construction of periodic solutions to self-dual yang …Œ—里大学大学院理学研究科...
TRANSCRIPT
北里大学大学院理学研究科
平成26年度修士論文
Construction of periodic solutions to
self-dual Yang-Mills equations defined
by holomorphic functions on a
half-plane
佐藤 祐太 (MS-13818)
指導教授 量子物理学 十河清
目 次
1 Introduction 3
1.1 はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
2 Yang-Mills理論 5
2.1 Yang-Mills場 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5
2.2 Yang-Mills方程式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
2.3 (Anti-)Self-Dual条件 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
3 ’t Hooft解 10
3.1 ’t Hooft解の導出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
3.2 トポロジカルチャージ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11
4 Witten解 15
4.1 Witten ansatz . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15
4.2 Witten解の導出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16
4.3 トポロジカルチャージ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18
5 Caloron解 20
5.1 Caloron解の導出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20
6 Wardによる解 21
6.1 Wardによる解のエネルギー密度 . . . . . . . . . . . . . . . . . 21
7 Chakrabartiによる解 23
7.1 Notation . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23
7.2 1-POLE SOLUTIONS . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24
7.3 2-POLE SOLUTIONS . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27
7.4 ChakrabartiによるWitten解 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 30
8 Conclusion 32
9 Acknowledgement 33
10 APPENDIX 34
10.1 Chakrabartiによる解の構成法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 34
2
1 Introduction
1.1 はじめに
4次元時空の non-abelianゲージ理論であるYang-Mills理論 [1]は、電磁場の
理論である abelianゲージ理論の自然な拡張として定義されている。中でも、
ユークリッド 4次元空間上のYang-Mills理論には、様々なトポロジカルソリト
ン解が発見されており、長年議論の対象となってきた。本論文では、ゲージ群が
SU(2)である4次元ユークリッド空間上のYang-Mills理論に (Anti-)Self-dual条
件を課すことによって得られる解について議論する。それらの解は、Instanton
解やMonopole解として知られ、トポロジカルチャージと呼ばれる数によって
分類されることが知られている。
主な Instanton解として、’t Hooft解 [2]、JNR解 [3]、Witten解 [4]がある。
また、それらの解に基づき、周期性を持つ解として、Caloron解 [5]がある。こ
れらの解は、ある ansatzを仮定することで得られるものである。しかし、後
にこれらを内包し、体系的に解を構成する方法が幾つか発見された。主に挙げ
られるものとして、ADHM構成法 [6]、ツイスター理論による構成法 [10]、可
積分系からのアプローチ [12][13]がある。
本論文の主な内容は、可積分系からのアプローチによる構成法から、正則関数
を選ぶことにより、それぞれに対応した解を求めることである。このChakrabarti
による構成法は、Belinskiiと Zakharovの方法に基づいている [14]。その方法
は、Forgacs、Horvath、PallaとChakrabarti[15][16][17]においても採用され、
軸対称性を持つmonopole解を構成した。本論文の内容はそれらと関連し、そ
の中の一部の解を適切な正則関数を選ぶことによって再現することをみる。そ
の他に、トポロジカルチャージが 1のmonopole解、Witten解を再現する。そ
して、正則関数の選び方によっては、周期的な解が構成できることを示唆する。
これ以降の本論文の構成は、第 2章でYang-Mills理論についてまとめ、解の
存在条件である Self-dual条件について説明する。第 3章では、’t Hooftによっ
て構成された、Yang-Mills方程式の最も基本的なソリトン解である、’t Hooft
