ガス警報器とはガス警報器35年の歩み...

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ガス警報器35年の歩み LPガスや都市ガスがガスコンロの点火ミスなど で漏れた時や、ガスの不完全燃焼やストーブなどの 換気が不十分なことにより発生したCOガスを検知 し、警報するもので、ブザーまたは音声で知らせる ものです。 ガス漏れ事故のほとんどは、「ガスをつけたつも り」「ガス栓を閉めたつもり」「すぐにもどるつもり」 など「ウッカリミス」が原因となっています。 「ガ ス警報器」の設置を正しくしていれば適切に作動し て、人のウッカリミスによる事故を警報してくれま す。発生した事故のほとんどは、ガス警報器があれ ば起きなかったと考えられます。 今から45年前に販売してから、ガス警報器の普及 率は、2009年度で全国約50%のご家庭に設置されて 毎日24時間、ひと時も眠らないで、見張っています。 ガス警報器はLPガスの消費先で82%、都市ガス の消費先で41%、簡易ガスの消費先で71%に設置さ れています。 しかしCOセンサのついた警報器については、都 市ガス消費先では現在約30%、LPガス消費先と簡 易ガス消費先では、分離型であることから、1割に も満たず普及はこれからの課題となっています。 最近業務用厨房施設でのCO中毒事故が多発して います。業務用はプロ仕様で、安全装置がつけにく いこともあり、またガスの使用量も多いことから、 COの発生しやすい環境にあります。このためLPガ ガス警報器工業会のルーツは、 1970年(昭和45年) の検定制度の発足を契機にガス警報器のメーカーが 集まり設立した「ガス漏れ警報器連絡協議会」に始 まります。 その後1975年(昭和50年)12月にガス漏れ警報器 工業会として設立し、1978年(昭和53年)にガス警 報器工業会と改名し現在に至っています。1975年当 時の会員数は、13社、初代の会長には新コスモス電 機㈱社長の笠原理一郎氏(故人)が就任しました。 笠原会長は、日本初の家庭用ガス警報器を開発し た生みの親でもあります。 2010年(平成22年)5月現在の会員数は20社であ りわが国のガス警報器の製造メーカーとセンサメー カー等が参加しています。 ガス警報器とは ガス警報器工業会設立の経緯 ス、都市ガス業界ともに業務用CO警報器設置の取 り組みが行われています。 従来の警報器は、家庭用(主に台所)のため早な りしやすいため、またAC電源のため設置場所を制限 するため、業務専用の警報器として電池式の業務用 CO警報器を開発し普及を推進しているところです。 ガス漏れ事故の原因は ほとんどが ウッカリミス!

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Page 1: ガス警報器とはガス警報器35年の歩み 日本での家庭用LPガスは、1952年(昭和27年)6 月から販売されるようになりました。1954年(昭和29年)には2万戸となり1955年(昭

ガス警報器35年の歩み

LPガスや都市ガスがガスコンロの点火ミスなどで漏れた時や、ガスの不完全燃焼やストーブなどの換気が不十分なことにより発生したCOガスを検知し、警報するもので、ブザーまたは音声で知らせるものです。

ガス漏れ事故のほとんどは、「ガスをつけたつもり」「ガス栓を閉めたつもり」「すぐにもどるつもり」など「ウッカリミス」が原因となっています。 「ガス警報器」の設置を正しくしていれば適切に作動して、人のウッカリミスによる事故を警報してくれます。発生した事故のほとんどは、ガス警報器があれば起きなかったと考えられます。

今から45年前に販売してから、ガス警報器の普及率は、2009年度で全国約50%のご家庭に設置されて毎日24時間、ひと時も眠らないで、見張っています。

ガス警報器はLPガスの消費先で82%、都市ガスの消費先で41%、簡易ガスの消費先で71%に設置されています。

しかしCOセンサのついた警報器については、都市ガス消費先では現在約30%、LPガス消費先と簡易ガス消費先では、分離型であることから、1割にも満たず普及はこれからの課題となっています。

最近業務用厨房施設でのCO中毒事故が多発しています。業務用はプロ仕様で、安全装置がつけにくいこともあり、またガスの使用量も多いことから、COの発生しやすい環境にあります。このためLPガ

