d.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...d-4 4.5...

23
D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社団法人電線総合技術センター)

Upload: others

Post on 28-May-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査

(社団法人電線総合技術センター)

Page 2: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

目 次 1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-1 2.目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-1 3.内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-1 4.廃光ファイバケーブルの解体・分別技術の開発 ・・・・・・・・・・・・ D-2 4.1 石英ガラスコアの生産状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-2 4.2 廃光ファイバケーブルの排出状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・ D-2 4.3 廃光ファイバケーブルの収集 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-3 4.4 廃光ファイバケーブルの種類と石英ガラスコア回収比率の見積もり ・ D-3 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 ・・・・・・・・・・・・・・・ D-4 (1) 従来の解体分別法と問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-4 (2) 熱分解装置による解体(予備試験) ・・・・・・・・・・・・・・ D-4 (3) 熱分解装置による解体・分別 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-5 (4) 石英ガラスコア回収比率の向上 ・・・・・・・・・・・・・・・・ D-7

5.半導体石英部品の再生品試作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-7 5.1 脱炭処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-7 5.2 残渣除去 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-9 5.3 溶融処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-13 5.4 半導体製造装置部品の試作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-14 5.5 品質評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-14 5.6 その他の溶融方法の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-15

6.社会受容性調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-17 7.エコプロダクト2003への ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-18 8.経済性検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-19

9.まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-20

10.今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D-20

Page 3: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-1

1.はじめに

近年、通信環境の大きな変化により従来のメタルケーブルに代わって光ファイバケーブ

ルが急速に普及しつつあり、これによって撤去などにより廃棄される使用済み光ファイバ

ケーブル(以下、廃光ファイバケーブルという)も急速に増加する見通しである。廃光フ

ァイバケーブルのリサイクルについては被覆材のポリエチレン等をリサイクルすることが

行われているのみで、多くのエネルギーを使用して高純度化された合成石英により構成さ

れた光ファイバケーブルの信号を伝達する部分であるガラスコア(以下、石英ガラスコア

という)は被覆材と一緒に埋立処分かセメント材料として再利用されているのが現状であ

る。 一方、例えば半導体産業に使用されている装置・治工具は高純度の天然石英ガラス、も

しくは合成石英ガラスにより構成されている。これらの装置・治工具は高価な消耗品であ

り破損等が発生した場合は修理または廃棄されている。装置・治工具を新規に製造したり

修理するには、多くのエネルギーを使用して製造された高純度の天然石英ガラスもしくは

合成石英ガラスを使用する必要がある。高純度の合成石英ガラスを必要とする市場として

は半導体産業の他に、生化学やナノテクノロジーなどがある。 本事業は上記2つの問題点を同時に解決することを図ることであり、具体的には廃光フ

ァイバから石英ガラスコアを取り出し、溶解のうえ再度高純度合成石英ガラス部品として

高純度石英ガラスを必要とする市場へ供給することである。 2.目的

廃光ファイバケーブルの解体・分別技術の開発を行うとともに、石英ガラスコアを利用

して半導体製造装置の部品(再生品)の試作を行う。また、品質評価、半導体集積回路業

界の需要調査、さらには試作品等の展示会による普及啓発の実施等を行うことにより廃光

ファイバケーブルおよび石英ガラスコアの用途開発・拡大を図り、このリサイクル事業の

拡大および新規市場での流通拡大を目的とする。 3.内容

本事業では、次の内容について調査検討を行った。 (1)廃光ファイバケーブルの解体・分別技術の開発 ・廃光ファイバケーブルの収集 ・廃光ファイバケーブルの解体、分別 (2)半導体石英部品の再生品試作 ・半導体石英部品の再生試作 ・品質評価 ・社会受容性調査