解について解説する。(これは’t Hooftインスタントンとも呼ばれる)。第 4章
では、Witten解を解説する。Witten解は、4次元ユークリッド空間中で 3次元
3
球対称となる ansatzを用いて導出される。この ansatzを用いると、Yang-MIlls
作用は 2次元の Abelian Higgs作用に置き換えることができる。第 5章では、
1978年にHarringtonと Shepardによって導出された、Caloron解について解
説する。この解は、4次元ユークリッド空間の一つの方向に関して、周期的な
性質を持つインスタントン解として知られる。第 6章では、ツイスター理論に
基づいた構成法を簡潔に解説し、それによって得られた解のエネルギー密度の
Plotを行い、考察する。第 7章では、主題であるChakrabartiが構成した解に
ついて説明する。この構成法は、後述の正則関数の選び方により、種々の解を
構成できるところにある。ここでは、正則関数をそれぞれ選ぶことによって、
1-monopole解、軸対称な 2-monopole解とWitten解が構成されることをみる。
そして、正則関数によっては、周期的な解を持つ可能性があることを示唆する。
4
2 Yang-Mills理論
初めに、Yang-Mills理論 [1]を概観する。Yang-Mills理論は、電磁場である
U(1)(可換)ゲージ場の理論の自然な拡張として定義される。一般にYang-Mills
理論はゲージ群が非可換のものすべてをさすが、本論文において議論される解
は、全て SU(2)のYang-Mills理論においての解である。ここで、アインシュタ
イン規約
AµBµ ≡4∑
µ=1
AµBµ (2.1)
を採用する。
2.1 Yang-Mills場
non-abelian(非可換)ゲージ場の場の強さ Fµν は µ, νを 1 ∼ 4までとる時空
の添字とし、
Fµν = ∂µAν − ∂νAµ + [Aµ, Aν ] (2.2)
F aµν = ∂µA
aν − ∂νA
aµ − fabcA
bµA
cν (2.3)
Fµν = iT aF aµν , Aµ = iT aAaµ (2.4)
で定義される。一般的にYang-Mills場とは、このゲージポテンシャルAµのこ
とをさす。ここで、T aはゲージ群の生成子、fabcはLie代数の構造定数である。
例えばSU(2)ならば生成子はパウリ行列σa、構造定数はレヴィチビタテンソル
ϵabcを用いて定義できる。ここで、添字 a,b,cはSU(2)ゲージ群の添字で 1 ∼ 3
をとる。
( 補足 : U(1)ゲージ場 (電磁場)の場の強さは
Fµν = ∂µAν − ∂νAµ =1
i[Dµ, Dν ] (2.5)
であり、これを非可換の場合に適用している。つまり非可換の場合の共変微分
Dµ = ∂µ + iAµ(= ∂µ + iAaµTa) (2.6)
5
を用いて、
[Dµ, Dν ] = [∂µ, ∂ν ] + i[∂µ, Aµ] + i[Aν , ∂µ]− [Aµ, Aν ]
= i∂µAν − i∂νAµ − [Aµ, Aν ]
= iFµν (2.7)
)
次に、理論にゲージ不変性を要求するために、ゲージ変換の説明を行う。
ディラック場 ψにゲージ変換
ψ′ = exp[iθaT a]ψ ≡ Uψ (2.8)
を施すと、共変微分の性質
(Dµψ)′ = UDµψ (2.9)
から、Dµは
D′µ = UDµU
−1 (2.10)
のように変換する。
つまり
F ′µν = UFµνU
−1 (2.11)
である。このような形に変換するものをゲージ共変という。
つまり、ゲージ不変なラグランジアンは、
LYM = −1
2Tr(FµνF
µν) (2.12)
である。
(補足:トレースの巡回性より
Tr(F ′µνF
µν′) = Tr(UFµνFµνU−1) = Tr(FµνF
µνU−1U) = Tr(FµνFµν) (2.13)
)
このLYM は、明らかにローレンツ不変性とゲージ不変性を持った形となって
6
いる。
2.2 Yang-Mills方程式
これから、Yang-Millsの運動方程式 (以降ではYang-Mills方程式と省略する)
を 2通りの方法で導出する。
1つ目はゲージ場Adσについてのオイラーラグランジュ方程式
∂LYM∂Adσ
− ∂ρ∂LYM∂(∂ρAdσ)
= 0 (2.14)
を使うやり方。2つ目は、作用を直接変分するやり方である。
1つ目の方法を行うにあたり、Yang-Mills ラグランジアンを次のように書き
換える。
LYM = −1
2Tr(FµνF
µν)
= −1
4F aµνF
µνa (∵トレースの巡回性とTr(T aT b) =1
2δabを用いた。)
= −1
4gµκgνλF a
µνFaκλ
= −1
4gµκgνλ(∂µA
aν∂κA
aλ − ∂µA
aν∂λA
aκ − ∂νA
aµ∂κA
aλ + ∂νA
aµ∂λA
aκ
− gϵabc(∂µAaν)A
bκA
cλ + gϵabc(∂νA
aµ)A
bκA
cλ − gϵabc(∂κA
aλ)A
bµA
cν + gϵabc(∂λA
aκ)A
bµA
cν
+ g2ϵabcϵabcAbµAcνA
bκA
cλ)
これをオイラーラグランジュ方程式に代入すると
∂LYM∂Adσ
= gϵadcF σλaAcλ
∂LYM∂(∂ρAdσ)
= −F ρσd
まとめると、
∂ρFρσa − gϵabcAbρF
ρσc = 0
7
さらに共変微分としてまとめると
DρFρσ = 0 (2.15)
これが一つ目の方法によるYang-Mills方程式の導出方法である。
次に、作用を直接変分してみる。
δS = −1
2δ
∫d4xTr(FµνF
µν)
= −1
2
∫d4xTr(δFµνF
µν + FµνδFµν) = −
∫d4xTr(FµνδF
µν)
= −∫d4xTr(Fµν {∂µδAν − ∂νδAµ + [δAµ, Aν ] + [Aµ, δAν ]})
= −2
∫d4xTr(Fµν(∂
µδAν) + Fµν [δAµ, Aν ])
= −2