ガス警報器工業会のルーツは、1970年(昭和45年)の検定制度の発足を契機にガス警報器のメーカーが集まり設立した「ガス漏れ警報器連絡協議会」に始まります。

その後1975年(昭和50年)12月にガス漏れ警報器工業会として設立し、1978年(昭和53年)にガス警報器工業会と改名し現在に至っています。 1975年当時の会員数は、13社、初代の会長には新コスモス電機㈱社長の笠原理一郎氏(故人)が就任しました。

笠原会長は、日本初の家庭用ガス警報器を開発した生みの親でもあります。

2010年(平成22年)5月現在の会員数は20社でありわが国のガス警報器の製造メーカーとセンサメーカー等が参加しています。

ガス警報器とは

ガス警報器工業会設立の経緯

ス、都市ガス業界ともに業務用CO警報器設置の取り組みが行われています。

従来の警報器は、家庭用(主に台所)のため早なりしやすいため、またAC電源のため設置場所を制限するため、業務専用の警報器として電池式の業務用CO警報器を開発し普及を推進しているところです。

ガス漏れ事故の原

因は

ほとんどが

ウッカリミス!

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ガス警報器35年の歩み

日本での家庭用LPガスは、1952年(昭和27年)6月から販売されるようになりました。

1954年(昭和29年)には2万戸となり1955年(昭和30年)末には「ガスエネルギーは、文化的な生活」との評価から、一気に40数万世帯に急激に増加しました。

しかし保安意識の薄い販売事業者の出現や、ガス事故を安全器具で防止する有効な技術がなく、消費者への啓発が唯一の方法であったため、限度もありガス事故も比例的に増加しました。

当時ガスの安全に携わる研究者・技術者にとって、家庭でのガス事故をなくすため少しでも役立つ安全器具を早く世に出したいと云う強い使命感を持つ時代背景がありました。

当時のガス漏れをいち早く知らせるガス検知技術は石炭鉱山用のガス検知器として、メタンガス検知器はありましたが、図体も大きく、価格も高く家庭用にはとても使えるものではありませんでした。

家庭用の警報器を普及するためには、メンテナンスフリーで安価でなければなりません。

世界初の家庭用ガス警報器の登場のきっかけは1963年(昭和38年)までさかのぼります。

当時、テレビ・ラジオの音量調節用のボリュームコントロール(可変抵抗器)を製造するメーカーが、新商品の開発の出荷前に製品確認検査をしたところ、ほぼ全数で抵抗値が桁外れに変化していたことに気がつきました。原因は、シャフト部分についたグリースをトルエンで拭き取った際、トルエンの気化ガスで、炭素被膜抵抗値が変化したためと判りまし

た。つまり「ガスによって抵抗値が変わる」⇒「ガスを検知することができる」とひらめき、これがガス警報器を開発するきっかけとなったと言います。

このヒントからガスに敏感な抵抗体の開発努力が行われ、家庭用の最初のガス警報器は1963年(昭和38年)5月に完成しました。

接触燃焼式センサを採用、「触媒表面でのガスの接触燃焼による白金線コイルの温度上昇を測定」し、ガス・煙・COが検知できる機能と集中監視ができるマルチ機能を持つ警報器でした。

これを「電子ガス警報器」として販売したものの感度、精度とも技術的には問題なかったのですが、高価(大卒公務員初任給が2万円弱のころ8,900円)となり家庭用には普及することができず工業用としか普及ができませんでした。このため新たなセンサの開発などでコストダウンするしかありませんでした。

そのころ、金属酸化物の半導体を使ったガスセンサが有効ではないかとセンサメーカーから提案されました。このセンサは、非常に高感度で、増幅回路が不要となることから、改良を加えさらに接触燃焼式センサの製造技術を応用し、長期的に安定した頑強な半導体センサの開発にこぎつけました。これにより「半導体式家庭用ガス警報器」が1969年(昭和44年2月)に誕生しました。

この半導体式センサガス警報器は、岩谷産業㈱から商品名「みはり」として3,800円代で発売されました。

今から40年前となります。

LP用ガス警報器の誕生

みはり 岩谷産業㈱(新コスモス電機㈱製造)

アロッ子 矢崎総業㈱ カナリヤ ㈱金門製作所

1975年(昭和50年)検定合格の警報器

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ガス警報器35年の歩み

ガスセンサの種類

昭和50年代に入り、住宅の高気密化により、ガス爆発の危険性がクローズアップされました。建築業界の一部では、都市ガスの採用を避ける動きもあり、家庭用のガス漏れ検知装置の普及が強く求められました。

