人生の最終段階における 医療体制整備事業 (成果報告) ·...
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人生の最終段階における 医療体制整備事業 (成果報告)
春日井市民病院 民病院 平成28年2月3日 厚生労働省中央合同庁舎第5号館
春日井市
愛知県
名古屋市 愛知県
春日井市の人口 総人口:311,327 人
男性 :154,933 人
女性 :156,394 人
(平成28年1月1日現在)
人生の最終段階における医療整備事業
A 対象病棟紹介
B 医療ケアチームの設置状況
C 相談の実施状況 (運用のフロー、適応基準、
EOL相談シートの集計、
患者の思いをつなぐシートの集計)
D 集計にでてこない成果(EOLサマリー、事前指示書)
E 院内・地域への説明会(伝達講習会)
F 事例紹介
G 感想、課題、計画と展望
A 対象病棟紹介
東6病棟(呼吸器・腎臓)&透析センター
平均年齢 71.5歳
平均在院日数 15.3日
看護師 34名
(透析兼務14名)
(平成27年9月1日~平成28年1月22日)
B 医療ケアチームの設置状況
1
• プライマリー医療ケアチーム:主治医、担当看護師(病棟、
外来)、相談員
• 相談員がスクリーニングを行い、主治医、担当看護師、相談員が人生の最終段階における医療について相談を行う。
2
• EOLケアチーム:医師(外科、内科、呼吸器科)、看護師、臨
床心理士
• プライマリー医療ケアチームから相談を受け、各専門職が集まり問題症例などを検討する。
3
• 倫理委員会:副院長、看護部長、薬剤部長、事務局長他
(院長はオブザーバーとして同席)
• EOLケアチームから相談を受け、病院としての倫理的問題点を討議し助言を行う。
C 相談の実施状況
運用のフロー
適応基準
EOL相談シートの集計
患者の思いをつなぐシートの集計
C 運用のフロー
病棟相談員による スクリーニング
主治医へ連絡
了承不可 了承
プライマリー医療ケアチーム(主治医・担当看護師・相談員) によるミニカンファレンスの開催(電話でも可)
※カルテにカンファレンス記録を記入
主治医より患者・家族へ相談員参与の説明
(患者・家族) 同意しない
(患者・家族) 同意する
主治医のIC時に相談員が同席
相談の開始 次回相談予定日 フォローアップ
主治医、患者・家族の同意が得られない場合は理由をカルテに記載
患者ご本人による申し出
主治医による適応患者
看護師、医療関係者による適応患者
各相談員に連絡
C 患者適応基準
①平成27年9月から外科医師相談員、モデル病棟相談員が8項目でスクリーニングを開始
多くの患者が重症で差し迫った状態であった。
相談員の困難感が強く、診療時間外業務が増加した。
②平成27年10月から8項目にかつ以下の3項目を追加し限定
入院患者は状態が悪化し、意思決定支援ができなくなることが多い。
入院前のACPに重点をおく必要を感じた。
③平成27年12月から外来通院患者の対象を拡大
1 誤嚥を繰り返す患者
2 慢性呼吸疾患の患者
3 血圧低下による除水困難な透析患者
4 腎不全末期の高齢患者
1 意思決定能力のある患者(バーナード・ロウの基準を参考) 2 疼痛など苦痛症状の軽減が図れた患者
3 急性期を脱した患者
5 抗がん剤治療の3rd lineの患者
6 抗がん剤治療を終了する患者
7 ADL低下による腹膜透析導入患者
8 高齢虚弱患者(フレイル)
C 相談介入件数 (平成27年9月~平成28年1月22日)
①8項目
②非重症患者
③外来患者へ拡大
C 介入に至った理由
44例
相談員のスクリーニング
その他
C 相談実績 (平成27年9月~平成28年1月22日まで)
相談介入件数 44例
男性 30例
女性 14例
疾患別件数
がん 24例
慢性腎不全 11例
COPD 4例
肺炎 4例
非結核性好酸菌症 1例
C 相談実績
相談員の面談の平均回数 2.8回
相談員の面談の平均時間 26.8分
相談員のIC同席症例数 40例
倫理カンファレンスを行った件数 10例
EOLケアチームでの相談件数 23例
倫理委員会への相談、開催を行った件数 0例
C 相談実績
スクリーニング後に介入が不可になった件数
医師の了承が得られず介入できなかった 6例
患者の病状により介入できなかった 1例
患者・家族の了承が得られなかった 1例
C 相談実績
事前指示書を渡した件数 14例
事前指示書を受けとった件数 7例