∫d4xTr[∂µ(FµνδA
ν)− (∂µFµν)δAν + [Fµν , A
ν ]δAµ]
= 2
∫d4xTr[(∂µFµν + [Aν , Fµν ])δA
µ]
= 0
∴ ∂µFµν + [Aν , Fµν ] = 0
∴ DµFµν = 0
こちらの方法の方が、比較的楽に導出できる。
2.3 (Anti-)Self-Dual条件
4次元ユークリッド空間における Yang-Mills理論の解を見つけるために、
(Anti-)Self-dual条件という条件を課す。それは、次のように作用を変形するこ
とで、導くことができる。また、ここからは特に指定のない限り、考える空間
8
は 4次元ユークリッド空間とし、時空の添字の上下の区別はしないことにする。
S = −1
2
∫d4xTr(FµνFµν)
= −1
4
∫d4xTr(FµνFµν + FµνFµν)
= −1
4
∫d4xTr(Fµν ± Fµν)
2 ∓ 1
2
∫d4xTr(FµνFµν)
= −1
4
∫d4xTr(Fµν ± Fµν)
2 + 8π2|Q| (2.16)
ここで、Fµν = 12ϵµνρσFρσはFµνのHodge dual、ϵµνρσは完全反対称テンソルと
して定義される。また |Q|はトポロジカルチャージ
Q ≡ − 1
16π2
∫d4xTr(FµνFµν) (2.17)
と呼ばれるものの絶対値である。
ここで登場したトポロジカルチャージは、Q ∈ Zとなることが知られており、Qを用いて解を分類することが可能である。次の章ではQが 0と 1を取る
ことを確認する。
(2.16)式に戻ると、第 1項目は明らかに正となるので、
S ≥ 8π2|Q| (2.18)
がわかる。これを見ると、Fµν = ±Fµν の時に等号が成立する。言い換えると、Fµν = ±Fµν という式は作用の極小をとる条件となる。この条件が (Anti-
)self-dual条件である。(Fµν = Fµν の時が Self-dual条件、Fµν = −Fµν の時がAnti-self-dual条件である。)
つまり、(Anti-)self-dual条件を満たす解ならば、4次元ユークリッドYang-
Mills方程式の解となることがわかり (つまり、十分条件)、以降の章ではこの
条件を満たす解を探していく。その解がインスタントン解と呼ばれるものであ
る。また、SU(2)Yang-Mills-Higgs理論のソリトン解としてBPS-monopole解
が存在する。それは、インスタントン解のゲージポテンシャルA4をヒッグス
場 ϕとみなす導出されることが知られている。そのことを、7章でみる。
9
3 ’t Hooft解
この章では、1977年に’t Hooftによって構成された、Yang-Mills方程式の最
も基本的なソリトン解である、’t Hooft解について解説する。(’t Hooftインス
タントンとも呼ばれる)[2][3]。’t Hooft解は、ある ansatzに前述の Self-dual条
件を課すことによって得られる。
3.1 ’t Hooft解の導出
’t Hooft解を導出するために、まず’t Hooft ansatzというものを仮定する。
Aµ =i
2η(−)µν ∂ν lnϕ (3.1)
(補足: ここで η(−)µν は’t Hooft行列と呼ばれ’t Hooft symbol η
a(±)µν で定義される。
η(±)µν ≡ ηa(±)
µν σa (3.2)
ηa(±)µν ≡ ϵaµν4 ± (δaµδν4 − δaνδµ4) (3.3)
ここで、σaはパウリ行列、δµνはクロネッカーのデルタである。)
また、ϕはスカラー関数である。そして、η(−)µν はAnti-self-dual条件を満たす。
以下で見るように、Anti-self-dualな η(−)µν を持ってくることは、Fµνに Self-dual
条件を課すことに対応する。η(+)µν であれば、この対応は逆になる。
この ansatzを用いた場の強さ Fµνは
Fµν = ∂µAν − ∂νAµ + [Aµ, Aν ]
=i
2η(−)νσ (∂µ∂σ lnϕ− (∂µ lnϕ)(∂σ lnϕ))−
i
2η(−)µσ (∂ν∂σ lnϕ− (∂ν lnϕ)(∂σ lnϕ)
− i
2η(−)µν (∂σ lnϕ)
2
10
また、そのHodge-Dualである Fµνは
Fµν =1
2ϵµναβFαβ
=i
2η(−)νσ (∂σ∂µ lnϕ− (∂σ lnϕ)(∂µ lnϕ))−
i
2η(−)µσ (∂σ∂ν lnϕ− (∂σ lnϕ)(∂ν lnϕ)
− i
2η(−)µν ∂σ(∂σ lnϕ)
これに Self-dual条件を用いると、
Fµν = Fµν ⇔ ∂σ(∂σ lnϕ) = −(∂σ lnϕ)2
⇔ ∂σ(∂σ lnϕ) + (∂σ lnϕ)2 = 0
⇔ ϕ−1□ϕ = 0
となり、問題をラプラス方程式を解くことに置き換えることができる。
これの解は、定数項を除いて一般的に
ϕ(x) = 1 +N∑i=1
λ2i(xµ − aiµ)2
(3.4)
である。 これをAµに代入したものが’t Hooft解である。λiと aiµは任意の
実定数である。
’t Hooft解のより一般的な形として、
ϕ(x) =N+1∑i=1
λ2i(xµ − aiµ)2
(3.5)
という形の解も考えることができる。これを JNR解 (Jackiw-Nohl-Rebbi)[3]と
いう。
3.2 トポロジカルチャージ
今から、’t Hooft解のN = 0, 1の場合についてトポロジカルチャージがどの
ように対応しているかを確認する。
N=0のときの解は、ϕ(x) = 1、Aµ = 0であり Fµν = 0となる。この時のト
11
ポロジカルチャージQはもちろん
Q = − 1
16π2
∫dx4Tr(F ⋆
µνFµν) = 0 (3.6)
である。
次に、N=1のときの解について考える。
ϕ(x) = 1 +λ21
(xµ − a1µ)2= 1 +
λ2
y2(3.7)
(yµ = xµ − a1µ, y2 = yµyµと変換した。)
