明日の保証 再保険市場における保険リンク 証券の …...1 aon benfield,...

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明日の保証 再保険市場における保険リンク 証券の波及効果 注:本資料は Deloitte Development LLC.が作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。 この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、オリジナルである英語版の補助的なものです。

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Page 1: 明日の保証 再保険市場における保険リンク 証券の …...1 Aon Benfield, Inc.(エーオン ベンフィールド・インク)、“Reinsurance Market Outlook:

明日の保証

再保険市場における保険リンク

証券の波及効果

注:本資料は Deloitte Development LLC.が作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。 この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、オリジナルである英語版の補助的なものです。

Page 2: 明日の保証 再保険市場における保険リンク 証券の …...1 Aon Benfield, Inc.(エーオン ベンフィールド・インク)、“Reinsurance Market Outlook:

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目次

新たな資本、新たな技術、新たな再保険の方法 1

保険リンク証券の歴史と進化 2

ILSの成長見通し 7

ILSの新たな保障範囲による需要への影響 10

ILSの使用および投資に関連する米国の税務上の考慮事項 12

透明性の向上によりILS市場が拡大する可能性 13

ILSの魅力を高める設計の見直し 14

従来の市場参加者は変化を受け入れるべきである 16

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 1

新たな資本、新たな技術、

新たな再保険の方法

保険とは、特定の事象の損失リスクをできるだけ多数の参

加者に分散することであると、最も基本的な形で定義した場

合、実際の保険事業は、そのリスク管理に必要なスキル一

式とそれを支える必要資本とを結び付けることであると、よく

言われてきました。

アクチュアリー、アンダーライター、保険募集人などのスキル

一式と資本のこうした結合は、現代の保険業の基礎をなす

ものです。しかしながら、最近これに変化が生じ、従来のビ

ジネスモデルがディスラプション(破壊的イノベーションの)リ

スクにさらされるようになった可能性があります。

破壊的変化の影響を受けやすい保険業界の特定分野とし

て、再保険セクターに注目することはよいことかもしれま

せん。保険業界に不可欠なこのセクターは、消費者または

一般的な企業向けとは異なり、比較的少数の、したがって比

較的狙いを定めやすい熟練した購入者と販売者から成る明

確に確立された取引領域です。技術の進歩に伴い、非伝統

的な市場参加者に入手可能な情報の拡大と、その情報を管

理、分析および利用する能力の向上の双方が急速に強ま

り、フリクショナルコストを低減する明瞭な可能性が存在する

ように思われます。

安全性のために分散性を求めながら、なおかつ受入可能な

リターンを受け取ろうとする資本市場関係者の存在が明らか

になり、リスク・リンク証券(risk-linked securities)および保

険リンク証券(insurance-linked securities:ILS)市場の魅力

が明瞭になりつつあります。

これは再保険と資本市場が出会う場であり、資本提供者に

は、大半の資本市場のリスクと概ね無相関で合理的なリ

ターンをもたらす投資先を提供する一方、再保険市場には、

伝統的な市場参加者を通じて提供される資本よりも低コスト

で資本を提供できます。

ある最近のレポートによれば、代替的資本は現在、世界の

再保険資本の約12%を占めています。また、2015年上期末

時点で伝統的資本は約4,970億ドルに対し、代替的資本は

680億ドルで、2018年までに倍増すると予想されています1。

いかなる市場であれ、比較的新しい参入者が12%相当の市

場シェアを獲得したうえ、それを急拡大させているとすれば、

それに伴って既存プレーヤーに何らかの歪みや混乱が生じ

ると予想できます。

連邦保険局(Federal Insurance Office:FIO)が公表した米

国の保険市場に関するごく最近の報告書で注目される記述

は、次の通りです。「リスク移転の代替的資本が保険業界で

果たす役割が拡大している。こうした資本は依然として、再

保険引受に出資する資本全体のうちわずかな比率を占める

にすぎないものの、その成長は引き続き再保険料に下方圧

力を加えている。過去1年は、カタストロフィ・ボンド(キャット・

ボンド)およびその他の保険リンク証券の成長が続いただけ

でなく、インダストリー・ロス・ワランティ( industry-loss warranty)や担保付再保険(collateralized reinsurance)が極めて急速なペースで伸びた。これらの代替的形態のリスク

移転は、かつては革新的な市場セグメントとみなされていた

が、今では永続的に保険市場の一角を占めつつあるように

思われる」2。

広義の代替的資本が再保険市場に流入し続けています。明

らかにこのことは、従来の規制された再保険会社のモデル

からの変化を示すものであり、市場の役割の再定義につな

がる可能性があります。問題は、市場およびその直接的・間

接的参加者にとってそれが何を意味するかということです。

そうした参加者には、保険会社や再保険会社だけでなく規制

当局や消費者、投資家も含まれます。

今や代替的資本が永続的に市場の一角を占めるようになっ

たことを、FIOと同様に受け入れるとすれば、参加者は、偉大

な生物学者チャールズ・ダーウィンの次のことばを心にとど

めておくべきです。「生き残るのは最も強力な者や最も賢明

な者ではなく、最も適切に変化を管理できる者だ」

短期的に見れば変化は苦闘を意味するでしょうが、長期的

には進歩を意味すると思われます。確かに、直近では保険

料や利益率への下方圧力が再保険会社にマイナスの影響

を与えているかもしれませんが、再保険会社はすべての市

場参加者と同様、代替的資本の参入が生み出した変化への

適応を学ぶことができますし、そうしなければなりません。最

も効果的に適応した者が、この新たな市場で新たな競争優

位を獲得すると思われます。

1 Aon Benfield, Inc.(エーオン ベンフィールド・インク)、“Reinsurance Market Outlook: Supply Increase Pauses and Demand Set to Accelerate(再保険市場の見通し:供給の増加は一服、需要が加速する見込み)”、2015年9月 2 米国財務省連邦保険局、“Annual Report on the Insurance Industry(保険業年次報告書)”、2015年9月

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2

保険リンク証券の

歴史と進化

保険リンク証券とはどのようなものでしょうか。全米保険監督

官協会(National Association of Insurance Commissioners:NAIC)の定義によれば、ILSとは、そのパフォーマンスが所

定の保険リスクの想定し得る発生事象に連動する有価証券

をいいます。ILSは、当初キャット・ボンドとして知られた有価

証券クラスの拡張版です。発行済ILSのなかで依然として

キャット・ボンドが主流タイプであるものの、それ以外にも、死

亡率、寿命および医療費請求コストに基づくILSなど、非

キャット・ボンド型のILSも存在します。ILSボンドは、再保険

の購入に加え、または再保険の代替として、保険会社また

は他の形態のリスク負担事業体(法人または政府機関など)

