Analytix Issue 5_2014, Issue 1,2_2015 / Reporter vol32.2, vol 33.1
Analytix
【食品】・ 乳中の低濃度(ピコグラム)のアフラトキシンM1 の定量・ ウイスキーの芳香化合物の秘密【環境】・ ヒ素 (V) およびヒ素 (III) の分析【臨床 /BioAnalysis】・ 血漿中ステロイドホルモンの分析【医薬】・ 溶解性試験用濃縮試薬・ 医薬品二次標準物質【新技術】・ 31PqNMR 用トレーサブルな有機認証標準物質
31P qNMR 用トレーサブルな有機認証標準物質【新技術】
SAJ1897
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2
Ta
ble
of
Co
nte
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食品 3 乳中の低濃度 (ピコグラム) の
アフラトキシンM1の定量多機能カラム Supel™ Toxを使用した精製とLC/MS分析
6 ウイスキーの芳香化合物の秘密フレーバーおよびフレグランスを迅速かつ正確に分析する Ascentis® Express HPLCカラムおよび分析用標準物質
環境 10 ヒ素 (III) および ヒ素 (V) の分析
ヒ素分析の為の新しい認証標準物質(CRM)
臨床/BioAnalysis
12 血漿中ステロイドホルモンの分析LC/MS/MS分析のためのサンプル調製法の開発と最適化
医薬 15 「水を加えるのみ」 の溶解性試験用濃縮試薬
欧州薬局方 (EP) および米国薬局方 (USP) を遵守する濃縮試薬で時間とコストを削減
16 各国薬局方の二次標準物質有効期限 (expiration date) の方針を変更しました
新技術 17 31P qNMR用トレーサブルな有機認証標準物質
リン定量用の新しいツール
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3
食
品
実験乳の調製脂肪分 2%の乳 45グラムを、ポリプロピレン製の遠心分離用試験管(50mL)*に入れ、5000 rpm、相対遠心力(RCF)4863 x g** で 60 分間、遠心分離しました。遠心分離後、0°Cで 30分間冷却し、上部(脂肪)層をスパチュラで除去した後、20mLの乳清(中層)をフラスコに移しました。
アフラトキシンの添加0.5 µg/mLの AFM1標準物質150 µL を、1350 µL のアセトニトリルで希釈し、0.05ug/mLに調製しました。シラン処理した三角フラスコ(200mL)* 2個にそれぞれ調整した乳を80mLずつ入れ、0.05ug/mLに調製したAFM1溶液を 40および 400 µL 添加し、AFM1の濃度を25および 250 pg/mLとしました。乳へのAFM1の添加後、2分間穏やかに撹拌し抽出に供しました。
タンパク質沈殿およびAFM1の抽出アセトニトリルを20mLをポリプロピレン遠心分離管(50mL)に入れ、AFM1を添加した乳を5 mL加え、タンパク質を沈殿させました。この混合物を手動で 5秒間振盪し、Supel QuE non-buffered tube2(カタログ番号55295-U)を1本加え、塩類を分散させるため、すぐにその懸濁液を激しく振盪しました。その後、その遠心管を実験室用振盪機で5分間振盪を行い、振盪後、試験管を20分間 5000rpm(RCF 4863 x g)で遠心分離しました。AFM1は、調製物の有機層(上部)に抽出されました(図1a)。
はじめにアフラトキシン類は、Aspergillus 属の真菌によって産生されるカビ毒の一種です。アフラトキシン産生菌のうち、Aspergillus flavusとAspergillus parasiticus は農業と医学における重要性から広く研究されています1。これらの種は、トウモロコシなどの穀物や落花生、ナッツ等の作物に感染し、作物がアフラトキシン類で汚染されることにより、人間や動物が日常的に摂取する食品にもたらされる可能性があります 2,3。これらの毒素は動物および人間が摂取すると、健康に影響を及ぼす可能性があります 4,5。アフラトキシン類は国際がん研究機関(IARC)によって、グループ1発がん物質、つまり、ヒトに発がん性があることがわかっている化合物に分類されました 6。その標的は肝臓で、そこでDNAを変異させ、複製を阻害すると考えられます 7。最も生物活性の高いアフラトキシンは、アフラトキシンB1(AFB1)です 4。リスクアセスメントによれば、アフラトキシン類は世界中で肝臓がん(HCC)の 4.6 ~ 28.2%に関係する可能性があると評価されました 8。
本研究の焦点は、AFB1の代謝物であるアフラトキシンM1(AFM1)です。AFM1は、アフラトキシンに汚染された飼料を摂取した酪農動物が泌乳するミルクに存在する可能性があります 3。このアフラトキシンはその前駆物質より生物活性が低いにもかかわらず、IARCにグループ1のヒトの発がん物質として分類されています 6。アフラトキシン毒性のある解釈によれば、「……それ以下では腫瘍形成が起こらないという閾値濃度はないと通常思われます。……ゼロレベルの曝露のみがリスクゼロとなります……」9。AFM1は、発がん物質としての可能性こと、および牛乳が特に子供と幼児の食物源として広く使われていることから乳中の濃度は規制されています 10。
欧州連合(EU)は、イスラエルとともに、生乳および乳を原材料とする食品の原料乳でのAFM1の存在量について、非常に厳しい上限を課しました。現在、EUおよびイスラエルの乳製品におけるAFM1の許容限度は、0.050 µg/kgであるであるのに対し、幼児の粉ミルク、フォローアップミルクおよびその他の乳幼児向け栄養食品におけるAFM1の規制値は、0.025 µg/kgです 11,12。
これをLC/MSで分析できるかどうかを、乳サンプルをタンパク質沈殿しFLDを用いて調べました。サンプルにAFM1を0.5 ng/mL(0.5 µg/kg)で添加し、HPLCで分析したところ、回収率は88%と充分なクリーンアップでAFM1を検出できることがわかりました。本研究をさらに進め、世界で最も低濃度であるEUの規制値でアフラトキシンM1を検出定量できるよう、AFM1サンプルのクリーンアップ法および分析法を開発します。方法がうまくいけば、米国および中国が定めた牛乳中AFM1の規制限度の分析が可能になるでしょう13,14。
乳中の低濃度(ピコグラム)のアフラトキシンM1 の定量多機能カラムSupel™ Tox を使用した精製とLC/MS 分析
K. G. Espenschied, R&D Technician; Emily Barrey, Senior R&D Scientist; and Michael Ye, Senior R&D Manager [email protected]
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* AFM1は未処理のガラスの表面に結合する可能性があるので、遠心分離またはサンプル収集にはポリプロピレンまたはシラン処理したガラスを用いました。
** 遠心分離のパラメーターは、rpmおよび相対遠心力(RCF)で示します。加わる力は、ローターの半径とrpmの関数とで、使用する機器によって異なります。
図1
1a. 遠心分離後の乳抽出物1b. 蒸発させた乳サンプル(SPEクリーンアップあり及びなし)
上部層(有機)
上部層SPEなし
上部層AflaZea SPE
無脂乳固形物
下部層(水+塩分)
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4
食
品
サンプルのクリーンアップSupel™ Tox AflaZea SPEカートリッジ(カタログ番号 55314-U)を、16 × 125 mmのシラン処理をしたガラスの捕集管を置いたラック付きバキュームマニホールドに装着しました。真空を -5" Hgに設定し、各抽出物の上部層からのサンプルを10.0 mL、SPEカートリッジにロードし、カートリッジ内にサンプルが残らないよう押し流すために、サンプル溶液が溶出した後すぐに100%のアセトニトリルを2mL×2回流しました。
サンプルの蒸発、再溶解および分析精製したサンプルを、10 psi の窒素流下、70°Cで蒸発させました。窒素流は、3 psiで開始し、5分ごとに6 psi、最終的には9 psiまで増加させました。乾燥残査にアセトニトリル:水(20:80)の 500 µL をピペットで加えることによってサンプルを再溶解し、続いて30秒間ボルテックスで混合しました。次いで、溶解した残査を、パスツールピペットで、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルター(13 mm/0.2 µm)が先端に付いた1 mLのシリンジに移し、750 µL のポリプロピレンバイアルに入れました。抽出濃度12.5 pg/mL~ 500 pg/mL(絶対濃度 250 pg/mL ~ 10,000 pg/mL)のマトリックスマッチング校正用スタンダードを使って定量を行いました。
結果および考察最初に乳を遠心分離して、脂肪と無脂乳固形物(NFMS)を除去しました。n = 16で、重量平均で乳の2.6%の脂肪および 0.7%のNFMSを除去しました。Supel Tox AflaZea SPE カートリッジを使用したサンプルクリーンアップは、簡単で迅速に行うことができました(1分未満/サンプル数n = 3)。SPEクリーンアップにより、アフラトキシンM1は溶出され、乳に含まれる望ましくない妨害物は、カートリッジに保持されました。他のSPE方法では、対象の分析対象物がカートリッジと結合して、様々な洗浄ステップの後に溶出されるのですが、それと比較するとこの前処理手順は必要なステップがより少なく、サンプル調製時間を短縮できます。また、蒸発時間は約30分でした。図1bに見られるように、AflaZea精製サンプルは、残査およびサンプルの色合いという点で未精製サンプルよりもきれいに見えました。図2のクロマトグラムから、AFM1のピークはどちらの濃度でも、マトリックス干渉もなく、バックグラウンドからの識別が容易であることがわかります。また表1から、25 pgおよび 250 pgのどちらの濃度でもAFM1は、許容できる回収率(それぞれ102%および76%)ならびに、優れた再現性(それぞれ10.2% RSDおよび 8.6% RSD)で検出され、定量されたことがわかりました。したがってこのSPE法は、25 pg/mL および 250 pg/mLのどちらの濃度の乳でもAFM1の定性と定量のために十分なサンプルクリーンアップができることが立証されました。