Page 4: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-2

4.廃光ファイバケーブルの解体・分別技術の開発

4.1 石英ガラスコアの生産状況

光ファイバケーブルは1980年代末から本格的な実線路への適用がはじまり、特に2

000年からは通信環境の変化によって生産量が急速に増加している。図1に社団法人日

本電線工業会の生産量統計を示す。統計値は生産された石英ガラスコアの長さであるキロ

メートル・コア(kmc)により示されている。1本の光ファイバケーブルには4本(引

き込み用)~1000本以上(幹線用)の石英ガラスコアが使用されている。石英ガラス

コア重量は百万 kmcで約27トンである。

4.2 廃光ファイバケーブルの排出状況

廃光ファイバケーブルの排出状況について排出者別に聞き取り調査を行った。結果を表

1に示す。現状では NTT および通信会社が圧倒的に多い。光ファイバケーブル製造会社か

ら排出される工程屑も相当量あると推定される。

表1 廃光ファイバケーブルの排出状況 廃ファイバケーブル

発生元年間排出量 再利用の現状 調査先

NTTおよび通信会社 現状 1000トン10年後 10000トン

セメント材料以外の高度リサイクルを期待してストック

NTT・情報流通基盤総合研究室・環境推進室・サービス運営部技術協力センター

電力会社 不明 リサイクル技術待 東京電力 資材部光ファイバケーブル製造会社

製造ロス 1%として数百トン

産廃として廃棄 アンケート調査による年間発生量:ガラスコア生産量から推計

0000

5555

10101010

15151515

20202020

1987

1987

1987

1987

1988

1988

1988

1988

1989

1989

1989

1989

1990

1990

1990

1990

1991

1991

1991

1991

1992

1992

1992

1992

1993

1993

1993

1993

1994

1994

1994

1994

1995

1995

1995

1995

1996

1996

1996

1996

1997

1997

1997

1997

1998

1998

1998

1998

1999

1999

1999

1999

2000

2000

2000

2000

2001

2001

2001

2001

2002

2002

2002

2002

2003

2003

2003

2003

年度年度年度年度

百万

百万

百万

百万

㎞㎞ ㎞㎞cc cc

出典出典出典出典::::日本電線工業会日本電線工業会日本電線工業会日本電線工業会

図1 石英ガラスコアの製造量

Page 5: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-3

廃光ファイバケーブルは現状、埋立または焼却処分もしくはセメント材料などに再利用

されているが、発生元によっては石英ガラスコアの高度な再利用方法の開発を待ってスト

ックしている。 4.3 廃光ファイバケーブルの収集

本事業の調査検討に使用した廃光ファイバケーブルは、NTTより排出された物を回収

業者を通して収集した物である。従来、メタルケーブルは10~30年で引き替えられて

きたが、収集された廃光ファイバケーブルの製造年次を確認すると2002~03年の物

も含まれる。これは光ファイバケーブルを収容する線路を新設するよりも性能が向上した

新しい光ファイバケーブルに引き替えた方がコスト的に有利であるためと考えられる。 4.4 廃光ファイバケーブルの種類と石英ガラスコア回収比率の見積もり

収集した廃光ファイバケーブルの代表的な形状および石英ガラスコア含有率を図2に示

す。図2は使用されている光ファイバケーブルの1例であり、各社ならびに製造年次によ

り形状は異なる。回収業者への聞き込みから実際に排出される廃光ファイバケーブルは①

②③が主流を占める。従って所定量の廃光ファイバケーブルを解体処理して回収される石

英ガラスコアの比率(以下、石英ガラスコア回収比率という)は約1%といえる。

図2 調査検討に使用した廃光ファイバケーブルの種類例

Page 6: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-4

4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別

(1)従来の解体分別法と問題点

従来の電気ケーブルの解体・分別法はケーブルの外皮を機械的にはぎ取る剥線法(図3)

や人手による手選別である。この方法で廃光ファイバケーブルを石英ガラスコアを保護す

る1次被覆層が付いた状態まで分別解体するためには20~60分/10kg/3名の工数が必要である1)。さらに石英ガラスコア上の1次被覆を手作業にて除去したところ、12

時間/0.6g/1名の工数を必要とし実用的でないことが判明した。 機械的な除去方法としての剥線機は改良されたものが開発されているが、特定の品種の

みを処理するもので汎用性がない。

図3 剥線機による解体 (2)熱分解装置による解体(予備試験)

前記のような被覆除去の問題に対し、元々ケーブルの被覆樹脂を油として回収する目的

の熱分解装置を残渣として石英ガラスコアを取り出すことを目的に検討することとした。

少量の廃光ファイバケーブルを熱分解処理を行ったところ良好な結果を得た。予備試験で

被覆が分解されて石英ガラスコアが簡単に取り出せた様子を図4~6に示す。炭化した被

覆を払うことで内部の廃光ケーブルから石英ガラスコアを簡単に解体分別することができ

た。

図4 廃光ファイバケーブル 図5 熱分解処理後の廃光ファイバケーブル

Page 7: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-5

(3)熱分解装置による解体・分別

熱分解とは一般的に酸素が遮断された内圧開放容器中に、被分解物としての有機物を投

入し、温度を上昇させ、目的物としてのガスや油分を取り出す工程である。被分解物であ

る各種有機物(ここでは光ファイバケーブルの被覆材料)は種類により約200~350℃

の固有の分解温度を持ち、生成するガスや油分の生成温度、性質も多岐にわたるため通常

は投入される被分解物を予め分別し、ガス・油分収率の最適化と、期待されない副生成物

の低減を図る温度条件を設定する。 しかし光ファイバケーブルは各種の物質で構成されており、目的物は熱分解しない石英

ガラスコアであることから温度を高めに設定し、廃光ファイバケーブルの被覆材を極力熱

分解後、石英ガラスコアを取り出しやすくするために高温で乾燥するといった一般的な運

転条件とは異なった温度設定で運転を行った。また、期待されない副生成物はアフターバ

ーナーにより処理できる装置を選定した。実規模装置の外観を図7に示す。

図6 取り出された石英ガラスコア(煤がついている状態)

