csr時代における日本企業の行動規範の分析 ~東証一部上場173...

地域分析 第49巻第 2 号 2011年 3 月 41 CSR 時代における日本企業の行動規範の分析 ~東証一部上場 173 社の CSR 行動規範を対象に~ 志野 澄人 1 はじめに~情報の垂れ流し状態の CSR 行動規範 2 行動規範の理論的視点と新しい行動規範の導入理由 2.1 行動規範とは何か。その理論的視点 2.1.1 行動規範の定義 2.1.2 行動規範の理論的視点 2.2 CSR の時代における新しい行動規範の導入理由と「自主的」の問題点 2.2.1 CSR 行動規範の導入理由と行動規範マニュアル 2.2.2 自主的な行動規範の作成に対する問題点 3 日本企業の CSR 行動規範の分析~東証一部上場 173 社を対象に 3.1 データおよび分析の焦点 3.2 名称の種類および経営理念との関係 3.3 173 社の CSR 行動規範の記載内容の項目について 3.4 CSR 行動規範の内容表現の分析~キーワードを対象に 3.4.1 キーワードの出現数ランキング 3.4.2 対応分析と頻度による有意性テストにみる,業界別の傾向 4 総括 【要約】 本論では,日本企業(東証一部上場 173 社)の CSR 行動規範の内容について, 名称,経営理念との関係,記載内容の項目,業界別の内容表現の特徴を分析した。 それを行った理由は,CSR 行動規範は自主的に作られ,ネット上に一方的に流 され,それに対する消費者側のチェックは一向に進んでいないからである。分析 の結果,名称は「~規範」が多く,173 社のうち 62 社(36%)が,それを経営 理念として扱っていた。大半の企業が,従業員や環境についての項目を記載して おり,その内容表現について対応分析と頻度による有意性テストによって,業界 ごとの特徴を探った。その結果,食品業界,自動車・バイク業界,物流・運送業 界などで独自の表現内容が見られた。

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地域分析第49巻第 2 号2011年 3 月

41

CSR時代における日本企業の行動規範の分析~東証一部上場 173 社の CSR行動規範を対象に~

志野 澄人

1 はじめに~情報の垂れ流し状態の CSR 行動規範2 行動規範の理論的視点と新しい行動規範の導入理由 2.1 行動規範とは何か。その理論的視点  2.1.1 行動規範の定義  2.1.2 行動規範の理論的視点 2.2 CSR の時代における新しい行動規範の導入理由と「自主的」の問題点  2.2.1 CSR 行動規範の導入理由と行動規範マニュアル  2.2.2 自主的な行動規範の作成に対する問題点3 日本企業の CSR 行動規範の分析~東証一部上場 173 社を対象に 3.1 データおよび分析の焦点 3.2 名称の種類および経営理念との関係 3.3 173 社の CSR 行動規範の記載内容の項目について 3.4 CSR 行動規範の内容表現の分析~キーワードを対象に  3.4.1 キーワードの出現数ランキング  3.4.2 対応分析と頻度による有意性テストにみる,業界別の傾向4 総括

【要約】

 本論では,日本企業(東証一部上場 173 社)の CSR 行動規範の内容について,

名称,経営理念との関係,記載内容の項目,業界別の内容表現の特徴を分析した。

それを行った理由は,CSR 行動規範は自主的に作られ,ネット上に一方的に流

され,それに対する消費者側のチェックは一向に進んでいないからである。分析

の結果,名称は「~規範」が多く,173 社のうち 62 社(36%)が,それを経営

理念として扱っていた。大半の企業が,従業員や環境についての項目を記載して

おり,その内容表現について対応分析と頻度による有意性テストによって,業界

ごとの特徴を探った。その結果,食品業界,自動車・バイク業界,物流・運送業

界などで独自の表現内容が見られた。

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

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【キーワード】

 CSR 行動規範 企業の組織文化 自主的行動基準 対応分析と有意性

1. はじめに~情報の垂れ流し状態の CSR 行動規範

 CSR の時代において,多くの日本企業が CSR 行動規範を制定しているが,本

論文では,その内容表現について分析していくことを目的としている。その理由

については,以下のとおりである。平成 14 年に,多発した企業の不祥事に対処

するために,内閣府の国民生活審議会が中心となり,「自主行動基準の作成につ

いての方針」などのマニュアルを作成し,それに沿って,企業の行動規範の見直

しを促進させようとする動きがあった。また,日経連も 1991 年から「企業行動

憲章」を制定し改訂を繰り返し(2010 年には ISO26000 を意識した改訂を行って

いる),会員企業に CSR に関する行動規範の作成を求めている。

 その結果,2000 年以降,CSR に関する行動規範を新たに制定している企業は

多数に上ると報告されている。例えば企業倫理綱領などを行動規範に取り入れ

て,それをマニュアル化し,企業の組織に浸透させるために,リーフレットなど

の配布などを行っている企業は,ある調査(財団法人 社会経済生産性本部 早稲

田大学 企業倫理研究所 平成 16 年)によれば,調査対象の上場企業 524 社のうち,

半数近くに上る。しかしながら,こうした類の調査では,書かれている内容表現

については一切,触れられていないのである 1)。日本においては,環境問題,消

費者問題や労働問題に対して取り組んでいる NPO や社団法人などは多数,設立

され,無料の報告書もネット上で公開されている。また CSR 全体について関心

があり,それを網羅して,評価している企業やコンサルティング会社もある。し

かしながら,行動規範を主な関心領域にして,その内容までチェックしている団

体は,おそらく存在しない。仮に存在していたとしても,社外にそれを無料で公

表しているものは皆無である。

 要するに,多くの企業が,21 世紀に入って CSR 行動規範を作成し,浸透策を

講じているという事実だけは,様々な調査で把握できる。しかしながら,「では

内容表現はどうか」という点については,ネット上における企業情報の中の経

営理念や CSR の項目で確認することはできるが,それらについての内容表現の

分析を実施して公表している者はいない。企業が自主的に作った CSR 行動規範

についての一方的な情報のたれ流し状態が続いているのである。これでは,その

内容表現が本当に CSR に沿ったものであるかどうか確かめようがない。よって,

本論文では CSR の時代に多くの日本企業が発表した,行動規範の内容が,どの

ようなものであるのかについて,その内容をテキスト分析していく。

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

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2. 行動規範の理論的視点と新しい行動規範の導入理由

2. 1 行動規範とは何か。その理論的視点

2. 1. 1 行動規範の定義

 そもそも規範とは,大辞林によると,「行動や判断の基準・手本」であり,哲

学的な意味解釈では,「判断・評価などの基準としてのっとるべきもの」である

とされている。いわゆる「~べき」論である。よって,企業の行動規範とは,企

業が活動をしていく上での「守るべき」行動であり,それを明文化して公表して

いる場合は,組織のメンバーのみならず,ステークホルダーに対しての宣言にも

等しい。単なる CI としてではなく,宣誓に近い意味合いを持つ。企業によって

は,そうした「~べき」論である規範は避け,行動基準や行動指針,行動規定な

どのような表現を用いているが,それらの英語訳は,Code of Conduct(行動規範)

である場合が多い 2)。

2. 1. 2 行動規範の理論的視点

 行動規範を研究の対象としている分野は,経営理念研究,企業文化研究,企業

倫理研究が代表的である。しかしながら,行動規範に対する学術的なアプローチ

は,これらの研究者にとって,捉え方に微妙な違いがある。

 経営理念の研究者によれば,行動規範とは,広義の経営理念であり,名称で区

別するべきものではないとしている。例えば,行動規範も広義の経営理念である

として,企業家個人の理念や哲学,社是・社訓,企業目標,信条,ビジョン,ミッショ

ン,バリューなど,類似したあらゆる名称が,経営理念に相当するとしている(鳥

羽・浅野 1984,奥村 1997)。また,それら全てから作り出される Core Ideology (基

本理念)の重要性だけに焦点を当てて,それを守り続けながら,変化に適応する

ことが,企業経営にとっては重要であると提唱している研究者もいる(ジェーム

ズ・C・コリンズ,ジェリー・I・ボラス 1995)。いずれにしても,行動規範と経

営理念とを厳密に区別しないアプローチである。

 次に,企業文化の研究者によれば,行動規範とは「組織メンバーに共有された

行動規範」を指す。よって,ウェブサイトなどに記載されている明文化された行

動規範は,メンバーに共有される以前の,単なるテキストデータであり,解釈さ

れる以前の人工物に過ぎない。企業文化には,シンボル的な建物,独特なオフィ

スや服装,社員食堂のメニュー,儀礼や儀式,CI,メセナなど文化的なものの総

称であるが,その中でも組織文化が主に研究対象となっている。組織文化とは,「組

織構成員に共有された,価値・理念・規範のセットである」(加護野),「社員の

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

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行動様式である」(野中),「ある特定のグループが外部への適応や内部統合の問

