customer focus process approach...

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ISO/DIS 9001 – WHAT YOU NEED TO KNOW ISO/DIS 9001 で提案されている品質マネジメントシステム要求事項の内容や変更点を理解するための ホワイトペーパー 2015 2 月発行 ENGAGEMENT OF PEOPLE EVIDENCE BASED DECISIONS RISK MANAGEMENT LEADERSHIP FURTHER EXCELLENCE RELATIONSHIP MANAGEMENT CUSTOMER FOCUS PROCESS APPROACH IMPROVEMENT

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ISO/DIS 9001 – WHAT YOU NEED TO KNOW ISO/DIS 9001 で提案されている品質マネジメントシステム要求事項の内容や変更点を理解するための ホワイトペーパー

2015 年 2 月発行

ENGAGEMENT OF PEOPLE EVIDENCE BASED DECISIONS RISK MANAGEMENT

LEADERSHIP FURTHER EXCELLENCE RELATIONSHIP MANAGEMENT

CUSTOMER FOCUS PROCESS APPROACH IMPROVEMENT

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目次

概要このホワイトペーパー(白書)は、2014 年 5 月に発行された現在のドラフト版である ISO/DIS9001 (以下、 DIS9001) の内容に関する見解を述べたものです。 このホワイトペーパーは、 DIS9001 のすべての要求事項を完全に解説するものではなく、DIS9001 で提案されている品質マネジメントシステム(QMS)の主要な変更点の概要をご説明しています。 ISO9001 改正プロセスの現段階では、提案されている要求事項がすべて採用されるとは限りませんが、盛り込まれる可能性のある内容を検討し、最終版(IS)の発行前に、準備されることをお奨めします。

I. はじめに ..............................................................................................................................................3

II. 概要 .....................................................................................................................................................4

III. 附属書 SL .........................................................................................................................................4

IV. DIS 9001 の主要な要求事項 .......................................................................................................6

V. 結論 .....................................................................................................................................................15

VI. 改正スケジュール ............................................................................................................................16

VII. 改正に向けて、 SGS がご提供するソリューション ...................................................................16

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3

I. はじめに

10%

18%

72%

ISO 9001

ISO 14001

Others

ISO9001 は、2014 年末までに、世界 185 か国で 1,115,000 件以上の認証が発行されていると言われており、 もっとも認知されているマネジメントシステム規格です。 ISO9001 は、組織の品質マネジメントシステムを構築、実施、認証するための要求事項を提供しており、信頼性や顧客満足を向上させるためにもっとも利用されているマネジメントシステムです。すべての ISO 規格は、事業慣行や市場の要求を反映しているかどうかがレビューされており、ISO9001 は、1987 年、1994 年、2000 年、2008 年に改正されています。

GENEVA

AMERICAS440 OFFICES & LABORATORIES17 700 EMPLOYEES

825 OFFICES & LABORATORIES32 000 EMPLOYEES

385 OFFICES & LABORATORIES30 300 EMPLOYEES

EUROPE, AFRICA &MIDDLE EAST

ASIA PACIFIC

ただし、ISO9001 の 2008 年版は、小規模な改正に留まり、2015 年版が 2000 年版以来の大きな変更となる予定です。右図は、「ISO Survey of Management System Standard Certificates2013」 の調査結果によるものですが ISO9001 の認証件数は、世界で発行されている全認証件数の約72%を占めていることがわかります。

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III. 附属書 SL品質、環境、労働安全衛生等、広範な分野を取り扱う多くのマネジメントシステムが存在しています。長年にわたり、組織は複数のマネジメントシステム規格を導入し、認証を取得しようとしてきましたが、各マネジメントシステム規格の要求事項、用語及び定義などが大きく異なっていたため、各システムを効果的で効率的なひとつのシステムに統合するのが容易ではありませんでした。このような背景に基づき、ISO技術管理評議会は、2012年に統合版ISO補足指針ISO/IEC専門業務用指針(旧ISO Guide83)の附属書SLを作成しました。附属書SLの目的は、以下の内容を提供することにより、ISOマネジメントシステム規格の一貫性と整合を強化することです。• 統一され、合意された上位構造• 共通の中核となるテキスト• 共通用語及び中核となる定義結果として、附属書SLはすべての新規もしくは改正されるマネジメントシステム規格にひな形又は枠組みを提供しています。分野特有の下位条項は追加できるものの、「ハイレベルストラクチャー」(つまり、主要な条項番号及びタイトル)は固定され、変更できません。これにより、すべてのマネジメントシステム規格の整合が図れ、これらの規格の親和性が高まります。たとえば、将来発行されるすべてのISOマネジメントシステム規格の主要な条項やタイトルは、同一になります。結果として、すべてのISOマネジメントシステム規格は類似することになります。さらに、一般的な用語はすべて同じ定義となるため、矛盾が少なくなることが期待されます。このアプローチは、特に2つ以上のマネジメントシステム規格の要求事項に適合した統合マネジメントシステムを運用することを選択した組織に有益です(図1参照。MSSは「マネジメントシステム規格」の意)。附属書SLは、2012年に発行された事業継続マネジメントシステム規格であるISO22301や2013年に改正された情報セキュリティマネジメントシステム規格であるISO27001の枠組みとしてすでに採用されています。また、ISO9001やISO14001の改正版や新しい労働安全衛生マネジメントシステム規格であるISO45001で採用される予定です。

品質マネジメントシステムの採用は、組織の戦略上の決定に基づくものですが、DIS9001は、さらに持続可能な発展に向けて組織が取り組む上での一つの要素となることを意図しており、また、組織の全体的なパフォーマンス改善のツールとしての活用を推進しています。要求事項の用語の変更や構成の見直しの他にも重要な新しい要求事項が導入されています。そのいくつかは、附属書SLの枠組みや中核となるテキスト(Ⅲ. 附属書SLを参照)が採用されたことによるものですが、品質マネジメントシステムの固有の要求事項も含まれています。組織やその品質マネジメントシステムに影響を与える、組織の状況や内部及び外部の課題(4.1項)や、組織の活動によって影響を受ける利害関係者のニーズ及び期待(4.2項)に関わる新しい条項があります。この変更点は、組織が品質マネジメントシステムを構築、実施する際に、単なる内向きのアプローチから、品質マネジメントシステムが着目し、優先しなければならない方法に外的要因がより大きな影響を与えるアプローチに移行することを要求しています。つまり、重要な内部及び外部の目的を効果的に満たすことが求められます。さらに、新しい要求事項として、組織に対して、一貫して顧客の要求事項を満たす能力に影響を与える潜在的なリスク及び機会を特定することを求めています (6.1項)。DIS9001には、予防処置(ISO9001:2008 8.5.3項)に関わる特定の要求事項はありませんが、リスク及び機会に関わる新しい要求事項に、潜在的な問題の特定及び取り組みに関する内容は残っています。また、特定された不適合が他のところでも発生する可能性があるか否かを決定しなければならないというDIS9001の要求事項(10.2項)は、現在の「予防処置」の要求事項に類似しています。DIS9001では、あらゆる形態の外部提供者(たとえば、供給者からの購買の場合や、プロセス及び機能をアウトソースする場合など)に対して適切な管理の方式及び程度を決定するために、リスクを基礎としたアプローチを採用することを組織に要求しています。DIS9001には、品質マニュアルや文書化された手順、記録に関する要求事項は含まれていませんが、文書化した情報(7.5項)については多数言及されています。文書化した情報の形式や保管方法については特別な要求事項はありませんが、組織が保持、管

理、維持することが要求されています。「組織の知識」では、製品及びサービスの適合を達成するために必要な知識を決定し、維持することを求めており、この知識には、要員が保有している情報が含まれますが、組織が運用している状況も考慮する必要があります。「管理責任者(ISO9001: 2008 5.5.2項)」の任命にかかわる要求事項はなくなりましたが、組織が選択するのであれば、体制上、管理責任者というポジションを維持することを妨げるものではありません。しかし、これまで一般的に管理責任者によって実施されていた活動や責任のいくつかは、トップマネジメントが直接実施しなければならず、委譲することができないことに留意しなければなりません(DIS9001 5項)。