によって利用されることがあります3。

保険リンク証券の近代は、ハリケーン・アンドリューや他の多

数の大規模自然災害が再保険業界の引受能力(capacity)不足を引き起こした1992年に始まりました。追加的な引受能

力を探し求める動きはカタストロフィ・ボンドの創出につなが

り、1990年代半ばから発行が開始され4、1997年には格付け

された最初のボンドが発行されました5。

図表1:代替的資本が引き続き成長(世界全体の再保険会社の資本に占める比率) 世界全体の再保険会社の資本(単位:百万ドル)

385 410 471 456

505 540

575 565

368 388 321 378 447 428 461 490 511 497

17 22 19 22 24 28 44 50 64 68

2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度上期

代替的資本 伝統的資本 世界全体の再保険会社の資本

出所:エーオン ベンフィールド アナリティクス、"Reinsurance Market Outlook(再保険市場の見通し)"、2015年1月

3 全米保険監督官協会、“Capital Markets Special Report: A Comprehensive Overview of the Insurance-Linked Securities Market(資本市場

特別報告書:保険リンク証券市場概観)”、2012年5月4日 4 “Perilous Paper: Bonds That Pay Out When Catastrophe Strikes Are Rising in Popularity(危険な紙:大規模災害の発生時に支払われる債

券の人気上昇中)” エコノミスト誌、2013年10月5日 5 Swiss Re Capital Markets(スイス・リー・キャピタル・マーケッツ)、“What Are Insurance Linked Securities (ILS), and Why Should They Be

Considered?(保険リンク証券(ILS)とは何か、そしてなぜそれを検討する必要があるのか)”、CANE秋期会議におけるプレゼンテーション、2012年9月

340 400

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 3

FIOの報告書が指摘しているように、ほぼ20年経過後でさ

え、代替的資本(ILS、インダストリー・ロス・ワランティ(ILW)、

担保付再保険、および外部の投資家がリスクを保障し、特定

のブック・オブ・ビジネス(契約保険総量)の利益獲得を認める

サイドカーを含みます)は、再保険引受に投入された資本の

比較的小部分を占めるにすぎません。図表1がこのことを示し

ています。しかし、2006年度末から2014年度迄の年複利成

長率(CAGR)が、伝統的資本ではわずか4.2%にとどまる

のに対し、代替的資本は18%であることから分かるように、

代替的資本の成長と影響力は着実に拡大しています。この

ことはまた、ILSの発行残高中最大の比率を占めるキャッ

ト・ボンドの発行残高が、同期間に21.4%のCAGRを示して

いることからも明らかです(図表2)。

図表2:ILSの発行は前年比で増加し、2014年末時点の残高総額は600億ドルに キャット・ボンドの発行残高および累積額(単位:十億ドル)

60.1

2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

損害保険および生命/医療保険

の発行残高

ボンドの累積合計額

出所:エーオン ベンフィールド アナリティクス、"Insurance-Linked Securities: Capital Revolution-Alternative Markets Fuel Dynamic Environment(保険リンク証券:資本革命 - 代替的市場がダイナミックな環境の原動力)"、2014年9月

50.7

44.0

33.2 37.626.8 28.5

20.9

12.7 22.416.2

12.9 13.2 13.2 11.515.1 17.8

6.6

Page 6: 明日の保証 再保険市場における保険リンク 証券の …...1 Aon Benfield, Inc.(エーオン ベンフィールド・インク)、“Reinsurance Market Outlook:

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ここでは主にキャット・ボンドに注目していますが、他の代替

的資本商品についても同様のことが言えます。上述のよう

に、そのような商品は、資本市場のリスクとは概ね無相関の

資産クラスへのエクスポージャーを投資家に提供します。そ

れらはすべて再保険市場に引受能力を提供することになり、

その結果、場合により再保険会社が排除されたり、仲介金融

機関離れ(disintermediate)が生じる可能性があります。

これまでのところ、このような追加的な引受能力によって伝

統的な引受能力が排除され、その結果、FIO報告書で述べら

れた次のような状況が生じているように思われます。「保険

料の一貫した低下は、少なくとも2つの主要な要因の産物で

ある。1つの要因は、元受保険会社の需要が減退しているこ

とであり、その一部はリスクの保持を増やしている(すなわ

ち、出再を減らしている)。第2の要因は、再保険市場の引受

能力の継続的な増加である」6

第3の要因には、市場をハード化させ、ILS投資家の懸念を

引き起こす、大規模自然災害による高額の被保険損失が相

対的に少ないことが考えられます。大規模な損失事象のみ

がこの資産クラスの安全性に対する投資家の懸念を引き起

こすと仮定すれば、かかる損失の引き金となる一連の大規

模自然災害が発生していない状況、特に、過去のILS損失あ

るいは損失の欠如する状況を考慮すると、投資家の懸念は

まず考えられません。

キャット・ボンド市場の発足以降、ほぼ20年に及ぶ歴史の中

で300件以上の取引が市場で行われましたが、そのうち10件

の取引が投資家の元本に損失を引き起こしました。この10件の過去の損失のうち、6件は被保険損失事象に起因する

ものであり、4件は、ボンドの担保保証責任を負うファームに

起因するビークルの担保の信用事象に関連するものでし

た。影響を受けた募集の総規模は17億ドルで、その中に

は、2008年における日本の地震に関連する総額約5億ドル

の損害および2010年におけるミズーリ州の竜巻による損害

のほか、石油施設が絡む2005年発行の4億500万ドル規模の ボンドのクラスCの9%、および上記のファームが絡む事案の

よく知られた結果の1つである担保のリターンが含まれます7。

これらの損害のうち、紛争が生じて訴訟や仲裁にまで至った

ものは1件にすぎませんでした。そして、この事案では予定通

りの取引に基づいてスポンサーが再建されたことに着目する

ことが重要です。すべてのカタストロフィ・ボンドでは、取引を

裏付ける担保が、迅速な保険金支払を確保すべくスポンサー

のために担保勘定に残されることが標準となっています8。

リターン水準の低下が投資家を遠ざける要因になると考える

向きがあるかもしれません。実際、ILSのリターンは過去最

低水準まで低下しています(図表3)。そのために投資家の

関心が低下したとしても意外ではありません。金利低下環境

の影響を受けて、他の債券資産クラスと同様、ILSのリターン

も低下しています。

図表3:ILSのリターンは一貫して低下 低下するILSのリターン

1400 1200 1000 800 600 400 200

0 Q1 12 Q2 12 Q3 12 Q4 12 Q1 13 Q2 13 Q3 13 Q4 13 Q1 14 Q2 14 Q3 14 Q4 14

新発債の規模加重・リスク調整後リターン

線形(新発債の規模加重・リスク調整後リターン)

