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北九州市環境局 環境監視課 1 大気汚染防止法の改正 (水銀排出施設関係)について

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北九州市環境局

環境監視課

1

大気汚染防止法の改正(水銀排出施設関係)について

目 次

(1)背景及び改正内容の概要

(2)規制対象施設の種類

(3)水銀に係る排出基準

(4)排出ガス中の水銀濃度の測定

(5)既存の水銀排出施設に係る届出について

(6)まとめ

2

(1)背景及び改正内容の概要

3

改正の背景(1)環境中に排出される水銀

①火山活動、岩石の風化等の自然現象(10%)②化石燃料(特に石炭)の燃焼や

廃棄物の焼却等の人為的活動(30%)③土壌、水域及び植物に蓄積されたものからの再放出(60%)

環境中を循環する水銀量を削減するためには…②人為的活動からの排出を削減することが極めて重要!!

平成25年10月 「水銀に関する水俣条約」が採択(目的)先進国と途上国が協力して、水銀の供給、使用、排出、廃棄等の各段階で総合的な対策に世界的に取り組むことで、地球的規模の水銀汚染の防止を目指すもの。

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水俣条約の的確かつ円滑な実施を確保するために、国において、大気汚染防止法の改正が検討された。

改正の背景(2)

水俣条約での大気排出抑制事項

水俣条約において次の5施設に対し、水銀の大気への排出を規制するための措置が義務付け。

水俣条約の対象施設

1.石炭火力発電所

2.産業用石炭燃焼ボイラー

3.非鉄金属製造に用いられる精錬及びばい焼の工程(鉛、亜鉛、銅及び工業用金(零細小規模採掘以外))

4.セメントクリンカー製造設備

5.廃棄物焼却設備

5

改正の背景(3)

これまでの大気汚染防止法(旧法)

改正後の大気汚染防止法

⇒水俣条約の担保措置としては不十分!!

【水銀】大気中への排出又は飛散を抑制する努力義務は課している(旧法第18条の25)。しかし…排出基準の遵守義務等は規定されていなかった。

水俣条約の対象施設に対し、下記事項を規定。〇水銀排出施設の設置の届出〇排出基準の遵守〇水銀濃度の測定

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施行期日

改正大気汚染防止法の施行日:平成30年4月1日

公布日 改正対象 内容

平成27年 6月19日 大気汚染防止法 水銀排出施設の届出、排出基準の遵守

平成27年11月11日 大気汚染防止法施行令 水銀排出施設の指定

平成28年 9月26日 大気汚染防止法施行規則 排出基準の規定

施行期日

平成30年4月1日又は水俣条約の発効日がこれ以降となる場合は、条約発効日

水俣条約・平成29年5月18日 50か国目が条約締結・平成29年8月16日 条約発効

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改正大気汚染防止法の概要(1)

(1)水銀排出施設の設置の届出(法第18条の23~27)

・水銀排出施設の設置・構造等を変更しようとする場合、都道府県知事等(北九州市の場合は、北九州市長)に工事着手の60日前までに届出が必要。

※ただし、電気事業法等で定める施設(電気工作物等)については、経済産業省九州産業保安監督部に届出。(環境省:水銀大気排出規制に関する主な質疑応答(平成29年2月))

・施行時点(平成30年4月1日)で既に施設を設置している場合、施行日から30日以内の届出が必要。

※「既に施設を設置」とは、設置工事に着手しているものも含みます。

(罰則:法第34条第1号)届出義務違反・虚偽の届出 ・・・ 3月以下の懲役又は30万円以下の罰金

8

改正大気汚染防止法の概要(2)

(3)水銀濃度の測定(法第18条の30)

・水銀排出施設の設置者は、当該施設に係るばい煙中に含まれる水銀濃度を測定し、その結果を記録し、3年間保存しなければなりません。

(罰則:法第35条第3号)水銀濃度測定結果の記録・保存義務違反、虚偽の記録 ・・・ 30万円以下の罰金

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(2)排出基準の遵守(法第18条の28)

・水銀排出施設に係る排出基準を遵守しなければなりません。

(罰則:法第33条)排出基準違反に対する改善勧告に係る措置の命令違反 ・・・ 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