図7 熱分解装置外観

Page 8: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-6

本装置を使用してNTTより排出された廃光ファイバケーブルをSUSメッシュで包み

前記装置で最高温度600℃×10時間の条件で熱分解処理したところ、廃光ファイバケ

ーブルの被覆材だけが分解し、石英ガラスコアを容易に解体分別することができた。表2

に本調査で実施した熱分解の結果を示す。図 8-1、図 8-2 は表2の№1-6 を熱分解して

いる様子である。図 8-1 は熱分解処理前でSUSメッシュをかける前、図 8-2 は熱分解

後の取り出し時で、図 8-2の白く見えている部分は熱分解されなかった Metal Wire、黒く

見えている部分が未分解被覆材である煤がついた状態の石英ガラスコアである。表2から

煤などが石英ガラスコアに対して10倍以上あり、石英ガラスコアを取り出すためにはこ

れらを除去する必要のあることがわかる。

各種廃光ファイバケーブルの被覆材を熱分解処理すると篩い分け作業で石英ガラスコア

を取り出すことが確認できた。また熱分解工程以降の石英ガラスコアの取扱について、丸

めて保管するなど一度でも石英ガラスコア同士を絡ませてしまうと以降の処理に大きな支

ロット№ №1-1 №1-2 №1-3 №1-4 №1-5 №1-6内容 ①~⑥はサンプルの種類(サンプル図2)と構成比率

①100% ④ 50%⑤ 50%

④100% ① 30%④ 70%

②100% ③100%

熱分解装置への投入量 184㎏ 191㎏ 200㎏ 248㎏ 141㎏ 247㎏未分解量     [注1] 101㎏ 89㎏ 121㎏ 171㎏ 22.3㎏ 133㎏石英ガラスコア  [注2] 2.79㎏ 2.67㎏ 0.01㎏ 1.14㎏ 2.45㎏ 1.53㎏

ロット№ №2-1 №2-2 №3-1 №3-2内容 ①~⑥はサンプルの種類(サンプル図)と構成比率

①100% ③ 80%⑥ 20%

①10%②80%⑥10%

② 20%③ 80%

熱分解装置への投入量 216㎏ 217㎏ 116㎏ 84.7未分解量     [注1] 126㎏ 111㎏ 74.8㎏ 39.5㎏石英ガラスコア  [注2] 3.28㎏ 3.05㎏ 2.32㎏ 0.71㎏

注1: 熱分解装置で分解されたなかった金属および煤の合計

注2: 石英ガラスコア収量計算値 (熱分解装置投入量)×(ファイバ含有率)

表2 熱分解の結果

図 8-1 熱分解前 図 8-2 熱分解後

注1: 熱分解装置で分解されたなかった金属および煤の合計注2: 石英ガラスコア収量計算値 (熱分解装置投入量)×(ファイバ含有率)

Page 9: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-7

障が出ることが判明した。 (4)石英ガラスコア回収比率の向上

解体分別は前記の通り廃光ファイバケーブルを熱分解する方法で検討したが石英ガラス

コア回収比率が1%と低い。よって石英ガラスコア回収比率向上を図るため1次被覆が付

いた状態の石英ガラスコアを廃光ファイバケーブルから引き抜き(以下、引き抜き処理と

いう)、熱分解処理の対象とする方法を採用することとした。 5.半導体石英部品の再生品試作

5.1 脱炭処理

熱分解装置で被覆を除去した石英ガラスコアには大量の煤状物質が付着していた。これ

は炭化水素を主成分とする被覆材が無酸素もしくは低酸素状態で加熱されたため炭素を主

成分とした煤が残留している物と考えられる。よってこれを有酸素中で加熱(脱炭処理)

すれば煤は除去出来ることが想定された。

(1)少量試験(ⅰ) 煤状物質が付着した熱分解後の石英ガラスコアのうち表2№1-1と№1-2を少量取り、

加熱用容器に試料を入れ、図 9-1の電気オーブンに投入し大気中にて約1000℃×5時

間加熱したところ、図 9-2、図 9-3のように煤を除去することができた。このサンプルを

観察すると微少な粒子が観察されたため分析を行ったところ、被覆材に一般的に含有され

る元素が検出された(表3)。特に№1-2 は半導体用途では禁忌物質である Na、K を多く

含有しており高純度品としての用途には十分な洗浄が必要であることが判明した。

また、石英ガラスコアにはゲルマニウムが添加されている場合がある。表3では検出さ

れなかったが、本分析で使用している手法ではゲルマニウムとナトリウムの識別が難しい

場合があり、表3のロット№1-2 ではナトリウムの量が多いためにゲルマニウムがマスキ

ングされている可能性がある。

表3 残渣の分析結果例

ロット№1-1 ロット№1-2Zn 18 Ti 320 Zn 10 Ti 42Ni < 1 Ca 10 Ni < 1 Ca 12Fe 10 Al 7.9 Fe 15 Al 10Cr < 1 Na < 1 Cr 2.0 Na 1500Mg 180 Li < 2.5 Mg 450 Li 2.7Cu < 1 K < 2.5 Cu 2.4 K 64

