csis symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための...

15
都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員 福山 祥代 CSISシンポジウム2016

Upload: others

Post on 01-Mar-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル

東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

福山 祥代

CSISシンポジウム2016

Page 2: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

都市の空間計画とは

2

駅を起終点とする1km四方程度の空間計画

計画手法 再開発街路空間再整備施設等のリノベーション交通計画再編

施設配置ネットワーク空間の計画エントリーポイント

問題

→ 賑わい  来街者・来店者の増加

目標 対象空間の活性化利便性・魅力の向上

Page 3: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

空間利用の需要予測

3

「賑わい」とは・・?街路などの屋外空間での人の活動の多さ

計画が実現したときの人の活動発生や流動の変化の 定量的評価はあまり行われていない

○鉄道や道路に比べて影響範囲やインパクトが小さい○主目的が交通でないため,人の活動・流動の評価の  必要性が認識されていない○歩行者の活動・流動の予測の手法が確立されていない○歩行者の行動データの取得が難しい

要因

Page 4: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

行動データの取得方法

4

■従来の方法

大規模交通調査

個別調査

パーソントリップ調査など

アンケート,インタビュー,追跡調査など

ゾーン単位

集計データ

1kmスケールの行動分析には 大きすぎる

個人ごとの行動軌跡は不明

記憶に頼るので間違いが多い 高コスト多くのサンプルの収集,長期間の調査が困難

500m

東京パーソントリップ調査の小ゾーン

Page 5: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

行動データの取得方法

5

詳細データの収集が容易に

❶ 個人ごとの移動軌跡❷ 高い時空間分解能❸ 長期間

GPS等の位置計測手段 個人ごとの移動通信機器

従来の アンケートベースの調査

○集計データ ○歩行経路の観測が難しい ○ある1日のデータ

a. 調査による収集 b. 別の目的で収集した   データの利用

Page 6: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

調査による行動データ

6

プローブパーソン調査

▲出発時 ▲移動中 ▲到着時

移動目的・ 交通手段を入力

GPSで 位置計測

到着ボタンを 押下

※交通手段変更時も  アプリ入力を実施

○GPSによる詳細な軌跡(秒単位の時系列の位置情報)とともに,  被験者の入力による出発地・目的地・移動目的・交通手段等の  情報が取得できる○同一個人の長期間の行動データ取得が可能→パネル分析が可能  (データ利用に関する同意事項の違いによる)

スマートフォンなどの 移動通信機器を利用

○サンプルデータ(量の把握は難しい)

Page 7: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

別の目的で収集したデータ

7

→ 機械学習などを用いた推計が必要

Wi-FiデータWi-Fiのアクセスポイントから ユーザーの位置情報を取得

1) Wi-Fiアクセスポイントに接続した機器の  MACアドレスと電波強度を記録

2) 電波強度からアクセスポイントまでの距離を計算

3) アクセスポイントの位置情報と,  複数のアクセスポイントまでの距離を用いて,  各機器の位置を特定

○大量の移動軌跡データを容易に取得できる○集計データとして使用 (データ利用に関する同意事項の違いによる)○Wi-Fiの場合,室内での観測や階層(3次元)情報の取得が可能○位置情報以外の情報 (移動目的,移動手段など) は得られない

Wi-Fi アクセス ポイント①

Wi-Fi アクセス ポイント②

電波強度②  →距離②

電波強度①  →距離①

Page 8: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

行動モデル

8

どうやったら知ることができるのか

現象の把握は可能(そのままの条件でない場合の) 将来予測は難しい

抽象化

現象と それに関する変数の関係を

数式で表現

データ モデル

行動モデル現象:選択結果 変数:個人属性,サービス水準,環境○効用と変数の関係を記述○効用が最大になる選択肢が  選択されると考える

Page 9: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

行動モデル

9

❷ 時間利用の選択

❸ 動学的意思決定

人の意思決定を記述するモデル

離散選択モデル

❶ アクティビティベース

■ 交通行動における一般的な意思決定 (選択)

どこへ (目的地)

どうやって (交通手段)

どこを通って (経路)

a

b

c

発展形

Page 10: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

行動モデル

10

❷ 時間利用の選択

❸ 動学的意思決定

❶ アクティビティベース1回の出発地-目的地間の移動に着目するのではなく, 1日の移動・活動を総合的に記述

Bowman & Ben-Akiva (2000)

「移動は活動の派生需要」という考え方

選択したものにどれぐらい時間を費やすか を記述

効用が最大となるように時間を配分(資源配分型モデル)

Bhat (2008)

現在直面する選択肢の効用だけでなく, 将来の選択の効用も考慮する意思決定を記述

a

b

c

d

e

f

g

hijk

l

aの選択により 将来取り得る 選択肢

bの選択により 将来取り得る 選択肢

Page 11: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

計画策定のための需要予測

11

歩行者の 空間利用の需要予測

どこからどこへ どの経路を通って行くのか

時間をどのように使うのか

交通需要予測量の問題

ゆっくり移動することが プラスの価値判断を表す

量の問題

質の問題

どこからどこへ どの経路を通って行くのか

Page 12: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

歩行者行動のモデリング

12

○ 移動と滞留が連続的回誘行動の特徴 ○ 時間利用が空間評価を表す

○ 移動途中でその先の行動を決定する

○ 沿道環境によって行動が変わる歩行速度も変わる

研究テーマ

時間利用の表現 意思決定過程の表現

Page 13: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

歩行者行動のモデリング

13

領域への動的時間配分モデル 福山・羽藤 (2016)

AjkAcjk

現在直面している選択 現在の選択に伴う将来の選択可能範囲

sj

ej=sj+1

残り時間 Tj

θjk

時間配分 tj

tc

この間で残り時間を配分

領域kでの活動

領域k’での活動

領域選択区間1

区間2領域選択

領域選択

残り時間

残り時間

時間資源

Habib (2011)

○進行方向の選択○時間の配分

Page 14: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

データとモデルの関係

14

データを用いて行動モデルのパラメータを推定

最尤推定

ベイズ推定

データ同化「観測モデル」の導入→ 状態を記述するモデル  (システムモデル)   の不備  +観測誤差を考慮

:過学習する恐れ

:事前分布に対して  新たに得られたデータを用いて確率を更新

→モデルの記述力には限界があるモデル:単純化した表現

Page 15: CSIS symposium fukuyama 提出版 · 都市の空間計画・運用のための 行動データと行動モデル 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻・特任研究員

今後に向けて

15

○ 調査以外で得られる大量の観測データを用いた   モデリング

○ 逐次的に得られる観測データを用いた   リアルタイムのシミュレーション

○ モデルの記述力の向上と   空間計画への需要予測の活用の推進