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- 79 - と畜場で発生したヨーネ病の検査事例 ○田澤陸 後藤介俊 中島靖剛 迫坪敏宏 末吉食肉衛生検査所 ヨーネ病は反芻動物の肉芽腫性腸炎を特徴とする Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis による感染 症であり,家畜伝染病予防法で法定伝染病に指定されている。 平成 15 年のと畜場法規則改定でとさつ禁止・全部廃棄基準に「全身症状を呈しているものに限る。」の 規定が除かれて以降は,本県と畜場における発生はみられなかったが,今回,病畜として搬入された和牛で ヨーネ病と判定した事例に遭遇したのでその概要を報告する。 症例および方法 当該牛について 当該牛は平成 26 4 10 日に病畜として搬入さ れた黒毛和種の雌,73 ヶ月齢。稟告は削痩,食欲 なしおよび水様下痢であり,3 2 日に発病,3 が初診日であり 4 9 日が終診日であった。診断は 低タンパク血症であり,補液等により改善を図って いたが,回復の兆しなく,病畜として搬入された。 生体および解体所見 生体所見では下顎の腫脹,被毛粗剛,削痩がみら れた。解体所見としては空回腸の著しい肥厚を認め た。また,回腸粘膜面は大脳回転様に肥厚していた。 (図1) 経過が比較的短く,生体検査時はヨーネ病を疑って いなかったが,解体検査でヨーネ病を疑い,保留扱 いとし,試験室で精密検査を実施した。 判定までの経過 4 10 日,保留当日は病変部腸粘膜の塗沫標本 を作成し,抗酸菌染色チール・ネルゼン法を施した ところ赤く染まる菌体が確認され,抗酸菌の存在が 認められた。(図2)また,同時に病理組織検査用 のホルマリン固定材料および細菌・遺伝子検査用生 材料を採取した。 生活衛生課と協議した結果,ヨーネライザ・スクリ ーニング KS(共立)で陽性を確認後,中央家畜保 健衛生所へ検体を送付するよう指示があったため, 翌日,曽於家保からヨーネライザのキットを借り受 け実施した。結果,陽性だったため,中央家保へ病 性鑑定を依頼し検体を送付した。 また,検査所においては 4 13 日に病理組織検査 を行い,抗酸菌による肉芽腫性炎であると診断され, データを中央家保へ提供した。 4 14 日,中央家保からリアルタイム PCR の結果 と病理組織検査とを踏まえヨーネ病と確定診断した 旨の連絡を受け,最終的にヨーネ病として全部廃棄 命令書を発行するとともに家畜伝染病予防法第 13 条第 1 項の規定に基づく届け出を行った。 なお,当該枝肉等については 4 11 日の時点で施 設側の自主的な判断により場内焼却が実施されてお り,またと畜当日には施設消毒が行われている。 図1

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Page 1: と畜場で発生したヨーネ病の検査事例 › ae09 › kenko-fukushi › yakuji...LAMP 法およびPCR の比較 検出結果に関してはPCR,LAMP 法とも糞便か

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と畜場で発生したヨーネ病の検査事例○田澤陸 後藤介俊 中島靖剛 迫坪敏宏

末吉食肉衛生検査所

は じ め に

ヨーネ病は反芻動物の肉芽腫性腸炎を特徴とする Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis による感染

症であり,家畜伝染病予防法で法定伝染病に指定されている。

平成 15 年のと畜場法規則改定でとさつ禁止・全部廃棄基準に「全身症状を呈しているものに限る。」の

規定が除かれて以降は,本県と畜場における発生はみられなかったが,今回,病畜として搬入された和牛で

ヨーネ病と判定した事例に遭遇したのでその概要を報告する。

症例および方法

当該牛について

当該牛は平成 26 年 4 月 10 日に病畜として搬入さ

れた黒毛和種の雌,73 ヶ月齢。稟告は削痩,食欲

なしおよび水様下痢であり,3 月 2 日に発病,3 日

が初診日であり 4 月 9 日が終診日であった。診断は

低タンパク血症であり,補液等により改善を図って

いたが,回復の兆しなく,病畜として搬入された。

生体および解体所見

生体所見では下顎の腫脹,被毛粗剛,削痩がみら

れた。解体所見としては空回腸の著しい肥厚を認め

た。また,回腸粘膜面は大脳回転様に肥厚していた。

(図1)

経過が比較的短く,生体検査時はヨーネ病を疑って

いなかったが,解体検査でヨーネ病を疑い,保留扱

いとし,試験室で精密検査を実施した。

判定までの経過

4 月 10 日,保留当日は病変部腸粘膜の塗沫標本

を作成し,抗酸菌染色チール・ネルゼン法を施した

ところ赤く染まる菌体が確認され,抗酸菌の存在が

認められた。(図2)また,同時に病理組織検査用

のホルマリン固定材料および細菌・遺伝子検査用生

材料を採取した。

生活衛生課と協議した結果,ヨーネライザ・スクリ

ーニング KS(共立)で陽性を確認後,中央家畜保

健衛生所へ検体を送付するよう指示があったため,

翌日,曽於家保からヨーネライザのキットを借り受

け実施した。結果,陽性だったため,中央家保へ病

性鑑定を依頼し検体を送付した。

また,検査所においては 4 月 13 日に病理組織検査

を行い,抗酸菌による肉芽腫性炎であると診断され,

データを中央家保へ提供した。

4 月 14 日,中央家保からリアルタイム PCR の結果

と病理組織検査とを踏まえヨーネ病と確定診断した

旨の連絡を受け,最終的にヨーネ病として全部廃棄

命令書を発行するとともに家畜伝染病予防法第 13

条第 1 項の規定に基づく届け出を行った。

なお,当該枝肉等については 4 月 11 日の時点で施

設側の自主的な判断により場内焼却が実施されてお

り,またと畜当日には施設消毒が行われている。

図1

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結果

・病理組織検査結果

各臓器に HE 染色および抗酸菌染色を施した。回

腸では粘膜固有層から粘膜下組織にかけ,類上皮

細胞の著しい増殖が認められ,多数の抗酸菌がみ

られた。また,粘膜固有層には巨細胞も散見され

た。(図3)盲腸,腸間膜リンパ節では回腸と同様

に類上皮細胞の増殖が認められ,多数の抗酸菌を

認めた。肉眼的に著変のなかった肝臓においては

単核系細胞の小集簇巣が散見され,一部に小集の

抗酸菌が認められた。(図4)

図2 腸粘膜塗沫標本(抗酸菌染色)

図3

図4

・微生物検査

本症例発生時,家畜保健衛生所からキットを借

り受けるなど対応に苦慮したので,今後,検査所

で迅速にヨーネ病の診断を行い,家畜保健衛生所

への届け出を速やかに実施するため,検査方法の

比較検討を行った。検査所で迅速に判定を得るに

あたり,①糞便や組織材料から直接判定が可能,

②特別な機器を必要としない の二つの条件に合

った検査法として nested PCR および LAMP 法につ

いて検討した。

nested PCR

PCR では三木ら(1996)の報告にあった IS900

遺伝子を標的とした nested PCR のプライマーを用

いた。(図5)DNA は InstaGene を用い,腸間膜リ

ンパ節,腸粘膜,糞便より抽出した。反応液の組

成及び反応サイクルは反応液の組成は樋之口ら(20

00)を参考とした。1stPCR では TemplateDNA 液1

μ l,Mp-1(10pmol/μ l)および Mp-2(10pmol/μ l)