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表1 25 pg/mLおよび 250 pg/mLの AFM1の回収率(n = 3)
乳サンプル中のAFM1添加濃度
平均AFM1回収率(%) RSD (%)
25 pg/mL 102 10
250 pg/mL 76 9
図2 SPEクリーンアップの後の乳中AFM1の LC/MS分析 column: Ascentis® Express C18, 5.0 cm x 2.1 mm I.D., 2.7 μm (53822-U)
mobile phase: [A] 0.1% formic acid in water; [B] acetonitrile
gradient: 10% B held for 0.5 min; 10 to 90% B in 0.5 min; held at 90% B for
3 min; 90 to 10% B in 0.1 min; held at 10% B for 2.9 min
flow rate: 0.4 mL/min
column temp.: ambient
detector: MS, ESI(+), MRM, m/z 329/273
injection: 10 μL
2a. マトリックスマッチングスタンダード
0 2
1
4
Time (min)0
2000
2b. 25 pg/mLの AFM1を添加した乳
0 2 4
Time (min)
020
00
1
2c. 250 pg/mLの AFM1を添加した乳
0 2 4
Time (min)
020
00
1
1. アフラトキシンM1
時間(分)
時間(分)
時間(分)
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5
食
品
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結論乳サンプル中のアフラトキシンM1を、EU規制基準(0.025 µg/kg)に対応するよう迅速にクリーンアップ、分析および定量する方法を、Supel™ Tox AflaZea SPEおよび LC/MS分析を使って開発しました。他のSPE法でよくみられる、手順が多く煩雑になってしまう前処理(保持および溶出)とは異なり、Supel Tox AflaZeaでは「妨害物除去」操作を用い、洗浄ステップをなくして時間を短縮しました。このSPE法は、乳および乳製品で問題となるマトリックス干渉をタイムリーに除去するのに役立ちました。その一方で分析対象物の高い回収率および優れた再現性も達成しました。また予備実験を行ったところ、さらに高濃度のAFM1サンプルを扱う場合、このサンプル調製方法をHPLC、FLD法にも適用できることがわかりました。
References
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(accessed Jan 2014)
2. Cornell University College of Agriculture and Life Sciences Site. http://
www.ansci.cornell.edu/plants/toxicagents/aflatoxin/aflatoxin.html
(accessed Jan 2014)
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Other_Areas/publications/PDF/FSA-4018.pdf (accessed Jan 2014)
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Site. http://www.fda.gov/Food/FoodborneIllnessContaminants/
CausesOfIllnessBadBugBook/ucm071020.htm (accessed Jan 2014)
5. Robens, J.F.; Richard, J.L. Aflatoxins in animal and human health. Rev Environ
Contam Toxicol. 1992, 127, 69-94.
6. International Agency for Research on Cancer: IARC Monographs on the
Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans Site. http://monographs.iarc.fr/
ENG/Classification/ (accessed Jan 2014)
7. International Agency for Research on Cancer: IARC Monographs 100-F
Site on Aflatoxins. http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol100F/
mono100F-23.pdf (accessed Jan 2014)
8. Liu, Y.; Wu, F. Global Burden of Aflatoxin-Induced Hepatocellular Carcinoma: A
Risk Assessment. Environ Health Perspect. 2010, 118, 818–824.
9. Codex Committee on Food Additives and Contaminants Archive Site. http://
ec.europa.eu/food/fs/ifsi/eupositions/ccfac/archives/
ccfac-cx-16a-ec-comments-130300final_en.pdf (accessed Jan 2014)
10. Anfossi, L.; Baggiani, C.; Giovannoli, C.; Giraudi, G. Occurrence of Aflatoxin M1
in Dairy Products, Aflatoxins – Detection, measurement, and Control, Dr Irineo
Torres-Pacheco (Ed.), 2011, ISBN: 978-953-307-711-6, InTech, Available from:
http://www.intechopen.com/books/aflatoxins-detection-measurement-and-
control/occurrence-of-aflatoxin-m1-in-dairy-products
11. Commission Regulation (EU) No 165/2010. Amending Regulation (EC) No
1881/2006 Setting Maximum Levels for Certain Contaminants in Foodstuffs
as Regards Aflatoxins. Official Journal of the European Union, Feb 26, 2010,
pp L 50/8 – L 50/12.
12. Britzi, M.; Friedman, F.; Miron, J.; Solomon, R.; Cuneah, O.; Shimshoni, J. A.;
Soback, S.; Ashkenazi, R.; Armer, S.; Shlosberg, A. Carry-Over of Aflatoxin B1 to
Aflatoxin M1 in High Yielding Israeli Cows in Mid- and Late-Lactation. Toxins,
2013, 5, 73-83.
13. U. S. Food and Drug Administration: Inspections, Compliance, Enforcement,
and Criminal Investigations. http://www.fda.gov/ICECI/ComplianceManuals/
CompliancePolicyGuidanceManual/ucm074482.htm (accessed Jan 2014)
14. Liang, J.; Song, X.; Zhu, J.; Li, N.; Xu, H.; Li, F. Suitability Analysis of Tolerance
Limit for Aflatoxin M1 in Foods and Chinese Population Dietary Exposure to
Aflatoxin M1 From Milk. Wei Sheng Yan Jiu. 2013, 42, 840-843.
Featured Products
Description Cat. No.
Supel Tox AflaZea SPE Cartridge6 mL, 30 ea 55314-USupel QuE Non-Buffered Tube 2pk of 50 55295Ascentis® Express C18 HPLC Column5 cm x 2.1 mm I.D., 2.7 μm particle size 53822-UAflatoxin M1 Solution0.5 μg/mL in acetonitrile 34031Iso-Disc™ Syringe Tip Filter UnitPVDF membrane, 50 ea 54135-U
Related Products
Description Cat. No.