題に対処する際に学習したグループ自身によって,作られ,発見され,又は発展

させられた基本的仮定のパターン」(Edgar H. Schein 1985)であるとしている。

このように企業文化の研究者にとっては,明文化されている行動規範よりも,意

識の中に受け入れられている行動規範や,さらに無意識の中に刷り込まれた,疑

うことのない真理に等しい基本的仮定に対するアプローチといった組織文化研究

こそが重要であるとしている 3)。

 そして企業倫理の研究者は,頻発している企業の不祥事をなくすために,行動

規範の在り方や機能に着目している。彼らによれば,行動規範とは,経営理念を

浸透させるためのツールであり,それを改革していくことによって,倫理的かつ

コンプライアンス的な企業活動へと誘導できるであろうと確信しているようであ

る 4)。彼らにとってのコンプライアンスとは単なる法令遵守のみならず,社会規

範(社会の常識や良識)を守ることも,広義のコンプライアンスである 5)。すな

わち「法律違反さえしなければ,灰色でも良い」という考え方は,コンプライア

ンスの本当の意味ではないと捉えている。また,企業倫理研究者は,経営理念を

階層的に見ている。例えば,社是・社訓や経営理念は上位概念であり,企業目的

や事業目的,経営方針は中位概念で,行動規範や行動指針,行動基準は下位概念

であるとしている(田中 2008)。この点が経営理念の研究者とは異なっている。

2. 2 CSR の時代における新しい行動規範の導入理由と「自主的」の問題点

2. 2. 1 CSR 行動規範の導入理由と行動規範マニュアル

 日本企業における,2000 年以降の新しい行動規範の導入理由は,おそらく

CSR ブームの一方で,企業の不祥事発生に対するリスクマネジメントとして,

そして実際に不祥事を起こしてしまった企業の,病的な組織文化を治癒するワク

チンとして,新しい行動規範(いわゆる CSR 行動規範)を導入したと考えられる。

 企業の不祥事の原因には,制度的なものや,個人のモラルに起因するものから,

人材の多様化(非正社員の増加)による教育レベルの低下,人員削減による仕事

量の増加,鬱や職場ストレスによるもの,内部通報が増加したことによる発覚,

そして反社会的なことをしてまでも,利益や売上を確保せねばならない,という

企業トップの経営姿勢など,様々なものが上げられる。そうした原因の一つとし

て,組織文化も大きな要因となっている。

 例えば,雪印乳業や,不二家,船場吉兆,ミートホープをはじめとする,いわ

ゆる「食の不祥事」に関して,経営者の弁解の一つに,「もったいないから」「客

にはわからないから」「美味しければそれでいいじゃないか。誰も病気になって

いないのだから」「現場感覚が麻痺していた」,といった文言が聞こえてくる。そ

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

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して必ず謝罪の中「顧客の立場からすると,大変申し訳ないことをした」という

台詞が出てくるのだ。この部分に病んだ組織文化の怖さ潜んでいる。

 あらゆる人に当てはまるのだが,消費者,地域人,家庭人としての常識的な価

値観,考え方,行動規範を持っている場合でも,職場の世界に入ると,その企業

組織の価値観,考え方,行動規範という組織文化に洗脳されてしまう。「仕事だ

から」「会社のためだから」という言い訳をしつつ,消費者軽視,家庭軽視の行

動を取り,それが重大な不祥事に誘発させてしまう危険が誰にでもある。組織文

化の一番厄介なところは,それが「社内の常識である」として,他の誰しもが疑

わないという点に他ならない。「社会人の常識とは所詮,自分の所属する企業の

組織文化でしかないのだ」と分かっていても,「じゃあ,代わりにどのような行

動を取ればベストなのか」と自身に説いても,その答えはなかなか出にくいもの

がある。

 それに対処するために,企業外部の団体が,企業の行動規範のマニュアルを発

行している。それは,企業にとって望ましい行動規範の具体的な内容であったり,

それを組織に受容されるための社内体制を説明したりするものである。例えば,

国際的には国連のグローバルコンパクトが有名だが,国内的には内閣府国民生活

審議会の「自主行動基準の指針」(2002 年)や,具体的な表現内容までマニュア

ル化した CSR イニシアチブ委員会(日本経営倫理学会所属)の「CSR イニシア

チブ」(2005 年)が知られている。また多発した食品業界の不祥事に対応するた

めに,2008 年に農林水産省が「食品業界の信頼性向上自主行動計画の作成の手

引き」を,2010 年 9 月には ISO26000(社会的責任に関する国際規格)の発行を

踏まえ,日本経団連の「企業行動憲章」が改定されている。

 これらを導入することの最終的な目標が,組織文化の変革にあることを,ダイ

レクトに言及しているわけではないが,組織文化の変革の必要性は,「自主行動

基準の指針」や「CSR イニシアチブ」の中で読みとることができる 6)。

2. 2. 2 自主的な行動規範の作成に対する問題点

 以上の行動規範のマニュアルは,いずれも「自主的」かつ「依頼」であり,企

業の行動をなるべく規制しないような形で書かれている。また,内容を必要に応

じて,加筆や削除など見直すことを勧めているものもある 7)。自主的ではあるが

ゆえに,実行性に問題点があるものの,ある程度の強制力,ないしは有効性を高

めるために,日経連や国民生活審議会では,次のような工夫を試みている。

 例えば,日本経団連は,企業不祥事防止への取り組みを強化するために,企業

行動憲章に違反した場合,会員企業の資格の停止,退会の勧告,除名も行なうと

している。これは,除名されることに対してデメリットがある企業の場合はかな

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

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り強制的かつ有効な策であろう。また国民生活審議会は,「自主行動基準の指針」

作成の準備段階の委員会の議論の中で,企業の自主性と国によるルール化の中間

として位置づけるために,第三者の関与(中立的な NPO などの協力)が必要で

あるとしている。そのためには CSR 行動規範をウェブ上で公表し,もし不備な

点があれば,消費者とのコミュニケーションに基づいて改善していくことが望ま

しいとしている。また,CSR イニシアチブでは,CSR それ自体の定義づけの中に,

「ステークホルダーの参画」を入れることによって,消費者の意見を企業経営に

反映させることを期待している。消費者を巻き込み,彼らのチェックとその内容

のフィードバックを活用することによって,有効性を高めようとしているのであ

る 8)。

 しかしながら,現時点においては,これらの策では不十分であろう。なぜなら

ば,それは現時点では理想論に過ぎないからである。現実には,消費者側にそれ

をチェックしていくメリットもなく,ノウハウも足りない。また,多くの消費者

は環境問題に関心はあっても,CSR 行動規範について関心のある者は,一部の

研究者を除けば相当珍しい存在であろう。企業の CSR 行動規範の内容それ自体

は,多くの企業がネット上で公開しているが,その内容を分析して無料で公表し

てくれる団体は存在していなし,国もそれを行っていない。さらに,チェックし

ようにも民間企業が作ったデータベースは高価であり,かつ内容表現にまで踏み

込んだものではない 9)。現状は,企業がどのように行動規範のマニュアルを活用

し,自社に合ったように行動規範の内容を練り上げたのかについて,個々の企業

図表 1 CSR 行動規範の様々な表現内容(消費者への項目を抜粋)

Y 社常にまごころを込めた良質のサービスを提供し,お客様に満足をお届けします。オープン,フェア,クリアな企業風土のもと常に革新に挑戦し,生活利便の向上に役立つ新しいサービスを開発します。D 社私たちは誰に対しても誠実で正直なコミュニケーションを心掛けるとともに,良質の商品やサービスを提供するよう努め,常にお客様の満足と信頼が得られるよう最善を尽くす。F 社社会的に有用な最高品質の商品・サービスを,先進・独自の技術,安全性への十分な配慮をもって開発,提供する。お客さまの満足と信頼を獲得し続ける。A 社社員は,お客さま保護の観点から,お客さまのニーズに合った適切な商品の提案や情報の提供を行うことにより,お客さまが意向に沿った商品を正しく選択できるようにします。K 社有益でクオリティの高い製品・サービスの開発・提供を通じて,お客様の満足と信頼を獲得します。

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

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の内容がウェブ上で,一方的に公表しているに過ぎない。表現内容も様々で,い

