子どもの成長と安全 -...

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本編 01-01 子どものことを知っているようで実は知らないことに気づこう。 子どもをよく見てみよう。子どもも多様であることに気づこう。 年齢や性差などの違いと発達段階の特徴を知り、防犯を子どもの目から見てみよう。 子どもの成長を妨げない ( 子どもの目線に立つ ) 子どもの成長と安全 子どもの特性を知りましょう 子どもといっても大人以上に多様です。その ことをまず自覚しましょう。 子どもはよちよち歩きから身の周りの探索、 そして仲間とつきあいで行動圏が広がるな ど、発達の重要な階段を上っていきます。そ の階段を大人がしっかりと考えることが大事 です。 大人も自分の子ども期を思い出してみるのも 必要ですが、幼児期の状態は忘れてしまって います。そこで右図のような格好で動いてみ るのも一案です。 子どもの行動を観察しましょう。子どもに聞 いてみましょう。子どもにお気に入りの場所 などを案内してもらうなどもよいでしょう。 6 歳児の知覚・認識能力を大人が疑似体験すると・・・(ピアジェの「前操作期」) 独特な思考 片耳塞いで ・ファンタジー的 ・自己中心的 ・非可塑的 ・魔法的 ・トンネル思考 ・情報の取捨選択ができない。 ・情報処理の時間は 2 倍。 ・衝動の抑制はそろそろ可能か。 片目つぶって 水中メガネかけて 気をとられやすい 眼の高さは 110cm 首にカーラーを 巻いて 鉛のバンドを 両足に巻いて 感覚運動期(0 ~ 2 歳 ) 親の保護を必要とする 前操作期(2 ~ 7 歳 ) 小学校低学年までは守られる環境 自宅周り ・ 自然要素が重要 具体的操作期(7 ~ 12 歳 ) 仲間のつきあいと探索行動 自然環境が重要(この時期は小学校低学年時と次期の形式操 作期の徴候がある高学年と区分してみた方がよい。) 形式的操作期(12 歳以降 ) 形式 ・ 観念で理解。外の世界に巣立ちたくなる。居場所が重要。 発達心理学者のピアジェは発達段階の特徴を4段階に区分している。一人歩きで外出しだす幼児期が一番心配であるが、 その前操作期という特徴は図のように大人が知覚する能力とたいへん異なる。この点を十分認識する必要がある。 子どもと同じ目線で先入観を捨てて、また今時の子どもは?という否定することをしないで、今の子どもたちのありのま まの行動や気持ちを聞いてみたり、案内してもらいましょう。 参考 こどもの発達の4段階 ワンポイントアドバイス

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Page 1: 子どもの成長と安全 - hintguide.kodomo-anzen.orghintguide.kodomo-anzen.org/wp-content/themes/... · 子どもと同じ目線で先入観を捨てて、また今時の子どもは?という否定することをしないで、今の子どもたちのありのま

本編 01-01

子どものことを知っているようで実は知らないことに気づこう。

子どもをよく見てみよう。子どもも多様であることに気づこう。

年齢や性差などの違いと発達段階の特徴を知り、防犯を子どもの目から見てみよう。

子どもの成長を妨げない ( 子どもの目線に立つ )

子どもの成長と安全

子どもの特性を知りましょう

● 子どもといっても大人以上に多様です。そのことをまず自覚しましょう。

● 子どもはよちよち歩きから身の周りの探索、そして仲間とつきあいで行動圏が広がるなど、発達の重要な階段を上っていきます。その階段を大人がしっかりと考えることが大事です。

● 大人も自分の子ども期を思い出してみるのも必要ですが、幼児期の状態は忘れてしまっています。そこで右図のような格好で動いてみるのも一案です。

● 子どもの行動を観察しましょう。子どもに聞いてみましょう。子どもにお気に入りの場所などを案内してもらうなどもよいでしょう。

6歳児の知覚・認識能力を大人が疑似体験すると・・・(ピアジェの「前操作期」)