出所:ミュンヘン・リー、“Insurance-Linked Securities (ILS) Market Review 2013 and Outlook 2014(保険リンク証券(ILS)市場の2013年の回顧および 2014年の展望)”、2014年

6 米国財務省連邦保険局、“Annual Report on the Insurance Industry”、2015年9月 7 全米保険監督官協会、“Capital Markets Special Report: A Comprehensive Overview of the Insurance-Linked Securities Market”、2012年5月4日 8 前掲資料.

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 5

実際の数値は異なる状況を示しています。図表4が示すよう

に、リターンの低下にもかかわらず、2015年第1四半期の発

行高は過去最高水準に達しました。控えめに表現する

NAICでさえ、「保険リンク証券は、生命保険および損害保

険のどちらのセクターも投資家にとって大きな魅力を備えて

いる」と述べています。

この全体的な超低金利環境にあって、ILSの利回りは、その

低下にもかかわらず、類似した社債に比べ総じてまだわず

かに高い水準にあります。キャット・ボンドのクーポンは、担

保を裏付ける投資に基づく受取利息の利率変動も部分的に

反映するため、金利上昇に対する一定のプロテクションを提

供しています。

図表4:2015年第1四半期にキャット・ボンドおよびILSとして発行された新規リスク・キャピタルは過去最高水準 各年の第1四半期(Q1)におけるILSの発行高(単位:百万ドル)

2500

2000

1500

1000

500

0 Q1 06 Q1 07 Q1 08 Q1 09 Q1 10 Q1 11 Q1 12 Q1 13 Q1 14 Q1 15

各年のILS取引の平均規模および件数

350 15

300 12

250

200 9

150 6

100 3

50

0 Q1 06

発行高

0 Q1 07 Q1 08 Q1 09 Q1 10 Q1 11 Q1 12 Q1 13 Q1 14 Q1 15

取引件数

出所:アルテミス(Artemis)、 “Catastrophe Bond & Insurance-Linked Securities(カタストロフィボンドおよび保険リンク証券)”、2016年1月

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6

キャット・ボンドには間違いなくリスクがあり、その中には、

アタッチメント・ポイントに達した場合に引き起こされる可能

性のある断崖リスク(cliff risk)が含まれます。極めて単純

化して言えば、Xがトリガーである場合、Xが発生すると投

資全体が同時に失われる可能性があるということです。保

険業界は各種の構造を試みていますが、通常、キャット・ボ

ンドは、所定の事象の存在または一定の業界規模の損失

に基づいて支払を開始する構造を取っており、多くの場合、

利息と元本の全額がリスクにさらされる可能性があります。

しかしながら、損失水準が過去最低水準にあることに加え、

ILSによる追加的分散効果の便益が、投資家を惹きつけ続

ける十分な理由になっているようです。

もう一つ別のリスクとしては、担保の質があります。完全担

保付金融商品の信頼性はその担保の質に左右されます。

アルテミス(Artemis)(キャット・ボンドとILS、代替的再保険

資本および関連するリスク移転市場を専門とするニュース、

分析およびデータメディア・サービスの提供会社)のオー

ナーで、長い間業界を見てきたスティーブ・エバンス氏はこ

う述べています。「過去16、17年の間に、それ[ILS市場]

は、最も流動的な形態の資金を集める手段から一般に認

められた資産クラスへと変化しました。・・・かつては、保険

会社や再保険会社が、リスク移転のニーズを支援する能力

を提供して資本市場の投資家に促したのに対し、今では投

資家がこの分野について学び、投資ファンド・マネジャーは

ILSのために高い評価を得るようになっています」9

9 スティーブ・エバンス氏のインタビュー、デロイト金融サービスセンター、2015年9月1日

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 7

ILSの成長見通し

ILS市場が引き続き成長する見通しは、多くの理由から明るいと思われます。 基本的理由の1つは単純な規模の問題です。ILSや他の形態の代替的資本が、規制業種である再保険会社の財務リターンに

悪影響を与えているにもかかわらず、現在の証券化市場の規模に比べれば、ILS市場の絶対的規模はごく小さいものです(図

表5)。

図表5:証券化市場の規模:保険を含むすべての市場における証券化全体とILSの比較

項目 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

第1四半期

世界の証券化市場の発行

高(単位:十億ドル) 386.04 609.21 528.55 577.16 595.27 561.75 136.74

キャット・ボンドとILSの発行

高(単位:十億ドル) 3.21 5.45 4.96 6.3 7.67 9.09 2.06

世界の証券化市場の発行高に占めるILSの比率

1.5%

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年第1四半期

出所:www.artemis.bm、米国証券業金融市場協会(Securities Industry and Financial Markets Association:SIFMA)

1.6%

1.3%

0.9% 0.9% 1.1% 0.8%

Page 10: 明日の保証 再保険市場における保険リンク 証券の …...1 Aon Benfield, Inc.(エーオン ベンフィールド・インク)、“Reinsurance Market Outlook:

