徐放性製剤 速効性製剤 - ラジオnikkei · 2012-10-15 ·...

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平成 21 2 20 特別号 知は困難ですが、初期の症状をとらえ て重篤化を防止できると思っています。 また、高 齢 者では初 期 症 状が目立た なくなる傾向があり、薬の専門家が直 接モニタリングしたり、副作用の自己管 理のための支援が必要だと思われます 図10 )。 緩和ケアへの対応については、病院 では緩和医療に対する薬剤師の関与 は、一般病棟や緩和ケア病棟などの病 棟と、緩和ケアチームによる関与が考え られます。しかし、薬剤師としての視点 は同じであり、薬物療法を支え、患者さ んのQOLを改善することにあると思われ ます。 先ほどのチーム医療とのかかわりと 同様、薬剤師は薬剤の薬効、副作用、 相互作用をチェックし、適切な投与量を チームメンバーとともに検討する必要が あると思われます。特に患者さんの意思 を確認し、自分で納得し、参画するような 服薬指導をすることが大きな役割である と思われます(図11 )。 ─保険薬剤師の立場から、横井先生の お話です。 横井 高齢者の方の場合は、まず服用 タイミングなど、薬の使用方法をよく理解 してもらうということが大切です。それに は、専門用語を使用しない表現や聞き 間違いのない表現を工夫し、かつ、なる べくシンプルに服薬指導をする必要があ ります。 また、腎臓や肝臓の機能が低下して いる方が多いので、マーカーに注意して 検査結果を見せてもらうように心掛けて います。副作用の前兆をうまく見つける ためには、毎日患者さんと接している家 族の方やコメディカルの方々との連動も 非常に大切です(図12 )。例えば、イ レウスを起こす患者さんは多いですが、 ていくことが大事だと思います(図9 )。 また、患者さんが亡くなられたときに 余った麻薬ですとか、薬をいかに整理 するか。そこまで含めた対応の必要性 がこれからも叫ばれると思いますし、現 にナースが行っている「グリーフケア」、 これは亡くなったあとの家族へのケアな のですが、それも含めて薬の整理ととも に適正にできるのではないかと。非常に 広い視点で、これから対応すべき観点 だろうと思っております。 ─病院薬剤師の立場から、松尾先生の お話です。 松尾 高齢者への対応ですが、高齢 者では代謝、排泄など生理機能の加齢 変化により薬物の体内動態が変わり、 副作用が生じやすいと思われます。必 要に応じてTDM(薬物血中濃度モニ タリング)などを行いながら、適切な量を 投与するように推奨しています。 また、アレルギーが関与する副作用 や個人的な過敏症による副作用は、予 11─緩和ケアへの対応 •病院での緩和ケアに対する薬剤師の関わりは、一般病棟や緩和ケ ア病棟等の病棟と緩和ケアチームに分けられる。 •薬剤師としての視点は同じであり、薬物療法を支え、患者さんの QOLを改善すること。 •薬剤師は、薬剤の薬効、副作用・相互作用をチェックし適切な投与 量を検討する。特に、患者さんの意思を確認し、本人が納得し参画 するように服薬指導することが大きな役割である。 便秘や下痢の状態をチェックすることに より、カマグの量や服用タイミングを提案 して、QOLのアップにつながったというこ ともあります。薬剤師としては、病状を薬 学的に管理し、その情報を使いやすい かたちで家族や他職種の方と共有して いくことが大切です。 緩和ケアに関しては、その大前提とし て、各薬局で麻薬の許可を取ることが 必要になります。許可の取得には時間も かかります。処方せんが来てからでは遅 いのです。従って、開局の薬剤師として は、現在緩和ケアの患者さんを扱ってい なくても、将来への布石として、まず麻薬 の許可を取得しておくということが必須 の条件です。 薬の使い方としては、例えば頻繁にレ スキューを使用するというケースでは、そ もそもレギュラーで服用している量が少 なかったということもありました。痛みも変 動していきますので、きちんとコントロー ルできているか、よりよいコントロールをす るために、常に薬学的な視点で管理す るということが大切です(図13 )。 12─高齢者への特に注意点 •現実的な観点からの服用タイミングや使用方法のわかりやすい説明 •肝機能・腎機能などのマーカーをチェック •日頃から患者さんに接している家族やコメディカルの方々との 情報交換 13─緩和ケアへの対応(薬局薬剤師) •緩和ケアの患者さんの処方せん応需がなくても麻薬の許可は 取得しておくこと •痛みや副作用など患者さんの変化していく病状を薬学的な視点で タイムリーに管理を 10─高齢患者への対応 •高齢者では、代謝・排泄などの生理機能の加齢変化により、薬物の 体内動態が変わり、副作用が生じやすい。 •アレルギーが関与する副作用や、個人的な過敏性(代謝酵素欠損 等)による副作用は予知は困難だが、初期の症状をとらえて重篤化 を防止できる。 •高齢者では、初期症状が目立たなくなる傾向があり、薬の専門家 が直接モニタリングしたり、副作用の自己管理のための支援が必要。 9─日本におけるオピオイド鎮痛薬の種類 モルヒネ徐放剤 オキシコドン徐放剤 フェンタニル貼付剤 モルヒネ末 モルヒネ坐剤 モルヒネ&フェンタニル注射剤 モルヒネ内服液 速効性製剤 モルヒネ錠 徐放性製剤 松尾和廣 先生