Supel Tox SPE CartridgesDON SPE Cartridge, 6 mL, 30 ea 55316-UTricho SPE Cartridge, 6 mL, 30 ea 55308-UTrichoBind SPE Cartridge, LRC, 25 ea 55307-UFumoniBind SPE Cartridge, LRC, 25 ea 55315-UOchraBind SPE Cartridge, LRC, 25 ea 55318-UAscentis Express C18 HPLC Columns10 cm x 2.1 mm I.D., 2.7 μm particle size 53823-U15 cm x 2.1 mm I.D., 2.7 μm particle size 53825-U
弊社のカビ毒の分析関連製品については http://www.aldrich.com/myco-jpをご覧ください
Supel TOXSupel TOX
TEL 03-5796-7350 E-maiL [email protected]
G l/1SV6 iGoo.gl/1SV6ri
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食
品
UV検出によるHPLC分離ピート香のウイスキーで一般的に見られる一群のフェノール化合物のUVクロマトグラムを示します。これにより、分析方法の開発に標準物質が必要であることがわかります(図1参照)。
保持時間が決定されていても、クロマトグラフィーを最適化して重要な検体を見つけるために、それぞれ単一成分の標準物質が必要です。異なるマトリクスを含む試料の分析では、さらなる注意が必要な場合もあります。その一例を挙げると標準物質を混合した場合、3,4-ジヒドロキシ安息香酸は保持されずに溶出され、単一成分の標準物質と比較して合理的なクロマトグラフ上のピーク(図2参照)が検出されません。グラジエントの調節、注入順序の改善、あるいは固定相の選択性の変更でこの問題は解決します [2]。速度およびクロマトグラフィーの分離能の改善 - UHPLC/MSUHPLCシステムを採用し、コアシェルまたはSub-2um粒子などの固定相を用いるのには、理由があります。分析時間の短縮は主な目標の1つですが、実際、カラムをSub-2um C18カラム[2.1 × 50 mm、0.5 mL/min:図3a]に変えるだけで、ランタイムを当初のLC法の約 4分の1に短縮することができました。最高圧力がわずか 400 bar であるので、より長いカラムを使用することもでき、分離能が大幅に向上します[2.1 × 150 mm Supelco Ascentis Express C18 カラム(2.7 µm)、0.9 mL/min:図3b]。
この方法は、試料に関する情報量が多く、試料の処理量が多いのにも関わらず、クロマトグラフィー分離能が高いので、未知化合物の正確な同定におけるエラーを防ぐこともできます。図5は、MSおよびUVクロマトグラムで2つのピークが一致することを示しており、このことから249 m/z がこの部分で最も高いUVシグナルに対応すると示唆されます。しかし、図4から、249 m/zは、図5では分解できなかった小さなピークに属しているという完全に異なる結果が明らかになりました。残念なことに、ESIでもAPCIでも、この未知化合物をイオン化することができませんでした。このようなまぎらわしい偶然の一致の有名な例として、アブサンに含まれる主要な精神活性物質としてツジョンが同定された例が挙げられます [3]。
ウイスキーの芳香化合物の秘密フレーバーおよびフレグランスを迅速かつ正確に分析するAscentis® Express HPLCカラムおよび分析用標準物質
Eva Katharina Richter, Product Manager Analytical Standards [email protected]
Rudolph Köhling, Senior Scientist [email protected]
Paul Rodwell, Prinicipal Scientist [email protected]
ウイスキー愛好家の多くは、特定のウイスキーのピート香とスモーキーな味を絶賛します。この味は、主にピート煙のフェノール化合物に由来します。しかし、味と香りは通常単一物質に由来するのではなく、むしろ発酵プロセスで生じる芳香化合物が複雑に混じり合った結果生じるものです。このため味と香りの分析は困難であり、最適の分析法ならびに信頼できる分析用標準物質を用いることが、信頼できる結果を得るために必要になります。
ウイスキーのLC-UVおよび LC-MS分析一般的に、芳香族化合物はHPLC-UVによって簡単に検出できます。ウイスキー試料のUV吸光度は、全化合物の総計のみを反映するので、ウイスキーの味の「ピート香」の尺度になります。組成についてさらに知るためには、定性と定量のための分析用標準物質を使うことが重要です。分子式が同じであっても構造が異なるものがあるので、現代の高分解能質量分析計でも、分析用標準物質が必要になります。
本稿では、これらの複雑な混合物の分析に関するいくつかの検討結果を示します。こういったマトリックス試料には、直接注入と標準逆相液体クロマトグラフィーが理想的であると思われるかもしれませんが、粒径5 µmのカラムを用いた短いランタイムでの典型的なHPLCの分離ピークの中には、もっと多数の化合物が隠れていることが、UHPLCおよび質量分析と連結した分析によって、明らかになります。
sigma-aldrich.com/fl avor
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食
品
図1 ピートで香りづけされたウイスキーに見られる様々なフェノール化合物のクロマトグラムの例。3,4-ジヒドロキシ安息香酸は、ほぼ 0分に溶出されることがわかります。保持時間、分離能およびピーク形状は、全多孔性の5 µm粒子カラムの最適条件下(流速1 mL/min、ランタイム30分)で理想的です。
min0 5 10 15 20 25
Norm.
-250
0
250
500
750
1000
1250
1500
1750 8.
753 2,6-Dimethoxyphenol (#53877)
min0 5 10 15 20 25
mAU
-250
0
250
500
750
1000
1250
1500
1750 13.90
4 4-Ethylphenol (#36724)
min0 5 10 15 20 25
mAU
-250
0
250
500
750
1000
1250
1500
1750
2000
2.48
6 3,4-Dihydroxybenzoic acid (#08992)
min0 5 10 15 20 25
mAU
-200
0
200
400
600
800
1000
1200
1400 6.62
9 Vanillin (#PHR1245)
min0 5 10 15 20 25
mAU
-200
0
200
400
600
9.29
7 Phenethyl alcohol (#PHR1122)
min0 5 10 15 20 25
mAU
-200
-100
0
100
200
300
400
500
600
13.02
5 13
.403
14.11
5 14
.396
14.78
7 15
.335
15.79
7
2-Methoxy,-4-vinylphenol (#39189)
min0 5 10 15 20 25
mAU
-250
0
250
500
750
1000
1250
1500
1750
13.63
9 14
.245
15.55
4 15
.787
4-Ethylguaiacol (#39774)
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食
品
HPLC Method
Column: Ascentis C18 (581324-U) 150x4.6 mm id, 5 μm
Mobile Phase A: UHQ Water + 0.1%TFA
Mobile Phase B: ACN +0.1%TFA
Gradient: 20%B (3 min) to 95%B at 25 min (hold 5 min)
Flow Rate: 1ml/min
Temperature: 25 °C
Detection: 220 nm
UHPLC Method
Column: Ascentis Express C18 (53825-U) 150x2.1mm
id, 2.7 μm
Mobile Phase A: LC-MS Ultra Water + 0.1%FA
Mobile Phase B: LC-MS Ultra ACN
Gradient: 95%B (1 min) to 90%B at 10 min (hold 5 min)
Flow Rate: 0.9 ml/min
(0.5 ml/min for 2.1x50 mm column)
Temperature: 35 °C
Detection: UV-DAD (254, 275 nm)
MS: APCI(+) @ 450 °C, Bruker micrOTOF-Q II
表1 HPLCおよびUHPLCの方法についての詳細
図3
a) Sub 2 µm 粒 子 カラム(2.1 × 50 mm、競合他社)を用いたウイスキー試料。高速で、分離能は許容できるレベルであり、最適化された標準HPLCで実行可能です。
b) 同一のウイスキー試料および機器ですが、カラムが異なります(2.1 × 150 mm Supelco Ascentis® Express C18 カラム、2.7 µm)。分離は高速で、分離能は非常に良好、600 bar を超える圧力のためUHPLC機器が必要です。
図5 ウイスキー試料のUVおよび抽出イオンクロマトグラム。高感度質量分析計は未知化合物の分子式を計算するために必要であり、多種の化合物混合体の成分を同定する上で役立ちます。不都合にも、これらの化合物のいくつかは、例えばジヒドロキシ安息香酸またはクレゾールの異性体のように構造のみが異なります。したがって、正確な構造とクロマトグラフィーのピークとを結びつけるには、分析用スタンダードが不可欠です。
3
4
2.75 3.00 3.25 3.50 3.75 4.00 4.25 4.50 4.75 5.00 Time [min]0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
図4 同様の機器を用いた同一のウイスキー試料のUHPLCによる分離。カラムおよび流速のみ変更しました。ここで、最高のUVピークと最高のMSピークとは一致しません。このため、UVおよびMSの両検出器におけるピークの位置と形状をテストするためには、選択したスタンダードを用いたシステム適合性テストが重要です。
図2 7種類の典型的なウイスキー化合物の混合物
Peak
Number Compound
1 3,4-Dihydroxybenzoic acid (#08992)
2 Vanillin (#PHR1245)
3 2,6-Dimethoxyphenol (#53877)
4 Phenethyl alcohol (#PHR1122)
5 2-Methoxy-4-vinylphenol (#39189)
6 4-Ethylphenol (#36724)
7 4-Ethylguaiacol (#39774)
2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 3.8 Time [min]0
10
20
30
40
Ardbeg Whiskey 10 yrs APCI neg_BD8_01_14507.d: UV Chromatogram, 275 nm0
10
20
30
40
0
10
20
30
40
Intens.[mAU]
0 1 2 3 4 5 6 7 8 Time [min]
1
2
3
45
6
7
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品
Cat. No. Brand Description Package Size
Analytical Standards
89189 Fluka 2-Methoxy-4-vinylphenol 100 mg
53877 Fluka 2,6-Dimethoxyphenol 100 mg
08992 Fluka 3,4-Dihydroxybenzoic acid 50 mg
39774 Fluka 4-Ethylguaiacol 1 mL, 5 mL
36724 Fluka 4-Ethylphenol 1 g
PHR1122 Fluka Phenylethyl alcohol 2 g
PHR1245 Fluka Vanillin 1 g
HPLC columns
581324-U Supelco Ascentis® C18 HPLC Column; 5 μm particle size,
L x I.D. 15 cm x 4.6 mm
1 EA
53825-U Supelco Ascentis® C18 HPLC Column; 2.7 μm particle size,
L x I.D. 15 cm x 2.1 mm
1 EA
表2 ウイスキーの香気分析用注目の製品
3,4-ジヒドロキシ安息香酸(#08992)
OH
O
OHHO
4-エチルグアイアコール(#39774)
OH
OCH3H3C
図6 2種の主要フェノール化合物の分子構造
ウイスキー分析用フレーバーおよびフレグランスのスタンダードフェノール化合物の分析用スタンダードの他に、Sigma-Aldrichは、食品および化粧品の品質管理のために、広範囲にわたるフレーバーおよびフレグランスのスタンダードも提供しています。フレーバーおよびフレグランスの全スタンダードの最新の製品リストについては、食品および飲料の用途別、物質の種類別およびアルファベット順に分類していますので、sigma-aldrich.com/flavorをご覧ください。ブランデー、シェリー、ラム、日本酒、ワイン、サイダーおよびビールなどの他の酒類の特徴的な化合物の分析用スタンダードもご覧いただけます。
References
[1] Jefford, A.: Peat Smoke and Spirit: A Portrait of Islay and its Whiskies. Headline London, 2004.