8

証券化市場全体は、金融危機以前の栄光の時代から転落

し、証券化は金融危機の原因の1つとみなされました。 最近、国際通貨基金(IMF)スタッフの議論において、米国

および欧州市場における2014年の証券化市場の規模は、

発行高が2兆2,000億ドル以上だった2007年の3分の1以下にとどまり、さらに遡った2003年の発行高水準の半分以

下である、と指摘されました。2014年における米国の証券

化商品の発行高は4,000億ドルを上回り、2008年以降着

実に伸びているものの、2006年および2007年の両年にお

ける約1兆6,000億ドルには依然として遠く及ばない水準に

あります10。 最近のある業界レポートによれば、図表1に示されるよう

に、再保険セクターの代替的資本は2015年上期末時点で

総額約680億ドルでした。そして、この数字は2018年まで

に1,200億ドルと1,500億ドルの間の水準に拡大すると予

想されています11。

もしそうなら、経済全体の趨勢が証券化市場の成長に織り込

まれているといっても、ILS市場は証券化市場に比べ依然とし

て比較的小規模であると言えます。例えば、現在ILS市場で

は米国の投資家がその大半を占めていますが(図表6)、EUは証券化市場全体を活性化しようとしており、金融のトップ

は、特定の資産担保証券を保有する銀行や保険会社の資本

賦課の引き下げを提案しています12。これは直接ILSに影響

するものではないとしても、この資産クラスに新たな投資家を

引き付けるという波及効果を生み出す可能性があります。 また、資本賦課の変更は、米国の投資家、特に生命保険会

社を引き付け、当該市場への投資が拡大する可能性もあり

ます。NAICによれば、米国の保険会社は2014年末時点で5兆7,600億ドルの資産を保有しており、うち3兆8,600億ドルが

債券で占められていました13。NAICはまた、2013年末時点

における米国保険業界のILSへの投資総額は1億6,800万ド

ルと、2011年に同業界が保有していた4億2,800万ドルから

減少したと指摘しています。生命保険会社はそのうち1億3,400万ドルを保有し、その76%がキャット・ボンド、24%が死

亡リスク・罹患リスクをカバーするILSでした14。 図表6:キャット・ボンドの投資家の特性 - 投資の大半は投資ファンドから 保険会社にILSへの投資を拡大する機会

投資家の地域別内訳 投資家の種類別内訳

日本3% カナダ1% オーストラリア1%

保険会社3%

バミューダ 11%

欧州

25%

米国 59%

出所:スイス・リー・キャピタル・マーケッツ、"Investors by regions and Investors by type(投資家の地域別内訳および種類別内訳)"、2012年8月

13 全米保険監督官協会、 “Year-End 2014 Insurance Industry Investment Portfolio Asset Allocations(2014年末時点の保険業界の投資 ポートフォリオにおける資産配分)”、2015年6月22日 14 全米保険監督官協会保険政策調査センター(Center for Insurance Policy and Research)、“Insurance-Linked Securities: Catastrophe Bonds, Sidecars and Life Insurance Securitization(保険リンク証券:キャット・ボンド、サイドカーおよび生命保険の証券化)”、2015年9月3日

再保険会社 6%

ヘッジファンド 14%

専門ファンド 47%

銀行 8%

資産運用機関22%

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 9

保険の運用利回りは、2010年の4.42%から2013年の

4.11%へと一貫して低下した後、2014年には4.20%へと再

び上昇しました15。生命・医療保険セクターの利回りは、2010年の4.69%から2013年の3.65%へと100ベーシス・ポイント

以上低下した後、2014年には4.20%に再上昇しました16。 レーン・ファイナンシャルLLPの最近のレポートでは、キャッ

ト・ボンドの所有者が過去に受け取ったリターンに着目してい

ます。レーンは、保険部分(流通市場におけるボンドの価格

変動およびボンドのスポンサーが支払った保険料を反映した

スプレッド・リターンで構成されます)および変動部分(担保に

基づくリターン)を評価し、その結果得られるトータル・リターンを

示しています。保険部分はマイナスとプラスのどちらになること

もありますが、変動部分がマイナスになることはありません17。 2002年から2014年までの期間中、保険部分がマイナスに

なったのは1回のみで、2005年のリターンは-1.44%でした。

同期間の平均年間リターンは8.44%でした18。 長期化する低金利の時代にあって運用利益が成功と失敗を

分ける可能性のある業界にいながら、保険会社がILSに殺到

しないのはなぜでしょうか。 これは興味深い問題です。FIOは、多様な資産クラスを通じ

て高リターンを追求する保険会社の動きに注目しています。

FIO報告書によれば、「・・・2014年には、過去数年のトレンド

を受け継ぎ、生命保険会社による高利回りの非伝統的資産

クラスへの投資の伸びが、伝統的な債券投資の伸びを上

回った」19。 では、保険会社、特に生命保険会社はなぜILSを大量に買い

入れないのでしょうか。要因の1つとして規制当局の牽制が

考えられます。規制当局は、元受事業ですでに保険引受の

危険(covered peril)にさらされている保険会社がILSに投資

することを好ましいとは考えないでしょう。しかし、このことは、

例えば生命保険会社が自然災害のキャット・ボンドに投資す

る妨げにはならないはずです。

しかしながら、キャット・ボンドに投資する保険会社は、それ

をNAICの資本市場・投資分析局(Capital Markets & Investment Analysis Office)に届け出て判断を仰ぐ必要が

ありました。というのも、キャット・ボンドは、受入可能な格付

機関が監視する既存の格付を有する有価証券に適用される

届出免除の対象外だったためです20。しかし、NAICの有価

証券評価(E)作業部会(Valuation of Securities (E) Task Force)はその届出を免除するに至りました。 主な懸念要因はリスクに対する資本賦課(RBC)です。NAICに対する北米CROカウンシルのプレゼンテーションはこの懸

念を顕在化させました21。このプレゼンテーションでは、現在

「BB」格のキャット・ボンドは3.4%の資本を賦課され、資産リ

スク・コンポーネントのC1の係数に分類されることが示され

ました。その結果、5億ドルのキャット・ボンドの場合、生命保

険会社の資本賦課は1,690万ドルとなり、分散効果は認識さ

れません。 同カウンシルは、RBCの賦課を変更して、保険としての

キャット・ボンドの利点および分散効果を認識することを提案

しました。この提案によれば、資本賦課はCIIの保険リスク・

コンポーネントに移されることになります。この背後には、同

カウンシルが言うように、金融信用リスクや市場リスクに影響

される標準的な社債と異なり、キャット・ボンドの評価は主に

気象事象によって決定されるため、キャット・ボンドの原契約

は保険契約であることを認めようとする意図があります。 キャット・ボンドは通常、完全担保付であること、つまり、信用

リスクは最小限にとどまり、主なリスクは担保に供される資

産の質であると、改めて指摘すべきでしょう。このことは、

キャット・ボンドを資産リスクではなく保険リスクとして取り扱う

正当性を補強するものです。 チーフ・リスク・オフィサー・カウンシルの提案によれば、5億ド

ルのキャット・ボンドの資本賦課は1,690万ドルから240万ド

ルに低下します。

15 Sフィナンシャル (SNL Financial)、“Insurance, Industry trends and statistics (保険、業界動向および統計データ)”、2015年9月 16 前掲資料. 17 Morton N. Lane, Roger G. Beckwith、“Quarterly Market Performance Report - Q4 2014,(市場パフォーマンスに関する四半期報告書 - 2014年第4四半期)”、レーン・ファイナンシャルLLC、2014年12月31日 18 前掲資料. 19 米国財務省連邦保険局、“Annual Report on the Insurance Industry”、2015年9月 20 全米保険監督官協会保険政策調査センター、 “Insurance-Linked Securities: Catastrophe Bonds, Sidecars and Life Insurance Securitization”、2015年9月 21 北米チーフ・リスク・オフィサー・カウンシル、“Discussion of Life Insurer Capital Treatment for Catastrophe Bonds(キャット・ボンドに係る 生命保険会社の資本上の取り扱いに関する検討)”、2014年11月17日

