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自己紹介豊田 郁子
2003年3月に、医療事故で長男(当時5歳)を亡くす。同年12月より、医療事故・医療安全に関する講演活動を始める。
04年10月 新葛飾病院に勤務し、医療安全対策室・患者支援室を開設。08年 新葛飾病院患者支援室 医療の質・安全学会「新しい医療のかたち」賞 受賞
<現在の活動>
患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋 理事長
患者の視点で医療安全を考える連絡協議会 事務局長
日本医療機能評価機構 産科医療補償制度 原因分析委員会 委員
厚生労働省 医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会 構成員
「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」メンバー (平成26年度厚生労働科学研究)
著書「うそをつかない医療」(亜紀書房)
平成26年度九州・沖縄地区 医療安全に関するワークショップ
患者・家族が期待する
医療事故調査と医療対話推進者の役割
IMSグループ新葛飾病院 医療安全対策室患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋 豊田郁子
平成26年11月 5日(水)
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病名=「絞扼性イレウス」
「診療経験の少ない医師にその判断は難しい」
院内事故調査結果に納得できなかったこと
根本原因を究明し、説明して欲しい、向き合って
欲しいと願う遺族の思いは届かなかった。
事実関係が違う(家族に聞き取りがない)
2003年3月9日発病・受診⇒入院⇒急 死
一ケ月後に突然の知らせ
新聞社に内部告発↓
カルテ開示↓
病院の不誠実な対応に
傷つき取材を決心
(03年6月1日朝日新聞掲載)
息子の医療事故・報道
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当該病院との和解とその後
病院は、息子の命日(3月9日)の前後一週間を医療安全推進週間とし、毎年医療安全研修会を実施
病院に対する気持ちの変化-3年後命日での看護師の謝罪
平成19年度(2007年)の研修会で遺族が講演(遺族と職員との間で この時初めて対話が成立し、良い関係に)
2004年1月 警察に被害届けを提出2005年9月 病院と和解2006年10月 当直医師の不起訴が確定
当該病院事故調査委員会の審議経過と実際の説明
第1回 平成15年3月10日(月)
・3月9日の状況の概要について、関係者から事実確認した。
第2回 平成15年3月24日(月)
・診療録に基づき整理した詳細な症状経過、検査結果等の検討を行った。
第3回 平成15年4月2日(木)
・入院時に撮影したエックス線写真、CT所見の検討を行った。・急変の原因についての検討を行った。
第4回 平成15年4月7日(月)
・医師の診断内容と妥当性等についての検討を行った。
カルテ開示の際(4月14日)に説明されたのは、
「担当医師は最善を尽くしたと申しております。これ以上に関しては
第三者に判断していただかないと分からないかもしれませんね」
問題点①事例を検討していたことを遺族に話さなかった。
問題点②当事者や関係者又は事実確認をした人が同席していない。
そのため責任者(院長・小児科部長)が説明できなかった。
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検討会にて重視して発言した4つの視点
1.調査組織における遺族の参加
2.遺族に分かりやすい手続き
3.行政処分と再教育のあり方
4.遺族-病院間の対話の必要性
医療事故調査制度創設を巡るこれまでの動き
07年4月20日~08年12月1日「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する
検討会」を17回開催
07年10月厚労省「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り
方に関する試案-第二次試案-」
07年12月自由民主党医療紛争処理のあり方検討会「診療行為
にかかる死因究明制度等について」
08年 4月厚労省「医療の安全の確保に向けた医療事故による
死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案
―第三次試案―」公表(意見募集を実施)08年 6月厚労省「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」
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事務局
行政:医療側
A市民団体
F市民団体
W患者団体
Z患者団体
医療者グルlプ
要望・意見など 回答・対話など
患者・市民・医療者・弁護士・ジャーナリストなどの団体
医療事故の減少や医療の質・安全の向上を実現させるために活動している医療事故被害者・遺族、市民、医療者の団体が連携して、2008年に結成
患者の視点で医療安全を考える連絡協議会(略称:患医連)
緩やかな連合体
加入団体医療過誤原告の会医療事故市民オンブズマン・メディオ医療情報の公開・開示を求める市民の会医療の良心を守る市民の会陣痛促進剤による被害を考える会
代 表 永井裕之副代表 菅俣弘道
宮脇正和事務局長 豊田郁子
HP;http://kan-iren.txt-nifty.com/top/
弁護士グルlプ
患者の視点で医療安全を考える連絡協議会(略称:患医連)