(プラズマ発光、原子吸光、EPMA による 単位 ppm)

Page 10: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-8

(2)少量試験(ⅱ) 一般的に不純物として含まるナトリウムイオンは石英ガラス格子より小さいため700

~800℃以上でガラス中に大きく拡散するようになるとされている。少量試験(ⅰ)で

ナトリウムの含有が確認されたため、脱炭処理温度はなるべく低い温度かつ短時間で行わ

れることが望ましい。脱炭に必要な最短時間かつ最低温度を確認するため、温度と時間を

変化させて少量試験(ⅰ)と同様に試験した。目視で図 10-1 のサンプルが図 10-2 のレ

ベルとなるまで脱炭される時間を確認をしたところ、500℃×3時間がもっともふさわ

しいことが判明した(表4)。

この実験で、サンプルの束が大きいと内部が脱炭せずに黒く残ることが判明したためス

ケールアップ時には炉内の換気が十分である装置を使用する必要があることがわかった。

図 9-1 電気オーブン 図 9-2 サンプル投入 図9-3 処理後サンプル

温度 1時間 2時間 3時間 6時間

300℃ × × × ×

400℃ × × × ×~△

500℃ × △~○ ○ ――

600℃ △ ○ ―― ――

1000℃ ○ ○ ―― ――

表4 脱炭条件の設定

図 10-1 脱炭前 図 10-2 脱炭後

Page 11: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-9

(3)脱炭処理(スケールアップ) 熱分解後、煤払いをした石英ガラスコア約2㎏をSUS金網に包み、当センター保有の

燃焼試験装置(図 11-3)を用いて500℃×3時間、換気量220m3/分に設定し脱炭を行ったところ炭素を除去することができた(図 11-1、図 11-2)。

5.2 残渣除去

(1)残渣ふるい落とし 少量試験(ⅰ)で観察された石英ガラスコア上の白い粉を除去するために10時間以上

の水洗が必要であることが判明した。この白い粉は廃光ファイバケーブルへ難燃性を付与 するために被覆材へ配合された金属水酸化物(水酸化マグネシウムなど)が大気中での加

熱処理で酸化物となって残留し、水と反応物(水和物など)を生成し石英ガラスコア上に

沈着したと考えられた。 従って、白い粉を水洗前に極力十分払い落とすことが必要となる。石英ガラスコアは長

いため一般の篩には入らないこと、一旦お互いに絡まると取扱が困難になることから、長

く伸べたまま処理する必要がある。このために図 12 に示すような回転式ふるいを考案し使

用したところ十分な効果が認められた。

図 11-1 脱炭処理前 図 11-2 脱炭処理後

図 11-3 燃焼試験装置

Page 12: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-10

(2)1次洗浄(水洗浄) 1次洗浄は残留した不純物(白い粉)を除去することが主な目的である。当初は前項で

作成した回転式ふるいを水中へ浸漬し、超音波洗浄することを試みた(図 13-1)が、束に

なった石英ガラスコア繊維の中心部分が洗浄できないことが判明した。そこでシャワー方

式を試みたが洗浄効果が出なかった(図 13-2)。拡大観察の結果、石英ガラスコア繊維は

通常の繊維より遙かに直線度が高いため表面張力によってお互いがぴったりくっついて塊

になっていることが判明した。このため、石英ガラスコア繊維同士を離すために図 13-3

~6 に示すような底面から洗浄水がわき出す形の洗浄かごを考案し使用したところ十分な

効果が認められた(図 13-7)。また、洗浄水槽のなかでかごを和紙の紙すきのように揺動

させるとさらに洗浄効果が高まることが判明した。 洗浄水は水道水を使用し、最後に蒸留水で洗浄した。さらなる高純度化が求められる場

合は蒸留水の割合を増加させなければならないが、今回4㎏の石英ガラスコアを洗浄する

ために5トン程度の水道水と60リットルの蒸留水を使用した。実用化時には多段洗浄や

洗浄水を循環使用するなどの検討が必要となる。

図 13-1 回転式ふるいによる洗浄 図 13-2 シャワーによる洗浄

図 12 回転式ふるい

Page 13: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-11

図 13-3 洗浄かご製作(1) 図 13-4 洗浄かご製作(2)

