講義08 制御系の構成とその安定性...3 コントローラを設計するとは(2)...

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1 講義08 制御系の構成とその安定性 ポイント ・フィードフォワード制御系とフィードバック制御系理解しよう. ・制御系の内部安定性を理解しよう. ・コントローラのパラメータの値によって,制御性能がどのように変化す るかを理解しよう. Text: 佐藤,平元,平田:はじめての制御工学,講談社 Feedfoward control 操作量 制御量 ) ( s P ) ( s C ) ( s D 外乱 ) ( s R 目標値 コントローラ 制御対象 ) ( s U ) ( s Y 操作量 制御量 ) ( s P ) ( s C ) ( s D 外乱 ) ( s R 目標値 コントローラ 制御対象 ) ( s U ) ( s Y 偏差 ) ( s E Feedback control

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Page 1: 講義08 制御系の構成とその安定性...3 コントローラを設計するとは(2) *制御対象のパラメータ:物理定数(質量,バネ定数,摩擦係数など)4

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講義08 制御系の構成とその安定性

ポイント

・フィードフォワード制御系とフィードバック制御系理解しよう.

・制御系の内部安定性を理解しよう.

・コントローラのパラメータの値によって,制御性能がどのように変化するかを理解しよう.

Text: 佐藤,平元,平田:はじめての制御工学,講談社

Feedfoward control

操作量

制御量

)(sP )(sC

)(sD外乱

)(sR目標値

コントローラ 制御対象

)(sU

)(sY

操作量

制御量

)(sP )(sC

)(sD外乱

)(sR目標値

コントローラ 制御対象

)(sU

)(sY偏差

)(sE +

+ +

Feedback control

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コントローラを設計するとは(1)

)()()()( sV

KKRsLBsJ

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baac

a

フィードフォワード制御系 フィードバック制御系

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コントローラを設計するとは(2)

*制御対象のパラメータ:物理定数(質量,バネ定数,摩擦係数など) *コントローラのパラメータ:コントローラ内の定数

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8.2 制御系の安定性

不安定な制御対象(制御対象の伝達関数の極の実部が正のものを含む)は,フィードバック制御することにより,閉ループ系の伝達関数を安定にできる.

*P(s):制御対象の伝達関数

*閉ループ系の伝達関数は,入力を目標値R(s),出力を制御量Y(s)とした伝達関数のこと.

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8.2 制御系の安定性(1)

8.2.1 フィードフォワード制御系

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)(

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sU

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するとまとめてベクトル表示

の入出力関係量外部からの入力と制御

の入出力関係量外部からの入力と操作

外乱目標値

の外部からの入力フィードフォワード系

が安定)()(),()()(),()( sPsGsCsPsGsCsG ydyrur

からわかる.)()( sPsGyd

フィードフォワード系が安定になる条件

(フィードフォワード系の安定条件)

目標値に対する制御量の応答や操作量に関する仕様が満たされているかどうか.

外乱の制御量に及ぼす影響はどれくらいか.

からわかる.)()(),()()( sCsGsCsPsG uryr

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8.2.2 フィードバック制御系

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sDsPsYsRsCsPsY

sDsUsPsY

sYsRsCsEsCsU

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部安定である.が安定性であれば,内

には,く,割り切れない場合多項式に共通因子がなで,分母多項式,分子と

)()(1

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sCsP

sCsP

sCsP

は内部安定になる.フィードバック制御系

が安定であるとき,

であるという.制御系は内部安定

,作量が有界になるときに対して,制御量と操有界な外部からの入力

するとまとめてベクトル表示

の入出力関係量外部からの入力と制御

の入出力関係量外部からの入力と操作

外乱目標値

の外部からの入力フィードバック系

)()(1

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sDsCsP

sPsCsR

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sU

sDsR

ydyr

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8.3 制御系の設計

定数コントローラ

プラントという)制御対象

pKsC

as

bsP

)(:

)(:(

例題を通して,フィードフォワード制御とフィードバック制御を理解しよう.

御量の誤差)偏差(目標値からの制

い値制御量が到達して欲し目標値

操作量フィードバック制御の

御の操作量フィードフォワード制

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:)(

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)()()()(:

sE

sR

sYsRKsEsCsU

sRKsRsCsU p

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8.3.1 フィードフォワード制御系の設計(1)

(1)制御系の安定性

as

bsPsG

as

bKsCsPsG

sGKsCsG

yd

p

yr

udpur

)()(,)()()(

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sGsG

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までの伝達関数制御量内部信号である操作量

から外乱る目標値の外部からの入力であフィードフォワード系

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8.3.1 フィードフォワード制御系の設計(2)