[2] Restivo, A. et al: Development and Optimisation of an HPLC-DAD-ESI-Q-ToF Method for the Determination of Phenolic Acids and Derivatives, DOI: 10.1371/journal.pone.0088762.
[3] Lachenmeier et al: Forensic Science International, 158. 2006
1–8.
2015年 1月より「ポジティブリスト関連標準品」を大幅値下げいたしました。標準品をご購入の際には、是非シグマアルドリッチの価格をご確認ください。
食品中の残留農薬等の分析は詳細は下記URLからhttp://www.aldrich.com/pest-jp
sigma-aldrich.com/fl avor
ポジティブリスト関連標準品
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10
環
境
ヒ素には短期的および長期的な影響があります。たとえば皮膚障害、高血圧および循環器疾患、肺疾患ならびに皮膚、膀胱、腎臓、肺など種々のガンが含まれます。
ヒ素の存在形態は、有機および無機の様々な形があります。有機ヒ素化合物の毒性は個々の化合物によって異なります。魚介類に見られるアルセノベタインがほとんど無毒性である一方で、ルイサイト(2-クロロエテニルアルシンジクロリド)は、第一次世界大戦の間、化学兵器として開発された物質です。また、無機ヒ素には価数の異なる三価ヒ素と五価ヒ素が含まれます。これらの毒性はいずれも非常に有毒です。しかし、これらを除去する場合には、水中でのヒ素の価数によって効率が異なることが研究からわかりました [2]。
ヒ素の定量方法全ヒ素の定量に利用できる技術は多数ありますが、天然水中に溶解するヒ素の実際の濃度レベル(数µg/L)になると、有用な解析手法の数は減り、原子吸光分析、ICP誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)、ICP質量分析法(ICP-MS)、分光光度法および蛍光X線だけになります。
ヒ素(III) および ヒ素(V)の分析ヒ素分析の為の新しい認証標準物質(CRM)
Hanspeter Sprecher, Senior Scientist R&D [email protected]
Jürg Wüthrich, Principal Scientist R&D [email protected]
Markus Pfluger, Supervisor Quality Control [email protected]
TraceCERT®シリーズに、ヒ素分類分析用の新製品が2つ追加されました。この製品は ISO/IEC 17025および ISO Guide 34 の 2つの認定の下製造された認証標準物質(CRM)です。
ヒ素は世界的に大きな健康問題となっており、WHOによって世界中で大きな健康不安をもたらす10の化学薬品のうちの1つに挙げられています [1]。ヒ素は天然に存在し、空気、土および水の至る所に分布します。公衆衛生上の最も大きな脅威は、汚染された地下水です。汚染された地下水によって飲料水や食物が汚染されます。世界の数カ国、特に中国、メキシコ、チリ、アルゼンチン、インド、タイ、台湾および米国は、地下水中に天然に存在する無機ヒ素の問題に直面しています。1990 年代、バングラディッシュで井戸水中からヒ素が見つかり、大きな注目を集めました。この井戸は、地元の住民に対して、それまで地表水に依存していた給水を、「安全な」飲料水として提供するために1970 年代から1980 年代にかけて設置されたものでした。井戸が設置された当時は、ヒ素は問題として認識されていませんでしたが、その後行われたテストではいくつかの井戸で濃度が300 µg/Lに及ぶことがわかりました。WHOは最大基準濃度10 µg/Lと勧告しており、米国と欧州連合を含む数カ国は、この値を適用しています。その他の国では、基準値を50 µg/L から10 µg/Lに改定しているところです。
sigma-aldrich.com/inorganiccrm
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環
境
三価ヒ素及び五価ヒ素を決定するためには、クロマトグラフィー、ポーラログラフィー [3]、分光光度法 [4] などの方法を適用することができます。ヒ素の全量分析にEPAは、EPA Method 200.7(「誘導結合プラズマ原子発光分光分析による水および廃棄物中の金属および微量元素の定量」)を使用するよう推奨しています。この方法に従えば 8 µg/Lまで検出限界を下げることができます。
認証コンセプト三価ヒ素標準溶液(製品番号 72718)の認証手順をフローチャートに示します(図1)。最適な出発原料として1バッチで製造した三酸化ヒ素を評価します。まずは、すべての微量不純物(69元素)を ICP-MS、ICP-OESおよびAASで分析します。100%からこれらの微量不純物を差し引いて内容量を算出し、これを用いて重量法でヒ素溶液を製造します。その後クリーンルーム環境下で、高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルにでき上がったヒ素溶液を充填します。さらに、保管期間を最適にするためアルミニウムバッグに入れてお届けします。
図2 五価ヒ素添加したクロマトグラフ分離の例。ICP-MS操作条件の詳細:Perkin Elmer Elan DRC II、RF電力1500 W、ネブライザーガス1.3 mL/min、セルガスフロー 酸素0.55 mL/min
三価ヒ素標準溶液中の五価ヒ素の内容量は、標準添加法を用いて IC分離後に ICP-MS分析を行って測定します。コリジョンセルガスに酸素を使えば、よりよいS/N比(75As に対する 40Ar35Clの妨害が減る)が得られます。測定した五価ヒ素の濃度を全ヒ素濃度から引き、三価ヒ素の認証値を得ます。
図2に記載した認証手順に従えば、拡張測定不確かさ0.3%が達成できます(95%の信頼水準の拡張係数 k = 2)。不確かさの最大の要因は、最終的な三価ヒ素溶液中の五価ヒ素濃度(0.1%)、密度測定(0.05%)、ボトル充填溶液の全保管期間にわたる保管(0.05%)、出発原料中のヒ素含量(0.02%)、秤量(0.02%)および均一性( 0.02%)です。
Cat. No. Description Matrix Packaging
72718 ICP用三価ヒ素標準物質 2% HCl 100 mL HDPEボトル/アルミバッグ入り
76686 ICP用五価ヒ素標準物質 water 100 mL HDPEボトル/アルミバッグ入り
表1 イオンクロマトグラフィー、分光光度法または ICPで利用可能なFlukaブランドの3価および 5価のヒ素標準物質。弊社WEBサイト(sigma-aldrich.com)で製品番号とロット番号を入力しても認証書を入手できます。
TraceCERT® シリーズは、150を超える ICP、AAS およびIC 用の単一および複数成分の混合溶液の認証標準物質(CRM)をご用意しております。全製品は、ISO/IEC 17025 および ISOGuide 34 に従って製造されます。最新の製品リストについては、弊社のウェブサイト sigma-aldrich.com/inorganiccrmをご覧ください。
References:
[1] www.who.int/mediacentre/factsheets/fs372/en/[2] EPA 815-R-00-028, Technologies and Costs for Removal of
Arsenic from Drinking Water, Dec 2000.[3] Chakraborti, D.; Nichols, R.; Irgolic, K.: Fres. Z. Anal. Chem.
1984, 319, 248 –251.[4] Narayana, B.; Cherian, T.; Mathew, M.; Pasha, C.: Ind. J. Chem.
Tech. 2006, 36–40.
