高系14号 かんしょ - alicかんしょ 常温で保存 重量感があり、...

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かんしょ かん しょ 和  名 ヒルガオ科サツマイモ属 分  類 原産地と日本への渡来 かんしょの原産地は中央アメリカで、15世紀にアメリカ大 陸へ渡ったコロンブスがヨーロッパへ持ち帰り、世界中に広 まりました。日本へは、17世紀初めに中国から沖縄へ伝来 し、その後、薩摩藩を中心とした南九州地方に広まりました。 また、18世紀前半、蘭学者・青木昆陽が救荒作物として全 国に普及させたことは有名です。かんしょは、江戸時代から の大飢饉や戦中・戦後の食料不足から多くの国民の命を救 いました。 ‘かんしょ(甘藷)’の由来は、「甘みのある芋」を意味しま す。また、薩摩藩で栽培が盛んだったことから‘さつまいも’と も呼ばれていますが、伝来当初の江戸時代には‘蕃薯(ばんし ょ)’と呼ばれていました。 ‘蕃茄(ばんか)’はトマト、 ‘蕃瓜樹(ば んかじゅ)’はパパイヤ等、「蕃」は南方系や夏に旬を迎える野 菜によく付けられています。 主な種類 特徴 かんしょは、形、皮の色、肉の色等が品種によって様々です。品種は、世界に4,000種類あるといわ れていますが、日本での栽培は40品種程度。日本の育種はたいへん進んでおり、生食用、でん粉・ア ルコール等の加工用、飼料用等それぞれの用途に適した品種が開発されています。 関東地方の代表品種で、現在生食用の中でもっとも 人気のある品種の一つ。塊根の太りが早く収量も多い のが特徴で、皮が厚く、濃赤紫色をしており、加熱する と鮮やかな紅色になります。肉は濃黄色で、繊維が少 ないため、口当たりが良く、甘味が強く、粉質でホクホ クしています。 ベニアズマ 鹿児島県種子島の特産品です。形は丸っこく、こぶ りながらも水分を多く含んでいます。肉はオレンジ色 で、にんじんに多く含まれるカロテンを含んでいます。 ねっとりした食感と非常に高い糖度が特徴で、種子 島の‘蜜芋’としても有名になっています。 安納芋 西日本での生産量が多く、それぞれの産地で 独自の名前で生産されています。徳島県の‘里 姫’ ‘鳴門金時’や石川県の‘五郎島金時’等もこ の系統です。 皮は紫紅色、肉は淡黄色で、繊維質が少なく、 糖度が高く、ややねっとりした質感をしています。 高系14号 皮は濃紫色、肉も色鮮やかな紫色です。甘くて美味しい紫 芋へと品種改良されたもので、食べておいしいだけではな く、ポリフェノールの一種アントシアニンが多く含まれてい るので、機能性食品としても注目されています。 ソフトクリームやお菓子の材料のほか、生食用としても 使われ、幅広く利用されています。 パープルスイートロード ‘玉豊(タマユタカ)’は、茨城県ひたちなかを中 心とした加工品「干し芋」の原料として用いられる 品種で、皮は淡黄白色、中身は白色をしています。 粘質で収量が多く、いも自体にそれほど甘みは ありませんが、干し芋にすると甘みが出ます。 家畜の飼料用としても利用されています。 タマユタカ 南九州で栽培される品種で、皮は淡黄 色、肉は白っぽい黄色をしています。 主に、芋焼酎の原料として使用されま すが、「黄金を千貫積んででも食べたいく らいおいしい」ことからその名が付いたと もいわれるように、ホクホクとして味がよ いため、青果用としても流通しています。 コガネセンガン (黄金千貫) あん のう いも 136 137

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Page 1: 高系14号 かんしょ - alicかんしょ 常温で保存 重量感があり、 デコボコが少ないもの ひげ根の穴が 浅いもの 皮の色みが均一で、 ハリとツヤがあるもの

かんしょ

かんしょかんしょ

和  名ヒルガオ科サツマイモ属分  類

原産地と日本への渡来 かんしょの原産地は中央アメリカで、15世紀にアメリカ大陸へ渡ったコロンブスがヨーロッパへ持ち帰り、世界中に広まりました。日本へは、17世紀初めに中国から沖縄へ伝来し、その後、薩摩藩を中心とした南九州地方に広まりました。 また、18世紀前半、蘭学者・青木昆陽が救荒作物として全国に普及させたことは有名です。かんしょは、江戸時代からの大飢饉や戦中・戦後の食料不足から多くの国民の命を救

