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『経済情報論』
立教大学社会学部産業関係学科
井庭崇立教大学社会学部兼任講師
第1回: 授業イントロダクション
いば たかし
この授業のねらいこの授業のねらい
経済社会の現在と未来を読み解くための新しい視点を身につけることを目指す。
「一人ひとりが主体的に考え、行動し、他者とコミュニケートする」という視点で経済を捉え直す。
経済の背後にある「経済を動かす力」と、それを支える「仕組み」について考えることができるようになってほしい。
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自律分散型の社会自律分散型の社会
社会では、たくさんの人が、同時並行的に考え、行動し、コミュニケーションを行っている。その結果、各人の考えや行動が、時々刻々と変化していく。
相互作用
「複雑系」「複雑系」(complex system)(complex system)
インターネットの普及によって、社会・経済のあり方が根本的に変わりつつある!
市場経済市場経済
さまざまな情報・評価が、数値で表わされる「価格情報」に凝縮されて流通する。
発信者の都合のいい情報だけが流れる。
都合のいい情報だけでは、その次につながるイノベーションにはつながらない。
「困った」「必要だが、できない」という情報も重要。
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新しく生まれつつある経済新しく生まれつつある経済
数値の価格情報以外にも、さまざまな形式の情報が流通する。
不都合な情報がネットワークに発信されることで、それに誘発された新しい情報が次々と生まれて、共有される。顧客間インタラクション
発信された情報は、他の人によって多様に評価され、その評価自体を評価する・・・ということが可能。
→ 「ボランタリー経済」(金子・松岡・下河辺)
取り上げる内容取り上げる内容
自律分散型の社会システム複雑系という捉え方学習する組織と知識創造プロデュース・ワーク世界をつくるリアリティの生成と共感情報と関係性の編集進化プロセスによる適応と革新パターンによるノウハウの記述と共有非線形におけるカオスとフラクタル自己組織化臨界状態とスケールフリーネットワークシミュレーションによる社会理解ビジネスアーキテクチャとモジュール化オープンソース型開発地域通貨とコミュニティ評判システム
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『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』
(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998)
教科書教科書
第I部 『複雑系』科学第1章 『複雑系』とは何か?第2章 『複雑系』科学の位置第3章 『複雑系』科学の方法論
第II部複雑性の現象第4章 フラクタル第5章自己組織的臨界状態第6章カオス第7章カオスの縁
第III部複雑適応系第8章複雑適応系第9章進化と遺伝的アルゴリズム第10章カウフマンネットワーク第11章ニューラルネットワーク
第IV部 『複雑系』科学のフロンティア第12章 『複雑系』経済学第13章人工生命第14章カオス結合系第15章内部観測
第V部 『複雑系』研究への道標第16章 『複雑系』科学の鳥瞰図
理論面における
このほか、各回のテーマに関係するおすすめの本は、授業中に紹介する。
成績評価方法成績評価方法
平常点
授業各回へのフィードバックコメント各回終了後、授業中に出てきた考え方や議論を自分なりに再考して、フィードバックコメントを提出。
授業後4日間の間に電子メールで提出。
分量は任意。
締め切り後、お互いのコメントがWeb上で公開される。
レポート(期末)授業で出てきた概念や捉え方を、自分の関心のある分野・現象・対象に適用し、考察する。
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フィードバックコメント(FC)の仕組みフィードバックコメント(FC)の仕組み
講義
金曜2限 土 日 月 火 水 木 金
授業ホームページで全員分公開
締切は4日後(火曜の夜)まで
FC03
再考
電子メールで提出
フィードバックコメント次回に補足等
授業のあり方を変える授業のあり方を変える
【従来の授業】 【この授業】
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成績評価方法成績評価方法
平常点
授業各回へのフィードバックコメント各回終了後、授業中に出てきた考え方や議論を自分なりに再考して、フィードバックコメントを提出。
授業後4日間の間に電子メールで提出。
分量は任意。
締め切り後、お互いのコメントがWeb上で公開される。
レポート(期末)授業で出てきた概念や捉え方を、自分の関心のある分野・現象・対象に適用し、考察する。
今日のキーワード今日のキーワード
理解(わかる)
生成(つくる)
新しい組織化
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「わかる」とはどういうことか?