図1 ICP用三価ヒ素標準物質(製品番号72718、ロットBCBL5236V)の認証コンセプトとデータ
Starting Material
Content
wAs2O3 = 99.982%
Total As
in Solution
1000.2 mg/L
Certified As(III)
in Solution
1000 mg/L ± 3 mg/L
As(V) Traces in
Solution
0.8 mg/L
Traceability
Measurement
against NIST 83
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12
臨床/BioAnalysis
サンプル調製方法の開発:分析対象物の回収に影響を及ぼす要因サンプル調製方法の開発のために、HybridSPE-Phospholipid 96ウェルプレートから標準物質を回収する方法を確立し、次にその条件を分析対象物が添加された血漿サンプル用に適用しました。最適化は、沈殿溶媒を評価することで行いました。血漿サンプル用に分析対象物の十分な回収方法が確立された後、研究の最後に、HybridSPE-Phospholipid 技術を、リン脂質除去のために一般に認められたタンパク質沈殿法と比較しました。
HybridSPE®-Phospholipidは分析対象物となっている難しい化合物を優れた回収率で血漿サンプルから回収し、その後のAscentis® Express Fused-Core® C18カラムでのLC/MS/MS分析につなげます。抽出物には、定量を妨害し、カラム寿命を縮める可能性のあるサンプルマトリックス由来のリン脂質がありませんでした。
はじめに臨床検査のいくつかの項目において、免疫学的検査からLC/MS/MSへ変更する傾向が高まっています。LC/MS/MSを使用する事で、抗体の入手可否によって制限されず、分析特異性を改善し、複数の分析対象物の分析を同時に行う事ができます。しかし、LC/MS/MSにも制限がないわけではありません。最もよく知られているものはサンプル由来のマトリックスの妨害です。分析対象物の応答が、一見ランダムでバックグラウンドからの識別が恣意的になってしまうことにつながります 1。
研究の目的本研究の目標は2つあります。1つ目は、プロゲステロン、アルドステロン、コルチコステロン、デオキシコルチコステロン、テストステロンおよび17α-メチルテストステロンなどのステロイドホルモンを、血漿から直接分析するため、HybridSPE-Phospholipidプレートを用いたサンプル調製を含む簡便なLC/MS/MS方法を開発することです。2つ目は、サンプルマトリックスからのバックグラウンドを、得られたサンプル調製方法と標準化されているタンパク質沈殿法とで比較することです。
実験LC/MS/MSの条件ステロイドホルモンの化学構造を図1に示します。Ascentis Express C18カラムのクロマトグラフィー条件を確立するために、ステロイドホルモンの混合物を使って事前評価を行いました。処理した血漿サンプルのマトリックスをモニターできるよう、グラジエントプロフィールを延長しました。
HybridSPE-Phospholipidの原理HybridSPE-Phospholipid 技術は、生体サンプルからタンパク質とリン脂質を同時に除去するため、よく行われている簡単なタンパク質沈殿法と固相抽出法の選択性とを組み合わせたものです。固相抽出管内でPTFEフリッツがデプスフィルターの働きをしてタンパク質を沈殿除去し、ジルコニア結合シリカゲルにリン脂質が化学吸着し効率的に除去します。HybridSPEのジルコニア結合シリカゲルのジルコニア原子はルイス酸(電子対受容体)として働き、リン脂質のリン酸基は強いルイス塩基(電子対供与体)としてシリカ表面のジルコニアと相互作用します。これにより、リン脂質を選択的に保持したまま、広範囲の分析対象物質を溶出することが可能です 2。
血漿中ステロイドホルモンのLC/MS/MS分析のためのサンプル調製法の開発と最適化
Craig Aurand, Principal Scientist, Bioanalytical Research [email protected]
sigma-aldrich.com/bioanalysis
図1 ステロイド ホルモン
O
CH3
H
H
OH
H
OO
OH
O
O
CH3OH
CH3
OH
H
H
H
O
O
CH3
CH3
OH
H
H H O
C H 3
C H 3O H
H
HH
O
OH
CH3
CH3C H3
O
O
CH3
CH3
CH3
H
H
H
Aldosterone (Chelating) Corticosterone (Nonchelating)
Deoxycortisone (Nonchelating) Testosterone (Nonchelating)
17α-Methyltestosterone
(Nonchelating)
Progesterone (Nonchelating)
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13
臨床/BioAnalysis
HybridSPE®-Phospholipidを用いた標準溶液の分析対象物の回収HybridSPE-Phospholipid 96ウェルプレートを用いた方法の開発のために、まず標準溶液から6種のステロイドを回収しました。各化合物の10~ 300 ng/mL溶液を1%(v/v)ギ酸含有アセトニトリル:水(3:1)で作製し、これを用いて外部標準校正曲線を作成しました。スタ ン ダ ード 溶 液(50 ng/mL)を 300 µL 分 取 し、HybridSPE-Phospholipid 96ウェルプレートに添加しました。10" Hgで 4分間真空にしました。その後、サンプルを直接分析しました。
HybridSPE-Phospholipidを用いた血漿からの分析対象物の回収血漿サンプルの沈殿のためにHybridSPE-Phospholipidで使用する一次溶媒は、1%(v/v)ギ酸含有アセトニトリルです。血漿サンプルと3:1の比率で用いると、この溶液は効果的に血漿タンパク質を沈殿させます。ギ酸は目標分析対象物とタンパク質との結合も切断し、感度を上昇させます。しかし、分析対象物がキレート特性を持つ場合には、沈殿添加物として、前処理ステップで0.5%(w/v)のクエン酸を含むアセトニトリルを用いると、ジルコニア結合シリカゲルからの回収率が高まります。
ギ酸系:1%(v/v)ギ酸含有アセトニトリル:水(3:1)K2EDTAで安定化したラットの血漿(Lampire Biological Laboratories、パイパーズビル、ペンシルベニア)に分析対象物質の標準溶液を添加しました。100 µLをHybridSPE-Phospholipidプレートに加えた後、300 µL の 1%ギ酸 -アセトニトリル溶媒を加えました。プレートをボルテックスで 4分間撹拌し、バキュームマニホールドで10" Hgの真空に4分間置きました。ろ液を回収して直接分析しました。最終的なサンプル調製後のステロイドホルモンの濃度は50 ng/mL相当でした。回収率は、緩衝液中の分析対象物の標準曲線の内挿で求めました。
クエン酸系:0.5%(w/v)のクエン酸含有アセトニトリル(化合物とキレート形成させるため)以下の2つのステップを除いて、クエン酸の手順は上述のギ酸の手順と同様でした:沈殿溶媒は、0.5%(w/v)クエン酸含有アセトニトリルでした。HybridSPE-Phospholipidプレートを、1ウェルあたり300 µLの 0.5%(w/v)クエン酸含有アセトニトリルで、まず前処理しました。
血漿サンプルマトリックス由来のリン脂質のモニタリング分析対象物を添加した血漿サンプルを、0.5%のクエン酸アセトニトリルを用いて沈殿させ、直接分析しました。リン脂質モニタリングは、m/z 104 の前駆体イオンスキャンに加えてQ3フルスキャンを使って行いました。この分析ために利用したグラジエントクロマトグラフィー条件により、高い有機条件下でリン脂質の溶出が可能になります。
結果および考察6種のステロイドホルモンをAscentis® Express C18からグラジエント溶出し、LC/MS/MS検出した結果を図2に示します。
分析対象物の回収率表1は、HybridSPE-Phospholipidプレートによって抽出したステロイド化合物の回収率データを、ギ酸系を用いて標準溶液を抽出した場合と、同様にギ酸およびクエン酸系を用いて血漿に標準溶液を添加したサンプルを抽出した場合について示しています。表には、反復試験サンプル(n = 8)の測定濃度の平均、標準偏差および変動係数(% c.v.)が挙げてあります。
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表1 HybridSPE-Phospholipidプレートから分析対象物の回収
分析条件は、図2に示します。クエン酸系を用いると、回収率が上昇し、変動が減少する点に注目してください。
図2 ステロイドホルモンのLC/MS/MS分析 column: Ascentis Express C18, 10 cm x 2.1 mm I.D., 2.7 μm particle size
(53823-U)
mobile phase: (A) 5 mM ammonium formate, pH 4.0 with formic acid; (B)
methanol
gradient: 60% B for 3 min, to 95% B in 5 min, held at 95% B for 2 min
flow rate: 0.3 mL/min
column temp: 50 °C
pressure: 90 bar
detector: ESI(+), MRM
injection: 2 μL
sample: 50 ng/mL of
each compound
system: Shimadzu LC-30AD,
LCMS8030
Min
0 2 4 6 8
1 2
3
45
6
1. Aldosterone 361.0/343.1
2. Corticosterone 347.6/109.0
3. 11-Deoxycorticosterone 331.1/109.0
4. Testosterone 289.0/109.0
5. 17α-Methyltestosterone 303.1/97.0
6. Progesterone 315.0/109.1
MRM Transition
AnalyteObserved
Concentration Std. Dev. (n=8) % cv.A. Standards (50 ng/mL) in 1% formic acid acetonitrileAldosterone 2.70 1.83 67.75
Deoxycorticosterone 25.13 1.04 4.15
Cortocosterone 14.76 2.46 16.65
Progesterone 57.27 0.95 1.66
Testosterone 59.23 1.16 1.96
17α-Methyltestosterone 57.15 1.21 2.11
B. Spiked plasma (50 ng/mL) extracted using formic acid systemAldosterone 1.87 0.83 44.39
Deoxycorticosterone 54.58 1.10 2.02
Cortocosterone 54.31 3.86 7.11
Progesterone 54.09 0.99 1.83
Testosterone 55.75 0.76 1.36
17α-Methyltestosterone 54.30 0.93 1.71
C. Spiked plasma (50 ng/mL) extracted using citric acid systemAldosterone 45.03 1.89 7.55
Deoxycorticosterone 54.32 2.55 4.10
Cortocosterone 56.23 3.91 5.47
Progesterone 51.40 1.58 4.30
Testosterone 51.66 1.28 3.62
17α-Methyltestosterone 61.68 1.53 3.76
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臨床/BioAnalysis
sigma-aldrich.com/bioanalysis
同時抽出したリン脂質マトリックスのモニタリング図3は、HybridSPE-Phospholipid 技術とタンパク質沈殿法それぞれのマトリックスモニタリングクロマトグラムを示します。HybridSPE-Phospholipidを用いて処理した血漿サンプルは、標準タンパク質沈殿法で処理したものと比較して、検出可能なマトリックス干渉がありませんでした。標準タンパク質沈殿法由来のリン脂質マトリックスは、目標とする分析対象物と直接共溶出しませんでしたが、このことはなおMS源の汚損に対する懸念となっています。リン脂質マトリックスは、その後のサンプルにクロマトグラフィーのキャリーオーバーを引き起こし、その結果ランダムな干渉とカラム破損の可能性をもたらします。