これを、Aµに代入すると、
Aµ =i
2η(−)µν ∂ν lnϕ
=i
2η(−)µν ∂ν ln(1 +
λ2
y2)
= −iη(−)µν
λ2yνy2(y2 + λ2)
(3.8)
また、場の強さ Fµνはこれを用いて、
Fµν = 2iλ2
(y2 + λ2)2
{η(−)µν + 2η(−)
νσ
yσyµy2
− 2η(−)µρ
yρyνy2
}(3.9)
となる。
これを用いると、作用 Sは
S = − 1
2g2
∫dx4Tr(FµνFµν) =
8π2
g2・1 (3.10)
となることがわかる。これにより、この時のトポロジカルチャージQは 1であ
ることがわかる。
従って、N=0,1の’t Hooft解はそれぞれトポロジカルチャージQ = 0, 1に対
応することがわかる。
ここで、例としてN = 2の JNR解の等作用密度面の形をみる。パラメータ
として、(a1µ, λ1) = (1, 0, 0, 0, 15),(a2µ, λ2) = (cos 2π3, sin 2π
3, 0, 0, 15),(a3µ, λ3) =
(cos 4π3, sin 4π
3, 0, 0, 15)をとった。図 1をみると、N=2の等作用密度面はトーラ
スの形になり得ることがわかる。図 3からは、二つのピークが局在してること
12
が見て取れる。
図 1: N=2の等作用密度面
図 2: y=0の時の断面図
13
図 3: t=0の時の断面図
14
4 Witten解
Witten解は、1977年にWittenによって導かれた [4]。ここでは、4次元ユー
クリッド空間中で 3次元球対称となる ansatzを用いて導出する。この ansatzを
用いると、Yang-Mills作用は 2次元のAbelian Higgs作用に置き換えることが
できる。ここでは、原論文に則り、時空の添え字を 0~3までとるものとする。
4.1 Witten ansatz
Wittenによる ansatzは、r = (x21 + x22 + x23)1/2と x0 ≡ tを用いて仮定する。
Aaj =(ϕ2 + 1)
r2ϵjakxk +
ϕ1
r3[δjar
2 − xjxa] + A1xjxar2
Aa0 =A0xar
(4.1)
ここで、aは SU(2)の添字であり、ϕ1, ϕ2, A1, A2は rと tの未知関数である。
この ansatzを用いると、場の強さと作用 (SWittenとする)は
F a0i = (∂0ϕ2 − A0ϕ1)
ϵiakxkr2
+ (∂0ϕ1 + A0ϕ2)δair
2 − xaxir3
+ r2(∂0A1 + ∂rA0)xaxir4
1
2ϵijkF
ajk = −ϵiasxs
r2(∂1ϕ1 + A1ϕ2) +
δair2 − xaxir3
(∂1ϕ2 − A1ϕ1) +xaxir4
(1− ϕ21 − ϕ2
2)
SWitten =1
4
∫d3x
∫dtF a
µνFaµν
= 8π
∫dt
∫dr(
1
2(Dµϕi)
2 +1
8r2F 2
µν +1
4r−2(1− ϕ2
1 − ϕ22)
2) (4.2)
となる。ここでは Fµν = ∂µAν − ∂νAµと定義する。
この作用 SWittenは、計量が gµν = r2δµνで与えられる 2次元平面のアーベリ
アンヒッグスモデルの作用と等しい形となっている。
15
4.2 Witten解の導出
ここでも Self-dual条件を課して解を求めていく。ここでの Self-dual条件と
しては、
F a0i =
1
2ϵijkF
ajk (4.3)
の形のものを用いる。
これに前節で求めた F a0iと
12ϵijkF
ajkを代入することで、次の三つの条件に置
き換えることができる。
∂0ϕ1 + A0ϕ2 = ∂1ϕ2 − A1ϕ1 (4.4)
∂1ϕ1 + A1ϕ2 = −∂0ϕ2 + A0ϕ1 (4.5)
r2(∂0A1 − ∂1A0) = 1− ϕ21 − ϕ2
2 (4.6)
これらの方程式を解くために、ゲージ固定条件 ∂µAµ = 0を課す必要がある。
つまり Aµ = ϵµν∂νψを満たすような ψを見つけることに問題は置き換わる。
ゲージ固定条件より、最初の 2式は
(∂0 − ∂0ψ)ϕ1 = (∂1 − ∂1ψ)ϕ2 (4.7)
(∂1 − ∂1ψ)ϕ1 = −(∂0 − ∂0ψ)ϕ2 (4.8)
となる。
ここで、ϕ1 ≡ eψχ1, ϕ2 ≡ eψχ2とおくと、より単純に
∂0χ1 = ∂1χ2 (4.9)
∂1χ1 = −∂0χ2 (4.10)
となる。この形の方程式をコーシーリーマンの方程式という。つまり、f =
χ1 − iχ2が z = r + itにおいて解析関数であるような χ1, χ2が解となることが
わかる。
三つの条件式 (4.4),(4.5),(4.6)の内、最後に残った (4.6)について考える。(4.6)
16
は、
−r2∇2ψ = 1− f ∗fe2ψ (4.11)
に書き換えることができる。ここで、∇2 = ∂µ∂µ = ∂20 + ∂21 である。
この式を解くためには、次のような ansatzを仮定する。
ψ ≡ ln r − 1
2ln(f ∗f) + ρ (4.12)
ただし ρは未知関数である。この ansatzを (7.40)に代入すると
∇2ρ = e2ρ (4.13)
という式が得られる。この式は Liouvilleの方程式と呼ばれている。
この方程式を解くために、まずは特解 ρ1(z)を探す。ここでは、
ρ1(z) = − ln(1
2(1− z∗z)) (4.14)
という形の特解をまず考える。次に、任意の解析関数 ω(z)を新たに持ってく
ると、ωについてのラプラシアンと ρ1(ω)について、
∇2zρ1(ω) = |dω
dz|2∇2
ω = |dωdz
|2e2ρ1(ω) (4.15)
と書ける。この式は、因子 |dωdz|2を除けば、Liouville方程式を満たす。そのた
め、ρ1(ω)の代わりとして、
ρ(ω) = ρ1(ω) +1
2ln |dω
dz|2 (4.16)