わゆる,散乱状態であり,情報の一方的な垂れ流し状態が続いている(図表 1 参

照)。

3. 日本企業の CSR 行動規範の分析~東証一部上場 173 社を対象に

3. 1 データおよび分析の焦点

 本論では,東証一部上場企業 1675 社(2010 年 10 月)のおよそ一割に相当す

る 173 社を対象に,これらの企業の CSR 行動規範を分析していく。東証一部上

場企業に絞った理由は,第一にそれらの企業群は,CSR 時代にふさわしい行動

規範の作成を,東京証券取引所が求めていることや 10),第二に東証一部上場企

業を主な会員とする,日本経団連が提唱する「企業行動憲章」の影響力を無視で

きないことがあげられる。いずれにしても,東証一部上場企業のその社会的影響

力に対する責任として,CSR 時代にふさわしい行動規範の作成が求められてい

る。

分析対象となった 173 社の業種と名称は次のとおりである(巻末資料 1 参照)。

これら 173 社については,いずれもウェブページ上で自社の行動規範を公表して

いる企業であり,かつテキストデータとして抽出しやすかったものを選択してい

る。また論文のタイトル上,日本企業を主な対象にしているが,日本社会で馴染

みの深い外国企業の日本法人も分析対象(アメリカンファミリーなど)に含めて

いる。

 以上の 173 社に対して,次のような分析の焦点を定めることによって,その本

質に迫っていく。第一の焦点は,CSR 行動規範の名称である。例えば,「行動規範」

「行動基準」「行動指針」「企業行動憲章」といった名称が多くみられるが,欧米

では企業倫理や CSR に関する行動規範は,一般的には Code of Conduct である。

どのような名称をつけるかは,表現の自由ではあるが,「名は体を表す」という

諺があるように,そこに企業の姿勢が読み取れるのではないだろうか。

 第二には,経営理念との関係である。例えば,CSR 行動規範を経営理念とし

て扱っているのか。それとも無関係なものとしているのか。そして経営理念の一

部ならば,どれくらいの扱いになるのか。もし社是や社訓などと同じレベルの扱

いならば,それは時代を通じて長期間も存続する普遍的な基本理念に等しいもの

であり,企業の組織文化に与える影響は絶大であろう。反対に,無関係である場

合は,いつでも改訂でき,CSR ブームが過ぎ去った後は,企業の中から消えて

なくなるか,忘れ去られる可能性もある。

 第三の焦点は,CSR 行動規範の記載内容の項目についてである。例えば,内

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

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容の多くはステークホルダー別に分類できる。消費者や社員,株主に対する行動

規範から,社会貢献や環境保全に関するもの。そしてコンプライアンスや情報に

対する姿勢などがあげられる。分析対象の 173 社については,どのような内容が

取り入れられているのか。

 そして,第四の焦点は,内容の文章表現についてである。すなわち,使われて

いる表現そのものである。行動規範の文章は,対象とするステークホルダーは同

一であっても,表現の仕方は様々である。それは企業ごと,または業種によって

違うであろう。同じくそれは,従業員や環境に対する行動規範の内容の文章にも

見られるであろう。そうした内容の違いは,日本企業の CSR 行動規範が,企業

の自主性に任せて作られているからであり,そこに日本企業の CSR に対する本

音が見いだせるかもしれない。よって,本論では Word Miner によるテキスト

分析を行う。

図表 2 東証一部上場 173 社の CSR 行動規範の名称

CSR 行動規範の名称 企業数 CSR 行動規範の名称 企業数行動規範 22 倫理規範 1企業行動憲章 17 基本行動指針 1企業行動指針 14 グループ行動宣言 1グループ企業行動憲章 13 倫理・法令遵守基本方針 1グループ行動規範 11 CSR 倫理綱領 1行動指針 10 社員行動指針 1企業行動規範 7 企業倫理憲章 1行動基準 6 企業倫理方針 1グループ行動基準 6 コンプライアンス行動指針 1行動憲章 6 グループ企業行動規範 1行動原則 5 企業倫理・法令遵守行動規範 1グループ企業行動指針 5 CSR 憲章 1グループ行動指針 3 役職員行動規範 1倫理綱領 2 行動規範・行動指針 1グループ倫理行動規範 2 グループ企業行動宣言 1グループ CSR 憲章 2 CSR 方針 1CSR 基本方針 2 企業姿勢 1グループ行動憲章 2 グループ共通行動基準 1CSR 行動指針 2 経営方針 1企業倫理行動規範 2 グループ企業行動基準 1グループ倫理基準 1 グループ倫理綱領・行動基準 1コンプライアンス行動規範 1 倫理コード 1企業倫理行動指針 1 グループコンプライアンス行動規範 1企業憲章 1 企業倫理綱領 1企業指針 1 企業姿勢宣言 1倫理行動基準 1 グループ CSR 行動基準 1コンプライアンス行動基準 1 コンプライアンス・プログラム 1

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

49

3. 2 名称の種類および経営理念との関係

 CSR 行動規範の名称は様々である。企業名を省いた名称の中で,最もシンプ

ルなものは,「行動規範」「行動基準」「行動指針」などの 4 文字であり,最長は

東京海上の「グループコンプライアンス行動規範」で 16 文字となっている。分

析対象の 173 社においては,54 種類もの名称があり,ネーミングの仕方は多様

であった。これらの中で一番多いのが「行動規範」の 22 社で,次に「企業行動

憲章」が 17 社,「企業行動指針」が 14 社と続いている(図表 2 参照)。

 これらの名称の意味から,企業の CSR に対する姿勢を読み説いてみると,次

のようなことが考えられるであろう。例えば,末尾の二文字の漢字や,カタカナ

文字だけに着目してみると,一番多いのは「規範」の 173 社中 50 社(28.9%),

続いて「憲章」の 43 社(24.8%),「指針」の 40 社(23.1%),「基準」の 18 社(10.4%)

と続いている(図表 3 参照)。これらの意味は非常に似通っているようで,微妙

に異なる。「規範」「基準」については判断や手本の標準を意味し,「憲章」は根

本的な原則を指し,「指針」は進むべき方向性を示している。この 4 つの表現の

中でも,「規範」は哲学的な意味合いが強く,道徳や法律,倫理なども「規範」

の一種である。いわゆる「~するべきである」という判断や評価の基準となるも

のである。また,「社会規範」「法規範」といった言葉が派生語としてあるように,

社会のルールの「やってはならないこと」と「やってもいいこと」のボーダーラ

インを示している。CSR がコンプライアンスや倫理,社会との関わりに重点を

置いていることからしても,「規範」が最も的確な表現であるといえよう。しかし,

それ以外の表現が多く使われている理由については,おそらく「規範」という表

現をつけると規制のようなイメージとなり,ビジネスにふさわしくないという印

象が強いからかもしれない。

図表 3 CSR 行動規範の末尾の 2 文字の名称別企業数

末尾の二文字の名称 企業数 割合規範 50 28.9%憲章 43 24.9%指針 40 23.1%基準 18 10.4%方針 7 4.0%原則 5 2.9%綱領 4 2.3%宣言 3 1.7%姿勢 1 0.6%コード 1 0.6%プログラム 1 0.6%合計 173 100.0%

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

50

 次に,経営理念との関係について考察する。「行動規範」「企業行動憲章」「企

業行動指針」といった CSR 行動規範を経営理念として扱っているかどうかにつ

いては,ウェブページにおける記載のされ方で判断できる。例えば,イラストに

よって経営理念を三角図のピラミッド階層で表現し,下の階層にそれらを記載し

ている企業もあれば,文字だけだが,経営理念の内容の一つとして記載している

場合もある。次の図表 4 は,経営理念との関係について,分析対象である 173 社

を調べたものである。その結果 62 社(36%)が,CSR 行動規範を経営理念のペー

ジに記載していた。その一方で,経営理念のページとは無関係な,CSR 情報のペー

ジだけに CSR 行動規範を記載している企業も 111 社と多い。

 では経営理念として扱っている企業は,CSR 行動規範をどのように位置づけ

ているであろうか。例えば,三角図のピラミッド階層で表した図や,書かれてい

る順番を見た場合,CSR 行動規範の階層や順番が上位であるほど,社是・社訓,

経営哲学といった基本理念に近く,長期的に残り続けるものである。階層や順番

の分け方は企業によってまちまちだが,上位にあるほど基本理念に近い性質であ

ることに間違いない。そして基本理念になれば,たとえ社長が交代しても(死去

しても),その価値観,考え方,行動様式だけは残り続けて,企業文化として伝

承され続ける可能性が非常に高いであろう。分析結果によれば,経営理念と関係

がありとする 62 社中,31 社(50%)が 2 番目の階層に,21 社(34%)が 3 番目

に CSR 行動規範を位置づけていた。

 では,CSR 行動規範を経営理念として扱っている企業は,なぜそのような扱

いをすることができたのであろうか。社内でのコンセンサスをどうして得ること

ができたのであろうか。それには,外部団体の影響力があったと考えるのが妥当

ではないだろうか。例えば,CO2 削減を目標とする「チームマイナス 6 パーセ

ント」への参加表明が,企業の CO2 対策を経営者層から従業員レベルにまで根

づかせたように,CSR で強い影響力を持っている外部団体の存在は大きいと思

われる。ここで,CSR を推進する国際的な団体である,国連の「グローバルコ

図表 4 CSR 行動規範が経営理念と関連づけている企業数とその位置づけ

経営理念との関係性 企業数 173 社における割合 関連あり 62 社における割合関連なし 111 64.2%2 番目 31 17.9% 50.0%3 番目 21 12.1% 33.9%4 番目 6 3.5% 9.7%同列 3 1.7% 4.8%関連はあるが順番は不明 1 0.6% 1.6%合計 173 100.0%