医療事故調査制度創設を巡るこれまでの動き
08年 6月民主党「医療に係る情報の提供、相談支援及び紛争の
適正な解決の促進並びに医療事故等の再発防止のため
の医療法等の一部を改正する法律(仮称)案骨子試案」
(通称・患者支援法案)「医療事故等による死亡等(高度
障害等を含む)の原因究明制度(案)」
08年 8月 「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」発足
12月 「医療事故調査機関の早期設立を望む」チラシ配布&
署名活動開始
08年10月 「第三次試案及び大綱案に寄せられた主な御意見と現
時点における厚生労働省の考え」をとりまとめ
09年 1月 「産科医療補償制度」運用開始
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19.4%
18.5%
25.2%
36.9%
90.3%
6.2%2.2%
1.3%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
経済的補償がほしかったから 納得のできる説明がほしかったから
法的行動をとった理由
医療事故市民オンブズマン・メディオ 『医療事故と診療上の諸問題に関する調査』報告書(2003.12)
表19より
まったくあてはまらない
あまりあてはまらない
ややあてはまる
とてもあてはまる
わたしたちは
「説明のない補償」を望んでいない。
■弁護士に依頼して医療事故に関する法的行動(証拠保全・調査・示談・調停・訴訟のいずれか)をとった人を対象としたアンケート調査(郵送自記式)
■実施時期:2002年9月~2003年4月
■有効回答数:241票
11
医療事故調査機関の早期設立キャンペーン
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医療事故調査制度創設を巡るこれまでの動き
10年 3月 「医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議」設置6月 「死因究明資する死亡時画像診断に関する検討会」設置
7月報告書提出11年 8月 「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方
に関する検討会」設置
12年2月15日~13年5月29日「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」を13回開催
13年 5月 厚労省「『医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本
的なあり方』について」
産科医療補償制度創設の目的
産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児に対する補償の機能と脳性麻痺の原因分析・再発防止の機能とを併せ持つ制度として創設されました。
目的1分娩に関連して発症した脳性麻痺児およびその家族の経済的負担を速やかに補償します。
目的2脳性麻痺発症の原因分析を行い、将来の脳性麻痺の予防に資する情報を提供します。
目的3これらにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ります。
財団法人日本医療機能評価機構 産科医療補償制度HPより
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【患者・家族支援窓口設置場所】
管理棟1階:からだ学習館内
【相談受付:図書室利用時間】
月~金:9時~17時 土:9時~12時
(祝日・日曜日を除く)
※病院、クリニックに意見箱を設置
回答は、ポスター掲示・しんかつ通信に掲載
新葛飾病院 (131床) 患者支援室/医療安全対策室
【専従】 医療安全管理者 1名
医療対話推進者 1名
【兼任】 看護師1名・医事課3名
(職員サポートも行っています)
1.遺族への説明・報告
2.調査メンバーのあり方
3.調査の仕組み
4.調査の対象
5.調査費用:公的な費用補助
「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」
信頼される制度にするための課題
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患者サポート体制の施設基準(患者サポート体制充実加算:平成24年4月~)
患者支援体制確保のため、患者相談窓口と各部門とが十分に連携していること。
各部門において、患者支援体制に係る担当者を配置していること。
患者支援に係る取組の評価等を行うカンファレンスが週1回程度開催されており、必要に応じて各部門の患者支援体制に係る担当者等が参加していること。
医療安全対策加算を算定している場合は、医療安全対策委員会と十分に連携し、その状況を記録していること。
患者サポート体制の充実(患者サポート体制充実加算:平成24年4月~)
Ⅰ. 医療対話推進者の業務指針
1.医療機関における医療対話推進者の位置付け
医療対話推進者は、各医療機関の管理者から患者・
家族支援体制の調整と対話促進の役割を果たす者と
して権限が委譲され、管理者の指示に基づき、医療
安全管理者、医療各部門、事務関係部門と連携し、
組織的に患者・家族からの相談等に対応することを
業務とする者とする。
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医療事故発生時の対応(医療安全管理者と医療対話推進者の連携)
医療対話推進者は、医療事故が発生した場合、あるいは、
医療事故を疑って申し出を受けた場合には、管理者からの指示を受け、医療安全管理者と連携して患者・家族 及び事故関係者の支援にあたる。
