学問の面白さiar/wp-content/uploads/2014/08/...14.7.2 4 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 gn1 gn3 gn4...

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国連による世界人口推移 (1800-2100年) 

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世界の人口、穀物生産の推移(1986年=100)

穀物の期末在庫率は低下し続けている"

世界の穀物消費量は、世界人口の増加に伴い、堅調に増加を続けている。その一方、1人当たり耕作面積は減少し続けており、それを単位面積当たりの収量増加で補ってきた。しかし、2000年以降、単収の伸びが鈍化したため生産量の伸びも鈍化し、近年は2004年を除き生産量が消費量を下回って推移している。それに伴い期末在庫率は低下し、2006年には、世界的な異常気象等により一部農作物の輸出制限も行われた1970年代前半と同様の低水準となっている。

生産が消費を下回る�

食糧需給安定化の為には、単位面積収量を持続的に増加させ続ける必要!!

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ヒト、イネ、ショウジョウバエ、アラビドプシスなどの生物の全ゲノム配列が決定された�

イネは12セット、24本の染色体を持つ。この24本の染色体の上に約3万個の遺伝子が存在しており、それらが正常に働くことにより生存できる。この���の配列情報を全て決定したことにより、染色体の任意の位置にマーカーを設定することが可能となった。�

イネゲノムプロジェクト:日本をはじめとした��カ国の国際共同研究により����年に開始され、���年に全ゲノム解読を終了した。実験に用いられた品種は愛知県が開発した日本晴で、日本は全���配列の�の解読に貢献した。�

ゲノム情報が分かると何が出来るか�

コシヒカリ�ハバタキ�

例えば、染色体7番の下側の"ゲノム配列を比べてみると�

CACACACACACACACACACACACACACA!GTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGT!

コシヒカリ�

��が�回リピート�

この長さの違いを���により比較すればコシヒカリとハバタキの子孫がこの領域をどちらから(コシヒカリかハバタキか)受け継いだかが分かる。このように、染色体がどちらの両親由来かを調べる道具を���マーカーと呼ぶ。�

紫部分はコシヒカリと�ハバタキで共通の配列�

��プライマー�

�プライマー�

コシヒカリとハバタキは同じイネなのでほとんど同じ���配列のゲノムを持っているが、数百から千に�箇所程度の塩基配列の違いが存在する。仮に����塩基に�個の違いが存在するとすると、イネの全ゲノムの塩基数は約����(����塩基)なので、 ��������� ����つまり全ゲノム中に�万個程度の違いが存在することになる。�

ハバタキ�

��が��回リピート�CACACACACACACACACACACACACACACACACACACACA!GTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGT!

��プライマー�

�プライマー�

コシヒカリ�ハバタキ�

交配�

F1世代

自殖�

対立遺伝子がホモになるまで自殖を繰り返す�

���マーカーを使うと何が出来るか�

染色体の乗換えが起こる�

対立遺伝子がホモ化したハバタキとコシヒカリの合いの子

個体#1� #2� #100� #101� #102� #103�

さっきのDNAマーカーを使えば染色体7番の下側の領域がどちらの両親から由来したかが分かる。 DNAマーカーはイネの染色体の全領域をすべてカバーするように百から百数十個を用意する。

ハバ� コシ� ハバ� ハバ� ハバ� コシ�

個体#1� #2� #100� #101� #102� #103�マーカー 1�マーカー 2�マーカー 3�マーカー 4�マーカー 5�マーカー 6�マーカー 7�マーカー 8�マーカー 9�

このように、F8世代100以上の個体のゲノム構造について、染色体1番の最上部から12番の最下部まで、領域がどちらの両親から由来したかを調べる。

個体#1� #2� #100� #101� #102� #103�

ハバ� コシ� ハバ� ハバ� ハバ� コシ�

マーカー 2�

マーカー 8�

���マーカーを使って���解析をする�

F8世代103個体に付いたタネの数を数えた

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1�

150

200

250

300

コシヒカリのタネ数

ハバタキのタネ数

一穂当たりのタネの数

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マーカー 2の領域が赤(ハバタキ)と青(コシヒカリ)の個体に分けて穂についたタネを数えた�

150

200

250

300

コシヒカリのタネ数

ハバタキのタネ数

一穂当たりのタネの数

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マーカー 8の領域が赤(ハバタキ)と青(コシヒカリ)の個体に分けて穂についたタネを数えた�

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1�

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マーカー2の遺伝子型がコシヒカリの個体群は平均170粒のタネが付きハバタキの個体群は230粒のタネが付いた。一方、マーカー8の場合は、どちらも190粒と変わらなかった。 ハバタキゲノムのマーカー2の近傍にタネの数を増やす遺伝子が座乗している可能性が高い。 この場合、別の場所にもタネの数を増やす遺伝子が存在していても、その遺伝子はコシヒカリとハバタキ由来が103個体の集団中に、均等に分布していると考えられその効果は無視できる。