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

51

ンパクト」に着目し,次のような仮説を立ててみた 11)。

仮説→国連のグローバルコンパクトに参加している企業ほど,CSR 行動規範を

経営理念として扱っているのではないか。

 この仮説を検証してみる。まず分析対象の 173 社のうち,62 社(36%)が

CSR 行動規範を経営理念として扱っていた。そしてグローバルコンパクト参加

企業は 31 社確認できた(巻末資料参照)。これらの 31 社のうち,経営理念とし

て CSR 行動規範を扱っているのは,13 社であり,31 社に対する割合は 42 パー

セントに相当する。一方で,参加していない企業 111 社に絞ってみると,そのう

ち 49 社が経営理念と関連づけていて,111 社に対する割合は 44 パーセントに相

当する。割合で見れば,グローバルコンパクトに参加している企業としていな

い企業では,経営理念との関連付けでは大差がない。ここで,経営理念と関係

づけている企業とそうでない企業,グローバルコンパクトに参加している企業と

そうでない企業による分割表分析を試みた。その結果,カイ 2 乗の p 値は 0.4346

となり,仮説は却下された。すなわち,国連のグローバルコンパクトに参加と

CSR 行動規範を経営理念として扱っていることとは無関係なのである。

3. 3  173 社の CSR 行動規範の記載内容の項目について

 CSR 行動規範の内容は,おおよそ次のような項目でまとめられている。第一

には,消費者に対する CSR 行動規範で,商品やサービスの安全性や有用性,そ

してお客さまへの配慮(満足や信頼,コミュニケーションなど)などがあげられる。

第二には,環境への責任であり,CO2 や廃棄物への対応,省資源への取り組み

などがあげられる。第三には,社員や職場に対する責任で,人権や多様性の尊重,

ハラスメントの防止,職場の安全などへの取り組みである。第四には,反社会的

勢力への対抗や企業倫理,コンプライアンスへの姿勢についであり,これには暴

力団対策や法令遵守などがあげられる。第五には,地域社会への対応で,文化・

社会貢献活動や企業市民としての取り組みなどがあげられる。第六には,株主や

投資家に対する責任について,とりわけインサイダー取引の禁止などである。第

七には,取引先や競争会社について,公正な取引や自由競争を守ることなどであ

る。第八には,政治や行政に対して中立的な立場を取り,献金や寄付などへの規

制があげられる。第九には,情報や知的財産および会社資産に対する保護であり,

情報には個人情報と企業情報の両方が対象である。第十には,国際社会とのかか

わりであり,国際ルールを尊重することである。以上が主な項目であり,おおよ

そ日経連の「企業行動憲章」や経済同友会の「第 15 回企業白書」などのマニュ

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

52

アルの項目を踏襲している。

 では,分析対象の 173 社は具体的にどのような CSR 行動規範を作成している

のかについて項目別企業数を見ていくことにする。次の図表 5 は,173 社の CSR

行動規範の内容の項目について,それらが記述されている企業数をカウントした

ものである。例えば,9 割以上の企業に記載されている項目は,環境への責任と,

社員や職場に対する責任である。これら二つは CSR の 2 大要素であるが,それ

を行動規範の項目からも見て取れる。反対に,一番少ないものは,企業倫理に対

する姿勢である。その内容は「企業倫理に反した行為は行わない」「企業倫理を

遵守します」といった手短な表現に過ぎないにも関わらず,記載している企業が

少ないのは,倫理という言葉に対するアレルギーがあるのか,それとも言葉が日

本の企業社会には定着していないからなのか,その理由は定かではない。その一

方で,企業倫理の内容の別の側面である,コンプライアンスや反社会的勢力の対

抗を記載している企業の割合は多い。

 次に,これらの CSR 行動規範の項目を業界別から見てみると,書かれている

CSR 項目の内容について,企業数の割合から業界別の特徴が見て取れる(図表 6

参照)。例えば,建設・不動産業界の企業数は 10 社で,173 社全体の割合は 5.8

パーセントに過ぎない。しかしながら,10 社中 9 社が「政治や行政に対する責任」

の項目を記載しており,この項目を記載している企業 86 社のうち 10 パーセント

に相当している。いわゆる他の業界に比べて記載されている比重の高い項目であ

るといえよう。同じく,エネルギーやマスコミ・広告・出版業界は「企業倫理へ

図表 5 CSR 行動規範の項目別企業数とその割合

掲載企業数173 社に対する割合

全体 173商品・サービスの安全性や有用性 122 70.5%お客さまへの配慮 88 50.9%環境への責任 159 91.9%社員や職場に対する責任 169 97.7%反社会的勢力への対抗 113 65.3%企業倫理への姿勢 42 24.3%コンプライアンスへの姿勢 121 69.9%地域社会への対応 134 77.5%株主・投資家に対する責任 82 47.4%仕入・取引先や競争会社への責任 133 76.9%政治・行政に対する責任 86 49.7%企業情報の管理と開示 137 79.2%個人情報の管理 90 52.0%知的財産や会社資産の尊重 68 39.3%国際社会とのかかわり 75 43.4%

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

53

の姿勢」の比重が高く,電機・精密機械・機械製造は「国際社会とのかかわり」

が高い。

 一方で低いものは,例えば流通業界の企業数は 25 社で,173 社全体の割合は

14.5 パーセントである。しかしながら,「企業倫理への姿勢は」はわずか 2 社し

か記載しておらず,この項目を記載している企業 42 社のうち 4.8 パーセントに

相当するだけである。また「国際社会とのかかわり」も 2.7 パーセントと極端に

低い。同じく,食品業界は「企業倫理への姿勢」の比重が低く,素材は「政治・

行政に対する責任」「知的財産や会社資産の尊重」が低い。そもそも,全ての企

業があらゆる項目を記載すれば,こうした違いは出てこないであろう。しかしな

がら,項目数や文字数を制限せねば,行動規範として,または経営理念の一部と

しての見栄えも良くないので,優先すべき項目を選択しているといえよう。何を

行動規範の項目に取り入れるかで,業界ごとの個性が見えてくるのである。

図表 6 CSR 行動規範の項目における業界別企業数とその割合

企業数 IT・通信 エネルギー

マスコミ・広告・出版

家庭用品 金融

全体 173 4 2.3% 6 3.5% 9 5.2% 5 2.9% 13 7.5%商品・サービスの安全性や有用性 122 1 0.8% 5 4.1% 6 4.9% 2 1.6% 8 6.6%お客さまへの配慮 88 3 3.4% 4 4.5% 3 3.4% 3 3.4% 9 10.2%環境への責任 159 4 2.5% 5 3.1% 7 4.4% 4 2.5% 9 5.7%社員や職場に対する責任 169 4 2.4% 6 3.6% 9 5.3% 5 3.0% 12 7.1%反社会的勢力への対抗 113 3 2.7% 4 3.5% 7 6.2% 2 1.8% 12 10.6%企業倫理への姿勢 42 0 0.0% 4 9.5% 5 11.9% 2 4.8% 2 4.8%コンプライアンスへの姿勢 121 3 2.5% 4 3.3% 7 5.8% 2 1.7% 13 10.7%地域社会への対応 134 4 3.0% 3 2.2% 6 4.5% 2 1.5% 9 6.7%株主・投資家に対する責任 82 3 3.7% 6 7.3% 6 7.3% 3 3.7% 8 9.8%仕入・取引先や競争会社への責任 133 4 3.0% 5 3.8% 8 6.0% 4 3.0% 8 6.0%政治・行政に対する責任 86 3 3.5% 6 7.0% 7 8.1% 2 2.3% 5 5.8%企業情報の管理と開示 137 3 2.2% 6 4.4% 9 6.6% 2 1.5% 10 7.3%個人情報の管理 90 4 4.4% 3 3.3% 5 5.6% 0.0% 9 10.0%知的財産や会社資産の尊重 68 3 4.4% 5 7.4% 5 7.4% 1 1.5% 5 7.4%国際社会とのかかわり 75 0 0.0% 2 2.7% 3 4.0% 0.0% 4 5.3%