図 13-7 洗浄風景

図 13-5 洗浄かご製作(3) 図 13-6 洗浄かご製作(4)

Page 14: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-12

(3)フッ酸を用いた2次洗浄(予備試験) 1次洗浄後も不純物が表面に付着していると考えられるため2次洗浄としてフッ酸洗浄

を行った。フッ酸による処理は不純物を溶解するのではなく、母材であるガラス表面を溶

解し不純物を浮かび上がらせることで不純物除去を行うものである。1次洗浄後のサンプ

ルをフッ酸:0.5~7%、時間:2分~60 分で処理し、分析した結果を便宜的に濃度(%)・

時間(分)積としてプロットした結果を図14に示す。この結果から今回検討している設

備条件下では、濃度・時間積(%・分)で1000以上の条件で洗浄することで半導体製

造装置の要求水準である 0.01ppm に到達出来るといえる。図 14 のロット№1-1、1-2 は表2

のロット№1-1、№1-2 に対応する。また熱分解や脱炭に伴う熱処理を通じてナトリウムな

ど半導体用途での禁忌物質が石英ガラスコアの内部に拡散しておらず、汚染は表面付近の

みであることが判明した。

(4)フッ酸を用いた2次洗浄(スケールアップ) 半導体産業向け合成石英治工具を製造している会社の洗浄工程を借用し2次洗浄を行っ

た。図 15-1 のように石英ガラスコアを5%フッ酸に、のべ20分間浸漬した。濃度、時

図 15-1 フッ酸洗浄 図 15-2 試験管へ挿入

0.01

0.1

1

10

100

1 10 100 1000

濃度(%)・時間(分)積

残留Na濃度(PPM)

ロットNo1-1

ロットNo1-2

図 14 フッ酸による洗浄効果

注:濃度・時間積は便宜的指標であり洗 浄条件毎に設定する必要がある。

Page 15: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-13

間とも借用した洗浄工程の制約を受けるため洗浄条件の検討はできなかった。2次洗浄を

行ったファイバは石英ガラス製の試験管に挿入(図 15-2)し、オーブン中で80℃にて乾

燥させた。洗浄水は全てイオン交換水である。 5.3 溶融処理

石英ガラスコアを石英ガラス試験管に詰めた状態で、図 16のように水素-酸素火炎旋盤にて溶融処理を行った。この火炎旋盤の火力では中心まで溶融させることができず、中心部

に未溶融のファイバが残った。直径34㎜、厚さ2㎜の石英ガラス製の試験管に石英ガラ

スコア繊維を約600g詰めたサンプルは直径約30~32㎜まで収縮した。また、脱泡

を考慮していない工程であるため、内部には気泡が残留した(図 17)。この方法では火力

を向上させて十分な温度を達成すると垂れることが想定されること、気泡の残留を改善で

きないことから溶融処理は今後の課題として残る。

図 16 火炎旋盤による溶融

図 17 完成したサンプル

Page 16: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-14

5.4 半導体製造装置部品の試作

図17のインゴットを使用し半導体製造装置用途を想定したリング状の模擬部品をレー

ザー加工により試作した。現状では気泡が多く残留し、脱泡が課題であることがわかる。

図 18 試作した半導体製造装置部品(模擬部品) 5.5 品質評価

溶融処理したインゴットの一部(2カ所:サンプルA、B)を切り出し成分分析を行っ

たところ、表5のような結果となった。ナトリウム量があと1桁強減少すれは半導体製造

装置向けの材料として使用可能となる。今回のフッ酸洗浄の濃度・時間積を増加させるこ

とで1桁の向上は達成できると考えられる。

表5 サンプルの分析結果(ppm) 元素名 サンプルA サンプルB Al 0.04 0.06 Cu 0.16 0.17 Fe 0.02 0.03 Ni <0.01 <0.01 Ca 0.03 0.03 Mg <0.01 <0.01 Na 0.22 0.26 K 0.03 0.03 Li <0.01 <0.01 Ge(Max) 34 28 Ge(Min) 250 160