独特な思考

片耳塞いで・ファンタジー的・自己中心的・非可塑的・魔法的・ トンネル思考

・情報の取捨選択ができない。・情報処理の時間は2倍。・衝動の抑制はそろそろ可能か。

片目つぶって水中メガネかけて

気をとられやすい眼の高さは110cm

首にカーラーを巻いて

鉛のバンドを両足に巻いて

感覚運動期(0 ~ 2 歳 ) 親の保護を必要とする前操作期(2 ~ 7 歳 ) 小学校低学年までは守られる環境 自宅周り ・ 自然要素が重要

具体的操作期(7 ~ 12 歳 ) 仲間のつきあいと探索行動 自然環境が重要(この時期は小学校低学年時と次期の形式操作期の徴候がある高学年と区分してみた方がよい。)

形式的操作期(12 歳以降 ) 形式 ・ 観念で理解。外の世界に巣立ちたくなる。居場所が重要。

発達心理学者のピアジェは発達段階の特徴を4段階に区分している。一人歩きで外出しだす幼児期が一番心配であるが、その前操作期という特徴は図のように大人が知覚する能力とたいへん異なる。この点を十分認識する必要がある。

子どもと同じ目線で先入観を捨てて、また今時の子どもは?という否定することをしないで、今の子どもたちのありのままの行動や気持ちを聞いてみたり、案内してもらいましょう。

参考 こどもの発達の4段階

ワンポイントアドバイス

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本編 01-02

子どもの成長の特徴を知り、それにあわせた防犯の対応を考える

子どもの成長特性に伴う行動特性と防犯まちづくり

子どもの成長と安全

子どもの外歩きと防犯

● 幼児は保護者の同伴が必要です。● 小学校低学年から親から独立して外に出るようになりますが、その

頃が一番危険です。常に誰かの目が届く環境で、友達などと一緒に動くようにしましょう。

● 小学校高学年では一人でも活発に動けるようになりますが、常に行き先といざという時の対応をしっかりと保護者と話しておきましょう。

● 子どもの外歩きの安全性を高める上で、地域で子どもたちを育むコミュニケーションのとれているまちづくりも重要です。

生活道路のあり方交通量の少ない住宅地内の道路は車の速度を抑制するように構造を変えるようなハード整備に行政に働きかけましょう。また本来なら道路交通法を改正し、道路での遊びも許されるようになるべきではないでしょうか。

海外事例 ホームゾーン(イギリス)英国ではオランダのボンネルフやドイツの遊び場道路のように、住宅地の道路を車より人間の生活の場に戻すという取り組みが進みつつある。このように家の前 の道路が生活の庭の延長のようになることによって道路へ人が出て、幼児も安全に遊び、それを見守る親同士や近隣のコミュニケーションも活発になり、防犯のみならず様々な問題が解決できる。

ワンポイントアドバイス

1. コミュニティガーデンを含む、道に人が集まる工夫の図

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本編 01-03

子どもも大人も知り合いの関係が防犯性を高める

地域のおせっかいおばさん、ワルサをすると叱り、たしなめるおじさんの役割とは?

子どもが地域社会の一員として認められる、地域の伝統的な通過儀礼的行事を見なおそう。

地域で次世代を育む(子どもは地域の宝)

子どもの成長と安全

子どもも大人も、ご近所が顔見知りに

● 家族だけでなく近所も顔見知りならば、見知らぬ人の不自然な行動にも気がつきやすく防犯に役立ちます。

● 子どもも家族以外の人と接することは社会性を身につけることになります。● 子どもたちに自然と目を向けてくれる信頼できる大人が増えることが、子ども

の防犯に役立ちます。● また、いつも道で会うレレレのおじさん(赤塚不二夫『天才バカボン』より。

道路でいつも箒を持って掃除をしている)のような人が地域にいてもおもしろいですね。

● 昔の伝統行事を新しい形で行うのも一案です。子どもも地域社会の一員として、そして子どもも大人も一緒に楽しみみながら、顔見知りになりましょう。

イベント成功のコツイベントは肩肘はらずに、小さいことからでも始めてみましょう。

事例 松戸市小金地区松戸市小金地区では小金小学校4年生以上を対象に地域と学校が一緒になって地域の庭や歴史的資源を訪ねる「わくわく探検隊」を 10 年以上行っている。これによって地域と学校との関係も密になり、今では6年生が企画に関わり、毎年テーマを変えながらも、下級生に場所のポイントのクイズを出したり、教師や地域の人が仮装したりしながら楽しい行事となっている。

ワンポイントアドバイス

おはよう○○くん、元気にいってらっしゃい!