とすると、この ρ(ω)は Liouville方程式を満たす。すなわち、g(z)が任意の解
析関数であるならば
ρ(g) = − ln(1
2(1− g∗g)) +
1
2ln |dg
dz|2 (4.17)
17
は Liouville方程式を満たすことがわかる。
これを用いると、ψは
ψ = ln r − 1
2ln(f ∗f)− ln(
1
2(1− g∗g)) +
1
2ln |dg
dz|2
=1
2ln |(dg
dz)/f |2 − ln(
1− g∗g
2r) (4.18)
となる。ここで、ψに特異性を持たせないために、第 1項目を 0とする。その
ためには f = dgdzである必要がある。
つまり、これの一般解は
ψ = − ln
(1− g∗g
2r
), f =
dg
dz(4.19)
ということがわかる。ψが非特異的であるための gの条件は、r = 0のとき |g| =1, r > 0のとき |g| < 1である。この条件を満たし、z → ∞で滑らかであるような関数 gは次の形のものであると考えられる。
g =k∏i=1
(ai − z
a∗i + z) (4.20)
ここで、aiはRe(ai) > 0を満たす任意の複素数である。
この g及び ψがWitten解と呼ばれるものである。
4.3 トポロジカルチャージ
witten解におけるトポロジカルチャージQWittenは以下のようになる。
QWitten =1
32π2
∫d4xF a
µνFaµν
=1
2π
∫d2xr2F a
0i(1
2ϵijkF
ajk)
=1
2π
∫d2x(ϵµνϵij∂µ(ϕi∂νϕj) +
1
2ϵµνFµν) (4.21)
となる。ここで、最終式の第 1項目はストークスの定理により、表面積分とな
るため消える。
18
そのため、
QWitten =1
4π
∫d2x(ϵµνFµν)
=1
2π
∫d2x(ϵµν∂µAν) (4.22)
となる。ここで、ある領域を周る経路の位相差 ϕとゲージポテンシャルとの関
係式
ϕ = feψ = exp(i
∮dxµAµ) (4.23)
を用いて、QWittenは
QWitten =1
2πi
∮ds
d
dsln(feψ)
=1
2πi
∮ds
d
dsln f +
1
2πi
∮ds
d
dsψ (4.24)
となる。最後の式の 2項目は ψが一価関数のため 0となる。1項目は留数定理
により、f のゼロ点の数と等価になる。
f のゼロ点の数は (4.20)の kで表すことができ、それは k − 1個存在する。
つまり、Witten解によるトポロジカルチャージはQWitten = k − 1となること
がわかる。
19
5 Caloron解
Caloron解は、1978年にHarringtonと Shepardによって導出された [5]。こ
の解は、4次元ユークリッド空間の一つの方向に関して、周期的な性質を持つ
インスタントンである。
5.1 Caloron解の導出
Caloron解 ϕcを導出するために、2章で紹介した JNR解 ϕJNRに時間 τ につ
いての周期性を持つように変更を加える。
ϕJNR =N+1∑i=1
λ2i(xµ − aiµ)2
→ ϕc =∞∑
k=−∞
λ2
((xi − xi0)2 + (τ − τk)2)2
JNR解との違いは、大きさのパラメーターλiと空間的位置パラメーター xi0が
全て等しく、無限個の特異点の和をとっていることである。もし τk = τ0 + kβ
とするならば、ϕcは明らかに周期的である。
次の公式
∞∑−∞
1
x2 + (a+ 2nπ)2=
sinhx
2x(coshx− cos a)
を用いて ϕcの和を計算すると、
ϕc =(πλ2)
β|x− x0|sinh(2πβ−1|x− x0|)
cosh(2πβ−1|x− x0|)− cos(2πβ−1(τ − τ0))(5.1)
となる。
(5.1)式の ϕcのことをHarrinton-Shepard解、またはCaloron解と呼ぶ。
20
6 Wardによる解
ツイスター理論を用いた構成法は、Atiyah,WardとCorrigan,Fairlie,Yates,Goddard
らによって定式化された [8][9]。その構成法は、
∂2∆l = 0
を満たす∆lを導くことによって与えられる。ここで、lは正の整数である。
l = 0の時は、前述の’t Hooft解を再現することが知られている。文献 [10]
によると l = 1の時に得られた解は 2-monopole解となることが主張されてい
る。そこで、それから得られるエネルギー密度をプロットすることにより、エ
ネルギー密度の形から、その解が 2-monopole解であることを確かめる。
6.1 Wardによる解のエネルギー密度
Wardによって得られたトポロジカルチャージが 2のmonopole解
ϕ =1
2F
(Fz −2Eζ
−2Gζ −Fz
)(6.1)
からエネルギー密度
E =1
2
∫∂j∂j|ϕ|2d3x (6.2)
を計算する。(|ϕ|2 = Tr(ϕ2))そして、それをある一方向で切った断面図を二つ
のせる。
21
図 4: z = 0の時の断面図
図 5: y = 0の時の断面図
一般にトポロジカルチャージが 2の軸対称monopole解はエネルギー密度が
トーラスの描像を持つことがわかっている。[11]
ここで、第 3章で議論し、同じくトーラスの描像を持っていたN = 2の’t
Hooft解のエネルギー分布の断面図を思い出す。
図 2、図 3の再掲
図 4、図 5と図 2、図 3を比較すると、同様の形をしていることが確認でき
る。つまり、エネルギー密度の形はトーラスであることを主張でき、この観点
からもWardによって得られた解が 2-monopole解であることが確認できる。
22
7 Chakrabartiによる解
本章では主題であるChakrabartiが構成した解 [12][13]について説明する。こ
の構成法は、後述の正則関数の選び方により、様々な解を構成できるところに
ある。ここでは、正則関数をそれぞれ選ぶことによって、トポロジカルチャー