フレームレス原子吸光分光光度計 マイクロ波プラズマ質量分析装置使用

10mm10mm10mm10mm

Page 17: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-15

ゲルマニウムは石英ガラスコアの屈折率を調整するために添加され、光ファイバ製造会

社により添加量は異なる。本分析では1つのサンプルの中から4点を任意に取りだしてゲ

ルマニウム量を分析し最大・最小値を示した。ゲルマニウム量にばらつきがあるのは電線

製造会社各社の石英ガラスコアが混在したためと考えられる。 ゲルマニウムはナトリウムのような禁忌物質ではないが半導体用途では実績がなく用途

が限られる可能性があるため、今後加熱昇華などによる除去の方法を検討する必要がある。

生化学など半導体以外の用途では問題にならない。 光学的特性、耐熱性、化学的特性は気泡の残留が多く、不均一であるため評価できなか

った。 5.6 その他の溶融方法の検討

前項のインゴット化方法以外で検討を行った。これらの方法は、半導体関連の工程とし

て完成されていないが、事業化をすすめるに当たり適用可能性を検討した。 (1)改良水素-酸素火炎の使用 通常の水素-酸素火炎は水素ボンベ、酸素ボンベから別々にガスを供給し、混合して使用する。本装置は水を電気分解し、そのガスをそのまま燃焼させるものである。水素-酸素比率が理論値で混合されているために高温を得やすい。通常、石英を加熱する場合、酸素-水素炎では約2000℃に加熱され対象物が白熱するまでに10分以上かかるが、本装置に

よれば2分ほどで白熱状態となる。図19では厚さ約5㎜の合成石英板を加熱しているが、

あまりにも高温であるために石英が溶解せず分解昇華している。また、本図はカメラを素

手で持ち撮影しているが、このような高温にもかかわらず50㎝程度まで近寄ることがで

き、非常に熱密度が高い火炎であるといえる。 本装置は石英ガラスコアを溶融するために使用することが期待される。実用化するには

加熱される物を固定もしくは収容する容器等の開発が必要となる。また、熱密度が高いた

め溶解した石英は残留歪みが大きくなり、これを低減するために火炎以外の部分を別の方

法で加熱する手法の開発も必要である。

図 19 改良水素-酸素火炎で合成石英板を加熱

Page 18: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-16

(2)改良縦型管状炉 図20は化学実験に使用される管状電気炉を縦型に設置し、上下動作が可能となるよう

にした装置で運転温度2000℃を目指して開発中である。この装置を使用し、上下を固

定した石英ガラスコアを溶融する際にヒーターを下から上に徐々に移動させることで気泡

の混入を押さえる可能性が期待される。

(3)過熱蒸気加熱装置 電磁誘導を用いて、積層された基材を発熱させ、導入された水を水蒸気として発生させ

る装置である。本装置はこれまで検討している熱分解装置と同様に無酸素状態で熱分解装

置と同等の温度まで上昇させることができる。実際に1次被覆まで解体した光ファイバケ

ーブルを本装置で処理したところ熱分解装置と同様に炭化した。本装置の運転は全て電気

でまかなうため運転コストが高い可能性がある。しかし温度設定により洗浄装置としても

使用できる可能性があることから今後も検討してゆきたい。

ヒーターヒーターヒーターヒーター(2000℃℃℃℃))))

ワークワークワークワーク::::試験管型容器試験管型容器試験管型容器試験管型容器にににに石英石英石英石英ガラスコアガラスコアガラスコアガラスコアをををを詰詰詰詰めるめるめるめる

ヒーターヒーターヒーターヒーターをををを固定固定固定固定しししし、、、、ワークワークワークワークをゆっくりをゆっくりをゆっくりをゆっくり下下下下降降降降させながらさせながらさせながらさせながら加熱加熱加熱加熱するするするする

図 20 改良型縦型管状炉

図 21 過熱水蒸気加熱装置

Page 19: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-17

また、本装置開発元では3000℃を目指して開発を行っており、1700℃は達成し

ている。2000℃以上の温度を達成できるなら(2)項の改良水素-酸素火炎で補助的

な加熱手段となる可能性もある。 6.社会受容性調査

廃光ファイバケーブルから再生された合成石英について社会受容性を調査した。期待さ

れる分野での要件を表 6-1、表 6-2にまとめた。検討当初から期待されていた半導体分野

のほか、生化学やナノテクノロジーへの適用可能性のあることが判明した。半導体製造装

置向けの大きなインゴットを製作するには大きな投資が必要となるため生化学試験用等の

小さな部品からスタートすることも今後の選択肢にいれてよいと考えられる。

表 6-1 半導体分野での可能性と主な要件 項目 高純度合成石英 光ファイバ再生石英(試作品) 高純度天然石英

用途例 フォトマスク 光ファイバ

高純度天然石英と合成石英の間を埋める。需要:半導体装置(エッチングチャンバー)高純度天然石英用途の20%を占める φ400mm t=7mm 消耗品

半導体装置 半導体向け治工具

単価(円/㎏) 10万~40万 想定市場価格:2万 2000 市場規模 1000億円/年 潜在需要:天然石英の20% 100億円/年

不純物要求値 0.001ppm↓ (0.1~0.01ppm) (現状0.3ppm Ge除去が課題) 1~0.1ppm

(注)市場規模は製品市場規模の10%が材料費としたときの材料費の市場規模

表 6-2 期待される半導体以外の分野と主な要件 期待される分野 特性 内容

製品形状 プレパラートサイズの板 重量:数百g

主な必要特性 各金属不純物含有量 数 ppm以下(用途による) 光学特性(気泡、曇り、含有水分量)