1.25 μ l,× 10PCR バッファー 5 μ l,TSA(100 μ

g/ml)5 μ l,dNTP 4 μ l,D.W. 32.25 μ l ,Taq

polymerase 0.25 μ l。2nd PCR は 1st PCR 産物1μ l,

Mp-3(10pmol/μ l)および Mp-4(10pmol/μ l)1.25 μ

l,× 10PCR バッファー 5 μ l,TSA(100 μ g/ml)5

μ l,dNTP 4 μ l,D.W. 32.25 μ l ,Taq polymerase

0.25 μ l。反応サイクルは 1stPCR が 97 ℃ 30 秒,65

℃ 1 分の反応を 20 サイクル,2nd PCR が 97 ℃ 30

秒,65 ℃ 1 分の反応を 20 サイクル行った。図6左

は 2ndPCR の結果である。腸間膜リンパ節,腸粘膜,

糞便のすべてで規定サイズである 167bp のバンド

が確認された。

LAMP 法

LAMP 法は Loopamp DNA 増幅試薬キット(栄研)

および LAMP 法用プライマーセットヨーネ菌(ニ

図5

PCR用プライマーMp‐1:GATCGGAACGTCGGCTGGTCAGGMp‐2:ACGACGACGCGCAGCGATTGCTCTMp‐3:GCAGCTCGACTGCGATGTCATCGMp‐4:GGCAGCGGCTGCTTTATATTCCC

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ッポンジーン)を用いて実施した。LAMP 法は遺

伝子増幅反応を特殊なプライマーと DNA 合成酵素

を用いることで,等温で進行させる遺伝子増幅法

である。正式法では専用の濁度測定装置を用い,

遺伝子の増幅量を測定して判定するが,今回は簡

易判定法である蛍光目視判定法を用いた。蛍光を

発しているものが陽性,発しいていないものが陰

性であり,糞便で陽性反応が認められた。(図6右)

LAMP 法および PCR の比較

検出結果に関しては PCR,LAMP 法とも糞便か

らのヨーネ菌遺伝子検出が可能であったものの,

リンパ節,腸管からは PCR でのみ検出できた。検

査の簡便さや検査時間では LAMP 法が優れていた。

キットの使用期限の長さやコスト面では PCR が優

れていた。

培養試験

ヨーネ菌用培地(共立)および小川培地を用い

て培養試験を行い,ヨーネ菌用培地でマイコバク

チン依存性のコロニーを確認した。(図7)

図6

考察

LAMP 法,nestedPCR のどちらも糞便からのヨー

ネ菌遺伝子検出は可能でしたので,検査所におけ

るヨーネ病の診断に有効な方法であると考える。

また,今回 LAMP 法は簡易判定法である蛍光目視

判定により行ったので,実際よりも感度が下がっ

ている可能性がある。

LAMP 法は簡便で結果が早く出るものの,今回の

検出結果やコスト,試薬の有効期限などの観点か

ら検査所での対応としては必要な PCR 用プライマ

ーおよび InstaGene などの DNA 抽出剤を常備する

のが現実的な対応だと思われる。

まとめ

当検査所では抗酸菌染色以外,ヨーネ病診断に

用いる試薬類がなく,対応に苦慮した。家畜保健

衛生所への迅速な届出のためには,食肉衛生検査

所においてもヨーネ病の検査が常時行えるよう備

えが必要である。今回行ったPCRやLAMP法

は特別な機器を必要とせず,迅速な診断が下せる

という点で,検査所におけるヨーネ病診断に有効

であると考えられた。

参考文献

1)三木隆広,ほか:DNA簡易抽出法を用いたPCR法

によるヨーネ菌の検出および同定. 臨床獣医. 14,

28-34(1996)

2)樋之口香,ほか:と畜場における牛のヨーネ病

診断事例,平成12年度鹿児島県食肉衛生検査所業務

概要,113-115(2000)

図7 ヨーネ菌用培地

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牛の真性多血症の一症例

○三重 益

知覧食肉衛生検査所

は じ め に

多血症(赤血球増加症)とは血液に含まれる赤血球量が絶対的あるいは相対的に増加する血液の状態であ

り,単に多血症という一つの疾患があるものではなく赤血球量が増加するさまざまな疾患・状態を含む概念

である。また牛の多血症は珍しい疾患であり,特に黒毛和種の真性多血症の報告例はほとんど見当たらず,

その臨床や所見は不明な点が多い。今回,黒毛和種の真性多血症を疑う症例に遭遇したので,その概要を報

告する。

材料および方法

2013 年 5 月,管内と畜場に多血症を疑う牛(黒毛

和種,去勢,19 ヶ月齢)が緊急搬入された。当該

牛は初診時,体格中,栄養不良,体温 38.8 ℃,元

気消失,食欲不振,可視粘膜の充血,両後肢はうっ

血し腫脹していた。その 16 日後に再診するも症状

の改善が見られなかったため,共済獣医師が予後不

良と判断し緊急と畜することとなった。当該牛は食

肉衛生検査所で生体検査,血液検査,内臓検査,枝

肉検査,および細菌検査等を行った。また,定法に

基づき主要臓器の病理切片を作成し病理学的検査も

行った。

図1 農場での当該牛

結 果

生体検査では脱水を示す所見はなく,血液検査に

おいては赤血球数 2,378 万/μl,白血球数 23,400/

μl,ヘマトクリット値が 80.0 ~ 80.5 %であった。

またエリスロポエチンは 0.6mIU/ml 未満と基準値以

下であった。

解体所見においては主要臓器が赤色を帯びてい

た。また軽度の肺炎や腎臓の点状出血を認めた。し

かし,心室中隔欠損などの心臓の奇形は認められな

かった。また白血病を疑うようなリンパおよび脾臓

の腫大等の所見は認められなかった。

枝肉所見においては,放血不全はなかったものの

枝肉が全体的に赤色を呈し,特に椎骨や胸骨の骨髄

断面は著しい赤~暗赤色であり,粘度の高い滲出液

を認めた。

なお,全身性の筋肉組織の著しい変色を複数のと

畜検査員が確認した。よって当該牛の枝肉の行政処

分は全部廃棄処分(変性)となった。

図2 一番右の枝肉が当該牛

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図3 内臓全体

図4 脊髄の横断面と断面

病理組織において,一般的な牛(対照牛)の骨髄

は,明るく抜けて見える脂肪細胞の網目状の組織の

中に白血球の幹細胞が見えるのに対し,当該牛では

ほとんど脂肪細胞が無く赤芽球系の細胞が増加して

おり,有核赤血球,顆粒球および巨核球を確認した。

一方,主要臓器の末梢血管や血液塗沫において巨核

球を確認することは出来なかったが,有核赤血球や

白血球幹細胞を確認した。(病理切片写真の図5~

図6は全てヘマトキシリンエオジン染色)

図5 骨髄(当該牛)

図6骨 髄 ( 対 照 牛 )

血液のギムザ染色では,赤血球の大小不同や有核

赤血球が認められた。また,白血球数の割合として

単球が多い傾向があった。

図7 血液(当該牛)

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脾臓ではリンパ球系細胞は増加しておらず,静脈

内に有核赤血球や顆粒球が見られた。腎臓において

は組織に著変は見られなかったが,糸球体部分の間

質の静脈に白血球の幹細胞や有核赤血球が見られ

た。

多血症にはその症状や特徴から,大きく分けると

3種類の多血症がある。血漿の絶対量が減少する「相

対的多血症」,エリスロポエチンの産出が増加する

「二次性多血症」,そして赤血球量の増加が著しい

「真性多血症」の3つである。

表1

今回搬入された牛は赤血球数が著しく増加してい

た。ヘマトクリット値もかなり高い値を示し,白血

球数も中程度増加していた。脱水症状は示しておら

ず,エリスロポエチンの値は正常値以下であった。

骨髄において造血幹細胞が増殖していた一方,他の

主要臓器ではそれらが確認できなかったことから,

骨髄以外での造血すなわち髄外造血は起こっていな

いと推察される。また心肺は正常牛に近い状態であ

ったため,当該牛は少なくとも低酸素状態ではなか

ったと思われる。

以上のことから,本症例は骨髄増殖を伴う「真性

多血症」と診断した。

考 察

多血症の分類と鑑別の要点を踏まえて,もう一度

相対的多血症

絶対的赤血球増加症

二次性多血症

真性多血症

○血漿の絶対量が減少し,単位体積あたりの赤血球量が増加

○全身での赤血球量が増加

○下痢・脱水等

○エリスロポエチン産出が増加

酸素欠乏性(高地トレーニング,喫煙)非酸素欠乏性(腎がん,肝がん)