人間は想像力によって現実を認識する人間は想像力によって現実を認識する
現実をそのまま知覚しているわけではない。
頭の中のイメージ
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、体性感覚+記憶
想像力を用いて構築する
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わかるという感覚わかるという感覚
「わかる」という体験は経験のひとつの形式
「わかる」の別の表現
納得する
合点がゆく
腑に落ちる
わからないとは、何か新しい問題に直面したとき、これは自分の頭にはおさまらないぞ、という感情。心の異物感。
分けることでわかる分けることでわかる
わかる=分ける
知覚によって対象を区別して同定する。
目の前の現象を、何らかの分類基準で分類出来れば、現象が整理できるだけでなく、心も整理される。→わかる
「わかる」ということは、分類基準の正しさ・正確さとは無関係。
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思考を支える頭のなかのモデル思考を支える頭のなかのモデル
Seymour Papert
「そうして、徐々に私は、今でも学習の基本的な事実だと見做している概念を形成し始めた。どんなことでも学ぶのは易しい。自分の手元にあるモデルに同化することさえできれば。同化できなければ、どんなことでも困難になる。」
「そうして、徐々に私は、今でも学習の基本的な事実だと見做している概念を形成し始めた。どんなことでも学ぶのは易しい。自分の手元にあるモデルに同化することさえできれば。同化できなければ、どんなことでも困難になる。」
「やがて私は、頭の中で歯車を回転させて、一連の原因と結果を生み出すこともできるようになった。『これがこっちに回るからあれはあっちに回って、だから・・・・』」
「やがて私は、頭の中で歯車を回転させて、一連の原因と結果を生み出すこともできるようになった。『これがこっちに回るからあれはあっちに回って、だから・・・・』」
「歯車がモデルになって多くの抽象概念を私の頭に持ち込んだのである。学校で教わった数学のうちで二つの例をはっきり覚えている。掛け算の九九表を歯車として考えたこと、2変数方程式(例, 3x+4y=10)に初めて出合った時、即座に差動装置を連想したことなどである。xとyの関係をあらわした歯車を頭に描き、歯車の歯がそれぞれ幾つあったらよいかなどと考えているうちに、その方程式にすっかり親しんでいたのである。」
「歯車がモデルになって多くの抽象概念を私の頭に持ち込んだのである。学校で教わった数学のうちで二つの例をはっきり覚えている。掛け算の九九表を歯車として考えたこと、2変数方程式(例, 3x+4y=10)に初めて出合った時、即座に差動装置を連想したことなどである。xとyの関係をあらわした歯車を頭に描き、歯車の歯がそれぞれ幾つあったらよいかなどと考えているうちに、その方程式にすっかり親しんでいたのである。」
「歯車で遊ぶのが何よりの愉しみとなった。丸い形の物を並べて歯車のような工合に回すのが好きで、組立て遊具でこしらえた最初の作品も、いうまでもなく、簡単な歯車であった。」
「歯車で遊ぶのが何よりの愉しみとなった。丸い形の物を並べて歯車のような工合に回すのが好きで、組立て遊具でこしらえた最初の作品も、いうまでもなく、簡単な歯車であった。」
シーモア・パパート, 『マインドストーム:子供、コンピューター、そして強力なアイデア』, 未来社, 1995
メンタルモデルメンタルモデル
われわれの心に固定化されたイメージや概念のことを「メンタルモデル」という。
メンタルモデルは、どう現実をとらえるかや、どう行動するかに影響を及ぼす。
メンタルモデルは普段は意識されない。
メンタルモデル
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メンタルモデルに合わないと理解できないメンタルモデルに合わないと理解できない
メンタルモデル
?
メンタルモデルが違うと理解し合えないメンタルモデルが違うと理解し合えない
メンタルモデル
メンタルモデル≠
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メンタルモデルのすりあわせメンタルモデルのすりあわせ
メンタルモデル
メンタルモデル≒
グループワーク,プロジェクトグループワーク,プロジェクト
理解しあうためにはメンタルモデルをすり合わせることが大切。
しかし、多様性も大切。
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生成(つくる)
はじめは一つのアイデアから・・・はじめは一つのアイデアから・・・
『スターウォーズ』(エピソードI)メイキングビデオ
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新しい組織化
新しい組織化の仕組み新しい組織化の仕組み
『レボリューションOS』オープンソースやリナックスに関するドキュメンタリーJ・T・S・ムーア(J.T.S. Moore)監督制作
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『経済情報論』
立教大学社会学部産業関係学科
井庭崇立教大学社会学部兼任講師
第1回: 授業イントロダクション
いば たかし
第一回フィードバックコメント(練習)第一回フィードバックコメント(練習)
講義
(9月26日)金 土 日 月
(9月30日)(9月30日)火火 水 木 金
今回は、授業ホームページには公開しません。
FC01
電子メールで提出
フィードバックコメント 次回に補足等
【今回のテーマ】・自己紹介・今回の感想・期待すること ※分量は自由
経済情報論(井庭)
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第1回フィードバックコメント(練習)の送り方第1回フィードバックコメント(練習)の送り方
アドレス(宛先)
[email protected]サブジェクト(題名)
0123456,山田太郎,FC01
締切
9月30日(火) 23時30分
学籍番号(半角)
姓名(全角漢字)
何回目の授業か(半角)
FC(半角)
カンマ(半角)
今回は第1回の授業なので、01
経済情報論(第1回)経済情報論(第1回)今日のテーマに関係するおすすめの本今日のテーマに関係するおすすめの本
『ボランタリー経済の誕生: 自発する経済とコミュニティ』(金子郁容, 松岡正剛, 下河辺淳他, 実業之日本社, 1998)
『「わかる」とはどういうことか:認識の脳科学』(山鳥重,ちくま新書, 2002)
『バカの壁』(養老孟司, 新潮新書, 2003)
『「わからない」という方法』(橋本治, 集英社, 2001)