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10

ILSの新たな保障範囲による

需要への影響

保険会社や他の投資家の需要増大がILSの唯一の成長要

因ではなく、むしろ、再保険市場の低い料率設定から推測さ

れるように、現在のところ同セクターには、過剰でないとして

も十分な資本があると思われます。需要の増大それ自体

は、リターンの低下しかもたらさないでしょう。 供給が需要を上回り、供給はほとんど統制されていない現状

について、古典的な資本主義的対応は、資本を吸収するた

めに需要を拡大することです。このことは、既存市場の拡大

または新規市場への浸透によって実現できるでしょう。実際、

それは、利益をもたらすと同時に、保険セクターにおける資本

の利用可能性を高めるという共通の利益にも適うことになり

ます。需要拡大は、利用可能な資本の吸収に役立つだけで

なく、再保険会社が共有しなかった新規かつ有望な分野に資

本を投じて利益を上げる道を切り開く可能性もあります。 ILSの発行は、米国の危険を中心とする大規模災害リスクの

保障に集中しています。死亡リスクおよび健康関連のリスクを

保障するILSの比率は極めて低い水準にとどまっています。 図表7:リスクまたは危険別キャット・ボンドおよびILSのリスク資本の発行高の比率

医療2.2% 2.3%

その他 1.8%

欧州の暴風 5.1%

欧州の地震 0.9% 日本の台風 0.9%

日本の地震 6.1%

1.2% 国際的な複合危険 18.9%

米国の名称付暴風雨

およびハリケーン 25.0%

米国の複合危険 20.8%

米国の 地震 8.4%

米国の財産の 大規模災害リスク0.8%

出所: www.artemis.bm

生命保険会社のエン

ベディッド・バリュー

極端な死亡率 3.7%

トルコの地震 2.0%

モーゲージの 保険リスク

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 11

図表7が示すように、現在のキャット・ボンドおよびILSの発行

は、主に損害保険分野における米国のペリル(危険の顕在的

領域)を反映して、著しい偏りがあります。市場は引き続きこ

れらの発行を歓迎しています。最近の一例として、カリフォル

ニア地震保険機構(California Earthquake Authority)のアー

サ・リー社(Ursa Re Ltd.)が発行した満期3年のキャット・ボン

ド(シリーズ2015-1)があります。2015年8月に公募、目標は1億5,000万ドルでした。9月のクロージング時点までに規模が2億5,000万ドルへと大幅に拡大し、予想価格は5%と予定レン

ジの上限に決まりました22。 1つのデータだけではトレンドになりませんが、この例は、そう

した完全担保付金融商品の魅力を確実にしていると思われま

す。さらに、募集レンジの上限で価格設定することは、最近の

ILS市場の価格設定と一致しており、市場側の価格設定の統

制が続いていることを示しています。 これは投資家にとって歓迎すべきシグナルで、市場が底入れ

した可能性を示すものであり、リターンの低下に歯止めがか

かり、それと共に新たな水準の安定性と確実性がもたらされ

ると思われます。

図表7は有望な成長分野を明瞭に示しています。気候変動が

どんな役割を果たしているにせよ、過去数年、干ばつや強風

による火災から猛烈な暴風雨に至る極端な気象事象およ

びその中間にある多くの当該事象の発生が増えていると

よく言われます23。 有望な成長分野を見いだすには、日本の台風や欧州の暴

風の保障に投入された資本と、米国の名称付暴風雨のそ

れとを比較するだけで十分です。地震やハリケーンは米国

だけの事象ではなく、ILSがこれらの保障分野に拡大され

れば、社会的に有益であるだけでなく、ILSの投資家にとっ

てリスクの地理的分散が可能になります。 次に、分散効果を他のペリルにまで広げる可能性、すなわ

ち、他の損害保険、生命・傷害保険および医療保険に関

連するリスク移転のためにより頻繁にILSを利用する可能

性があります。例えば、小規模ながら、すでに証券化に

よって保障されているペリルの例として死亡リスクや長寿リ

スクがあります。さらに、テロやサイバーリスクなどの潜在

的な巨大市場が発展途上の段階にあります。 しかし、比較的新しい商品のほとんどと同様、潜在的な利

益に対する検討すべき懸念が存在します。

22 アルテミス、“Ursa Re 2015-1 Cat Bond Grows to $250m, Prices at Top-End(キャット・ボンドのUrsa Re 2015-1が2億5,000万ドルに膨れ

上がり、価格は上限で決定)”、(ブログ)www.artemis.bm、2015年9月14日 23 Sarah Lyall、“Heat, Flood or Icy Cold, Extreme Weather Rages Worldwide(高温、洪水、極寒など異常気象が世界中で猛威)”、ニュー ヨークタイムズ紙、2013年1月10日