○エリスロポエチンは正常~低値

○赤血球量の増加が特に著しい

○白血球も増加していることが多い

多血症の分類

当該牛の状態を整理する。全赤血球数は明らかに増

加していたこと。重度の肺炎や心臓の奇形などがな

かったことから動脈血の酸素飽和度は正常であった

と推察されること。骨髄細胞の増加が著明であった

こと。血漿のエリスロポエチンの値が基準値以下で

あったこと。以上のことから「相対的多血症」およ

び「二次性多血症」は除外される。

表2

真性多血症は赤血球の増加が顕著である一方,明

らかな形態学的特徴がない。そのため診断には,他

の多血症の症状や状態とを比較し,ひとつひとつ除

外することが必要である。

今回は共済獣医師から当該牛の情報が食肉検査所

に入り,内臓所見等を共済へフィードバックしたと

ころ詳しい情報のやりとりが行われた。さらに病理

や生化学のより詳しい検査のために外部への協力を

求め,その結果が得られたことで診断までたどり着

くことが出来た。関係機関との連絡・連携が上手く

いった成功例であると考える。

謝辞

本発表に御助言頂いた独立行政法人動物衛生研

究所九州支所の田中省吾先生,ならびに鹿児島大

学共同獣医学部 基礎獣医学講座実験動物学分野

の上村亮三教授に心より深謝します。

多血症の3分類と鑑別の要点

全赤血球数

検査項目相対的多血症 低酸素症

二次性多血症

EPO産生異常

動脈血酸素飽和度

骨髄細胞

血漿EPO値

正常

正常

正常

正常

増加

正常

増加

増加

低下

増加

増加

増加

正常

増加

増加低下~正常

真性多血症

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と畜検査でみられた牛の脳幹部硬膜下膿瘍の4症例○篠崎綾 三重益 森山良人 宇都浩二 春口真一1) 2) 3) 2) 1)

阿久根食肉衛生検査所 知覧食肉衛生検査所 鹿屋食肉衛生検査所1) 2) 3)

は じ め に

と畜検査において神経症状を呈する牛を検査することは少なく,また,解体検査において神経症状の原因が判明

することは稀である。平成25年度に鹿児島県内のと畜場に病畜として搬入され,耳翼・眼瞼の下垂や斜頸等の神経

症状を呈した牛7頭において,解体検査で脳幹部の硬膜下に膿瘍が認められた。このうち4症例の概要を報告する。

と 畜 検 査

症例 1 ~ 4 は黒毛和種,18 ~ 23 ヵ月齢で,肺

炎,顔面神経麻痺,脳炎,中耳炎との診断で病畜搬

入された。

生体検査においては,各症例で耳翼・眼瞼の下垂,

眼球振とう,口唇麻痺,露舌,斜頸,起立不能,歩

様蹌踉等の神経症状が認められた(表 1,図 1)。呼

吸速迫や鼻汁,喘鳴等が認められた症例もあった。

症例 3 以外の発育・栄養状態は不良であった。

解体検査においては,全ての症例で脳幹部硬膜下

に膿瘍が認められた。耳翼・眼瞼の下垂を呈した症

例では,その症状と同側の脳幹部硬膜下に膿瘍が認

められた。膿瘍が脳幹部側面の硬膜側に固着してい

る例(図 2A)や,延髄から橋側面の脳神経を巻き

込んで付着している例(図 2B),複数の膿瘍が採取

された例もあった。確認された膿瘍の大きさは,粟

粒大から直径約 3 cm 程度のものまで様々であった

が,いずれも被膜に覆われていた。膿瘍の割面は黄

白色で,乾酪状になっているものや房状に分画され

ているものもあった(図 2C)。延髄の変形・腫脹,

延髄部髄膜の出血・混濁・肥厚(図 2D)や延髄周

囲の硬膜下に白色ゼリー状物が認められた例もあっ

た。また,胸膜炎や肺炎等の肺病変も各症例で認め

られた。

これらの症例については,神経症状の原因は脳幹

部硬膜下膿瘍およびその周囲病変であることが明ら

かで,敗血症等の所見も認められなかったことから,

と畜検査の結果,合格と判定された。

表 1 主な神経症状

図 1 症例 3 の生体写真

症例 診断書病名 生体検査で認められた神経症状

1 肺炎,

顔面神経麻痺

左耳翼・眼瞼下垂,露舌

2 脳炎,中耳炎 起立不能,意識混濁,眼球振とう

3 脳炎 起立不能,前肢伸長,頸部弯曲,

左耳翼・眼瞼下垂,右眼瞼散大,

右眼焦点不定・眼球振とう

4 脳炎,肺炎 歩様蹌踉,斜頸,

右耳翼・眼瞼下垂,口唇麻痺

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図 2 脳幹部硬膜下膿瘍とその周囲病変の肉眼写真

A:症例 1 の脳幹部側面の硬膜に固着した膿瘍(矢

印)。B:症例 4 の延髄から橋側面の脳神経(矢印)

を巻き込んだ膿瘍。C:症例 2 の膿瘍の割面。D:

症例 3 の変形し,髄膜の出血・混濁・肥厚がみられ

る延髄。

微生物学的検査

症例 2,3,4 の脳幹部硬膜下膿瘍病変および症例 4

の延髄を検体として,血液寒天培地への直接スタン

プ法により細菌分離検査を実施した結果,各症例で

複数種類の細菌が分離された。細菌同定検査キット

により同定を試みたところ,同定不能菌が多かった

ものの,Streptococcus bovis や Staphylococcus 属等の

菌が同定された。

病理組織学的検査

症例 2 および症例 3 の脳幹部硬膜下膿瘍病変と症

例 3 の延髄を検体として,HE 染色,Azan 染色を実

施し,延髄については LFB-HE 染色も実施した。

症例 2 および症例 3 の膿瘍中心部は好酸性の壊死

巣で,その周囲は好中球の浸潤層,形質細胞,リン

パ球およびマクロファージを主体とした細胞浸潤層

と結合組織の増生層で覆われていた(図 3)。また,

Azan 染色では,周囲から壊死巣内への結合組織の

侵入が認められ,器質化が進んだ被包化膿瘍である

ことが確認された。症例 3 の延髄においては,延髄

周囲の髄膜内にも同様の膿瘍病変が存在しており,

その壊死巣を被包する結合組織が延髄実質に癒着・

侵入し,これにともなって延髄実質における形質細

胞,リンパ球およびマクロファージを主体とした囲

管性細胞浸潤や,軸索の膨化・脱落も認められ(図

4),LFB-HE 染色において脱髄が確認された。延髄

実質の深部においても,マクロファージの集簇巣,

囲管性細胞浸潤,変性神経細胞,軸索の膨化,脂肪

顆粒細胞やミクログリアが集簇する軟化巣が認めら

れた(図 5)。

考 察

今回の症例については,1)脳幹部側面硬膜側の

膿瘍固着部位は側頭骨岩様部の内耳神経や顔面神経

が通る内耳道付近であると考えられること,2)延

髄から橋側面の膿瘍が巻き込んでいた脳神経はその

走行部位から内耳神経や顔面神経等であると考えら

れること,さらに 3)診断書の内容や聴取した稟告

から,中耳・内耳からの炎症が脳幹部に波及し,硬

膜下に膿瘍が形成されたと考えられた。この結果,

内耳神経や顔面神経が障害されて,斜頸等の平衡感

覚異常や顔面の麻痺が生じたと思われる。また,病

理組織学的検査において,膿瘍病変は器質化が進ん

だ被包化膿瘍であり,延髄実質にも病変が認められ

たことから,長期間にわたる膿瘍による物理的圧迫

や炎症の波及により,周囲の脳神経および脳幹実質

が障害され,様々な神経症状が発現したと考えられ

る。

微生物学的検査では,複数種類の細菌が分離され

たが,膿瘍形成の原因は特定できなかった。牛の中

耳炎の原因としてはマイコプラズマが問題となって

いることから,今回の症例ではマイコプラズマが関

与する中耳炎・内耳炎にともなって様々な細菌が侵

入した可能性も考えられる。

と畜検査では,神経症状を呈する牛を検査する機

会は少ないが,今後とも詳細にわたる検査と情報収

集が必要であると考えられる。

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図 3 症例 2 の脳幹部硬膜下膿瘍の病理写真(左上

が壊死巣)

図 4 症例 3 の延髄実質(右上)から髄膜(左下)

の病理写真

図 5 症例 3 の延髄実質深部の病理写真

謝 辞

病理組織学的検査に関してご協力をいただきまし

た動物衛生研究所九州支所の田中省吾先生に深謝い

たします。

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腸内細菌科群数を用いた牛豚枝肉の胃腸内容物汚染の検討○堀内紀良 山下章吾 向井猛 中﨑生雄