おじさん おはよう毎朝ありがとう!

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本編 01-04

近隣との関係を高めることが防犯につながります。

家と道路の関係づけを ・・・ 道路へ人の目が注がれるように。

自然に人が外に出るような工夫をすることも防犯まちづくりです。

子どもの成長と安全を見守るあたたかい近隣環境

子どもの成長と安全

人と人が顔を合わせる環境づくり

● 近所同士、子どもたちも含めて顔見知りの関係ができる環境をつくりましょう。● 縁側で井戸端会議をするようなイメージの場作りなど、外に人が出る工夫をしましょう。● 交通量が多くない道路では、道路を使った行事をやってみましょう(警察の道路使用許可が

必要)● 道路沿いに空き地があれば、そこを菜園や井戸端カフェにアレンジしてみましょう。● 子どもを名前で呼び、子どもからも名前で呼ばれる関係ができれば、それはすばらしいこと

です。

道路が人の歩く速度程度しか走れないように道路の構造を変えて、家の前の花壇や空き地をみんなの庭のように活用することで、常に人が外に出るような環境を築けば、それは安心して住める環境になります。

人が外にでる環境づくり

©Adrian Sinclair

1. コミュニティガーデンを含む、道に人が集まる工夫の図

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本編 01-05

子どもにとっての遊びの重要性を知りましょう

面白い遊びの場所と犯罪の恐れのある場所との関係をチェックしましょう

子どもの遊びと防犯の両立

子どもの成長と安全

子どもの遊び場を考える

● 子どもの遊びは、身体能力・コミュニケーション能力など様々な子どもの成長に重要です。特に仲間と一緒に外遊びをする機会を十分に持つことが必要です。

● 子どもの遊びを損なわないで、安全を確保するにはどうしたらよいか考えてみましょう。

● 子どもの遊び場をチェックしてみましょう。子どもに遊びで面白い場所、探検の場所などを地図に落としてもらいます。

● また犯罪など危険な目にあった場所や不安な(怖い)場所を、上記とは色や記号で区別して地図に落として重なり具合を見てみましょう。

● 地図に落された子どもの遊び場と、危険・不安な場所との重なり具合をみてみましょう。遊びと安全の両立のために、どの場所にどのような配慮が必要か検討しましょう。

犯罪発生場所と不安場所実際に犯罪が起こっている場所と、犯罪にあやうく会いそうになった場所とを区別しながら地図記入しましょう。

ワンポイントアドバイス

事例 松戸市生涯学習高齢者の講座で子どものわくわくする遊び場と危険な場所の両方を探してもらった。しかもお年寄りが子どもたちにに聞きながら。そして学校の協力で子どもたちからも点検と改善の提案がなされた。

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本編 01-06

子ども自身の危険対処能力をふだんの生活行動から身につけるようにする

防犯訓練にも遊びの要素を入れてみよう。

子ども自身のリスクマネジメント

子どもの成長と安全

遊びも身を守るトレーニングに

● 遊びや劇などの普段のシチュエーションから、いざという時のトレーニングを行うことができます。

● たとえば、世田谷区の調査では子どもたちが不審者ごっこ(不審者を鬼に見立てた鬼ごっこ)をしていました。鬼ごっこもそういう意味でいざという時の逃げる訓練になります。

● 遊びの中にはいろいろな疑似訓練となっているものが結構あります。いろいろな遊びを考えてみましょう。

防犯シミュレーション訓練笛や携帯電話など防犯グッズを持てば安心というのではありません。それらは補助として、自らの力で危険を見抜く力をつけるには、寸劇等を取り入れて想定される状況を演じてみると、より具体的に思い描くことができるでしょう。

コラム 子どもたちが描くの不審者のイメージ図

ワンポイントアドバイス

子ども達に、不審者とはどんな人かという質問をしたところ、大多数の子ども達が、不審者といえば、マスクや黒い洋服、帽子やサングラスなどをかける男の人だと答えた。(松戸市3小学校区でのアンケート調査より)実際の不審者はこの通りかどうか、絵をきっかけに子どもと話をしたり、不審者を見かけた時の行動などを確認したりしていくとよいでしょう。