ジが 1,2のmonopole解とWitten解が構成されることをみる。
7.1 Notation
まず、SU(2)ゲージポテンシャル AµのAnsatzを行列Dを用いて、次のよ
うに定義する。
D ≡ λ−1/2
(λ 0
ζ 1
)(7.1)
Aµ ≡ (i∂µD)D−1
= i(2λ)−1
(∂µλ 0
2∂µζ −∂µλ
)(µ = y, z) (7.2)
Aµ ≡ (i∂µD†−1)D†
= −i(2λ)−1
(∂µλ 2∂µζ
0 −∂µλ
)(µ = y, z) (7.3)
G = D†D = λ−1
(λ2 + ζζ ζ
ζ 1
)(7.4)
ここで、y,zは
y = eiϕ tanθ
2, y = e−iϕ tan
θ
2(7.5)
z =1
2(r + it), z =
1
2(r − it) (7.6)
である。(y,z は y,z の複素共役) Aµ,Aµ は Lie代数 su(2)に値を取らないが、
At, Ar, Aθ, Aϕに戻したときに su(2)になる形となっている。
Aµ, Aµについての self-dual条件は、4次元ユークリッド空間についての self-
23
dual条件
F12 = F34, F13 = −F24, F14 = F23 (7.7)
を y,zについて座標変換
µ, ν = (x1, x2, x3, x4) → a′, b′ = (t, r, θ, ϕ) → α′′, β′′ = (y, y, z, z)
Fµν =∂xa
′
∂xµ∂xb
′
∂xνFa′b′ =
∂xa′
∂xµ∂xb
′
∂xν∂xα
′′
∂xa′∂xβ
′′
∂xb′Fα′′β′′
することで、
r2Fzz + (1 + yy)2(Fyy) = 0 (7.8)
となる。
しかし、今回はそれにD†,D†−1を挟んで変換した形
r2∂z((∂zG)G−1) + (1 + yy)2∂y((∂yG)G
−1) = 0 (7.9)
について考える。
7.2 1-POLE SOLUTIONS
この章では前節の notationから、topological chargeが 1の静的な解を導出
する。まず、実定数パラメーター cと以下の関係を満たすR、ωを導入する。
R2 = r2 + c2 − 2cr cos θ (7.10)
R cos (ω − θ) = r − c cos θ (7.11)
R sin (ω − θ) = c sin θ (7.12)
次に、M1,M2をR− itについての関数として、D を定義する。
D =M1M1e−R sin2 1
2(ω − θ) +M2M2e
R cos21
2(ω − θ) (7.13)
24
このD で λ, ζは
λ = 2D−1er(M2M2eR −M1M1e
−R) sin(ω − θ) (7.14)
ζ = D−1M1M2er (7.15)
となる。ここでの λと ζはAPPENDIXのG1を用いて導出した。
ここで、c→ 0ととり球対称性を課すことで、
λ = sin θ1
2r(er − ffe−r)c ≡ c
2J(z, z)sin θ (7.16)
ζ = f + cos θc
2(2f − df
dz) ≡ f +
1
2K(z) cos θ (7.17)
という結果が得られる。ここで、f = M2
M1である。
この λと ζ を用いると、4次元円柱座標 (t, r, θ, ϕ)についてのゲージポテン
シャルは
At = ∂r(ln J)σ32, Ar = −∂t(ln J)
σ32,
Aθ =1
2
(0 iJK
−iJK 0
), Aϕ = sin θ
1
2
(0 JK
JK 0
)− cos θ
σ32
(7.18)
となる。
K ≡ |K|eiδ(z,z), K ≡ |K|e−iδ(z,z), |K| =√KKと定義し、ゲージ変換
A′
µ = UAµU−1 + i(∂µU)U
−1, (U = exp[−iδ(z, z)σ32])
を行うと、
At = ∂r ln(J |K|)σ32, Ar = −∂t ln(J |K|)σ3
2,
Aθ = −J |K|σ22, Aϕ = sin θJ |K|σ1
2− cos θ
σ32
(7.19)
が得られる。理論はゲージ不変なので、ゲージ変換後のA′µを使って議論して
も問題無い。
25
r, t(または z, z)についてのみのラグランジアン密度 Sdは
Sd = r2Tr(FµνFµν) = ∂z∂z[− ln J +
1
2(J |K|)2] ≡ ∂z∂zH (7.20)
である。Sdに rのみについてのヤコビアンも含んでいる。
f = 1についてみてみると、
K = 2, J |K| = r
sinh r, ∂z∂z ≈
d2
dr2(7.21)
となる。rのみについての作用 (つまりトポロジカルチャージ)をみると、∫ ∞
0
drSd =
∫ ∞
0
drd2
dr2
(− ln
(r
er − e−r
)+
1
2
( r
sinh r
)2)= 1 (7.22)
となる。このため、f = 1がトポロジカルチャージ 1の解に対応していること
がわかる。また、この時の等エネルギー密度面は下図のようになり、チャージ
が 1つある状態が確認できる。
図 6: 1-pole solutionの等エネルギー密度面
26
7.3 2-POLE SOLUTIONS
1-POLEの時と同様に、2-POLEについては、APPENDIXのG2を対応させ
る。cを複素パラメーターとして、1-POLEの時と同じように、R, R, µ, µを以
下のように定義する。
R = (r2 + c2 − 2cr cos θ)1/2 (7.23)
R = (r2 + c2 − 2cr cos θ)1/2 (7.24)
µ = − c sin θ
R + r − c cos θ(7.25)
µ = − c sin θ
R + r − c cos θ(7.26)
また、それらと関数 f1(R− it), f2(R− it)に関して、
M = (1 + µµ)−2M11M22 − (1 + µ2)−1(1 + µ2)−1M12M21 (7.27)
を定義する。ここで、