志布志食肉衛生検査所

は じ め に

食肉衛生検査所(以下,検査所)では,平成8年度と畜場法施行規則の一部改正にを受けて,牛豚枝肉に

おける胃腸内容物汚染を軽減させるために衛生指導を行ってきた。その指標として,ペトリフィルムACプ

レートを用いて一般生菌数(以下,AC)を把握することによって枝肉汚染状況を評価し,CCプレートを用

いて大腸菌群数(以下,CC)を把握することによって糞便汚染の有無を評価している。

一方,EU等においては近年,食品汚染の指標として腸内細菌科群数(以下,EB)が用いられ,国内の対EU

輸出認定施設では施設が把握し評価を行っている。また,我が国においても平成23年10月に生食用食肉の

規格基準として採用された。

EBプレートは大腸菌群以外の乳糖非分解の腸内細菌科群,いわゆるサルモネラ等の食中毒菌による汚染

も把握できると言われているが,と畜場及び検査所における枝肉の胃腸内容物汚染状況を調査したデータ

は少ない。

そこで今回,EBについて枝肉の胃腸内容物汚染の指標として検討するため,牛豚の胃腸内容物及び枝肉

拭き取り検体における菌数をCCと比較検討したので報告する。

材料及び方法

管内と畜場において,牛豚それぞれ20頭分の十

二指腸及び直腸の内容物を無菌的に1g採取し検体

とした。

また,胃腸内容物汚染が疑われた牛豚の枝肉そ

れぞれ50頭分の胸部,腹部及び臀部をWhirl-Pakに

より100㎠を拭き取り試験に供した。

各検体についてPBSにて段階希釈を行い,EBプ

レート及びCCプレートに接種後,35℃±1℃で24時

間培養し,常法に従いそれぞれ菌数を測定した。

結 果

牛内容物の調査では,十二指腸がEBで102cfu/g以

下が12検体,103cfu/g及び104cfu/gがそれぞれ1検体

ずつ,未検出が6検体であった。CCでは102cfu/g以

下が8検体,103cfu/g及び104cfu/gがそれぞれ1検体ず

つ,未検出が10検体であった。

直腸ではEB,CCとも104~106cfu/gが12検体,101

~103cfu/gが5検体であった。3検体はEB,CCともに

測定できなかった(図1)。

豚内容物の調査では,十二指腸がEBで103cfu/g

図1 牛内容物におけるEB及びCCの割合

以下が13検体,未検出が4検体であった。CCでは103cfu/g以下が12検体,未検出が5検体であった。3検

体はEB,CCともに測定できなかった。

直腸ではEB,CCとも104~106cfu/gが13検体,102

~103cfu/gが7検体であった(図2)。

牛の同一個体での十二指腸内容物におけるEB及

びCCのコロニー数を比較した結果は,EB>CCが8

検体,EBのみが3検体,CC>EBが2検体であり,CC

のみで確認できた検体はなかった。

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図2 豚内容物におけるEB及びCCの割合

なお,EB=CCが1検体,EB及びCCとも未検出が6

検体であった。

豚では,EB>CCが8検体,EBのみが1検体,CC

>EBが3検体であり,CCのみで確認できた検体は

なかった。

なお,EB=CCが1検体,EB及びCCとも未検出が4

検体であった(図3)。

図3 牛豚の十二指腸におけるEB,CCのコロー数比較

牛拭き取り検体における調査では,臀部がCCで

101cfu/㎠が2検体,100cfu/㎠以下が27検体,未検出

が20検体であった。EBでは101cfu/㎠が3検体,100cfu/

㎠以下が35検体,未検出が11検体であった。1検体

はEBで測定できなかった。

腹部ではCCで101cfu/㎠が3検体,100cfu/㎠以下が26

検体,未検出が19検体であった。EBでは101cfu/㎠

が9検体,100cfu/㎠以下が31検体,未検出が8検体で

あった。2検体はEBで測定できなかった。

胸部では,CCで101cfu/㎠が5検体,100cfu/㎠以下

が27検体,未検出が16検体であった。EBでは101cfu/

㎠が10検体,100cfu/㎠以下が29検体,未検出が9検

体であった。なお,2検体はEBで結果を得ることが

できなかった(図4)。

図4 牛の拭き取り調査におけるEB及びCCの割合

豚拭き取り検体における調査では,臀部がCCで

は100cfu/㎠以下が9検体,未検出が35検体であった。

EBでは100cfu/㎠以下が14検体,未検出が30検体で

あった。6検体はEB,CCともに測定できなかった。

腹部ではCCで102cfu/㎠が1検体,101cfu/㎠が9 検

体,100cfu/㎠以下が11検体,未検出が28検体であっ

た。EBでは102cfu/㎠が3検体,101cfu/㎠が6検体,

100cfu/㎠以下が20検体,未検出が20検体であった。1

検体はEB,CCともに測定できなかった。

胸部ではCCで102cfu/㎠が2検体,101cfu/㎠が9検

体,100cfu/㎠以下が22検体,未検出が16検体であっ

た。EBでは102cfu/㎠が2検体,101cfu/㎠が9検体,

100cfu/㎠以下が25検体,未検出が13検体であった。1

検体はEB,CCともに測定できなかった(図5)。

図5 豚の拭き取り調査結果

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牛の同一個体での拭き取り部位ごとのEB及びCC

のコロニー数を比較した結果は,臀部ではEB>CC

が18検体,EBのみが10検体,CC>EBが6検体,CC

のみが1検体であった。

なお,EB=CCが4検体,EB及びCCとも未検出が11

検体であった。

胸部では,EB>CCが26検体,EBのみが7検体,CC

>EBが5検体,CCのみが1検体であった。

なお,EB=CCが3検体,EB及びCCとも未検出が8

検体であった。

腹部では,EB>CCが27検体,EBのみが11検体,CC

>EB及びCCのみ確認できた検体はなかった。

なお,EB=CCが2検体,EB及びCCとも未検出が8

検体であった(図6)。

図6 牛拭き取り部位ごとのEB,CCのコロー数比較

豚において比較した結果は,臀部ではEB>CCが4

検体,EBのみが6検体,CC>EBが2検体,CCのみ

が2検体であった。

なお,EB=CCが2検体,EB及びCCとも未検出が28

検体であった。

胸部では,EB>CCが22検体,EBのみが4検体,CC

>EBが9検体,CCのみが1検体であった。

なお,EB=CCが1検体,EB及びCCとも未検出が12

検体であった。

腹部では,EB>CCが13検体,EBのみが9検体,CC

>EBが7検体,CCのみが1検体であった。

なお,EB=CCが1検体,EB及びCCとも未検出が18

検体であった(図7)。

図7 豚拭き取り部位ごとのEB,CCのコロー数比較

考 察

今回の調査において,牛豚の直腸でEBとCCを比

較したところ,個体における差は認められたものの,

同一個体では大きな差がなかった。よって,腸内容

物のEBで検出された菌の多くが大腸菌群と考えら

れた。

一方,十二指腸では牛豚とも個体における差もあ

るが,同一個体で比較するとEBがCCより多くなる

傾向が認められ,十二指腸内容物から大腸菌群以外

の腸内細菌科群が検出されたと推察された。

拭き取り調査においては,牛豚の三部位とも

101cfu/㎠以下と少なかったため,個体における汚染

の程度を比較するに至らなかった。しかし,同一

個体での比較ではEBがCCより多くなる傾向が認め

られ,枝肉汚染の原因が大腸菌群だけでなく,そ

れ以外の腸内細菌科群も含まれると示唆された。

以上のことから,EBプレートはCCプレートより

幅広く胃腸内容物の菌を検出でき,枝肉において

十二指腸破れ等による汚染の指標とできる可能性

がある。したがって,と畜場における胃腸内容物

汚染の軽減に向けて,今後も枝肉の腸内細菌科群

数を調査し,データを蓄積する必要があると思わ

れた。

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対米等および対EU輸出牛肉認定施設における

サルモネラ属菌の分離試験に関する一考察○有馬智子 熊野かおり 鳥居哲太郎 早田理恵 中﨑生雄

志布志食肉衛生検査所

は じ め に

対米・対カナダ・対香港(対米等)輸出食肉認定施設および対EU輸出牛肉認定施設では,各国の認定要

綱等に基づき,と畜検査を行う検査員(指名検査員)が施設検証の一環として,また施設が衛生管理の評価

の一つとして,牛枝肉拭取り検体からの微生物検査を行う必要がある。サルモネラ属菌検査について,「対

米等輸出食肉を取り扱うと畜場等の認定要綱」では米国農務省食品安全検査局(FSIS)が監修する微生物試

験室ガイドブック(Microbiology Laboratory Guidebook:MLG)で示される方法,又は同等以上の検査法で実

施することとされている。また,「対EU輸出食肉の取扱要綱」では国際標準化機構(ISO)の定量分析法で

実施することとなっている(表1)。

表1 輸出牛肉認定施設における微生物的検査について

対米等認定要綱対EU取扱要綱

(対米・対カナダ・対香港)

一般生菌数 (ISO4833)

認定施設大腸菌 腸内細菌科群 (ISO21528-2)

(AOAC大腸菌検査法又はMPN法 サルモネラ属菌(EN/ISO6579)(上記方法又は同等と認められる方法)

指名検査員サルモネラ属菌

―(MLG又は同等以上の検査法)

MLGについては,これまで指名検査員が実施してきたが,本所においては硫化水素(H2S)非産生株が分

離されにくいことがあった。また,2013年10月の改訂(ver. 4.06→4.07)の際,前増菌培地がBPWからmTSB

に,培養温度が35±2℃から42±1℃に変更されている。

一方,本所が管轄する対EU輸出認定施設では,ISO法と同等とされる日本国内におけるサルモネラ属菌標

準試験法NIHSJ-01-ST4(EU法)を行うと定めたが,指名検査員は施設が行う検査について検査精度の評価

および助言を行う必要がある。しかし,EU法は指名検査員がこれまで実施してきたMLGと一部異なる培地

を使用している。

そこで,今回,改訂前MLG(旧対米法)と改訂後MLG(新対米法)およびEU法について,各種サルモネ

ラ属菌の分離状況を比較調査し,若干の知見を得たので報告する。

材料および方法

今回試験に供した菌株は,本所に凍結保存されて

いたサルモネラ属菌のうち,H2S産生株である

Salmonella Choleraesuis( SC), S.Infantis( SI),

S.Typhimurium( ST), H2S非 産 生 株 で あ る

S.Choleraesuis( H2S(-)SC), H2S遅 産 生 株 で あ る

S.Senftenberg(SS),および比較対照として大腸菌

O-157(O-157)の6菌株を用いた(表2)。

表2 試験に供した菌株

試験方法は,旧対米法,新対米法,EU法(表3)

に基づき,それぞれ前増菌培養,選択増菌培養,選

択分離培養を次の(1)~(4)に調整等した菌株を用い

てコロニー形成を確認した。

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(1)TSB培地にて増菌後,約101個/mlに調整し

たもの,(2)TSB培地にて増菌後,約104個/mlに調

整し凍結したもの,(3)TSB培地にて増菌後,約108

個/mlに調整し凍結したもの,(4)冷蔵保存用TSA

斜面培地から1白金耳釣菌したもの。

結 果

3試験法による分離結果を比較した。

(1)約101個/mlに調整した結果

新・旧対米法では0.5TTのSC,H2S(-)SC,SSおよ

びRVSのSSで典型的なコロニー形成を確認しづら

い傾向があった。EU法では1.0TTのH2S(-)SC,SSお

よびRVのSSで確認できなかった。

(2)約104個/mlに調整し凍結した結果

旧対米法では全ての菌株で典型的なコロニー形成

を確認できた。新対米法では0.5TT→BGSのH2S(-)SC

で確認できなかった。EU法では1.0TT→MLCBのST

で確認できなかった。

(3)約108個/mlに調整し凍結した結果

旧対米法では0.5TT→XLT4のSCで典型的なコロ

ニー形成を確認できなかった。新対米法では0.5TT

→XLT4のSC,H2S(-)SC,SSで確認できなかった。EU

法では1.0TT→MLCBのSTで確認できなかった。

(4)冷蔵保存から1白金耳釣菌した結果

旧対米法では0.5TT→XLT4のSCとSSで典型的な

コロニー形成を確認できなかった。新対米法では

0.5TT→XLT4のSC,H2S(-)SC,SSで確認しづらい

傾向があった。また0.5TT→BGSのH2S(-)SCとRVS

→XLT4のSCで確認できなかった。EU法では1.0TT

→CHSのH2S(-)SCで確認できなかった。

上記(1)~(4)において,典型的なコロニー

形成が確認できたものを1,確認できなかったもの

を0とし集計した。(表4)