(2)規制対象施設の種類

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規制対象施設の種類

改正大気汚染防止法における「水銀排出施設」一覧

水俣条約の対象施設 大気汚染防止法の水銀排出施設

石炭火力発電所産業用石炭燃焼ボイラー

石炭専焼ボイラー大型石炭混焼ボイラー

小型石炭混焼ボイラー

非鉄金属(銅、鉛、亜鉛及び工業金)製造に用いられる精錬及び焙焼の工程

一次施設銅又は工業金

鉛又は亜鉛

二次施設銅、鉛又は亜鉛

工業金

セメントクリンカーの製造設備 セメントの製造の用に供する焼成炉

廃棄物の焼却設備

廃棄物焼却炉(一般廃棄物/産業廃棄物/下水汚泥焼却炉)

水銀含有汚泥等の焼却炉等11

石炭専焼ボイラー、石炭混焼ボイラー

ばい煙発生施設 水銀排出施設

令別表第1 規模要件 用途 種類

1 ボイラー 〇伝熱面積10m2以上

〇燃焼能力50L/時以上

石炭専焼 石炭専焼ボイラー

燃焼能力が10万L/時以上の石炭混焼ボイラー

大型石炭混焼ボイラー

燃焼能力が10万L/時未満の石炭混焼ボイラー

小型石炭混焼ボイラー

セメントの製造の用に供する焼成炉

ばい煙発生施設 水銀排出施設

令別表第1 規模要件 用途 種類

9 窯業製品の製造の用に供する焼成炉

〇火格子面積1m2以上

〇燃焼能力50L/時以上

〇変圧器定格容量200kVA以上

セメント製造用 セメントの製造の用に供する焼成炉

本市に既に設置されている水銀排出施設(1)

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廃棄物焼却炉

ばい煙発生施設 水銀排出施設

令別表第1 規模要件 種類

13 廃棄物焼却炉 〇火格子面積2m2以上〇焼却能力200kg/時以上

廃棄物焼却炉

※原油精製以外からの廃油の専焼炉で、自ら産業廃棄物の処分を行うものは対象外

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本市に既に設置されている水銀排出施設(2)

ばい煙発生施設 ・・・ 事業の主たる目的により届出

「製鋼の製造の用に供する電気炉(令別表第1の12)」に該当。

⇒大気汚染防止法の「廃棄物焼却炉(令別表1の13)」には該当しない!!

では、水銀排出施設には該当しない???

廃棄物処理法の廃棄物焼却炉の許可を有する施設であることも「水銀排出施設」の要件の1つに規定。

廃棄物処理法の廃棄物焼却炉の許可を有する『製鋼用電気炉』

果たしてこれだけで、廃棄物焼却炉が幅広くカバーできているのか?

例えば…

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廃棄物処理法における焼却施設 水銀排出施設

廃棄物処理法 対象 規模要件 種類

8条 一般廃棄物処理施設

一般廃棄物の焼却 左記のうち、〇火格子面積2m2以上

〇焼却能力200kg/時以上

廃棄物焼却炉

15条 産業廃棄物処理施設

〇汚泥の焼却〇廃油の焼却〇廃プラスチック類の焼却〇水銀又はその化合物を含む汚泥のばい焼〇廃石綿等又は石綿含有産業廃棄物の溶融〇PCB等の焼却〇その他産業廃棄物の焼却

本市に既に設置されている水銀排出施設(3)

廃棄物焼却炉 ※原油精製以外からの廃油の専焼炉で、自ら産業廃棄物の処分を行うものは対象外

ばい煙発生施設(大気汚染防止法)の「廃棄物焼却炉」だけでなく、廃棄物処理法の「廃棄物焼却炉」等も『水銀排出施設』となる。

(3)水銀に係る排出基準

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水銀に係る排出基準

水銀排出施設

排出基準(μg/Nm3)

新設 既設

石炭専焼ボイラー大型石炭混焼ボイラー

8 10

小型石炭混焼ボイラー 10 15

セメントの製造の用に供する焼成炉 50 80※

廃棄物焼却炉 30 50

各水銀排出施設における排出基準は下表のとおり(法第18条の22)。〇排出基準⇒全水銀(ガス状水銀+粒子状水銀)

補足

既設(既存施設)には、改正法施行日(平成30年4月1日)において、設置工事に着手しているものも含みます。

※原料とする石灰石の水銀含有量が0.05mg/kg以上であるものは、140μg/Nm3

⇒適用には、石灰石の変更が困難な理由を記載した届出が必要。

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測定結果の補正方法は、他の有害大気汚染物質と同様、標準酸素濃度補正方式とする。

酸素濃度補正

水銀濃度の算出方法

C =21-On21-Os

× Cs =21-

21-×

標準酸素濃度(%)