いました。 ‘かんしょ(甘藷)’の由来は、「甘みのある芋」を意味します。また、薩摩藩で栽培が盛んだったことから‘さつまいも’とも呼ばれていますが、伝来当初の江戸時代には‘蕃薯(ばんしょ)’と呼ばれていました。‘蕃茄(ばんか)’はトマト、‘蕃瓜樹(ばんかじゅ)’はパパイヤ等、「蕃」は南方系や夏に旬を迎える野菜によく付けられています。

主な種類と特徴

 かんしょは、形、皮の色、肉の色等が品種によって様々です。品種は、世界に4,000種類あるといわれていますが、日本での栽培は40品種程度。日本の育種はたいへん進んでおり、生食用、でん粉・アルコール等の加工用、飼料用等それぞれの用途に適した品種が開発されています。

 関東地方の代表品種で、現在生食用の中でもっとも人気のある品種の一つ。塊根の太りが早く収量も多いのが特徴で、皮が厚く、濃赤紫色をしており、加熱すると鮮やかな紅色になります。肉は濃黄色で、繊維が少ないため、口当たりが良く、甘味が強く、粉質でホクホクしています。

ベニアズマ

 鹿児島県種子島の特産品です。形は丸っこく、こぶりながらも水分を多く含んでいます。肉はオレンジ色で、にんじんに多く含まれるカロテンを含んでいます。 ねっとりした食感と非常に高い糖度が特徴で、種子島の‘蜜芋’としても有名になっています。

安納芋

 西日本での生産量が多く、それぞれの産地で独自の名前で生産されています。徳島県の‘里姫’‘鳴門金時’や石川県の‘五郎島金時’等もこの系統です。 皮は紫紅色、肉は淡黄色で、繊維質が少なく、糖度が高く、ややねっとりした質感をしています。

高系14号

皮は濃紫色、肉も色鮮やかな紫色です。甘くて美味しい紫芋へと品種改良されたもので、食べておいしいだけではなく、ポリフェノールの一種アントシアニンが多く含まれているので、機能性食品としても注目されています。 ソフトクリームやお菓子の材料のほか、生食用としても使われ、幅広く利用されています。

パープルスイートロード

 ‘玉豊(タマユタカ)’は、茨城県ひたちなかを中心とした加工品「干し芋」の原料として用いられる品種で、皮は淡黄白色、中身は白色をしています。  粘質で収量が多く、いも自体にそれほど甘みはありませんが、干し芋にすると甘みが出ます。 家畜の飼料用としても利用されています。

タマユタカ

 南九州で栽培される品種で、皮は淡黄色、肉は白っぽい黄色をしています。 主に、芋焼酎の原料として使用されますが、「黄金を千貫積んででも食べたいくらいおいしい」ことからその名が付いたともいわれるように、ホクホクとして味がよいため、青果用としても流通しています。

コガネセンガン(黄金千貫)

あん のう いも

136

137

Page 2: 高系14号 かんしょ - alicかんしょ 常温で保存 重量感があり、 デコボコが少ないもの ひげ根の穴が 浅いもの 皮の色みが均一で、 ハリとツヤがあるもの

かんしょ

常温で保存

重量感があり、デコボコが少ないもの

ひげ根の穴が浅いもの

皮の色みが均一で、ハリとツヤがあるもの

糖度が高いものは切り口にみつが出ている

▲ウィルスフリー苗の育苗

生産概況

生産現場から かんしょの大産地である茨城県では、毎年多くのかんしょを出荷するためにウイルスフリー苗(ウィルスに感染していない苗)を作り、かんしょを栽培しています。 かんしょは種芋から苗を取って栽培し、次年度の種芋を生産しますが、一度ウイルスに感染すると、一年、二年と経過するごとに収量が減ってしまいます。 そのため、産地では、収量を減らさないようウイルスフリー苗を使用しています。

 かんしょの作付面積は39千ha、出荷量は約88万トン(平成24年産)です。青果物として市場へ出荷されるほか、でん粉の原料や焼酎の原料等の加工用にも使用されています。

 かんしょは、鹿児島県、茨城県及び千葉県で全国の生産量の約7割を占めており、宮崎県、熊本県、徳島県、静岡県

等でも生産されています。高温・乾燥に強く、低温・多湿条件では生育しづらいため、関東以西が主産地となっています。一般的な旬は、新物が9~11月、貯蔵物は1~3月といわれており、貯蔵されてある程度水分が蒸発したものは甘みが濃くなります。11月に収穫されたかんしょは、ほぼ貯蔵物として出荷されますが、最近では、貯蔵技術が発達しているため9か月位は貯蔵可能です。