考 察

今回の調査結果において,前増菌培養培地に接種

する前の菌株の状態の違い,および培地の組み合わ

せによって,典型的なコロニーの形成を確認しづら

くなることがわかった。

旧対米法および新対米法においては,選択増菌培

地にTTを用いた場合,各試験法で使用するもう一

方のRVSより,選択分離培地上のコロニー形成が確

認しづらくなる傾向があり,0.5TT→XLT4のように

組み合わせによっては,コロニー形成が確認できな

い場合もあった。一方,SIおよびSTのように,培

地の組み合わせに関係なく,コロニー形成が確認で

きるものなど,菌株によっては偏りが認められた。

EU法においては,1.0TT→MLCBでSTが確認しづ

らかったものの,選択増菌培地の違いあるいは選択

分離培地の違いがあってもコロニー形成が概ね安定

して確認できたと考えられた。

しかし,EU法における1.0TT→MLCBでSTが確認

しづらかった原因,およびサルモネラ属菌以外の菌

が混入した検体から安定して分離できるかについて

は,今後も調査が必要と思われた。

指名検査員は,対米認定要綱に定められたサルモ

ネラ属菌検査を行い,また,対EU施設に対し施設

が行うサルモネラ属菌検査の精度評価および助言を

行う必要がある。今回の試験結果において,認定要

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綱で定められた各種試験法であっても,サルモネラ

属菌の分離状況に違いを認めたことから,今後,検

査法についての理解を深め,技術の更なる向上を図

ることにより,食肉輸出認定施設に対する衛生指導

に役立つものと思われた。

参 考 文 献

1)United States Department of Agriculture Food Safety

and Inspection Service:Rules and Regulations,Federal

Register,Vol.61,No.144.,1996

2)United States Department of Agriculture Food Safety

and Inspection Service:Isolation and Identification of

Salmonella from Meat,Poultry,and Egg Products,

Microbiology Laboratory Guidebook4.03.,2004

3)United States Department of Agriculture Food Safety

and Inspection Service:Isolation and Identification of

Salmonella from Meat,Poultry,Pasteurized Egg and

Catfish Products,Microbiology Laboratory Guidebook

4.06.,2013

4)United States Department of Agriculture Food Safety

and Inspection Service:Isolation and Identification of

Salmonella from Meat,Poultry,Pasteurized Egg,and

Catfish Products and Carcass and Environmental Sponges,

Microbiology Laboratory Guidebook4.07.,2013

5)国立医薬品食品衛生研究所:サルモネラ属菌標準

試験法NIHSJ(National Institute of Health Sciences

Japan)-01-ST4,2009

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ワーキンググループを活用したと畜場等への衛生講習会○山田耕一 東原敏秋

大口食肉衛生検査所

は じ め に

本県の食品衛生監視指導計画には「事業者による自主的衛生管理の推進」として,「一般的な衛生管理の取組

やHACCPを基にした実践的な衛生管理について,助言及び支援を行い,衛生管理レベルの向上を図ること」が掲げ

られています。当所においては,と畜場及び併設食肉処理場(以下:と畜場等)へ年間衛生監視指導計画として,毎

月の施設検証や協議会,と畜場衛生向上旬間に行う保健所との合同監視指導,また衛生教育を目的とした講習会

の開催等を策定し,事業者の自主的衛生管理レベルの向上に努めています。その中で衛生講習会は,幅広い多く

の従業員へ直接的な衛生指導ができ,また施設の全体的な衛生レベルの向上に適した方法と考えます。

そこで今回,これまで実施していた講話方式に変えて,ワーキンググループ(以下:WG)方式での衛生講習会を行った

ので,ここにその概要を報告します。

材料

平成25年7月にSQF認証施設の管内と畜場等で開催

し,管理職から一般従業員までの65名が参加者した。

また,講習会終了後に参加者へのアンケート調査を

実施した。(図1)

方法

参加者を6~8名程度に班編成し,また各班へ管理

職1名を配置した。次に班毎で「過去の検証指摘事項」

について検討を行い改善報告書を作成後,全体で発表

・質疑応答を行う方法とした。(図2)

「改善報告書」に含まれる内容は,①指摘事項②指

摘事項の分類・区分化③指摘事項の原因と問題点 ④

改善内容とした。

「改善報告書」①で使用する「過去の指摘事項」は

「使用前のノコの刃に残血」,「使用前のまな板に残

肉」,「前掛けの破れ」,「頭上構造物のサビ」の4つの

事項とした。(図3)

「改善報告書」②の指摘事項の分類及び区分化とし

て,「不備の状況」「製品への影響」「改善期間」の3つ

に分類。さらに「不備の状況を→清掃・衛生的取扱い・

設備」,「製品への影響を→直接的,間接的,影響は低

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い」,「改善期間を→その場で改善,短期的改善,長期

的改善」に区分化した。

①原因及び問題点は「指摘事項が発生した原因」及び

「指摘事項があることで発生する問題」を検討した内容

を記載し,④改善内容は「改善した内容」及び「今後の

予防対策」について検討した内容を記載する。(図4)

「WG検討及び発表質疑応答」の様子を図5に示した。

アンケート調査の結果は「WG方式は良かったです

か?」の質問で「良い」とした参加者が73%あった。

また,「衛生に関心を持てましたか?」は71%の参加

者が「関心を持てた」となり,共に比較的高い割合とな

った。(図6)

「衛生の理解が深まりましたか?」の質問は,「深まっ

た」とした参加者が57%。また,「衛生の意識が向上し

ましたか?」は,63%の参加者が「意識が向上した」と

なった。(図7)

「衛生対策に協力的な姿勢になりましたか?」の質問

は,「協力的な姿勢になった」とした参加者が89%と非

常に高い割合となり,また,「今後の仕事に活かせます

か?」でも,「活かせる」とした参加者が80%と同じく高

い割合となった。(図8)。

「WG方式は難しいですか?」の質問は,「難しくない」と

した参加者が44%,「難しい」と考えた参加者が29%あ

った。また,「WG方式と講話方式どちらが良いです

か?」は,「WGの方が良い」とした参加者が73%,反対

に「講話方式を行った方が良い」とした参加者が27%あ

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った。(図9)

アンケート調査においては,参加者から多くの意見を

頂いた。その中で「良かった点」の主な意見として,

①色々な意見が出てきて,自分の思っていたことと違う

意見があり「そのような考え方もあるのか」と思うことが

あり,とても良かった。②今までの講習会は,話を聞く

だけで受身の講習会だったが,今回は自らが考えての

講習会だったので非常によかった。③指摘事項を客観

的に捉え,考えられる点が良いと思いました。今後,講

話も行い得た知識を元にWGでさらに活発に意見が出

るようになると全体の意識を上げられるのでと思いまし

た。

「改善点」の主な意見として,①WGは悪くはないが慣

れないためスムーズに進行できなかった。②もう少し時

間があったら,さらに深くグループ内で討議できたと思

います。③WGの衛生講習会はとてもいい経験になった

が,以前行っていた講話方式の専門的な話も時間があ

ればしてもらいたかった。などがあった。

まとめ

WG方式で講習会を実施したところ,

1)半数以上の参加者で衛生に対する「意識」「理解」

「関心」が向上した。

2)「協力的姿勢」が非常に高くなっており,WGによる従

業員間の相互協力の効果の結果と考えられた。

3)「今後の仕事に活かせる」の割合が高いことから,施

設側が推進するHACCPの実践的な衛生管理につなが

るものと考えられる。

4)参加者の多くが「WG方式は良かった」とあったたが,

その内容については約30%の人が「難しい」と感じたこ

とから,今後,講習テーマや進め方等の検討が必要と考

えられた。

5)「講話方式も実施した方が良い」と答えた参加者が

約30%あったことから,WG方式と講話方式を併用する

ことで,より充実した衛生講習会が開催できるものと考

えられた。

最後に,厚労省は,今年度,将来的なHACCPの義

務化を見据えたと畜場法及び食鳥検査法の改正を行

っており,その中には「作業従事者に対する教育を含

む一般衛生管理のさらなる向上を図るよう指導するこ

と」を掲げている。その指導を担う検査所の年間衛生監

視指導計画は重要なポイントとなるので,今後も衛生

教育を含めた衛生指導の充実に努めていきたいと考え

る。

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過去の業績発表及び調査研究(平成10年度以降)年 度 検 査 所 名 発 表 内 容 及 び 研 究 内 容