排ガス中の酸素濃度(%)実測水銀濃度

施設ごとに定められた酸素濃度に換算

施設の種類標準酸素濃度On(%)

石炭燃焼ボイラー 6

セメントの製造の用に供する焼成炉 10

廃棄物焼却炉 12

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(4)排出ガス中の水銀濃度の測定

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全水銀(ガス状水銀+粒子状水銀)

バッチ測定※連続測定は現在の測定機では粒子状水銀が測定対象外であるなどの難点がある。

〇ガス状水銀【湿式吸収-還元気化原子吸光分析法】JIS K 0222(排ガス中の水銀分析方法)を基本とする。排出ガスの吸引量・・・100L程度(←20L程度)

〇粒子状水銀【湿式酸分解法-還元気化-原子吸光法又は加熱気化-原子吸光法】JIS Z 8808(排ガス中のダスト濃度の測定方法)に準拠する。排出ガスの吸引量・・・1000L程度

排出ガス中の水銀濃度の測定(1)(環境省告示第94号)

測定対象

測定方式

試料採取・分析方法

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排出ガス中の水銀濃度の測定(2)測定頻度

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

ばい煙濃度(NOx等)

○ ○ ○ ○ ○ ○

水銀濃度 ○ ○ ○

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

ばい煙濃度(NOx等)

○ ○

水銀濃度 ○ ○

排出ガス量(湿り)が4万Nm3/時以上 4か月を超えない作業期間ごとに1回以上

排出ガス量(湿り)が4万Nm3/時未満 6か月を超えない作業期間ごとに1回以上

【排出ガス量4万Nm3/時以上の施設の測定例】

【排出ガス量4万Nm3/時未満の施設の測定例】

20平常時における平均的な排出状況を捉えたものか確認

測定結果の確認方法

水銀に係る排出基準⇒平常時における平均的な排出状況として達成しうる水準として設定

ガス中

の水

時間

排出基準

一度でも超えてはならない水準ではない!!

排出ガス中の水銀濃度の測定(3)

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水銀規制における留意点

排出基準の性格や測定値の評価等については、従来の大気汚染物質の規制の在り方とは異なった取扱いとなっている。

排出基準を上回る濃度が検出された場合(規則第16条の12)

定期測定の結果を記録・3年間保管

定期測定+3回以上の再測定の結果を記録・3年間保管

北九州市への連絡原因究明・再発防止策

計3回以上の再測定(試料の再採取)

「定期測定+3回以上の再測定」のうち、最大値・最小値を除く全ての結果の平均値

排出基準超過

排出基準以下

排出基準超過

排出基準以下

排出基準の1.5倍を超える場合は30日以内、それ以外は60日以内に再測定の結果を得る。

排出ガス中の水銀濃度の測定(4)

定期測定

定期測定及び再測定の全ての測定結果は、記録表(様式第7の2:資料3)又は計量証明書で3年間保存する。

測定結果の記録

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連続する3年の間継続して、以下のいずれかの条件を満たす場合、粒子状水銀の測定を省略し、ガス状水銀濃度を全水銀濃度とできる。

①粒子状水銀濃度が、ガス状水銀の定量下限未満

②測定結果の年平均が50μg/Nm3未満である施設のうち、各測定結果において、水銀濃度に対する粒子状水銀の濃度が5%未満

③測定結果の年平均が50μg/Nm3以上である施設のうち、各測定結果において、水銀濃度に対する粒子状水銀の濃度が5%未満、かつ、粒子状水銀の濃度が2.5μg/Nm3未満

粒子状水銀濃度の測定の省略

排出ガス中の水銀濃度の測定(5)

注意点

・上記の場合でも、3年に1度は粒子状水銀の測定は必要。

・連続する3年の期間の途中で、施設の構造等の変更や施設への投入物に大幅な変更があった場合は、「連続する3年の間継続して」とは認められない。

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経過措置(1)

排出基準に適合させるために、水銀排出施設又は水銀等の処理施設(排出ガス処理設備)を改修する場合

○改修が完了するまで、排出基準の遵守を猶予【ただし、改正法施行日(平成30年4月1日)から最大2年間】

(例外)廃棄物処理法に基づく変更許可等が必要な施設については、審査期間を考慮した猶予期間が別途設けられています。

○改修後の遵守すべき基準は、「既設の基準」

既存施設に対する排出基準の適用猶予

注意点

・排出基準の適用猶予期間も、排ガス中の水銀濃度の定期測定は行う必要がある。

・施設規模が5割以上増加する構造変更した場合、施設からの水銀排出量が増加するものに関しては「新設の基準」が適用される。 24

廃棄物処理法の許可(1)又は届出(2)が必要な施設の場合改正法施行後1年以内(平成31年4月1日まで)に申請した場合に限り、次のいずれか早い日までは排出基準を適用しない。