II. 概要

ISOマネジメントシステム規格間の一貫性と整合性を高めます。

品質マネジメントシステムの採用は、組織の戦略上の決定です。

DIS9001は、組織が品質マネジメントシステムを計画し、実行し、構築する際に、プロセスアプローチを採用することをより直接的に要求しています。また、そのようなアプローチの重要な要素を特定する要求事項が含まれています。その意図は、組織がプロセスだけでなく、それらの相互作用を体系的に特定し、管理することを確実にすることです。

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図1

図2

MSS MSS

MSS

ANNEX SL

「附属書SLとDIS9001」

DIS9001は附属書SLの枠組みを用いて、上位構造、中核となるテキスト、共通用語及び主要な定義を採用しています。DIS9001の主要な条項は以下の通りです。1. 適用範囲2. 引用規格3. 用語及び定義4. 組織の状況5. リーダーシップ6. 計画7. 支援8. 運用

5

4.4

9

86

CUSTOMERS

REQUIREMENTS��������������������� �� ���� ����� �� �� �

CUSTOMERS� TIS� �CTION�RO�UCTS��N��SER�ICES

OUT�UTSIN�UTS

��

9. パフォーマンス評価10. 改善

しかし、これらの主要条項に関連する下位条項の中には、DIS9001においても、品質マネジメントシステムに固有の追加要求事項が含まれています(図2参照)。附属書SLの採用に伴い、ISO9001: 2008の要求事項のいくつかが、異なる条項の下に配置されています。たとえば、ISO9001: 2008の5項の「経営者の責任」は、DIS9001では「リーダーシップ」の下にあります。一方、7項にある「製品実現」はDIS9001の8項「運用」で取り扱われています。

顧客満足製品及びサービス

顧客およびその他の利害関係者の

要求事項

インプット アウトプット

4.1 4.2 4.3組織の状況の理解利害関係者の特定品質マネジメントシステムの適用範囲の決定

支援

継続的改善

リーダーシップ

計画

品質マネジメントシステム

パフ

ォー

マンス

運用

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IV. DIS 9001 の主要な要求事項1 項 – 適用範囲DIS9001 の狙い及び適用範囲は、以下のようなことを望む組織が採用する品質マネジメントシステムの要求事項を規定することです。• 顧客要求事項及び適用される法令・

規制要求事項を満たした製品又はサービスを一貫して提供する能力があることを実証する。

• 継続的改善のプロセス及び顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合性の保証を含むシステムの適用を通じて、顧客満足を向上させる。

細かな変更はありますが、この条項の言い回しは ISO9001: 2008 で使用されているものとほぼ同様です。しかし、品質マニュアルの中で、品質マネジメントシステムを運用している組織が適用できない要素を規定する要求事項 (ISO 9001: 2008 1.2 項). がなくなるとともに、適用除外の対象条項の限定にかかわる表現がなくなりました。 DIS9001 のすべての要求事項は、あらゆる組織に適用されることを意図していますが、組織が業務の一部としてある種の活動を実施していないということで、単純に特定の要求事項を適用できない状況があるかもしれません。(DIS9001 附属書A. A.5)。そのような場合、組織はその要求事項を 「適用できない」とみなすことができます。しかし、顧客要求事項を遵守する製品及びサービスを供給する能力に影響を与える場合、顧客満足を向上させる能力に悪影響を及ぼす場合は、適用から除外することはできません。

2 項 – 引用規格ISO9001: 2008は、現在ISO9000: 2005品質マネジメントシステム -基本及び用語を参照していますが、ISO9000: 2005の内容はDIS9001に組み込むよう考慮されています。したがって、2つの規格を利用する必要はなくなります。結果として、DIS9001の中に引用規格はありません。

3 項 – 用語及び定義すべての適用可能な用語及び定義は、 DIS9001の規格に組み込まれています。附属書SLには、すべてのマネジメントシステム規格に含まれるべき22の用語及び定義が含まれています。

「監査」「是正処置」「マネジメントシステム」「測定」「目的」「方針」など、規格そのものが取り扱っている領域に関係なく、どのマネジメントシステム規格にも出現することが見込まれる用語及び定義があり、これらの用語及び定義は、DIS9001に含まれています。しかし、40以上の品質マネジメントシステムに固有の用語及び定義がDIS9001に追加され、「品質」「顧客」「製品」 「サービス」「設計・開発」のような関連した用語及び定義が含まれています。さらに、ISO9001: 2008で使用されていた次の4つの用語がDIS9001で変更になりました。• 製品→製品及びサービス• 購買製品→外部から提供される製品

及びサービス• 作業環境→プロセス運用のための

環境• 供給者→外部提供者

4 項– 組織の状況組織の「状況」(事業環境と呼ばれることもある)は、組織が製品及び/又はサービスに取り組むうえで、影響を与えうる内部及び外部の要素及び状況に言及しています。結果として、組織の品質マネジメントシステムの設計及び実施は、その状況によって影響を受けます(図3参照)。組織の状況は、たとえば、以下のような内容を含みます。• 組織固有の目的• 顧客及びその他の関連する利害関係

者のニーズ及び期待• 提供する製品及びサービス• 組織が使用するプロセス及びそれら

の相互作用の複雑さ• 規模及び組織の構造これらは、これまでも品質マネジメントシステムに概念として含まれており、ISO9001: 2008(序文0.1 一般)には、組織の品質マネジメントシステムの設計及び実施が、非常に類似した課題及び要素によって影響を受けるという事実に言及しています。4.1 項– 組織及びその状況の理解DIS9001では、その品質マネジメントシステ

ムの意図した結果を達成する組織に影響を与える、外部及び内部の課題を特定することが要求されています。組織はまた、変化がその品質マネジメントシステム及びその目的に影響を与えるか否かを確認するために、その課題を監視し、レビューし続けなければなりません。すでに多くの組織が内部及び外部の課題を監視していますが、これは新しい要求事項で、すべての組織が順守しなければなりません。内部及び外部の課題の特定、又は監視及びレビューには文書化は要求されていませんが、これらを実施したことを実証しなければなりません。多くの場合、この情報は様々な情報源から入手できるかもしれません。たとえば、文書化された事業計画又は事業戦略の一部となっているかもしれませんし、組織のウェブサイトや株主への年次報告書、もしくは本件を取り扱ったマネジメントレビュー議事録の一部分で参照できるかもしれません。

4.2 項 - 利害関係者のニーズ及び期待の理解組織には、その品質マネジメントシステムに関連した利害関係者を特定することが要求されています。「利害関係者(ステークホルダーと言われることもある)」は、品質マネジメントシステムを実施する組織の決定事項又は活動に影響を与え得るか、影響を受け得るか、又はその影響を受けると認識している個人又は組織です。これらの利害関係者は、組織の株主、従業員、顧客、エンドユーザー、供給者、規制当局、圧力団体などが考えられます。利害関係者又はその要求事項が、品質マネジメントシステムに関連があるかどうかを決定するために、組織は顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たす製品及びサービスを一貫して提供する能力、又は顧客満足を向上させる能力に影響を与えるか否かを検討しなければなりません。

DIS 9001 は、組織にその品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を特定することを要求

しています。

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組織の状況

株主

従業員

規制当局

エンドユーザー

顧客

圧力団体

市場

文化

社会

競争

技術

経済

法令

供給者

利害関係者

組織: 価値 文化 知識

パフォーマンス

図3

すべての組織には、独自の関連する利害関係者のグループがありますが、すべてが組織の品質マネジメントシステムに関連するわけではありません。組織は、まず、品質マネジメントシステムに関連する利害関係者は誰なのか、またその要求事項を決定したことを実証する必要があります。これらの利害関係者の関連性及び/又はその要求事項の変化をレビューし続けていることの客観的証拠も必要になります。 4.3 項– 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定