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

54

3. 4. CSR 行動規範の内容表現の分析~キーワードを対象に。

 上記のように,企業の CSR 行動規範は,対象となるステークホルダーの種類

などに応じて,いくつかの項目によって構成されている。では,それぞれの項目

は果たして,どのような表現を用いられているのかについて,Word Miner によ

るテキスト分析を行う 12)。というのは,業界によって,行動規範の内容表現が

異なっていると思われるからである。例えば,日頃のメディア上で騒がれている

企業数 建設・不動産

自動車・バイク 食品 製薬 素材

全体 173 10 5.8% 5 2.9% 16 9.2% 5 2.9% 37 21.4%商品・サービスの安全性や有用性 122 7 5.7% 4 3.3% 12 9.8% 5 4.1% 33 27.0%お客さまへの配慮 88 4 4.5% 2 2.3% 7 8.0% 0.0% 16 18.2%環境への責任 159 10 6.3% 5 3.1% 16 10.1% 5 3.1% 36 22.6%社員や職場に対する責任 169 10 5.9% 5 3.0% 15 8.9% 5 3.0% 36 21.3%反社会的勢力への対抗 113 9 8.0% 1 0.9% 11 9.7% 5 4.4% 23 20.4%企業倫理への姿勢 42 4 9.5% 1 2.4% 1 2.4% 2 4.8% 7 16.7%コンプライアンスへの姿勢 121 8 6.6% 4 3.3% 9 7.4% 2 1.7% 25 20.7%地域社会への対応 134 9 6.7% 4 3.0% 13 9.7% 5 3.7% 31 23.1%株主・投資家に対する責任 82 4 4.9% 2 2.4% 7 8.5% 0.0% 13 15.9%仕入・取引先や競争会社への責任 133 10 7.5% 5 3.8% 11 8.3% 4 3.0% 28 21.1%政治・行政に対する責任 86 9 10.5% 4 4.7% 6 7.0% 3 3.5% 12 14.0%企業情報の管理と開示 137 8 5.8% 3 2.2% 13 9.5% 5 3.6% 31 22.6%個人情報の管理 90 4 4.4% 3 3.3% 8 8.9% 2 2.2% 14 15.6%知的財産や会社資産の尊重 68 2 2.9% 2 2.9% 7 10.3% 0.0% 10 14.7%国際社会とのかかわり 75 4 5.3% 3 4.0% 9 12.0% 4 5.3% 23 30.7%

企業数電機・

精密機械・機械製造

物流・運送 流通

全体 173 27 15.6% 11 6.4% 25 14.5%商品・サービスの安全性や有用性 122 17 13.9% 10 8.2% 12 9.8%お客さまへの配慮 88 14 15.9% 10 11.4% 13 14.8%環境への責任 159 26 16.4% 10 6.3% 22 13.8%社員や職場に対する責任 169 26 15.4% 11 6.5% 25 14.8%反社会的勢力への対抗 113 15 13.3% 7 6.2% 14 12.4%企業倫理への姿勢 42 6 14.3% 6 14.3% 2 4.8%コンプライアンスへの姿勢 121 15 12.4% 10 8.3% 19 15.7%地域社会への対応 134 21 15.7% 10 7.5% 17 12.7%株主・投資家に対する責任 82 10 12.2% 7 8.5% 13 15.9%仕入・取引先や競争会社への責任 133 22 16.5% 6 4.5% 18 13.5%政治・行政に対する責任 86 17 19.8% 4 4.7% 8 9.3%企業情報の管理と開示 137 22 16.1% 9 6.6% 16 11.7%個人情報の管理 90 17 18.9% 7 7.8% 14 15.6%知的財産や会社資産の尊重 68 15 22.1% 3 4.4% 10 14.7%国際社会とのかかわり 75 21 28.0% 0.0% 2 2.7%

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

55

企業の不祥事や批判的に記事を読むと,食品業界は偽装問題について,消費者の

安全や安心を軽視している姿勢が強いという印象を持つ。同じく,トヨタなどの

自動車業界は,顧客の意見に耳を傾けていないという批判を受けている。また,

物流・運送業界は,トラックの事故から発覚したコスト削減による運転手の過剰

労働による職場の安全性の欠如ついて,素材業界(化学・繊維・製紙)は,汚染

物質の不法投棄や森林破壊などが問題視されている。そもそも,日本の企業社会

全体が,企業倫理に対して疎いのではないだろうか。同じく公正さについても同

様ではないのか。一向にカルテルがなくならないのは,公正な競争や取引を軽視

しているからであろう。よって,これらの業界の行動規範の表現内容について,

以下のような仮説を立ててみる。

 仮説 1  食品業界は,安全や安心に関する言葉を軽視しているのではないか。

 仮説 2  自動車・バイク業界は,消費者の意見に関する言葉を軽視しているの

ではないか。

 仮説 3  素材業界は地球環境に関する言葉を軽視しているのではないか。

 仮説 4  物流・運送業界は職場の安全に関する言葉を軽視しているのではない

か。

 仮説 5  日本の企業社会は「倫理」「公正」といった言葉をあまり使わず,あ

らゆる業界はそれを軽視しているのではないか。

3. 4. 1 キーワードの出現数ランキング

 分析対象の 173 社の行動規範の文章の総文字数は 18 万 5435 文字(MS-Word

調べ),Word Miner による分かち書き数は 9 万 3039 文字(5949 の品詞の種類),

キーワード数は 2 万 3889 文字(3099 の名詞の種類)であった 13)。キーワードの

上位にくるものは,次の通りである(図表 7 参照)。これらの中で,CSR に関係

の深い名詞は,社会,環境,情報,尊重,公正,安全,開示,社会的,法令,貢献,

遵守,サービス,関係,地域,などであり,企業,活動,提供,といった名詞は,

CSR を端的に表現する名詞ではない。よって,Word Miner の分析を実行する前

に,これらの名詞について削除するか,別の類似のキーワードへと置き換えるか

を,それらの構成語や文中における使われ方を見ながら検討していく必要がある。

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

56

 次の図表 8 と 9 は,消費者に対する行動規範,環境に対する行動規範,従業員

に対する行動規範,企業倫理に対する行動規範の項目についてのキーワード上位

40 個を示したものである。消費者に対する行動規範は,「商品の安全性や有用性」

「お客様に対する配慮」の項目を統合したものである(図表 5 参照)。企業倫理

に対する項目は,「反社会的勢力への対抗」「企業倫理への姿勢」「コンプライア

ンスへの姿勢」の項目を統合している。

 消費者に対する行動規範は,152 の企業によって記載されており,総文字数は

1 万 9 千 636 文字である。キーワード数は 3 千 184 個(814 種類)であった。一

番多いキーワードは「提供」である。このキーワードが使われ方を原文から検索

すると,「サービスを提供します」「開発・提供」といった文章が多い。「満足」「ニー

ズ」に関しては,「お客様の満足・ニーズ」が大半であり,「配慮」は,「安全性・

品質への配慮」が多かった。また「社会的」は,「社会的に有用な製品・商品」

という文章を作っている場合が多く,そこに商品や製品づくりによって CSR を

実現していこうという企業の姿勢が見られる。

 次に環境に関する行動規範は,159 の企業に記載され,総文字数は 1 万 3 千

436 文字で,キーワード数は 2 千 491 個(520 種類)であった。一番多いキーワー

ドは「環境」である。これは「地球環境」「地球温暖化」といった使われ方が大

図表 7 全体のキーワード上位 60

キーワード 出現数 キーワード 出現数 キーワード 出現数社会 167 職場 112 文化 88環境 166 取引 108 維持 87情報 158 信頼 108 保全 87企業 154 人権 107 認識 85尊重 154 事業 106 配慮 85活動 152 個人 105 会社 83公正 148 勢力 104 実現 82提供 143 地球 103 等 82安全 139 適正 101 コミュニケーション 81開示 139 適切 101 商品 81社会的 136 株主 100 お客様 80法令 135 経営 100 開発 80貢献 133 確保 98 責任 79遵守 132 市民 96 個性 78サービス 129 管理 95 ルール 76関係 127 健全 95 団体 76行動 123 競争 92 社内 74積極的 118 自由 89 政治 74地域 114 発展 89 行為 70反 114 保護 89 差別 70