まとめHybridSPE-Phospholipidプレートの0.5%クエン酸 -アセトニトリルシステムでは、分析対象物を優れた回収率で回収でき、血漿サンプルから高い効率でリン脂質を除去できました。本研究は、特に難しい分析対象物に直面したときも、簡単で効果的な手法があることを示しています。ここに示した例では、ギ酸法ではステロイド化合物の回収率は当初低いものでしたが、キレート化の相互作用を除去するクエン酸法を採用することで克服されました。この方法では、テストしたすべてのステロイドについて標準溶液および標準溶液を添加した血漿サンプルのいずれからでも、高い回収率と低いバラツキで回収できました。クエン酸法は、マトリックスからリン脂質を除去することにも非常に効果的でした。結論として、一般的なプロトコルを軽微に修正するだけで、HybridSPE-Phospholipidはマトリックスを減少させるのに効果があり、難しい、キレート性の分析対象物を優れた回収率で回収できることが示されました。HybridSPE-Phospholipidは、生体試料のLC/MS分析において、マトリックス効果を減少させるために効果的で簡単なLC/MSサンプル前処理技術です。
References
1. Aurand, C. Understanding, Visualizing, and Reducing the Impact of Phospholipid-
Induced Ion Suppression in LC-MS; Supelco Reporter 30.2: 10-12. http://www.
sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Supelco/The_Reporter/1/
T212002.pdf
2. HybridSPE-Phospholipid Technology Home Page.
sigma-aldrich.com/hybridspe-pl (accessed February 11, 2014).
Featured Products
Description Cat. No.HPLC ColumnAscentis Express C18, 10 cm x 2.1 mm I.D., 2.7 μm particle size 53823-USample Prep Plates and AccessoriesHybridSPE-Phospholipid 96-Well Plates, bed wt. 50 mg,
volume 2 mL
575656-U
HybridSPE-PLus Plate Essentials Kit (Includes HybridSPE-PLus
96-well plate (575659-U), one plate cap mat (as in 575680-U),
one sealing film (Z721581) and one collection plate (Z717266)
52818-U
96 Round/Deep-Well Collection Plate, polypropylene Z71726696 Well-Plate Pre-cut Sealing Films, pk of 100 Z721581Supelco PlatePrep Vacuum Manifold 57192-UMobile Phase ComponentsWater LC/MS Ultra CHROMASOLV®, tested for UHPLC/MS 14263Acetonitrile LC/MS Ultra CHROMASOLV, tested for UHPLC/MS 14261Methanol LC/MS Ultra CHROMASOLV, tested for UHPLC/MS 14262Formic acid, eluent additive for LC/MS 56302Ammonium formate, LC/MS Ultra eluent additive 14266Cerilliant Certified Reference MaterialsAldosterone, 100 μg/mL in acetonitrile A-096Corticosterone, 1.0 mg/mL in methanol C-11711-Deoxycorticosterone, 100 μg/mL in methanol D-105Testosterone, 1.0 mg/mL in acetonitrile T-03717α-Methyltestosterone, 1.0 mg/mL in 1,2-dimethoxyethane M-906Progesterone, 1.0 mg/mL in acetonitrile P-069
ギ酸法では標準溶液で、アルドステロン、コルチコステロンおよびデオキシコルチコステロンの回収率が低く、変動が大きくなりました。これらの化合物にあるカルボニル/カルボン酸の部分がHybridSPE®のジルコニア結合シリカゲルの表面でキレート化するのが原因です。アルドロステロンとプロゲステロンの構造を図1で比較すると、アルドロステロンをキレート化しやすくするヒドロキシル基とカルボニルの位置を確認できます。血清または血漿から抽出すると、HybridSPE-Phospholipidからの分析対象物の回収率が、標準溶液から抽出するより高くなると予想されました。これは、リン脂質が血漿サンプル中に多量に含まれ、ルイス酸であるジルコニア分子とHybridSPE-Phospholipid粒子上で強く相互作用し、それによって、敏感な分析対象物からこれらの部位がマスクされるからです。表1Bはこの予想を支持します。血漿から抽出されるコルチコステロンとデオキシコルチコステロンの回収率とバラツキは、水溶性のスタンダードからの抽出の場合より大幅に改善されていました。しかし、血漿からのアルドステロン回収率は、ギ酸法では依然として低いままでした。
ギ酸をクエン酸と入れ替えることによって、キレート化現象は克服することが可能です。クエン酸はキレート剤として作用し、HybridSPE-Phospholipidの添加物として利用されると、ジルコニア表面につながる働きをします。クエン酸でプレートをあらかじめ前処理すると、キレート化合物の保持を妨げますが、リン脂質の選択的な保持は妨げません。表1Cは、プレコンディショニングステップとともに沈殿添加物としてクエン酸を使用すると、HybridSPE-Phospholipid粒子からのキレート化合物の回収率と再現性とが大幅に高まることを示しています。
図3 同時抽出したリン脂質マトリックスのモニタリング column: Ascentis® Express C18, 10 cm x 2.1 mm I.D., 2.7 μm particle size
(53823-U)
mobile phase: (A) 5 mM ammonium formate, pH 4.0 with formic acid;
(B) methanol
gradient: 60% B for 3 min, to 95% B in 5 min, held at 95% B for 2 min
flow rate: 0.3 mL/min
column temp: 50 °C
pressure: 90 bar
detector: ESI(+), MRM
injection: 2 μL
sample: 50 ng/mL of each compound
system: Shimadzu LC-30AD, LCMS8030
0 2 4 8 10
Time (min)
6
標準タンパク質沈殿法HybridSPE-Phospholipid
時間(分)
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15
医
薬
溶解性試験は医薬品の品質管理と開発における必須の構成要素であり、錠剤などの固体の経口剤形からの薬効成分の放出に関する重要な情報を測定するために用いられます。溶解方法および溶解溶剤の組成は、総論と
「水を加えるのみ」 の溶解性試験用濃縮試薬欧州薬局方および米国薬局方を遵守する濃縮試薬で時間とコストを削減
Matthias Drexler, Product Manager Analytical Reagents [email protected]
各モノグラフに詳述されています。溶解溶剤用のFluka濃縮試薬は、文献で推奨されるように、目的の容量に希釈した後直ちに使用するように設計されています。
溶解性試験用濃縮試薬は・秤量と調製ステップがないので時間を節約できます・ 6L、10L、25Lの幅広いラインアップで、お客様の希望の容量でお使いいただけます
詳細な情報と入手については、sigma-aldrich.com/dissolutionをご覧ください。
Cat. No. Brand Description Volume of
Concentrate
Dilute to Conforms to
Pharmacopeia
07377 Fluka® Acetate buffer concentrate pH 4.5 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
04319 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
78359 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
04616 Fluka Hydrochloric acid concentrate, 0.01N 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
43733 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
77498 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
90433 Fluka Hydrochloric acid concentrate, 0.1N 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
77528 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
94947 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
42674 Fluka Potassium phosphate buffer concentrate pH 5.8 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
75972 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
23863 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
73579 Fluka Potassium phosphate buffer concentrate pH 6.0 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
01476 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
44004 Fluka Potassium phosphate buffer concentrate pH 6.8 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
91262 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
95411 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
94951 Fluka Potassium phosphate buffer concentrate pH 7.2 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
78468 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
56940 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
04318 Fluka Potassium phosphate buffer concentrate pH 7.4 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
41224 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
92475 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
95701 Fluka Potassium phosphate buffer concentrate pH 7.5 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
75583 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