この条項は、ISO9001: 2008の1.2「適用」及び4.2.2「品質マニュアル」の要求事項のいくつかが網羅されています。組織の品質マネジメントシステムの適用範囲を設定しなければならないという要求事項がある一方で、その際に組織が、以下について考慮しなければならないという新しい特定の要求事項もあります。a. 4.1 項で言及されている外部及び内部

の状況課題b. 4.2 項で言及されている関連する利害

関係者の要求事項c. 製品及びサービス組織は、品質マネジメントシステムの適用についての境界及び/又は限定を特定しなければなりません。たとえば、適用範囲には、組織全体を含めることもでき、特定の機能、部門、又はグループを横断した複数の機能を含めることもできます。品質マネジメントシステムの物理的な限定についても特定しなければなりません。アウトソースされた機能又はプロセスは、組織の適用範囲内の中で考慮しなければなりません。

DIS9001 では、組織の品質マネジメントシステムへの要求事項の適用を決定する際の「適用除外」についての言及はありません 。しかし、組織の規模、適用するマネジメントモデル、組織の活動の範囲、又は遭遇するリスク及び機会の性質により、要求事項の適用を検討する必要があります(上記条項1「 適用」を参照)。

4.4 項 – 品質マネジメントシステム及びそのプロセス

この条項は、ISO9001: 2008の4.1「一般要求事項」、5.4.2「品質マネジメントシステムの計画」、8.2.3「プロセスの監視及び測定」で取り扱われている要求事項がいくつかあります。DIS9001では、品質マネジメントシステムの開発、実施、有効性の改善の際に、プロセスアプローチを採用することを要求しています。相互に関連するプロセスとして活動が理解され、管理されるときに、一貫性のある結果及びアウトプットが期待できます。DIS9001には、プロセスアプローチの適用に必要となる固有の要求事項が含まれています。このプロセスアプローチは、品質方針及び戦略的な方向性に従って、意図した結果を達成するために、組織にプロセス及びその相互関係を体系的に決定し、管理することを要求しています。ISO9001: 2008(4.1項)に類似した要求事項がありますが、DIS9001では、特に組織に以下のことを明確にするよう要求しています。

• これらのプロセスに対して必要なインプット、及びこれらのプロセスから期待されるアウトプット

• プロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするために必要な、測定及び関連するパフォーマンス指標

• これらのプロセスに関する責任及び権限の割当て

• プロセスに関連するリスク及び機会(DIS9001 6.1項参照)及びこれらへの適切な取り組みを計画し、実施すること

運用手順、作業手順、プロセスダイアグラム等は、プロセスの運用をサポートするために使用される文書化した情報の例になり得えますが、組織によって異なるアプローチとなるかもしれません(DIS9001 7.5項参照)。 5 項 – リーダーシップこの条項は、現在のISO9001:2008の「5. 経営者の責任」にある方針、組織の役割、責任及び権限を越えた要求事項になっています。単なるマネジメントというよりは、「リーダーシップ」が重視されています。トップマネジメントは、組織の品質マネジメントシステムにおける直接的な関与を実証するよう要求されており、管理責任者の要求事項が削除されたことは、組織のマネジメントシステムの運用を一人の個人に集中させるものではないことを意図しています。 

単なるマネジメントというよりは、リーダーシップが重視されています。

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5.1.1 項 -品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントトップマネジメントは、組織が品質マネジメントシステムの要求事項に適合することの重要性を強化する責任を実証しなければなりません。さらに、品質マネジメントシステムが意図した結果を達成し、組織内で継続的改善をすることを確実にしなければなりません。トップマネジメントが管理責任者に効果的に品質マネジメントシステムの権限を委譲している組織においても、DIS9001では、品質マネジメントシステムにおいてより直接的な関与を実証しなければなりません。トップマネジメントは、管理責任者のような他の人に権限を委譲できますが、いくつかの要求事項は、トップマネジメント自身が取り組まなければなりません。トップマネジメントは、品質マネジメントシステムに対する説明責任を負い、有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステムの要求事項への適合の重要性を強調しなければなりません。また、品質マネジメントシステムの要求事項は組織の事業プロセスに統合され、組織全体の戦略の方向性と運営している状況と整合していることを確実にしなければなりません。いくつかのトップマネジメントのリーダーシップ及びコミットメントを目的としたDIS9001の要素では、ある活動が取り扱われ、実行されることを「確実にする」ことが要求されており、これは、これらのタスクを他の人に権限移譲できることを表しています。しかし、トップマネジメントが活動について「負う」「促進する」「伝達する」「雇用する」「支援する」といった要求事項がある場合は、トップマネジメントが自ら対応を図っていることが、目に見えるかたちで示されなければなりません。

5.1.2 項 -顧客重視DIS9001では、ISO9001: 2008 5.2項の要求事項「顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され満たされていることを確実にする」が強化されています。また、以下に対するリスク及び機会を特定し、対応しなければならないということについても、実証しなければなりません。• 顧客要求事項及び適用される法令・

規制要求事項に適合する製品及びサービスを供給するための組織の能力に潜在的に影響を与え得る。

• 顧客満足に影響を与え得る。さらに、トップマネジメントは、以下について、製品及びサービスを一貫して提供することを重視することが維持されていること

を実証しなければなりません。• 顧客要求事項に適合している。• 適用される法令・規制要求事項を満

たす。• 顧客満足を向上させる。顧客満足の向上を重視することを維持する必要性に関する言及は、引き続き規定されています。トップマネジメントは、DIS9001の要求事項の実施を確実にすることにより、顧客重視の観点でリーダーシップ及びコミットメントを実証することが要求されています。この表現は、トップマネジメントが必ずしも直接対応する必要がなく、それらを実施する責任は他の要員に委譲できることを示しています。

5.2 項 -品質方針組織の品質方針に関わる要求事項は、おおむねISO9001: 2008の内容と同様ですが、新しい要素もいくつかあります。 DIS9001は、組織の品質方針がその目的及び状況に照らして適切であるかどうかを要求しています。これは、組織がその状況及び利害関係者(DIS9001 4.1及び4.2)の関連要求事項を決定した後、トップマネジメントがその情報をふまえて、品質方針をレビューしなければならないことを意味しています。品質方針そのものは、「文書化した情報」として利用可能でなければならず、トップマネジメントが策定に関与していることを実証する必要があります。また、組織の状況(戦略的な方向性を含め)、利害関係者、又は利害関係者の要求事項の変化を反映していることを確実にするために品質方針を継続的にレビューしていることを示す必要があります。他にも新しい要求事項があります。品質方針は、組織の「利害関係者」が入手可能でなければなりません。組織は、本要求事項に関連し、内部及び外部の利害関係者にどのように対応したかを実証する必要があります。たとえば、ウェブサイト上で品質方針を入手可能にするという方法がありますが、他の方法も考えられるかもしれません。 5.3 項 -組織の役割、責任及び権限この項は、ISO9001: 2008 5.5 項「責任、権限及びコミュニケーション」の要素のいくつかは網羅しているものの、重要な変更点がいくつかあります。責任及び権限を割当て、組織内に周知するだけではなく、組織の中で理解されなければならないという要求事項があります。したがって、品質マネジメントシステムの責任

及び権限を組織の要員に伝達するとともに、要員が確実に理解する方法を持たなければなりません。特に、トップマネジメントは、以下に関連して、特定の責任及び権限を割当て、伝達し、理解することを確実にしなければなりません。• 品質マネジメントシステムがDIS9001

の要求事項に適合していることを確実にする。

• プロセスが意図したアウトプットを引き渡していることを確実にする。

• トップマネジメントに、品質マネジメントシステムに関するパフォーマンス、改善の機会、変更及び/又は変革に関し報告する。

6 項-品質マネジメントシステムに関する計画品質マネジメントシステムの「計画」は、なじみのある要求事項ですが、DIS9001では、組織の事業に統合されるよう計画することがより重視されています。組織は、品質マネジメントシステムを計画、実施する際に、組織の状況と利害関係者の両方を考慮に入れることが要求されています。