①患者・家族への事故の連絡や説明の実施◎
②管理者や医療事故に関与した職員等から、患者・家族への説明する場の設営のための調整活動
③説明の場での話し合いの進行上の配慮
④患者・家族及び医療事故に関わった職員(当事者・関係者)等の精神的ケア等のサポート◎
Ⅰ.医療対話推進者の業務指針 P3.P4 (平成24年度厚生労働科学特別研究事業)
・医療事故や、医療事故を疑った患者・家族からの申し出に関して対応すること
検証や取り組み評価のフローチャート
患者支援部門 医療安全対策部門
ご意見箱へ投書 インシデントアクシデント事例
事実確認・調査
共同検討会(必要に応じて何度も開催されることもある)
医療安全対策委員会(医療安全対策室、患者・家族支援窓口より報告)
事実調査事実調査
患者サポートカンファレンス
週1回程度開催
医療安全カンファレンス
週1回程度開催
報告
患者・家族への対応
医療対話推進者 医療安全管理者
患者・家族への対応
直接相談
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1. 傷ついた気持ちに寄り添う医療事故が起きると、患者・家族も医療者も深く傷つく。関係者の気持ちに最大限配慮することを大切にする。
2. 関係者の話を聴き、いっしょに考える関係者の思いを理解するため「聴く」に徹することからはじめる。そのうえで患者・家族、医療者を支え、提案やアドバイスをするのではなく、これからどうしていくかをいっしょに考えていく。
3.患者・家族・医療者を心から尊重する患者・家族、医療者の気持ちを心から尊重し、それを理解しようとすることが大切。患者・家族、医療者の感情をコントロールしてはならない。そのためのスキルトレーニングは必要だが、マニュアル的スキル(聴く技術・言い換えの技術 )に終わってはならない。
医療対話推進者の心得
患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋
医療事故の初動対応医療安全管理者と医療対話推進者の連携
医療事故
医療スタッフ
患者・家族
対話の場
先生、話を聞かせてください。情報を開示して、患者さんに向き合いましょう。
う~ん、そうだね、それが大切ですね。
お話を聞かせていただけますか?カルテ等を開示して、担当医からご説明させていただきます。私も同席させてください。
先生が、ちゃんと説明してくれないんです。納得がいきません。
原因究明情報開示
正直な話し合い
分かりました。説明してください。
報告体制
院内の連携
医療安全管理者
医療対話推進者
院内事故調査
事実を話しても、きっと家族は理解してくれないだろう。もし警察が介入したら、私たちはどうなるのだろうか・・対応困難に・・・
医療対話推進者
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―2014年度 医療対話推進者養成研修―当研修は、厚生労働省医政局より出された「医療対話推進者の業務指針及び養成のための
研修プログラム作成指針―説明と対話の文化の醸成のために― 」に基づいて企画しています。実際に医療機関で患者相談業務を行う際に必要となる知識や技術の基本について、講義と
グループワークで学びます。
■対象:患者サポート体制充実加算の要件の相談窓口担当者など、医療機関内で実際に患者相談業務に携わっている人、またはその予定がある人
■受講料:36,000円、正会員は33,000円(税込/3日間)■参加条件:3日間すべての日程に参加できる方(修了された方には、修了証をお渡しいたします)
申込受付:ホームページの問い合わせフォームもしくはFAXでNPO法人 架け橋ホームページ:http://www.kakehashi-npo.com/お問い合わせメール: [email protected]
主催:患者・家族と医療をつなぐ NPO法人架け橋
日程及び会場(開催時間:1日目、2日目は9時~17時、3日目は9時~16時)
2014年 1日目 2日目 3日目 会場
東京A(終了) 5月18日(日) 5月24日(土) 5月25日(日)
5/18:日本教育会館
5/24・5/25:スタンダート会議室
新橋フルハウス店
札 幌(終了) 7月19日(土) 7月20日(日) 7月21日(祝) 札幌徳洲会病院
大阪A(終了) 9月13日(土) 9月14日(日) 9月15日(祝) 大坂リバーサイドホテル
東京C(終了) 11月1日(土) 11月2日(日) 11月3日(祝) スタンダード会議室 五反田店
名古屋 1月10日(土) 1月11日(日) 1月12日(祝) 名古屋大学医学部 基礎研究棟
医療対話推進者の心得4. 肩代わりするのではなく、向き合うことを支える代わりに謝罪するなど、「当事者の代行」はしない。患者・家族、医療者自身が自分たちで向き合えるように支え、環境の整備をする。
5. 公平性・中立性を超える中立性という指標は、患者・家族と医療者との信頼性を得るためのものだが、病院職員という立場は「公平・中立」には見えないことがある。傷ついている人に対して、ときには一方に寄り添うことで、信頼関係をつくる必要もある。
6. 医療事故分析の調査には、携わらないが連携する医療事故分析の調査には直接携わらないが、適切な連携が必要である。
7. 小さな信頼から大きな信頼へ事故後の対応・ケアとして、正答や唯一の方策といえるものはない。
患者・家族と医療者が誠実に対話をすることを通して、小さな信頼が
積み重なって大きな信頼に結びつくようなプロセスを支える。
患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋
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