選び方

 かんしょは全体が均等な色で、よく太った紡錘形をしたものが良品です。極端に細いものやデコボコしたもの、黒い斑点があるものは避けましょう。 糖度が高いものは切り口にアメ色

のみつが染み出てくるので、じっくり観察し、切り口にみつが出ているものを見つけたら、ぜひ選んでみてください。

 かんしょの主な成分はエネルギー供給源となるでん粉ですが、ビタミンやミネラル、食物繊維も多く含まれています。 しみやそばかすを抑制するビタミ

ンCですが、熱に弱いという性質があります。しかし、かんしょの場合は加熱によってでんぷんが「糊化」し、膜となってビタミンCの消失を防いでくれます。また、強い抗酸化機能を発揮して老化を防止するビタミンEや、余分なナトリウムの排泄を促し、むくみの解消や高血圧予防に有効とされるカリウムも多く含みます。そのほか、切り口から出る白い液体成分‘ヤラピン’は、食物繊維とともに便秘解消の効果があります。

栄養素・

機能性成分

 かんしょは、寒さと乾燥に弱く、貯蔵適温は12℃±2℃前後です。冷蔵庫には入れず、新聞紙等で、包み冷暗所で保存しましょう。使いかけのものはラップで包み冷蔵庫の野菜室に入れ、

早めに使い切ります。 加熱すると冷凍保存も可能です。輪切りや角切りにしたものは、煮汁や汁物に凍ったまま利用しましょう。つぶして冷凍する際は、平らにしてジッパー付きのポリ袋に入れ、箸等で溝を作っておくと、使う分だけ折って取り出せるので便利です。

保存方法

0 20 40 60 80 100(%)

キャベツ

たまねぎ

ばれいしょ

かんしょ

かんしょのビタミンB1の残存率(油で5分炒めたとき)

出典:(社)日本施設園芸協会「野菜と健康の科学」

大学芋の名前の由来は?

 今の東京大学の赤門の前で屋台で売り始めたところ、大学生が喜んで買ったことから「大学芋」と呼ばれるようになりました。

 かんしょは、皮のすぐ下にあくが多く含まれていて、空気に触れると黒く変色するため、色よく仕上げるには、切った後すぐに水にさらし、あく抜きをします。あく抜きの目安時間は、スイートポテトやきんとん等色みを重視する料理の際には、10分程度さらすときれいに仕上がりますし、2~3分と短時間にすることにより、ビタミンCの流出を防ぐ効果があります。 かんしょは、ゆっくり加熱すると酵素がでん粉をブドウ糖に変え、甘みが増すので、じっくりと時間をかけて加熱調理し、素材本来の甘みを味わってみてください。

パントテン酸

ビタミンC

カリウム

ビタミンB6

葉酸 ビタミンE

【かんしょ(塊根・生)】割合(%)

29.0

25.5

24.6

23.5

20.4

19.2 30代女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合におけるかんしょ(塊根・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、葉酸、ビタミンB6及びビタミンCは推奨量、そのほかは目安量の値を用いた )。

出典:「日本食品標準成分表2010」かんしょ(塊根・生)より【平成22年 かんしょの月別入荷実績】

(東京都中央卸売市場計)

【平成22年 かんしょの月別入荷実績】(大阪中央卸売市場計)

(t)

(t)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

4,000

3,500

0

1,000

2,000

400

1,400

800

1,800

200

1,200

600

1,600

出典:平成22年大阪府中央卸売市場、大阪市中央卸売市場年報より作成

出典:平成22年東京都中央卸売市場年報より作成

千葉(59)

茨城(30)

その他(3)

千葉(58)

茨城(33)

その他(3)

千葉(55)

茨城(35)

その他(3)

千葉(62)

徳島(4)

徳島(8)

茨城(32)

その他(2)

茨城(27)

千葉(66)

徳島(6)徳島(7)

その他(7)

茨城(26)

千葉(60)

高知(11)その他(3)

千葉(34)

その他(9)茨城(28)

千葉(47)

静岡(8)

高知(13)香川(14)静岡(15)茨城(15)

徳島(9)

その他(8)

千葉(58)

茨城(32)

徳島(7)

その他(3)

千葉(60)

茨城(28)

徳島(7)

その他(5)

千葉(55)

茨城(31)

鹿児島(4)徳島(8)

その他(2)

茨城(26)

千葉(55)

徳島(14)