75014 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
01651 Fluka Simulated Gastric Fluid without Enzyme 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
18818 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
14666 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
55331 Fluka Simulated Intestinal Fluid without Enzyme 230.8 mL 6 L Ph. Eur & USP
53757 Fluka 250 mL 10 L Ph. Eur & USP
68856 Fluka 961.5 mL 25 L Ph. Eur & USP
89372 Fluka Sodium dodecyl sulfate concentrate, 0.50% 400 mL 6 L USP
75608 Fluka 500 mL 10 L USP
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医
薬下表に、この新しい使用期限方針を付けた2014年生産の医薬品二次標準物質の一部記載しています。医薬品二次標準物質のすべてのラインアップはSigmaaldrich.com/pharmastandardsをご覧ください。
Cat. No. Description
PHR1531 2-Acetamidophenol (Acetaminophen RCC)
PHR1530 Acetanilide (Acetaminophen RCD)
PHR1551 Acetonitrile
PHR1507 2-Amino-5-Chlorobenzophenone
PHR1501 Aminobutanol
PHR1689 Ammonium Glycyrrhizate
PHR1489 L-Arabinitol
PHR1454 Arginine Hydrochloride
PHR1455 Ascorbyl Palmitate
PHR1381 Aspartame
PHR1559 Bacitracin Zinc
PHR1681 Benzalkonium Chloride 50% Solution
PHR1310 Benzene
PHR1019 Benzyl Alcohol
PHR1502 Berberine Chloride
PHR1239 Beta Carotene
PHR1456 Bis-2-(ethylhexyl)maleate
PHR1563 2-Butanol
PHR1621 Butoconazole Nitrate
PHR1095 Caffeine Melting Point Standard
PHR1405 Capecitabine
PHR1450 Capsaicin
PHR1511 Carbachol
各国薬局方の二次標準物質有効期限(expiration date)の方針を変更しました
Pat Brumfield, Product Manager Analytical Standards [email protected]
現在、弊社ではお客様からの要望により、医薬品二次標準物質製品群の有効期限(expiration date)の方針を、「購入後1年間」から「ロットごとの固有の有効期限」へと移行しつつあります。
この製品群を開発した際、USP、EP、BPの製造者がどのような有効期限の方針を採用しているか調査したところ、製品に固有の有効期限を設けていない事がわかりました。USPは、ロットがなくなった1年後に、標準物質を「使用期限終了」としており、EPは、ロットがなくなった6カ月後に、標準物質を「使用期限終了」としています。また、BPはロットの有無にかかわらず発送から3カ月で使用期限終了とします。弊社は二次標準物質において、法的な資格を保持するために製品の適合性の確認をする必要があるため、これまで有効期限の方針を「受領から12カ月」としてきました。これは2014 年より前に生産されたロットの在庫がなくなるまで有効です。
2014 年以降に発売されたすべての新しいロットは、固有の有効期限へ既に移行しました。製品ごとに割り当てられる有効期限は製品によってそれぞれ異なりますが、すべての製品に最短で1年の期限を保証しております。
sigma-aldrich.com/pharmastandards
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新技術
水溶性でリンを含むCRMは広く流通しており、その代表 は、NIST SRM 194a(NH4H2PO4)で す。こ れ は 31P qNMR測定においてトレーサビリティを確立するための一次標準として使用することができます。しかし、ジメチルスルホキシドまたはメタノールなどの一般的な有機溶媒に可溶なリンを含む一次CRMでは状況が異なります。現在は国家計測標準研究所(NMI)の一次CRMなど国際的に認められた標準物質がないため、有機化合物の場合NIST SRMまでの直接のトレーサビリティは不可能です。その理由で基本コンセプトは、1H qNMRを用いプロトンを介して定量を行い、確認された値を用い、31P qNMRを用いリンを介して分析対象物の純度を測定する方法としました。水溶性のCRM候補としてはホスホノ酢酸とし、また、有機溶媒に可溶な物質の候補としてリン酸トリフェニルを候補としました。これらの物質はいずれも、1Hと 31Pの両方の原子核を有しています。本稿では、上記コンセプトの妥当性確認のために、リン酸トリフェニルとホスホノ酢酸を 31P qNMRスタンダードとして用い、分析対象物としてリン酸トリス(2-クロロエチル)の純度を測定しました。
まず、サンプルと内部標準との間の化学的適合性をチェックする予備試験を行いました。その方法は、混合物を調製し、直後および 24時間後にプロトンスペクトルと、状況によっては 31P NMRスペクトルを得る方法です。ポテンシャルピークの重なり、ならびに分析対象物とスタンダード間の反応、あるいは溶媒との反応がないことを確認する必要がありました。不純物が対象のピークの下に存在しないことを確かめるために、0.05%未満のピーク強度の不純物が検出できる、2D NMRを用いて評価を行いました。定量測定の前に、種々の重水素化溶媒中で T1緩和時間を反転回復法実験によって測定しました。緩和遅れが少なくともT1の 7倍に調整されるので、緩和時間は短い方が適しています。緩和時間は混合物中でわずかに異なる可能性があるので、実験の全体的な緩和時間を計算するには、混合物での最長の値を用います。以降のステップで、候補物質の吸湿性と揮発性の確認を行いました。というのも、両化合物の特性が重量結果や定量結果に強く影響を及ぼすからです。
31P qNMR用トレーサブル有機認証標準物質リン定量用の新しいツール
リンは、核酸(例えばDNA)、高エネルギーリン酸塩(例えばATP)、リン脂質など生理的プロセスで重要な役割を担っています。リン酸化と脱リン酸化反応はタンパク質レベルで敏速に起こっているプロセスで、代謝の制御に不可欠です。生理的経路、速度論、メタボロミクスおよび疾患に関する研究は、バイオマーカー探索と並んで重要な研究分野であり、リン酸化された有機化合物と代謝物の定量用に認証標準物質(CRM)が必要です。NMRによる定量は、分析対象物と内部標準または外部標準とのピークの比に基づいています。そのためクロマトグラフィーなどの他の方法とは異なり、使用する標準物質と分析対象物の化学構造が異なっていてもよく、さらにqNMRは、極めて純度の高い一次標準物質を用いるので、測定の不確かさを抑えられる非常に正確な方法です。またSI単位系(Système International d'Unitès)へのトレーサビリティも確保し、1Hまたは 31Pなどの他の原子核用の標準物質の認証を可能にします。本稿は、CRMの開発のための 31P qNMR測定による定量のコンセプトを示して、国立標準技術研究所(NIST SRM)の一次標準物質へのトレーサビリティを確立するための手法を記載します [1]。
Christine Hellriegel, Senior Scientist R&D [email protected]
Alex Rück, Supervisor R&D [email protected]
図1 2つのリンCRM候補の定量のコンセプト
安息香酸NIST SRM
1H qNMR測定31P qNMR測定
1H qNMR CRM
分析対象物
31P qNMR CRM候補物質
テレフタル酸ジメチル
リン酸トリフェニル
リン酸トリス(2-クロロエチル)
フタル酸水素カリウム
SI単位系
ホスホノ酢酸
リン酸二水素アンモニウム
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新技術
図2 リン酸トリフェニル(青)、ホスホノ酢酸(赤)およびリン酸トリス(2-クロロエチル)(黒)の 1H NMRスペクトル。全物質をDMSO-d6に溶解しました。
図3 D2O中のリン酸二水素アンモニウム(茶色)、CDCl3 中のリン酸トリフェニル(青)、D2O中のホスホノ酢酸(赤)およびCDCl3 中のリン酸トリス(2-クロロエチル)(黒)の 31P NMRスペクトル
CRM候補物質「ホスホノ酸」の定量プロトンおよびリンピークのどちらを使って純度を測定しても、qNMR測定では測定値が偏らないということを証明するため、ホスホノ酢酸を 31Pおよび 1H qNMR測定によって定量しました。まず、参照物質としてリン酸二水素アンモニウム(NIST SRM 194a)を用いた31P qNMRでホスホノ酢酸の含量を測定し、結果として99.26%±0.75%の純度値を得ました。次に、参照物質としてフタル酸水素カリウム(NIST SRM 84L)を用いた1H qNMRで測定し、結果として99.32%±0.17%の純度値を得ました。図4に示すように、2つの独立したトレーサビリティチェーン、および異なる原子核のqNMR測定を介して得られたこれらの2つの結果は完全に一致し、拡張不確かさの範囲で重なります。
CRM候補物質「リン酸トリフェニル」の定量ホスホノ酢酸の定量に 1Hおよび 31P qNMR実験を実施し、核から測定される純度値が独立していることが証明されたので、リン酸トリフェニルも1H qNMRによって定量することができるはずです。芳香族領域のピークが重なるため、安息香酸はプロトンNMRの標準物質として直接利用することには適していませんでした。したがって、NIST SRM 350b(安息香酸)までトレーサブルな内部参照スタンダードとしてCRMテレフタル酸ジメチル(Fluka® 07038)を用いて、トレーサビリティチェーンを確保しました。リン酸トリフェニルの含量は、99.95%±0.22%であると測定されました。この値は 1H qNMR測定によって測定したものですが、上記で証明されたように、1Hおよび 31P qNMR測定のいずれでも引き続き用いることができます。この結論に関してあらゆる疑いを除去し上記コンセプトを証明するために、次に示すようにプロトンとリンとを含むサンプルを選択し、2つの31P qNMR CRM候補による定量を行いました。
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新技術
結論31P qNMR CRM用認証コンセプトによって、2種の原子核を用いたqNMRを使ってSI単位系へのトレーサビリティを確立できるということを示しました。このコンセプトの範囲内で、1Hまたは 31P測定を使った単一物質(ホスホノ酢酸(Fluka® 96708))の純度値が互いに完全に一致するということが証明されました。このコンセプトを利用して、リン酸トリフェニル(Fluka 05498)の含量の定量を 1H qNMRで行い、その純度を持つ 31P qNMR CRMをその後用いました。次いで、分析対象物(リン酸トリス(2-クロロエチル))の純度を、いくつかのトレーサビリティチェーンおよび溶媒系を使って測定しました。結果が測定不確かさの範囲内で一致しているので、認証コンセプトの堅牢性がわかります。これらの 31P qNMR CRMの使用方法は、上記リン酸トリス(2-クロロエチル)(分析対象物)の測定に示されています。本稿に記載された研究は、31P qNMR測定方法の妥当性検証を成功させる重要なステップを示しています。詳細な情報ならびに1Hおよび 31P qNMR用の入手可能なCRMについては、弊社のウェブサイト sigma-aldrich.com/qnmrをご覧ください。
References:
[1] Weber, M.; Hellriegel, C.; Rueck, A.; Wuethrich, J.; Jenks, P.; Obkircher, M. Method development in quantitative NMR towards metrologically traceable organic certified reference materials used as 31P qNMR standards, Anal Bioanal Chem, DOI 10.1007/s00216-014-8306-6.
