薬剤疫学研究デザイン...薬剤疫学研究デザイン ①コホート研究(cohort...
TRANSCRIPT
薬剤疫学研究デザイン
① コホート研究(Cohort Study)
第23回 日本医療薬学会年会
教育セミナー 「薬剤疫学の実例と研究デザイン」
くすりの適正使用協議会
目次
2
★ 疫学研究のデザイン分類
★ コホート研究のデザインと評価方法
★ コホート研究の事例-1
★ バイアスと交絡
★ コホート研究の事例-2
疫学研究のデザイン分類
疫学研究
分析疫学仮説の生成
仮説の強化 仮説の検証
3
・コホート研究・ケース・コントロール研究・ネステッド・ケース・コントロール研究
対照群あり
・症例報告(副作用自発報告など)
・症例集積研究(使用成績調査など)
・横断研究・生態学的研究
患者の割付を無作為化↓
ランダム化比較試験
仮説:薬の副作用
×
<観察研究>
記述疫学
<観察研究>
観察研究:研究者は服用群の割付などに介入しない。
<介入研究>
・治験・製造販売後臨床試験
コホート研究とは
4
コホート研究
対象集団を規定し、その集団を時間の経過とともに追跡し、イベントの発生を記録する研究。
薬剤疫学における主なデザイン
曝露群(薬剤の服用群)と非曝露群における、曝露後のイベント(有害事象など)の発生頻度を比較する研究
前向きのコホート研究
後向きのコホート研究
研究開始時に曝露の有無を調査し、以降のイベントの発生を追跡する
データベースなどを使い、過去の一定期間における曝露とイベントの記録を調べる
前向きのコホート研究のデザイン
5
時間の方向
研究の方向
医薬品
あり
なし服 用
非服用
対象患者
あり
なし
イベント(副作用など)
観察研究では、ランダム化比較試験(介入研究)のような患者の割付はできない~使用実態下に服用群と非服用群に分類
イベントの発生頻度(リスク)の指標
6
• 累積発生割合 (発生割合)(cumulative incidence : CI)
• 発生率(incidence rate : IR)
イベントの発生頻度(リスク)を定量的に示す指標
<コホート研究の主な目的>曝露群と非曝露群のイベントの発生頻度を比較
0 0.25 0.5 0.75 1
A
B
C
D
E
(年)
: イベント発生
:観察終了/中止
・ 集団サイズ(開始時): 5人
・ イベント発生数(特定期間内): 2件
・ 各症例の観察期間の合計:
1+0.5+0.25+1+0.75 = 3.5人年
累積発生割合と発生率
7
累積発生割合(発生割合)特定期間内に
イベントが発生した人の割合
例: 5つの症例のイベント発生を特定期間(1年間)観察
集団サイズ(開始時)
イベント発生数(特定期間内)
=2/5
(件/人)
発生率イベント発生数を各症例の観察期間の合計
で割った率 (1人1年あたりの発生数)
各症例の観察期間の合計
イベント発生数(特定期間内) =2/3.5
(件/人年)
じんねん
累積発生割合と発生率の違い
8
観察期間の合計:
4+2+1+3+2=12人年
観察期間の合計:
4+4+3+4+3=18人年
例: 曝露群(5例)と非曝露群(5例)について、特定期間(4年間)のイベント発生を観察
A
C
D
E
B
曝露群
4 (年)1 2 3
非曝露群
F
H
I
J
G
4 (年)1 2 3
集団サイズ:5
イベント発生数:2
<発生率>2/12 2/18
<累積発生割合>2/5 2/5
リスクを比較する指標
★ 相対リスク(relative risk): 曝露群と非曝露群とのリスクの比
9
曝露群のリスク (累積発生割合or発生率)
非曝露群のリスク
★ 寄与リスク(attributable risk): 曝露群と非曝露群とのリスクの差
曝露群のリスク - 非曝露群のリスク
曝露群と非曝露群でリスクが同じ → 1
曝露群と非曝露群でリスクが同じ → 0
相対リスク リスク(発生割合) 寄与リスク
2.0 ① 曝露群:10% 非曝露群:5% 5.0
1.2 ② 曝露群:30% 非曝露群:25% 5.0
2.0 ③ 曝露群:1% 非曝露群:0.5% 0.5
(例)
曝露がリスクに与える影響の強さ
曝露が現実社会に与える影響の大きさ
コホート研究における相対リスクの算出