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ILSの使用および投資に関連する

米国の税務上の考慮事項

ILS市場が引受能力を満たす十分な再保険資本を継続して

提供すると仮定した場合、ILS市場に影響を与える2つの主

な懸念は、租税および透明性という見出しで要約することが

できると思われます。 通常、ILSの引受は、特別目的会社(SPVs)を通じて行わ

れ、多くは米国外で設立されます。最近、米国の連邦議会

がオフショア・ビークルの税制の魅力を低減させる動きを見

せていることから、このようなSPVの構造を適正にすること

が極めて重要です。 現在、オフショア・ビークルの実際または潜在的な乱用に対

して、また国内の税基盤や財政状態に打撃を与える可能性

のある取引や、責任管轄区域を移転して税負担を減らす取

引に対して、政策決定者や立法者が敏感になっているた

め、おそらく、かつてないほど、SPV構造の適正化が重要に

なっています。この懸念は、現在、税源浸食と利益移転

(Base Erosion and Profit Shifting:BEPS)プロジェクトに

おける措置への懸念と類似しています。 経済協力開発機構とG20は、約90の参加管轄区域を代表

してBEPS策定の作業を進めてきました。この試みは、国際

税法が必ずしも世界経済の発展について行けていないとい

う認識、およびグローバル化に伴い、各国が、税法の改善

に向けた多国間の取り組みを通じて、自国の課税権を保護

するために協力する必要性が増大しているという認識に基

づいています。その目的は、多国籍企業が、経済活動を実

行し、価値を創造した場所で利益を確実に申告することに

あります24。

BEPSのイニシアティブを指針として、米国を含む各管轄区域

は、かかる税基盤にとって脅威として認識された活動に対処

することがあります。各管轄区域は、ILSの発行体および保

有者の税務上の取扱い、税務会計ならびに利益認識の規定

等の決定に関して税務上の区別に困難が生じる場合、その

手段として、どこに境界線を引くか(場合により、遡及的にさ

え)、再確定することがあります。 例えば、次のような問題があります。遂行されている事業を

税務上保険として扱うのか、それともある種の金融商品とし

て扱うのか。米国で調達した事業に従事しているのか、それ

とも純粋に「オフショア」の事業なのか。ILS商品、具体的には

キャット・ボンドは税務上、債務または自己資本のどちらに該

当するのか。そして、そのことは米国の報告要件にどのよう

な影響を与えるのか。 これらの難解な税務上の判断およびその他多くの判断に関

する答えは、決して明解ではなく、再解釈や規制の変更の対

象となることがあります。そして、ILS市場の参加者にとって税

引後の経済的成果に大きな影響を与える可能性がありま

す。参加者は、この分野の専門家の助言を受けることが望ま

しいでしょう。 市場に精通したスペシャリストが、懸念の軽減に貢献し、ILSの将来の投資家や発行体によるリスクマネジメントに貢献す

る可能性のある残された領域は、透明性の向上です。

24 経済協力開発機構、“Taxing Multinational Enterprises: Base Erosion and Profit Shifting (BEPS)(多国籍企業への課税:税源浸食と利益

移転(BEPS))”、アップデート第3号、OECD政策概要、2015年10月

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 13

透明性の向上によりILS市場が 拡大する可能性

透明性は規制当局と投資家の双方が大きな関心を寄せて

いる問題です。ILSのトリガーには様々なものがあり、パラメ

トリック、補償(indemnity)、業界損失、モデル・ロス、または

それらの要因の組み合わせに基づいて発動する方式があり

ます。米国の一部の州保険規制当局は、補償以外をトリガー

とする有価証券について、規制当局の精査を回避する巧妙

な手段となる恐れがあるという懸念を表明してきました。 それ以外にも、規制当局は、法定会計報告に含まれる取引

および保険種類を契約した出再保険会社に、透明性の欠

如があるという懸念を示しています。 一般的に言えば、規制当局と投資家はいずれも、特にリス

クや価格設定に関連する場合、透明性が高ければそれだ

け大きな安心感を抱くと思われます。考え得るもう1つの利

点は、北米CROカウンシルがNAICへの勧告で指摘したよ

うに、生命保険会社の購入の増加に伴って、格付付与の範

囲が拡大することです。 現在、機関投資家や専門ファンドマネジャー(図表6)がILS投資の大部分を占め、すでにこの有価証券に関する専門

能力や知識に安心感を持っているでしょうが、市場全体の

他の投資家は、定評ある格付機関の格付範囲が広がれ

ば、いずれ、この資産クラスを利用した分散をより安全と感

じると思われます。 より広範な投資家基盤に魅力的であることは、この種の有価

証券市場の改善に貢献できるでしょう。ILSという有価証券を

受入可能で魅力的な資産クラスと捉える投資家グループが

拡大すれば、新発債だけでは需要を満たせなくなり、既発債

への需要が増大するでしょう。こうした既発債の需要は、価格

の透明性の向上をもたらし、その結果、この資産クラスがさら

に広範囲の投資家基盤に受け入れられるという連鎖反応を

引き起こす可能性があります。 投資家基盤の多様化をこの市場の目標とするべきです。IMFスタッフは証券化全体に関する覚書でこう述べています。「証

券化市場は今後、長期的な資金を有する多様な機関投資家

基盤(単に銀行だけでなく)によって支えられる限り、強化され

る可能性がある」25。 ある程度はすでにILSの投資家基盤の多様化が見られます。

年金基金は以前から主な購入者でしたが、近年はヘッジファン

ドやプライベート・エクイティの存在感が増しています。そし

て、必要であれば若干高い価格でも追加的な資本を供給でき

る年金基金は、高利回りの追求のため、わずかに減少しまし

た。このことは、この市場に関心を持つ投資家クラスが増えれ

ば、市場が安定する確率が高まることを立証しています。 個人投資家向けミューチュアル・ファンドの運用会社を含め、

すべての資産運用機関のポートフォリオの中に標準的な資産

クラスとしてILSが組み込まれた場合、投資家基盤が最も多

様化することはまず間違いありません。この実現を促す方法

の1つは、業界がIMFスタッフの提言を受け入れることです。

すなわち、証券化の基本的な特性(つまり、単純性、透明性、

担保の特徴、原資産の質に関する実績等)に関する標準的な

定義を提供することです26。

25 Miguel Segoviano, Bradley Jones, Peter Lindner, and Johannes Blankenheim、“Securitization: The Road Ahead(証券化:その 展望)” 、国際通貨基金、ワシントンDC、2015年1月 26 前掲資料.