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14.7.2�

4�

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

Gn1 Gn3 Gn4

Gn2

Gn5

タネの数を決める遺伝子の個数を調べた

44%

11%

9% 7%

10%

タネを増加させる遺伝子は5つ(Grain number 1-5) 5個ともハバタキがコシヒカリよりもタネを増やす能力が高い この中で最も効果が大きかったのは1番染色体短腕のGn1だった

イネの12本ある染色体の上から下まで全体に散りばめたDNAマーカーを使って、どのマーカーとタネの数が相関性が高いかを調べた。

Gn1について詳しく調べる イネにはタネを増やす遺伝子が5つあったが、その中でも最も効果の大きい遺伝子は第1染色体の上側にあるGn1遺伝子だった。そこで、この遺伝子を取り出し、その働きを詳しく調べることにより、タネの数がどのように決められるのか、を研究することにした。 Gn1の働きを調べるにはどうするか?

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

ハバタキ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

コシヒカリ 研究に使ったイネ

Gn1 Gn1

Gn2

Gn3 Gn4

Gn5

コシヒカリとハバタキのタネの数の違いは5カ所の遺伝子が原因だった。 Gn1を詳しく研究するためには、それ以外の遺伝子の違いをなくしてしまえばいい。この場合は、Gn2-Gn5をなくす。 そこで、Gn1の場所だけをハバタキ、それ以外はコシヒカリというイネを作る。

Gn1の付近だけ ハバタキゲノム

Gn1付近以外すべてコシヒカリゲノム�

Gn1付近だけハバタキゲノムというイネの作り方

コシヒカリ ハバタキ

交配 両親から一本ずつ染色体をもらう

50%コシヒカリ 50%ハバタキ

コシヒカリと交配 両親から一本ずつ染色体をもらう

75%コシヒカリ 25%ハバタキ

コシヒカリと交配 両親から一本ずつ染色体をもらう

できた子供は87.5%コシヒカリ12.5%ハバタキ

これを繰り返せばできてくる子供はどんどんコシヒカリに近付く

1番染色体

Gn1

どうやってGn1の付近だけハバタキの染色体を残こすか?

ここだけハバタキ

その為には

DNAマーカーを使ってその場所がコシヒカリのDNAか、ハバタキのDNAかを調べていく。 イネの染色体の全体を調べて、Gn1付近だけハバタキ由来の染色体を持つものを探し出す。

1番染色体の最上のマーカー 

1番染色体の中上のマーカー

1番染色体の真中上のマーカー

1番染色体の真中下のマーカー

1番染色体の中下のマーカー

1番染色体の最下のマーカー 

一穂当たりに付いたタネの数

コシヒカリの穂に付いたタネは一穂当たり平均150粒程度に対し、新しく作ったイネ(Gn1の付近だけハバタキ残りはコシヒカリ)は、240粒程度だった。。これは、Gn1遺伝子ひとつでも、収量(タネの数)を30%増やすことができることを意味する。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

コシヒカリ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

新しく作ったイネ

Gn1 ここだけハバタキ

ほとんど コシヒカリ

ハバタキのGn1を入れ込んだコシヒカリは本当にタネの数が多いか?

0

1

2

3

150

200

250

コシヒカリ

新しく作ったイネ

それぞれ10個体のイネを使って一穂当たりに付いたタネの数を調べた

どうやってGn1遺伝子を見つけるか コシヒカリと新しく作ったイネの違いは1番染色体の上の部分にハバタキの染色体が少し含まれるか、含まれないかの違い、だから1番染色体だけに注目して

