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1 観察・実験器具,装置の正しい使い方
(1) 顕微鏡(光学顕微鏡)
<各部の名称> ア 使い方
(ア) 箱・本体の運び方
顕微鏡が飛び出すのを防ぐため,箱の扉側を自分に向け,体に密着させて,両手で持ちます。
本体のみを運ぶときは,片方の手でアームを握り,もう片方の手で鏡台を下から支えます。
(イ) レンズの取り付け方
① ほこりや水などの異物が,鏡筒内や対物レンズに付くのを避けるため,接眼レンズ,対物
レンズの順に取り付けます。外すときは,逆の順序で行います。
② 対物レンズをレンズケースから取り出す場合には,ケースのふたを下にして,レンズを取
り出します。片付ける際にも同様に取り扱います。
③ 対物レンズをレボルバーに取り付ける際は,レンズを落とさないように注意し,両手を使
い軽くねじ込みます。このとき,低倍率から順に右回りで倍率が上がるように取り付けます。
接眼レンズ
鏡筒
レボルバー
対物レンズ
ステージ
絞り
反射鏡
鏡脚(台)
アーム
アーム
調節ねじ 鏡筒を上下さ
せて,ピントを
合わせます。
調節ねじ ステージを上下
させて,ピントを
合わせます。
対物レンズの取り出し方 対物レンズの取り付け方 悪い例
箱の運び方 本体の持ち方 悪い例
クリップ
クリップ
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(ウ) 光量の調節
顕微鏡を直射日光の当たらない明るい場所に置き,接眼レンズをのぞきながら反射鏡を動かし,
視野が一様に明るくなるようにします。このとき,絞りが解放になっていることを確認します。反
射鏡は片面が平面鏡,もう片方が凹面鏡になっています。普通は平面鏡を利用しますが,光量が少
ないときや高倍率で暗い場合には,凹面鏡を使うと効果的です。照明装置を用いると,光量が安定
するので,天気に左右されずに観察しやすくなります。
(エ) プレパラートのセット
調節ねじを回し鏡筒を上げ(又はステージを下げ),プレパラートを
ステージに載せます。観察対象物が対物レンズの真下にくるようにし
て,クリップで固定します。
(オ) ピントの調節
① 対物レンズを低倍率のレンズにして,横から見ながら対物レンズの先端をプレパラートに近付
けます。調節ねじを回す方向と,鏡筒やステージの上下の関係を確認しておきます。
② 次に,接眼レンズをのぞきながら調節ねじをゆっくり回し,対物レンズとプレパラートの間を
遠ざけていきピントを合わせます。細かいピント合わせは,微調節ねじで行います。
(カ) 絞りの調節
ステージの下にある絞りを調節して,観察対象物
に合った明るさ,コントラストにします。明るすぎ
ると像がつぶれてしまいます。やや明るさを落とす
と観察しやすくなります。観察者の目を痛めないた
めにも,視野を明るくし過ぎないようにします。
接眼レンズをのぞ
きながら対物レンズ
をプレパラートに近
付けると,対物レンズ
がぶつかり,プレパラ
ートを壊してしまう
ことがあります。必ず
横から見ながら調節
ねじを回します。
自然光で観察を行う場合は,
太陽の光を直接反射させない
ように注意します。
生徒にとって光量の調節は難しい
操作です。照明装置付きの顕微鏡は,
絞りで光量を調節します。
対物レンズと
プレパラートを
遠ざけていきな
がら,ピントを
合わせます。
注 意
注 意
円形絞り 虹彩絞り
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(キ) 観察対象物の移動
観察対象物が視野の中央に来るように,プレパラートを動かします。光学顕微鏡では,上下左右
が逆になって見えることに注意します。ただし, 近の顕微鏡は,プレパラートの移動の方向と像
の移動の方向が同じになっているものもあるので,あらかじめ確認しておくことが必要です。
(ク) 高倍率への倍率変更
同じ顕微鏡に付属している対物レンズを用いる場合は,低倍率でピントが合っている状態でレボ
ルバーをゆっくり回転させて対物レンズを高倍率のものに変えるだけで,ほぼピントが合います。
後は,微調節ねじ(調節ねじ)でピントの微調節を行います。また,高倍率になると視野全体が暗く
なるので,絞りや反射鏡の調節を再度行います。
イ 注意事項
○ 絞りを正しく調節して,光が入り過ぎないようにします。特に,低倍率のときは光量が多過ぎて,
目を痛めることが考えられます。 ○ 顕微鏡に付属しているレンズは,他の顕微鏡のレンズと入れ替えて使用することがないようにし
ます。鏡筒の長さと各レンズは,同焦点に調整されていますので,ピントが合わなくなります。
【参考】 プレパラートの作り方
○ 乾いたきれいなスライドガラスの中央に観察したいものを載 せ,スポイトで水を1滴落とします。プランクトンのような水 生生物を観察するときは,直接スポイトで取って1滴落としま す。試料が重ならないように,柄付き針やピンセットで広げま す。
○ 利き手にはピンセットを,もう片方の手には柄付き針を持ちます。利き手のピンセットでカ
バーガラスを軽くはさみ,上図のように柄付き針の先端でカバーガラスの1辺を支えながら,
気泡を追い出すように試料の片側からカバーガラスを倒していきます。水が多過ぎてカバーガ
ラスが浮いてしまう場合は,小さく切ったろ紙で吸い取ります。
【参考】 微生物の培養のための滅菌と培養液(ゾウリムシ用)の作り方
微生物を培養するには,培養液と扱うすべての器具の滅菌作業が必要です。オートクレーブで
30 分程度滅菌を行いますが,オートクレーブがない場合には,蒸し器を使って,蒸気で滅菌作業
を行うことで代用できます。完全に滅菌する場合には,1日1回,計3回の滅菌操作を行います。
しかし,麦わらやレタスなどを煮出し,微生物が生息するための培地を作る場合は,1回だけ滅
菌を行います。 ○ ゾウリムシの培養液を使用する方法
① 300mL 程度のビーカーに水道水を7分目まで入れ,適当な長さの麦わ
らを一握りビーカー内に入れ,アルミホイルでふたをします。
② 培養液が褐色に色付くまで,ビーカーを加熱沸騰させます。
③ 1~2日放置して,バクテリアを増殖させます。容器いっぱいになっ
た段階で,採集したり,研究機関から分譲してもらったりしたゾウリム
シの液を数滴加えます。 ※ 詳しい微生物の培養等については,以下のHPを参照してください。 北海道立理科教育センター
http://www.ricen.hokkaido-c.ed.jp/330seibutsu/334siiku_baiyou.html(2008 年2月)
カバーガラス スライドガラス プレパラート
柄付き針 ピンセット