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ILSの魅力を高める 設計の見直し

保険会社にとって、ILSは資本管理を強化するための魅力

的な手段となることがあります。再保険会社にとっては、ILSはむしろ、自身のビジネスモデルに対する基本的な脅威に

見えるかもしれません。どちらも、単に生き残るだけでなく成

功するためには、ILSの適切な利用法を身につけて、ビジネ

スモデルを強化し、有効なヘッジの提供に役立てる必要が

あります。 他にもなすべきことがあると思われます。例えば、最近のあ

る調査によれば、損害保険の分野で過去3年内にリスクマ

ネジメントの取り組みの一部としてILSを発行または購入し

た元受保険会社は3%しかありませんでした27。

しかし方向としては、この市場に参加して、リスクマネジメン

トのためにILSを利用する機会は増大傾向にあります。ILS市場は、他の資産担保証券と同様、金融危機の時期に縮小

しましたが、2010年の発行高の底から2015年までの期間に

687%増加しました。これに対し、他の資産担保証券市場は

それほどのペースでは伸びておらず、同期間の増加は約

160%にとどまっています28。

27 A.M.ベスト、“A.M. Best Special Report: A.M. Best Spring 2015 Insurance Industry Survey(A.M.ベスト・スペシャルレポート:A.M.ベストの

2015年春の保険業調査)”、2015年8月5日 28 SIFMA、“US Bond Market(米国債券市場)”、2015年10月

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 15

2010年から2015年までの期間中、規制当局の関心が高ま

り、大規模災害による数回のトリガー事由が発生し、投資家

基盤の決意、ならびに発行体、引受会社および投資家のモ

デルリング性能に対する信頼性が試されました。これらの困

難な事態にもかかわらず、ILS市場は過去数年、成長が続

きました。 保険会社や再保険会社がILSを手掛けることは共食いのよ

うに思われかもしれませんが、ILSは、資本を多様化し、業

界がより広範な資本調達可能な市場への道を開き、再保険

保障の特定領域に対する柔軟な選択肢を提供する手段とな

ります。 これに対し、このトレンドの短所として、中間市場の伝統的な

プレーヤーに混乱をもたらすこと、価格設定が困難になる可

能性のあること、および一定の低確率事象に作動したリスク

関連の透明性の向上を強制され、非伝統的な情報源から価

格競争が激化することを挙げられます。また一部のプレー

ヤーにとっては、高確率事象のリスクを低減するために低確

率事象の価格設定に依拠する能力が損なわれます。 しかしながら、製品設計の進歩が市場の持続的な成長を支

えてきました。モデル化の能力の向上およびパラメトリック方

式による保障規定の使用が、金融商品の流動性を高め、個

別的な保険引受の決定による投資家への影響を低減して、

ILSの成長加速に貢献しました。反面、パラメトリック方式に

よる保障では、保持されるベーシスリスクの適切な識別と管

理を確保するために、ILS市場を通じてリスクを移転する保

険会社および再保険会社に代わって追加的な分析を行うこ

とが必要になります。 市場の進歩に伴い、発行体や投資家が取り組むべき他の

考慮事項が現れました。例えば、ILSの商品設計が補償方

式の保障から離れれば離れるほど、デリバティブの要素が

あるという概念を考慮する必要性が高くなります。

米国および国際会計基準設定主体は、連結会計に関するモ

デルを精緻化するとともに、ILSの標準的な構造に基づき、

ILS 商品がそれらの複雑な基準の下でどのように取り扱わ

れるかを絶えず注視しているよう、発行体および投資家に注

意を促してきました。 ILSの発行高が増加するにつれ、リスクの市場価格に関する

データポイントは、より頻繁なカリブレーション・ポイントを持

つようになっています。しかし、流通市場の価格設定は依然

として価格の透明性が限定的であり、そのため、投資家の需

要はこれまでと同様、この金融商品のトータル・リターンを管

理しようとせずに保有できる投資家に限られています。 注目に値する設計変更の1つは、発行の規模の変化であり、

従来より小規模かつ消費されやすい商品が、より迅速に市

場に投入される傾向が見られます。小規模だが多数の商品

に向かうこの傾向は、過去数年の発行年度にわたり続いて

います。 こうした持続的な進化は市場の拡大に貢献しています。例え

ば、2015年第1~第3四半期の間に従来型のキャット・ボンド

は47億ドル発行され、前年同期比で減少しました。しかしな

がら、変異的な新商品である「キャット・ボンド・ライト(cat bond lite)」ストラクチャーに対する新規投資は、2014年が2億4,200万ドルだったのに対し、2015年は4億9,000万ドルで

した。キャット・ボンド・ライト・ストラクチャーは通常、募集規

模が小さく、購入水準およびフリクショナルコストを低くできる

ため、この形態のキャット・ボンドは投資家全体の広範囲の

セグメントに利用可能となります29。

29 Zaeem Shoaib、“ILS Market Looks to Expand Reach Amid Quiet Q3 for Cat Bonds(ILS市場は、キャット・ボンドの動きが少なかった第3 四半期に対象範囲の拡大を目指す)”、 SNLフィナンシャル、2015年9月30日

