美女なでしこ「ケンジントンミックス」「カレイド...
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今回は、洋花としても和花としても使うことのできる“なでしこ”についてです。なでしこといえば仏花のイメージが強い花ですが、ここ近年では、アレンジの脇を固める花として使われている場面をよく見かけるようになりました。昔のイメージを払拭し、さまざまな用途がある花へと変わってきています。 その中で、今回紹介する「ケンジントンミックス」と「カレイドスコープ」は両方とも特化型の品種です。「ケンジントンミックス」はアレンジやミニブーケ風花束など洋花としての需要が高く、一方の「カレイドスコープ」は、仏花や生け花など和花としての需要が高い品種で、出荷されている市場のニーズに合わせて作る品種を決めるのもよいと思います。
栽培の流儀◆水分と肥培管理に注意して株張りと草丈を確保 両品種とも播種は8月中旬ごろとし、トレイなどにばらま
きします。定植は生育次第行い、株が張ってくるので株間は
15~20㎝と少しあけるようにしましょう。当園芸では4条ネ
ットに合わせて定植しています。定植後は活着まで水やりを
欠かさず行います。なでしこは高温下だと活着が悪くなるの
で、散水チューブなどを使い日中に潅水し、できるだけ日中
の温度を低くしましょう。日中の温度を下げるだけで、活着
を早め開花までにしっかりと株を作ることができます。活着
後も多くの水分を必要とするので、水分管理には十分気を付
けます。
苗が活着したらピンチをしていきます。年内により多くの
花を収穫するためにも、ピンチを初期にすることをオススメ
します。ピンチ後は一度殺菌剤を散布しておきましょう。新
しい芽が出始めたら追肥もしていきます。なでしこは肥培管
理と水管理によって、株張りと草丈の長さが変わってくるの
で様子を見ながら必要量を与えます。その後、生育を見てネ
ットを一段かけます。それほど草丈が高くなるわけではない
ので、一段あれば十分だと思います。生育期は高温期にあた
るので、ヨトウムシなどの害虫防除のため定期的に薬剤散布
を行います。
花が咲いてきたら収穫します。なでしこは長さによって使
いやすさや単価が変わることが多いので、できる限り株元か
ら切り、長さをとるように心掛けましょう。年内以降も8℃
以上の暖房で春先まで収穫することができますが、暖房を使
用する場合は春先のアブラムシやハダニなどの害虫に特に注
意が必要です。一度発生してしまうと、薬剤散布を2~3回
は行わないと駆除できない非常にやっかいな害虫なので、予
防の意味も込めて定期的に薬剤散布する方がよいと思います。
市場への流儀◆用途に合わせた入数でショップが使いやすくなるように 「ケンジントンミックス」は1箱の入数を、30~50本の出
荷とするとよいでしょう。1本当たりのボリュームがある
「ケンジントンミックス」は洋花としての需要が多いので、
買いやすい入数で販売するのがよいと思います。常に新しく
補充できるように少なめの入数とするとフラワーショップな
どでも喜ばれるでしょう。「カレイドスコープ」は1箱当た
り50~100本と多めの入数でも大丈夫です。仏花などの和花
としての需要が多いので一度に使う量も多く、入数が多くて
も問題なく使ってもらえると思います。
今回はなでしこの新しい品種を紹介しましたが、なでしこ
自体は市場でもよく見かけ、普段から使われている花材なの
で、ショップなどでも手に取ってもらいやすく安心して出荷
できる商品です。
「ケンジントンミックス」と「カレイドスコープ」は一度
使ってもらえれば、非常に使いやすく花もちもよいので多く
のリピーターが見込めることと思います。ぜひチャレンジし
てみてください。
→「カレイドスコープ」
↑「ケンジントンミックス」
2015 タキイ最前線 春号 17
タキイ切り花品種・黒川流この連載では、主にタキイ品種を中心に、営利切り花出荷用栽培のポイント、流通する切り花の市場で好まれる形質、出荷・販売の工夫などを現役の花卉生産者ならではの視点で解説していただきます。(編集部)
【第6回】美女なでしこ「ケンジントンミックス」「カレイドスコープ」
黒川花卉園芸 黒
くろ
川かわ
恒つね
和かず
奈良県立大を卒業後、実家の農業を継ぎ、野菜と米の生産に取り組む。24歳の時に米からハナショウブの生産に切り替え花卉栽培を始める。その後花卉生産を増やす中、タキイ品種を多く手掛ける。「いかなる出荷でも使ってもらう人のことを考え無駄を少なく」がモットー。
(京都府久御山町)