移行先に「患者の思い」をつないだ件数 25例
移行先と「患者の思い」の経過が共有できた件数 施設 2例
在宅 4例
転帰
当院での 生存数 5例
死亡数 14例
他施設、在宅 生存数 20例
死亡数 5例
C 「患者の思いをつなぐ」方法①
当院から移行先へ
1.相談員による
EOLケアサマリーの
作成・送付
2.担当者会議での報告
話し合い
C 「患者の思いをつなぐ」方法②
移行先から当院へ 1.当院より
「患者の思いをつなぐシート②」用
アンケート用紙(当院にて作成)をFAX
2.移行先でアンケート用紙に記入
当院へFAX
「患者の思いをつなぐシート②」用 アンケート用紙(当院にて作成)
C つないだ「患者の思い」の共有方法
1.移行先からの返信された
「患者の思いをつなぐシート②」用
アンケート用紙を事務担当者が表に整理
2.電子カルテへ取り込み
「患者の思い」整理表
C 患者の思いをつなぐシートの集計
つないだ「患者の思い」の経過を共有できた症例
6例
つないだ移行先 12施設
訪問医 5
訪問看護ステーション 2
居宅介護支援事業所 3
回復期病院 1
有料老人ホーム 1
C 患者の思いをつなぐシートの集計
患者の思いをつなぐシートの回収数 21件
事前指示書の修正 あり 0件
なし 15件
記載なし 6件
保管方法 患者家族が同一書類を保管 3件
患者家族が確認してから保管 1件
統一した場所に保管 10件
その他 2件
C 患者の思いをつなぐシートの集計
思いの変化 あり 5件
なし 13件
不明 1件
記載なし 4件
思いの実現 実現した 6件
継続中 12件
記載なし 3件
C 患者の思いをつなぐシートの集計
つないだ「患者の思い」の経過を共有できた症例
6例
つないだ「患者の思い」が実現した 6例
C 「患者の思い」をつないだ結果 ~患者の思いをつないだ移行先の声~
限られた時間でも「患者の思い」が最初から把握でき、それに沿った支援ができた。 (例:誤嚥を起こしていたが食べたい思いがあり支援を受け、食べることができた)
EOLサマリーから患者や家族のキャラクターを把握できた。
EOLケアや相談の経過が分かり介入しやすかった。
人生の最終段階における医療体制整備事業でどのようなことをしているかが分かった。
D 集計にでてこない成果
EOLケアサマリーの作成
院内共通の事前指示書、事前指示書の説明書
EOL相談シートのシステム構築
EOLケアサマリー
私の事前指示書
私の事前指示書 説明書
E 院内・地域への説明会(伝達講習会)
月日 名称 参加者 場所 時間 医療者 医師 看護師
1. H27.9.5 (土)
春日井市緩和ケア地域 連携講演会
地域の 医療者
ホテルプラザ勝川
14:30~ 15:30
40名
2. H27.9.8 (火)
伝達研修(會津医師⇒ 内科医師)
医師 看護師
7階地域連携室 18:00~ 18:50
5名
7名
3. H27.9.10(木)
伝達研修(東6勉強会) 看護師 講堂C
17:45~ 18:15
7名
4. H27.9.14(月)
伝達研修(會津医師⇒ 呼吸器医師)
医師 看護師
がん相談支援センター
16:30~ 17:20
4名
5名
5. H27.9.14(月)
伝達研修(東6勉強会) 看護師 講義室
17:55~ 18:30
9名
6. H27.9.16(水)
伝達研修(東6勉強会) 看護師 食堂
17:55~ 18:30
16名
7. H27.10.5(月)
伝達研修(東6勉強会) 看護師 病棟
16:00~ 16:40
3名
8. H27.10.8(木)
アドバンス・ケア・プラン ニング講演会
院内 院外
総合保険医療センター
18:00~ 19:00
19名
11名
116名
9. H27.10.28(水)
伝達研修 院内 院外
総合保険医療センター
18:00~ 19:30
3名
21名
92名
10. H27.12.3(木)
キャンサーオープン カンファレンス
院内 院外
講堂C 18:00~ 19:00
30名
19名
36名
11. H27.12.8(火)
看護を語る会 院内 講堂C 17:30~ 18:30
2名
1名
17名
12. H27.12.13 (日)
患者の思いを酌み、 繋ぐための研究会
院内 院外
講堂 13:00~ 16:00
17名
4名
12名
750分 111名 65名 320名
計 496名
F 事例紹介
患者: 70才台 女性
病名: 呼吸不全 CO2ナルコーシス