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従来の市場参加者は変化を 受け入れるべきである

投資家、保険会社、再保険会社、消費者など全員が活気あ

るILS市場から恩恵を受けることができます。考え得る利点

としては、まだ世界的に低コストで付保できない分野を含

め、保障範囲が拡大されること、および総じて資本市場と無

相関の合理的なリスクで合理的なリターンを投資家に提供

する資産クラスであることを挙げられます。 規制当局の最大の懸念は引受能力の不足であり、価格設

定がそれに続き、どちらも最終的には消費者に影響を及ぼ

します。資本市場からもたらされる安定性、効率的な価格設定

および引受能力がそれらの懸念への対処に役立つでしょう。 保険会社にとって利点は明白であり、ILSの発行により再保

険に関わる資本コストが低下することです。低コストでリス

ク・キャピタルを分散可能であることは理想に近いと言えま

す。これに対し、再保険会社は最近、リターンの低迷や利益

率への圧力に直面してきました。しかし、多くの再保険会社

はILSが提供できる利点を享受する方向へと動いています。

NAICの報告によれば、概してキャット・ボンド市場の取引の

半分は再保険会社が組成したものでした。その目的は、時

には自身のリスク移転の手段とすること、別の場合には、ク

ライアントが自身のリスクを外部に移転するのを支援するこ

とにあり、それにより、再保険会社自身のリスクを高めること

なく利益を拡大することでした30。 保険会社と再保険会社はどちらも、まだ多くの点で初期段

階の市場に対する革新的な対応を今後も探求する必要が

あります。破壊的イノベーションであるILSを利用することに

より、従来の再保険モデルを合理化しつつ、再保険市場を

変革し、改善するべきです。 従来の規制モデルは、規制の透明性を提供し、複合的な災

害に直面しても一定水準の引受能力を確保するのに役立ち

ます。何らかの要因が、代替的資本が与えるような著しい影

響を従来の規制対象市場に与えるとすれば、少なくとも、引

受能力および規制当局の監督に関して類似した水準の確

実性を提供しなければなりません。 オープンで、透明性が高く、かつ比較的流動的な市場はまさ

にそれが可能であり、現状を変革し、それと全く異なる将来

を切り開く可能性があります。ILSがリスクマネジメントの手

段として元受保険会社の間に浸透する力が限定的であるよ

うな例を先に挙げましたが、これは幾分誤解を招く可能性が

あります。例えば、保険市場と再保険市場の両方が実際に

一連の重大な大規模災害の試練を受け、大手保険会社が

資本の再構成の必要に迫られた場合、従来のような借入資

本か株式資本の調達を選ぶか、それとも資本市場で速やか

に供給される資本プールの利用を選ぶか、そのどちらでしょ

うか。 資本とは別に、ビジネスモデルの見直しという問題もありま

す。破壊的イノベーションはしばしば既存の秩序にとって致命

的と捉えられますが、効果的な戦略リスク管理によって破壊

的イノベーションをビジネスチャンスに変えることが可能です。 保険会社や再保険会社は時として、正統的な考え方の上に

安住することがあります。そうした考え方の1つとして、組織

的に蓄えてきた自身の知識や専門能力が強力な参入障壁

になるというものがあります。しかし、これまでそれらが重要

だったとしても、何十万ドルもの投入可能資金を有する技術

系企業や、クラウドソーシングと同等の機能を果たし得る資

本市場などの新たな競争相手を、今後も閉め出しておける

保証はありません。 例えば、業界は精密な大規模自然災害のモデル作成をもた

らした技術に依拠していますが、その技術を利用して比較的

低コストな類似モデルを一般投資家に提供することが不可

能だとする現実的理由はありません。スマートフォン利用者

の追跡を可能にする技術は、最終的に再保険会社および既

存の保険会社の仲介を不要にする可能性のある情報を生

み出しています。 このことは、かかる新技術や、既存バリューチェーンを混乱

させる資本市場の仕組みに直面して、保険会社と再保険会

社双方のビジネスモデルの再評価および見直しが必要であ

ることを示すものです。 目標は、従来の再保険会社、保険会社および投資家が、

ILS市場に基づき様々な利点のある新たなプラットフォーム

を構築することに置くべきです。そうした利点には、投資家が

魅力的な資産クラスによって分散を図れること、保険会社が

より効率的にリスクをヘッジできること、および再保険会社

が、コモディティ化を回避し、自身の専門能力を活用し、さら

には新たな成長市場(他の地域、またはサイバーなど新たな

もしくは異なるリスクの保障)へと展開する手段が得られるよ

うにすべきです。

30 全米保険監督官協会、“Capital Markets Special Report: A Comprehensive Overview of the Insurance-Linked Securities Market”、2012 年5月4日

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明日の保証 再保険市場における保険リンク証券の波及効果 17

最近のNAICの会合で、ある保険仲介業者が州保険監督官

に新商品を提案しました。この商品は、対象地域に生じる可

能性のある所定事象(ハリケーンなど)をトリガーとするパラ

メトリック方式のものです。極めて興味深い部分は、この保

障が、ハリケーンの襲来が予想される数日前という遅い時

期まで、絶えず変化する価格で最終利用者に販売されると

いうことでした。 保険をかけていない観賞用庭木を持つ住宅所有者は、場

合によりテレビの気象予報士やアプリから得た情報に基づ

き、ハリケーンによる被害の確率を自分で判断して、予想さ

れる襲来の数日前にこの保険の購入を決定するかもしれま

せん。そして、そのハリケーンの被害を受けなくても、それが

所定の強度で所定の地域に上陸した場合には、保険金を

受け取ることができます。いずれは、そのためのアプリが提供

され、吹雪、ハリケーンあるいはその他一切の気象に関する

継続的なニュースがスマートフォンに流れ、当該住宅所有者

が保険を買うと決めたら衝動買いできるようになるかもしれま

せん。 この特殊商品は、資本があふれた市場からそれを吸収するの

に役立つ可能性がありますが、その消費者にとってより重要

なことは、心の平安を買えることです。 提案されたこの特定の商品が実際にどうなるかは別として、

そこから言えるのは、変化が生じつつあり、未来は、現在の正

統的な考え方を捨てて、自身の思考法やビジネスモデルを最

も効果的に適応させようと決心した人のものになるということ

です。

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連絡先

Industry leadership Gary Shaw Vice Chairman US Insurance Leader Deloitte LLP [email protected] +1 973 602 6659

Executive sponsor Rich Godfrey Principal US Insurance Advisory Leader Deloitte & Touche LLP [email protected] +1 973 602 6270

Subject matter specialists Paul Kraft Partner US Mutual Fund & Investment Adviser Practice Leader Deloitte & Touche LLP [email protected] +1 617 437 2175

Jeffrey Webb Senior Manager Deloitte Tax LLP [email protected] +1 312 486 0485

Kyle Karrenbauer Senior Manager Deloitte Tax LLP [email protected] +1 347 504 3176

Researcher Jaykumar Shah SV Research and Analysis Deloitte Support Services India Private Limited

Deloitte Center for Financial Services Jim Eckenrode Executive Director Deloitte Center for Financial Services Deloitte Services LP [email protected] +1 617 585 4877

Sam Friedman Insurance Research Leader Deloitte Center for Financial Services Deloitte Services LP [email protected] +1 212 436 5521

Authors Ed Hardy Partner Deloitte & Touche LLP [email protected] +1 212 436 2832

Andrew Mais Senior Manager Deloitte Center for Financial Services Deloitte Services LP [email protected] +1 203 761 3649

本調査レポート作成への支援や貢献に対し、以下のデロイトの専門家

の皆様に心より感謝の意を表します。

Rachel Moses, Lead Marketing Specialist, Deloitte Services LP Lisa DeGreif Lauterbach, US Financial Services Marketing Leader, Deloitte Services LP

本資料に掲載されているのは一般的な情報のみであり、デロイトは、本資料により会計、ビジネス、金融、投資、法務、税務またはその他の専門的助言もしくはサービスを提供するものではありません。本資料はか

かる専門的アドバイスまたはサービスに代替するものではなく、また貴社の事業に影響を及ぼす可能性のある一切の決定もしくは行為の基礎として利用されるべきではありません。貴社の事業に影響を及ぼす可

能性のある一切の決定または行為を行う前に、必ず資格のある専門家のアドバイスを受ける必要があります。デロイトは、本資料に依拠した利用者が被った損失について一切責任を負わないものとします。

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ツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人およびDT弁護士法人を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー

等を提供しています。また、国内約40都市に約8,700名の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデ

ロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。

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界最高水準の陣容をもって高品質なサービスをFortune Global 500® の8割の企業に提供しています。“Making an impact that matters”を自らの使命とするデロイトの約225,000名の専門家に

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