こうした中で、1978年(昭和53年)3月内閣官房広報室がガス保安に関する調査を実施しました。この中でガス警報器についてもアンケート調査を行ったところ、ガス漏れの経験は、都市ガス使用者のほうがLPガス消費者よりも多かったことから、都市ガス用のガス警報器の開発が急がれました。

このため、(社)日本ガス協会は、都市ガス用警報器の調査研究をスタートしました。ガス警報器メーカーも並行して、東京ガス、大阪ガスと共同研究により、開発を急ぎました。まずは先発のLP用ガス警報器が採用できないか検討しましたが、LPガス(プロパンとブタン)はシンプルな検知に対して、当時の都市ガ

スは、製造ガスが主流で、メタンや水素、ブタンなど多種類のガスを含む混合ガスのため、多くの困難がありました。

また、LP用ガス警報器の取り付け位置は、床に近い所に対して、都市ガスは、空気より軽いので、警報器は天井の近くに取り付ける必要がありました。取り付け場所の多くは、台所であり、台所は、水蒸気など調理ガスを直接被るため、温度、湿度などの影響が高く厳しい環境にありました。こうした条件をクリアするために、都市ガス用の独自のセンサの開発が必要となりました。

その結果「半導体式センサ」が適していることがわかり、センサの選別、安定化処理技術を開発し、1980年(昭和55年)6月に東京ガス、大阪ガス、東邦ガスから発売されました。翌年(昭和56年)4月には、西部ガスからも発売されました。

都市ガス用警報器の誕生

ガスセンサは、ガスの存在がセンサに及ぼす物理的化学的変化を利用したもので、ガス警報器に使用されている代表的なものは、次の4種類があります。

半導体式センサの原理は、可燃性ガスが存在するとセンサ内の電極間の抵抗値が下がり、この変化がガス濃度に対応するもので、構造が頑丈であり、長期間安定して動作する特徴があります。

検知ガス…メタン、LPガス、CO等可燃性ガス

熱線型半導体式センサの原理は、半導体式と同じで、抵抗値の変化がガス濃度と相関があります。特徴としては、消費電力が小さく、特定のガスの選択性に優れています。

検知ガス…メタン、LPガス、CO、水素、等

接触燃焼式センサは、センサの表面で可燃性ガスが触媒反応により燃焼し、センサ温度が上昇して、この温度変化がガス濃度に比例します。特徴としては、周囲の温度や湿度の影響をほとんど受けず、警

電気化学式センサはガスを特定の電極上で化学反応させた際に生じる電流を検出するものです。特徴としては、非常に省電力でガスの選択性に優れ低濃度のガス検知が可能です。

検知ガス…CO

①半導体式センサ

④電気化学式センサ ①半導体式センサ

②熱線型半導体式センサ

③接触燃焼式センサ

報精度が高いことにあります。検知ガス…メタン、LPガス等可燃性ガス

②熱線型半導体式センサ

③接触燃焼式センサ ④電気化学式センサ

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ガス警報器の種類・比較

ガス警報器35年の歩み

ガス・CO複合警報器や火災機能付きなど大別すると6種類のタイプがあります。

ガス警報器の種類

警報器の種類 用 途 電 源 設 置 位 置 備   考

ガス警報器LPガス用 AC100V 床から30cm以内 特定地下室特定地下街+公共施設、共同

住宅・料理飲食店、学校、病院義務付け

都市ガス用 AC100V 天井から30cm以内 地下室地下街、超高層建物、特定大規模建物、中圧燃焼器のある建物義務付け

CO警報器LPガス用 AC100V 天井から30cm以内

都市ガス用 天井から30cm以内AC100V/電池式

業務用CO警報器 床から170±20cm共用 AC100V /電池式

ガス・CO警報器 都市ガス用 AC100V 天井から30cm以内

火災・ガス・CO警報器LPガス用 AC100V 火災・CO→天井から30cm以内

ガス→床から30cm以内

都市ガス用 AC100V 天井から30cm以内

火災・CO警報器(煙・CO) 天井から30cm以内共用 AC100V

/電池式参考:住宅用火災警報器(煙・熱) 天井から50cm以内 平成16年度〜新・増築に義務付け、既

存住宅には、平成23年までに義務付け共用 AC100V /電池式

30cm以内

燃焼器より水平距離4m以内

LP用ガス警報器

ガスセンサと警報ブザーが同一のケース内に組み込まれているものです。なお、スプレー等による迷惑警報を発しない誤報防止型警報器が開発され実用に供されています。

信号端子のあるものは遮断弁、戸外ブザー、マイコンメータ等に連動させることもできます。一体型警報器は、取付簡単で安価であり、個別住宅、小規模業務用施設等にすすめられます。マイコンメータを設置する場合は、燃焼器のある部屋に一体型警報器を併設又は連動するように行政指導されています。