コシヒカリ ここだけハバタキ

少 多

多 少 多

タネの数

多 少 少 少 少 少 少 多 多 多 多 多

ここだけハバタキの部分(赤い部分)をどんどん短くして、タネの数がどこで少なくなるかを調べる。

1 6 9 10 5 2 3 4 7 8 11 12

1 2 3 4 5 6

7 8 9 10 11 12

Gn1

QLT遺伝子単離のために高速、効率的な遺伝子マッピングの手法を作る必要があった

8X12X4の96X4プレートに対応したイネ育苗バット

8X12の96プレートに対応したDNA抽出システム

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14.7.2�

5�

8X12の96プレートに対応したDNA抽出装置を大阪の町工場に開発させた

主桿の穂を含む 各個体-4~6穂の種子をカウントする。 4年間のマッピング実験で200万粒以上をカウントした。

結局一番大変だったのは種子数を数え、 数が多いグループなのか少ないグループなのかを特定する作業 実際に収量調査を行っている田圃

セントロメア Gn1

P0498B01 P0419B01

B1046G12

R3192 C12072S

B1015E06

1S 1L

6.3kb 3A15 4A9

1

3A20 3A22 3A23

2 4

3A29 3A24

2 OsCKX2

16bp欠失

C319

ATG TGA 2448bp 91bp 646bp 467bp 266bp 319bp

451bp

~ ~

Gn1

6bp欠失 S S

63bp 541bp

S

1

3A28

1

Gn1遺伝子の単離をまとめると Gn1は第1染色体の短腕側に座乗していた

ラフなマップによりGn1をBAC3つ程度に落とし込んだ

精密マップによりGn1を6.3kbに落とし込んだ

6.3kb中には遺伝子が一つ存在し、サイトカイニン分解酵素をコードしていた

ハバタキとコシヒカリの遺伝子を比べると、ハバタキの遺伝子のエキソン1に16bpと6bpのDNA欠失と2カ所の塩基置換、エキソン4に1カ所の塩基置換が存在した。

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

Koshihikari Habataki -

No.

of g

rain

per

pan

icle

164

306

405 400 350 300 250 200

100 150

50 0

5150 コシヒカリ ハバタキ CKX2の発現量

16bp欠失

ATG TGA 2448bp 91bp 646bp 467bp 266bp 319bp

451bp

~ ~

6bp欠失 S S

63bp 541bp

S

5150 コシヒカリ ハバタキ

サイトカイニン分解酵素(CKX2)と収量の関係

Ko Ha NIL 5150

コシヒカリとハバタキのCKX2の機能に違いはあるか?DNA配列からは違いが分からなかった。 中国の超多収品種のCKX2遺伝子のDNAを片っ端から調べたら、5150という品種のCKX2遺伝子は第3エキソン内に11bpのDNA欠失があり、遺伝子の機能が壊れていることが分かった。

11bp欠失 5150

ハバタキ

CKX2遺伝子の働きが悪ければ悪いほどタネの数は増加する。

一穂当たりに付いたタネの数

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14.7.2�

6�

サイトカイニン:植物ホルモンの1つ 細胞分裂促進 花芽形成・側芽の形成促進

サイトカイニン

何故サイトカイニン分解酵素の活性が少ないと種子数が増えるのか

CKXはサイトカイニンを分解してしまう。つまり、CKXの活性の高いコシヒカリはサイトカイニンが少なく、CKXの活性が低いハバタキは多いことが予想される。CKは花の数、つまりタネの数を増加させるのでこの予想はつじつまが合う。

不活性型サイトカイニン サイトカイニンの分解酵素

CKX

�kdsgdv�� )kdsgdv��

tZ trans-zeatin tZR tZ riboside

tZRMP tZR monophosphate

iP isopentenyladenine

iPR iPRMP

12.00

10.00

8.00

6.00

4.00

2.00

0.00

コシヒカリ ハバタキ NIL 5150

CK含量 (pmol/gFW)

コシヒカリはサイトカイニン量が少ない

コシヒカリ

ハバタキ

コシヒカリはハバタキの半分くらい

ハバタキGn1遺伝子を導入したイネはそのゲノムほとんどが コシヒカリなのでこのままコシヒカリと同じように栽培できる

もしハバタキゲノム(赤の領域)が都合の悪い遺伝子を持っていたら、Gn1遺伝子を残し、その部分だけを除けばよい。

0

50

100

150

200

250

一穂当たりに付いたタネの数

コシヒカリ

新しく作ったイネ

新しく作った品種はコシヒカリに比べて30-40%の収量増となる

新しく作ったイネ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

Gn1

ここだけハバタキ

ほとんど コシヒカリ

コシヒカリは現在の収量でも収穫期には倒れてしまう

野生型 sd1

窒素肥料

半矮性(背が低い)=耐倒伏性の獲得 野生型 sd1

作物の半矮性形質は 重要な農業形質である

wild sd1

施肥量と収量の関係

0

2

4

6

8

10

0 50 100 150 施肥量(kg/ha)

収量(t/ha)

半矮性形質により高収量を達成できる (緑の革命に用いたsd1の場合)

Peta(IR8の親品種)

IR8(緑の革命の品種)

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14.7.2�

7�

世界の人口、穀物生産の推移 20世紀後半、耕作面積は増加せずに、収穫量が増加できたのは何故か?