DIS 9001 では、組織の事業に統合されるよう計画することがより重視されています。6.1 項 – リスク及び機会への取り組み品質マネジメントシステムの運用及び成果に影響を与える(プラスまたはマイナスに)可能性があるリスク及び機会を特定することを求める新しい要求事項です。組織の状況に関連した内外の課題及び利害関係者の要求事項を決定し(DIS9001 4.1及び4.2項)、組織はこの情報に基づき、以下の対応をはかる必要のあるリスク及び機会を決定することが要求されています。• マネジメントシステムが意図した成果

を達成することを確実にする• 望ましくない影響を防止又は低減する• 継続的改善を達成するこれらを評価の上、組織は次の事項を実施しなければなりません。• 特定されたリスク及び機会への取り

組み• その取り組みのマネジメントシステム

プロセスへの統合及び実施• その取り組みの有効性の評価組織が目的を達成する上で、品質マネジメントシステムのすべてのプロセスが同レ

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ベルのリスク又は機会をもつとは限りません。この理由により、DIS9001では、リスク及び機会への取り組みは、「製品及びサービスの適合への潜在的影響と釣り合いのとれたものでなければならない」ことを要求しています。たとえば、プロセス、システム、製品及び/又はサービスに関連する不備や不適合の結果は、どの組織でも同様ではありません。したがって、品質マネジメントシステムを構成するプロセス及び活動を含め、品質マネジメントシステムをどのように計画し、管理するかを決定する際に、関連したリスク及び機会の種類やレベルを考慮する必要があります。組織がリスク及び機会を決定していること、及びこれらの課題及び要求事項が変化しているかどうかを継続的に確認している客観的証拠が必要になります。また、とられた処置が有効か否かをその後にレビューしていることを実証する必要があります。リスク及び機会は決定され、取り組まれていなければなりませんが、正式な文書化されたリスクマネジメントプロセスは要求されていません。また、組織は最も適した評価の方法を自由に選択できます。しかし、組織は、品質マネジメントシステムの計画及び実施に関連したリスク及び機会を決定するための計画された方法が整えられていることを実証しなければなりません。

6.2 項 -品質目標及びそれを達成するための計画策定

ISO9001:2008の5.4項の品質目標に関連した要求事項は、DIS9001でも維持されています。しかし、関連した部門及び階層で測定可能な、組織の品質方針と一致した品質目標の設定の必要性に加え、「関連したプロセス」に対して確立し、「顧客満足の向上」に関連していなければならないという要求事項があります。これらの要求事項への対応として、品質目標が実際に価値を提供するものであり、単にDIS9001の最低限の要求事項を満たすために確立されたものではないということを実証する必要があります。ISO9001:2008の中で示唆されている品質目標を達成 する ための計画に関する要求事項は、DIS9001においてより明確で詳細に規定されています。組織は以下のことを決定しなければなりません。• 品質目標及びそれを達成するための

計画策定• 責任者• 実施事項及び達成期限• 結果の評価方法

組織は、何を、いつ、誰が、どのようにといった要素を計画に含めていることを実証する必要がありますが、組織は品質目標にかかわる文書化した情報を保持する必要があるため、これらについて、文書化された様式または他の方法で示すことになります。組織はまた、品質目標に対する責任を持つ人が、これらの目標を達成するための責任と必要な資源の割当てを認識していることを実証しなければなりません。

6.3 項 -変更の計画DIS9001には、ISO9001: 2008の5.4.2(b)にある、品質マネジメントシステムへの変更が計画され、実施される場合は、組織の品質マネジメントシステムの完全性が維持されなければならないという重要な要求事項が含まれていますが、さらなる要求事項が追加されています。組織の品質マネジメントシステムへのすべての変更は、「計画的かつ体系的な方法で行わなければならない」という一般的な要求事項に加え、このプロセスは以下のことを考慮しなければなりません。• 変更の理由、及びその変更によって起

こり得る結果• 品質マネジメントシステムの完全性に

おける影響• その変更を実施するために必要な資

源の利用可能性• 変更によって引き起こされる関連する

責任及び権限の割当てや再割当てDIS9001 4.4 項では、組織は、「プロセスの運用を支援するために必要な程度の」文書化した情報を維持・保持することを要求しています。そして、上述の事項を考慮に入れ、品質マネジメントシステムの変更に関連した活動は文書化を検討する必要があります。

組織は、品質マネジメントシステムを変更する際に、これらを考慮したことを実証しなければなりません。

7 項 -支援組織の状況、コミットメント及び計画について述べてきましたが、この条項は組織の目的を達成するために必要な支援についての要求事項を規定しています。

7.1 項 – 資源

7.1.1 項 -一般ISO9001: 2008の6.1「資源の提供」で明示されていますが、DIS9001では、資源の実現能力を考慮もしくは評価しなければならないという要求事項があります。さらに、品質マネジメントシステムの確立、実施、維持及び継続的改善に必要な資源を決定する際に、内部及び外部の資源の必要性及び能力を考慮しなければならないという要求事項もあります。これを実証するために文書化した証拠が入手可能でなければならないという特定の要求事項はありませんが、組織は内部及び外部の資源についての必要性及び能力を考慮していることを実証しなければなりません。

7.1.2 項 -人々DIS9001では、法令・規制要求事項を満たす必要があることを明確に言及していますが、実質的には、ISO9001: 2008の6.1及び6.2項と同様の要求事項です。

7.1.4 項 – プロセスの運用に関する環境DIS9001では、製品及びサービスの適合を確実にするために適した作業環境を決定するだけではなく、その作業環境を「提供し、維持する」という要求事項がありますが、主要な要素は、ISO9001: 2008の6.4「作

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業環境」と同様です。注記には、プロセスの運用に必要な環境には、物理的、社会的、心理的、環境的要因、及びその他の要因(たとえば、気温、湿度、人間工学、清潔さ)を含めることができる、ということが明確に記載されています。組織は、プロセスを運用するために必要な環境を決定するだけではなく、注記に列記されている要素を考慮に入れながら、その環境を提供していることを実証する必要があります。

維持しなければならない「組織の知識」の種類は、組織のあらゆるところで多様化しています。たとえば、プロセスの運用に必要な、組織内で力量を備えた人材が保有する知識も含めることになるでしょう。また、その他にも設備に付帯の固有のソフトウェア、社内外の製品及びサービスに適用される基準文書、技術マニュアル、知的財産等もまた、含める必要があるかもしれません。組織で必要な知識の量やレベルは、組織の活動、プロセス、環境によって異なりますが、組織が、そのプロセス及び活動を実施するために保持する必要がある知識を特定しているかが重要となります。

この知識は、維持し、いつでもどこでも必要なときに利用可能でなければなりません。どのように決定するかは組織次第です。また、文書化した情報として維持しなければならないという特定の要求事項もありません。さらに、その品質マネジメントシステムへの変更及び運用活動を計画する際に、既存の組織の知識がその変更に対処するのに十分であるか、又は追加の知識を習得する必要があるか否かを評価し、必要に応じて対処することが要求されています。

7.2 項 – 力量DIS9001では意図した結果を達成するための知識及び技能を適用する能力として、「力量」について定義されていますが、ISO9001: 2008の6.2項「人的資源」と実質的には同様の要求事項が網羅されています。組織は、要員の力量の要求事項を決定し、以下を実証しなければなりません。• 要員が力量に関する要求事項を満た

すことを確実にする• 特定された力量を身につけることを確

実にするための処置をとる組織はまた、必要とされる力量レベルに達するための要員教育を有効なものとするため、力量を習得し、維持するためにとられた処置を実施後にレビューしていることを実証する必要があります。要求事項に追加された重要な事項は、 DIS9001は組織の品質パフォーマンスに影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に適用されることです。