警報のタイプには、通常のブザー音の他に「ガスが漏れていませんか」という音声警報や、閃光など光で警報する外部警報器もあります。

LP用ガス警報器(一体型)

ガス警報器

●LP用ガス警報器

◆LP用ガス警報器(一体型警報器)

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燃焼器

集中監視盤

警報器1

燃焼器

警報器2

警報器3

信号線

信号線

ガスセンサと警報ブザーとが別々のケースに組み込まれたもので、ガスセンサの部分を検知部、警報ブザーの部分を警報部といい、両者を信号線で連結して使用します。

検知部は、耐湿防滴構造となっているので、水しぶきが飛び散る業務用厨房や浴室内及び床下ピット内に設置できます。

信号端子のあるものは遮断弁等と連動させることもできます。

一体型警報器に戸外ブザー(外部警報部)を連動させたもので、戸外ブザーがドアホンと兼用のものもあります。室内の警報器が一定時間(約20秒〜60秒)鳴り続けると、戸外に設置したブザーが鳴り、第三者にもガス漏れを知らせます。

また、戸外ブザーには通電表示灯があり、警報器が室内のコンセントから抜かれている場合はこれが消灯するのでコンセント抜けが第三者にも判ります。個別住宅、小規模アパート等に設置されます。

複数の一体型警報器又は分離型警報器と管理人室等に設備された集中監視盤(液石法では「受信部」、ガス事業法と消防法では「受信機」という)とを信号線で接続したもので、特定地下街等及び特定地下室等にはこの種の警報器の設置が義務付けられています。

端末の警報器と直接集中監視盤を接続する場合と中継部を経由して接続する場合があります。

警報器がガスを検知して一定時間(約20秒〜60秒)鳴り続けると集中監視盤でガス漏れ警報が鳴り当該ガス漏れ場所を表示します。また、警報器がコンセントから抜かれたとき、トラブル警報が鳴り、当該場所を表示します。

特定地下街等及び特定地下室等に設置する集中監視盤は予備電源を有する1級受信部です。

また、非常電源、音声警報装置及びガス漏れ表示灯を設置しなければなりません。

分離型警報器

外部警報型警報器(戸外ブザー連動型)

集中監視型システム

燃焼器

燃焼器

戸外ブザー

警報器

信号線

1.5m以上

2.5m以内

警報部

検知部

30cm以内

◆分離型警報器

◆外部警報型警報器(戸外ブザー連動型)

◆集中監視型システム

ガス警報器35年の歩み�

室外

室内

燃焼器より水平距離4m以内

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警報器

燃焼器より水平距離8m以内

30cm以内

ガスセンサと警報部とが同一のケース内に組み込まれているものです。

ガス事業法では、ガス警報器とは一体型のことで、ガス漏れ警報設備の検知器として使用されます。壁掛型と天井面に直接取り付ける隠蔽配線用もあります。

警報タイプは現在「ガスが漏れていませんか」と音声で警報するものが主流となっています。

ガスセンサ(検知部)と警報表示盤(警報部)が分離しており、両者を信号線で接続して使用されます。

検知部は、外壁貫通部、ボイラー室等に使用されます。警報部には外部信号出力、無電圧接点出力があるので受信機、遮断弁、操作盤と連動することができます。

都市ガス用ガス警報器(一体型)

◆都市ガス用ガス警報器(一体型警報器)●都市ガス用ガス警報器

燃焼器 戸外ブザー

警報器

信号線

ガス警報器(一体型警報器)に戸外ブザーを連動させたもので、その機能、特長、用途はLPガス用外部警報型警報器と同じです。

検知器、中継器、受信機及び警報設備から構成された設備であって、液石法体系の特定地下街等用集中監視型システムと同じ構成です。

検知器には、一般に一体型警報器が使用されます。

外部警報型警報器(戸外ブザー連動型)

天井面

警報器30cm以内

4m以内(水平距離)

燃焼器

CO警報器(LP用)

◆都市ガス用ガス警報器(一体型)