1人当たり耕作面積は減少し続けているにもかかわらず、全穀物収穫量が上昇し続けるのは、単位面積当たりの収量が増加し続けたため。この「単位面積当たりの収量の増加」原因は、20世紀後半の工業化により、窒素肥料や農薬の開発が主たる要因で、実際、窒素肥料の1997年時の使用量は1961年時の約7倍穀物収量は約2倍に増加した。しかし、20世紀最後頃から、この方法での収穫増加は限界に近づき、別の方法で単位面積当たりの収量増加を達成しなくてはいけない状況が生まれている。

1961年を1とする

1961年時の約7倍�

1961年時の2倍以上�

jl{g~�

îäÉĊÇ�yzph�

ハバタキはコシヒカリよりも背が低い

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

Ph1

: ハバタキが背を高くする遺伝子 : コシヒカリが背を高くする遺伝子

Ph2

Ph3 Ph4

草丈を制御する遺伝子は4カ所見つかった

第1染色体長椀のこの付近には半矮性遺伝子sd1が座乗している。

草丈に関する遺伝子についても遺伝子調査を行った

wild sd1 (IR8)

半矮性突然変異体(sd1)

sd1 =semi dwarf 1 (半矮性)

従来の品種に比べ高収量をもたらしミラクルライスと呼ばれた

イネ「緑の革命」

ハバタキではsd1遺伝子 (ジベレリン合成酵素)に突然変異が存在した

557 103 3211472

291 (bp)

exon1 exon2 exon3

ハバタキのsd1遺伝子は383bpのdeletionが存在した

ジベレリン:植物の背丈を伸ばす植物成長ホルモンで、合成量が少なくなると植物の背は低くなる

ジベレリンが合成できず背が低くなったイネ�

sd1

Gn1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

コシヒカリゲノム ハバタキゲノム

コシヒカリ sd1入り

sd1

Gn1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

Gn1入り Gn1+sd1入り

20 40 60 80 100 120 140

111 89.6

112.6 91.1

草丈 (cm)

sd1遺伝子を入れたコシヒカリは草丈が81%に減少する。Gn1にsd1遺伝子を入れた場合も81%に減少する。

実際の育種には収量を高めるだけではダメで、実が重くなっても倒れないようなカラダをいっしょに作らないといけない、そのためにGn1遺伝子と同時に背丈を低くするsd1遺伝子も同時に入れる(QTLピラミディング)

コシヒカリ

sd1入り

Gn1入り

Gn1+sd1入り

Page 8: 学問の面白さiar/wp-content/uploads/2014/08/...14.7.2 4 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Gn1 Gn3 Gn4 Gn2 Gn5 タネの数を決める遺伝子の個数を調べた 44% 11% 7% 9% 10%

14.7.2�

8�

sd1

Gn1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

sd1

Gn1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

164 148.5

237 207.4

50

100 150

200

250

300

164 148.5

237 207.4 250

200

150 100

50 0

300

Gn1遺伝子と同時に背丈を低くするsd1遺伝子も入れた品種は収量が約30%増加し、草丈は80%に減少した。このように、人間に都合のいいQTL遺伝子を集積する方法をQLTピィラミディングと呼ぶ。

コシヒカリゲノム ハバタキゲノム

Gn1とsd1を同時に入れると収量は若干減少するが それでもコシヒカリの30%程度増加する

コシヒカリ sd1入り Gn1入り Gn1+sd1入り

コシヒカリ

sd1入り

Gn1入り

Gn1+sd1入り

一穂当たりに付い

たタネの数

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

短桿性 収量性 耐乾燥性 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 11

短桿性 収量性 耐乾燥性

有用形質を一つずつの遺伝因子に分けて、 必要な形質だけを積み重ねる( QTL pyramiding)

栽培化の過程でイネはいくつかの形質を獲得しそして失ってきた 栽培イネ 野生イネ

耐病性

ストレス耐性

多収性

耐虫性 栽培しやすい草型

タネが落ちない

種子が休眠しない

DNAの違いは1%

Oryza sativa Oryza rufipogon

O. glumaepatula

O. longistaminata バイオマス遺伝子

O. barthii ストレス耐性遺伝子

O. glaberrima アフリカ栽培イネ ストレス耐性遺伝子 O. sativa

indica 多収量遺伝子 O. sativa

japonica

野生イネは栽培イネにない優良形質を数多く持つ

コシヒカリ

このような野生イネの持つ優良な形質を取り出し、栽培イネに導入できれば新しい栽培イネを作ることができる

ハバタキ

O. meridionalis O. rufipogon 多収量遺伝子

野生イネの優良遺伝子を含んだゲノム断片をコシヒカリゲノムに導入する

O. glumaepatula

O. meridionalis

O. nivara

O. longistaminata

O. barthii O. rufipogon

O. glaberrima

O. sativa indica

O. sativa japonica

コシヒカリ

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

野生イネのほとんどの形質は栽培には適していないので、優良遺伝子以外のゲノム断片は持ち込まないことが肝要

QTLピラミディングを使えばスーパーイネも夢ではない

コシヒカリ(120-130粒/穂) 一株当たり、1500-2000粒程度

現在作成過程のイネ(600~700粒/穂) 一株当たり、<1万粒程度

1000粒/穂、>1万粒/株のイネも作ることができるだろう