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モーニングレクチャー ADL評価法について」 リハビリテーション部 作業療法士 国田明子 2018/7/19(木)

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Page 1: 頚椎症の症状に関する 腕と手指の リハビリテー …ADL:Activities of Daily Living 1945年にDeverとBrownによって生み出され、 さらにニューヨーク大学のRuskやLawtonらに

モーニングレクチャー

「ADL評価法について」

リハビリテーション部

作業療法士 国田明子

2018/7/19(木)

Page 2: 頚椎症の症状に関する 腕と手指の リハビリテー …ADL:Activities of Daily Living 1945年にDeverとBrownによって生み出され、 さらにニューヨーク大学のRuskやLawtonらに

1.ADLの概念

2.代表的なADL評価法-Barthel IndexとFIM-

1)Barthel Index

2)FIM

3)Barthel IndexとFIMは何が違うのか?

4)Barthel IndexとFIMの利点と欠点

5)改善度を示す数値

3.疾患別のADL評価法

1)上肢機能障害のADL評価例

2)呼吸器疾患のADL評価例

3)心疾患のADL評価例

本日の内容

Page 3: 頚椎症の症状に関する 腕と手指の リハビリテー …ADL:Activities of Daily Living 1945年にDeverとBrownによって生み出され、 さらにニューヨーク大学のRuskやLawtonらに

ADL:Activities of Daily Living

1945年にDeverとBrownによって生み出され、さらにニューヨーク大学のRuskやLawtonらによって発展

日本においては、1976年に日本リハビリテーション医学会評価基準委員会がADLの概念を発表

「ADLとは、ひとりの人間が独立して生活する

ために行う基本的なしかも各人ともに共通に

毎日繰り返される一連の身体的動作群を言う」

ADLの概念

Page 4: 頚椎症の症状に関する 腕と手指の リハビリテー …ADL:Activities of Daily Living 1945年にDeverとBrownによって生み出され、 さらにニューヨーク大学のRuskやLawtonらに

ADLの概念

食事整容

更衣 排泄

入浴

移動

移乗

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1.ADLの概念

2.代表的なADL評価法-Barthel IndexとFIM-

1)Barthel Index

2)FIM

3)Barthel IndexとFIMは何が違うのか?

4)Barthel IndexとFIMの利点と欠点

5)改善度を示す数値

3.疾患別のADL評価法

1)上肢機能障害のADL評価例

2)呼吸器疾患のADL評価例

3)心疾患のADL評価例

本日の内容

Page 6: 頚椎症の症状に関する 腕と手指の リハビリテー …ADL:Activities of Daily Living 1945年にDeverとBrownによって生み出され、 さらにニューヨーク大学のRuskやLawtonらに

広く国際的に用いられている代表的なADL評価法

・バーサルインデックス:Barthel Index(BI)

⇒当院では、高齢者総合評価で使用

・機能的自立度評価法:

Functional Independence Measure(FIM)

⇒当院では、リハビリテーション初期・最終評価で使用

代表的なADL評価法

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Barthel Index

ADLの能力(=できるADL)を評価する

*「できるADL」:評価や訓練時にできるADL能力

評価項目は10項目

各項目を自立度に応じて15・10・5・0点で採点

100点満点で、最低点は0点

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Barthel Indexの評価項目と採点基準・その1

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Barthel Indexの評価項目と採点基準・その2

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対象:7歳以上 (7歳未満の小児用:Wee FIM)介助量測定を目的とし、「しているADL」を評価する

*「しているADL」:実際の生活の場(病棟や

在宅、居宅)でしているADL能力

評価項目は、運動13項目と認知5項目の計18項目全18項目を完全自立~全介助の度合いに応じて7段階(1~7点)で採点

総得点は126点(7点×18項目)で、最低点は18点

FIM

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FIMの評価項目

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FIMの採点基準

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採点 介助量 内容

7点 完全自立すべての性状の食物を皿から口まで運び、咀嚼

して嚥下できる。

6点 修正自立

時間がかかる.自助具を使用する.部分的に非

経口的栄養に頼り、自分で準備、片づけをして

いる。

5点 監視または準備 準備や監視が必要、自助具の装着をしてもらう。

4点 最小介助 食事動作の75%以上を行う。

3点 中等度介助 食事動作の50%以上75%未満を行う。

2点 最大介助 食事動作の25%以上50%未満を行う。

1点 全介助 食事動作の25%未満しか行えない。

FIM項目採点例「食事」

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Barthel IndexとFIMは何が違うのか?