ORGANISATIONS NEED TO DETERMINE AND MAINTAIN THE KNOWLEDGE OBTAINED BY THE ORGANISATION (INCLUDING ITS PERSONNEL) TO ENSURE THAT IT CAN ACHIEVE CONFORMITY OF PRODUCTS AND SERVICES

これには、アウトソースされたプロセス及び機能に従事する人々だけでなく、下請負業者や派遣要員も含まれます(DIS 9001 8.4.3 (c)にある外部提供者への力量に関する要求事項を伝達する必要性を参照してください)。組織は、管理下にある要員に必要とされる力量があることを実証するために、文書化された情報を保持する必要があります。これは、組織が単なる「教育、訓練、又は経験」の適切な記録を維持しなければな という現在のISO9001: 2008の要求事項とは異なります。

7.3 項 – 認識DIS9001は、組織の管理下の要員に、品質マネジメントシステムの要求事項に適合しないことがもたらす結果や品質目標を認識させるという要求事項を導入しています。これは、組織の要員が「自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らがどのように貢献できるかを認識すること」を確実にするというISO9001:2008の要求事項とは若干異なります。組織は、組織で働く内部及び外部の全員が以下の事項に関して認識を持つことを実証する必要があります。• 組織の品質方針及び品質目標• 品質パフォーマンスの向上によって得

られる便益を含む、品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献

• 品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味

7.4 項 – コミュニケーションこれは、ISO9001: 2008の5.5.3項「内部コミュニケーション」と同様の要素が網羅されていますが、DIS9001では、組織外の要員とのコミュニケーションに関する要求事項があります。また、コミュニケーションプロセスに関する要求事項がいくつかあり、組織は、以下の事項を含む、内部及び外部のコミュニケーションを実施する必要性を特定したことを実証しなければなりません。• コミュニケーションの内容(何を伝達

するか)• コミュニケーションの実施時期• コミュニケーションの対象者• コミュニケーションの方法これらの要求事項は、現在のISO9001: 2008

7.2.3項及びDIS9001 8.2.1項で取り扱われている「顧客とのコミュニケーション」で言及されている要求事項とは異なります。

7.1.3 項 -インフラストラクチャーISO9001: 2008の6.3項「インフラストラクチャー」で同様の主要な要求事項が網羅されていますが、DIS9001では、インフラストラクチャーに次のものを含めることができることが明記されています。• 建物及び関連するユーティリティー• 設備(ハードウェア及びソフトウェア

を含む• 輸送システム• 情報及び通信技術

このため、プロセスが実際に運用されている環境を確認することになるでしょう。また、プロセスによって要求される監視及び管理の方法が変わりますが、組織は必要な環境が維持されていることを確実にする方法を整えていることを実証する必要があります。

7.1.5 項 -監視用及び測定用の資源ISO9001: 2008の7.6項と同様の要求事項が網羅されていますが、単に機器というよりは、「資源」の監視及び測定がより重視されています。この状況では、資源には、たとえば人材、教育、作業場所、作業環境等が含まれます。組織は、監視及び測定の機器だけでなく、すべての監視及び測定の資源が目的に適している客観的証拠として、文書化した情報を保持する必要があります。

7.1.6 項 -組織の知識製品及びサービスの適合を達成することを確実にするために、組織(要員を含む)によって習得された知識を決定し、維持することに関して、組織のニーズに対応するという新しい要求事項です。主要な要求事項は、組織がプロセスを満足に運用し、要求事項に適合する製品及びサービスを提供するために必要な知識を確立しなければならないということです。

内部及び外部の資源の必要性及び能力を考慮しなければなりません。

組織は、製品及びサービスの適合を達成するために、組織(要員を含め)が習得する知識を決定し、維持する必要があります。

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7.5 項 – 文書化した情報ISO9001: 2008 で使用されている「文書」及び「記録」という用語は、DIS9001では、「文書化した情報」という用語に置き換えられました。「文書化した情報」は、それらを含む媒体を含め、組織によって管理され、維持されることが要求される情報として定義づけられています。ISO9001: 2008が現在、文書化された手順(たとえば、プロセスを規定し、管理し、支援すること)を参照している部分は、文書化した情報を「維持する」ための要求事項として表現されています。ISO9001: 2008では、記録に言及している部分は、文書化した情報を「保持する」ための要求事項として表現されています。品質マネジメントシステムのための文書化した情報の程度は、以下のような理由により、組織によって異なります。• 組織の規模、並びに活動、プロセス、

製品及びサービスの種類

• プロセス及びその相互作用の複雑さ

• 組織の人々の力量それぞれの組織は、その品質マネジメントシステムを管理するために必要とされる文書化した情報の程度を決定する必要があります。文書化した情報の作成及び更新に関わる要求事項は、ISO9001: 2008 4.2項と実質的には同様です。文書管理手順の要求事項はなくなっていますが、文書化した情報自体が管理されていることを実証する必要があります。この管理には、適切な保護(機密性の喪失、不適切な使用及び完全性の喪失からの保護)を含むことが必要です。文書化した情報へのアクセス管理は、特有の要求事項です。「アクセス」とは、文書化した情報の閲覧だけの許可に関する決定、文書化した情報の閲覧及び変更の許可及び権限に関する決定などを意味します。組織は、文書化した情報が電子化されている場合は、必要に応じて、適切なパスワードもしくはアクセス管理の仕組みがあることを実証しなければなりません。同様に、電子情報システムが故障もしくは利用不可能となった場合に、文書化した情報へのアクセスを可能とする仕組みがあることを実証する必要があります。

8 項 -運用この条項は、運用の計画及び管理に関連した要求事項に加え、品質マネジメントシステムを実施する組織の主要な事業活動を取り扱う項目です。

品質マネジメントシステム特有の要求事項が記載されているセクションです。

8.1 項 – 運用の計画及び管理これらの要求事項は、ISO9001: 2008 7.1項「製品実現の計画」の要求事項に類似していますが、プロセスの管理を非常に重視しています。DIS9001では、「プロセスに関する基準」の設定及び「その基準に従った」管理を実施するための要求事項が導入されています。プロセスを管理することを重視し、組織は、以下を含め、適切なプロセスを計画し、実施していることを実証しなければなりません。• インプット、アウトプット、資源、管理、

基準、プロセス測定の指標など• 特定されたリスク及び機会に対応する

ために必要な取り組み(DIS9001 6.1項参照)

組織は、プロセスの管理に関する基準を特定し、これらの管理を計画通り実施していることを実証しなければならないでしょう。これらのプロセスには、製品及びサービス要求事項への適合を満たすためのものだけではなく、特定されたリスク及び機会への取り組みに対する活動に必要となるものもあります。組織はまた、プロセス(及びプロセス管理)に対する計画された変更だけでなく、意図しない、計画していない変更(DIS9001 8.5.6項参照)に対しても管理することが要求されています。意図しない変更が実施された場合は、組織は実際の、又は起こり得る悪影響を特定し、それらを軽減する取り組みを行うことを実証しなければなりません。組織は、プロセスが計画通りに実施されていること、及び製品及びサービスが要求事項に適合していることを実証するために必要な程度の文書化した情報を保持することが要求されています。これには、計画されていない変更、有害な影響、及びそれらに対してとられた取り組みの情報も含まれます。

8.2 項 – 製品及びサービスに関する要求事項の決定

8.2.1 項– 顧客とのコミュニケーションDIS9001の要求事項は、ISO9001: 2008 7.2項「顧客関連のプロセス」と類似しています。しかし、組織は、顧客に提供する製品及びサービスに対する要求事項を決定するためのプロセスが整っていることを実証しなければならないという要求事項があります。

