d 1r1 kantum 1310lfw - e.x.pressex-press.jp/wp-content/uploads/2014/02/0014wn03.pdf14 2013.9 laser...

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2013.9 Laser Focus World Japan 14 2つの異なる直交多重化技術の組み 合わせは通信容量を劇的に増大させる 可能性を持つ。それを、米南カリフォ ルニア大学、イスラエルのテルアビブ 大学、米ジェット推進研究所、スコッ トランドのグラスゴー大学の研究者た ちは正確に実証した。すなわち、彼ら は軌道角運動量( OAM )を使ったモー ド分割多重と波長分割多重 (WDM)を 組み合わせて毎秒100テラビット(Tbit/ s )以上の通信容量を達成した (1) OAM モード分割多重 波面内に方位角に依存するらせん状 の位相項を含み、「ドーナツ形」のリン グ状強度プロフィルをもつレーザビー ムは OAM モードと呼ばれている。正 と負(それぞれ時計回りと反時計まわ りの位相回転)の異なるOAM値を持 ち、異なる偏光状態さえ持つ、多数の 空間的にコロケーションされたOAM モードは、モード分割多重を通して同時 に多重化され、複数の独立なデータチ ャンネルを同一波長で伝送する(図1)。 この大容量通信デモンストレーショ ンにおいて、研究者たちは特別に設計 されたらせん状位相パターンをもつ光 空間変調器( SLM )を使って、ガウシア ン入力からの3つのビームOAM+4、 OAM+10、および OAM+16 の重ね合わ せを発生させた。第2の SLM は、重合 せOAM+7、OAM+13、およびOAM+ 19ビームを生成した。次に、これら6 本のOAMビームを2つの同一コピー に分割した。1つはミラーを使って一 定の時間フレームによって反射させた ものであり、もう1つの 6 本の OAM ビ ームはこの最初のコピーから遅延生成 したもので、反対の OAM 値をもつ。最 終的に、第2段階からの12本のOAM ビームを再度 2 つのコピーに分割した。 その一つは他のコピーに対して遅延 し、直交する偏光に調整した。これら の2つのコピーを偏光ビームスプリッ タで結合し、24 本の OAM ビーム(そ れぞれxとy偏光状態にあるOAM± 4、±7、±10、±13、±16、±19)を 得た。 さらに WDM を加える WDM送信器は、アレイ導波路グレ ーティングによって同時に多重化され た1536.34~1568.50nmの波長範囲で 100GHz間隔の42本のレーザを持つ。 これらのチャンネルは変調され、100 ギガビット / 秒( Gb/s )の四位相シフト キーイング( QPSK )データを各 WDM チャンネル上で実現する。 24 の OAM モードはそれぞれ 42 本の レーザ(それぞれが 100Gb/s )で多重化 され、総計( 24×42×100 )通信容量は 100.8Tbit/sに達した。逆多重化され たチャンネルで測定されたデータから、 波長クロストークに対する光SN比ペ ナルティとして約0.4dBを得た。OAM クロストークは 3.8×10 -3 のビット誤り 率で約 1.8dB であった。 USC のアラン・ウィルナー( Alan Will- ner)教授は、「これらの結果は、OAM 多重が WDM と両立可能であることを 示している。これらは同時に組み合わ せることで、特に、比較的に短い距離 で大容量または高スペクトル効率を必 要とする状況での光データリンクの容 量を潜在的に改善する。光通信に対す るOAMの利用は未熟な分野だ。多数 の挑戦が残っているが、その可能性は 実に刺激的だ」と語っている。 ( Gail Overton ) 100Tbit/sに達したOAM多重プラスWDM 光通信 world news 参考文献 (1) Hao Huang et al., "100 Tbit/s Free-Space Data Link using Orbital Angular Momentum Mode Division Multiplexing Combined with Wavelength Division Multiplexing," 2 0 1 3 OFC/NFOEC conference paper OTh4G.5 (March 21, 2013) . LFWJ (a) (b) Data 1 OAM +I1 1波長での MUXed OAMモード 1波長での MUXed OAMモード OAMモード OAM +I3 I 1 OAM +I2 MDM WDM ガウシアン Data 2 位相パターン ガウシアン Data 3 λ 1 λ 1 λ 2 λ 3 ガウシアン I 2 I 3 OAMモード 周波数 I 1 I 2 I 3 λ 2 λ 3 図1 軌道角運動量 ( OAM )を使 っ たモ ード分割多重では、 らせん状の位相パタ ーンがガウスモード をリング状強度プロ ファイルの OAM モー ドに変換する(a)。多 重化(MUXed)OAM モードは1群の同心 円リングを形成し、 これらはさらに波長 分割多重(WDM)を 使って多重化され (b )、m×nの独立デ ータチャネルを提供 する。(資 料 提 供: USC )