病歴: H3年~肺気腫
併存疾患: 右乳がん(StageⅣ) 対症療法
夫と2人暮らし
入院時NPPV(マスク式人工呼吸器)
装着し呼吸管理
・介入前 急変時フルコース対応指示
本人 「NPPV装着したくない」
医師 肺機能低下のため 在宅NPPV導入 夜間の装着必要
本人の価値や人生観は? 本人の思いを知りACPが必要では・・。
看護師にて指導予定
※在宅用NPPV(マスク式人工 呼吸器)
介入のきっかけ
•乳がんもあり、治療もできないといわれている。肺気腫も段々悪くなっている。命がそんなに長くないのも分かる。
•NPPVは入院のときにつけてすごく苦しかったからつけたくない。
•以前から自宅で悪くなっても救急車も呼ばなくていいと夫に何度も言っている。
•自宅で静かに最期を迎えたい。
•延命はしたくない。
本人の思い、価値感・人生観
在宅用NPPVを夜間装着が望ましい。
急変時:挿管・人工呼吸器を装着となるとはずせなくなる可能性が高い。
自宅で夜だけNPPVをつけ
る。でもそれ以上の延命はしたくない。自宅で最期を迎えたい。
やれることは、すべてやってほしい。急変時は挿管・人工呼吸器装着し延命を希望。生きていて欲しい。
以前から延命はしたくないと言っていた。 本人の意思を尊重したい。
人工呼吸器装着しても面倒はみれない。
医師の見解 本人の思い・価値観
対立
対立
夫
本人 医師
娘さん
在宅用NPPV導入し在宅退院 在宅で急変時は病院搬送。
挿管・心臓マッサージはしない。NPPV装着までは行う。
合意形成
娘さんからお礼の言葉 こんな話は家族だけでは話しづらくできなかった。
第三者の人に入ってもらい話ができて非常によかった。ありがとうございます。
担当者会議開催: 地域の関係者へ情報提供 EOLケアサマリー送付
往診医・訪問看護師 【つなぐシート3回やりとり】
退院後、夫は延命へのこだわりは捨てておらず、病院に対して怒っている発言あり。本人の意思は変わらず、つないだ先に事前にEOLケアサマリーの情報提供をし
ていたため、すぐに家族の状況を理解され対応をしてもらうことができていた。
息子さんも、本人の意思を尊重したい意向が確認され、往診医や訪問看護師よりなるべく本人の意向に沿えるように関わっていきたいとの返答あり。
支援概要
•相談期間: 平成27年X月25日~X+1月22日
•相談回数 : 7回
•相談総時間 : 240分
•EOLカンファレンス回数 : 2回
•病状説明への参加 : 2回
G 感想
<困難感>
「死」という言葉を使って患者、家族話し合うことが難しかった。
患者と家族と意向が違う場合にどう調整したらいいか悩んだ。
時間が確保され心の余裕がないと患者の思いを聞くのが難しい。
ACPを理解してくれない医師がいた。
<事業・相談員をやってよかった>
EOLケアを求めている人が多いことがよく分かった。
「患者の思い」の実現のために医療者・家族が協働し始めるとやりがいを感じた。
外来でのACPのほうが介入のハードルが低い。
今普通にさらっとEOL相談できている自分に驚いている。
相談支援の中での困難感
・患者の思いへの働きかけを行い、家族との調整を行う
G 課題
<時間・人材の確保>
EOLケア、相談のために時間をいかに確保するか。
相談員の増員が必要であり、また継続的な学習も必要。
相談員の精神衛生への配慮が必要。
<事業の拡大・浸透>
がん患者・非がん患者問わず全ての患者への取り組みが必要。
地域医療者、市民へのACPの啓蒙が必要。
地域医療者と協働していくことが重要。
G 今後の計画
<時間・人材の確保>
各病棟、外来にACP相談、EOLケアのための相談員を育成する。
EOL相談窓口を設置する。
外来でのACPが普及することを考え外来相談員は専任で行う。
<事業の拡大・浸透>
医師にACPの啓蒙を行う。
全病棟で病棟相談員がスクリーニングを行いEOLケアを行う。
相談窓口カード、ポスター掲示を行いACPを広める。
地域医療者との勉強会を通してACPの情報共有をすすめる。
G 展望
<ACP文化の定着>
全ての医療者がACPの教育を受ける。
医療系大学教育にACP,EOLケアに組み込む。
病院でなくても、「もしも・・・」について家族と話し合える文化へ。
<EOLケア体制の整備>
病院から地域へ、地域から病院へ「患者の思い」をつなぐ体制整備をすすめる。
地域にACP相談、EOLケアの中心となる病院、施設を設置。
「人生の最終段階における医療相談支援加算」の新設。