10
対象集団
あり
服薬
イベント
a
b
c
dイベント
あり なし
服薬あり a b
服薬なし c d
発生割合
a/(a+b)
c/(c+d)
相対リスク(RR)~リスクの比
RR=[a/(a+b)]÷[c/(c+d)]
a、b、c、d : 症例数 なし
あり
なし
あり
なし
累積発生割合をリスクとして相対リスクを求める場合
コホート研究の紹介事例
11
★ 事例1 (1979年発表)曝露:抗てんかん薬 → イベント:催奇形性(の増加)・ リスク評価: 累積発生割合
★ 事例2 (2007年発表)曝露:スタチン → イベント:敗血症(の抑制)・ リスク評価: 発生率
バイアスと交絡因子
傾向スコアを用いた交絡因子の調整方法
観察研究の課題
12
大熊輝雄ほか:神経研究の進歩23(6),1247-1263,1979
抗てんかん薬の催奇形性について全国11施設の共同研究から
コホート研究の事例1
背 景
13
• てんかんは、病気の性質上、妊娠初期でも断薬できないことがある。
• 研究が開始された1974年当時、抗てんかん薬を服用した患者では、非服用患者に比べて奇形の出現頻度が2~3倍高いとの欧米からの報告があった。
• 一方、日本における抗てんかん薬と奇形との関連についての研究は、2編の小規模な報告があるに過ぎず、使用実態下での検討は不十分であった。
目 的
14
妊娠初期(1~3カ月)に抗てんかん薬
を服用したてんかん患者と
服用しなかったてんかん患者とを比較し、
抗てんかん薬の催奇形性を明らかにする。
方 法
15
対 象: 精神神経科を有する全国11の共同研究施設を受診した女性てんかん患者のうち、妊娠の帰結が得られた患者
調査方法: 患者および産科医からの情報に基づき、参加施設の精神神経科医が調査票に記入。
調査期間: 1974年から1977年7月
コホート研究のデザイン
16
時間
服薬(抗てんかん薬)
イベント(奇形)
妊娠初期の
てんかん患者
あり
なし
あり
なし
あり
なし
妊娠初期(1~3カ月)
902例
657例
妊娠の帰結時に登録
奇形の累積発生割合と抗てんかん薬服用群の相対リスク
17
* p<0.05
妊娠の帰結服用群
n = 657
非服用群
n = 162
奇形 あり
なし
不明
57 (8.7)
420 (63.9)
180 (27.4)
3 (1.9)*
114 (70.4)
45 (27.8)
( ): 累積発生割合(%)
相対リスク: 8.7%÷1.9% = 4.6 (95%CI 1.49~14.8)
妊娠の帰結に関するデータが得られた902例
除外:妊娠初期の薬の服用の有無が不明な83例
819例
抗てんかん薬の併用と奇形の発生
18
★ 単剤使用例は657例中93例(14.1%)
~大部分の症例で薬剤が併用
★ 併用薬剤(抗てんかん薬、抗不安薬、抗精神病薬)
の数が多くなるに従い、奇形発生のリスクが増大。
<抗てんかん薬同士の場合>
3剤併用での累積発生率は2剤併用の約2倍、
4剤併用では約4倍。
抗てんかん薬の種類による奇形の発生割合、相対リスクの違い
19
* p<0.05
抗てんかん薬 服用群 非服用群 相対リスク
フェノバルビタール
メフォバルビタール
プリミドン
フェニトイン
トリメタジオン
カルバマゼピン
39(13.4)
17(15.3)
23(14.7)
39(10.7)
18(29.5)
11(12.0)
21(7.0)
43(8.9)
37(8.4)
21(9.1)
42(7.9)
49(9.8)
1.91*
1.72
1.75*
1.18
3.73*
1.22
各薬剤について、服用群と非服用群に分け、奇形発生数(累積発生割合%)、相対リスクを算出
(服用例で10人以上の奇形を認めた薬剤の結果のみ示した)
この研究の意義と影響
20
• 最大規模の研究であり、妊娠初期の治療指針が提供された。
• 妊娠女性に対しては、単剤かつ最低用量で治療することが勧められた。
• トリメタジオンについては、「妊娠または妊娠している可能性のある婦人」に対しては禁忌とされ、添付文書に「奇形児を出産した例が有意に多いとの疫学的調査報告がある」が記載された。
抗てんかん薬の服用によって奇形発生リスクが4.6倍になる?
