運動療法

はじめに

一昔前までは、『心臓病すなわち安静』と考えられていました。

しかし過度な運動制限は心身両面に悪影響を及ぼします。現

在は適度な運動をすることで様々な良い効果があることがわか

っています。もちろんやみくもな運動は危険を伴うこともあるので、

医療スタッフ（医師・看護師・理学療法士など）の説明を聞いて

から始めましょう。

運動療法について

心臓病（心筋梗塞・狭心症・心不全・心臓術後・ＡＳＯなど）の

患者さんは、心臓の機能（働き）が低下しています。さらに入院

中に心臓をいたわるため、安静な生活を続けたことで体力も低

下しています。そういう状態のままで退院してしまうと、ちょっとし

たことで心臓に負担がかかってしまい、心臓病が悪化してしまい

ます。

※ 運動療法のことは、当院リハビリテーション課（理学療

法士）に相談してください。

運動療法は心臓病の再発を予防し、快適で質の良い生活を

維持するために、非常に有効であることがわかっています。

入院前の生活に戻る前に、

低下した体力を安全に回復

させて、自信を持って生活に

戻る（社会復帰や職場復帰を

するため）ことが大切です。

運動療法の効果

最も大きいのは運動能力の増加

○ 運動能力が向上し、楽に動けるようになります

○ 心臓への負担が減り、病気の症状が軽くなります

○ 動けることで自信が回復し、不安がなくなります

心臓機能が高くても低くても、運動能力は増加します

運動能力が低い人ほど、増加率は大きくなります

1～3 ヶ月後には、運動能力の増加を実感できる

病気（心筋梗塞、狭心症、心不全）の再発や増悪を抑制

○ 高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満など、

動脈硬化の危険因子が改善します

○ 血管の機能や自律神経の働きがよくなります

運動療法を行なうことにより、動作が楽になり心身両面から快

適な生活を長く続けることができるようになります。

運動療法の実際

（運動処方の４つのポイント）

一週間に行なう回数は？

○ 週 3～7回、できるだけ毎日が理想です

○…適切な運動量

△…少な目の運動量

×…休み

健康日誌とともに、記録をつけましょう

運動する時間は？

○ 1日 30～60分が最適です

15～30分×2回などに分割しても良い

運動の強さは？

○ 『ややきついと感じる』・『軽く息がはずむ』・『軽く汗ばむ』

程度の『有酸素運動』が良いとされています

最大能力（自分の限界）の半分程度の強さが適切

有酸素運動 無酸素運動

（ウォーキングなど） （100m 走など）

無酸素運動（力を入れる・息が切れるような運動）のような

激しい運動を行なうと、運動療法の効果がないだけでなく、

かえって心臓に負担をかけてしまいます

どんな運動が良いですか？

○ ウォーキング、自転車走行、体操、水中歩行など

運動の強さに気をつける

運動療法で注意すること

（安全・有効・継続）

特に在宅で行なう運動療法では医療スタッフがいませんので、

以下のことに注意していただく必要があります。

運動療法を安全に行なう

○ 無理はしないこと、過剰な運動は危険です

運動の強さが強いほど、良いわけではない

体調不良や睡眠不足の場合、無理せず休む

途中で胸の痛み・圧迫感・動悸・息切れ・めまい・冷や汗な

どみられたときは、すぐに運動を中止する

○ 必ず準備体操（運動前）と整理体操（運動後）を行なう

食事の後や起床後は、1時間以上空ける

○ 夏は脱水に注意して水分補給を、冬は防寒を心がける

不向きな運動

※ 人によって不向きな運動は少し変わってきます。

運動療法を確実に行なう

○ 適切な『運動』・『強さ』・『時間』を守る

生活改善（食事療法・禁煙など）も、しっかり行なう

○ 運動だけでは効果不十分

食事療法は当院栄養課（栄養士）までご相談ください

長く継続する

○ 『継続は力なり』

無理せず長く続けていきましょう

動作・運動の活動量

○ 日常動作・運動の活動量

『どの程度心臓に負担がかかるか』の目安

活動量の指標（METs：メッツ）

静かに座っているとき …1 メッツ （基準値）

家で身の回りのことをするとき …3 メッツ程度必要

社会生活を普通に過ごすとき …7 メッツ程度必要

屋外を含め（無理せず）健康な人と同じ程度の活動

運動能力に合わせた動作・運動の活動量

※ 同じような動作・運動でも、その仕方によって負担が大

きく異なりますので、注意してください。

運動強度の測定

○ 心肺運動負荷検査（CPX）

2010年 12月より心肺運動負荷試験装置を導入しました。

心肺運動負荷試験とは

計測用のマスクをした状態で、

自転車エルゴメーターを漕ぐ

検査です。

検査中の呼吸の状態を計測することにより心臓や呼吸の

機能や筋肉の機能などをモニタリングすることができます。

体力や嫌気性代謝閾値を評価することができ、より安全な

運動療法を実施することができます。

体力の評価ができ、患者さんの運動の効果判定も客観的

に行うことができます。

心臓リハビリテーションセンターで運動を実施した患者さん

には可能な限り導入します。