(2)制御系の定常特性

外乱がないときの目標値への制御量の追従特性

ばよい.とコントローラを選べつまり

ためには,値の最終値が一致する制御量の最終値と目標

は単位ステップ関数目標値

目標値の最終値

が使えるのとき,最終値の定理の極の実部がすべて負

を求める.て,最終値の定理を利用し

制御量のラプラス変換

関数に限定.目標値を単位ステップ

件.なので,これが前提条安定でないでないと無理

前提条件:

b

aK

a

bK

trtr

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as

bK

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bKsssYty

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8.3.1 フィードフォワード制御系の設計(3)

(2)制御系の定常特性 外乱がある場合の目標値への制御量の追従特性

が生じる.,誤差値の最終値は一致せず制御量の最終値と目標

は単位ステップ関数目標値

目標値の最終値

が使えるのとき,最終値の定理の極の実部がすべて負

を求める.て,最終値の定理を利用し

制御量のラプラス変換

限定.外乱もステップ関数に

関数に限定.目標値を単位ステップ

件.なので,これが前提条安定でないでないと無理

前提条件:

a

bd

trtr

ssY

a

bd

s

d

as

b

sas

asssYty

ty

s

d

as

b

sas

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フィードフォワード系は

外乱の影響が制御量に

現れないようにできない!

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8.3.1 フィードフォワード制御系の設計(4)

(3)制御対象が変動した場合の制御系全体への影響

)()()( ssPsP

ロバスト制御(robust control)

伝達関数の変動分:)()()( sPsPs

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8.3.1 フィードフォワード制御系の設計(4)

(3)制御対象が変動した場合の制御系全体への影響

)()()()()()()()()()()()()()()()(

)()(

)()()(

sRsCssRsCsPsRsCssPsRsCsPsRsGsY

sYsR

ssPsP

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の入出力関係と制御量目標値

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o

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c

yr

o

の相対的変化このときの

制御対象の相対的変化

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8.3.2 フィードフォワード制御系の特徴

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8.3.3 フィードバック制御系の設計(1)

(1) 制御系の安定性

は内部安定になる.フィードバック制御系

が安定であるとき,

であるという.制御系は内部安定

,作量が有界になるときに対して,制御量と操有界な外部からの入力

するとまとめてベクトル表示

の入出力関係量外部からの入力と制御

の入出力関係量外部からの入力と操作

外乱目標値

の外部からの入力フィードバック系

)()(1

)(,

)()(1

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sCsP

sCsP

sPsC

sCsP

sC

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sU

sDsCsP

sPsR

sCsP

sCsPsDsGsRsGsY

sY

sDsCsP

sPsCsR

sCsP

sCsDsGsRsGsU

sU

sDsR

ydyr

udur

部安定である.が安定性であれば,内

,割り切れない場合には

く,多項式に共通因子がなで,分母多項式,分子と

)()(1

)()(

)()(

sCsP

sCsP

sCsP

p

p

yrbKas

bK

sCsP

sCsPsG

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閉ループ伝達関数

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8.3.3 フィードバック制御系の設計(2)

(1) 制御系の安定性

になる.の根であるので,の極は,

ェックすればよい.関数の安定性のみをチいので,閉ループ伝達で割り切れる因子はなと

)(0)()(1

)()()(

)()(

pp

p

p

yr bKabKasbKas

bK

sCsP

sCsPsG

sCsP

b

aKbKa pp 0

この場合は,

であることから,の極の実部がすべて負

閉ループ伝達関数制御系の安定条件は,

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8.3.3 フィードバック制御系の設計(3)

(1) 制御系の安定性

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8.3.3 フィードバック制御系の設計(4)

(2) 制御系の定常特性

外乱がないときの目標値への制御量の追従特性

最終値定理 )(lim)(lim

0ssFtf

st

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8.3.3 フィードバック制御系の設計(5)

(2) 制御系の定常特性 外乱があるときの目標値への制御量の追従特性

最終値定理 )(lim)(lim

0ssFtf

st

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8.3.3 フィードバック制御系の設計(6)

(3)制御対象が変動した場合の制御系全体への影響

)()()( ssPsP

伝達関数の変動分:)()()( sPsPs

)(

1

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s

sPsCssP

s

sCsPsCssP

sCs

sCsPsCssP

sCsPsCssPsCssPsCsP

sCsP

sCsP

sCsP

sCsP

sCssP

sCssP

sG

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sYsR

sP

s

sP

sPsPs

sRsCssP

sCssPsR

sCsP

sCsPsRsGsY

sYsR

yr

yryr

C

O

yr

化の伝達関数の相対的変

までと制御量の目標値フィードバック制御系制御対象の変動による

伝達関数の相対的変化もともとの制御対象の制御対象の変動による

の関係と制御量目標値

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8.3.3 フィードバック制御系の設計(7)

(3)制御対象が変動した場合の制御系全体への影響

感度関数という.が小さいとき,

変わるか.どれくらい相対変化がことによってフィードバックが入る

:)()(1

1

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sCsPs

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sCsPsP

ssCssPs

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C

O

C

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8.3.4フィードバック制御系の特徴

安定な制御対象を安定なコントローラでフィードバックしても,場合によっては不安定になる例

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レポート