平成 10 知覧食肉衛生検査所 ・豚赤 痢様 病変及び大腸炎を呈した豚の結腸 粘膜 から 分離された Serpulina属菌の性

状について

串木野食肉衛生検査所 ・と畜場で認めれた牛の悪性水腫について

阿久根食肉衛生検査所 ・豚肺炎からの Actinobacillus pleuropneumoniaeの分離

大口食肉衛生検査所 ・豚の敗血症(第1報)

末吉食肉衛生検査所 ・ PCRにおけるベロ毒素産生性大腸菌検出感度の向上

・豚におけると畜検査データの解析とフィードバックシステムへの応用

志布志食肉衛生検査所 ・養豚農家へのフィードバック事業

平成 11 知覧食肉衛生検査所 ・精度管理の立場からみた Bacillus subtilis,Bacillus mycoides,

Micrococcus luteusの各種抗 生物質の感受性について

・牛の病畜検査状況と健康畜で検査した枝肉及び肝臓の疾病状況(誌上発表)

大口食肉衛生検査所 ・豚の敗血症(第2報)ーフィードバック事業の1つの成果ー

末吉食肉衛生検査所 ・牛の肝臓及び胆汁からの Campylobacter属菌の検出

志布志食肉衛生検査所 ・豚盲腸内容物におけるサルモネラ保菌調査

・と畜場で認められた牛の嚢胞腺癌の1症例

鹿屋食肉衛生検査所 ・豚血清中のインフルエンザウイルス抗体の継続的観察

平成 12 知覧食肉衛生検査所 ・鶏白血病について

・肝蛭による病変

・筋間水腫における一考察

阿久根食肉衛生検査所 ・と畜場における牛のヨーネ病診断事例

大口食肉衛生検査所 ・豚の敗血症(第3報)ーフィードバック事業の一例ー

末吉食肉衛生検査所 ・と畜場で認められた牛の顆粒膜細胞腫の1症例

・ HPLCによる合成抗菌剤及び寄生虫用剤の同時分析法の検討

・末吉食肉衛生検査所における口蹄疫発生時の対応経過

志布志食肉衛生検査所 ・フィードバック農家の意向調査

鹿屋食肉衛生検査所 ・ブロイラー養鶏農場におけるサルモネラ衛生対策~その1~

平成 13 阿久根食肉衛生検査所 ・気腫疽と悪性水腫の鑑別と迅速診断

大口食肉衛生検査所 ・県下の大規模食鳥処理場における細菌汚染調査について

末吉食肉衛生検査所 ・豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス( PRRSV)の抗体保有率及び分離状況について

・豚頭肉の汚染状況

志布志食肉衛生検査所 ・と畜場搬入牛・豚における Q熱リケッチア抗体保有ならびに Coxiella burnetii遺

伝子の検出状況

鹿屋食肉衛生検査所 ・ブロイラーにおけるサルモネラおよびカンピロバクター保菌調査

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年 度 検 査 所 名 発 表 内 容 及 び 研 究 内 容

平成 14 知覧食肉衛生検査所 ・敗血症 (心内膜炎型)の培養法に関する検討

阿久根食肉衛生検査所 ・豚のリンパ類上皮細胞性( Lennert)リンパ腫の一例

末吉食肉衛生検査所 ・ DFD様筋肉変性鶏(ブロイラー)に対する伝染性気管支炎ウイルス( IBV)および

腎疾患の関与について

鹿屋食肉衛生検査所 ・湯はぎ式解体ラインにおける枝肉細菌数の推移

・と畜段階及び生産段階における発育不良豚の実態と処理方法に関する一考察

平成 15 知覧食肉衛生検査所 ・関節炎型豚丹毒の凝集反応法による診断法の検討

・発育不良の黒毛和種牛における腎尿細管異形成の一症例

串木野食肉衛生検査所 ・正常肥育豚の血液検査及び発育不良豚との比較

阿久根食肉衛生検査所 ・慢性貧血が疑われた高齢牛の一症例

末吉食肉衛生検査所 ・豚丹毒迅速診断の比較検討

・と畜豚の肺疾患及び豚繁殖・呼吸器障害症候群ウイルス( PRRSV),豚サーコウイ

ルス2型( PVC2)および豚オーエスキー病ウイルス( ADV)との関係について

・ブロイラーにおける胆管肝炎の病理

鹿屋食肉衛生検査所 ・湯はぎ式解体ラインにおける衛生管理への取り組み

平成 16 知覧食肉衛生検査所 ・黒毛和種牛におけるクローディン16欠損症とその類似疾患

串木野食肉衛生検査所 ・豚カット室における細菌数の変動と衛生対策の効果

阿久根食肉衛生検査所 ・豚のアレルギー性皮膚炎について

・食鳥検査でみられたブロイラーの Aspergillus flavus感染症

大口食肉衛生検査所 ・牛,豚の体表におけるリステリア属菌付着状況調査

・と畜場で発見される豚抗酸菌症への一考察(ホルマリン固定材料からの抗酸菌検索)

末吉食肉衛生検査所 ・豚解体処理工程別の枝肉細菌数の推移と衛生管理の改善への試み

・ PCRによる Clostoridium chauvoei と Clostridium septicumの迅速鑑別診断の検討

・ DFD様筋肉変性鶏の過酸化脂質及び深胸筋と肝臓のプロテオーム解析

鹿屋食肉衛生検査所 ・管内一と畜場におけるサルモネラ浸潤状況

平成 17 知覧食肉衛生検査所 ・発育不良豚血漿のプロテオーム解析

串木野食肉衛生検査所 ・成鶏に見られた骨外性骨肉腫の一例

阿久根食肉衛生検査所 ・と畜検査時にみられた牛のアクチノバチルス症

・ Clostridium septicum分離同定法の一考察

大口食肉衛生検査所 ・クマリン系殺鼠剤中毒を疑った豚の HPLC分析

末吉食肉衛生検査所 ・豚丹毒迅速診断の比較検討(第2報)

・牛の胆汁中における Campylobacter汚染調査及び分離菌株の遺伝子型比較

・大規模食鳥処理場におけるカンピロバクター汚染状況調査

・豚赤痢の PCR法導入による迅速診断と病理組織学的診断の比較検討

志布志食肉衛生検査所 ・ PCR法による抗酸菌検出法の検討

鹿屋食肉衛生検査所 ・間質性肝炎を呈する豚肝臓の細菌汚染調査(第1報)

・寄生虫用剤イベルメクチンの牛への残留状況について

・残留抗生物質簡易検査における Bacillus mycoides芽胞原液作成法の検討

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年 度 検 査 所 名 発 表 内 容 及 び 研 究 内 容

平成 18 阿久根食肉衛生検査所 ・異常な臭い及び黒色を呈する牛の大腸に関する調査

大口食肉衛生検査所 ・ Streptococcus gallolyticusが分離されたブロイラーの心内膜炎

・食鳥検査データーからみたと体廃棄の原因疾病

末吉食肉衛生検査所 ・牛枝肉の脳・脊髄組織汚染状況調査及び汚染除去方針の検討

・豚敗血症(心内膜炎型)からの Streptococcus suis分離状況調査

・ブロイラーの育成から出荷過程おけるカンピロバクター汚染状況調査

志布志食肉衛生検査所 ・牛血漿の SDS-PAGE解析

・食鳥処理場におけるカンピロバクター汚染状況調査(第1報)

鹿屋食肉衛生検査所 ・緊急搬入牛から検出されたイベルメクチンについて(症例報告)