Bathel Index

10項目の評価項目数は適度な数だし、合計100点満点だから点数が明確だし、採点は5点刻みの採点だから評価しやすそうで分かり易い?

FIM

18項目の評価項目数って多くて大変そうだし、合計126点満点はなんだか中途半端だし、採点は1~7点で採点基準も項目ごとにいろいろあって、詳しいけど難しそう?

最も大事な違いは何?

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Barthel IndexとFIMは何が違うのか?

Bathel Index

能力を評価

=「できるADL」を評価

FIM

実際に行っていることを評価

=「しているADL」を評価

最も大事な違いはこれ!

(例)能力的には自分で移乗できるが、実際には心配だからと介助してもらって移乗している⇒BIでは“自立”の点数、FIMでは“介助”の点数

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Barthel IndexとFIMの利点と欠点

Barthel Index

<利点>

・採点が簡便

・満点100点なので分かり易い

<欠点>

・点数が大まか

・細かな変化を捉えにくい

FIM

<利点>

・細かなADLの変化を把握できる

・介助度の程度が分かる

<欠点>

・項目ごとの採点内容が細かい

・満点が126点なので、合計点数

での判断は分かりにくい

<共通の欠点>疾患によっては、ある能力以上の場合は満点になり、真の能力を判別できない

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FIM gain(FIM利得)=退院時FIM総得点-入院時FIM総得点

FIM efficiency(FIM効率)=FIM gain(FIM利得)÷入院日数

最近はBarthel Indexにも応用されている

・主に通所介護事業のアウトカム評価で使用

・BI gain(BI利得)=事後BI-事前BI

改善度を示す数値

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1.ADLの概念2.代表的なADL評価法-Barthel IndexとFIM-

1)Barthel Index2)FIM3)Barthel IndexとFIMは何が違うのか?4)Barthel IndexとFIMの利点と欠点5)改善度を示す数値

3.疾患別のADL評価法1)上肢機能障害のADL評価例2)呼吸器疾患のADL評価例3)心疾患のADL評価例

本日の内容

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THE DASH(Disabilities of Arm, Shoulder and Hand)

・上肢全体のADLの困難さを評価するもので、国際的に広く

使用される患者立脚型(=質問形式)の機能評価表

・日本語版DASHは、日本手外科学会HPよりダンウンロード可能

・質問項目は、能力障害や症状に関するカテゴリーが30項目、

仕事に関するカテゴリーが4項目、スポーツや芸術に関する

カテゴリーが4項目

・各項目1~5点(1:障害なし~5:遂行不能)で回答し、各カテゴ

リーのスコアが100点満点に換算できるようになっており、得点

が高いほど障害が大きい

・簡易的な「THE Quick DASH」もある

⇒能力障害や症状に関しては11項目

(仕事の4項目、スポーツや芸術の4項目は変わらない)

上肢機能障害のADL評価例

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THE Quick DASH(表紙)

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THE Quick DASH

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THE Quick DASH (続き)

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NRADL(千住らのADL評価表)