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Page 1: D 1R1 kantum 1310LFW - e.x.pressex-press.jp/wp-content/uploads/2014/02/0014wn03.pdf14 2013.9 Laser Focus World Japan 2つの異なる直交多重化技術の組み 合わせは通信容量を劇的に増大させる

2013.9 Laser Focus World Japan14

 2つの異なる直交多重化技術の組み合わせは通信容量を劇的に増大させる可能性を持つ。それを、米南カリフォルニア大学、イスラエルのテルアビブ大学、米ジェット推進研究所、スコットランドのグラスゴー大学の研究者たちは正確に実証した。すなわち、彼らは軌道角運動量(OAM)を使ったモード分割多重と波長分割多重 (WDM)を組み合わせて毎秒100テラビット(Tbit/s)以上の通信容量を達成した(1)。

OAMモード分割多重 波面内に方位角に依存するらせん状の位相項を含み、「ドーナツ形」のリング状強度プロフィルをもつレーザビームはOAMモードと呼ばれている。正と負(それぞれ時計回りと反時計まわりの位相回転)の異なるOAM値を持ち、異なる偏光状態さえ持つ、多数の空間的にコロケーションされたOAMモードは、モード分割多重を通して同時に多重化され、複数の独立なデータチャンネルを同一波長で伝送する(図1)。 この大容量通信デモンストレーションにおいて、研究者たちは特別に設計されたらせん状位相パターンをもつ光空間変調器(SLM)を使って、ガウシアン入力からの3つのビームOAM+4、OAM+10、およびOAM+16の重ね合わせを発生させた。第2のSLMは、重合せOAM+7、OAM+13、およびOAM+ 19ビームを生成した。次に、これら6本のOAMビームを2つの同一コピーに分割した。1つはミラーを使って一定の時間フレームによって反射させたものであり、もう1つの6本のOAMビームはこの最初のコピーから遅延生成したもので、反対のOAM値をもつ。最

終的に、第2段階からの12本のOAMビームを再度2つのコピーに分割した。その一つは他のコピーに対して遅延し、直交する偏光に調整した。これらの2つのコピーを偏光ビームスプリッタで結合し、24本のOAMビーム(それぞれxとy偏光状態にあるOAM±4、±7、±10、±13、±16、±19)を得た。

さらにWDMを加える WDM送信器は、アレイ導波路グレーティングによって同時に多重化された1536.34~1568.50nmの波長範囲で100GHz間隔の42本のレーザを持つ。これらのチャンネルは変調され、100ギガビット/秒(Gb/s)の四位相シフトキーイング(QPSK)データを各WDMチャンネル上で実現する。 24のOAMモードはそれぞれ42本の

レーザ(それぞれが100Gb/s)で多重化され、総計(24×42×100)通信容量は100.8Tbit/sに達した。逆多重化されたチャンネルで測定されたデータから、波長クロストークに対する光SN比ペナルティとして約0.4dBを得た。OAMクロストークは3.8×10-3のビット誤り率で約1.8dBであった。 USCのアラン・ウィルナー(Alan Will-ner)教授は、「これらの結果は、OAM多重がWDMと両立可能であることを示している。これらは同時に組み合わせることで、特に、比較的に短い距離で大容量または高スペクトル効率を必要とする状況での光データリンクの容量を潜在的に改善する。光通信に対するOAMの利用は未熟な分野だ。多数の挑戦が残っているが、その可能性は実に刺激的だ」と語っている。

(Gail Overton)

100Tbit/sに達したOAM多重プラスWDM

光通信world news

参考文献(1) Hao Huang et al., "100 Tbit/s Free-Space Data Link using Orbital Angular Mo men tum

Mode Division Multiplexing Com bined with Wavelength Division Multi plexing," 2013 OFC/NFOEC conference paper OTh4G.5 (March 21, 2013).

LFWJ

(a)

(b)

Data 1 OAM +I1

1波長でのMUXed OAMモード

1波長でのMUXed OAMモード

OAMモード

OAM +I3I1

OAM +I2

MDM

WDM

ガウシアン

Data 2

位相パターン

ガウシアン

Data 3

λ1

λ1

λ2

λ3

ガウシアン

I2 I3

OAMモード

周波数

I1 I2 I3

λ2

λ3

図1 軌道角運動量(OAM)を使ったモード分割多重では、らせん状の位相パターンがガウスモードをリング状強度プロファイルのOAMモードに変換する(a)。多重化(MUXed)OAMモードは1群の同心円リングを形成し、これらはさらに波長分割多重(WDM)を使って多重化され(b)、m×nの独立データチャネルを提供する。(資料提供:USC)