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

57

半である。「活動」「取り組み」「行動」は,「保全活動」「環境問題への取り組み」

「積極的な行動」,といった使われ方がなされている。環境に対する CSR の企業

の姿勢は,「社会」「事業」「開発」のキーワードで示されている。ここでの「社会」

とはどのようなものを指すかと言えば,「循環型社会」「持続可能な社会」であり,

また「事業」とは,事業活動において」,「開発」とは「研究開発」「商品開発」「技

術開発」である。すなわち,持続的な事業や開発によって,地球環境への配慮を

積極的に行うのである。

 そして,従業員に対する行動規範は,169 の企業に記載され,総文字数は 2 万

8 千 325 文字で,キーワード数は 4 千 931 個(1023 種類)であった。「尊重」が

一番多く使われており,「個性を尊重」「人権を尊重」といった労働 CSR の根幹

となる表現を成している。また「環境」については,「職場環境」を指し,「安全」

については「安全で衛生的な」「安全で働きやすい職場環境」といった職場にお

ける「安全」を表現している。ここでの企業の目指す方向性は,「実現」というキー

ワードに着目すれば良い。それは「ゆとりと豊かさの実現」「職場環境の実現」「自

己実現」という文章表現に大別されていた。この「実現」という表現は,裏返せ

ば,現状はそれの反対であり,それを実行するには,かなりの努力が必要である

というニュアンスが潜んでいるといえよう。

 最後に,企業倫理に関する行動規範は,158 の企業において記載され,総文字

数は 1 万 9 千 516 文字で,キーワード数は 3 千 541 個(703 種類)であった。こ

こでの「社会的」「反」「勢力」は,そのほとんどが「反社会的勢力」と置き換え

られるが,「社会的責任」「社会的秩序」「社会的規範」といった表現も少なから

ず記載されていた。また「遵守」については,「法令遵守」以外に,「規則の遵守」

「ルールの遵守」「精神の遵守」といった使われ方がなされていた。企業倫理に

対する企業の姿勢は,「倫理」「コンプライアンス」よりも「法令」の方が,出現

数が多いという点に見ることができる。すなわち,「法令」という明確で,狭く,

かつ具体的な対象を遵守すべきであり,「倫理」や「コンプライアンス」のような,

漠然とした抽象的で,広義な意味を持つ対象は,遵守の対象にならないのである。

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地域分析 第 49 巻 第 2 号

58

図表 8 消費者と環境に対する行動規範 上位 40 のキーワード

キーワード 出現数 キーワード 出現数 キーワード 出現数 キーワード 出現数提供 127 適切 27 環境 156 保護 25サービス 119 獲得 26 地球 102 リサイクル 22お客様 70 お客さま 25 保全 80 省エネルギー 21安全 69 誠実 25 活動 76 商品 20商品 69 安心 24 積極的 62 必須 20製品 56 迅速 24 企業 48 遵守 19信頼 54 社会的 22 配慮 43 低減 19開発 53 活動 21 問題 43 廃棄物 19満足 53 価値 20 取り組み 41 法令 19安全性 49 確保 20 認識 38 課題 18私 38 技術 20 私 36 調和 18社会 36 向上 19 社会 36 製品 17配慮 36 場合 18 自主的 32 要件 17ニーズ 34 行動 17 事業 30 温暖化 15常 34 高品質 17 貢献 29 人類 15有用 34 等 16 資源 29 等 15品質 33 立場 16 推進 27 サービス 14対応 31 環境 15 負荷 27 技術 14顧客 27 企業 15 開発 26 提供 14情報 27 事業 15 行動 26 削減 13

※  消費者のキーワード→出現数が 15 以上の用語はその他に,声,適正,がある。キーワードの種類は 814。※  環境のキーワード→出現数が 13 以上の用語はその他に,防止,がある。キーワードの種類は 520。

図表 9 従業員と企業倫理に対する行動規範 上位 40 のキーワード

キーワード 出現数 キーワード 出現数 キーワード 出現数 キーワード 出現数尊重 139 宗教 42 社会的 124 一切 35環境 113 私 37 反 110 行為 32職場 109 等 36 勢力 102 私 32人権 99 個人 35 法令 101 対応 32安全 98 信条 35 遵守 100 等 32個性 76 年齢 35 社会 97 断固 31差別 70 多様性 34 団体 64 良識 30人格 66 維持 32 企業 61 公正 28確保 58 行為 32 秩序 59 社内 28実現 56 活動 31 活動 58 不当 28従業員 56 健康 29 行動 58 誠実 27性別 53 ゆとり 26 関係 57 対決 26企業 49 基本的 26 脅威 54 要求 26人種 49 最大限 26 安全 52 徹底 22社員 47 豊かさ 26 毅然 48 規則 20発揮 46 障害 25 規範 45 事業 20能力 44 行動 24 市民 44 遮断 20労働 44 公正 23 倫理 44 倫理観 20ひとり 43 児童 23 ルール 40 会社 19国籍 42 風土 23 態度 38 業務 18

※  従業員のキーワード→種類は 1023。※  企業倫理のキーワード→出現数が 18 以上の用語はその他に,常,がある。キーワードの種類は 703。

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CSR 時代における日本企業の行動規範の分析

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3. 4. 2 対応分析と頻度による有意性テストにみる,業界別の傾向

 以上のキーワードについて,Word Miner の対応分析による業界名との同時布

置図によって,キーワードの使われ方の傾向を見出し,さらに頻度による有意性

のテストを行う。対応分析の布置図の解釈の仕方のポイントは以下の三点である。

第一に,近い位置にある変数は,同じ性質を持つ傾向があるという点である。た

だし,それは同じ種類の変数においてであり,同時布置図の場合には,それぞれ

の布置図のドットを別々に見なければ,解釈がおかしくなる。第二に,多くの者

が使う変数は,原点(0.0)の近くに布置されるという点である。よって,変数

の散布の広がりが中心により固まっているほど,それらは同じように使われてい

ると解釈できる。よって,もし業界ごとに使われているキーワードに特徴があれ

ば,この布置図上の散布状態が,より広がることになる。第三には,軸の解釈は

行わないという暗黙の了解があるという点である。その理由は,解釈するには非

常に困難を極めるからだと思われる。実際に,主成分分析とは異なり,変数は言

葉なので,それが例えば個性を持つ選手名などであれば,軸の意味を推察できる

可能性はあろう。しかしながら,キーワードのような言葉そのものである場合,

軸の意味を導きだすことは容易ではない。

 以下の図表10から13までは,消費者に対する行動規範,環境に関する行動規範,

従業員に関す行動規範,企業倫理に関する行動規範のキーワードと業界名の,対

応分析による同時布置図である。さらにその下には,質的変数(業界名)による

構成要素(キーワード)の有意性テストについての結果であり,業界名ごとにそ

れぞれ上位 17 のキーワードを記述している。分析に際して注意したことは,主

観による歪みを排するために,言葉の置き換えは,よほど単純なもの以外は,極

力行わないことにした。また,言葉の削除は,内蔵辞書では取りきれないものや,

行動規範とは明らかに無関係である言葉は削除の対象とした。さらに,文字が重

なり過ぎることを避けるために,上述の 40 のキーワードの中から,削除と置き

換えを行った残りの個数を,対応分析にかけることにした。

 まず,それぞれの同時布置図の特徴のうち,キーワード(薄い色)だけに着目

して,各行動規範の散布状態を比較すると,消費者および環境に対する行動規範

の散布状態は,従業員に対する行動規範の散布状態に比べてより広がっているこ

とが確認できる。より外側に広がっているということは,それらが特徴的な使わ

れ方,すなわち業界ごとの使われ方に違いがあることを意味する。反対に原点に

近いキーワードは,どの業界にも共通に使われているものを指している。例えば,

環境に対する行動規範においては,「環境」「地球」がほぼ中心に位置し,消費者

に対する行動規範では,「提供」「サービス」がより中心である。これは一番出現

数が多いキーワードと一致している。すなわち,原点により近いキーワードは特

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徴的ではないが,普遍的に使われている言葉であるといえる。