◆分離型警報器

◆外部警報型警報器

◆ガス漏れ警報設備

ガス警報器35年の歩み

不完全燃焼によって発生する排ガス中の一酸化炭素(CO)を検知して警報を発するもので、ガスセンサと警報ブザー(又は音声)が同一のケース内に組み込まれている一体型と、両者が別々のケース内に組み込まれている分離型があります。ガスセンサには不完全燃焼発生時の一酸化炭素(CO)を選択的に検知するCO高選択性素子と、一酸化炭素(CO)と水

●CO警報器(LP用)

CO警報器

不完全燃焼によって発生する排ガス中の一酸化炭素(CO)を選択的に検知して警報を発するもので、ガスセンサと警報部が同一のケース内に組み込まれている一体型と、両者が別々のケースに組み込まれている分離型とがあります。

*都市ガス用は水平距離8m以内

●CO警報器(都市ガス用) *

素(H2)を検知する一般検知素子の2種類があります。セキュリティシステム用やマイコンメータ連動用の

信号端子付のものもあります。

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火災・ガス・CO警報器

ガス警報器35年の歩み

業務用CO警報器は、業務用厨房機器での不完全燃焼により発生するCOを選択的に検知して警報を発するものです。

前述のCO警報器との違いは、COの濃度と発生時間との演算値である血液中のCOHb濃度を適切に計測し、人体に影響を及ぼす濃度以上になった場合に警報を発するようにしている点です。

業務用厨房とは、食堂やレストランなどの飲食店の厨房、スーパーや弁当屋などの弁当や惣菜を調理する厨房を言います。

ガス漏れについては、法令で「料理飲食店」に含まれるため、LPガス(液石法)ではガス警報器設置義務施設、都市ガス(ガス事業法)ではガス警報器設置

業務用CO警報器(業務用厨房不完全燃焼警報センサ)

推奨施設になりますが、業務用CO警報器については、法令では義務付けでありませんが、推奨施設として自主的に設置するよう行政からも要請しています。

天井面

信号線

火災・CO警報器

天井高さ3m以下 4m以内(水平距離)

※壁面中央付近

燃焼器

30cm以内

15cm以上30cm以内

ガス漏れ検知部

一体型の火災・CO警報器にガス漏れ検知部を分離型として追加したものです。1台で火災、ガス漏れ、CO(不完全燃焼で発生する一酸化炭素)に対してそれぞれランプと音声による警報を発することができます。

一体型の火災・CO警報器は火災とCOの信号端子を有し天井近くに設置されます。また、ガス漏れ検知の分離型検知部はLPガス用なので床面近くに設置され、両者を信号線で連結して使用します。

主にガスを使う台所等に設置いただくとより安心です。

●火災・ガス・CO警報器(LP用)

ガス警報器とCO警報器を組み合わせたものです。「軽いガス用」では、ガス漏れと不完全燃焼のガスセンサと警報部とが同一のケース内に組み込まれた一体型となっています。

●ガス・CO警報器(都市ガス用)

ガス・CO警報器

警報器

30cm以内

天井高さ3m以下

15cm以上

8m以内(水平距離)※壁面中央付近

燃焼器給気口や排気口から1.5m以上

天井面

ガス・CO警報器(都市ガス用)

火災・ガス・CO警報器(LP用)

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4m以内  (水平距離)

燃焼器

警報器

30cm以内15cm以上

天井面

一体型の警報器で、火災警報器とCO警報器を組み合わせたものです。1台で火災、CO(不完全燃焼で発生する一酸化炭素)に対してそれぞれランプと音声による警報を発することができます。

火災とCOの信号端子を有し天井近くに設置されます。

主に、寝室、階段等に設置いただくとより安心です。

●火災・CO警報器

火災・CO警報器

一体型のガス・CO警報器に火災検知機能を追加したものです。 1台で火災、ガス漏れ、CO(不完全燃焼で発生する一酸化炭素)検知してそれぞれランプと音声による警報を発することができます。一体型で火災警報とガス/CO警報の信号端子を有し天井取り付けの天井型又は、天井近くの壁に取り付ける壁掛け型があります。主にガスを使う台所等に設置いただくとより安心です。

●火災・ガス・CO警報器(都市ガス用)