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Page 1: 徐放性製剤 速効性製剤 - ラジオNIKKEI · 2012-10-15 · •肝機能・腎機能などのマーカーをチェック •日頃から患者さんに接している家族やコメディカルの方々との

平成 21年 2月 20日 特別号

知は困難ですが、初期の症状をとらえ

て重篤化を防止できると思っています。

また、高齢者では初期症状が目立た

なくなる傾向があり、薬の専門家が直

接モニタリングしたり、副作用の自己管

理のための支援が必要だと思われます

(図10)。

 緩和ケアへの対応については、病院

では緩和医療に対する薬剤師の関与

は、一般病棟や緩和ケア病棟などの病

棟と、緩和ケアチームによる関与が考え

られます。しかし、薬剤師としての視点

は同じであり、薬物療法を支え、患者さ

んのQOLを改善することにあると思われ

ます。

 先ほどのチーム医療とのかかわりと

同様、薬剤師は薬剤の薬効、副作用、

相互作用をチェックし、適切な投与量を

チームメンバーとともに検討する必要が

あると思われます。特に患者さんの意思

を確認し、自分で納得し、参画するような

服薬指導をすることが大きな役割である

と思われます(図11)。

─保険薬剤師の立場から、横井先生の

お話です。

横井 高齢者の方の場合は、まず服用

タイミングなど、薬の使用方法をよく理解

してもらうということが大切です。それに

は、専門用語を使用しない表現や聞き

間違いのない表現を工夫し、かつ、なる

べくシンプルに服薬指導をする必要があ

ります。

 また、腎臓や肝臓の機能が低下して

いる方が多いので、マーカーに注意して

検査結果を見せてもらうように心掛けて

います。副作用の前兆をうまく見つける

ためには、毎日患者さんと接している家

族の方やコメディカルの方 と々の連動も

非常に大切です(図12)。例えば、イ

レウスを起こす患者さんは多いですが、

ていくことが大事だと思います(図9)。

 また、患者さんが亡くなられたときに

余った麻薬ですとか、薬をいかに整理

するか。そこまで含めた対応の必要性

がこれからも叫ばれると思いますし、現

にナースが行っている「グリーフケア」、

これは亡くなったあとの家族へのケアな

のですが、それも含めて薬の整理ととも

に適正にできるのではないかと。非常に

広い視点で、これから対応すべき観点

だろうと思っております。

─病院薬剤師の立場から、松尾先生の

お話です。

松尾 高齢者への対応ですが、高齢

者では代謝、排泄など生理機能の加齢

変化により薬物の体内動態が変わり、

副作用が生じやすいと思われます。必

要に応じてTDM(薬物血中濃度モニ

タリング)などを行いながら、適切な量を

投与するように推奨しています。

 また、アレルギーが関与する副作用

や個人的な過敏症による副作用は、予

■ 図11─緩和ケアへの対応

•病院での緩和ケアに対する薬剤師の関わりは、一般病棟や緩和ケア病棟等の病棟と緩和ケアチームに分けられる。

•薬剤師としての視点は同じであり、薬物療法を支え、患者さんのQOLを改善すること。

•薬剤師は、薬剤の薬効、副作用・相互作用をチェックし適切な投与量を検討する。特に、患者さんの意思を確認し、本人が納得し参画するように服薬指導することが大きな役割である。