 では次に,各行動規範について,同時布置図と有意性テストの内容を加味しな

がら,それぞれの特徴について見ていくことにする。同時布置図と業界名ごとの

有意性ランキングを比較して気がつくことは,同時布置図で見られる業界に近い

キーワードが,より有意性の高いものではないという点であろう。例えば,消費

者の行動規範の同時布置図を見ると,「金融」のすぐ近くに,「適切」がプロット

されている。これは頻度による有意性ランキングの一位のキーワードである。し

かしながら,二位の「誠実」は離れた下の方向にプロットされている。このよう

に同じような結果もあれば,大きくずれているものもある。その理由は,同時布

置図の特徴にある。例えば,ある業界は複数のキーワードと関連性がある場合,

それらの中間地点に業界名がプロットされている場合もあれば,そうでない場合

もあるので,同時布置図の理解はかなり難しい。よって,Word Miner では,質

的変数(業界名)による構成要素(キーワード)の有意性テストが用意されてい

る。すなわち,どの業界に,どのようなキーワードが有意になっているのか,よ

り有意に近いかについての判定である 14)。

 消費者に対する行動規範の特徴について,同時布置図を見ると,原点付近にキー

ワードが集中していないことがあげられる。縦軸と横軸に区切られた 4 つのセル

のうち,右上の方には,「ニーズ」「適切」「行動」「価値」,右下には「誠実」「声」

「事業」,左上には「有用」「獲得」,左下には「安全性」「高品質」「技術」といっ

たキーワードがプロットされている。すなわち,これらは言い換えると,「消費

者のニーズや価値観に対して適切に行動すること」「消費者の声に対して誠実に

接しながら事業すること」「有用性の高い商品やサービスを提供しながら,消費

者を獲得していくこと」「安全性の高い技術や高品質を追求していくこと」といっ

た表現内容が,消費者に対する行動規範の代表的なパターンであると考えられる

のではないだろうか。

 次に,環境に対する行動規範の特徴について,同時布置図を見ると,消費者に

対する行動規範と同じく,原点付近にキーワードが集中していないことがあげら

れる。原点の近くには,どの業界でも使われている「地球」「環境」「配慮」「活動」「保

全」といった当たり触りのないキーワードが並んでいるが,周辺に進むにつれて,

「削減」「省エネルギー」「低減」「負荷」といった具体的な数値や取り組みなど

を表現するキーワードが並んでいる。すなわち,実際の取り組みになると,業界

ごとに特徴が出ていることを意味する。縦軸と横軸に区切られた 4 つのセルのう

ち,縦軸の上方には,「技術」「事業」「低減」といったグループがプロットされ,

テクノロジーで環境問題に対処するような印象の言葉が多く,原点を通り越して

下方に行くほど,「認識」「保護」「行動」といった,日常生活から対処するよう

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 従業員に対する行動規範の特徴については,同時布置図を見ると,消費者や環

境に対する行動規範と比較して,多くの点がより原点に近くプロットされている。

これは,似通っている表現内容が多いということである。縦軸と横軸に区切られ

た 4 つのセルのうち,右上の方には,「最大限」「能力」「発揮」,右下には「信条」「国

籍」「宗教」「人種」,左方向の真ん中付近には,「ゆとり」「豊かさ」「多様性」といっ

たキーワードがプロットされ,グループを作っているような印象を受ける。これ

は,CSR 報告書に見られる労働 CSR の主な内容が,人材育成,ワーク・ライフ・

バランス,人権および差別の禁止,といった内容を用いて,企業ごとに個性を出

そうとしている点と一致している。それによってより優秀な人材を惹きつけたい

という企業のリクルーティング戦略を表現した内容と言えよう。

 そして,企業倫理に対する行動規範の特徴については,「法令」「遵守」「倫理」

がほぼ中心に位置している。「倫理」が原点に近い位置にあるということは,そ

れが当たり前に使われていることを意味している。キーワードの出現数では,「倫

理」よりも「法令」「遵守」の方がはるかに多くカウントされていたが,対応分

析の同時布置図においては,違いは出ずに,それぞれ原点の近くに位置している。

縦軸と横軸に区切られた 4 つのセルのうち,右上には「良識」が,右下には「対

決」,左方向の真ん中付近には「公正」,左下には「ルール」というキーワードが

目立っている。これらが,企業倫理に対する行動規範を最も特徴づけている言葉

であるといえよう。

 では,次に同時布置図の下にある,業界別の頻度による有意性ランキングを見

ていきながら,仮説について検討を加えてゆきたい。まず仮説 1 の「食品業界は,

安全や安心に関する言葉を軽視しているのではないか」と,仮説 2 の「自動車・

バイク業界は,消費者の意見に関する言葉を軽視しているのではないか」につい

ては,消費者に対する行動規範の頻度による有意性ランキングを見ると,食品業

界(企業数 15)の一位は,「安心」であり,「安全」は五位である。このランキ

ングからすると,仮説は支持できないが,「安全性」に関しては 15 位になってい

る。すなわち,商品の安全や安心は重視するものの,安全性という本質的な部分

に対しては,深く考えていないような行動規範の内容であることを意味している。

また,自動車・バイク業界(企業数 4)の一位は「高品質」で二位は「開発」で

ある。しかしながら,このランキングの中に,「お客」「声」「ニーズ」といった

他の業界で見られる消費者に対する視点を意味する言葉は入っていない。わずか

4 社なので業界全体がそうであると言い切れないが,IT・通信業界(企業数 4),

製薬業界(企業数 5)といった企業数が少ない業界でも,そうした言葉が上位に

入っているので,やはり特殊であると言わざるをえない。よって仮説は支持でき

る。

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 仮説 3 の「素材業界は地球環境に関する言葉を軽視しているのではないか」に

ついては,環境に対する行動規範の頻度による有意性ランキングを見ると,素材

業界(企業数 36)は,「地球」という言葉が二位であり,「環境」は十位である。

この結果は,他の業界と比べてみても,地球環境に対してより重視した行動規範

の内容になっている。よって仮説は支持できない。しかしながら,一位に「自主

的」という言葉がランキングされていることは,素材業界の環境に対する行動規

範は,「自主的」に決めた内容を重視しており,京都議定書などの,外部団体によっ

て決められた環境に対する行動規範は重視しないことを意味するのではないだろ

うか。

 そして仮説 4 の「物流・運送業界は職場の安全に関する言葉を軽視しているの

ではないか」については,従業員に対する行動規範の頻度による有意性ランキン

グを見ると,物流・運送業界(企業数 11)は「健康」「安全」といった言葉は入っ

ていないが,「ゆとり」は十位に入っている。他の業界と比較しても,「健康」「安

全」がランキングされていないのは,流通業界と物流・運送業界だけである。に

もかかわらず,「人権」は五位で他業界に比べてかなり上であるが,人権が重視

されているといっても,多様性,障害者に対する配慮を指している可能性が高い。

それは職場の安全や健康とは別問題である。よって,仮説は支持できよう。

 最後に仮説 5 の「日本の企業社会は,倫理や公正といった言葉をあまり使わず,

あらゆる業界はそれを軽視しているのではないか」については,企業倫理に対す

る行動規範の頻度による有意性ランキングを見ると,分析対象の業界のうち,食

品業界と製薬業界,素材業界において,「倫理」「公正」という言葉がランキング

されていないことがわかる。それ以外の業界では,いずれか一方は使われており,

日本の企業社会はこれらの言葉に対してネガティブな姿勢はあまり取っていない

ことがわかる。よって仮説は支持できない。しかしながら,問題は誰に対して向

けられる「倫理」「公正」であるかが問題であろう。「公正」については,自社の

公正な取引や競争について言及している場合が大半である。しかしながら,「倫理」

については,それらを社内にまで求めるのか,社外の反社会的勢力に対してのみ

向けられるのか。そのことについては,記載内容から判断することはできなかっ

た。

4 総括

 本論では,企業の CSR 行動規範について,東証一部上場企業 173 社の行動規

範の内容を分析した。分かった点は,主に以下の通りである。第一に,CSR 行

動規範の名称は,末尾の二文字に限れば「~規範」が一番目(28.9%)に,「憲章」

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が二番目(24.9%)に多いという点である。「~するべきである」いう,道徳や倫理,

法律に近いニュアンスを持つ名称が一番多かったことは,CSR の観点からする

と望ましい結果なのかもしれない。なぜならば,CSR には倫理的なビジネスを

行うことが求められているからである。第二に,経営理念として扱われているか

どうかについては,173 社のうち 62 社(36%)が,CSR 行動規範を経営理念のペー

ジに記載していた。経営理念として扱っているということは,社是や社訓,経営

哲学などと同じく,かなり長期間にわたってそれを存続させることを,企業自ら

が表明していることに他ならない。そうすることによって,経営者層から非正規

の従業員にまで,CSR の価値観,考え方が根付いて,それが企業の組織文化となっ

ていく可能性は高いであろう。第三には,CSR 行動規範の内容について,大半

の企業が,従業員や環境といったステークホルダーを対象にした項目を記載して

いるという点である。一方で,企業倫理という言葉が使われている割合は低い(42

社,24.3%)。このことは,「倫理」という言葉に対する日本の企業社会のアレル

ギーが見て取れるかもしれない。第四には,それぞれの CSR 項目の内容について,

業界別の行動規範の内容表現を Word Miner によるテキスト分析によって調べた

ところ,食品業界は,「安心」「安全」というキーワードに対しては有意だが,「安

全性」に対して有意性はかなり低いく,自動車・バイク業界は,「お客」「声」「ニーズ」

という言葉と,物流・運送業界は「健康」「安全」という言葉とは無関係である

ことがわかった。以上のように,21 世紀に入って,多くの企業が作成した CSR

行動規範は,業界別で捉えなおしただけでも,多様な内容表現が自主的に作成さ

れ続けているのである。

注)