その他(5)

徳島(35)

茨城(32)

宮崎(21)

その他(6)

茨城(39)

徳島(30)

宮崎(17)

その他(4)

茨城(42)

徳島(28)

宮崎(16)

千葉(6)

熊本(6)千葉(8)

熊本(11)千葉(9)

熊本(5)千葉(6)

千葉(6)熊本(4)

その他(3)

茨城(37)

徳島(32)

宮崎(15)

その他(2)

宮崎(21)

茨城(24)

徳島(29)

その他(6)

茨城(27)

宮崎(32)

熊本(9)鹿児島(9) 鹿児島(10)

茨城(9)

鹿児島(10)

千葉(4)

千葉(6)

高知(9)

その他(14)

徳島(25)

宮崎(47)

その他(9)

徳島(51)

宮崎(20)

茨城(17)

その他(2)

宮崎(14)

徳島(32)

茨城(44)

その他(6)

徳島(31)

宮崎(11)

茨城(46)

その他(6)

茨城(42)

宮崎(15)

徳島(34)

その他(6)

徳島(39)

茨城(32)

宮崎(16)

千葉(3) 千葉(5)その他(8)

【かんしょの作付面積】

【かんしょの出荷量】

出典:農林水産省「平成22年産生産出荷統計」

出典:農林水産省「平成22年産生産出荷統計」

鹿児島14,300

茨城6,480

千葉4,700

宮崎3,040

その他9,970

平成22年合計

39,700ha

平成22年合計863,600t

鹿児島347,500

茨城155,700

千葉100,600

宮崎77,200

その他155,600

熊本27,000

熊本1,210

138

139

【平成24年 かんしょの月別入荷実績】

【平成24年 かんしょの月別入荷実績】

出典:平成24年大阪府中央卸売市場、大阪市中央卸売市場年報より作成

出典:平成24年東京都中央卸売市場年報より作成

千葉(55)

茨城(30)

その他(5)

千葉(51)

茨城(35)

その他(5)

千葉(51)

茨城(36)

その他(4)

千葉(55)

徳島(10)

徳島(10)

茨城(32)

その他(3)

茨城(30)

千葉(63)

徳島(9)

徳島(9)

徳島(4)その他(3)

茨城(31)

千葉(60)

高知(6)その他(3)

千葉(34)

その他(7) 茨城(27)

千葉(47)

静岡(8)

高知(9)

香川(11)静岡(10)

茨城(29)

徳島(12)

その他(6)

千葉(61)

茨城(27)

徳島(9)

その他(3)

千葉(62)

茨城(24)

徳島(8)

その他(2)

千葉(58)

茨城(26)

鹿児島(5)鹿児島(4)

鹿児島(4)

徳島(9)

その他(2)

茨城(24)

千葉(57)

徳島(13)

その他(2)

徳島(36)

茨城(36)

宮崎(14)

その他(5)

茨城(37)

徳島(32)

宮崎(12)

その他(6)

茨城(37)

徳島(33)

宮崎(11)

千葉(7)

熊本(7)

宮崎(10)

宮崎(17)

宮崎(12)

宮崎(8)

千葉(12)千葉(10)

千葉(15)

熊本(10)

熊本(12)

熊本(5)千葉(5)大分(4)

大分(5)大分(5)

千葉(8)その他(7)

茨城(34)

徳島(34)

その他(3)

茨城(31)

徳島(34)

その他(3)

茨城(27)

鹿児島(8)

茨城(18)

茨城(12)鹿児島(7)

鹿児島(4)

鹿児島(5) 鹿児島(3)

千葉(8)千葉(10)

千葉(8)その他(12)

徳島(34)

宮崎(28)

その他(4)

徳島(58)

宮崎(21)

その他(2)宮崎(12)

徳島(34)

茨城(38)

その他(4)

徳島(35)

茨城(39)

その他(3)

茨城(38)

宮崎(13)

徳島(34)

その他(3)

徳島(42)

茨城(26)

宮崎(13)

千葉(9)千葉(9)

その他(5)

出典:農林水産省「平成24年産生産出荷統計」

出典:農林水産省「平成24年産作物統計」

鹿児島13,800

茨城6,640

千葉4,540

宮崎3,200

その他8,300

平成24年合計

38,800ha

平成24年合計875,900t

鹿児島320,200

茨城180,600

千葉118,500

宮崎78,400

その他125,200

徳島27,300

熊本25,700

熊本1,170

徳島1,150

徳島(17)

【かんしょの作付面積】

【かんしょの収穫量】