、製品や環境への影響を評価したうえで、有効な防除対策を計画し、実施する

ことが重要である。有害生物のモニタリングは、リスクアセスメントを行ううえで有効

な手段となる。

4) 有害生物管理プログラムの確立において、リスクアセスメントでは次の項目を実施す

ることが望ましい。

① 生態及び侵入経路を考慮した有害生物の特定

② 特定された有害生物のリスク評価

③ リスク評価を踏まえた管理基準(リスク受容レベル)の設定及び逸脱時の処置方法

A10.2. 有害生物管理プログラム 1) 無菌操作等区域並びに清浄度管理区域に見合った文書化された有害生物管理プログラ

ムを持ち、記録を作成し保管すること。

2) 有害生物管理プログラムは、次の要件を含むことが望ましい。

① モニタリングから是正措置までの手順

② 管理基準値逸脱時の防除対策の手順

③ 防除対策後の後追い調査の手順

④ 清浄計画の見直し

⑤ 点検及び作業員教育

⑥ 実施結果に基づく、プログラムの健全性の確認と改善

3) モニタリングの範囲

再生医療等製品に係る製品の製造所のモニタリングは、清浄度管理区域を主な範囲とし、

その結果や必要に応じて無菌操作等区域と製品の品質への影響を評価するものとするこ

とが望ましい。構造設備の新設時、工事後等は無菌操作等区域についても調査すること

が望ましい。

4) モニタリングにおけるサンプリング

① 無菌操作等区域並びに清浄度管理区域におけるサンプリングに用いる器具等は製品

及び環境を汚染しないものであること。

② サンプリングの方法や頻度及びサンプルサイズは有害生物の生態から選定し、妥当性

のある方法で実施すること。

③ サンプリングすることによる製造環境への影響も評価すること。

5) 管理基準

① 管理基準値を反映することが望ましい

② 管理基準値の運用においては、リスクに応じ、平均値のほか、最大値による管理が望

ましい

③ 内部発生と外部からの侵入とに分けて評価

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④ 個体数のほか、生息状況も評価

⑤ 区域別、種類別に評価

6) モニタリング結果から迅速に是正措置が実施され、是正措置の効果を適切に確認する

とともにモニタリング結果を踏まえた予防措置の計画を改善すること。

7) 予防措置は管理基準を逸脱しにくい環境を維持するために、過去のモニタリング結果

から、清掃・洗浄、構造設備のメンテナンスなどを考慮した計画を立てること。

A10.3. 防除対策 生息が発見された有害生物の種類に応じた適切かつ効果な対策を実施すること。対策は

発生若しくは侵入元に加え、生態を考慮すること。

1) 対種防除

有害生物は、対象種に応じた対策を実施すること。

2) 無菌操作等区域並びに清浄度管理区域外の対策

無菌操作等区域並びに清浄度管理区域において検出される有害生物の多くはそれらの

区域外からの侵入に起因している。したがって、これらを考慮した区域外の点検と生息

抑制の対策を実施することが望ましい。

3) 有害生物の侵入を防ぐためのバリア構造

前項のほか、一般的に外部からの侵入や異常な内部発生がある場合においては、製造所

の有害生物管理プログラムの前提条件(管理対象外の環境変動を含む)を再度確認する

ことが望ましい。また、構造設備については、経年劣化を考慮してバリア機能を再確認

することが望ましい。なお、構造設備や環境基準の変更時には、リスクアセスメントを

再実施し、必要に応じてプログラムの見直しを検討すること。

4) 環境制御における殺虫剤等の化学品の使用に関して

① 化学品を環境制御に用いる場合は、製品及び製造機器、作業者への影響などを考慮し

使用すること。また、処理方法なども含めて、関係法令などに準じた取り扱いをする

こと

② 基本的に無菌操作等区域並びに清浄度管理区域においては、日常的又は定期的な清浄

度管理に用いる化学品を除き、通常用いない化学品(殺虫剤等)を使用するべきでは

ない

③ 通常用いない化学品をやむを得ず使用した場合においては、防除対象だけでなく、製

品や環境への影響について確認を行うこと。また、無菌操作等区域並びに清浄度管理

区域の外において使用するときであっても拡散に注意すること

④ 通常用いない化学品を無菌操作等区域並びに清浄度管理区域において使用した場合

においては、その化学品の除去に適した清浄化を実施し残留がないか確認を行うこと

⑤ 製造所において使用する化学品に係る化学物質等安全データシート(MSDS)及び当

該殺虫剤の使用の記録を保管すること

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A11. バイオセーフティ及びバイオセキュリティ対策 本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 A4 章を参照のこと。

A12. 試験検査 本章に係る内容は、無菌医薬品製造指針 A6 章を参照のこと。ただし、エンドトキシン

試験については、本指針の 13.3 項を参照のこと。