1 )内容表現のデータベースで有名なものに,社会経済生産性本部が,数年おき

に,『経営理念・社是,社訓』として調査し,それを出版している。しかし

ながら,それは言葉の表記を単に羅列しているだけで,行動規範を記載して

いる企業もあれば,そうでない企業もある。また,経営哲学や経営理念,企

業理念,社是や社訓なども,書かれている企業もあれば,そうでない企業も

ある。また,この文献をデータベースにして,テキスト分析をした研究もあ

るが,残念ながら行動規範だけに焦点を当てた内容ではない。

2 )欧米国企業などにおいては,Code of Conduct が日本語訳になると,大半が

行動規範(NVIDIA,Nokia)となる。また,倫理基準(DELL など)と訳

している場合もある。Code of Conduct の表現以外に,Principles(P & G,

ペプシ),Standards of Business Conduct(スターバックスコーヒー)とい

う類似表現もある。Principles の場合は,行動規範が,基本理念(Value)

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の中に組み込まれたイラストで表現されているケースもある(P & G)。

3 )シャインによれば,組織の文化には三つのレベルがあり,第一レベルは人工

物(artifact)であり,そこにはオフィスや儀礼,儀式(知覚できる行動規

範や行動様式),明文化された経営理念などが含まれる。第二レベルは価値

(value)であり,共有された行動規範などはここに当てはまる。それにつ

いて議論できる。第三レベルは基本的仮定(basic assumption)であるとさ

れる。基本的仮定は,疑いようのない真理であり,議論にすら出ない自明の

理として受け入れられ,特に意識されないものである。

4 )田中によれば,社内にコンプライアンス意識を浸透させ,従業員に周知徹底

させるためには,第一に経営トップのメッセージを社内外に発信すること。

第二に経営理念を役員や社員で共有し,具体的な企業行動基準,行動規範,

行動指針などを作成したうえで,ガイドラインとして社内に周知徹底し,社

外に公表すること。第三にコンプライアンスなどの教育や研修プログラムを

実施し,担当部署を設置する。

5 )田中によれば,先進企業では,コンプライアンスについて「第 1 段階の法規範,

第 2 段階の社内規範,第 3 段階の社会規範をそれぞれに遵守するほか,第 4

段階として,理念・ビジョン,計画に適う行動を取る」ということまでを包

含する,従来よりも広い意味にとらえ実践している。

6 )内閣府国民生活審議会の「自主行動基準の指針」の本文の中で,それを効果

的に運営するには,組織文化の変革の必要性も求めている。「自主行動基準

の策定・運用のための体制を事業者内に設けるだけでは十分でない。その組

織の文化を消費者志向へ変えなければ企業組織全体のコンプライアンス意識

も変わらない」(P12)。CSR イニシアチブでは,そのサブタイトルで「CSR

経営理念の推奨モデル」と謳っている。

7 )農林水産省の「食品業界の信頼性向上自主行動計画」策定の手引きの前文で

は,「本案はモデルとして策定しましたので,業界の実態を踏まえた実効性

のあるものとするため,内容を必要に応じて,適宜,加筆・削除など見直さ

れるようお願いします」としている。

8 )ステークホルダーエンゲージメントと同義。組織に関連するステークホル

ダーと対話を行い,その意見を経営の意思決定のインプットとするととも

に,ステークホルダーに対して何らかのコミットメントを行い,ステークホ

ルダーを巻き込んだ経営をしていくというものである。エンゲージメントは

「約束」や「参画」などと訳されている。

9 )例えば,CSR 全体の分析については,東洋経済の『CSR 企業総覧』が有名

である。但し価格は 2 万 5 千円(税抜き)と非常に高価である。また行動規

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範については,内容ではなく,「ある,なし」の記載だけである。

10)東京証券取引所は,2007 年 10 月に,企業行動規範を作成することを「上場

制度総合整備プログラム 2007」の中で,新たに定めている。この中では株

主の権利の尊重やインサイダー取引の未然防止など,株主に対する CSR の

行動規範が中心である。

11)国連のグローバルコンパクトは,2000 年 7 月に国連本部で発足した,CSR

を世界的に推進していく取り決めである。ここに参加するのは自発的な行為

であり,多くの企業,自治体,大学,NGO などが参加している。グローバ

ルコンパクトには規制はないが,CSR 報告書などの内容を伝える義務が発

生する。日本企業の初めての参加は,キッコーマンが 2001 年 2 月に表明し

ている。日本においては,106 の企業や,財団法人がこれに参加している。

全世界では,138 カ国で,7998 の団体(2010 年 3 月末時点)が参加しており,

現在も増加中である。日本は,20 位である。

12)Word Miner とは,日本電子計算株式会社の開発したテキスト分析専用のソ

フトである。形態素解析エンジンは,Happiness(富士通エフ・アイ・ピー・

システムズ開発)である。2004 年,日本計算統計学会よりソフトウェア賞(開

発賞)を受賞

13)Word Miner では名詞をキーワードとして抽出する。それらは「構成要素」

という名称で扱われる。キーワードの出現数は,「構成要素数」という名称

となっている。また「分かち書き」とは,文章の品詞どうしの間にスペース

を設けることを指す。よって,分かち書きの文章の中から,名詞だけを抽出

したものがキーワードとして扱われる。

14)Word Miner の有意性テストの技術的内容については,テキストマイニング

研究会のウェブページ http://wordminer.comquest.co.jp/wmtips/analysis.

html を参照されたい。

参考文献

・ エドガー・H. シャイン (著), 清水 紀彦 (翻訳), 浜田 幸雄 (翻訳)『組織文

化とリーダーシップ―リーダーは文化をどう変革するか』ダイヤモンド社 

1985 年

・ 奥村恵一「経営理念と経営システム」『横浜経営研究』第 18 巻第 3 号 pp15-44

1997 年

・ 加護野忠男『組織認識論―企業における創造と革新の研究』 著千倉書房 

1988 年

・ 経済同友会 『第 15 回企業白書~「市場の進化」と社会責任経営企業の信頼

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構築と持続的な価値創造に向けて』2003 年 公益社団法人経済同友会

・ 国民生活審議会消費者政策部会・自主行動基準検討委員会「消費者に信頼さ

れる事業者となるために―自主行動基準の指針」内閣府 2002 年

・ 社会経済生産性本部(編)『経営理念・社是社訓 第 4 版』生産性出版,2004

・ ジェームズ・C. コリンズ,ジェリー・I. ポラス著,山岡洋一訳 『ビジョナリー・

カンパニー― 時代を超える生存の原則』日経 BP 出版センター 1995 年

・ 鳥羽欽一郎・浅野俊光「戦後日本の経営理念とその変化―経営理念調査を手

がかりとし . て―」『組織科学』第 18 巻第 2 号 pp37-51 1984 年

・ 田中宏司「企業不祥事とコンプライアンスの本質」『東京交通短期大学研究紀

要』第 14 号 pp7-16 2008 年

・ 日本経営倫理学会 CSR イニシアチブ委員会 (著)『CSR イニシアチブ―CSR

経営理念・行動憲章・行動基準の推奨モデル』日本規格協会 2005 年

・ 野中郁次郎『企業進化論』日本経済新聞社 1985 年

・ 農林水産省「食品業界の信頼性向上自主行動計画の作成の手引き」農林水産

省 2008 年

・ 早稲田大学企業倫理研究所・社会経済生産性本部『ミッション・社是社訓の

活用についての調査』社会経済生産性本部 2004 年

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※網線はグローバルコンパクト参加企業

業界名 企業名 業界名 企業名JFE 金融 新生銀行日立金属 京都銀行

製薬 アステラス製薬 岐阜銀行エーザイ 三重銀行第一三共 みずほ銀行塩野義製薬 三菱東京 UFJキョーリン製薬 富士火災

食品 ニッスイ アメリカンファミリーマルハニチロ アコム永谷園 岡三証券カゴメ 大証金日清オイリオ オリックス日本ハム 東京海上グリコ 家庭用品 タカラトミー養命酒製造 コンビヤクルト カワイフジッコ コクヨわらべや ミズノアサヒビール マスコミ・

広告・出版凸版印刷

キューピー 共同印刷サッポロ 学研ハウス食品 テレビ東京明治製菓 TBS

自動車・バイク

アイシン精機 博報堂 DYデンソー 電通マツダ ぴあトヨタ ベネッセ本田技研工業 エネルギー 昭和シェル

建設・不動産

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