31P qNMRによるリン酸トリス(2-クロロエチル)の定量リン標準物質のための上記の認証コンセプトにおいて、上記で選択した2つの候補化合物は、いずれも 1Hおよび 31Pの両方の原子核を含んでいます。リン酸トリフェニルおよびホスホノ酢酸を、プロトンやリンを介して定量した後、得られた純度値を 31P qNMR法による以降の純度測定に用いました。31P qNMRに基づくリン酸トリス(2-クロロエチル)の定量では、参照としてリン酸トリフェニルを用いると98.43%± 0.66%の純度が、ホスホノ酢酸を用いると98.45%±0.44%の純度が得られました。さらに、1Hの qNMRに基づくリン酸トリス(2-クロロエチル)の定量では、参照としてリン酸トリフェニルを用いると98.41%±0.53%の純度が、ホスホノ酢酸を用いると98.88%±0.52%の純度が得られました。異なる原子核および異なるトレーサビリティチェーンに由来するこれらの結果のすべてを図5に要約し、データの一貫性を拡張不確かさの共通部分によって示します。溶解度が異なる(極性と無極性)ため、1本のNMRチューブでリン酸トリフェニルとホスホノ酢酸を両方とも混合して定量することはできませんでした。実験が互いに独立していたことにご注意ください。また、異なる測定システムのテストではそれぞれ、重水素化溶媒を選択し、緩和時間などの適切な取得パラメーターを精査して、適切な対照スタンダードを見つけなければなりませんでした。
測定の不確かさ上記に示した実験における純度の定量値は、いわゆる内部標準法に基づいたもので、分析対象物ピークは、内部の参照ピークと直接比較されます。この手法は、1Hだけでなく、31Pピークにも適用できます。CRMの含量は、最終的にパーセント重量分率で表します。空気の浮力補正からのマイナーな不確さの寄与でさえも考慮し、各々の秤量ステップの間、環境データを記録しました。不確かさの計算は、確立したガイドラインに基づきます。合成標準不確かさはシステム的寄与だけでなく統計的寄与によって測定されます。統計的寄与は秤量の再現性およびピークの積分の再現性に起因します。考慮したシステム的寄与は様々あり、空気の浮力補正、天秤のパラメーター、分子量および参照物質の純度(重量分率として表される)などになります。位相補正およびピークの積分は手動で行ったので、オペレーターごとにわずかに異なる可能性があります。この個人の影響は、全体的な不確かさの範囲において、「個人の積分寄与」として考えられます。31Pは相対感度が0.0665であり、このことは 1H(感度は1.00)より低感度であることを意味し、それによってS/N比が低くなります。このことは、分析対象物濃度を高くするまたはスキャン回数を増やすことによって補正することができますが、分析対象物濃度を高くすると溶解度が低下し、結果として粘度が高くなりピークがブロードになる可能性があることを考慮しなければなりません。
カタログ番号
ブランド 内容 容量
07038 Fluka® テレフタル酸ジメチル 1 G
96708 Fluka ホスホノ酢酸 1 G
05498 Fluka リン酸トリフェニル 1 G
表1 使用されるTraceCERT® CRMの概要
図4 ホスホノ酢酸の純度値およびその拡張不確かさの図示:2種のNIST の一次参照物質をSI単位系へのトレーサビリティを確立するために用いました。フタル酸水素カリウムを 1H qNMR測定の内部標準に、リン酸二水素アンモニウムを 31P qNMR測定の内部標準に用いました。
NIST SRM 84L(フタル酸水素カリウム)
NIST SRM 194a(リン酸二水素アンモニウム)
重量分率(%)
図5 リン酸トリス(2-クロロエチル)の純度値および拡張不確かさのグラフ図:ホスホノ酢酸およびリン酸トリフェニルを内部標準として用い、31P(円)および 1H(ひし形)qNMR測定に基づいて実験を行いました。
重量分率(%)
リン酸トリフェニル ホスホノ酢酸 リン酸
トリフェニル ホスホノ酢酸
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HybridSPE and TraceCERT are resistered trademarks of Sigma-Aldrich Co. LLC. CHROMASOLV is a resistered trademarks of Sigma-Aldrich Laborchemikalien GmbH. Iso-Disc and Supel are
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31P 定量NMR用トレーサブルな有機認証標準物質
みなさま様々な生物学的プロセスにおいて、リンが生理学的に重要であることは周知のことです。リンは生命にとって必須のものであり、細胞膜のリン脂質の一部であり、DNAおよびRNAの一部であり、ATPの形でエネルギー代謝において主要な役割を果たし、細胞のシグナル伝達においても非常に重要です。リン酸化された化合物と代謝物の定量に使用可能な認証標準物質の必要性が高まってきたことに伴い、多数の研究および論文が代謝の分野に向けられるようになっています。分析法のすべてが定量に適しているわけではなく、あらゆる酵素反応がUVによって検出できるというわけでもなく、そして、誰もが 32P 放射性検出を利用したいというわけでもありません。
qNMRは、プロトンNMRを用いた定量法で標準物質を利用しますが、その標準物質は分析対象物と同じ化学構造でなくてもよいことがわかっています。このことから、少数のCRMだけで多数の有機物質の定量が可能になります。17ページからの特集記事では、この原理がどのように 31P qNMRにも応用できるかについて示します。
弊社では、方法検証の長いプロセスを経て、ISO/IEC 17025および ISO Guide 34の認定を受けた後、2009年に1H qNMRを使用したCRMの開発を始めました。2010年の最初のCRMの発売以来さらに開発を続け、現在では、1H qNMR用に15種、クロマトグラフィー用に約180種のCRMを揃えるに至りました。sigma-aldrich.com/qnmrおよび sigma-aldrich.com/organiccrmで全リストをご覧ください。弊社は、qNMRユーザーコミュニティから多くのフィードバックと新製品への多くの提案をいただいております。弊社は、現在、リン定量の新しい方法としての31P qNMR用に2つの新しいCRMを提供することができます。ここで挙げたqNMR記事に加えて、本号のその他の興味深い記事も、きっと楽しくお読みいただけると思います。
Best regards!
Dr. Alex Rück
Supervisor R&D
Dr. Alex RückSupervisor R&D
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