該当する場合は、これらのプロセスが、以下の事項と関連した顧客とのコミュニケーションを含まなければならないという要求事項もあります。• 顧客の所有物の取り扱い又は処理• 緊急時対応に関する特定の要求事項さらに、組織はまた、苦情を含めた、顧客の視点及び受け止め方の情報を得るプロセスを整備しなければなりません。これは、単に「顧客からのフィードバック」を得るという現在のISO9001: 2008の要求事項とは異なるものです。これらのプロセスは文書化される必要はありませんが、組織は顧客とのコミュニケーションを図るための管理された方法が整備されていること、これらのプロセスが体系的及び一貫して実施されることを実証する必要があります。

8.2.2 項 – 製品及びサービスに関連する要求事項の決定DIS9001では、組織が、潜在顧客に提供する製品及びサービスに関する要求事項を決定するためのプロセスを実証することが要求されています。さらに、組織が提供する製品及びサービスについて組織が表明した内容を実現できるようにしなければならないという要求事項もあります。顧客要求事項を決定するためのプロセスは、文書化する必要はありませんが、組織はそれを実施するための管理方法が整備されていることを実証しなければなりません。同様に、組織は製品及びサービスについて組織が表明した内容が実現されていることを示さなければなりません。これには、顧客との直接的なコミュニケーション、製品の技術情報、マーケティング資料等での表明も含まれる可能性があります。

8.2.3 項 – 製品及びサービスに関連する要求事項のレビューこの条項には、ISO9001: 2008 7.2.1項及び7.2.2項と同等の要求事項が含まれています。DIS9001 8.2.3項の注記の中に、「要求事項」には関連する利害関係者(DIS9001 4.2項を参照)からの要求事項も含めることができることが明確になりました。組織は、製品及びサービスに関する新たな要求事項又は変更された要求事項を含め、このレビューの結果を説明した、文書化した情報を保持することが要求されています。

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8.3 項 - 製品及びサービスの設計・開発

8.3.1 項 -一般 DIS9001では、「設計及び開発」が要求される状況が明確になっています。• 組織の製品及びサービスの詳細の要

求事項が確立されていない場合• それらが、顧客又はその他の利害関係

者によって明確にされていない場合そのような状況においては、組織は設計及び開発のプロセスを確立しなければなりません。しかし、設計及び開発のプロセスは文書化する必要はなく、組織は要求事項を確立・特定するための管理方法が整備されていることを実証しなければなりません。

8.3.2 項 -設計・開発の計画DIS9001では、設計・開発の必要な段階及び管理を決定する際に、組織が以下のような事項を考慮することを要求しています。• 設計・開発活動の性質、期間及び複

雑さ• 設計・開発プロセスへの顧客及びユー

ザーグループの関与の必要性全体的に、DIS9001の要求事項は、 ISO9001: 2008 7.3.1項で規定されている内容よりも詳細に規定されており、組織は8.3.2項に示されているすべての課題を考慮に入れていることを実証する必要があります。これには、設計・開発の要求事項が満たされていることを確認するために組織が必要と判断した文書化した情報の保持が含まれています。

8.3.3 項 -設計・開発へのインプットISO9001: 2008の設計へのインプットの一般要求事項から本質的な変更はありませんが、設計へのインプットとして「以前の類似した設計から得られた情報」を含めなければならないという要求事項はなくなりました。しかし、DIS9001では、組織は以下の設計へのインプットも含めることが要求されています。• 製品及びサービスの設計・開発に必

要な内部資源及び外部資源• 製品及びサービスの性質によって起こ

り得る故障の影響要求された設計・開発のインプットが文書化されていなければならないという要求事項はありませんが、組織は、8.3.3項で要求されているすべてのインプットが、設計・開発のプロセスにおいて決定されていることを実証しなければなりません。

同様に、組織はまた、必要なインプットを特定する管理方法を整備していることを実証しなければなりません。

8.3.4 項 -設計・開発の管理この条項はISO9001: 2008 7.3.4~7.3.6項の要求事項、設計・開発のレビュー、検証、妥当性確認を合わせたものです。要求事項に重要な変更はありませんが、ISO9001: 2008にある、実行可能な場合には、製品・サービスの引き渡し又は提供の前に、妥当性確認を完了しなければならないという要求事項は削除されています。DIS9001では、設計・開発のレビューに参加すべき人についての特定の要求事項はありません(ISO9001: 2008 7.3.4「レビューの対象となっている設計・開発段階に関連する部門を代表する者が含まれていなければならない」)。

8.3.5 項 – 設計・開発からのアウトプット

DIS9001の要求事項は、ISO9001: 2008 7.3.3項と本質的には同様ですが、アウトプットには、監視及び測定の要求事項を含むか、又は参照していなければならないという要求事項があります。組織は、設計・開発プロセスの結果として生じた、文書化した情報を保持しなければなりません。

8.3.6 項 -設計・開発の変更DIS9001の要求事項は、おおむねISO9001: 2008と同様ですが、検証されなければならない設計・開発の変更(ISO9001: 2008 7.3.7項「変更を実施する前に承認しなければならない」)についての言及はなくなりました。組織は、設計・開発の変更に関する文書化した情報を保持しなければなりません。

8.4 項 – 外部から提供される製品及びサービスの管理

8.4.1 項 -一般外部から提供される製品及びサービスの管理は、供給者からの購買の場合、関連会社との契約による場合、組織のプロセス及び機能をアウトソースする場合、その他の手段による場合などの別を問わず、外部からの提供のあらゆる形態を網羅しています。DIS9001では、外部提供者のパフォーマンスを監視するための基準を定め、外部提供者の評価、パフォーマンスの監視及び再評価の結果の文書化した情報を保持することが要求されています。したがって、組織は、以下について実証しなければなりません。

• 外部提供者の評価、選択、パフォーマンスの監視、再評価に関する基準を確立する。

• この評価、監視、再評価の結果に関する文書化した情報を保持する。

8.4.2 項 -外部からの提供の管理の方式及び程度ISO9001: 2008 7.4.3項の要求事項「購買製品が規定した購買要求事項を満たしていること」を検証するための検査活動が整備されていることは、DIS9001では、「顧客に対して一貫して適合製品及びサービスを引き渡す組織の能力に悪影響を与えないこと」と変更になっています。外部提供者及び外部提供者から供給される製品及びサービスに適用されるべき管理を明確にするためのプロセスの一部として、組織は以下のことを考慮に入れるよう要求されています。• 外部から提供されるプロセス、製品及

びサービスが、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を一貫して満たす組織の能力に与える潜在的な影響

• 外部提供者によって適用される管理の、認識された有効性

これは、組織が、プロセス、製品及びサービスの外部提供者に適用するための管理の方式及び程度を決定する際に、リスクを基礎としたアプローチを採用することが要求されていることを意味しています。これについての文書化要求はありませんが、外部提供者の評価、監視、再評価の結果を文書化しなければならず(上述8.4.1を参照)、組織は、要求されているリスクをベ

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ースとしたアプローチを採用しているかどうかを実証することが求められます。

8.4.3 項 -外部提供者に対する情報DIS9001の要求事項は、ISO9001: 2008 7.4.2項の要求事項と非常に類似していますが、組織は外部提供者に以下についての情報を提供することが要求されています。• 組織の品質マネジメントシステムにど

のように影響するか• 外部提供者のパフォーマンスが、組

織によってどのように監視・管理されるか

また、組織が外部提供者に対し、要員の「力量」に適用される要求事項を伝達することを求めています。これは、ISO9001: 2008 7.4.2b)項の「要員の適格性確認に関する要求事項」を含めなければならないとしている要求事項を超えた内容となっています。

8.5 項 - 製造及びサービス提供

8.5 項 – 製造及びサービス提供の管理DIS9001での要求事項は、実質的にはISO9001: 2008 7.5.1項及び7.5.2項の要求事項の組み合わせとなっていますが、組織は以下に関連した管理が行われていることを実証しなければなりません。• 製品・サービス・プロセスの文書化し