便秘や下痢の状態をチェックすることに

より、カマグの量や服用タイミングを提案

して、QOLのアップにつながったというこ

ともあります。薬剤師としては、病状を薬

学的に管理し、その情報を使いやすい

かたちで家族や他職種の方と共有して

いくことが大切です。

 緩和ケアに関しては、その大前提とし

て、各薬局で麻薬の許可を取ることが

必要になります。許可の取得には時間も

かかります。処方せんが来てからでは遅

いのです。従って、開局の薬剤師として

は、現在緩和ケアの患者さんを扱ってい

なくても、将来への布石として、まず麻薬

の許可を取得しておくということが必須

の条件です。

 薬の使い方としては、例えば頻繁にレ

スキューを使用するというケースでは、そ

もそもレギュラーで服用している量が少

なかったということもありました。痛みも変

動していきますので、きちんとコントロー

ルできているか、よりよいコントロールをす

るために、常に薬学的な視点で管理す

るということが大切です(図13)。

■ 図12─高齢者への特に注意点

•現実的な観点からの服用タイミングや使用方法のわかりやすい説明•肝機能・腎機能などのマーカーをチェック•日頃から患者さんに接している家族やコメディカルの方々との情報交換

■ 図13─緩和ケアへの対応(薬局薬剤師)