需要 現在立ち上がりつつある分野 再生品については市場規模は不明

生化学実験

価格 5千円~ 数万円/㎏(純度等品質による)

製品形状 数㎝~数十㎝サイズの板 重量:数百g~数㎏

主な必要特性 各金属不純物含有量 数 ppm以下(用途による) 光学特性

需要 現在開発中の分野 再生品については市場規模は不明

ナノテクノロジ

価格 5千円~ 数万円/㎏(純度等品質による) 現在、半導体産業では天然石英を溶融した高純度天然石英と、高純度天然石英を一旦ガ

ス化後析出し、溶融固化した高純度合成石英の2種があり、両者の価格差は非常に大きい。

高純度合成石英は非常に高価であるため石英部品が消耗品となる半導体製造装置への適用

は通常なされないが、本来高純度環境が必要であるエッチングチャンバー等の工程では高

Page 20: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-18

純度天然石英では純度が不足する問題が発生している。本試作品は、このような高純度合

成石英と高純度天然石英の中間的な特性および価格帯に市場を見いだすことができると考

えられる。仮に高純度天然石英の20%を光ファイバ再生石英で置き換えるとすると年間

1000トンの需要が存在することになり、将来、予想される年間1万トンの廃光ファイ

バケーブルの排出で石英ガラスコアが1%含まれるとした場合に予想される100トンの

石英ガラスコアの市場は十分あるといえる。 7.エコプロダクト2003への展示

試作品等の展示会による普及啓発の実施の一環として平成15年12月11日~13日

に東京ビッグサイトにおいて開催されたエコプロダクツ2003へサンプル展示を行った

(図 21-1、図 21-2)。なお、この時点では1次、2次洗浄、溶解工程について開発が完

了しておらず、脱炭工程まで完了した石英ガラスコアを酸素-水素炎ハンドバーナーで溶解した物を展示した(図 21-3、図 21-4)。

図 21-1 展示の様子(1) 図 21-2 展示の様子(2)

図 21-3 サンプルの製作 図 21-4 展示したサンプル

Page 21: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-19

8.経済性検討

上記の処理工程でのコストの試算結果を表 7-1~7-4に示す。廃光ファイバケーブル処

理量を600トン/年・8年償却、原料(廃光ファイバケーブル)回収費は0円とし、引き抜き処理を行って石英ガラスコア回収比率を5%まで高めると設定した。 表 7-1、7-2 は廃ケーブル回収業者、表 7-3、7-4 は石英ガラス再生業者が処理を実

施すると想定した。表 7-1は予備解体、熱分解による解体処理で廃光ファイバケーブル1

トンあたりの処理費用、表 7-2~4 は解体処理で取り出された石英ガラスコア1㎏あたり

の処理費用である。 この結果、工場出荷価格は約11,000円となり、例えば表 6-1に示すような半導体市場での想定販売価格に見合うと考えられ、事業性は見込めると判断する。回収される石英

ガラスコアは30トン/年であり需要は1,000トンと想定されるため需要は十分あると判断できる。

表 7-1廃光ファイバケーブル1トンを処理するコスト コスト内訳 項目 コスト

(円) 単位 工賃 光熱費 設備損料 残渣処理 他

原料(1トン) 0 1t 予備解体(引き抜き処理等) 20,000 1t 20,000 0 0 0 0熱分解による解体 73,000 1t 10,000 50,500 2,500 10,000 0脱炭処理(加熱処理) 43,100 1kg 25,000 10,100 5,000 3,000 0設備償却 6,250 1t 0 0 0 0 6,250処理コスト1小計 142,350 1t 熱分解光熱費内訳 :電力@13円×1000kw+燃料@30円×1250L=50,500円 脱炭処理光熱費内訳:電力@13円×200kw+燃料@30円×250L=10,100円 設備償却費は処理コスト1、2の設備を含む 表 7-1で石英ガラスコア含有量を5%と想定すると回収される石英ガラスコア量は廃光フ

ァイバ1トンあたり50kg。処理コスト1から回収石英ガラスコア1kgあたりの処理費用は 142,350÷50=2,847 円となる。

表 7-2 回収した石英ガラスコアを処理するコスト(1) コスト内訳 項目 コスト

(円) 単 位 工賃 光熱費 設備損料 残渣処理 他

処理コスト1 2,847 1kg 水洗浄 1,409 1kg 700 609 40 60 0検査・梱包 5 1kg 5 0 0 0 0運賃 10 1kg 10 0 0 0 0処理コスト2小計 4,271 1kg 水洗浄光熱費内訳:電力@13円×1.2kw×15L+水@300円/トン×1.25トン=609円 (回収石英ガラスコア1㎏あたり水道水 1.25トン、蒸留水 15L、蒸留水製造に 1.2kw/Lの電力を使用するものとする)