た情報が利用できる• 明確にされたプロセス基準• 要員の力量• インフラストラクチャー、環境及び資

源の適切性主な追加点としては、DIS9001では、組織が以下を規定した文書化した情報の維持を明確に求めています。

• 実施すべきプロセス及び/又は活動• 特定の段階で実施されることが要求

されている監視及び測定• 達成すべき結果

8.5.2項 -識別及びトレーサビリティこの要求事項も、ISO9001: 2008 7.5.3項と非常に類似していますが、DIS9001では、製品よりも「プロセスからのアウトプット」が強調されています。「プロセスからのアウトプット」は、組織の顧客又は内部の顧客(次のプロセスへのインプットの受領者など)への引き渡しを準備する活動の結果です。これには、製品、サービス、中間部品、コンポーネントなどを含めることができます。

8.5.3 項 -顧客又は外部提供者の所有物これらの要求事項は、ISO9001: 2008 7.5.4項とおおむね同様ですが、組織が使用している外部提供者の所有物も対象となっています。DIS9001の注記で明確になっているように、顧客所有物の定義は、材料、コンポーネント、ツール、設備、顧客の構内、知的財産、個人情報を含めることができるよう、拡大されました。

8.5.4 項 -保存これらの要求事項も、ISO9001: 2008 7.5.5項とほぼ同様ですが、ここでも製品よりも「プロセスからのアウトプット」が強調されています。DIS9001の注記では、「保存」には、識別、取扱い、包装、保管、伝送又は輸送、及び保護を含めることができることが記載されています。組織が、製品又はサービスの一部としてデータ又は他の情報を作成もしくは電子データとして配布する場合には「伝送」を考慮する必要があります。このような場合には、組織は、情報漏えいや流出のリスクを特定し、それらを考慮したデータを保護する仕組みをもつことを実証しなければなりません。 

8.5.5 項 -引き渡し後の活動これは、引渡し後の活動は、ISO9001: 2008 7.5.1.f)項「管理された状態」で実行しなければならないという要求事項が拡大された新しい条項です。どのような引渡し後の活動が要求されるのかを決定する際に、組織は、次の事項を考慮しなければなりません。• 製品及びサービスに関連するリスク• 製品及びサービスの性質、用途、及び

意図したライフタイム• 顧客からのフィードバック• 法令・規制要求事項DIS9001の注記では、「引渡し後の活動」には、保証条項、メンテナンスサービスのような契約義務、及びリサイクル又は最終廃棄のような補助的サービスの下での活動を含めることができると示されています。組織は、引渡し後の活動に関する要求事項を決定する際には、必要に応じて、8.5.5項の上記項目を考慮したことを実証する必要があります。製品及びサービスに関連して潜在的に高いリスクがある場合(たとえば、重要保安部品など)や、製品寿命が長い場合は、このプロセスに特別な注意を払う必要があります。

8.5.6 項 -変更の管理DIS9001には、ISO9001: 2008 7.5.1項及び7.5.2項で示唆されていた要求事項が含まれています。組織は、計画していないプロセスの変更が行われた場合、製品及びサービスが規定要求事項に適合していることを確実にするために、これらの変更をレビューし、管理していることを実証しなければなりません。計画していない変更が行われた場合には、組織は以下の文書化した情報を保持しなければなりません。• 変更のレビューの結果• 変更を正式に許可した人• 必要な処置

8.6 項 -製品及びサービスのリリース用語の変更以外は、ISO9001: 2008 7.4.3項及び8.2.4項と同様の要求事項です。

8.7 項 -不適合なプロセスアウトプット、製品及びサービスの管理要求事項は、ISO9001: 2008 8.3項とおおむね同様ですが、ここでも「プロセスアウトプット」が重視されています。不適合が特定された際に組織がとるべき処置の選択肢が、より詳細になっています。さらに、不適合の処理について決定を下した人又は権限を持つ者を特定しなければなりません。手順についての要求事項はなくなりましたが、不適合を処理するためにとられた処置についての文書化した情報は保持しなければなりません。

9 項 -パフォーマンス評価 9.1 項 -監視、測定、分析及び評価

9.1.1 項 -一般 ISO9001: 2008 8.1項にある要求事項「必要となる監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、実施しなければならない」は、「組織は、何をどのようにいつ監視、測定しなければならないかを計画しなければならない」という要求事項と置き換えられました。• 必要とされる監視及び測定の対象• 該当する場合には、必ず、妥当な結果

を確実にするための、監視、測定、分析及び評価の方法

• 監視及び測定の実施時期• 監視及び測定の結果の、分析及び評

価の時期組織は、監視及び測定の活動結果の証拠として、文書化した情報を保持することも要求されています。

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9.1.2項 -顧客満足DIS9001は、組織並びに製品及びサービスについての顧客の考え方についての積極的な情報収集を要求しています。この情報を文書化しなければならないという特定の要求事項はありませんが、組織が製品及びサービスのみならず、組織自体についての顧客の受け止め方の情報を積極的に追及していることを実証しなければなりません。また、この情報の入手及び使用の方法を示さなければなりません。DIS9001の注記では、顧客の考え方に関する情報には、顧客満足度調査又は意見調査、引き渡された製品又はサービスの品質に関する顧客からのデータ、市場シェア分析、顧客からの賛辞、補償請求などを含めることができると明記されています。

9.1.3 項 -分析及び評価DIS9001の要求事項は、ISO9001: 2008 8.4項にある要求事項と類似していますが、データの分析及び評価の方法に関連した要求事項が規定されました。組織はデータ(監視、測定、及びその他の情報源)の分析だけではなく、「評価」を実証する必要があり、データ分析結果をどのように認識したかについての証拠が必要になります。この分析及び評価は文書化が要求されていませんが、分析及び評価の結果はマネジメントレビューへのインプットを提供するために使用されなければなりません。したがって、組織が評価及び分析した証拠は、これらのレビュー(DIS9001 9.3項参照)に関連して保持される文書化した情報にて示されることもあります。

9.2 項 -内部監査要求事項は、ISO9001: 2008から大きな変更はありませんが、DIS9001では、組織が監査プログラムを計画する際に、以下のことを考慮することを実証するよう、要求されています。• 品質目標• 顧客からのフィードバック• 組織に影響を及ぼす変更

さらに、監査結果を組織内の関連する管理層に報告しなければならないという要求事項があります。これについては、マネジメントレビューのインプットにも同様の要求事項があります。文書化された手順は、要求されなくなりましたが、監査プログラムの実施及び監査結果の証拠として、文書化した情報を保持しなければなりません。

9.1.2 項 -マネジメントレビューISO9001: 2008 5.6項にあるマネジメントレビュープロセスの主要な要求事項はそのまま存在していますが、以下を含むマネジメントレビューへの「インプット」も実証しなければなりません。• 戦略的な方向性を含めた、品質マネジ

メントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化

• 外部提供者に関する課題• 利害関係者に関する課題• 品質マネジメントシステムのための資

源の妥当性• リスク及び機会に取り組むためにとっ

た処置の有効性組織の状況、リスク及び機会への取り組みに関する新しいDIS9001の要求事項は、マネジメントレビューへのインプットの追加事項に反映されています。組織は、より広く捉えられることとなった組織の課題がレビュープロセスに統合されることを実証する必要があります。現在のISO9001: 2008のインプット要求事項の限定された考慮事項では十分ではなく、全体的な品質マネジメントシステムのパフォーマンスがどのように戦略的な方向性及び組織の事業環境に関連しているかを取り扱うことを実証する必要があります。組織は、マネジメントレビューの結果の証拠として、文書化した情報を保持することが要求されています。

10 項 -改善

10.1 項 -一般これは、新しいセクションで、顧客要求事項を満たし、顧客満足を向上させるために、品質マネジメントシステムの結果、並びにプロセス、製品及びサービスを改善させるための一般的に求められる内容を規定しています。組織は、品質マネジメントシステムのパフォーマンス並びにプロセス、製品及びサービスを改善する機会を積極的に模索していることを実証しなければなりません。