•緩和ケアの患者さんの処方せん応需がなくても麻薬の許可は取得しておくこと

•痛みや副作用など患者さんの変化していく病状を薬学的な視点でタイムリーに管理を

■ 図10─高齢患者への対応

•高齢者では、代謝・排泄などの生理機能の加齢変化により、薬物の体内動態が変わり、副作用が生じやすい。

•アレルギーが関与する副作用や、個人的な過敏性(代謝酵素欠損等)による副作用は予知は困難だが、初期の症状をとらえて重篤化を防止できる。

•高齢者では、初期症状が目立たなくなる傾向があり、薬の専門家が直接モニタリングしたり、副作用の自己管理のための支援が必要。

■ 図9─日本におけるオピオイド鎮痛薬の種類

モルヒネ徐放剤 オキシコドン徐放剤

フェンタニル貼付剤

モルヒネ末

モルヒネ坐剤

モルヒネ&フェンタニル注射剤

モルヒネ内服液

速効性製剤

モルヒネ錠

徐放性製剤

松尾和廣 先生

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特別号 平成 21年 2月 20日

薬局薬剤師と病院薬剤師がいかに連携を取り合っていけばよいか。

薬・薬連携のまとめ

─病院薬剤師の立場から、松尾先生の

お話です。

松尾 病院薬剤師と保険薬局薬剤師

の連携は、患者情報の一元化ということ

が特に大切であると思われます。患者さ

んの入院前の薬歴、副作用歴など、患

者情報はかかりつけ薬局が管理し、入

院中は病院薬剤師が管理、退院後に

はまたかかりつけ薬局に戻ることになる

ため、病院薬剤師と薬局薬剤師が患者

情報を共有することが重要です。

 病院によっては、病院を退院する際、

病院薬剤師は退院サマリーを記載し、

患者さんにかかりつけ薬局に持参して

もらうようにしている病院もあります。しか

し、現在お薬手帳を利用している患者

さんが多いため、今以上にお薬手帳を

活用した患者情報の一元化が、病院薬

剤師と薬局薬剤師の連携に有効である

と思われます(図14)。

─保険薬剤師の立場から、横井先生の

お話です。

横井 少し違った角度かもしれません

けども、病院から処方される場合に、一

般には代替調剤が認められていない

日本では、薬の調達が難しいということ

がしばしばあります。患者さんの状態か

ら、薬をすぐに調剤したほうがいいと考

えられる場合、疑義照会して変更を求

めるということになりますが、処方医の不

在や病院の採用薬の問題などで難し

い場合もあります。

 薬がないということは薬物治療の根

幹に関わる問題で、当然薬局側の在庫

努力は言うまでもないですが、現在の日

本の状況ではそれも限界があります(図

15)。一般名処方の推進なども含めて、

もう少し病院全体の認識を高めてもらえ

るように、病院薬剤師の先生に活躍して

いただきたいと思います。それから、処方

せんの書き方にもまだまだ不備が多いの

が目立ちます。医療安全の観点から、処

方せん記載方法の指導を期待しています。

 薬局薬剤師と病院薬剤師、それぞれ

の患者情報の特徴としては、薬局薬剤

師はどちらかというと生活情報というの

がより多く、病院薬剤師は薬の情報が

より多いと常々感じています。連携とい

う観点から考えると、この辺りの情報交

換をうまくできればよいと思います(図

16)。また、そのためにも生の情報を交

換することが重要で、病院、薬局双方の

薬剤師が退院時のカンファレンスへの

参加や、日ごろから勉強会や研究会な

どを通じて交流をしていくことも大事で

あると思います。

─在宅医療薬剤師の立場から、萩田先

生のお話です。

萩田 在宅医療の場合には、やはり病

院の退院から始まる場合が多いです。

そのときに退院時カンファレンスを行います。

退院時カンファレンスには担当の主治医

や看護師や、あるいはMSW(医療ソー

シャルワーカー)のような方が参加される

のですが、その中に悲しいことに病院薬

剤師がおられない場合が多いのです。

そうなりますと、入院中の調剤をどう工夫

していたのかという情報が伝わってきま

せん。そうなりますと、われわれとしてはこ

れからどのように患者さんを在宅で調剤

して、適正に使用するかということが必

要なのですが、その辺りの情報をやはり

一番欲しいなと思っております。もう少し

具体的に言いますと、「これは一包化し

ていた」とか、「これは調整する薬だ」と

か、その状況を細かく判断したいなとい

うのが現状です。

 ですから、これからもお薬手帳とかそ

ういうサマリーだけではなく、顔を合わせ

て向かい合って、お互い連絡が取れる

ような関係を作っていければよいと思っ

ております。

■ 図15

薬の在庫問題と処方せんに関する医療安全問題には薬局薬剤師と病院薬剤師双方の努力と連携が必要

・現在保険薬局で使用できる薬価収載品目 約13000品目・保険薬局1軒当たりの平均在庫品目 約800~900品目

■ 図16─それぞれの特徴を生かして連携して情報を交換を

•薬局薬剤師:生活関連情報が多い•病院薬剤師:薬剤関連情報が多い

─病院薬剤師の立場から、松尾先生の

お話です。

松尾 今、お話を聞いておりまして、や

はり日ごろからの情報交換というものが

非常に大切だと思いました。紙切れ1枚

のようなサマリーとかお薬手帳も確かに

大切だと思いますが、地域医療に密着

して、病院薬剤師も薬局薬剤師も、患者

さんのために薬を通してみんな一緒に

やっていきたいと思いましたので、ご協

力よろしくお願いします。

病院薬剤師

薬局薬剤師

─保険薬剤師の立場から、横井先生の

お話です。

横井 薬局薬剤師、病院薬剤師、働い

ている場所は違いますが、薬を通して

患者さんに接しているという面では同じ

かと思います。薬を通じては同じ共通言

語で会話をすることができますので、先

ほど松尾先生がおっしゃいましたように

いろいろな機会を通じて交流を深めて

いくということと、また薬剤師同士だけで

はなくて、主治医の方やコメディカルの

方も含めた輪の中で、もう少しコミュニ

ケーションを取っていくと、大きな枠の中

でまた連携が取れていくのではないかと

思います。

 

─在宅医療薬剤師の立場から、萩田先

生のお話です。

萩田 今やもう在宅医療の推進ととも

に、薬剤師の職能というのが非常に期

待されていると思います。ただ薬局の中

で待っているだけではなく、薬局を出て、

地域でネットワークを作り、他職種と連携

して、在宅医療は推進されるものと思い

ます。ですから、われわれ開局の薬剤師

が在宅へ行くということは、病院薬剤師

の先生方が病棟へ行くのと全く同じ現

状だと思います。その中で情報を共有し

て、お互いに面と面で会って、そして情

報をうまく回していければ、いい医療に

つながるものと思っております。

■ 図14─薬局薬剤師と病院薬剤師の連携の取り方

『お薬手帳』を活用した患者情報の一元管理が有効である

横井正之 先生

•入院前の薬歴、副作用歴など患者情報はかかりつけ薬局が管理し、入院中は病院薬剤師が管理、退院後には、またかかりつけ薬局にもどることになるため、病院薬剤師と保険薬局薬剤師が患者情報を共有することが重要である。

•病院を退院する際、病院薬剤師は退院サマリーを記載し、患者さんにかかりつけ薬局に持参してもらう。

2009年1月23日放送「医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 鼎談 薬学管理上必要な情報 ─医薬品適正使用に向けて─」より採録

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平成 21年 2月 20日 特別号

日本薬局方 注射用ピペラシリンナトリウム

2007年8月作成