森林土壌の放射性セシウム除染方法 -ウッドチップを用いた放射性セシウムの森林土壌からの除去-
横浜国立大学大学院環境情報研究院 教授 金子 信博 講師 中森 泰三
修士二年 黄 垚
2014/1/28 横浜国立大学
本技術に関する知的財産
• 発明の名称 ;土壌の放射性セシウム除染方法
• 出願人 ;横浜国立大学
• 発明者 ;金子 信博 他2名
2014/1/28 横浜国立大学
コナラ シイタケ原
木
スギ
用材
森林利用停止
森林利用を継続しつつ、除染したい
伐採した木材をウッドチップとして、 その場に散布
汚染された森林の利用をめぐる現状
森林除染のための間伐
除去木の処理に問題
産学官連携
2014/1/28 横浜国立大学
• 三井物産環境基金「里山森林から水・農地土壌・生産物・食事を通した 放射性セシウムとその低減対策の提案」代表:野中昌法(新潟大学)
• 横浜国立大学「環境情報研究院共同研究推進プログラム」
• 平成23年度「福島における放射線による生態影響の現地調査 」 代表 : 中森泰三
• 平成24年度「放射性セシウムの土壌生態系影響」代表:金子信博
• 文部科学省科学研究費新学術領域「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究」代表:恩田裕一(筑波大学)
樹木の放射性セシウムの分布状況
文部科学省・筑波大学(2011)
Cs-137 Cs-137
Cs-134 Cs-134
スギ壮齢林(40-50年生) 広葉樹林
川俣町
土壌に汚染が集中
森林除染の問題点
1.薄く広い汚染:効率の悪さ、規模の大きさ 工学的手法ではコストがかかりすぎ、環境負荷も大きく、限界がある。 →自然のしくみを利用した低コスト手法の可能性。
2.針葉樹人工林の建築材としての利用制限 時間がたつほど立木が土壌から放射性セシウムを吸収し、材の汚染が進む。 →早期に更新を進めることにより、汚染レベルの低い材を供給できる可能性。
3.広葉樹の薪、炭、シイタケ原木としての利用制限 伐採停止により、将来の資源確保が困難になる。 伐採停止により萌芽能力を失う。 →伐採することにより、除染できる可能性。
樹木
土壌 Cs-137
菌類
ミミズ
イノシシ
シカ
イノシシ肉のセシウム濃度の変化
Strebl et al., 2007
オーストリア
3割程度しか下がらない
従来の除染法
伐採や落葉を除去する影響
• 土壌生物が激減>時間をかけて回復
• 土壌浸食>落葉、下層植生の回復があれば減少
• 汚染落葉の変化>分解が進行するとともに濃縮
焼却
減容化して最終処分
人家の近くから伐採
ウッドチップ化
ウッドチップによる放射性セシウム除染
菌糸による取り込み・移動
土壌
ウッドチップ
伐採 更新
エネルギー利用
バッグに入れ、林床に設置
2−6ヶ月で回収 森林
•針葉樹林でも広葉樹林でも可能 •更新作業を継続して、雇用の確保、将来にわたって健全な森林管理を続ける
•速度は遅いが、着実に除染を進行させる
土壌に生息する糸状菌がカリウムとともにセシウムを吸収する性質を利用する
•森林除染の決定打なし •森林管理の放棄は将来にわたって禍根を残す
•既存の装置と自然の力を活用して除染を行う
セシウム回収機能のある焼却炉
ウッドチップへの吸収量は現地試験中 粘土への吸着が進む前に、ウッドチップを計画的に散布する必要がある
菌類(キノコ)はセシウムを濃縮
• 濃縮するか? – セシウム:基質濃度に依存して濃縮 – カリウム:体内濃度を一定に維持する傾向 – ストロンチウム:濃縮しない(植物と同程度)
• 種類の違い? – セシウム:菌根菌>腐生菌 – カリウム:菌根菌=腐生菌(Heinrich, 1993; Yoshida & Muramatsu 1994)
• 部位 – セシウム:ひだ>かさ>柄 – カリウム:ひだ=かさ=柄(Heinrich, 1993; Yoshida & Muramatsu 1994)
コナラ落葉の分解過程
元素の挙動は3グループに分けられる 一定: Ca, Mg, C 急速に減少:K 増加: N, P
Salamanca et al. 1998
N Ca
P Mg
K C
濃度
残存量
27,100 Bq/kg
137Cs -粗メッシュバッグ
2011年12月- 2012年12月
Cs= a/(1 + exp(-b * (Month - c)))
コナラ落葉のセシウム濃度の変化
Fungal PLFA[18:2ω6,9] (micro g/g)
Litte
r 137 C
s (B
q/kg
) カビ現存量と137Csの関係
Cs137 = PLFA(fungi0 x 66.8 + 3013 Radj = 0.4264 p-value: 0.02419
土壌の菌類(カビ)を利用した除染 • 除染対象地の樹木を伐採し、現地でウッドチップにする。
• CN(炭素/窒素)の高い(おそらく、カリウムに乏しい)ウッド
チップを林床に散布し、そこに生育する糸状菌に落葉層や土壌からCs137を集めてもらう。
• 一定期間後にウッドチップを回収し、セシウム除去装置のついた燃焼装置で、焼却する。可能なら、発電する。
• 焼却灰として減容し、安全な施設に保管。
• 森林に生息している生物を利用
• すべて既存の装置の組み合わせ
• 森林施業を継続することが可能
• 毎年繰り返すことで、放射性セシウムを減衰を促進することができる
特徴
4 May 2013
ウッドチップデータ(速報値)
Cs-137
Cs-134
1ヶ月 2ヶ月
Bq/kg
土壌のおよそ5%を2ヶ月で吸収
空間線量(1m)
チップなし
チップなし
チップなし チップなし チップなし
チップあり チップあり チップあり
μSv/hr
μSv/hr
半減
低下わずか
お問い合わせ先
横浜国立大学知的財産支援室
コーディネーター 流王 俊彦、松本 武
• TEL 045-339-4452
• FAX 045-339-4457
• E-mail [email protected]
2014/1/28 横浜国立大学