・評価項目は、食事、排泄、整容、入浴、更衣、病室内移動、

病棟内移動、院内移動、階段、外出・買い物の10項目

・10項目それぞれを動作速度、息切れ、酸素流量の3指標に

ついて0~3点で採点

・さらに、連続歩行距離の0~10点を加え、合計0~100点満点

で評価する

・ADL状況が良好なほど高得点となる

・外来在宅用に改編したNRADL評価表もある

病室内移動→屋内移動、病棟内移動→階段昇降、院内移動→外出、

階段昇降→荷物の運搬・持ち上げ、外出・買い物→軽作業に変更

呼吸器疾患のADL評価例

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項 目 動作速度 息切れ 酸素流量 合 計

食 事 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

排 泄 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

整 容 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

入 浴 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

更 衣 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

病室内移動 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

病棟内移動 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

院内移動 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

階 段 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

外出・買い物 0・1・2・3 0・1・2・3 0・1・2・3

小 計 /30点 /30点 /30点

連続歩行距離 0点:50m以内、1点:50~200m、4点:200~500m、8点:500m~1km、10点:1km以上

合 計 /100点

<動作速度> <息切れ> <酸素流量>0:できないか、かなり休みをとらないとできない 0:非常にきつい 0:2L/分以上(できないは、以下すべて0点とする) これ以上は耐えられない 1:1~2L/分

1:途中で一休みしないとできない 1:きつい 2:1L/分以下2:ゆっくりであれば休まずにできる 2:楽である 3:酸素を必要としない3:スムーズにできる 3:まったく何も感じない

NRADL(千住らのADL評価表)・入院用

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SAS(specific activity scale;身体活動能力質問票)

・心疾患患者における活動能力の評価法

・基本的な日常活動と酸素摂取量を対応させた問診表

・特に日常生活で自覚症状が出現する中等症から重症の

慢性心不全の運動能力評価に有用

・代謝同量(METs)が規定されている身体活動(21項目)を

指標に、主観的身体活動能力から運動耐容能を推測する

ことが可能とされている

心疾患のADL評価例

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身体活動能力質問表(SAS;specific activity scale)

(次スライドに続く)

1.夜、楽に眠れますか はい・つらい 1MET以下

2.横になっていると楽ですか はい・つらい 1MET以下

3.一人で食事や洗面ができますか はい・つらい 1.6METs

4.トイレは一人で楽にできますか はい・つらい 2METs

5.着替えが一人で楽にできますか はい・つらい 2METs

6.炊事や掃除ができますか はい・つらい 2~3METs

7.自分で布団が敷けますか はい・つらい 2~3METs

8.ぞうきんがけはできますか はい・つらい 3~4METs

9.シャワーを浴びても平気ですか はい・つらい 3~4METs

10.ラジオ体操をしても平気ですか はい・つらい 3~4METs

11.健康な人と同じ速度で平地を100~200m歩いても平気ですか はい・つらい 3~4METs

12.庭いじり(軽い草むしり)をしても平気ですか はい・つらい 4METs

13.一人で風呂に入れますか はい・つらい 4~5METs

14.健康な人と同じ速度で2階まで昇っても平気ですか はい・つらい 5~6METs

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身体活動能力質問表(SAS;specific activity scale)

(前スライドからの続き)

15.軽い農作業(庭堀りなど)はできますか はい・つらい 5~7METs

16.平地を急いで200m歩いても平気ですか はい・つらい 6~7METs

17.雪かきはできますか はい・つらい 6~7METs

18.テニス(又は卓球)をしても平気ですか はい・つらい 6~7METs

19.ジョギング(時速8km程度)を300~400mしても平気ですか はい・つらい 7~8METs

20.水泳をしても平気ですか はい・つらい 7~8METs

21.なわとびをしても平気ですか はい・つらい 8METs以上

NHHA心機能分類

Ⅰ度,7METs以上

Ⅱ度,5~6METs

Ⅲ度,2~4METs

Ⅳ度,1METs以下

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代表的なADL評価法:Barthel Index、FIM

Barthel Indexは「できるADL」を評価

FIMは「しているADL」を評価

改善度を示す数値

・FIM利得:退院時FIM総得点-入院時FIM総得点

・FIM効率:FIM利得÷入院日数

・BI利得:事後BI-事前BI(主に通所介護事業のアウトカム評価で使用)

Barthel Index、FIMともにある能力以上の場合は満点になり、真の能力を

判別できない

疾患別の各種ADL評価法がある

(例)

1)THE DASH、THE Quick DASH(上肢機能障害の場合)

2)NRADL(呼吸器疾患の場合)

3)SAS:身体活動能力質問票(心疾患の場合)

本日のまとめ

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ご清聴ありがとうございました

モーニングレクチャー

「ADL評価法について」