10.2 項 -不適合及び是正処置「予防処置」についての言及はなくなりましたが、これらの要求事項は、ISO9001: 2008 8.5項にある要求事項と類似しています。しかし、DIS9001には、不適合が起こった 「結果」に対応するための追加要求事項がありますが、組織が目的を達成する上で、品質マネジメントシステムのすべてのプロセスが同レベルのリスク又は機会をもつとは限らず、プロセス、システム、製品及び/又はサービスに関連する不備や不適合の結果は、どの組織でも同様ではありません。不適合の結果(コンポーネントプロセス及び活動を含む)にどのように対処するかを決定する際、組織は関連するリスクの種類とレベルを考慮していることを実証する必要があります。また、特定された不適合が、潜在的な可能性を含め、組織のプロセス、製品、サービス及び/又はシステム内のいずれかに存在しているか否かを決定するための新たな要求事項があります。これは、予防処置として以前含まれていた内容を網羅しています。DIS9001の注記では、場合によって、不適合の原因を除去することが不可能なことがあること、とられた是正処置は再発の可能性を許容できるレベルまで軽減することができることが明記されています。文書化された手順は要求されていませんが、組織は不適合の性質及びとった処置、並びに是正処置の結果について文書化した情報を保持することが要求されています。

10.3 項 -継続的改善DIS9001の要求事項は、おおむねISO9001: 2008(4.1項及び8.5.1項)と同様ですが、組織はまた、期待した成果が出ていない分野及び改善の機会を特定するために、分析、評価、及びマネジメントレビューからのアウトプットを使用することを実証することが要求されています。さらにもうひとつ、新たな要求事項として、組織は、成果が十分に出ていない原因を調査し、継続的改善を支援するためのツール及び方法を決定しなければならないという要求事項があります。

組織は、顧客がどのように組織並びにその製品及びサービスを考えているかということに関連した情報を積極的に収集しなければなりません。

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V. 結論本書の最初でも述べましたが、現在の改正プロセスはDIS9001の段階です。今後、品質マネジメントシステムの改版(FDIS)が発行された後、最終版(IS)が発行されることになります。本書で概説した要求事項のすべてが最終版で採用されるとは限りませんが、導入されるであろう重要な変更点を本文で述べていますので、組織は、当該変更が組織及び品質マネジメントシステムにどのような影響を与えるかを考慮することが望まれます。しかし、既存のマニュアル及び手順書を一掃しなければならないということではありません。組織の既存の運用手順書、作業手順書、フローチャート、プロセスマップ等はすべて文書化した情報の例であり、現行の品質マニュアルや文書化された手順を廃止する必要はありません。組織の考えで、これらを維持することができます。同様に、DIS9001の構造に合わせるために、既存のマニュアル又は手順書の構成や項目名、また、条項番号を見直す必要はありません。多くの場合、数年にわたり品質マネジメントシステムを運用してきた組織は、経験によって築き上げられた既存の文書やプロセスの管理に慣れており、それらが効果的であれば、それを排除したり、差し替えたりする必要はありません。すべての組織にとって重要なことは、改正版のすべての要求事項に適合することです。すべての要求事項に適合しているのであれば、品質マネジメントシステムの構成や文書類のあり方は適合とは無関係です。個々の組織への影響は、現行の品質マネジメントシステムがDIS9001の要求事項を満たしている程度によって異なります。このため、DIS段階において、各組織は改正された要求事項に適合する上で、取り組む必要がある事項を洗い出し、対応を計画することが推奨されます。品質マネジメントシステムの要求事項への対応を検討するとともに、この評価には、

組織の要員に要求される教育訓練又は再教育の程度を考慮する必要があります。組織はまた、既存の品質マネジメントシステムが、必要とされる文書化した情報を網羅しているかを検討する必要があります。システムの見直しを模索している組織にとっては、附属書SLから採用され、DIS9001

に導入されている以下のような組織に関わる主要な要素から検討するとよいでしょう。• 組織の状況• 利害関係者• 組織の品質マネジメントシステムに関

連したリスク及び機会

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VII. 改正に向けて、SGSがご提供するソリューション世界最大級の認証機関・教育訓練機関として、SGSでは、移行に関わる様々なソリューションをご提供しています。

附属書SL研修新しい枠組みとして、上位構造を理解し、他のマネジメントシステムとの統合がいかに効果的になるかを理解するためのコースです。

ISO/DIS9001: 2015研修改正版で提案されている変更点をご紹介し、既存システムにどのような影響があるのかを理解していただくコースです。

リスクを基礎とした考え方の研修このコースは、リスク及び機会の特定をサポートする原則や、それらに対応するために必要な様々な技術・方法を網羅しています。

リーダーシップの開発品質、環境、労働安全衛生の役割を担う上で必要とされるリーダーシップのスキルを習得できるようなワークショップが含まれています。

ギャップ分析スムーズな移行をサポートするため、改正版とのギャップ分析を実施します。既存の仕組みとDIS9001の要求事項とのギャップを特定するもので、移行に向けて実施すべき事項が明確になります。

VI. 改正スケジュールDIS9001は2014年5月に発行され、利害関係者よりISO委員会(ISO/TC 176/SC 2/WG 24)に対してコメントが提示されました。これらのコメントは、委員会にてレビューされ、改正版の可否について投票が行われます。このプロセスを経て、最終国際案(FDIS)が策定されます。現在予測されているスケジュールは以下の通りです。DIS9001は2014年5月に発行され、ISO委員会に対する内容に関するコメントが募集されました(ISO/TC 176/SC 2/WG 24)。これらのコメントは、委員会によってレビューされ、受け入れるか拒否するかについての投票が行われます。このプロセスの結果は、最終国際案(FDIS)のベースとなります。

ISO9001: 2015が発行されたら、 ISO9001: 2008の認証を取得している組織は、3年間で新しい版に移行しなければなりません。この3年間の期間は、2018年9月末と予想されています。

2014年5月 DIS9001発行

2015年7月 FDIS9001発行予定

2015年9月 ISO9001改正版発行予定

2015 2016 2017 20182014

移行期間(2018年9月末までの予定)

各種トレーニングに関するお問い合わせは、[email protected]までお気軽にお問い合わせください。

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著者のご紹介Chris Trott Global Technical Manager, Global Product Manager ISO 9001: 2015, SGS

品質保証及び品質マネジメントシステムの分野において、20年以上の審査・トレーニング経験を有する。現在、SGSのグローバルテクニカルマネージャーとして、認定対応を含む、システムの導入や維持管理を担当している。また、ISO9001改正対応に関しては、SGSの技術サイドの責任者として活動している。

著作権について本ドキュメントに含まれている情報は、発行日時点での SGS SA および SGS ジャパンの見解を示しています。状況の変化等により、発行日以降の本内容についての正確性については保証いたしかねます。また、本ホワイトペーパーは情報提供の目的で作成されており、それ以外に保証、表明を行うものではありません。著作権法により認められる場合を除き、事前の SGS の書面による許可なしに、本ホワイトペーパーの複製、転載等の行為は著作権法により禁止されています。ANY REPRODUCTION, ADAPTATION OR TRANSLATION OF THIS DOCUMENT WITHOUT PRIOR WRITTEN PERMISSION IS PROHIBITED, EXCEPT AS ALLOWED UNDER THE COPYRIGHT LAWS. © SGS SA 2015. ALL RIGHTS RESERVED.

SGS についてSGSは、世界最大級の検査・検証・試験・認証機関です。SGSは、品質及び高潔性の基準として、世界的に認められています。80,000名以上の従業員を擁するSGSは、1,650ヶ所を超えるオフィスとラボのネットワークをグローバルで運営し、お客様や社会のニーズに応える、市場をリードするサービスをご提供しています。SGSは、大規模かつ多国間にまたがるプロジェクトを成功に導いてきました。現地の言語、文化を理解し、一貫性を持ち、確実かつ効果的にグローバルで活動しています。

ISO9001:2015への移行に関するお問い合わせは、[email protected] までお気軽にお問い合わせください。

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