21
• 全般発作が多い。
• 治療期間や
罹病期間が長い。
ランダム化比較試験のように、服薬群と非服薬群で、抗てんかん薬使用以外の条件がほとんど同じ場合には、抗てんかん薬によってリスクが4.6倍になったと考えられるが・・・・
服薬群の相対リスク:4.6
両群には患者背景
(てんかんの病態など)に違いあり
抗てんかん薬の服用
てんかんの重症度など
<服薬群>
発作が軽減した症例や軽症であったり、消失していた症例あり
<非服薬群>
リスク評価に歪みを与える?
リスク評価に歪みを与える要因(疫学研究の結果を真の結果から遠ざける要因)
22
ランダム誤差 (標本抽出変動)
・ 検定 → P値
・ 推定 → 95%信頼区間
系統誤差 (特定の方向性あり)
バイアス (bias)
交絡 (confounding)
信頼性(精度)の低下
妥当性の低下
バイアス
23
不適切な研究・調査に由来するもの
データ収集時に、データを取得するプロセスに偏りがあった場合・・・> 情報バイアス
計画時に、対象集団あるいは標本の選択が不適切だった場合・・・> 選択バイアス
・観察研究においては、バイアスを完全に排除することはできない・調査計画時の工夫でバイアスを最小限に抑えることは可能だが、
データ解析時には補正できない。⇔ 交絡は解析段階で調整可能
<バイアスの一般的な性質>
選択バイアス(selection bias)
24
生き残りバイアス: コホート研究における脱落例によって生じる。脱落の割合が大きく、曝露群と非曝露群で脱落理由に系統的な差がある場合(慣習的には80%以上の追跡完了が必要)
標的集団から観察集団を選択する方法が不適切であることによって生じる歪み (主にケース・コントロール研究で生じる)
参加バイアス: 調査拒否が多数にのぼり、群間で差がある場合(ケース群は「薬剤使用を訴えたい」ためにより多くが参加)
有病バイアス: 元々、疾患に罹患しているケースを研究対象にした場合(曝露をリスク因子ではなく予後因子として評価する可能性あり)
紹介バイアス: 特定の医療施設のケースは,そのイベントを発生した対象集団のケースを代表しているとは限らない。
情報バイアス(information bias)
25
情報を取得する際に生じる、比較する群で異なる方向への測定誤差 (観察バイアス、測定バイアス)
検出バイアス: 情報収集者が調査対象のグループを知っている場合(曝露群に対して、検査や観察が過剰になる可能性あり)
思い出しバイアス: ケース・コントロール研究において、ケースとコントロールでは過去の曝露に関して思い出し方が異なる可能性がある。
・・・> 被験者の盲検化、既存資料による回答
・・・> 情報収集者の盲検化、調査方法の統一
交絡 confounding
曝露(服薬)
イベント(副作用など)
第三の要因(交絡因子)
交絡とは、結果(イベント)に影響する第三の要因(交絡因子)と曝露が関連するために,
曝露と結果との関連性が歪められること。
調査対象者の背景因子・ 年齢・ 合併症・ 既往歴 など
26
関連
背景因子が交絡因子になる3つの条件
27
③ 潜在的交絡因子
の分布が、服薬群と
非服薬群で異なる。
① 背景因子がイベント(副作用など)と関連する。
曝露(服薬)
イベント(副作用など)背景因子
(年齢、合併症など)
② 曝露(服薬)とイベントを結ぶ原因経路上に背景因子がない。
曝露(服薬)
イベント(副作用など)
背景因子(年齢、合併症など)
服薬とは独立した危険因子
(潜在的交絡因子)
交絡因子
関連性
交絡による相対リスクの歪み
28
● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ● ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○
● ● ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○
軽症: 10% (1.00)
● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
● ● ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○
● ● ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○
● ● ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○
● ● ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○
● ● ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○
<曝露群:100例><非曝露群:100例>
中等症: 20% (1.00)
重症: 50% (1.00)
非曝露群の発生割合21% (21/100) 相対リスク:1.57 (33/21)
「曝露群でリスクが高くなる」という誤った結果
曝露群の発生割合33% (33/100)
・ イベントの発生割合(リスク)は疾患の重症度の影響を受け、曝露や他の背景因子の影響は受けない。
・ 2群間で重症度(軽症、中等症、重症)の分布が異なる。
重症度の交絡を無視して全体の発生割合を比べると・・・
●:イベント発生 ○:イベントなし
モデルの条件
発生割合(相対リスク)
層別集計
50例
30例
20例
50例
30例
20例
重症度が交絡
交絡の調整方法
29
・ 無作為(ランダム)化
・ マッチング
・ 制限
<標本設定の段階>
<統計解析の段階> ・ 層別集計(部分集団解析)
・ 層別(層化)解析
・ 標準化
・ 多変量解析
統計的な手法で調整する
交絡因子の分布を群間で揃える
交絡の調整方法~標本設定
30
★ 無作為(ランダム)化:ランダムに群分けをすることで介入以外の条件を確率的に均質化する。
・ 未知の交絡因子の影響も回避できる。・ 観察研究では適用できない。
★ マッチング:交絡因子の条件が類似した対照群を選ぶ。
★ 制限:交絡因子のとる範囲を制限する。(例) 年齢が交絡因子→30~40歳に限定・ 得られた結果の一般化可能性(外的妥当性)の低下
交絡の調整方法~統計解析
31
★ 層別集計(部分集団解析)カテゴリ(層)別に集計することで交絡因子の影響を除く。↓ 各層ごとの結果を1つの指標に統合する。
★ 層別解析層ごとの統計的精度に基づいて重み付け。
★ 標準化標準集団を想定して重み付け
★ 多変量解析数学的にモデル化して複数の交絡因子の影響を調整する。・ 多重ロジスティックモデル・ ポアソン回帰モデル・ COX比例ハザードモデル
モデルの妥当性が課題→複数のモデルの結果を比較(感度分析)
32
Rajesh Gupta et. al.JAMA. 2007 ; 297:1455-1464
Statin Use and Hospitalization for Sepsis in Patients With Chronic Kidney Disease
コホート研究の事例2
傾向スコアを用いた交絡因子の調整方法
背 景 と 目 的
• 慢性腎臓病のために透析を受けている患者は、慢性腎臓病を有していない患者に較べて、敗血症を併発し死亡に至るリスクが高い。
• スタチン製剤(脂質異常症の治療薬)が敗血症を予防し、また発症後の重症度を軽減する。
(動物実験、小規模観察研究など)
33
スタチン製剤の服用が慢性腎臓病による透析患者の敗血症発症リスクを低下するかを評価する。
方法
34
デザイン: 多施設(USA19州、81施設)前向きコホート研究対象: 外来透析を3ヶ月以内に始めた患者:1,041名登録期間: 1995年10月~1998年6月観察期間: 登録~2005年1月(あるいは死亡、腎臓移植)まで
(平均観察期間:3.4年)
調査方法:<患者アンケート(開始時)>→ 人種/民族性を含む背景、敗血症を含む既往歴など<透析施設の記録、病院退院報告書、投薬記録のレビュー>→ Statin投与状況, 透析用製剤、 健康に関わる行動等
主要評価項目: 敗血症による入院
研究デザインと粗解析の結果
35
研究の進行方向
スタチンの服用(曝露)
敗血症による入院(イベント)
3ヶ月以内に外来透析を
導入した患者
あり
なし
あり
なし
あり
なし(1,041例)
(143例)
(898例)
41/1000PY
110/1000PY
IRR=0.37
PY:patient-years(人年)
発生率スタチン服用の相対リスク
粗解析~交絡因子による調整なし
スタチン服用群と非服用群の患者背景分布
36
項目全症例
(n=1041)
服用群
(n=143)
非服用群
(n=898)p値
人種(白人の数)
(黒人の数)
(その他の数)
696[66.9]
294[28.2]