警報器

30cm以内

天井高さ3m以下

15cm以上

8m以内(水平距離)※壁面中央付近

燃焼器給気口や排気口から1.5m以上

天井面

ガス警報器35年の歩み

警報器の音声化1985年(昭和60年)に音声型のガス警報器が開発

され、現在の製品は、ブザーのものと音声のものがあります。

開発当初はガス警報器以外には、一般家庭内で電子ブザーを使用した機器等は少なく問題は無かったのですが、最近では殆どの電子機器は電子音を発するようになっています。

特に、留守宅で鳴動しているほかの機器の音を

警報音と間違い、通報される場合もあり他の機器と容易に識別できるような製品開発が望まれていました。そこで、警報器の警報音に当時普及し始めた音声合成LSIの使用の検討が始まりました。しかし当時音声をデジタル化して記録する部品はオーダーメードであり高価であったため、できるだけ音声の文字を減らそうと考えました。

最初は、「ガス、ガス」と音声するものを考えましたがわかりにくいとの反対意見もあり次に提案したのが「ガス漏れ」というものでした。その後消費者と接触しているガス事業者からのアドバイスを反映し、また警報音声の内容もガス警報器工業会で統一され、全てのガス漏れ音声警報は「ガスが漏れていませんか」、CO警報音声は「空気が汚れて危険です。窓を開けて換気して下さい。」というメッセージになっています。

*都市ガス用は水平距離8m以内

火災・CO警報器(LP用)

火災・ガス・CO警報器(都市ガス用)

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昭和59~63 平成元~5 平成6~10 平成11~15 平成16~20

12,985

16,159

14,317

13,942

14,409

9,478

7,136

9,258 10

,076

9,678

159

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000単位:千台 LガスP用 都市ガス用 業務用

ガス警報器35年の歩み

ガス警報器の検査・検定制度は、製造事業者が一定の品質管理体制にある工場で製造されたガス警報器が技術基準に合致していることを第三者が確認したガス警報器を提供することにより、消費者の保安確保を図る目的で導入されています。

ガス警報器については、LP用ガス警報器は、高圧ガス保安協会(KHK)が、都市ガス用警報器は、

(財)日本ガス機器検査協会が、住宅用火災・ガス警報器の火災機能については、日本消防検定協会が検査機関として実施しています。

ガス警報器に求められる基本的な性能は、ガスが漏れた時、事故になる前に確実に警報を発することであり、しかも長期間に確実に作動することです。

警報器を開発した当初はガス漏れを出来るだけ早く検知すればよいとの考え方から敏感な警報器を市場に出したところ、スプレー、煙等にも反応してしまい誤報のため、コンセントを抜いてしまう問題が発生しました。

世界で初めて家庭用を実用化した機器であることから、開発当初は性能基準がありませんでした。

当時産業用には、石炭鉱山用(JIS)、工場用(高圧ガス法関連法)の性能基準は在りましたが家庭用には、そのまま採用できませんでした。

家庭では検知目的以外のガスが存在する台所の場所で、適確に都市ガス、LPガスを感知、作動する必要があります。しかし敏感にすれば、誤報しやすくなり、感度を抑えれば警報が遅くなる問題が起こるため、適切な感度はどこなのか難問を解決しなければなりませんでした。また家庭用警報器はノーメンテナンスで使用していただくのが前提です。設置場所をどこにするかも大事な問題であり、性能基準

ガス警報器の検査・検定の歩み

と設置基準が合わせて必要でした。こうした中で、LP用ガス警報器の検査基準につ

いては、1970年(昭和45年)3月にKHKが、液化石油ガス警報器(家庭用)の検査規定(型式検定)を制定しました。

検定第1号には、みはりが合格しました。5年後1975年(昭和50年)には、型式検査に加え工場審査、製品の抜取検査等を加えた規定に改正し、また新たに保守点検細則も追加し、合格品には、ブラックラベルからグリーンラベルに変更し、貼付することとしました。

雑ガス対策

従来のガスセンサは検知目的のガス以外の可燃性ガスに対しても反応するため、雑ガスと称される調理時のアルコール成分等でも鳴動する場合がありました。

頻繁に誤動作する場合にはコンセントを抜かれ、警報器としての機能を果たさなくなることがあります。これらを解決するために検知目的とするガスのみに反応する選択性センサが開発され、使用されています。

天井近くに取り付けられる「空気より軽い12A・13A用」等については誤報を防止するためにアルコールフィルターが開発され、これを使ったことに

より信頼性の高い警報器が発売されています。一方、LPガス用においてはセンサが床面近くに

設置されるため、殺虫剤などのスプレー使用により鳴動する場合があります。特に、集中監視等によりシステム化されている場合はその影響が大きくそれらの改善が望まれていたことから、1994年(平成6年)4月に高圧ガス保安協会が中心になり、誤報防止型LP用ガス警報器の基準が作成され、従来品に比べてスプレー等の使用による鳴動が抑えられた商品が開発され、誤報防止型として販売されています。