Mjj = 1 + fjfje−(R+R)(j = 1, 2) (7.28)
M12 = 1− f1f2e−2R (7.29)
M21 = M12 = 1− f2f1e−2R (7.30)
である。
APPENDIXのG2から、
λ−1 = e−r(µµ−M−1
((1 + µµ)−1(M11+M22)−(1 + µ2)−1 µ
µM12−(1 + µ2)−1µ
µM21
))
ζ
λ=M−1(((1 + µµ)−1M11 − (1 + µ2)−1µ
µM21)f2e
−R
−((1 + µµ)−1M22 − (1 + µ2)−1 µ
µM12)f1e
−R) (7.31)
である。2-POLEについては、トポロジカルチャージが2の軸対称なmonopole[15],[17],[16]
を導くことをみる。
27
ここで、Ansatzとして
f1 =n∏j=1
(aj + e−k(R−it)
aj + ek(R−it)
), f2 =
n∏j=1
(bj + e−k(R−it)
bj + ek(R−it)
)(7.32)
を仮定する。ここで、kは実数定数である。
まず最初に、時間依存性を持たない場合について考える。そのような場合
は、aj = 0,bj = 0の時で、f1, f2は
f1 = e−2nk(R−it), f2 = e−2nk(R−it) (7.33)
となる。
(7.31)に代入すると、
ζ
λ= e−iptM−1((1 + µµ)−1(1 + e(p+1)(R+R))(e(p+1)R − e−(p+1)(R))
+(1 + µ2)−1 µ
µ(1− e−(p+1)2R)e−(p+1)R
−(1 + µ2)−1µ
µ(1− e−(p+1)2R)e−(p+1)R) (7.34)
という式が得られる。ここで、p = 2nkである。そして、
ζ
λ≡ e−iptη (7.35)
と定義する。
次に、スカラー場Φに対応すると予想されるTrA2t を求めたい。そのために
まず、(7.35)式を使ってAtを出す。そして、得られたAtの時間依存性をなく
すために U = eiptσ3/2によるゲージ変換を行う。結果として、
2TrA2t = (
∂rλ
λ+ p)2 +
1
λ2(ηη + ηrηr + p(ηηr + ηrη)) (7.36)
を得る。そして、rを無限遠まで持っていくと、
(2TrA2t )r→∞ = (p+ 1− 2
r)2 +O(r−3) (7.37)
となる。
28
また、軸対称な 2-monopoleはスカラー場が
[Φ]r→∞ ≈ (1− 2
r) (7.38)
となることがわかっている。[16][17]
つまり、(7.37)の p = 0のときに対応していることがわかる。(staticな解)
ここまで、時間依存性のない静的 (static)な解をみてきた。周期的な解を求め
るためには、ansatzである f1,f2に周期性を持たせれば良い。つまり、(7.33)を
そのまま扱い解を構成することで、周期的な解ができあがる事が示唆される。
29
7.4 ChakrabartiによるWitten解
この節では、正則関数 f を以下のように選ぶことで、Witten解が再現され
ることを見る。
fw ≡ e2zn∏j=1
(aj − 2z
aj + 2z
)≡ e2zg (7.39)
ここで、aj + aj > 0である。これを 1-pole solutionのときに求めた J |K|に代入してみると、
J |K| = r(1− gg∗)−1|dgdz
| (7.40)
となる。
また、self-dualに関しての公式として
∂z∂z(ln J) =1
r2(J2KK − 1) (7.41)
がある。 (7.41)に (7.40)を代入したものは、Witten解が満たすべき式の (4.11)
に、Witten解を実際代入した式と全く同じ形になることがわかる。従って、こ
こで定義した正則関数 fwはWitten解を再現していることが即座にわかる。
次に、これを用いて作用密度 (7.20)を求めると、
Sd ∼ k − 1 (7.42)
となり、これもWitten解と一致している。そして参考として、この等作用密
度面を k = 4の場合についてプロットしてみる。つまりトポロジカルチャージ
QWittenが 3の時に対応するものである。
30
図 7: fw(k = 4)の時の等作用密度面
図 8: 右半平面 (r + it)上の作用分布
これらを見ると、t軸上にチャージが3つ分布していることがわかり、Qwitten =
3を確認できる。
31
8 Conclusion
今回、ソリトン解の構成法のなかで、可積分系のアプローチに着目し、解を
構成した。Self-dual条件を座標変換し、Laxペアに置き換え、正則関数を適切
に選ぶことにより、様々な解が体系的に導かれることが確認することができた。
しかし、1-monopole解、軸対称な 2-monopole解、Witten解といった、既存の
解を構成することは確認できたのだが、その他の解を構成するまでには至らな
かった。今後の展望として残されていることは、対応する正則関数を考え、上
記以外の既存の解を構成すること、周期解の具体的な形を明示すること、そし
て、全く新しい解を構成することが挙げられる。
32
9 Acknowledgement
本研究にあたりご指導いただいた、中村厚准教授に心より感謝を申し上げ
ます。また、学部生の時から、快く助言や激励をしていただいた十河清教授、
守真太郎講師、佐々木伸助教授にも、厚く感謝を申し上げます。また、本論文
を書くにあたり、計算方法の指導や、長時間の議論に付き合ってもらい、論文
完成に多大なる協力をしてくれた坂口淳講座研究員に心より感謝を申し上げ
ます。本研究室において培った経験を生かし、残りの人生を謳歌していく所存
です。
33
10 APPENDIX
10.1 Chakrabartiによる解の構成法
ここでは付録として、7章で議論されたChakrabartiによる解の元となった
λや ζがどのようにして導出されたのかを要約する。
これはBelinski、Zakharov[14]が行った方法に基づくものであり、Self-dual