・豚腸管由来の多剤耐性 Salmonella Typhimurium(ST)分離状況と分離株の特徴

平成 19 串木野食肉衛生検査所 ・と畜場搬入豚由来 Salmonella Choleraesuisの薬剤感受性とプラスミドプロファイ

阿久根食肉衛生検査所 ・バイオアッセイによる抗菌性物質の感受性試験

・牛の好酸球性筋炎の1症例

大口食肉衛生検査所 ・管内と畜場でみられた豚サルモネラ症の発生状況

末吉食肉衛生検査所 ・食肉衛生検査所における牛の腫瘍

・県下で分離された腸管出血性大腸菌 O157の疫学的検討

志布志食肉衛生検査所 ・牛,豚糞便からの O157分離状況調査

鹿屋食肉衛生検査所 ・残留抗生物質簡易検査用Bacillus mycoides芽胞菌液作成及び保存法の検討

・一部廃棄としたブロイラーの肝炎に関する調査

平成 20 知覧食肉衛生検査所 ・病畜牛における血漿中ビタミン A, Eと副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の測定

阿久根食肉衛生検査所 ・ ML培地における豚肝臓の抗菌作用

大口食肉衛生検査所 ・県内のと畜場でみられた牛白血病の基礎的調査

末吉食肉衛生検査所 ・と畜場に搬入された豚におけるサルモネラの保菌状況及び疫学的検討(第1報)

・豚尿毒症の調査結果について

・と畜場でみられた牛の腫瘍と牛白血病抗体保有状況

志布志食肉衛生検査所 ・食肉衛生検査微生物分野におけるカラーアトラスの作成

(平成19年度微生物部会調査研究)

鹿屋食肉衛生検査所 ・家畜由来カンピロバクターの薬剤感受性成績

平成 21 阿久根食肉衛生検査所 ・食肉衛生検査所における牛白血病の鑑別

大口食肉衛生検査所 ・と畜場に搬入される牛のレプトスピラ浸潤状況調査

末吉食肉衛生検査所 ・と畜場搬入豚の肝臓及び盲腸便から分離された Salmonella Choleraesuisの疫学的

検討

・ MGIT法及び PCR法を併用した抗酸菌検出法の検討

(平成20年度微生物部会調査研究)

志布志食肉衛生検査所 ・管内と畜場における牛腫瘍の発生状況

鹿屋食肉衛生検査所 ・サルモネラ相誘導試験における簡易法の検討

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年 度 検 査 所 名 発 表 内 容 及 び 研 究 内 容

平成 22 知覧食肉衛生検査所 ・管内と畜場で見られた緊急搬入牛における肺炎調査

串木野食肉衛生検査所 ・食肉衛生検査所の施設検証の取り組みについて

・食肉衛生検査所のフィードバックの取り組みについて

阿久根食肉衛生検査所 ・黒毛和種にみられた転移を伴う腎臓腫瘍

・大規模食鳥処理場における衛生実態調査

末吉食肉衛生検査所 ・住肉胞子虫の寄生が認められた牛の好酸球性筋炎の一症例

志布志食肉衛生検査所 ・豚疣状心内膜炎由来β溶血性 Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis

の薬剤感受性と遺伝学的特徴

鹿屋食肉衛生検査所 ・ Actinobacillus pleuropneumoniaeによる豚の疣状性心内膜炎の発生実態

・豚の疣状性心内膜炎から分離された Actinobacillus equuli subsp. equuli

平成 23 阿久根食肉衛生検査所 ・食肉・食鳥検査等カラーアトラスデータの簡易データベース化

・対米輸出食肉を取り扱うと畜場等に係る認定までの衛生指導について

大口食肉衛生検査所 ・食鳥処理場におけるカンピロバクター汚染低減への取り組み

末吉食肉衛生検査所 ・管内と畜場で分離された Salmonella Choleraesuis の性状

・管内と畜場における豚丹毒の疫学的検討

志布志食肉衛生検査所 ・管内と畜場で牛白血病が疑われた症例の検討

・牛のリンパ腫におけるスタンプ標本を用いた免疫組織化学的検査の有用性

・全身性腫瘍が疑われた牛2例の病理組織学的検討

鹿屋食肉衛生検査所 ・食鳥処理場における ESBL産生 Escherichia Coli の浸潤調査

平成 24 知覧食肉衛生検査所 ・管内と畜場でみられた敗血症型豚丹毒2症例

・牛胆汁及び直腸便の Campylobacter jejuni/coli 分 離状況及び分離方法の検討

阿久根食肉衛生検査所 ・大規模食鳥処理場における施設衛生指導について

大口食肉衛生検査所 ・管内と畜場における豚丹毒の発生状況

末吉食肉衛生検査所 ・豚丹毒が多発した農場の分離株における遺伝子型別と薬剤感受性

・ MALDI-TOF MS 活 用による豚丹毒菌迅速同定法の検討(第一報)

志布志食肉衛生検査所 ・ LAMP 法を用いた Streptococcus.suis の 検出法の検討

・ T 細胞性リンパ腫の病理組織学的検討

・リンパ腫と中皮腫の併発が疑われた牛の病理組織学的検討

鹿屋食肉衛生検査所 ・と畜場搬入豚由来 Actinobacillus pleuropneumoniae の 薬剤感受性

・ PCR-RFLP 法により未知の遺伝子型が確認された牛白血病の一症例

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年 度 検 査 所 名 発 表 内 容 及 び 研 究 内 容

平成 25 知覧食肉衛生検査所 ・成鶏における Campylobacter jejuni/coli の 保菌調査及び検出法の検討

・病畜と室における牛のと畜検査概要

串木野食肉衛生検査所 ・と畜検査における腸病変 (牛・豚 )の病理アトラス作成

阿久根食肉衛生検査所 ・ブロイラーのカンピロバクター保菌調査及び食鳥処理場の汚染状況(第1報)

・対米等牛肉輸出認定施設におけると畜解体工程の衛生管理に係る検証

末吉食肉衛生検査所 ・と畜場で認められた牛の悪性水腫の検査と対応(事例報告)

志布志食肉衛生検査所 ・ Propidium monoazide(PMA)を用いた豚丹毒早期診断法の検討

鹿屋食肉衛生検査所 ・ブロイラーにおけるカンピロバクターの保菌及び製品汚染調査

・ Streptococcus.suis に おける ST1complex の 分布状況調査及び簡易識別法の検討

・対シンガポール輸出食肉を取り扱うと畜場等の認定までの経緯と対応

平成 26 知覧食肉衛生検査所 ・牛の真性多血症の一例について

串木野食肉衛生検査所 ・牛の 肝臓 ・胆嚢及び糞便における腸管出血性大腸菌及びカンピロバクターの保菌

状況調査

阿久根食肉衛生検査所 ・カンピロバクター保菌調査及び食鳥処理場における汚染状況調査

・と畜検査でみられた牛の脳幹部硬膜下膿瘍

大口食肉衛生検査所 ・大規模食鳥処理場の各処理工程におけるカンピロバクター汚染実態調査

・ワーキンググループを活用したと畜場等への衛生講習会

末吉食肉衛生検査所 ・食鳥検査でみられた鶏マラリア

・県内と畜場における豚丹毒の発生状況

・と畜場で発生したヨーネ病の検査事例

志布志食肉衛生検査所 ・腸内細菌科群数を用いた牛豚枝肉の胃腸内容物汚染の検討

・ 対 米 等 及 び 対 EU輸 出 牛 肉 認 定 施 設 に お け る サ ル モ ネ ラ 属 菌 の 分 離 試 験 に 関 す る 一

考察

鹿屋食肉衛生検査所 ・プレミックス試薬を用いたダイレクトコロニー PCR法の検討