検定合格台数推移グラフ

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Page 10: ガス警報器とはガス警報器35年の歩み 日本での家庭用LPガスは、1952年(昭和27年)6 月から販売されるようになりました。1954年(昭和29年)には2万戸となり1955年(昭

住宅用火災警報器の鑑定試験

一体型警報器、分離型警報器及び集中監視型警報器(LPガス用警報器)

(LPガス用警報器)

不完全燃焼警報器液化石油ガス用ガス漏れ警報器に附属する機器

住宅用火災・ガス漏れ警報器

〈日本消防検定協会関係〉

(印刷を含む)

●都市ガス用警報器●不完全燃焼警報器●外部警報器●ガス警報器アダプター●業務用厨房不完全燃焼警報センサ

〈(財)日本ガス機器検査協会関係〉

防災用機器等

〈高圧ガス保安協会関係〉

●外部警報器(タイプⅡ)の子機

中継器・受信器

〈製品安全4法(液化石油ガス法)に基づく表示〉

又は 日本消防 検定協会

ガス警報器35年の歩み

この改正された検定第1号に合格したのが、岩谷産業㈱商品名「みはり・新コスモス電機㈱製」矢崎総業㈱の「アロッ子」㈱金門製作所の「カナリヤ」です。

都市ガス用警報器の検定については、(財)日本ガス機器検査協会(JIA)が実施し、1980年(昭和55年)に検査基準を制定し、自主検査を開始しました。その後数次の制改定が行われています。

また、業務用施設でのCO中毒防止のため、従来からの一般家庭環境への設置を想定した不完全燃焼

警報器の規程とは別に、業務用厨房に設置し換気不良や換気忘れによる環境条件が著しく悪化したことを知らせることを目的とした「業務用厨房不完全燃焼警報センサ検査規程[暫定]JIA-F038-06」が2006年

(平成18年)8月に新たに制定されました。業務用厨房不完全燃焼警報センサは、早鳴りを抑制する手段として積算換算のCOHbを用いた警報発信パターンを採用しています。

新築・改築住宅には、2006年(平成18年)6月1日から全国一斉に住宅用火災警報器の設置が義務付けられました。既存の住宅には、各市町村条例で定められた日から住宅用火災警報器の設置が義務付けられます。これらの住宅用火災警報器は、国が定めた規格に適合したものを設置することとされています。

住宅用火災・ガス警報器の火災検知性能については、消防庁所管の日本消防検定協会が行う鑑定試験に合格した商品が販売されています。

日本消防検定協会は、消防法により1963年(昭和38年)に設立された特殊法人です。

各種ガス警報器の認定マーク(ラベル)

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ガス警報器35年の歩み

LP用ガス警報器検定制度の歩み

西暦 和暦 KHKにおける制改定・運用の内容

1970 S45年 ◉「液化石油ガス警報器(家庭用)の検定規程」制 定 ◉自主検査検定開始(ブラックラベル)1975 S50年 ◉「液化石油ガス警報器(家庭用)の検定規程」を 廃止 ◉「液化石油ガス用ガス警報器検定規程」を制定 ◉自主検査検定開始(グリーンラベル)1981 S56年 ◉「液化石油ガス用ガス警報器検定規程」改正 (中継部・1級受信部・2級受信部・分離警報部を追 加)1985 S60年 ◉「液化石油ガス用ガス警報器検定規程」改正 (制御部を追加)1987 S62年 ◉「液化石油ガス用ガス警報器検定規程」改正 (情報表示盤を追加)1990 H2年 ◉「液化石油ガス用ガス警報器検定規程」改正 (吸引式警報器を追加) ◉製造事業者出荷データによる第2検定を実施 運用

西暦 和暦 制改定・運用の内容

1994 H6年 ◉「液化石油ガス用不完全燃焼警報器検定規程」 を制定 ◉「液化石油ガス用ガス警報器検定規程」改正 (検知部等に誤報防止項目を追加) ◉メーカー交換期限表示年月貼付1995 H7年 ◉工場審査有効期限延長を実施 ◉合格証の事前貼付を実施2003 H15年 ◉「液化石油ガス用ガス警報器検定規程」を改正 ◉製造事業者出荷データによる第2検定を改正2008 H20年 ◉「液化石油ガス用不完全燃焼警報器検定規程」 改正(電池式検査項目を追加)