Page 22: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-20

表 7-3 回収した石英ガラスコアを処理するコスト(2)

コスト内訳 項目 コスト (円) 単位

工賃 光熱費 設備損料 残渣処理 他 原料 4,271 1kg フッ酸洗浄 20.5 1kg 8 6.5 0 1 5溶融処理 84.5 1kg 8 65 10 0 1.5切断処理 31.5 1kg 20 6.5 5 0 0試験・検査 131.5 1kg 125 6.5 1 0 0梱包・運賃 28 1kg 0 0 0 0 20設備償却 33.32 1kg 0 0 0 0 33.32処理コスト3小計 4,600.32 1kg 溶融処理光熱費内訳:電力@13円×5kw=65円 フッ酸洗浄、切断、試験・検査光熱費内訳:電力@13円×0.5kw=6.5円

表 7-4 回収した石英ガラスコアを処理するコスト(3) コスト

(円) 単位 備考

見かけ製品価格 4,600 1kg 製造ロス (30%) ロス分は再利用可能だがコストに反映せず 処理コスト 6,571 1kg 諸経費・利益 (40%) 販売価格 10,951 1kg 工場出荷価格

小数点以下切り捨て

9.まとめ

廃棄された光ファイバケーブル(廃光ファイバケーブル)から合成石英で構成された光

ファイバガラスコア(石英ガラスコア)を経済的な方法で取り出し、不純物を除去の上イ

ンゴット化する方法を検討した。この結果、熱分解装置による解体方法では熱分解装置で

分解した被覆を煤払いするだけで石英ガラスコアをとりだすことができた。 取り出した石英ガラスコアに付着していた煤は大気中で加熱処理することで除去され、

さらに被覆材添加剤を中心とする残留物質をふるいがけ、超音波を使用した水洗浄および

フッ酸処理で除去した。 このようにして高純度化した石英ガラスコアを溶融加熱して製作したインゴットを評価

したところ、不純物量は半導体用途へ適用できる可能性を十分持っており、また経済性検

討を行った結果、実用化は可能であると判断できる。 10.今後の課題

本検討の中で明らかになった問題点は次の通りである。 (1)高純度化1 本検討では半導体向け用途で例えば Naが 0.01ppm の要求値であるのに対し 0.22~0.26 ppm

Page 23: D.廃光ファイバーの再利用技術に関する調査 (社 …...D-4 4.5 廃光ファイバケーブルの解体・分別 (1)従来の解体分別法と問題点

D-21

である。あと1桁強の高純度化が必要である。5.4 項で述べたように今回はフッ酸処理工程

上の制約があったためであり、今後改善が可能であると考える。また、光ファイバの特性

を出すためにゲルマニウムが添加されている。ゲルマニウムは半導体製造において禁忌物

質ではないが用途が限られる可能性があるため、溶融処理時にゲルマニウムが昇華する温

度まで加熱し除去する技術を開発する必要がある。生化学等の用途ではゲルマニウムの含

有は問題にならない。 (2)高純度化2 石英ガラス加工業界は中小企業が得意な工程を1工程ずつ受け持ち、仕掛品を持ち回る

ことが定着している。持ち回りの最中に異物が混入することは容易に予想されるため何ら

かの容器を考案するか、本工程のうち脱炭以降を1つの事業所内で全て請け負う事業者が

必要である。 (3)脱泡 インゴット化に際し空気が混入し、できあがったインゴットは白くなった。これは加熱

温度が不足して溶融粘度が下がらなかったことと、インゴットを横向きに取り付けている

ため空気の逃げる向きが定まらないためである。今後、高温の火炎や縦型管状炉、もしく

は真空加熱炉などを使用し混入空気を極力低減させる検討が必要である。 (4)解体方法の再検討 熱分解装置は高額であり、これが経済性を圧迫する要因の1つとなっている。今回検討

している方法以外にも被覆層を取り外す手法の探索に力を入れて行きたい。 また、引き抜き処理等により石英ガラスコア回収比率を向上させる検討が必要である。 (5)1次洗浄の改善 排出される1次洗浄水には煤や熱分解の残留物、砕かれて短繊維となった光ファイバガ

ラスコアなどが混入している。これらの物は排水中に混入しないよう、確実に回収されな

ければならない。 また、数㎏のサンプルを洗浄するために5トンの水道水を使用した。実用化時には多段

洗浄や洗浄水を循環使用するなどの検討が必要となる。

以上 [参考文献] 1)「光ファイバケーブルリサイクルの考え方」プラスチックエージ1999臨時増刊号 85ページ