①当該変更の許可を受けた施設の使用を開始する日

②当該許可を受けた日から起算して1年を経過した日

(1)変更の許可(廃棄物処理法第9条第1項又は第15条の2の6第1項)

(2)変更の届出(廃棄物処理法第9条の3第8項)

①当該変更の届出をした施設の使用を開始する日②知事が当該変更の届出に係る計画の変更又は廃止を命ずることができる期間を経過した日から起算して1年を経過した日③当該変更の届出の内容が相当であると認める旨の知事の通知を受けた日から起算して1年を経過した日

H30.4.1

改正法施行日

H31.4.1 H32.4.1

H31.3.15申請

H31.6.15変更許可日

H32.6.1①使用開始

H32.6.15②許可日から1年

本来の適用開始日

当該施設の適用開始日

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(例)

経過措置(2)

(5)既存の水銀排出施設に係る届出について

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既存の水銀排出施設に係る届出

届出書 根拠条文 届出が必要なとき 届出時期

設置届出書 法第18条の23 水銀排出施設を設置しようとするとき 工事着手の60日前まで

使用届出書 法第18条の24 法施行時に、既に水銀排出施設に該当するものを設置しているとき

法施行から30日以内

変更届出書 法第18条の25 以下の変更をしようとするとき・水銀排出施設の構造・水銀排出施設の使用の方法・水銀等の処理方法

工事着手の60日前まで

氏名等変更届出書 法第18条の31第2項

以下の変更があったとき・届出者の氏名、名称、住所、法人代表者氏名・工場、事業場の名称又は所在地

事由発生から30日以内

使用廃止届出書 水銀排出施設の使用を廃止したとき

承継届出書 水銀排出施設を譲り受け・借り受けたとき

水銀排出施設使用届出書を法施行日の平成30年4月1日から30日以内に届出する必要があります。

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水銀排出施設使用届出書の記入方法

①複数の施設分類に該当する場合⇒事業の主たる目的により届出を行う。②主たる目的の事業が水銀排出施設の項目に該当しない場合⇒他事業で、水銀排出施設の項目に該当するもので届出を行う。

例) 主事業がペレット焼成炉(水銀排出施設ではない) → 8 廃棄物焼却炉(水銀排出施設)で届出

様式第3の5 水銀排出施設使用届出書

様式第3の5別紙1 水銀排出施設の構造

様式第3の5別紙2 水銀排出施設の使用の方法

様式第3の5別紙3 水銀等の処理の方法

「規模」の欄は、施行規則別表第3の3の中欄に規定する項目(規模要件)を記載。

「水銀濃度」の欄は、測定結果等を踏まえた平常時の平均的な水銀濃度を記載。

「水銀等の処理施設の種類、名称及び型式」の欄は、水銀の排出抑制に効果のある排出ガス処理設備、「処理能力」の欄は、処理前・処理後の水銀濃度を記載。

28⇒使用届時点で水銀濃度が未把握の場合は、把握次第、変更届の提出が必要。

(6)まとめ

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水銀に係る改正大気汚染防止法が、平成30年4月1日に施行されます。

まとめ

(1)水銀排出施設の設置の届出(法第18条の23~27)

施行時点(平成30年4月1日)で現に施設を設置している場合、施行日から30日以内の届出が必要。

(2)排出基準の遵守(法第18条の28)

水銀排出施設に係る排出基準を遵守しなければなりません。

(3)水銀濃度の測定(法第18条の30)

水銀排出施設の設置者は、当該施設に係るばい煙中に含まれる水銀濃度を測定し、その結果を記録し、3年間保存しなければなりません。 30

【環境省ホームページ】

水銀大気排出対策 http://www.env.go.jp/air/suigin/post_11.html

〇排出ガス中の水銀測定法(環境省告示第94号)http://www.env.go.jp/air/suigin/kokuji.pdf

〇水銀関係届出等様式一覧http://www.env.go.jp/air/suigin/youshiki.html

〇水銀大気排出規制に関する主な質疑応答(平成29年2月)http://www.env.go.jp/air/suigin/170207QA.pdf

詳細情報

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