都市ガス用ガス警報器検定制度の歩み

西暦 和暦 JIAにおける制改定・運用の内容

1980 S55年 ◉ガス漏れ警報器の検査基準を制定し、自主検 査制度を開始1981 S56年 ◉ガス漏れ警報器検定基準の改訂 (ガス事業法施行規則第85条第7号に規定するガ ス漏れ警報設備の検知器の規格との整合)1985 S60年 ◉ガス漏れ警報器検定基準の改訂 誤報等の減少を目的としたセンサの改良及び技 術進歩に対応するための改訂(業務用厨房等の設 置環境の厳しい場所に設置される業務用ガス警 報器の新たな位置づけを検討、家庭用ガス警報器 の有効期間延長を検討)1986 S61年 ◉不完全燃焼警報器の検査基準を制定し、自主 検査制度を開始1992 H4年 ◉業務用ガス漏れ警報器の有効期間延長を検討 ◉ガス漏れ警報器検査基準の改訂 (12A 13A専用のガス漏れ警報器について検討)1999 H11年 ◉ガス漏れ警報器の検定基準を制定 (ガス漏れ警報器と不完全燃焼警報器とをまとめ て再制定) ◉電池式不完全燃焼警報器の検定基準を制定 (浴室内で使用する電池式不完全燃焼警報器に ついて検討)

西暦 和暦 制改定・運用の内容

2001 H13年 ◉定電位電解式不完全燃焼警報器の検査基準を 制定 (センサに定電位電解式を使用した不完全燃焼 警報器について検討) ◉業務用不完全燃焼警報器の検査基準を制定 (業務用環境に設置される不完全燃焼警報器につい て検討)2006 H18年 ◉電池式一酸化炭素検知器の検査基準を制定 (携帯型の吸引式一酸化炭素検知器(5000ppm以 上を検知、濃度を表示)について検討) ◉業務用厨房不完全燃焼警報センサの検査基準 を制定 (業務用厨房室に設置し、一酸化炭素をCOHb値 に換算し警報を発するものの検討) ◉電池式不完全燃焼警報器(浴室外用)の検査基 準を制定 (「家庭用、浴室外設置、住宅用火災警報器との 複合型のもの」について検討)2007 H19年 ◉ガス警報器検査基準の改訂 (電池式のガス警報器、警報音等停止機能等につ いて検討)

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ガス警報器35年の歩み

ガス警報器の有効期限は3年からスタートしました。1980年代に入り、普及促進のため有効性の延長が検討されました。1982年(昭和57年)12月に高圧ガス保安協会が「液化ガス用ガス警報器性能調査委員会」を設置し、実際に使用された警報器を回収し性能調査を実施しその結果、現在の技術でも有効期限の延長が可能であるとの結論が出され、1984年(昭和59年)1月以降4年に延長されました。

都市ガス用警報器については、通産省のガス用品等技術基準調査会が1985年(昭和60年)6月、(社)日 本ガス協会に対して、市場品の品質調査を委託しました。当工業会も協力し、各種分析・試験を行い約5000台の市場データの調査と評価を行い報告書を提出しました。

これを受けて、同調査会は、ガス警報器の普及を容易にするため、有効期間の延長の検討とともに雑ガスによる誤報を発しない警報器の開発を図るべきであるとの提言がなされ、JIAは、1985年(昭和60年)10月に3年から5年に延長しました。

LP用ガス警報器は、その後1992年(平成4年)に4年から5年になりました。

警報器の有効期限

なお、LP用ガス警報器では、普及は進んだものの有効期限切れの警報器がかなり多くなったため、期限管理を徹底することとし、(社)日本エルピーガス連合会(現(社)エルピーガス協会)の協力のもとに、1994年(平成6年)4月からメーカーが交換期限を表示することとし、「年 月」貼付、1997年(平成9年)4月からは製造してから5年の表示、1998年

(平成10年)1月からは、メーカー側が出荷時に、交換期限を西暦年で表示したシールを貼付して販売しています。

都市ガス用の警報器の有効期限は設置後5年です。但し警報器は安全機器であること、またはガスセンサが在庫期間中でも変化する特性があるので、メーカー出荷後から設置まで期間は1年以内を目安としています。

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