51[ 4.9]
114[79.7]
23[16.1]
6[ 4.2]
582[64.8]
271[30.2]
45[ 5.0]
0.002
透析(血液透析の数)
(腹膜透析の数)
767[73.7]
274[26.3]
86[60.1]
57[39.9]
681[75.8]
217[24.2]
<0.001
総コレステロール
LDLコレステロール
189±49.6
84±35.0
199±59.8
91±44.0
187±47.8
83±33.5
0.02
0.03
糖尿病(合併症)
敗血症(既往歴)
561[54.0]
62[ 6.0]
96[67.1]
17[11.9]
465[51.9]
45[ 5.0]
0.001
0.001
交絡の可能性
この事例で用いられた交絡の調整方法
37
傾向スコア (各患者がスタチン処方を受ける確率)
★ 傾向スコアを用いたマッチング同じ傾向スコアの患者同士をマッチングし、マッチドペアからなるサブコホートを設定/解析→ 無作為割付を行ったような患者背景分布
★ 多変量解析 (ポアソン回帰モデル) →相対リスクの調整
交絡因子の候補となる背景因子(人種、 透析方法、 総コレステロール値、糖尿病の合併など)
共変量
共変量
傾向スコア
38
傾向スコア: 個人が曝露(薬剤投与)を受ける確率
多変量解析
処方に影響する背景因子(治療決定因子)~曝露群と非曝露群で分布が異なる背景因子
人種、 透析方法、 総コレステロール値、糖尿病の合併・・・
一元化 (多重ロジスティック回帰)
層別解析
傾向スコア (0~1)
マッチング
<交絡への対応>
傾向スコアの分布とマッチング
39
傾向スコア
マッチング出来る範囲
0.0 1.00.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
症例数
曝露群非曝露群
サブコホートとして解析~無作為割付を行ったような患者背景分布(標本サイズは減少し、結果の一般性(外的妥当性)は低下)
傾向スコアでマッチングしたサブコホートのスタチン服用群と非服用群の患者背景分布
40
項目全症例
(n=214)
服用群
(n=107)
非服用群
(n=107)p値
人種 (白人の数)
(黒人の数)
(その他の数)
168[78.5]
38[17.8]
8[3.7]
84[78.5]
18[16.8]
5[4.7]
84[78.5]
20[18.7]
3[2.8]
0.74
透析 (血液透析の数)
(腹膜透析の数)
147[68.7]
67[31.1]
74[69.2]
33[30.8]
73[68.2]
34[31.8]
0.88
総コレステロール
LDLコレステロール
192±52.1
88±38.4
198±60.5
90±43.6
187±41.6
85±32.4
0.12
0.42
糖尿病(合併症)
敗血症(既往歴)
149[69.6]
19[8.9]
73[68.2]
14[13.1]
76[71.0]
5[4.7]
0.66
0.03
143↓ 898↓
スタチン服用群の非服用群に対する相対リスク(IRR)の推定
41
モデル 症例数 入院数 IRR [95% CI]
粗解析(crude analysis) 1,041 303 0.37 [0.22-0.61]
傾向スコアマッチドサブコホート 214 54 0.24 [0.11-0.49]
傾向スコアを用いた多変量解析 804 266 0.34 [0.19-0.60]
複数の解析方法(多変量解析の回帰モデルの変更など)で解析し、相対リスクが0.3~0.4程度であることを確認~感度分析
相対リスク
+
<解析結果の妥当性の確認>
事例2のまとめ
42
以上の検討結果から、スタチン投与により敗血症での入院リスクを有意に低減(60%減)できることが判明した。
★ 透析患者におけるスタチン投与の有無と敗血症発症の有無との関連性について、多施設前向きコホートのデータを用いて検討した。
★ 評価結果(IRR)は、傾向スコアを用いた交絡の調整が行われた。・ 傾向スコアでマッチングしたサブコホートでは
IRRが0.24となり有意だった。・ 傾向スコアを共変量とした多変量解析で調整した場合
IRRが0.34となり有意だった。
コホート研究
43
長 所 短 所
発生率の測定が可能である。
稀なアウトカムの検討には適さない(多数の調査対象者が必要)。
相 対 リ ス ク に よ りリスクが比較できる。
費用がかかる。