SPECIAL
正常圧水頭症による認知症は早期に治療することで
治すことが出来ます。今年春から顧問として城山病院で
診察する梶本医師に話を聞きました。
高齢者の40人に1人も
0歳以上では、実に40人に1人が脳に水(髄液)がた
まり過ぎているということが最近判明しました。その病
気の名前は正常圧水頭症といいます。頭蓋骨の中の出来
事なので外から頭を見ても分かりません。しかし、水の
圧迫により脳がダメージを受けるので、記憶力や気力が
なくなる、よちよち歩きで転倒する、トイレに間に合わ
ない等の症状がほぼ同時期に始まります。いずれの症状
も老化現象でみられますので、本人や家族やかかりつけ
医も老化現象として見逃してしまいます。老化現象との
違いは、半年ほどの間に症状が急激に進行してくること
です。
早期治療によりほぼ完治
治療しなければ2-3年後には寝たきりの高度認知
症となります。介護施設への入所が必要となり、人間ら
しさを失いながら最後は誤嚥性の肺炎で亡くなります。
この間の、本人や家族の身体的、精神的、経済的な負担
は甚大なものです。一方、早期に診断・治療すること
で、ほとんど後遺症なく老後の生活をエンジョイするこ
とも可能なのです。
低侵襲で安全な治療
治療は、脳の水をお腹に流す細いカテーテルを埋め込
む40分ほどの手術です。腰骨の隙間から脳の水を抜くカ
テーテルを入れることで、脳には一切傷はつきません。
切開も小さく、お腹と背中の約3cm~4cmの小さな
傷で済みます。
治る認知症高齢者の正常圧水頭症について
脳・脊髄・神経センター 城山病院 検索
梶本宜永医師
カテーテルは、レントゲン透視で1mm単位の精度で
精密に誘導しますので100%の成功率で挿入できま
す。このために90歳以上の方でも問題なく手術可能な
のです。
脳の水が脳のゴミを洗い流す
脳の水である髄液は、脳細胞のゴミ(アミロイド、
タウ)を洗い流す作用があることが最近わかりまし
た。ほとんどの認知症は、これらのゴミが脳に貯まる
ことで発症します。一方、正常圧水頭症では、水の洗
い流し作用が低下しており、脳にゴミが溜まりやすく
なっています。手術により水の流れが復活すること
で、脳の健康を維持することができるのです。
最後に
この疾患は、日本で年間10万人発症していると推計
できますが、手術されているのは5000人ほどで
す。20人のうちで19人は見逃されていることになりま
す。早期に発見治療されれば、ほぼ完治するのにとて
も歯がゆい次第です。当院のスタッフは、正常圧水頭
症の診断と治療にとても精通しています。もし、これ
らの症状にお心当たりがありましたら、当院の脳神経
外科外来への受診をお願いします。
梶本医師プロフィール
大阪医科大学卒業後、大阪医科大学 脳神経外科
講師、准教授、特任教授を経て、現在、大阪医科大
学 医学教育センター 専門教授。
長年、脳腫瘍の手術治療および蛍光ガイド治療、
水頭症の治療の第一線で活躍し、特に水頭症につい
ては、その予防と診断から安全な治療を日々探求
し、啓蒙活動にも取り組んでいる。今年、春より城
山病院 脳・脊髄・神経センターの顧問として、毎
月第4火曜日に外来で診察中。
脳・脊髄・神経センター
顧問
9月9日は、救急の日になります。救急の日は、1982年(昭和57年)、厚生省(現在の厚生労働省)によって制定された記
念日で、救急医療関係者の意識を高めるとともに、救急医療や救急業務に対する国民の正しい理解と認識を深めること
を目的として定められたという事です。
城山病院は二次救急病院の役割を担っております。二次救急医療機関とは、夜間・休日の入院治療が必要と思われる
救急患者を受け入れる病院を指します。当院の救急受入体制としては、平日日中の救急受入率は97.6%、救急搬送件数
は年間約4500件の受入を行っております。また、地域の救急医療に貢献するために救急総合センターを設置し、救急の
要請時に患者様の全身状態を確認しながら関係する診療科や部門と連携し、搬送された時には速やかに初期治療と必要
な検査を並行して行えるようにしています。夜間・休日に城山病院を受診される際には、患者様
の容態に合わせて適切な診療科をご案内しておりますので、あらかじめお電話をして頂き、診療
可能かどうか確認を取ってから受診してください。
病院長就任のご挨拶
皆様ご存知でしょうか?
第2回南大阪がん治療チームセミナーが開催されました。このセミナーは、はびき
の医療センターと当院をオンラインで繋いでのチームセミナーとして、新型コロナ
対策の中、各病院での会場は参加人数が限定されたかたちでの開催となりました。
当院の島野医師による「転移性脳腫瘍に対するガンマナイフ治療」、吉田認定看護
師による「ガンマナイフ患者への看護の実際」、最後にはびきの医療センター 岩田
先生から「免疫チェックポイント阻害剤におけるirAEに対する取り組み~看護師の
立場から~」としてのお話しがありました。このように離れた施設間でインターネットを利用したセ
ミナー開催など、今回初の取り組みを通してICTの活用は医療分野においても大きな可能性を持つ
「ツール」の一つであると感じました。
はびきの医療センターと病院間オンラインチームセミナー開催
令和2年(2020年)10月1日より院長に就任致しました。これから病院長として、患者様、職
員、近隣の先生方や医療スタッフの皆様方のご協力を得て、微力ながら城山病院に貢献したい
と思っています。城山病院が今まで行ってきた急性期医療を継続するために、今まで以上にあ
らゆる部署が、お互いに協力しあって、日々の医療活動を行っていく所存であります。「城山
病院は患者様のために存在します」という病院理念のもと、患者様に寄り添った医療をこころ
がけたいと思います。「寄り添う」とは、「そばにぴったり寄る」ということですが、患者様
やご家族にさり気なく気配り、心配りを行い、病気だけを診るのではなく、人間そのものを診
る(看る)医療を目指して行きたいと思います。
また、病院理念の基本方針に「質の高い医療を提供します」とありますが、質とは何でしょう。医療に限ら
ず、あらゆる事業において、「質」とは「顧客要求への適合、すなわち顧客満足を意味している」と言われてい
ます。医療において、顧客とは、患者様だけでなく、職員も顧客であり、病院も顧客と
なります。患者様・職員・病院の満足を高めていく活動が医療の質を高める活動であ
り、この質の高い医療をめざしていくことが患者様・職員・病院が笑顔になることにつ
ながっていくと思います。これからも「城山病院は患者様のために存在します」という
病院理念のもと、「質の高い医療」をめざして、職員一同、一丸となって協働していき
ますので、叱咤激励の程よろしくお願いいたします。