条件を Lax-pairという手法で、可積分条件に置き換えて構成するという方法
である。
まず、6章において出てきた座標変換された Self-dual条件を再掲する。
r2∂z((∂zG)G−1) + (1 + yy)2∂y((∂yG)G
−1) = 0 (10.1)
次に、以下に定義される線形のペアを考える。
D1ψ ≡ r−1(r∂z − Λ(1 + yy)∂y − (1 + yΛ)Λ∂Λ)ψ (10.2)
= (GzG−1)ψ (10.3)
D2ψ ≡ (1 + yy)−1(Λr∂z + (1 + yy)∂y + (Λ− y)Λ∂Λ)ψ (10.4)
= (GyG−1)ψ (10.5)
D1とD2は交換し、
[D1, D2]ψ = 0 (10.6)
は (10.1)を導く。ここで、[D1, D2] = 0のことを Lax方程式という。
次に、(10.1),(10.2),(10.6)について Seed solutionという解を定義する。
G0 =
(er 0
0 −e−r
), ψ0(Λ) =
(eh(Λ) 0
0 −e−h(Λ)
)(10.7)
h(Λ) ≡ 1
2r((1 + Λy)−1 − y(Λ− y)−1) (10.8)
34
そして、G0 = ψ0(Λ = 0)である。次に、(10.6)を満たす解として次のAnsatz
を導入する。
ψN(Λ) =N∏k=1
(I +
Rk
Λ− µk
)ψ0(Λ) (10.9)
ここで、Iは 2 × 2の単位行列である。
次にすることは、この Ansatzが (10.6)を満たすような条件を課し、GN =
ψN(Λ = 0)を決定づけることである。そのためには、次の pole equationsをµk
が満たせばよいことが知られている。
(r∂z − µ(1 + yy)∂y + (1 + yµ))µ = 0 (10.10)
(µr∂z + (1 + yy)∂y − (µ− y))µ = 0 (10.11)
結果として、pole equationsを満たし、軸対称性を持つようなRkと µkを選
ぶことで、求めたいGN を導く事が出来る。
以下では、7章で議論するために必要な 1-pole solutionと 2-pole solutionに
対応するG1とG2を挙げておく。
G1 = tan1
2(ω − θ)
(G0 −
1
sin2 12(ω − θ)
(G0m†1)(m1G0)
m1G0m†1
)(10.12)
m1 ≡ (M1e−(r+R)/2,−M2e
−(r+R)/2) (10.13)
ここで、ω,θ,Rは 7章で定義されたものと同じものであり、M1,M2はR− itの
任意関数である。これを用いて、c → 0の極限をとることで、解を構成する。
次に、G2については
G2 = µµ
(G0 −
1
N(N22V
†1 V1 +N11V
†2 V2 −N21V
†1 V2 −N12V
†2 V1)
)(10.14)
35
となる。ここで、
V †1 = µ−1(f1e
(r − R)/2, e−(r − R)/2) (10.15)
V †2 = µ−1(f2e
(r −R)/2, e−(r −R)/2) (10.16)
Njj = (1 + µµ)−1(fjfje−(R+R/2 + e(R+R/2) (j = 1, 2) (10.17)
N12 = (1 + µ2)−1(f1f2e−R + eR) = N21 (10.18)
N = N11N22 −N12N21 (10.19)
であり、f1,f2はR− itの関数となる。
36
参考文献
[1] C. N. Yang and R. L. MIlls, Phys. Rev. 96, 191 (1954).
[2] G. ’t Hooft, unpublished.
[3] R.Jackiw,C.Nohl and C.Rebbi, Phys. Rev. D 15, 1642 (1977).
[4] E. Witten, Phys. Rev. Lett. 38, 121 (1977).
[5] B. J. Harrington and H. K. Shepard, Phys. Rev. D 17, 2122 (1978).
[6] M. F. Atiyah, N. J. Hitchin, V. G. Drinfeld and Y. I. Manin, Phys. Lett.
A 65, 185 (1978).
[7] W. Narm, Phys. Lett. B 90, 413 (1980).
[8] M. F. Atiyah, R. S. Ward, Commun. Math. Phys. 55, 117 (1977).
[9] E. F. Corrigan, D. B. Fairlie, R. G. Yates and P. Goddard, Commun.
Math. Phys. 58, 223 (1978).
[10] R. S. Ward, Commun. Math. Phys. 79, 317 (1981).
[11] N. S. Manton and P. Sutcliffe, ”Topological Solitons”,(CAMBRIDGE
MONOGRAPHS ON MATHEMATICAL PHYSICS 2004),第 8章参照
[12] A. Chakrabarti, Phys. Rev. D 28, 989 (1983).
[13] A. Chakrabarti, Phys. Rev. D 35, 696 (1987).
[14] V. A. Belinski and V. E. Zakharov, Sov. Phys. JETP 48, 985 (1978).
[15] P.Forgacs, Z.Horvath and L.Palla, Phys. Rev. Lett. 45, 505 (1980).
[16] A. Chakrabarti, Phys. Rev. D 25, 3282 (1982).
[17] P.Forgacs, Z.Horvath and L.Palla, Ann.Phys. 136, 371 (1981).
37